(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】車両用前照灯装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/50 20060101AFI20220412BHJP
F21S 41/141 20180101ALI20220412BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20220412BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20220412BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20220412BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220412BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
B60Q1/50 A
F21S41/141
F21S41/675
F21W102:13
F21W103:60
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019006335
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】毛利 文彦
(72)【発明者】
【氏名】浜本 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】高村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ステファン アンドレ
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/50
F21S 41/141
F21S 41/675
F21W 102/13
F21W 103/60
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方下側の第1照射領域へ光を照射する固定照射手段と、
前記第1照射領域よりも車両前方上側の第2照射領域へ光を照射する照射角度と、前記第1照射領域よりも車両手前側の描画領域へ描画パターンを照射する描画角度と、を選択的に取る可変照射手段と、
前記固定照射手段が取り付けられた支持部材に車幅方向を軸方向として回動可能に支持され、前記可変照射手段を保持する保持手段と、
前記照射角度と前記描画角度とを選択的に取るように前記保持手段を回動させる駆動手段と、
を備えた車両用前照灯装置。
【請求項2】
前記可変照射手段は、光源から出射された光を反射する反射装置を有し、
前記反射装置は、車両の周辺状況を検知する周辺状況検知手段によって得られた情報に基づく制御装置の制御により、それぞれの角度が変更可能な複数のマイクロミラーを含んで構成されている請求項1に記載の車両用前照灯装置。
【請求項3】
前記保持手段の回動支点は、前記可変照射手段の重心よりも車両上方側に設けられており、
前記駆動手段は、前記保持手段の回動支点よりも車両下方側に設けられている請求項1又は請求項2に記載の車両用前照灯装置。
【請求項4】
前記描画パターンには、少なくとも歩行者に対するメッセージが含まれる請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用前照灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1光源によって照射された光を車両前方側へ配光する第1配光部と、第2光源によって照射された光をMEMSミラーによって反射させて、所定の配光パターンで車両前方側へ配光する第2配光部と、を有するハイビームユニットを備えた車両用前照灯は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の車両用前照灯では、MEMSミラーで光を反射して路面に描画パターン(情報表示光)を照射する際、その描画パターンは、ハイビーム配光エリアの近傍(ハイビーム配光エリアとロービーム配光エリアとの間)になる。すなわち、例えば横断歩道の手前で停車した車両から照射された描画パターンは、概ね横断歩道を越えた位置に照射される。
【0005】
一方、信号の無い横断歩道を渡ろうとしている歩行者にとっては、その横断歩道の手前で停車してくれている車両を見るのが一般的である。そのため、その車両から照射される描画パターン(「お先にどうぞ」などの文字を現出させる情報表示光)は、横断歩道を越えた位置ではなく、その車両のすぐ前の路面に照射されることが、歩行者にとっては望ましい。
【0006】
しかしながら、上記の車両用前照灯では、車両のすぐ前の路面に描画パターンを照射することが困難であり、車両のすぐ前の路面に描画パターンを照射するためには、第2配光部とは別に、それ専用の描画ビームユニットを設けるなどの対応が必要となっていた。つまり、車両用前照灯の製造コストが増加する不具合があった。
【0007】
そこで、本発明は、製造コストの増加を抑制しつつ車両近傍の描画領域へ描画パターンを照射できる車両用前照灯装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用前照灯装置は、車両前方下側の第1照射領域へ光を照射する固定照射手段と、前記第1照射領域よりも車両前方上側の第2照射領域へ光を照射する照射角度と、前記第1照射領域よりも車両手前側の描画領域へ描画パターンを照射する描画角度と、を選択的に取る可変照射手段と、前記固定照射手段が取り付けられた支持部材に車幅方向を軸方向として回動可能に支持され、前記可変照射手段を保持する保持手段と、前記照射角度と前記描画角度とを選択的に取るように前記保持手段を回動させる駆動手段と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、固定照射手段が、車両前方下側の第1照射領域へ光を照射する。そして、可変照射手段が、第1照射領域よりも車両前方上側の第2照射領域へ光を照射する照射角度と、第1照射領域よりも車両手前側の描画領域へ描画パターンを照射する描画角度と、を選択的に取る。つまり、描画パターンを照射するためだけの専用の照射手段を別途設ける必要がない。したがって、製造コストの増加が抑制されつつ車両近傍の描画領域へ描画パターンが照射される。
【0010】
また、請求項2に記載の車両用前照灯装置は、請求項1に記載の車両用前照灯装置であって、前記可変照射手段は、光源から出射された光を反射する反射装置を有し、前記反射装置は、車両の周辺状況を検知する周辺状況検知手段によって得られた情報に基づく制御装置の制御により、それぞれの角度が変更可能な複数のマイクロミラーを含んで構成されている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、可変照射手段が、光源から出射された光を反射する反射装置を有している。そして、その反射装置は、車両の周辺状況を検知する周辺状況検知手段によって得られた情報に基づく制御装置の制御により、それぞれの角度が変更可能な複数のマイクロミラーを含んで構成されている。したがって、車両前方側の第2照射領域へ光を照射する際に、前方車両や歩行者等に対して光を照射しない非照射領域を自動的に形成することができる。よって、前方車両の運転者や歩行者等に対して眩しさを与えることが抑制される。
【0012】
また、請求項3に記載の車両用前照灯装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用前照灯装置であって、前記保持手段の回動支点は、前記可変照射手段の重心よりも車両上方側に設けられており、前記駆動手段は、前記保持手段の回動支点よりも車両下方側に設けられている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、保持手段の回動支点が、可変照射手段の重心よりも車両上方側に設けられており、駆動手段が、その保持手段の回動支点よりも車両下方側に設けられている。したがって、駆動手段が、保持手段の回動支点よりも車両上方側に設けられている場合に比べて、重力を良好に利用して保持手段を回動させることができる。よって、駆動手段の構成が簡易で済み、車両用前照灯装置自体がコンパクトに構成される。
【0014】
また、請求項4に記載の車両用前照灯装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用前照灯装置であって、前記描画パターンには、少なくとも歩行者に対するメッセージが含まれる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、描画パターンに、少なくとも歩行者に対するメッセージが含まれる。したがって、歩行者に対して注意喚起等を適確に与えられる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、製造コストの増加を抑制しつつ車両近傍の描画領域へ描画パターンを照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る車両用前照灯装置を備えた車両を示す正面図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用前照灯装置を示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用前照灯装置を示す平面図である。
【
図4】本実施形態に係る車両用前照灯装置のDMDユニットが照射角度を取った状態を示す側面図である。
【
図5】本実施形態に係る車両用前照灯装置のDMDユニットが描画角度を取った状態を示す側面図である。
【
図6】本実施形態に係る車両用前照灯装置のDMDユニットを構成するDMDを示す説明図である。
【
図7】本実施形態に係る車両用前照灯装置のDMDユニットが照射角度で照射した場合を車幅方向から見て示す説明図である。
【
図8】本実施形態に係る車両用前照灯装置のDMDユニットが描画角度で照射した場合を車幅方向から見て示す説明図である。
【
図9】本実施形態に係る車両用前照灯装置のDMDユニットが描画角度で照射した場合を車両上方側から見て示す俯瞰図である。
【
図10】本実施形態に係る車両用前照灯装置で照射した照射領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両上方向、矢印FRを車両前方向、矢印RHを車両右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両上下方向の上下、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0019】
図1に示されるように、車両12には、車両12の前方側の視界を確保するための左右一対のヘッドランプユニット14が備えられている。すなわち、車両12の右側前端部には、ヘッドランプユニット14Rが配置され、車両12の左側前端部には、ヘッドランプユニット14Lが配置されている。
【0020】
そして、ヘッドランプユニット14R、14Lは、車幅方向において左右対称に構成されている。したがって、本実施形態においては、右側のヘッドランプユニット14Rについて説明し、左側のヘッドランプユニット14Lについての説明は省略する。なお、本実施形態に係る車両用前照灯装置10は、ヘッドランプユニット14の一部である。
【0021】
図2に示されるように、右側のヘッドランプユニット14Rは、車幅方向内側下部に配置された固定照射手段としてのロービームユニット16と、車幅方向内側上部に配置されたハイビームユニット18と、車幅方向外側に配置された可変照射手段としてのDMDユニット20と、を含んで構成されている。
【0022】
図10に示されるように、ロービームユニット16は、車両12の前方下側の車道(路面)における第1照射領域としてのロービーム配光エリアLaに、投影レンズ36(
図2参照)を透過した光(可視光)を照射するように構成されている。そして、ハイビームユニット18は、ロービームユニット16によって照射されるロービーム配光エリアLaよりも前方上側の第2照射領域としてのハイビーム配光エリアHaに、投影レンズ38(
図2参照)を透過した光(可視光)を照射するように構成されている。
【0023】
また、ロービームユニット16及びハイビームユニット18は、制御装置60(
図1参照)に電気的に接続されている。これにより、運転者のスイッチ操作だけではなく、制御装置60の制御によってもロービームユニット16及びハイビームユニット18における可視光源(図示省略)の点灯及び消灯が実行される構成になっている。
【0024】
図7~
図9に示されるように、DMDユニット20は、ハイビーム配光エリアHaと、車両12の近傍(車両12の直前)の路面における描画領域としてのパターン配光エリアPaと、に後述する投影レンズ28(
図2参照)を透過した可視光(パターン配光エリアPaには情報表示光である描画パターン)を選択的に照射するように構成されている。
【0025】
なお、描画パターン(情報表示光)としては、少なくとも歩行者に対するメッセージが含まれることが好ましい。具体的には、「お先にどうぞ」や「停車します」などの文字が表示されることが好ましい。但し、描画パターンは、文字に限定されるものではなく、図示は省略するが、例えば「!」等の記号が表示されるようになっていてもよい。
【0026】
図6に示されるように、DMDユニット20は、可視光源22と、可視光源22から出射された可視光を集光する集光レンズ(図示省略)と、集光レンズで集光された可視光を反射する反射装置としてのDMD(Digital Micromirror Device)24と、DMD24で反射した可視光を透過させて車両前方側へ照射する投影レンズ28(
図2参照)と、を有している。なお、DMD24と後述する半導体基板(図示省略)とでDMDユニット20が構成されている。
【0027】
可視光源22は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの高輝度光源とされており、制御装置60と電気的に接続されている。つまり、可視光源22は、制御装置60の制御により、点灯及び消灯が実行される構成になっている。また、集光レンズは、DMD24側が半球状に突出し、可視光源22側が平坦面とされたレンズとされている。
【0028】
そして、投影レンズ28も、車両前方側が半球状に突出し、車両後方側が平坦面とされたレンズとされており、透過させた光(可視光)を、ハイビーム配光エリアHa又はパターン配光エリアPaへ照射するようになっている。なお、集光レンズの形状及び投影レンズ28の形状は、上記形状に限定されるものではない。
【0029】
DMD24は、二次元状(マトリックス状)に配列された複数のマイクロミラー26によって集合反射面が構成されており、各マイクロミラー26は、半導体プロセスにより半導体基板(図示省略)上に角度変更可能に設けられている。そして、DMD24は、制御装置60に電気的に接続されている。すなわち、DMD24は、制御装置60の制御によって各マイクロミラー26が独立して駆動するように(各マイクロミラー26の角度がそれぞれ変更されるように)構成されている。
【0030】
なお、本実施形態では、制御装置60の制御によって駆動された(通電された)ときの各マイクロミラー26の角度が、ハイビーム配光エリアHaへ可視光を照射するハイビーム照射角度とされている。そして、制御装置60の制御により、ハイビーム照射角度とは異なる角度に変更された一部のマイクロミラー26の角度が、ハイビーム配光エリアHaへ可視光を照射しない遮光角度とされている。
【0031】
つまり、遮光角度を取った一部のマイクロミラー26に照射された可視光は、投影レンズ28に入射されない方向へ反射されるようになっている(
図6参照)。したがって、DMDユニット20が後述する照射角度で配置されているときには、
図10に示されるように、ハイビーム配光エリアHaには、前方車両72や歩行者等に眩しさを与えないようにする非照射領域(ハイビーム配光エリアHaの一部を遮光する領域)としてのダークエリアDaが、例えば略矩形状に形成される。
【0032】
また、DMDユニット20が後述する描画角度で配置されているときには、図示は省略するが、パターン配光エリアPaには、非照射領域が影となって表示されるため、制御装置60の制御によって所定の(文字等を表示するために必要な)マイクロミラー26が遮光角度を取ることにより、文字等の情報(情報表示光である描画パターン)が影として形成される。
【0033】
なお、影で文字等の情報(描画パターン)を表示するのではなく、全体を影にし、光で文字等の情報(描画パターン)を表示するようにしてもよい。更に、可視光源22を公知の所謂RGB光源とし、可視光源22から照射される可視光をフルカラーにして、文字等の情報(描画パターン)に色を着けるようにしてもよい。
【0034】
また、
図4、
図5に示されるように、DMDユニット20は、上下方向の向きを変更可能に構成されている。すなわち、DMDユニット20は、ハイビーム配光エリアHaへ可視光を照射する照射角度と、ロービーム配光エリアLaよりも車両手前側の路面(車両12の直前の路面)に描画パターンを照射する描画角度と、を選択的に取るように構成されている。
【0035】
詳細に説明すると、
図2~
図5に示されるように、DMDユニット20は、保持手段としてのホルダー50に保持されており、そのホルダー50は、ロービームユニット16やハイビームユニット18が取り付けられた支持部材としてのブラケット40に車幅方向を軸方向として回動可能に支持されている。
【0036】
ブラケット40は、ロービームユニット16の後端部が前壁に取り付けられた本体部42を有しており、その本体部42の上壁にハイビームユニット18の下端部が取り付けられている。なお、ブラケット40には、ロービームユニット16及びハイビームユニット18における各光軸の左右方向の位置を調整する左右エイミングボルト62と、上下方向の位置を調整する上下エイミングボルト64と、が設けられている。
【0037】
また、本体部42の車幅方向外側後方には、DMDユニット20をホルダー50ごと収容する第1収容部44が一体的に設けられている。第1収容部44は、車両前方側から見た正面視で略矩形枠状に形成された前側フレーム44Aと、平面視で車両前方側へ開放する略「U」字状に形成された後側フレーム44Bと、を有している。そして、後側フレーム44Bの前端部は、前側フレーム44Aの高さ方向略中央部に一体的に接続されている。つまり、DMDユニット20は、前側フレーム44Aと後側フレーム44Bとで囲まれるように配置されている。
【0038】
また、本体部42の車幅方向外側で、かつ収容部44の車両前方下側には、後述するレベラー30を収容する第2収容部46が一体的に設けられている。第2収容部46は、車両前方側から見た正面視で略矩形枠状に形成された前側フレーム46Aを有しており、レベラー30は、前側フレーム46Aに囲まれるように配置されている。
【0039】
一方、ホルダー50は、DMDユニット20を車両下方側から支持する平板状の底板部52と、底板部52の左右両端部から車両上方側へ一体的に立設され、平面視で略ハット型形状に形成されたカバー部54と、を有している。DMDユニット20は、車両前方側からホルダー50の底板部52に乗せられ、その両側部及び後端部がカバー部54によって保持されるようになっている。
【0040】
そして、ホルダー50のカバー部54における左右両側のフランジ部56が、ブラケット40の前側フレーム44Aにおける左右両側の上部に、ジョイント部48を介して取り付けられている。このジョイント部48は、車幅方向を軸方向として回動可能に構成されており、ホルダー50は、ブラケット40に対して、そのジョイント部48を回動中心(回動支点)として回動可能になっている。つまり、ホルダー50の回動中心(回動支点)は、DMDユニット20の重心よりも車両上方側に設けられている。
【0041】
DMDユニット20の車両前方下側に配置されている第2収容部46には、ジョイント部48を回動中心としてホルダー50を回動させる駆動手段としてのレベラー30が設けられている。レベラー30は、略直方体形状の本体部32を有しており、その本体部32の後部には、車両前後方向を軸として回転することで、その車両前後方向へ出入するロッド34が設けられている。そして、ホルダー50における底板部52の前端部には、そのロッド34の先端が当接する受部材58が一体的に設けられている。
【0042】
また、レベラー30は、制御装置60に電気的に接続されており、制御装置60の制御によってロッド34が出入するように構成されている。なお、
図4に示されるように、ロッド34が車両後方側へ突出していない状態のときが、DMDユニット20の照射角度である。そして、
図5に示されるように、ロッド34が車両後方側へ突出している状態のときが、DMDユニット20の描画角度である。
【0043】
制御装置60は、車両12に設けられたカメラ66やレーダー68等の周辺状況検知手段70(
図1参照)と電気的に接続されている。したがって、周辺状況検知手段70によって検知された情報に基づいて、制御装置60がロービームユニット16やハイビームユニット18を制御することにより、自動的にロービーム配光エリアLaやハイビーム配光エリアHaへ可視光が照射されるようになっている。
【0044】
そして、周辺状況検知手段70によって検知された情報に基づいて、制御装置60がDMDユニット20を制御することにより、自動的にダークエリアDaを除くハイビーム配光エリアHaへ可視光を照射するようになっている。また、周辺状況検知手段70によって検知された情報に基づいて、制御装置60がDMDユニット20を制御することにより、自動的にパターン配光エリアPaへ描画パターン(情報表示光)を照射するようになっている。
【0045】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両用前照灯装置10において、次にその作用について説明する。
【0046】
車両12の夜間走行時には、運転者のスイッチ操作により、ロービームユニット16の可視光源を点灯させるか、又は周辺状況検知手段70が夜間であることを検知し、それに基づいて、制御装置60がロービームユニット16の可視光源を点灯させる。すると、その可視光源から照射された可視光は、投影レンズ36を透過し、ロービーム配光エリアLaへ照射される(
図10参照)。
【0047】
また、必要に応じて、運転者のスイッチ操作により、ハイビームユニット18の可視光源を点灯させるか、又は周辺状況検知手段70の検知に基づいて、制御装置60がハイビームユニット18の可視光源を点灯させる。すると、その可視光源から照射された可視光は、投影レンズ38を透過し、ハイビーム配光エリアHaへ照射される(
図7参照)。なお、このとき、そのハイビーム配光エリアHaには、ダークエリアDaは形成されない。
【0048】
また、前方車両72や歩行者等を周辺状況検知手段70で検知した場合には、その検知結果に基づいて、制御装置60が、ハイビームユニット18ではなく、照射角度に配置されているDMDユニット20の可視光源22を点灯させる。すると、その可視光源22から照射された可視光は、一部のマイクロミラー26が遮光角度とされたDMD24で反射され、投影レンズ28を透過し、ハイビーム配光エリアHaへ照射される。
【0049】
つまり、このときのハイビーム配光エリアHaには、可視光が照射されないダークエリアDaが自動的に形成される(
図10参照)。したがって、車両12がハイビームを点灯させても、前方車両72の運転者や歩行者等に対して眩しさを与えることを抑制又は防止することができる。
【0050】
また、例えば
図9に示されるように、歩道にいる歩行者Pが、信号のない横断歩道の手前で止まっており、車両12が、その横断歩道の手前で停車するために減速したときには、その情報を周辺状況検知手段70で検知し、その検知結果に基づいて、制御装置60が、DMDユニット20を描画角度に配置するとともに、各マイクロミラー26の角度を制御する。
【0051】
すなわち、レベラー30のロッド34が突出して受部材58を押圧し、DMDユニット20を描画角度まで回動させるとともに、一部(文字等を影として表示するために必要な箇所)のマイクロミラー26の角度が遮光角度に変更される。そして、可視光源22から照射された可視光を、そのDMD24で反射することにより、可視光で照射するパターン配光エリアPa内に、可視光を照射しない影の部分が形成される。
【0052】
つまり、影によって文字(「お先にどうぞ」や「停車します」などの文字)等が形成された描画パターン(情報表示光)がパターン配光エリアPaへ照射される。これにより、信号のない横断歩道を渡ろうとしている歩行者Pに対して、先に渡らせたり、注意喚起を与えたりすることができる。このように、描画パターンに、少なくとも歩行者に対するメッセージが含まれていると、その歩行者に対して適確に情報を伝達することができる。
【0053】
また、上記したように、DMDユニット20は、ハイビーム配光エリアHaへ可視光を照射する照射角度と、パターン配光エリアPaへ描画パターンを照射する描画角度と、を選択的に取るように構成されている。したがって、ハイビーム配光エリアHaへ可視光を照射するDMDユニットとパターン配光エリアPaへ描画パターンを照射するDMDユニットの両方を設ける必要がない。
【0054】
つまり、ハイビーム配光エリアHaへ可視光を照射するDMDユニット20の他に、パターン配光エリアPaへ描画パターンを照射するためだけの専用のDMDユニットを別途設ける必要がない。このように、本実施形態に係る車両用前照灯装置10によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、車両12の直前のパターン配光エリアPaへ描画パターンを照射することができる。
【0055】
なお、描画パターン(情報表示光)は、フルカラーで表示されるように構成されていてもよい。描画パターン(情報表示光)がフルカラーで表示されていると、その描画パターン(情報表示光)がモノクロで表示される構成に比べて、歩行者Pに対してより適確に情報を伝達することができる。
【0056】
また、車両12の速度に応じて、DMDユニット20の角度が自動的に変更されるように構成されていてもよい。例えば、周辺状況検知手段70や車速センサー(図示省略)等の検知により、車両12が所定の速度よりも速い速度で走行しているときには、制御装置60によるレベラー30の制御により、DMDユニット20が照射角度に配置され、車両12が所定の速度以下で走行しているときには、制御装置60によるレベラー30の制御により、DMDユニット20が描画角度に配置されるように構成されていてもよい。
【0057】
また、レベラー30は、ブラケット40に対するホルダー50の回動支点(ジョイント部48)よりも車両下方側(詳細には車両前方下側)に設けられている。したがって、レベラー30が、ブラケット40に対するホルダー50の回動支点(ジョイント部48)よりも車両上方側に設けられている場合に比べて(例えばDMDユニット20の上面前側を車両上方側から押圧して描画角度とする構成に比べて)、DMDユニット20を照射角度に戻す際に、重力を良好に利用してホルダー50をスムーズに回動させることができる。よって、レベラー30の構成が簡易で済み、ヘッドランプユニット14(車両用前照灯装置10自体)をコンパクトに構成することができる。
【0058】
また、制御装置60の制御により、ハイビーム配光エリアHaへの照射やパターン配光エリアPaへの照射が、自動的に実行される構成であるため、ハイビーム配光エリアHaへの照射やパターン配光エリアPaへの照射が、運転者のスイッチ操作(手動)で実行される構成に比べて、運転者(乗員)の負担を軽減させることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る車両用前照灯装置10では、DMDユニット20が、パターン配光エリアPaだけではなく、ハイビーム配光エリアHaにも可視光を照射できるようになっている。そして、そのハイビーム配光エリアHaにダークエリアDaを形成することができるようになっている。したがって、ダークエリアDaを形成することができないハイビームユニット18を省略することもできる。
【0060】
以上、本実施形態に係る車両用前照灯装置10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用前照灯装置10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、レベラー30の構成は、図示の構成に限定されるものではなく、ブラケット40に対してホルダー50が回動可能となるように構成されていればよい。
【0061】
また、DMDユニット20によるハイビーム配光エリアHaへの可視光の照射やパターン配光エリアPaへの描画パターン(情報表示光)の照射は、上記実施形態で説明したタイミングに限定されるものではなく、車両12の夜間走行中における各種状況に応じて適宜実行されるものである。また、その各種状況に応じて、描画パターン(情報表示光)で表示される文字等が適宜変更されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用前照灯装置
16 ロービームユニット(固定照射手段)
20 DMDユニット(可変照射手段)
24 DMD(反射装置)
26 マイクロミラー
30 レベラー(駆動手段)
40 ブラケット(支持部材)
50 ホルダー(保持手段)
60 制御装置
70 周辺状況検知手段
Ha ハイビーム配光エリア(第2照射領域)
La ロービーム配光エリア(第1照射領域)
Pa パターン配光エリア(描画領域)