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特許70568563D FDMプリント用のフィラメントを製造するためのセラミックスラリーを得る方法、当該方法を用いて得られるスラリー、およびセラミックフィラメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】3D FDMプリント用のフィラメントを製造するためのセラミックスラリーを得る方法、当該方法を用いて得られるスラリー、およびセラミックフィラメント
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20220412BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220412BHJP
   B28B 1/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y70/00
B28B1/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018558127
(86)(22)【出願日】2017-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 ES2017070202
(87)【国際公開番号】W WO2017191340
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】P201630581
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】518386531
【氏名又は名称】ウニベルシダー デ カスティーリャ ラ マンチャ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カナレス ヴァスケス、ジーザス
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ブラーボ、グロリア ベゴナ
(72)【発明者】
【氏名】マリン ルエダ、フアン ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ジャグエ アルカラス、ビセンテ
(72)【発明者】
【氏名】ロぺス ロペス、フアン ホセ
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-232617(JP,A)
【文献】米国特許第02966719(US,A)
【文献】米国特許第05997795(US,A)
【文献】特表2010-537679(JP,A)
【文献】特開平07-304081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00- 1/54
3/20
B33Y 70/00
C04B 35/632
B29C 64/165,64/307
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D-FDMプリント用のグリーンボディおよび/またはフィラメントを製造するためのセラミックスラリーを得る方法であって、前記セラミックスラリーを得るべく、
a)少なくとも1つのアルコールおよび/または1つの炭素数1~8のケトン鎖でセラミック材料の懸濁液を作製する段階と、
b)多糖類、グリコールまたはエタノールアミンをゲル化剤として添加する段階と、
c)ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルをバインダとして添加する段階と、
d)フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物を可塑剤として添加する段階と、
e)60~150度の温度で加熱する段階と、を備え、
前記セラミック材料に対する前記ゲル化剤の重量比率が1:4~1:20であり、
前記セラミック材料に対する前記バインダの重量比率が1:3~1:20であり、
前記セラミック材料に対する前記可塑剤の重量比率が1:5~1:10である、方法。
【請求項2】
前記加熱する段階e)の前に、前記セラミック材料の重量割合を1:36~1:200としてパラフィンまたはワックスを添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記添加する段階b)から前記加熱する段階e)のうちの何れかのシーケンスの順序が変わるか、または前記添加する段階b)から前記加熱する段階e)が同時に起こる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記セラミック材料に対する前記ゲル化剤の重量比率が、1:6~1:10である、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック材料に対する前記バインダの重量比率が1:3~1:8である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記セラミック材料に対する前記可塑剤の重量比率が1:6~1:9である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1のセラミック材料および有機塩基を備えるセラミックスラリーであって、前記有機塩基は、
多糖類、グリコールまたはエタノールアミンから選ばれるゲル化剤
ビニル樹脂またはポリアルキルカーボネートから選ばれるバインダ、および
フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性樹脂またはこれらの混合物から選ばれる可塑剤を有し、
前記セラミック材料に対する前記ゲル化剤の重量比率が1:4~1:20であり、
前記セラミック材料に対する前記バインダの重量比率が1:3~1:20であり、
前記セラミック材料に対する前記可塑剤の重量比率が1:5~1:10であり、
前記セラミックスラリーの粘度が、0.1~1.0Pa sである、セラミックスラリー。
【請求項8】
総重量の55~80重量%を占める少なくとも1つのセラミック材料と、有機塩基とを備えるセラミックスラリーであって、前記有機塩基は、
グリコールまたはエタノールアミンから選ばれるゲル化剤
ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルから選ばれるバインダ、および
フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物から選ばれる可塑剤を有し、
前記セラミックスラリーの粘度が、0.1~1.0Pa sである、請求項7に記載のセラミックスラリー。
【請求項9】
D-FDMプリント用のグリーンボディであって、前記グリーンボディは、セラミック材料と有機成分とを備え、前記有機成分は、
多糖類、グリコールまたはエタノールアミンから選ばれるゲル化剤
ビニル樹脂またはポリアルキルカーボネートから選ばれるバインダ、および
フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性樹脂またはこれらの混合物から選ばれる可塑剤を有し、
前記セラミック材料に対する前記ゲル化剤の重量比率が1:4~1:20であり、
前記セラミック材料に対する前記バインダの重量比率が1:3~1:20であり、
前記セラミック材料に対する前記可塑剤の重量比率が1:5~1:10である、グリーンボディ。
【請求項10】
D-FDMプリント用の前記グリーンボディであって、65~90%を占めるセラミック材料と、有機成分とを備え、前記有機成分は、
グリコールまたはエタノールアミンから選ばれるゲル化剤と、
ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルから選ばれるバインダ、および
フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物から選ばれる可塑剤を有し、
前記グリーンボディの硬度が、5~50ショアDである、請求項9に記載のグリーンボディ。
【請求項11】
3D-FDMプリント用のフィラメントを得るための方法であって、請求項9または10に記載のグリーンボディを押し出すことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野および技術分野、またはインテリアデザインおよび必要な日常道具の製造において適用される、セラミック材料の熱融解積層法技術を用いて3Dプリント用のフィラメントを製造するための方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、ラピッドプロトタイピング技術が、特に3Dプリント技術の躍進によって目覚ましい発達を遂げている。これらの技術によって、特定のソフトウェアによる部品のデザインから比較的直接的かつ単純なやり方で迅速かつ効率的に部品を製造し、その後の機械加工工程を避けることが可能となる。
【0003】
光造形法(SLA)、粉末焼結積層造形法(SLS)または熱融解積層法(FDM)といった幾つかの3Dプリント技術がある。最初の2つは汎用性が高くて部品の仕上がりレベルが高いが、FDMは、使用されるプリンタおよび材料が安価であることからより広く市場に公開されている。
【0004】
FDM技術は、融解材料の細線を堆積させる能力に基づくものであり、これらの細線は、冷却すると、ソフトウェアにより予め設計された断片をもたらす。従って、FDM技術は、ポリ乳酸(PLA)アセトニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)およびナイロンといった多くの熱可塑性ポリマーへの適用において見受けられ得る技術である。しかしながら、セラミック材料の場合、FDM技術は非常に限定的である。なぜなら、セラミック材料には、この工程で通常使用される温度領域(最大250~270度)におけるガラスの転移点および融点がないため、セラミック材料はFDM工程を直接経ることができないからである。それ故、得られるセラミックを熱可塑性物質と組み合わせる必要がある。結果として得られた複合体はFDMプリント工程を経ることができ、熱処理の後、有機廃棄物がセラミック片のみを残して除去される。
【0005】
当技術分野では3D FDMでのセラミック片の製造に関する記述があるが、そのセラミック片は常に、低温での適用を対象とし、かつ、セラミック配合量が約50重量%のものである(I.Zein et al.,"Fused deposition modeling of novel scaffold architectures for tissue engineering applications",Biomaterials 23,p.1169-1185,2002;S.J.Kalita et al.,"Development of controlled porosity ceramic composite scaffolds via fused deposition modeling",Materials Science and Engineering C 23,p.611-620,2003)。しかしながら、これらの方法で得られた製品は、高温における機械的安定性を示すことなく崩壊する。
【0006】
他の製品(ポアレイ(pore-lay)シリーズ、Iraブリック)を用いてセラミックまたは金属の集合組織を取得できるが、この集合組織も温度が上がると崩壊するhttp://ira3d.com/shop/ira-brick/?lang=en)。
【0007】
当技術分野では、処理後にこうした安定性を示すセラミック製品に関する記述が1つだけあり、当該セラミック製品はレイ-セラミック(Lay-Ceramic)という名で販売されている。当該製品のウェブサイト(https://www.matterhackers.com/store/3d-printer-filament/layceramic-3.00mm)に示されている情報によれば、レイ-セラミックに使用されるフィラメントは、収縮率が20~25%の粘土である。この高い収縮性の原因は、フィラメントが適切な有機成分を組み込んでいないかもしれないことに加えて、フィラメントの有機成分含有率が最大40%(非常に高い)であることにある。当該製品は粘土に限られており、最後の断片を形成するのに焼結工程を必要とする他のセラミック材料にまで範囲を拡大することはできない。
【0008】
Rutgers大学は、特別に改良されたStratasysのプリンタを用いた3Dプリントによってセラミック片が得られたという一連の論文(M.Allahverdi et al.,"3D Modeller",Journal of the European Ceramic Society 21,2001,1485-1490)を発表した。論文のうちの1つには、結合性、可塑化性および接着性を兼ね備えた複数のポリオレフィンの組み合わせからでき、かつ、300度を超えると分解する3Dプリント用バインダの開発が記載されている(T.F.McNulty,Mohammadi,A.Bandyopadhyay,S.C.Danforth and A.Safari,"Development of a Binder Formulation for Fused Deposition of Ceramics(FDC)",Rapid Prototyping Journal 4[4],p.144-50,1998)。この高い分解温度はまた、必然的に高いプリント温度を伴うため、市場に流通しているキットの使用対象となる従来型3Dプリンタでの使用が難しくなる。
【0009】
容易に成形できるものであるべきグリーンボディの作製においては、処理されるセラミックに応じて様々な分散剤を使用する必要がある。すなわち、その後のFDMでの使用のためにフィラメントを生み出すグリーンボディを得るには、セラミック系ごとの予備調査が必要である。
【0010】
本願の範囲において、「グリーンボディ」は、プリンタにより簡単に押し出せる成形可能な複合材料を形成する、セラミック材料と最適な有機剤との混合物として定義される。
【0011】
出願KR20150042660Aでは、PLAと3Dプリント用セラミックとの混合物を開示している。繰り返しになるが、安定した断片は得られない。本発明者の研究室でこの方法を再現すると、セラミックの外観をした断片が得られるが、当該断片の形状は高温だと保持されない。なぜなら、熱可塑性物質のガラス転移点を超える温度での構造保持を可能とするゲル化剤またはバインダが使用されていないからである。従って、この文書は、本発明で提案する教示が記載されていない、同じ技術分野における開示に過ぎないと見なされるべきである。
【0012】
CN103922755Aでは、セラミック部品を3Dプリントするための材料および工程に関する発明を開示する。この工程は、セラミックと3つの異なる固体状のバインダとを混合する段階を含み、当該バインダのうちの1つが無機化合物である。従って、製造工程は融解塩の製造工程と同様である。結果として、最終的に3Dプリントで断片がプリントされ得るが、従来のFDM温度よりもはるかに高い温度が必要となるため、その使用には限りがある。
【0013】
この技術で生じる課題は、安定した断片を3D FDMプリントするために、セラミック配合量が高いセラミック材料のフィラメントを得ることである。本発明で提案する溶液は、処理中にゲル化剤を組み込むスラッジまたはスラリーである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、3D FDMプリント用のフィラメントを製造するためのセラミックスラリーを作製する方法である。当該方法は、セラミック材料の懸濁液に、多糖類、グリコールまたはエタノールアミンをゲル化剤として添加する段階を含む。
【0015】
本発明の範囲において、「セラミック材料」は、無機物として定義されるものであり、当技術分野において完璧に特徴付けられる。当該無機物は一般的に、好ましくはイオン結合により非金属元素と組み合わされ、電気絶縁性および保温性があり、機械的抵抗性が非常に高く、ヤング率も高く、その非可塑性を反映する脆性破壊モードを有する金属元素である。
【0016】
本発明の範囲において、「スラリー」は、粘度(一般的には0.1~1Pa s)が高く、かつ、長時間にわたって安定している均一なセラミック乳濁液および有機剤であると理解される。
【0017】
ある特定の態様によると、本発明は、当該セラミックスラリーを得るべく、少なくとも1つのアルコールおよび/または炭素数1~8の鎖状ケトンで、好ましくは全溶液の30~70重量%のセラミック材料の懸濁液を作製することと、多糖類、グリコールまたはエタノールアミンをゲル化剤として添加することと、ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルをバインダとして添加することと、フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物を可塑剤として添加することと、60~150度の温度まで加熱することとを含む。
【0018】
当該方法のある特定の態様によると、セラミックの後にこれらの成分を添加するシーケンスの順序が変わるか、またはシーケンスが同時に起こり、始めから加熱が行われてもよい。
【0019】
ある非常に好ましい態様によると、当該ゲル化は、セラミックの重量比率が1:4~1:20、より好ましくは1:6~1:10である。別の好ましい態様によると、当該多糖類は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース、ペクチンまたは寒天から選択される。別の好ましい態様によると、当該グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブチレンから選択される。別の好ましい態様によると、当該エタノールアミンは、モノエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンから選択される。
【0020】
別の好ましい態様によると、当該バインダは、セラミックの重量比率が1:3~1:20、好ましくは1:3~1:8である。別の非常に好ましい態様によると、当該ビニル樹脂のバインダは、ポリビニルアルコール、ポリビニルまたはポリビニルブチラールである。
【0021】
別の非常に好ましい態様によると、当該可塑剤は、やはりセラミックの重量比率が1:5~1:10、好ましくは1:6~1:9である。ある好ましい態様によると、このポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブチレンである。更なる態様によると、当該熱可塑性は、ポリ乳酸(PLA)またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)である。
【0022】
オプションとして、断片の集合組織およびフィラメントのプリントを容易にする加熱段階の前に、セラミックの重量割合が1:36~1:200となるよう、潤滑剤、好ましくはワックスまたはパラフィンも添加される。本発明者の押出機については当該潤滑剤を加えることが強く推奨されており、グリーンボディが押し出されている実施例では全て、当該潤滑剤が加えられている。しかしながら、他のシステムでは当該潤滑剤がなくても本発明のフィラメントを得ることができる。
【0023】
60度~150度に加熱すると、混合物の均一化が可能となり、有機溶媒の部分的除去ももたらされる。従って、取得方法が進むにつれて、セラミックの割合が他の成分に対して相対的に増える。
【0024】
セラミックに対するゲル化剤の割合が1:20よりも低いと、その後の押出しおよび3D FDMプリントでの使用に適さない不均一なグリーンボディがもたらされる。この比率が1:4よりも高いと、結果として得られたグリーンボディは、押し出されてプリンタに供給され得るが、結果として得られた断片は、熱処理の後に変形する。
【0025】
ゲル化剤を加えると、セラミック粒子がその性質に関係なく確実に良く分散する。ゲル化剤によってグリーンボディ内の粒子分布が単純かつ効率的に長時間にわたって均一化および安定化することで、当該方法が酸化物および炭化物といった多種多様のセラミック材料に範囲を拡大可能であることが分かった。要約すると、ゲル化剤によって、当該スラリーから得られたグリーンボディからできるフィラメント、すなわち従来型3D FDMプリンタでの使用に最適な弾性および可塑性を兼ね備えたフィラメントの処理が容易になる。
【0026】
結合剤の割合が1:20よりも低い場合は、熱処理中にグリーンボディの形状が崩れるであろう。一方で、割合が1:3よりも高い場合に得られるグリーンボディは、極端に硬くて脆く、その後の3Dプリント工程と適合しないであろう。
【0027】
可塑剤の量が1:10未満の場合は、グリーンボディの可塑性が、その後に行われるグリーンボディのフィラメントの形態での押出し、およびFDMプリントでの使用に不十分なものとなる。一方で、量が1:5を超える場合は、容易に押し出せる断片が得られるが、過剰の有機物質が原因となって、熱処理後は当該断片の形状が保持されないであろう。可塑剤の効果はバインダの効果と幾分か拮抗する。すなわち、量が非常に多いと、押し出し可能なボディが得られるが、プリント工程後は当該ボディの形状が保持されない。
【0028】
結果として得られたスラリーは、室温まで冷却されてよい。これによって、糸またはフィラメントを形成するために容易に押し出すことができる、従来型プリンタでの3D FDMプリントにおいて扱い易くて収納し易い可撓体が得られる。
【0029】
本発明に係るゲル化剤を加えると、グリーンボディの形成中にセラミック粒子がスラリーなどの液体に分散した状態を保つことができる。本発明に係るゲル化剤を加えると、結合剤および可塑剤を添加してセラミック配合量が最大85重量%のグリーンボディが得られるような、セラミック粒子の相互接続ネットワーク構造を作り上げることも可能となる。このグリーンボディは、押し出され、巻き取られた後、従来型3Dプリンタで使用され得る。結果として得られた構造体は、高温にて、すなわち、Alまたは炭化物の場合は最大で1600度、何れも場合も最大でセラミック材料の0.75T(T:融点)にて安定性を維持する。更に、末端片の最大収縮率は、セラミックによって5~11%である。このことは、当技術分野に勝る決定的な技術的利点である。
【0030】
本発明のある好ましい態様は、総重量の55~80重量%を占める少なくとも1つのセラミック材料と、有機塩基とを備えるセラミックスラリーである。当該有機塩基は、グリコールまたはエタノールアミンと、ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルと、フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物とを有する。
【0031】
別の非常に好ましい態様は、65~90%を占めるセラミック材料と、有機成分とを備える3Dプリント用のグリーンボディである。当該有機成分は、グリコールまたはエタノールアミンと、ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルと、フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物とを有する。
【0032】
プリントに適したグリーンボディには、一定の硬度、すなわち、一般的には5~50ショアD(ISO7619-1:2010)の範囲内の硬度と、その後の押出しおよび従来型3D FDMプリンタ(Prusa Kitsなど)でのグリーンボディの使用を容易にする可塑性とがなければならない。
【0033】
グリーンボディは、200度で6時間にわたる前処理を行ってから、それより高い押出し温度で加熱してもよい。このやり方では、溶媒およびより揮発性の高い有機残渣が除去される。これにより、これらの生成物を過度に急速に除去することによって生じる、ひびなどの欠陥がない最後の断片が残る。
【0034】
本発明の方法は、AI、Zr0、Ce0誘導体、TiC、SiCなどの様々なセラミック材料を用いて試験されており、金属に適用され得る。当該方法によって、コイルの形態で容易に収納され、かつ、基準条件下の従来型3D FDMプリンタで使用され得る上質のフィラメントが得られる。
【0035】
最も好ましい態様は、本発明の工程により得られるセラミックフィラメントである。当該セラミック材料は、任意のセラミック、好ましくは、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類の酸化物、窒化物および炭化物であってよい。
【0036】
本発明の方法により得られるフィラメントには、高いセラミック配合量をサポートする一方で、扱い易く、かつ、フィラメントを巻き取って収納できるという利点がある。結果として得られる断片は、1600度までの温度だと収縮率ならびに構造および微細構造の安定性が低い。
【0037】
本発明の方法で得られたフィラメント、および、そこからFDMでプリントされた断片の両方の熱重量分析研究を行った結果、いかなる場合もセラミック配合量が65%より多かった。
【実施例
【0038】
本発明を非制限的なやり方で示すべく、以下の実施例を記載した。
【0039】
[実施例1:アルミナAl配合量が90重量%のフィラメントの取得] 懸濁液の総重量の40重量%のアルミナをセラミック材料に用いて、エタノールと2-ブタノンとの相対比率が3:2の混合物で懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、ゲル化剤:セラミックの重量比率が1:10となるようエチレングリコールを添加し、均質化されるまで20分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ:セラミックの重量比率が1:5となるようバインダ樹脂(ポリビニルブチラールButvar-98、Sigma Aldrich社)を添加し、可塑剤として、可塑剤:セラミックの重量比率が1:9となるようフタル酸ジブチルを添加し、これらと共に、ワックス:セラミックの重量比率が1:75となるよう少量のパラフィンワックスを添加した。この混合物を20分間にわたって撹拌しながら150度まで加熱した。結果として得られたスラリーを室温まで冷却すると、可塑性および硬度(ISO 7619-1:2010によれば、>35ショアDの高いグリーンボディが得られた。押出し工程の後、得られたフィラメントは、100度で24時間にわたって乾燥させてから、3Dプリンタで使用した。エタノールアミンをゲル化剤に用いて同じ方法を繰り返すと、同一の結果が得られた。同様に、50%のフタル酸ジブチルとPEG-400との混合物を可塑剤に用いて当該方法を繰り返すと、同じ良い結果が得られた。
【0040】
ワックスを全く添加しないでこの方法を繰り返すと、同様の濃度値および同等の硬度値のグリーンボディが得られた。
【0041】
[実施例2:過剰のゲル化剤を用いての、および、ゲル化剤の非存在下での、アルミナAl配合量が85重量%のグリーンボディの取得]懸濁液の総重量の50重量%のアルミナをセラミック材料に用いて、エタノールと2-ブタノンとの相対比率が3:2の混合物で懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、ゲル化剤:セラミックの重量比率が1:3となるようエチレングリコールを添加し、均質化されるまで20分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ:セラミックの重量比率が1:6となるようバインダ樹脂(ポリビニルブチラールButvar-98、Sigma Aldrich社)を添加し、可塑剤として、可塑剤:セラミックの重量比率が1:6となるようフタル酸ジブチルを添加し、これらと共に、ワックス:セラミックの重量比率が1:75となるようパラフィンワックスを添加した。当該混合物を20分間にわたって撹拌しながら150度まで加熱した。結果として得られたスラリーを室温まで冷却すると、可塑性が高く硬度(<5ショアD)が非常に低いグリーンボディが得られた。この場合は、熱処理の後にグリーンボディが著しく膨張する(>20%)結果、3Dプリントで得られた断片が、望ましい形状および寸法を保持しない。ゲル化剤の使用を省略して同じ工程を繰り返すと、押出しおよびプリントに適さない、硬くて(>60ショアD)脆い不均一なグリーンボディが得られた。
【0042】
[実施例3:過剰のまたは不十分なバインダを用いての、アルミナAl配合量が80重量%のグリーンボディの取得]懸濁液の総重量の50重量%のアルミナをセラミック材料に用いて、エタノールと2-ブタノンとの相対比率が3:2の混合物で懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、ゲル化剤:セラミックの重量比率が1:6となるようエチレングリコールを添加し、均質化されるまで20分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ:セラミックの重量比率が1:2となるようバインダ樹脂(ポリビニルブチラールButvar-98、Sigma Aldrich社)を添加し、可塑剤として、可塑剤:セラミックの重量比率が1:6となるようフタル酸ジブチルを添加し、これらと共に、ワックス:セラミックの重量比率が1:75となるよう少量のパラフィンワックスを添加した。当該混合物を30分間にわたって撹拌しながら150度まで加熱した。結果として得られたスラリーを室温まで冷却すると、可塑性が高く硬度(>70ショアD)が非常に高い、押出しに適したグリーンボディが得られたが、形成されたフィラメントは、FDMプリンタでの使用には脆過ぎた。結合剤:セラミックの重量比率を1:10として同じ工程を繰り返した。この場合は、熱処理の後にグリーンボディの元の寸法が保持されなかった。
【0043】
[実施例4:TiO配合量が75重量%のフィラメントの取得] 懸濁液の総重量の50重量%のTiO(アナターゼ、>99%、Sigma Aldrich社)をセラミック材料に用いて、エタノールと2-ブタノンとの相対比率が2:3の混合物で当該TiOを溶解させた懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、ゲル化剤:セラミックの重量比率が1:4となるようエチレングリコールを添加し、均質化されるまで15分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ樹として、バインダ:セラミックの重量比率が1:3となるようポリビニルアルコール(Alfa Aesar社)を添加し、可塑剤として、可塑剤:セラミックの重量比率が1:7となるようフタル酸ジブチルを添加し、これらと共に、ワックス:セラミックの重量比率が1:36となるようパラフィンワックスを添加した。結果として得られた混合物を150度まで加熱し、10分間にわたって撹拌下に保持した。結果として得られたスラリーを室温まで冷却すると、可塑性および硬度(20ショアD)の高いグリーンボディが得られた。押出し工程の後、得られたフィラメントは、100度で24時間にわたって乾燥させてから、3Dプリンタで使用した。
(項目1)
3D-FDMプリント用のフィラメントを製造するためのセラミックバルボティーヌを得る方法であって、上記セラミックバルボティーヌを得るべく、セラミック材料の懸濁液に多糖類、グリコールまたはエタノールアミンをゲル化剤として添加する段階を備えることを特徴とする方法。
(項目2)
上記セラミックバルボティーヌを得るべく、
a)少なくとも1つのアルコールおよび/または1つの炭素数1~8の鎖状ケトンでセラミック材料の懸濁液を上記作製する段階と、
b)多糖類、グリコールまたはエタノールアミンをゲル化剤として上記添加する段階と、
c)ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルをバインダとして上記添加する段階と、
d)フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物を可塑剤として上記添加する段階と、
e)60~150度の温度まで上記加熱する段階と
を備えることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記加熱する段階e)の前に、上記セラミック材料に対する重量割合を1:36~1:200としてパラフィンまたはワックスを添加することを特徴とする、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記段階b)から上記段階e)のうちの何れかのシーケンスの順序が変わるか、またはそれらが同時に起こることを特徴とする、項目2または3のうちの1つに記載の方法。
(項目5)
上記セラミック材料に対する上記ゲル化剤の重量比率が、1:4~1:20であることを特徴とする、項目1から4の何れか一項に記載の方法。
(項目6)
上記比率は、1:6~1:10であることを特徴とする、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記多糖類は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース、ペクチンまたは寒天から選択されることを特徴とする、項目1から6の何れか一項に記載の方法。
(項目8)
上記多糖類は、メチルセルロースであることを特徴とする、項目7に記載の方法。
(項目9)
上記グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブチレングリコールから選択されることを特徴とする、項目1から8の何れか一項に記載の方法。
(項目10)
上記エタノールアミンは、モノエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンから選択されることを特徴とする、項目1から9の何れか一項に記載の方法。
(項目11)
上記ビニル樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルまたはポリビニルブチラールであることを特徴とする、項目2から10の何れか一項に記載の方法。
(項目12)
上記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリブチレンであることを特徴とする、項目2から11の何れかに記載の方法。
(項目13)
上記熱可塑性物質は、ポリ乳酸またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンであることを特徴とする、項目2から12の何れかに記載の方法。
(項目14)
総重量に対して55~80重量%を占める少なくとも1つのセラミック材料と、有機塩基とを備えるセラミックバルボティーヌであって、上記有機塩基は、
グリコールまたはエタノールアミンと、
ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルと、
フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物と
を有することを特徴とする、セラミックバルボティーヌ。
(項目15)
3D-FDMプリント用のグリーンボディであって、上記グリーンボディは、65~90%を占めるセラミック材料と、有機成分とを備え、上記有機成分は、
グリコールまたはエタノールアミンと、
ビニル樹脂または炭酸ポリアルキルと、
フタル酸エステル、テルピネオール、ポリオレフィン、熱可塑性物質またはそれらの混合物と
を有することを特徴とする、グリーンボディ。
(項目16)
遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属の酸化物、窒化物および炭化物から選択されるセラミック材料を備えることを特徴とするセラミックフィラメント。
【0044】
[実施例5:20%のガドリニウムをドープした酸化セリウム(CGO20)の配合量が80%のスラリーの取得]懸濁液の総重量の60重量%のアルミナをセラミック材料に用いて、エタノールと2-ブタノンとの相対比率が2:3の混合物で懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、ゲル化剤:セラミックの重量比率が1:10となるようメチルセルロースを添加し、均質化されるまで30分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ樹脂として、バインダ:セラミックの重量比率が1:6となるようバインダ樹脂(ポリビニルアルコール、Alfa Aesar社)を添加し、可塑剤として、可塑剤:セラミックの重量比率が1:6となるようフタル酸ジブチルを添加し、これらと共に、ワックス:セラミックの重量比率が1:75となるよう少量のパラフィンワックスを添加した。結果として得られた混合物を150度まで加熱し、30分間にわたって撹拌下に保持した。結果として得られたスラリーを室温まで冷却すると、可塑性および硬度(20ショアDまたはそれ以上)を兼ね備えた特性を有するグリーンボディが得られた。当該グリーンボディを切り刻み、3Dプリントで使用されるフィラメントを生成する押出機に供給した。Sm、La、Dyの含有量がそれぞれ5%、10%および30%の他の希土類についてこの工程を繰り返すと、同じ良い結果が得られた。ドープされていない酸化セリウムを用いても良い結果が得られた。
【0045】
[実施例6:炭化チタンおよび炭化ケイ素の含有量が85%のスラリーの取得]
【0046】
メタノールと2-ペンタノンとの相対比率が1:1の混合物で炭化チタン(重量比率40%)の懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、ゲル化剤:セラミックの重量比率が1:9となるようメチルセルロースを添加し、均質化されるまで15分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ樹脂として、バインダ:セラミックの重量比率が1:4となるようポリビニルブチラールを添加し、可塑剤として、可塑剤:セラミックの重量比率が1:8となるようフタル酸ジブチルを添加し、これらと共に、(ワックス:セラミックの重量比率が1:75となるよう)少量のパラフィンワックスを添加した。結果として得られた混合物を室温まで冷却すすると、可塑性および硬度(50ショアD)を兼ね備えた特性を有するグリーンボディが得られた。当該グリーンボディを切り刻み、3Dプリント工程で使用されるフィラメントを生成する押出機に供給した。別の同様の実施例によると、炭化チタンを炭化ケイ素に置き換えると、同じ良い結果が得られた。
【0047】
[実施例7:粘土含有量が80%のスラリーの取得] ブタノールと2-ブタノンとの比率が2:3の混合物で予備乾燥させた赤土(重量比率60%)の懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、ゲル化剤:セラミックの重量比率が1:8となるようプロピレングリコールを添加し、均質化されるまで30分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ樹脂として(バインダ:セラミックの重量比率が1:4となるよう)ポリ酢酸ビニル(PVA)を添加し、可塑剤として(可塑剤:セラミックの重量比率が1:8となるよう)50%のフタル酸ジブチルとPEG400との混合物を添加し、これらと共に、(ワックス:セラミックの重量比率が1:36となるよう)少量のパラフィンワックスを添加し、撹拌しながら70度まで加熱した。粘土の場合は特別である。なぜなら、高温で溶媒を除去して得られる予備形状セラミックは、成形することも、フィラメントの形態でその後の押出し工程を行うこともできないと分かったからである。結果として得られたスラリーを室温まで冷却して、高い可塑性および硬度(30ショアDまたはそれ以上)を兼ね備えた特性を有するグリーンボディが得られた。当該グリーンボディを切り刻み、3Dプリントで使用されるフィラメントを生成する押出機に供給した。ゲル化剤として、プロピレングリコールをエチレンジアミンに置き換えて当該方法を繰り返すと、同じ結果が得られた。
【0048】
[実施例8:ジルコニア(Zr0)配合量が80重量%のフィラメントの作製]
【0049】
40重量%のZr0をセラミック材料に用いて、プロピルアルコールと2-ブタノンとの相対比率が2:3の混合物で当該Zr0を溶解させたジルコニアの懸濁液を作製した。この混合物に、ゲル化剤として、セラミックに対する重量割合が1:9となるようエチレングリコールを添加して、均質化されるまで30分間にわたって磁気撹拌下に保持した。結果として得られたジェルに、バインダ樹脂として、セラミックの重量割合が1:5となるようポリビニルアルコール(Sigma Aldrich社)を添加し、可塑剤として、セラミックに対する割合が1:8となるようフタル酸ジブチルを添加し、これらと共に、(セラミックに対して1:75となるよう)少量のパラフィンワックスを添加し、30分間にわたって撹拌しながら150度まで加熱した。結果として得られたスラリーを室温まで冷却すると、可塑性および硬度(40ショアD)の高いグリーンボディが得られた。ジルコニアをY0.08Zr0.921.96イットリア安定化ジルコニアに置き換えて当該方法を繰り返すと、同じ良い結果が得られた。
【0050】
[実施例9:試験に成功した組成物および条件の要約表]
【表1】
【0051】
[実施例10:前述の実施例で得られたスラリーからの固体片の取得]上記の実施例1で得られたスラリーの冷却後に得られたグリーンボディを切り刻み、ホッパーで押出機に供給すると、セラミック配合量が90%のフィラメントが得られた。この工程は、4時間/Kgの速さで70度にて実行された。結果として得られたフィラメントの直径は、押出機のノズルに応じて、1.75mmおよび3.0mmであった。長さ10mmのフィラメント片の熱処理を最大1600度で行うと、収縮率が10%よりも低い状態で断片の形状および寸法が維持された。 200度で6時間にわたる前処理を行ってから、それよりも高い押出し温度で加熱するという処理を経た断片については、最良の結果が得られた。
【0052】
[実施例11:当該断片の試験]実施例1および実施例10で得られたフィラメントを、一辺10mmのキューブとなるよう、市販の3D FDMプリンタ(Prusa Kit)に供給した。280度の温度でプリントを実行した。キューブの焼結工程を1500度で24時間行うと、所定の寸法を有するキューブが得られた。結果として得られた断片は、3つの寸法の各々の収縮率が5%より低い状態で元のキューブの寸法および形状を保持した。
【0053】
円盤、リングおよび円筒の形状を用いて同様の工程を実行した。繰り返しになるが、プリンタに供給されたフィラメントを変形させて設計物にした。焼結工程の後、当該設計物は、収縮率が5%よりも低い状態で形状および微細構造を保持した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた微細構造の研究によると、焼結後に3Dプリントで得られた断片は、同じ条件下で粉末成形および焼結により得られた断片と比べて、粒子サイズおよび多孔度の著しい変化が全く見られなかった。
【0054】
実施例4から実施例9で説明した工程から得られたフィラメントを用いて、焼結温度を0.75Tとして同じ工程を繰り返すと、グリーンボディの断片に対して収縮率が15%よりも低い安定した断片が得られた。