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特許7056858新規な組換え型二機能性融合タンパク質、その調製方法および用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】新規な組換え型二機能性融合タンパク質、その調製方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220412BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220412BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220412BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K38/17 100
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K47/68
C12P21/08
C07K16/28
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019542396
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 CN2018079187
(87)【国際公開番号】W WO2018166507
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】201710151979.6
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517342693
【氏名又は名称】イミューンオンコ バイオファーマシューティカルズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、ウェンジ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ソン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/022971(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024021(WO,A1)
【文献】特表2016-514676(JP,A)
【文献】Clin Cancer Res, 2016 Apr 28, vol. 22, no. 20, pp. 5109-5119
【文献】mAbs, 2015.08.26, vol. 7, no. 5, pp. 946-956
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え型二機能性融合タンパク質であって、
CD20に特異的に結合する抗体または抗体フラグメント、および
CD47に特異的に結合するペプチド、
を含み、
前記CD20に特異的に結合する前記抗体または前記抗体フラグメントは、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む重鎖、および配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む軽鎖を備え、
前記CD47に特異的に結合する前記ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を有し、
前記CD47に特異的に結合する前記ペプチドは前記抗体または前記抗体フラグメントの前記重鎖のN末端またはC末端に結合している、
組換え型二機能性融合タンパク質。
【請求項2】
前記抗体は、リツキシマブである、請求項1に記載の組換え型二機能性融合タンパク質。
【請求項3】
前記CD47に特異的に結合する前記ペプチドは前記CD20に特異的に結合する前記抗体または前記抗体フラグメントの前記重鎖のN末端に結合している、請求項1または2に記載の組換え型二機能性融合タンパク質。
【請求項4】
前記CD47に特異的に結合する前記ペプチドは前記CD20に特異的に結合する前記抗体または前記抗体フラグメントの前記重鎖のC末端に結合している、請求項1または2に記載の組換え型二機能性融合タンパク質。
【請求項5】
前記CD20に特異的に結合する前記抗体または前記抗体フラグメントの前記重鎖および前記軽鎖は、i)それぞれ、配列番号3および4、または、ii)それぞれ、配列番号13および10のアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組換え型二機能性融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組換え型二機能性融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項に記載のポリヌクレオチドを含むベクタ。
【請求項8】
請求項に記載のベクタを含有する、遺伝子操作された宿主細胞。
【請求項9】
ゲノムに、請求項6に記載のポリヌクレオチドが組込まれた、遺伝子操作された宿主細胞。
【請求項10】
医薬組成物であって、
(i)請求項1から5のいずれか一項に記載の組換え型二機能性融合タンパク質、および
(ii)薬学的に許容されるキャリア
を含有する医薬組成物。
【請求項11】
CD20タンパク質を発現する腫瘍を処置するために用いる、請求項1から5のいずれか一項に記載の組換え型二機能性融合タンパク質
【請求項12】
前記CD20タンパク質を発現する前記腫瘍は、胃がん、肝臓がん、白血病、腎臓がん、肺がん、小腸がん、骨腫瘍、前立腺がん、直腸結腸がん、乳がん、大腸がん、前立腺がん、子宮頸がん、副腎がん、および膀胱がんからなる群から選択される、請求項11に記載の組換え型二機能性融合タンパク質
【請求項13】
組換え型二機能性融合タンパク質を製造する方法であって、
(a)請求項8または9に記載の遺伝子操作された宿主細胞をタンパク質の発現に適した条件下で培養すること、
(b)請求項1から5のいずれか一項に記載の組換え型二機能性融合タンパク質を培養物から単離すること、
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組換え型二機能性融合タンパク質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬の分野に属し、特に新規な組換え型二機能性融合タンパク質、その調製方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
CD20は、Bリンパ球膜の表面に発現する膜貫通タンパク質であり、その生物学的機能はいまだに不明であり、カルシウムイオンチャネルとしてB細胞の免疫反応を促進する可能性がある。CD20は、初期細胞と形質細胞を除くすべての発生段階におけるB細胞膜に発現する。同時に、CD20は、Bリンパ腫、慢性Bリンパ球性白血病、有毛細胞白血病、およびメラノーマ幹細胞にも発現する。市販が承認されている、CD20に対するモノクローナル抗体薬としては、リツキシマブ(Rituximab)、オブリンムマブ(Obinutuzumab)、オファツムマブ(Ofatumumab)がある。これらの抗体薬の作用機序はいずれもADCCとCDCによるものである。しかしながら、臨床治療の過程において、何人かの患者は、一定期間の治療を受けた後にCD20が細胞から剥離するように誘導し、それによって抗体薬に対する感受性を失い得ることが分かった。一方、何人かの患者は、低親和性遺伝子型(158F)Fcgamma受容体(FcγRIIIA-158F)を発現し、リツキシマブに対しても耐性を有した。したがって、リツキシマブに対する患者の耐性をいかにして克服するかは、抗体医薬品の研究開発の分野において話題となっている。
【0003】
CD47は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通糖タンパク質でもあり、赤血球を含むほぼすべての細胞表面に発現する。CD47のリガンドには、接着因子(integrins)、トロンボスポンジン-1(thrombospondin-1)、およびシグナル調節タンパク質(SIRPs)が含まれる。CD47は、細胞遊走、T細胞、樹状細胞活性化、軸索発達などを含む様々な生物学的機能を有する。さらに、CD47は、SIRPαと相互作用することによりマクロファージの食作用を阻害することができる。このように、CD47は、いわゆる「Don't eat me」というシグナルを伝達し、血液細胞などの正常な細胞がマクロファージによって貪食されるのを防ぐことができる。
【0004】
研究により示されたように、正常組織細胞がCD47を発現する他、多くの腫瘍細胞は、CD47を過剰発現し、マクロファージ表面のSIRPαに結合することによってマクロファージが腫瘍細胞を貪食することを防止する。これは、腫瘍が生体の免疫監視を回避するメカニズムの一つだと考えられる。CD47の発現が高い腫瘍には、急性骨髄性白血病細胞(AML)、慢性骨髄性白血病細胞(CML)、急性リンパ芽球性白血病細胞(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、乳癌、膵臓癌などがある。
【0005】
研究により示されたように、CD47-SIRPα結合活性を遮断するCD47-特異的抗体を腫瘍担持マウスに注射すると、マウスにおける腫瘍増殖を有意に阻害した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規な組換え型二機能性融合タンパク質、その調製方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、組換え型二機能性融合タンパク質が提供される。上記組換え型二機能性融合タンパク質は、以下を含む:
第1の結合構造ドメイン(D1);および
第2の結合構造ドメイン(D2)。
【0008】
前記第1の結合構造ドメインは標的分子CD20タンパク質に特異的に結合する。
【0009】
第2の結合構造ドメインは標的分子CD47タンパク質に特異的に結合する。
【0010】
別の好ましい実施形態では、前記D1はCD20タンパク質に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントである。
【0011】
別の好ましい実施形態では、前記D2はCD47タンパク質に特異的に結合するポリペプチドフラグメントであり、前記ポリペプチドフラグメントがSIRPαに由来する。
【0012】
別の好ましい実施形態では、前記D1および前記D2はリンカーペプチドによって連結され、好ましくは、前記リンカーペプチドは抗体定常領域配列を含む。
【0013】
別の好ましい実施形態では、前記D1および前記D2はリンカーペプチドによって連結され、好ましくは、前記リンカーペプチドは抗体可変領域配列を含む。
【0014】
別の好ましい実施形態では、D1は抗CD20モノクローナル抗体であり、D2はヒトSIRPα膜の外側における第1の機能領域(SIRPα/ドメイン1、SD1)であり、D2はD1の重鎖定常領域の末端に連結される。
【0015】
別の好ましい実施形態では、D1は抗CD20モノクローナル抗体であり、D2はヒトSIRPα膜の外側における第1の機能領域(SIRPα/ドメイン1、SD1)であり、D2はD1の重鎖可変領域の先端に連結される。
【0016】
別の好ましい実施形態では、上記抗CD20モノクローナル抗体は、SEQ ID NO.5に示す重鎖可変領域およびSEQ ID NO.7に示す軽鎖可変領域を含む。
【0017】
別の好ましい実施形態では、D2のアミノ酸配列はSEQ ID NO.9に示されている。
【0018】
別の好ましい実施形態では、上記組換え型二機能性融合タンパク質はホモ二量体である。
【0019】
別の好ましい実施形態では、上記抗CD20モノクローナル抗体は、ジスルフィド結合によって結合された4本のポリペプチド鎖(2本の重鎖と2本の軽鎖)を含み、D2は上記抗CD20モノクローナル抗体の重鎖のC端またはN端に結合する。
【0020】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様に係る組換え型二機能性融合タンパク質をコーディングするポリヌクレオチドが提供される。
【0021】
本発明の第3の態様において、本発明の第2の態様に係るポリヌクレオチドを含むベクタが提供される。
【0022】
別の好ましい実施形態では、上記ベクタは、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、アデノウイルスなどの哺乳動物細胞ウイルス、レトロウイルス、または他のベクタを含む。
【0023】
本発明の第4の態様において、本発明の第3の態様に係るベクタを含むか、またはゲノムにおいて本発明の第2の態様に係るポリヌクレオチドと一体化した、遺伝子操作された宿主細胞が提供される。
【0024】
本発明の第5の態様において、免疫複合体が提供される。この免疫複合体は以下を含む:
(a)本発明の第1の態様に係る組換え型二機能性融合タンパク質;および
(b)検出可能な標識、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、または酵素からなる群から選択されるカップリング部分。
【0025】
別の好ましい実施形態では、上記カップリング部分は、蛍光または発光標識、放射性標識、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(コンピュータX線断層撮影)の造影剤からなる群から選択されるか、または検測可能な産物を生成できる酵素、放射性核種、生物毒素、サイトカイン(IL-2など)、抗体、抗体Fcフラグメント、抗体scFvフラグメント、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ磁性粒子、プロドラッグ活性化酵素(例えば、DT-ジアホラーゼ(DTD)またはビフェニルヒドロラーゼ様タンパク質(BPHL))、化学療法剤(例えば、シスプラチン)、または任意の形態のナノ粒子などから選択される。
【0026】
本発明の第6の態様において、以下を含む医薬組成物が提供される。
(i)本発明の第1の態様に係る組換え型二機能性融合タンパク質、または本発明の第5の態様に係る免疫複合体;および
(ii)薬学的に許容されるキャリア
【0027】
別の好ましい実施形態では、上記医薬組成物は注射剤の形態である。
【0028】
別の好ましい実施形態では、上記医薬組成物は腫瘍を治療するための医薬を調製するためのものであり、好ましくは上記腫瘍は胃癌、肝臓癌、白血病、腎臓癌、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結腸直腸癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、子宮頸癌、副腎腫瘍、または膀胱腫瘍からなる群から選択される。
【0029】
本発明の第7の態様において、薬品を調製するための、本発明の第1の態様に係る組換え型二機能性融合タンパク質、または本発明の第5の態様に係る免疫複合体の用途が提供される。上記薬品は、CD20タンパク質を発現する腫瘍を治療または予防するためである。
【0030】
別の好ましい実施形態では、上記腫瘍は、胃癌、リンパ腫、肝臓癌、白血病、腎臓癌、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結腸直腸癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、または副腎腫瘍を含む。
【0031】
本発明の第8の態様において、組換え型二機能性融合タンパク質を調製するための方法が提供される。この方法は以下を含む:
(a)発現に適した条件下で本発明の第4の態様に係る宿主細胞を培養すること;および
(b)本発明の第1の態様に係る組換え型二機能性融合タンパク質を培養物から単離すること。
【0032】
本発明の第9の態様において、腫瘍を治療する方法が提供される。上記方法は、それを必要とする対象に本発明の第1の態様に係る組換え型二機能性融合タンパク質または本発明の第5の態様に係る免疫複合体を投与する工程を含む。
【0033】
本発明の範囲内で、本発明の上記各技術的特徴および以下(実施形態など)に具体的に説明される各技術的特徴を互いに組み合わせて、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることを理解すべきである。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返しない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】CD20mAb-SD1タンパク質の構造および作用様式を示す。
図2】SD1-CD20mAbタンパク質の構造および作用様式を示す。
図3A】CD20mAb-SD1ヌクレオチド配列を示し、図3Aは重鎖ヌクレオチド配列である。
図3B】CD20mAb-SD1ヌクレオチド配列を示し、図3Bは軽鎖ヌクレオチド配列である。
図3C】SD1-CD20mAbのヌクレオチド配列を示し、図3Cは重鎖ヌクレオチド配列である。
図3D】SD1-CD20mAbのヌクレオチド配列を示し、図3Dは軽鎖ヌクレオチド配列である。
図4A】CD20mAb-SD1アミノ酸配列を示し、図4Aは重鎖アミノ酸配列である。
図4B】CD20mAb-SD1アミノ酸配列を示し、図4Bは軽鎖アミノ酸配列である。
図4C】SD1-CD20mAbアミノ酸配列を示し、図4Cは重鎖アミノ酸配列である。
図4D】SD1-CD20mAbアミノ酸配列を示し、図4Dは軽鎖アミノ酸配列である。
図5A】SEC-HPLC分析を示し、図5AはCD20mAb-SD1のSEC-HPLCの分析結果を示す。
図5B】SEC-HPLC分析を示し、図5BはSD1-CD20mAbのSEC-HPLCの分析結果を示す。
図6AB】標的の親和性活性を示し、図6Aおよび6BはCD20標的に対する親和性活性を示す。
図6CD】標的の親和性活性を示し、図6Cおよび6DはCD47標的に対する親和性活性を示す。
図7】CD47標的の競合的結合活性を示す。
図8】ADCCおよびCDCの活性分析を示し、AおよびBはADCCの活性を示し、CおよびDはCDCの活性を示す。
図9】マクロファージの食作用活性の促進を示す。
図10A】インビボ抗腫瘍活性を示し、図10AはCD20mAb-SD1のインビボ抗腫瘍活性を示す。
図10B】インビボ抗腫瘍活性を示し、図10BはCD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbのインビボ抗腫瘍活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者らは、鋭意研究の結果、意外にも遺伝子組換え型二機能性融合タンパク質(CD20mAb-SD1)を取得し、抗ヒトCD20モノクローナル抗体とヒトSIRPα膜の外側における第1の機能領域(SIRPα-Domain 1,SD1)が直列に接続されることにより構成される。CD20mAb-SD1はホモ二量体に属し、180kDaの分子量を有する。細胞株をスクリーニングした後、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を用いてこのタンパク質の安定発現細胞株を調製し、発酵培養により500mgのタンパク質を調製した。インビトロ実験により確認されたように、このタンパク質は、ヒトCD20およびヒトCD47の両方に同時に結合し、抗体依存性細胞傷害(Antibody-Dependent Cell Cytotoxicity,ADCC)および補体依存性細胞傷害(Complement-Dependent Cytotoxicity,CDC)の活性を介して、CD20陽性腫瘍細胞に対する治療効果を発揮し、そしてCD47とSIRPαとの結合を遮断し、それによって腫瘍細胞を攻撃するようにマクロファージを活性化することができる。ヒトリンパ腫モデルによるインビボ薬力学実験により確認されたように、CD20Ab-SD1は有意な抗腫瘍活性を有し、CD20mAb-SD1で治療されたマウスの生存率は100%であり、一方、単にリツキシマブで治療されたマウスの生存率はわずか67%であった。したがって、本発明に係るCD20mAb-SD1は、リツキシマブに対して無効または耐性であるB細胞リンパ腫およびBリンパ球性白血病患者を治療するための優れた治療効果を有する抗腫瘍薬として開発されることができる。
【0036】
本発明を具体的に説明する前に、本発明は記載された特定の方法および実験条件に限定されず、そのような方法および条件は変化し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することを目的としており、限定を意図するものではないこともまた理解すべきである。本発明の範囲は添付した特許請求の範囲のみによって限定されるべきである。
【0037】
本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、他に定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用されるとき、特定の列挙された値に関して使用されるとき、用語「約」は、その値が列挙された値から1%以下だけ変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用されるとき、表現「約100」は、99から101との間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0038】
本発明に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を本明細書に例示する。
【0039】
SIRPα
シグナル調節タンパク質α(signal regulatory protein α, SIRPα)は、SH2ドメインのタンパク質チロシンホスファターゼ基質1とも呼ばれて、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜貫通タンパク質に属する。SIRPαはCD47に対する重要な表面受容体であり、CD47-SIRPαシグナル伝達経路は免疫系において負の調節的役割を有する。
【0040】
好ましい実施形態では、上記SIRPα膜の外側における第1の機能的領域(SIRPα-Domain 1, SD1)のアミノ酸配列は以下の通りである:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISAITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSAPVVSGPAARATPQH (SEQ ID NO.9)。
【0041】
抗CD20抗体
CD20はBリンパ球膜の表面に発現する膜貫通タンパク質である。CD20は、初期細胞と形質細胞を除くすべての発生段階でB細胞膜に発現する。同時に、CD20は、Bリンパ腫、慢性Bリンパ球性白血病、有毛細胞白血病、およびメラノーマ幹細胞にも発現する。市販が承認されている、CD20に対するモノクローナル抗体薬としては、リツキシマブ(Rituximab)、オブリンムマブ(Obinutuzumab)、オファツムマブ(Ofatumumab)がある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、本発明の遺伝子組換え型二機能性融合タンパク質を調製するために使用される抗CD20抗体は、リツキシマブ(Rituximab)、オブリンムマブ(Obinutuzumab)、オファツムマブ(Ofatumumab)からなる群から選択される。
【0042】
本発明の他の好ましい実施形態では、上記抗CD20抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである:
QVQLQQPGAELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYNMHWVKQTPGRGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARSTYYGGDWYFNVWGAGTTVTVSA(SEQ ID NO.5);
【0043】
そのコーディングヌクレオチド配列は以下の通りである:
CAGGTCCAGCTGCAGCAGCCGGGCGCGGAGCTCGTGAAGCCGGGGGCCTCGGTCAAGATGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACGAGCTACAACATGCACTGGGTGAAGCAGACCCCGGGCCGGGGGCTGGAGTGGATCGGCGCCATCTACCCCGGGAACGGCGACACCAGCTACAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCGACCCTGACGGCGGACAAGTCGAGCAGCACCGCCTACATGCAGCTCAGCAGCCTGACCTCGGAGGACAGCGCCGTCTACTACTGCGCCCGGTCCACGTACTACGGCGGCGACTGGTACTTCAACGTCTGGGGGGCCGGCACGACCGTGACCGTGAGCGCG(SEQ ID NO.6)。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、上記抗CD20抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである:
QIVLSQSPAILSASPGEKVTMTCRASSSVSYIHWFQQKPGSSPKPWIYATSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQQWTSNPPTFGGGTKLEIK (SEQ ID NO.7);
【0045】
そのコーディングヌクレオチド配列は以下の通りである:
CAGATCGTGCTGAGCCAGTCGCCGGCCATCCTCAGCGCGAGCCCCGGCGAGAAGGTCACCATGACGTGCCGGGCCAGCAGCTCGGTGAGCTACATCCACTGGTTCCAGCAGAAGCCCGGGAGCAGCCCCAAGCCGTGGATCTACGCCACCAGCAACCTGGCCTCGGGCGTGCCCGTGCGCTTCAGCGGGAGCGGCAGCGGGACCAGCTACAGCCTGACCATCTCGCGGGTCGAGGCCGAGGACGCCGCCACCTACTACTGCCAGCAGTGGACCTCCAACCCGCCCACGTTCGGCGGCGGCACCAAGCTCGAGATCAAG (SEQ ID NO.8)。
【0046】
本発明の別の好ましい実施形態では、上記抗CD20抗体(CD20mAb-SD1)の重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列は以下の通りである:
QVQLQQPGAELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYNMHWVKQTPGRGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARSTYYGGDWYFNVWGAGTTVTVSAASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGEEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISAITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSAPVVSGPAARATPQH (SEQ ID NO.3);
【0047】
そのコーディングヌクレオチド配列は以下の通りである:
CAGGTCCAGCTGCAGCAGCCGGGCGCGGAGCTCGTGAAGCCGGGGGCCTCGGTCAAGATGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACGAGCTACAACATGCACTGGGTGAAGCAGACCCCGGGCCGGGGGCTGGAGTGGATCGGCGCCATCTACCCCGGGAACGGCGACACCAGCTACAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCGACCCTGACGGCGGACAAGTCGAGCAGCACCGCCTACATGCAGCTCAGCAGCCTGACCTCGGAGGACAGCGCCGTCTACTACTGCGCCCGGTCCACGTACTACGGCGGCGACTGGTACTTCAACGTCTGGGGGGCCGGCACGACCGTGACCGTGAGCGCGGCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTATGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACGCCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAAGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGCCGCAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAAGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATTCCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGCGAGGAGGAGCTGCAGGTGATTCAGCCTGACAAGTCCGTATCAGTTGCAGCTGGAGAGTCGGCCATTCTGCACTGCACTGTGACCTCCCTGATCCCTGTGGGGCCCATCCAGTGGTTCAGAGGAGCTGGACCAGCCCGGGAATTAATCTACAATCAAAAAGAAGGCCACTTCCCCCGGGTAACAACTGTTTCAGAGTCCACAAAGAGAGAAAACATGGACTTTTCCATCAGCATCAGTGCCATCACCCCAGCAGATGCCGGCACCTACTACTGTGTGAAGTTCCGGAAAGGGAGCCCTGACACGGAGTTTAAGTCTGGAGCAGGCACTGAGCTGTCTGTGCGTGCCAAACCCTCTGCCCCCGTGGTATCGGGCCCTGCGGCGAGGGCCACACCTCAGCACTGA(SEQ ID NO.1)。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態では、上記抗CD20抗体(CD20mAB-SD1)の軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列は以下の通りである:
QIVLSQSPAILSASPGEKVTMTCRASSSVSYIHWFQQKPGSSPKPWIYATSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQQWTSNPPTFGGGTKHELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (SEQ ID NO.4)。
【0049】
そのコーディングヌクレオチド配列は以下の通りである:
CAGATCGTGCTGAGCCAGTCGCCGGCCATCCTCAGCGCGAGCCCCGGCGAGAAGGTCACCATGACGTGCCGGGCCAGCAGCTCGGTGAGCTACATCCACTGGTTCCAGCAGAAGCCCGGGAGCAGCCCCAAGCCGTGGATCTACGCCACCAGCAACCTGGCCTCGGGCGTGCCCGTGCGCTTCAGCGGGAGCGGCAGCGGGACCAGCTACAGCCTGACCATCTCGCGGGTCGAGGCCGAGGACGCCGCCACCTACTACTGCCAGCAGTGGACCTCCAACCCGCCCACGTTCGGCGGCGGCACCAAGCACGAGCTGAAGCGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTAG(SEQ ID NO.2)。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態では、上記抗CD20抗体(SD1-CD20mAb)の重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列は以下の通りである:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISAITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSAPVVSGPAARATPQHGGGGSGGGGSQVQLQQPGAELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYNMHWVKQTPGRGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARSTYYGGDWYFNVWGAGTTVTVSAASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (SEQ ID NO.13);
【0051】
そのコーディングヌクレオチド配列は以下の通りである:
GAGGAGGAGCTGCAGGTGATTCAGCCTGACAAGTCCGTATCAGTTGCAGCTGGAGAGTCGGCCATTCTGCACTGCACTGTGACCTCCCTGATCCCTGTGGGGCCCATCCAGTGGTTCAGAGGAGCTGGACCAGCCCGGGAATTAATCTACAATCAAAAAGAAGGCCACTTCCCCCGGGTAACAACTGTTTCAGAGTCCACAAAGAGAGAAAACATGGACTTTTCCATCAGCATCAGTGCCATCACCCCAGCAGATGCCGGCACCTACTACTGTGTGAAGTTCCGGAAAGGGAGCCCTGACACGGAGTTTAAGTCTGGAGCAGGCACTGAGCTGTCTGTGCGTGCCAAACCCTCTGCCCCCGTGGTATCGGGCCCTGCGGCGAGGGCCACACCTCAGCACGGCGGCGGTGGGAGCGGCGGCGGGGGCTCGCAGGTCCAGCTGCAGCAGCCGGGCGCGGAGCTCGTGAAGCCGGGGGCCTCGGTCAAGATGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACGAGCTACAACATGCACTGGGTGAAGCAGACCCCGGGCCGGGGGCTGGAGTGGATCGGCGCCATCTACCCCGGGAACGGCGACACCAGCTACAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCGACCCTGACGGCGGACAAGTCGAGCAGCACCGCCTACATGCAGCTCAGCAGCCTGACCTCGGAGGACAGCGCCGTCTACTACTGCGCCCGGTCCACGTACTACGGCGGCGACTGGTACTTCAACGTCTGGGGGGCCGGCACGACCGTGACCGTGAGCGCGGCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTATGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACGCCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAAGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGCCGCAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAAGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATTCCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGCAAATGA (SEQ ID NO.11)。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態では、抗CD20抗体(SD1-CD20mAb)の軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列は以下の通りである。
QIVLSQSPAILSASPGEKVTMTCRASSSVSYIHWFQQKPGSSPKPWIYATSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQQWTSNPPTFGGGTKHELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (SEQ ID NO.10)。
【0053】
そのコーディングヌクレオチド配列は:
CAGATCGTGCTGAGCCAGTCGCCGGCCATCCTCAGCGCGAGCCCCGGCGAGAAGGTCACCATGACGTGCCGGGCCAGCAGCTCGGTGAGCTACATCCACTGGTTCCAGCAGAAGCCCGGGAGCAGCCCCAAGCCGTGGATCTACGCCACCAGCAACCTGGCCTCGGGCGTGCCCGTGCGCTTCAGCGGGAGCGGCAGCGGGACCAGCTACAGCCTGACCATCTCGCGGGTCGAGGCCGAGGACGCCGCCACCTACTACTGCCAGCAGTGGACCTCCAACCCGCCCACGTTCGGCGGCGGCACCAAGCACGAGCTGAAGCGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTAG(SEQ ID NO.12)。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、上記抗CD20抗体は、単鎖抗体であり、その重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間に、必要におじてリンカーペプチドを有する。上記リンカーペプチドの長さは、好ましくは1~15個のアミノ酸、より好ましくは3~10個のアミノ酸である。
【0055】
二機能性融合タンパク質CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAb
本発明者らは、驚くべきことに、以下のことを見出した:本発明に従って構築された二機能性融合タンパク質(特異的に結合された標的分子CD20タンパク質の結合構造ドメインと特異的に結合された標的分子CD47タンパク質の結合構造ドメインを含む。)は、CD20陽性腫瘍に対して有意な抑制効果を有し、リツキシマブによるCD20陽性腫瘍への治療効果を強化し、リツキシマブに対して抵抗性を発生するCD20陽性腫瘍を治療し、リツキシマブの増感剤として使用することができる。
【0056】
したがって、本発明は、第1の結合構造ドメイン(本明細書では「D1」とも呼ばれる)および第2の結合構造ドメイン(本明細書では「D2」とも呼ばれる)を含む組換え型二機能性融合タンパク質を提供する。そのうち、D1は標的分子CD20タンパク質に特異的に結合し、D2は標的分子CD47タンパク質に特異的に結合する。
【0057】
本発明によれば、組換え型二機能性融合タンパク質は、単一の多機能性ポリペプチドであってよく、または互いに共有結合または非共有結合している2つ以上のポリペプチドの多量体複合体であってよい。本開示から明らかになるように、CD20分子およびCD47分子に同時に結合する能力を有するいずれの結合構築物も組換え型二機能性融合タンパク質と見なされる。
【0058】
当業者には理解されるように、本発明に係る任意の組換え型二機能性融合タンパク質またはその変異体は、標準的な分子生物学的技術(例えば、組換えDNAおよびタンパク質発現技術)を使用して構築することができる。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、上記特異的に結合された標的分子CD20タンパク質の結合構造ドメインは、抗CD20抗体であり、SEQ ID NO.5に示す重鎖可変領域およびSEQ ID NO.7に示す抗軽鎖可変領域を含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、上記特異的に結合された標的分子CD47タンパク質の結合構造ドメインは、上記SIRPαに由来し、好ましくはSIRPα膜の外側における第1の機能領域である。
【0061】
本発明の別の好ましい実施形態では、上記組換え型二機能性融合タンパク質において、D2はD1のC端またはN端に連結されており、その連結の方式としては、頭-頭の連結、頭-尾の連結、尾-尾の連結またはその組み合わせであり得る。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、上記抗CD20モノクローナル抗体(CD20mAb-SD1)は、ジスルフィド結合によって結合された4本のポリペプチド鎖(2本の重鎖と2本の軽鎖)を含む。D2は、上記抗CD20モノクローナル抗体の重鎖のC末端に結合し、好ましくは重鎖とD2との結合によって形成されたポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO.3に示されて、そのコードされたポリヌクレオチド配列がSEQ ID NO.1に示される。軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.4に示されて、そのコードされたポリヌクレオチド配列がSEQ ID NO.2に示される。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、上記抗CD20モノクローナル抗体(SD1-CD20mAb)は、ジスルフィド結合によって結合された4本のポリペプチド鎖(2本の重鎖および2本の軽鎖)を含む。D2は、上記抗CD20モノクローナル抗体の重鎖N末端に連結されて、好ましくは、重鎖とD2との結合によって形成されたポリペプチドのアミノ酸配列がSEQ ID NO.13に示されて、そのコードされたポリヌクレオチド配列がSEQ ID NO.11に示される。軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.10に示されて、そのコードされたポリヌクレオチド配列がSEQ ID NO.12に示される。
【0064】
結合構造ドメイン
本発明に係る組換え型二機能性融合タンパク質は、少なくとも2つの独立した結合構造ドメイン(D1およびD2)を含む。本明細書中で使用される場合、表現「結合構造ドメイン」は、特定目的のタンパク質に特異的に結合できる任意のペプチド、ポリペプチド、核酸分子、足場分子、ペプチドディスプレイ分子またはポリペプチド含有構築物を意味する。
【0065】
本明細書中で使用される場合、用語「特異的に結合する」などは、抗原結合構造ドメインが500pM以下の解離定数(KD)を特徴とする特定の抗原と複合体を形成し、通常の試験条件下で他の無関係のタンパク質に結合しないことを意味する。好ましくは、「無関係のタンパク質」は、互いに95%未満のアミノ酸同一性を有するタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドである。
【0066】
本発明の文脈において使用可能な抗原結合構造ドメインの例示的な分類は以下を含む:抗体、抗体の抗原結合部分、特定の抗原と特異的に相互作用するペプチド(例えば、ペプチボディ(peptibody))、特定の抗原と特異的に相互作用する受容体分子、特定の抗原に特異的に結合された受容体のリガンド結合部分を含むタンパク質、抗原結合足場(例えば、DARPin、HEATリピートタンパク質、ARMリピートタンパク質、三角テトラペプチドリピートタンパク質、および天然存在的反復配列タンパク質に基づく他の足場など[例えば、Boersma and Pluckthun、2011、Curr。Opin。Biotechnol。22:849-857、およびその中に引用されている参考文献を参照のこと)およびそのアプタマーまたは他の部分。
【0067】
2つの分子が互いに特異的に結合しているかどうかを決定するための方法は当技術分野において周知であり、例えば平衡透析法、表面プラズモン共鳴法などを含む。例えば、本発明の文脈において使用される場合、抗原結合構造ドメインは、表面プラズモン共鳴測定法により測定される場合、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約5pM未満、約4pM未満、約2pM未満、約1pM未満、約0.5pM未満、約0.2pM未満、約0.1pM未満、または約0.05pM未満のKDで特定の抗原またはその一部のポリペプチドに結合する。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「表面プラズモン共鳴」とは、例えばBIAcore(商標)システム(GEHealthcareのBiacoreLifeSciences部署、Piscataway、NJ)を使用して、バイオセンサ-マトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによるリアルタイム相互作用の光学現象の分析をいう。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「KD」は、特定のタンパク質-タンパク質の相互作用(例えば、抗体-抗原の相互作用)の平衡解離定数を指す。他に示さない限り、本明細書に開示されるKD値は、25℃で表面プラズモン共鳴測定法によって決定されるKD値をいう。
【0070】
抗体および抗体の抗原結合フラグメント
上記のように、「抗原結合構造ドメイン」(D1および/またはD2)は、抗体または抗体の抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなり得る。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、特定の抗原(例えば、CD20タンパク質またはCD47タンパク質)に特異的に結合されるかまたはそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」は、4本のポリペプチド鎖(ジスルフィド結合によって相互連結された2本の重鎖(H)および2本の軽鎖(L))を含む免疫グロブリン分子およびそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つの構造ドメイン:CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(本明細書ではLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常ドメインは1つの構造ドメイン(C1)を含む。V領域およびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。それらの間には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保守的な領域が介在する。それぞれのVとVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順に配列された3つのCDRと4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の別の実施形態において、本発明の抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と同一であり得るか、または天然にもしくは人工的に改変され得る。2つ以上のCDRに対する並行分析に基づいて、アミノ酸コンセンサス配列を限定することができる。
【0071】
本発明に係る組換え型二機能性融合タンパク質のD1および/またはD2の成分は、インタクトな抗体分子の抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなってもよい。本明細書で使用されるように、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、抗原と特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素的に入手可能な合成または遺伝子改変のポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。任意の適切な標準的技術、例えば、タンパク質分解消化または関連操作でコードされた抗体可変ドメインおよび場合に応じる抗体定常ドメインのDNAの組換え遺伝子工程技術などを利用して、例えば、インンタクトな抗体分子から抗体の抗原結合フラグメントを派生させる。そのようなDNAは既知であるかおよび/または例えば商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む。)から容易に入手可能または合成可能なものである。上記DNAに対しては、配列測定を行うほか、化学的にまたは分子生物学的技術を使用することによって操作を行うことができる。例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを適切なレイアウトに整列させるか、またはコドンを導入して、システイン残基を生成して、アミノ酸を修飾、付加または削除などすることができる。
【0072】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては以下を含む:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab')フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような独立相補性決定領域(CDR))または拘束を受けるFR3-CDR3-FR4ペプチド。本明細書中で使用される場合、表現「抗原結合フラグメント」はまた、構造ドメイン特異的抗体、単一構造ドメイン抗体、構造ドメイン欠損抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ抗体、トリボディ抗体、テトラボディ抗体、ミニ抗体、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような他の工程化分子も包含する。
【0073】
抗体の抗原結合フラグメントは、一般に少なくとも一つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成を有し、典型的には、1つ以上のフレームワーク配列と隣接するか、またはリーディングフレームに適合する少なくとも1つのCDRを含む。V構造ドメインと会合したV構造ドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、V構造ドメインとV構造ドメインは、任意の適切な配置で互いに対向して配置されてよい。例えば、可変領域は二量体であってよく、V-V、V-VまたはV-V二量体を含んでよい。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VまたはV構造ドメインを含んでよい。
【0074】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有会合した少なくとも1つの可変ドメインを含んでよい。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に存在し得る可変ドメインと定常ドメインの非限定的な例示的なレイアウトは、以下を含む:(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii);)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-C。上記の例示的レイアウトのいずれかを含む、可変ドメインと定常ドメインのレイアウトのいずれにおいて、可変ドメインと定常ドメインは互いに直接接続されてもよく、または完全もしくは部分のヒンジ領域もしくファージョイント領域によって接続されてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間に柔軟または半柔軟な結合を形成する少なくとも2つ(例えば、5個、10個、15個、20個、40個、60個、またはそれ以上)のアミノ酸組成で構成することができる。さらに、抗原結合フラグメントは、上に列挙した任意の可変ドメインおよび定常ドメインのレイアウトを有する、互いにおよび/または1つ以上の単量体VまたはV構造ドメイン(例えば、ジスルフィド結合を介して)が非共有会合したホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことができる。
【0075】
本発明に係る組換え型二機能性融合タンパク質は、ヒト抗体および/または組換えヒト抗体もしくはそのフラグメントを含むか、またはそれらからなり得る。本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含む。しかしながら、ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされない(例えば、CDR、特にCDR3の中の)アミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム突然変異誘発または部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含んでよい。しかしながら、本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、他の哺乳動物種(マウスなど)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。
【0076】
本発明に係る組換え型二機能性融合タンパク質は、組換えヒト抗体またはその抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなってもよい。本明細書中で使用される場合、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製、発現、生成または単離される全てのヒト抗体を含む。例えば、宿主細胞(以下にさらに説明)にトランスフェクトされた組換え発現ベクタを用いて発現された抗体、組換えヒト抗体コンビナトリアルライブラリ(以下にさらに説明)から単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子にとってトランスジェニック動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えばTaylorら、(1992)Nucl.AcidsRes.20:6287~6295参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングする任意の他の手段によって調製、発現、生成または単離された抗体である。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロでの突然変異誘発を受け(または、ヒトIg配列にとってトランスジェニック動物を使用する場合は、インビボ体細胞の突然変異誘発を受け)る。したがって、組換え抗体のVおよびV領域におけるアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、それと関連するにもかかわらず、インビボのヒト抗体生殖系列ライブラリ内に天然には存在しない配列である可能性がある。
【0077】
腫瘍のターゲティング機能
本発明の別の方面において、組換え型二機能性融合タンパク質は腫瘍細胞をターゲティングするために使用されることができる。
【0078】
本発明に係る組換え型二機能性融合タンパク質は、薬物、毒素、放射性同位体、または細胞生存率に有害な他の物質にコンジュゲート(カップリング)することができる。あるいは、薬物または毒素は、細胞を直接殺すことがなく、細胞が他の外来物質により容易に攻撃されるようにする物質であってよい。腫瘍のターゲティング機能に関する他の実施形態では、本発明に係る組換え型二機能性融合タンパク質は、それ自体が薬物、毒素または放射性同位体にコンジュゲートすることがなく、他の抗腫瘍抗体などの他の抗原結合分子(本明細書において「協力分子」と呼ぶ)に合わせて投与される。
【0079】
本発明に係る腫瘍ターゲティングに関する特定の実施形態によれば、組換え型二機能性融合タンパク質(または協力抗体)は、以下の群から選択される1つまたは複数の細胞傷害薬にコンジュゲートすることができる:カリケアマイシン、エスクロモサス、メトトレキサ-ト、ドキソルビシン、メルファキシン、クロラムブシル、ARA-C、ビンデシン、マイトマイシンC、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン、5-フルオロウラシル、エストラムスチン、ビンクリスチン、エトポシド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ラトロタキセル、テシタスタット、オラタキセル(orataxel)、ドセタキセル、ドラスタチン10、アウリスタチンE、アウリスタチンPHE、およびメイタンシンベースの化合物(例、DM1、DM4など)。組換え型二機能性融合タンパク質(または協力抗体)は、さらにまたは選択的に、ジフテリア毒素、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)外毒素A、リシン毒性タンパク質A鎖、アカシア毒性タンパク質A鎖、アルファルファ根毒性タンパク質A鎖、α-ケルセチン、アブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、カーネーション毒性タンパク質、フィトラッカアメリカ-ナ(Phytolaca americana)タンパク質などの毒素にコンジュゲートされてもよい。組換え型二機能性融合タンパク質(または協力抗体)は、さらにまたは選択的に、225Ac、211At、212Bi、213Bi、186Rh、187Rh、177Lu、90Y、131I、67Cu、125I、123I、77Br、153Sm、166Ho、64Cu、121Pb、224Raおよび223Raからなる群から選択される1つ以上の放射性同位体にコンジュゲートされてもよい。したがって、本発明のこの態様は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)または抗体-放射性同位体コンジュゲート(ARC)である組換え型二機能性融合タンパク質を含む。
【0080】
医薬組成物および投与方法
本発明はさらに組成物を提供する。好ましい実施形態では、この組成物は、上記の抗体もしくはその活性フラグメントもしくはその融合タンパク質、または上記の組換え型二官能性融合タンパク質、および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物である。一般に、これらの物質は、毒性のない、不活性かつ薬学的に許容される水性キャリア媒体中に配合することができる。pHは、調製される物質の性質および治療されるべき病状によって変化することがあるが、通常約5~8、好ましくは約6~8である。調製された医薬組成物は、腫瘍内投与、腹腔内投与、静脈内投与、または局所投与を含むがこれらに限定されない従来の経路によって投与することができる。
【0081】
本発明に係る医薬組成物は、腫瘍の予防および治療に使用することができ、さらに、他の治療薬と同時に使用することもできる。
【0082】
本発明に係る医薬組成物は、安全かつ有効な量(例えば、0.001~99重量%、好ましくは0.01~90重量%、さらに好ましくは0.1~80重量%)の本発明に係る特異的結合分子(またはそのコンジュゲート)および薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含有する。そのようなキャリアとしては、食塩水、緩衝液、デキストロ-ス、水、グリセロ-ル、エタノ-ル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。医薬製剤は投与方法に適合させるべきである。本発明に係る医薬組成物は、注射剤の形態、例えば、生理食塩水またはグルコ-スおよび他の補助剤を含有する水溶液を用いて常法により調製することができる。注射剤や液剤などの医薬組成物は、無菌条件下で調製するのが好ましい。活性成分の投与量は、治療上有効な量、例えば1日当たり、約1マイクログラム/1キログラム体重~約5ミリグラム/1キログラム体重である。さらに、本発明に係るポリペプチドは他の治療薬と共に使用することもできる。
【0083】
医薬組成物が使用される場合、安全かつ有効な量の免疫複合体が哺乳動物に投与される。ここで、安全かつ有効な量は通常、少なくとも約10マイクログラム/1キログラム体重である。そして、ほとんどの場合は、約8ミリグラム/1キログラム体重以下である。好ましくは、この用量は、約10マイクログラム/1キログラム体重~約1ミリグラム/1キログラム体重である。もちろん、具体的な用量はまた、投与経路、患者の健康状況などの要因も考慮すべきである。これは、熟練した医師の能力範囲以内にあることである。
【0084】
材料と方法
【0085】
CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAb発現ベクタの構築およびタンパク質の製造
リツキシマブ重鎖コード配列のカルボキシ末端またはアミノ末端は、ヒトSIRPαの外側における第1の機能領域(SIRPαドメイン1、SD1)の遺伝子コード配列と連結し、配列の両端で2つのクローニング部位点(アミノ末端にあるHindIIIおよびカルボキシ末端にあるSalI)を付加することによって、CD20mAb-H-SD1またはSD1-CD20mAb-H遺伝子コード配列を形成した。次に、CD20mAb-H-SD1、SD1-CD20mAb-H遺伝子配列およびリツキシマブ軽鎖遺伝子コード配列(CD20mAb-L)を合成するために蘇州省心生物技術有限公司に委託し、合成した配列をpMac-HおよびpMac-L発現ベクタ(Macroimmune Inc.から購入)にそれぞれクローニングし、pMac-CD20mAb-H-SD1、pMac-SD1-CD20mAb-HおよびpMac-CD20mAb-L発現ベクタを形成した。
【0086】
pMac-CD20mAb-H-SD1またはpMac-SD1-CD20mAb-HベクタをそれぞれpMac-CD20mAb-L発現ベクタと一緒にCHO細胞(ATCCから購入)に同時トランスフェクトし、一連の圧力スクリーニングを行い、安定的にCD20mAb-SD1またはSD1-CD20mAbタンパク質を発現できるCHO細胞株を調製した。増幅培養の後、500mgのCD20mAb-SD1またはSD1-CD20mAbタンパク質を調製した。
【0087】
2、SEC-HPLC分析
1mgのCD20mAb-SD1またはSD1-CD20mAbタンパク質に対してSEC-HPLC分析を行った。
【0088】
標的結合活性(FACS):
2つの腫瘍細胞を用いて、CD20およびCD47に対するCD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbタンパク質の結合活性をそれぞれ鑑定し、それらを単一標的対照タンパク質と比較した。Jurkat細胞(CD20-CD47+)を用いてCD47の標的結合活性を分析し、Raji-CD47KO細胞(CD20+CD47-)を用いてCD20の標的結合活性を分析した。
【0089】
CD47標的競合結合活性(FACS)
異なる濃度のCD20mAb-SD1、SD1-CD20mAbタンパク質、陽性対照タンパク質SIRPα-Fcおよびリツキシマブを、それぞれ25nMビオチンにより標記されたSIRPα-Fc(Biotin-SIRPα-Fc)と混合し、室温で30分間インキュベートした。その後、混合物をJurkat細胞と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、蛍光により標記されたストレプトアビジン(FITC-Strep)と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、細胞を100μlの冷リン酸緩衝液(PBS)に懸濁した。最後に、フローサイトメトリー(FACS)を用いて、SIRPα-Fcと細胞との結合状況を分析した。
【0090】
5、ADCC
10/mlのRaji細胞またはCD47ノックアウトRaji細胞(Raji-CD47KO)(標的細胞)をそれぞれ1mMのCFSE(1:500)と混合し、37℃で30分間インキュベートし、10分ごとに1回均等に混合した。NK92MI-CD16a細胞(エフェクター細胞)の密度を6×10/mlに調節した。エフェクター細胞を標的細胞と2:1の比率で混合して、異なる濃度のCD20mAb-SD1、SD1-CD20mAb、陽性対照タンパク質であるリツキシマブ、および陰性対照タンパク質であるハーセプチン/トラスツズマブ(Herceptin/Trastuzumab)を添加し、37℃、5%CO2インキュベーター内で4時間インキュベートした。インキュベ-ションが完了後に、細胞培養プレ-トを室温で10分間静置し、室温に平衡化した後、20μlのPI(ヨウ化プロピオン酸、Propodium Iodide)色素(最終濃度5μg/ml)を各ウェルに添加し、ロ-ガンで吹いたり打ったりすることによって均等に混合した後、FACS分析技術によって異なるタンパク質濃度における細胞PI染色の陽性率を分析し、以下の式に従ってADCC活性を計算した:
%Lysis=(Sample%PI Positive Cell-No Antibody %PI Positive Cell)/(100-No Antibody %PI Positive Cell)*100。
【0091】
最後に、GraphPad Prismソフトウェアを用いてLysis%と濃度との関係をプロットした。
【0092】
6、CDC
第1の実験では、Raji細胞(標的細胞)を、それぞれ異なる濃度のCD20mAb-SD1、陽性対照タンパク質であるリツキシマブ(Rituximab)、および陰性対照タンパク質であるハーセプチン(Herceptin)と混合しました。第2の実験では、Raji細胞(標的細胞)を、それぞれ異なる濃度のCD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbと混合した。次いで一定濃度のウサギ補体を上記混合系に添加し、37℃で、細胞を5%CO2インキュベーター中で4時間インキュベートした。インキュベ-ションが完了後、細胞培養プレ-トを室温で10分間静置し、室温に平衡化した後、20μlのPI(ヨウ化プロピオン酸)色素(最終濃度5μg/ml)を各ウェルに添加し、ロ-ガンで吹いたり打ったりすることによって均等に混合した後、FACS分析技術によって異なるタンパク質濃度における細胞PI染色の陽性率を分析し、以下の式に従ってCDC活性を計算した:
Lysis%=Experimental Sample Lysis%-No Antibody Lysis%
【0093】
最後に、GraphPad Prismソフトウェアを用いてLysis%と濃度との関係をプロットした。
【0094】
7、食作用活性
マウスマクロファージ(Ana-1)を96ウェル細胞培養プレ-トに1ウェルあたり1×10細胞で添加し、細胞を細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO2)に置いて16~18時間培養した。CFSEにより標記された標的細胞(HL-60)を、それぞれ異なる濃度のCD20mAb-SD1、SD1-CD20mAb、陽性対照タンパク質であるSIRPaD1-Fc、および陰性対照タンパク質であるリツキシマブと混合し、37℃、5%CO2の条件下で45分間インキュベートした後、マクロファージ(Ana-1)を含む培養プレ-トに細胞を移し、同じ条件下で2時間培養を続け、培養プレ-トを取り出し、懸濁した標的細胞を洗い流し、マクロファージを集め、FACSを用いてマクロファージのCFSE蛍光強度を分析した。
【0095】
8、インビボ抗腫瘍薬効果試験
第1の実験では、Raji細胞インサイチュ腫瘍モデルを用いて、CD20mAb-SD1のインビボ抗腫瘍活性を研究した。30匹の免疫不全マウスの尾静脈にLaji細胞を注射し、各マウスに5×10細胞を注射し、注射後の翌日にマウスをランダムに5つのグループに分け、1番目のグループでPBSを腹腔内注射し、2番目のグループでCD20mAb-SD1(5mg/kg)を腹腔内注射し、3番目のグループでSD1-Fc(2.5mg/kg)を腹腔内注射し、4番目のグループでリツキシマブ(2.5mg/kg)を腹腔内注射し、5番目のグループでSD1-Fcおよびリツキシマブ(2.5+2.5mg/kg)を腹腔内注射した。週に一回、5回投与した。マウスの状態を毎日観察し、体重を測定した。
【0096】
第2の実験では、Raji細胞皮下腫瘍モデルを用いて、CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbのインビボ抗腫瘍活性を比較して研究した。40匹の免疫不全マウスにRaji細胞を皮下接種し、各マウスに6×10の細胞を接種し、腫瘍容積が約120mm3となった時、ランダムに5つのグループに分け、1グループに8匹のマウスがいる。1番目のグループでPBSを腹腔内注射し、2番目のグループでADCC増強リツキシマブ(Rituximab-ADCC+)(2.5mg/kg)を腹腔内注射し、3番目のグループでCD20mAb-SD1(5mg/kg)を腹腔内注射し、4番目のグループでSD1-CD20mAb(5mg/kg)を腹腔内注射し、5番目のグループでリツキシマブおよびSIRPaD1-Fc(3+3mg/kg)を腹腔内注射した。週1回、5回連続投与した。治療期間中、動物の体重と腫瘍の大きさを週に2回測定し、臨床症状を毎日記録し、測定の28日後にすべての動物を屠殺し、腫瘍を摘出し、腫瘍の重量を測定して撮影した。
【0097】
本発明の主な利点は以下の通りである:
【0098】
(1)本発明により設計された組換え型二機能性融合タンパク質(CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAb)は有意な抗腫瘍活性を有し、その腫瘍抑制効果が単一のリツキシマブによる治療よりも著しく高く、2つの単一標的点(リツキシマブおよびSIRPaD1-Fc)薬の複合治療効果よりもはるかに優れている。
【0099】
(2)本発明により設計された組換え型二重機能融合タンパク質SD1-CD20mAbの腫瘍抑制効果は、CD20mAb-SD1の治療効果よりも有意に優れている。
【0100】
(3)本発明の組換え型二機能性融合タンパク質(CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAb)は、リツキシマブに対して無効または耐性が出ている腫瘍患者を治療するために使用することができる。
【0101】
本発明は、具体的な実施例を参照して以下にさらに詳細に説明する。それらの実施例は、本発明を説明するためだけであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。以下の実施例において詳細な条件が示されていない実験方法は、一般に、Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)などに記載の条件のような従来の条件に従って、または製造業者によって推薦される条件に従って行われる。他に特定されない限り、百分率および部数は重量ベ-スで計算される。以下の実施例で使用される実験材料および試薬は、他に特別な説明がなければ、市販の供給元から入手可能である。
【0102】
実施例1 CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAb発現ベクタ構築
CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbのタンパク質構造は、図1および図2に示すように、それぞれ1本の重鎖遺伝子および1本の軽鎖遺伝子によってコードされる4本のポリペプチド鎖(2本の重鎖および2本の軽鎖)が対応するセカンドフローキーの接続によって構成される。そのうち、CD20mAb-SD1の重鎖遺伝子コード配列は1749個のヌクレオチドからなる(図3A)。ここで、CD20mAb重鎖は、1350個のヌクレオチドを有し、450個のアミノ酸(1~450)をコーディングする。SD1配列は、399個のヌクレオシドを有し、133個のアミノ酸(451~583)をコーディングする。対応するアミノ酸配列を図4Aに示す。SD1-CD20mAbの重鎖遺伝子コード配列は1782個のヌクレオチドからなり(図3C)。そのうち、SD1配列は、399個のヌクレオチドを有し、133個のアミノ酸(1~133)をコーディングする。連結ペプチド鎖は、30個のヌクレオチドを有し、10個のアミノ酸(134~143)をコーディングする。CD20mAb重鎖は、1353個のヌクレオチドを有し、451個のアミノ酸(144~594)をコーディングする。対応するアミノ酸配列を図4Cに示す。CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbの軽鎖はすべて、639個のヌクレオチド(図3B、3D)を有し、213個のアミノ酸(1~213)をコーディングする(図4B、4D)。
【0103】
実施例2 SEC-HPLC分析
SEC-HPLC分析により確認されたように、CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbタンパク質凝集体含量はすべて3%未満であり、低分子量成分(フラグメント化)は1~3%であり、タンパク質の完全性が非常に良好であることを示した(図5A、5B)。
【0104】
実施例3 二重標的点結合活性
フローサイトメトリーを用いてCD20とCD47に対するCD20mAb-SD1とSD1-CD20mAbタンパク質の結合活性をそれぞれ分析した結果、両方の構造のタンパク質の二つの標的点に対する結合活性はいずれも高く、EC50がいずれもナノモルレベルにあった。CD20との結合活性については、CD20mAb-SD1とリツキシマブが類似し、EC50がそれぞれ0.08nM(CD20mAb-SD1)および0.06nM(リツキシマブ)であり、一方SD1-CD20mAbの活性はやや低く、EC50が0.4nMであった。CD47との親和性活性については、SD1-CD20mAbがCD20mAb-SD1よりも有意に良好であり、前者のEC50が0.09nMであり、後者のEC50が2.72nMであった。
【0105】
実施例4 CD47標的点競合的結合活性
我々は、Jurkat細胞を使用してCD47に対するCD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbの競合的結合活性を分析した。図7に示すように、両方の構造のタンパク質は、SIRPαとJurkat細胞との結合を有意に阻害したが、SD1-CD20mAb(EC50=19.74nM)の阻害活性は、CD20mAb-SD1(EC50=476.2nM)より有意に優れている。
【0106】
実施例5 ADCCおよびCDC活性
CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbタンパク質はADCC(図8のA、B)およびCDC(図8のC、D)活性の両方を有し、両方の構造のタンパク質のADCCに有意な差別はないが、リツキシマブより有意に優れた。Raji細胞に対しては、EC50がそれぞれ、CD20mAb-SD1=0.14ng/ml;SD1-CD20mAb=0.15ng/ml;リツキシマブ=3.82ng/mlであった。Raji-CD47KO細胞に対しては、EC50がそれぞれ、CD20mAb-SD1=0.14ng/ml;SD1-CD20mAb=0.10ng/ml;リツキシマブ=1.13ng/mlであった。両方の構造のタンパク質はいずれも強いCDC活性を有するが、SD1-CD20mAb(EC50=3.36nM)の活性がCD20mAb-SD1(EC50=10.97nM)よりも有意に優れている。
【0107】
実施例6:マクロファージの食作用活性
マウスマクロファージ(Ana-1)を用いて、CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbタンパク質が腫瘍細胞に対するマクロファージの食作用活性を促進することを研究した。図9に示すように、SD1-CD20mAbは強い食作用活性(EC50=0.3μg/ml)を有し、陽性対照タンパク質SIRPaD1-Fc(EC50=0.14μg/ml)に相当する。一方、CD20mAb-SD1は全く食作用活性を示さなかった。
【0108】
実施例7:インビボ抗腫瘍活性
我々は、Raji細胞インサイチュ腫瘍モデルを用いて、CD20mAb-SD1タンパク質のインビボ抗腫瘍活性を調べた。図10Aに示すように、未治療群のマウスは治療開始後38日以内に全部死亡し、リツキシマブおよびSIRPaD1-Fcのような単一の標的で治療された群ではマウスの生存率が大幅に向上し、実験の終わりまでに、生存率がそれぞれ67%および83%であった。しかし、二重標的組換えタンパク質CD20mAb-SD1で治療された群では、生存率が100%であり、これは単一標的のみに作用した薬物よりも著しく良好であった。
【0109】
Raji細胞皮下腫瘍モデルを用いて、CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbタンパク質のインビボ抗腫瘍活性を比較して研究した。図10Bに示すように、未治療群のマウスは、腫瘍が急速に成長し、体積が増加し続け、実験の終わりまでに、腫瘍体積が約2500mm3に達した一方、CD20mAb-SD1またはSD1-CD20mAbによる治療を受けた群のマウスは、腫瘍の成長が遅く、平均腫瘍体積が縮小し続き、実験の終わりまでに、2群のマウスの平均腫瘍体積はいずれも、治療開始時の体積より小さかった。さらに驚くべきことには、SD1-CD20mAbによる治療を受けた8匹のマウスのうち、5匹のマウスの腫瘍が完全に消失した一方、CD20mAb-SD1による治療を受けた8匹のマウスのうちの2匹のみは腫瘍が完全に消失しした。これは、SD1-CD20mAbのインビボ抗腫瘍活性がCD20mAb-SD1より優れたことを示した。リツキシマブとSIRPaD1-Fcを組み合わせて使用した場合、治療効果は、CD20mAb-SD1またはSD1-CD20mAbよりも明らかに悪かった(図10Bの右上図)。
【0110】
本発明の研究に示すように、遺伝子組換え型二機能性融合タンパク質CD20mAb-SD1およびSD1-CD20mAbは、良好な二重標的結合活性を有する新規な融合タンパク質である。生物学的研究に示すように、このタンパク質は同時に、ADCC、CDC、およびCD47の標的遮断などの活性を有し、CD20、CD47の標的が陽性である癌への治療に使用できる。
【0111】
本出願において言及された全ての文献は、それぞれの文献が単独に参照として引用されたように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本発明の上記の記載内容を読んだ後に、当業者は本発明を様々に変更または修正することができ、これらの同等の形式は同様に本出願の添付した特許請求の範囲に記載の範囲に含まれることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6AB
図6CD
図7
図8
図9
図10A
図10B
【配列表】
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