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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】古紙処理装置及び古紙処理方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 5/06 20060101AFI20220412BHJP
   D21C 5/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
D21F5/06
D21C5/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017161213
(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公開番号】P2018040096
(43)【公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2016173694
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138014
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 香織
(72)【発明者】
【氏名】東本 佳久
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/081444(WO,A1)
【文献】特開2012-167414(JP,A)
【文献】特開2016-084551(JP,A)
【文献】特開昭63-126990(JP,A)
【文献】特開昭47-006456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N1/00-9/00
D04H1/00-18/04
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙を離解して得られるパルプ懸濁液から湿紙を形成する湿紙形成部、古紙を裁断し帯状の繊維にする裁断処理部、古紙に添加剤を添加し、帯状の処理物にする添加処理部、古紙に加水し、帯状の処理物にする加水処理部、古紙を圧縮し、帯状の処理物にする圧縮部のうち少なくともいずれか1つの処理部と、
前記処理部において処理が施され、得られた帯状の処理物を加熱する加熱部と、
前記処理部及び前記加熱部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、帯状の処理物の先頭部分を、後続の部分より高い温度で加熱するよう前記加熱部を制御する先頭高温加熱制御部を備えた古紙処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、処理物の先頭部分を後続の部分より厚く形成するよう前記処理部を制御する先頭厚制御部を備えた請求項1に記載の古紙処理措置。
【請求項3】
加熱部は、処理物に接触し、前記処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、前記加熱搬送部材の温度を検出する温度センサとを備え、
温度センサは、加熱処理後の処理物が加熱搬送部材から剥離される剥離位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量下流側に設置される請求項1または請求項2に記載の古紙処理装置。
【請求項4】
加熱部は、処理物に接触し、前記処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、前記加熱搬送部材の温度を検出する温度センサとを備え、
温度センサは、加熱処理前の処理物が加熱搬送部材に接触開始する位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量上流側に設置される請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の古紙処理装置。
【請求項5】
古紙を離解して得られるパルプ懸濁液から湿紙を形成する湿紙形成部、古紙を裁断し帯状の繊維にする裁断処理部、古紙に添加剤を添加し、帯状の処理物にする添加処理部、古紙に加水し、帯状の処理物にする加水処理部、古紙を圧縮し、帯状の処理物にする圧縮部のうち少なくともいずれか1つの処理部と、
前記処理部において処理が施され、得られた帯状の処理物を加熱する加熱部と、
前記処理部及び前記加熱部の動作を制御する制御部を備え、
前記加熱部は、処理物に接触し、前記処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、該加熱搬送部材の所定箇所の温度を検出する温度センサとを備え、
前記制御部は、前記加熱搬送部材のうち、帯状の処理物の先頭部分に接触する先頭接触箇所が所定位置に至ると、加熱部の加熱状態を変更するよう制御する加熱制御部を備えた古紙処理装置。
【請求項6】
加熱制御部は、前記先頭接触箇所が温度センサの設置位置に至ったとき加熱部の加熱状態を変更する請求項5に記載の古紙処理装置。
【請求項7】
加熱制御部は、前記先頭接触箇所が帯状の処理物の先頭部分に接触するとき加熱部の加熱状態を変更する請求項5または6に記載の古紙処理装置。
【請求項8】
加熱搬送部材は、1つの乾燥ドラムによって構成される請求項3乃至請求項7のいずれか一項に記載の古紙処理装置。
【請求項9】
加熱部は、加熱搬送部材との間で処理物を挟持する挟持用部材を備えた請求項3乃至請求項8のいずれ一項に記載の古紙処理装置。
【請求項10】
温度センサは、加熱搬送部材と挟持用部材とが非接触となる位置であって、加熱搬送部材の処理物搬送面に接触または非接触で設置される請求項9に記載の古紙処理装置。
【請求項11】
前記処理物が湿紙である請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の古紙処理装置。
【請求項12】
古紙を離解して得られるパルプ懸濁液から湿紙を形成する湿紙形成部、古紙を裁断し帯状の繊維にする裁断処理部、古紙に添加剤を添加し、帯状の処理物にする添加処理部、古紙に加水し、帯状の処理物にする加水処理部、古紙を圧縮し、帯状の処理物にする圧縮部のうち少なくともいずれか1つの処理部において、古紙に処理を施し、得られた帯状の処理物を加熱部において加熱する古紙処理方法であって、
前記帯状の処理物の先頭部分を、後続の部分より高い温度で加熱する古紙処理方法。
【請求項13】
処理物の先頭部分の厚みを、後続の部分より厚く形成する請求項12記載の古紙処理方法。
【請求項14】
処理物を加熱搬送部材に接触させて加熱しながら搬送し、加熱処理後の処理物を加熱搬送部材から剥離し、
処理物の剥離位置より加熱搬送部材の移動方向所定量下流側に設置された温度センサによって加熱搬送部材の温度を検出し、
検出された温度に応じて加熱搬送部材による加熱状態を調整する請求項12または請求項13に記載の古紙処理方法。
【請求項15】
処理物を移動する加熱搬送部材に接触させて加熱しながら搬送し、加熱処理前の処理物が加熱搬送部材に接触開始する位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量上流側に設置された温度センサによって、前記加熱搬送部材の温度を検出し、
温度センサの検出値に応じて加熱搬送部材による加熱状態を調整する請求項12乃至請求項14のいずれか一項に記載の古紙処理方法。
【請求項16】
前記処理物が湿紙である請求項12乃至請求項15のいずれか一項に記載の古紙処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抄紙装置及び湿紙の脱水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、古紙を処理する古紙処理装置について、古紙の処理物を加熱部で加熱する技術が下記特許文献1に開示されている。また、下記特許文献2には、製紙工場に設置される大型の製紙機械において、湿紙を乾燥する技術に関する記載がある。この製紙機械では、シート状物質を支持する回転体の外周方向から加熱ガスを吹き付けることで、高速乾燥している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-084561号公報
【文献】特開2003-41495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1、2では、湿紙の先頭部分を加熱する際、湿紙からの熱伝導や気化熱等を原因とする温度の低下については記載されていない。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、処理物の先頭部分を加熱する際、処理物からの熱伝導や気化熱等によって温度が低下する場合でも適正に加熱することが可能な古紙処理装置及び古紙処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる古紙処理装置は、古紙を離解して得られるパルプ懸濁液から湿紙を形成する湿紙形成部、古紙を裁断し帯状の繊維にする裁断処理部、古紙に添加剤を添加し、帯状の処理物する添加処理部、古紙に加水し、帯状の処理物にする加水処理部、古紙を圧縮し、帯状の処理物にする圧縮部のうち少なくともいずれか1つの処理部と、前記処理部において処理が施され、得られた帯状の処理物を加熱する加熱部と、前記処理部及び前記加熱部の動作を制御する制御部を備え、前記制御部は、帯状の処理物の先頭部分を、後続の部分より高い温度で加熱するよう前記加熱部を制御する高温加熱制御部とを備えた。
【0007】
また、前記構成において、前記制御部は、処理物の先頭部分を後続の部分より厚く形成するよう前記処理部を制御する先頭厚制御部を備えた。
【0008】
そして、前記各構成において、加熱部は、処理物に接触し、前記処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、前記加熱搬送部材の温度を検出する温度センサとを備え、
温度センサは、加熱処理後の処理物が加熱搬送部材から剥離される剥離位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量下流側に設置される。
【0009】
更に、前記各構成において、加熱部は、処理物に接触し、前記処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、前記加熱搬送部材の温度を検出する温度センサとを備え、温度センサは、加熱処理前の処理物が加熱搬送部材に接触開始する位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量上流側に設置される。
【0010】
また、本発明にかかる古紙処理装置は、古紙を離解して得られるパルプ懸濁液から湿紙を形成する湿紙形成部、古紙を裁断し帯状の繊維にする裁断処理部、古紙に添加剤を添加し、帯状の処理物にする添加処理部、古紙に加水し、帯状の処理物にする加水処理部、古紙を圧縮し、帯状の処理物にする圧縮部のうち少なくともいずれか1つの処理部と、前記処理部において処理が施され、得られた帯状の処理物を加熱する加熱部と、前記処理部及び前記加熱部の動作を制御する制御部を備え、前記加熱部は、処理物に接触し、前記処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、該加熱搬送部材の所定箇所の温度を検出する温度センサとを備え、前記制御部は、前記加熱搬送部材のうち、帯状の処理物の先頭部分に接触する先頭接触箇所が所定位置に至ると、加熱部の加熱状態を変更するよう制御する加熱制御部を備えた。
【0011】
更に、前記構成において、加熱制御部は、前記先頭接触箇所が温度センサの設置位置に至ったとき加熱部の加熱状態を変更する。
【0012】
更に、前記構成において、加熱制御部は、前記先頭接触箇所が帯状の処理物の先頭部分に接触するとき加熱部の加熱状態を変更する。
【0013】
更に、前記構成において、加熱部は、1つの乾燥ドラムによって構成される。
【0014】
更に、前記構成において、加熱部は、加熱搬送部材との間で処理物を挟持する挟持用部材を備えた。
【0015】
更に、前記構成において、温度センサは、加熱搬送部材と挟持用部材とが非接触となる位置であって、加熱搬送部材の処理物搬送面に接触または非接触で設置される。
【0016】
更に、前記構成において、前記処理物が湿紙である。
【0017】
更に、本発明にかかる古紙処理方法は、古紙を離解して得られるパルプ懸濁液から湿紙を形成する湿紙形成部、古紙を裁断し帯状の繊維にする裁断処理部、古紙に添加剤を添加し、帯状の処理物にする添加処理部、古紙に加水し、帯状の処理物にする加水処理部、古紙を圧縮し、帯状の処理物にする圧縮部のうち少なくともいずれか1つの処理部において、古紙に処理を施し、得られた帯状の処理物を加熱部において加熱する古紙処理方法であって、前記帯状の処理物の先頭部分を、後続の部分より高い温度で加熱する。
【0018】
更に、前記構成において、処理物の先頭部分の厚みを、後続の部分より厚く形成する。
【0019】
更に、前記各構成において、処理物を加熱搬送部材に接触させて加熱しながら搬送し、加熱処理後の処理物を加熱搬送部材から剥離し、処理物の剥離位置より加熱搬送部材の移動方向所定量下流側に設置された温度センサによって加熱搬送部材の温度を検出し、検出された温度に応じて加熱搬送部材による加熱状態を調整する。
【0020】
更に、前記各構成において、処理物を移動する加熱搬送部材に接触させて加熱しながら搬送し、加熱処理前の処理物が加熱搬送部材に接触開始する位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量上流側に設置された温度センサによって、前記加熱搬送部材の温度を検出し、
温度センサの検出値に応じて加熱搬送部材による加熱状態を調整する。
【0021】
更に、前記各構成において、前記処理物が湿紙である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、制御部は、帯状の処理物の先頭部分を、後続の部分より高い温度で加熱するよう前記加熱部を制御する先頭高温加熱制御部を備えたので、処理物の先頭部分を加熱する際、処理物からの熱伝導や気化熱等によって温度が低下する場合でも適正に効率よく加熱することができる。
【0023】
また、前記制御部は、処理物の先頭部分を後続の部分より厚く形成するよう前記処理部を制御する先頭厚制御部を備えた場合は、先頭厚制御部によって、処理物の先頭部分がある程度のコシを有することで、処理物を転移しやすくすることができる。
【0024】
そして、加熱部は、処理物に接触し、前記処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、前記加熱搬送部材の温度を検出する温度センサとを備え、温度センサは、加熱処理後の処理物が加熱搬送部材から剥離される剥離位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量下流側に設置される場合は、処理物との接触によって加熱搬送部材の温度が変化したことを温度センサが検出しないときでも処理物を適切に加熱することができる。
【0025】
更に、温度センサは、加熱処理前の処理物が加熱搬送部材に接触開始する位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量上流側に設置される場合は、処理物が加熱搬送部材に接触した後温度センサの設置位置から離れる方向へ搬送されるために加熱搬送部材の温度が変化したことを温度センサが感度よく検出しないときでも処理物を適切に加熱することができる。
【0026】
そして、本発明にかかる古紙処理装置の制御部は、前記加熱搬送部材のうち、帯状の処理物の先頭部分に接触する先頭接触箇所が所定位置に至ると、加熱部の加熱状態を変更するよう制御する加熱制御部を備えたので、先頭接触箇所の位置に応じて加熱部を適切な加熱状態とすることができる。
【0027】
更に、加熱制御部は、前記先頭接触箇所が温度センサの設置位置に至ったとき加熱部の加熱状態を変更する場合は、先頭接触箇所が温度センサの設置位置に至ることで、温度センサの検出値が変化しても、加熱部を適切な加熱状態とすることができる。
【0028】
更に、加熱制御部は、前記先頭接触箇所が帯状の処理物の先頭部分に接触するとき加熱部の加熱状態を変更する場合は、先頭接触箇所が処理物の先頭部分に接触するときに先頭接触箇所の温度が変化しても加熱部を適切な加熱状態とすることができる。
【0029】
更に、加熱搬送部材は、1つの乾燥ドラムによって構成される場合は、処理能力の低い小型の古紙処理装置で、効率よく処理物を加熱することができる。
【0030】
更に、加熱部は、加熱搬送部材との間で処理物を挟持する挟持用部材を備えた場合は、加熱搬送部材と挟持用部材によって処理物を適正に挟持し搬送することができる。
【0031】
更に、温度センサは、加熱搬送部材と挟持用部材とが非接触となる位置であって、加熱搬送部材の処理物搬送面に接触または非接触で設置される場合は、温度センサを容易に設置することができ、メンテナンスもしやすい。
【0032】
更に、前記処理物が湿紙である場合は、湿紙を適正に加熱することができる。
【0033】
更に、本発明に係る古紙処理方法は、帯状の処理物の先頭部分を、後続の部分より高い温度で加熱するので、処理物を適正に加熱できる。
【0034】
更に、処理物の先頭部分の厚みを、後続の部分より厚く形成する場合は、処理物を転移しやすくすることができる。
【0035】
更に、処理物を加熱搬送部材に接触させて加熱しながら搬送し、加熱処理後の処理物を加熱搬送部材から剥離し、処理物の剥離位置より加熱搬送部材の移動方向所定量下流側に設置された温度センサによって加熱搬送部材の温度を検出し、検出された温度に応じて加熱搬送部材による加熱状態を調整する場合は、処理物との接触によって加熱搬送部材の温度が局部的に低下したことを温度センサが検出しないときでも処理物を適切に加熱することができる。
【0036】
更に、処理物を移動する加熱搬送部材に接触させて加熱しながら搬送し、加熱処理前の処理物が加熱搬送部材に接触開始する位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量上流側に設置された温度センサによって、前記加熱搬送部材の温度を検出し、温度センサの検出値に応じて加熱搬送部材による加熱状態を調整する場合は、処理物が加熱搬送部材に接触した後温度センサの設置位置から離れる方向へ搬送されるために加熱搬送部材の温度が変化したことを温度センサが感度よく検出しないときでも処理物を適切に加熱することができる。
【0037】
更に、前記処理物が湿紙である場合は、湿紙を適正に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係る古紙処理装置の構成概略図である。
図2】前記古紙処理装置の抄紙装置の概略構成を示す縦断面図である。
図3】前記抄紙装置の加熱部の温度変化を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る古紙処理装置の抄紙装置の概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態にかかる古紙処理装置の構成概略図である。図1において、古紙処理装置100は、古紙10に所定の処理を施す処理部と、制御部8とを備える。処理部には、パルプ製造部1、脱墨部2、抄紙部3及び仕上部4が含まれる。制御部8は、各処理部の動作を制御する。尚、以下の実施形態では、古紙10を原料として再生紙7を製造する古紙処理装置100について記載するが、必ずしもこれに限定されず、木材パルプ等の他の製紙原料を用いる製紙装置に用いても構わない。
【0040】
パルプ製造部1は、古紙10を離解してパルプ懸濁液を製造する処理を行う。脱墨部2は、パルプ製造部1において製造されたパルプ懸濁液を脱墨する処理を行う。抄紙部3は、脱墨部2において得られた脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙して湿紙Wを形成し、得られた湿紙Wを脱水し、乾燥する処理を行う。仕上部4は、抄紙部3において得られた仕上げ前の再生紙を裁断等する処理を行うことにより、仕上げを行って定型サイズの再生紙7を得る。パルプ製造部1及び脱墨部2は、それぞれ公知のパルプ製造装置及び脱墨装置を利用可能である。
【0041】
図2は、抄紙部3を構成する抄紙装置Sの概略構成を示す縦断面図である。尚、以下では、図2に示す抄紙装置Sの右側を「前側」、左側を「後側」、図2の紙面の手前を「右側」、紙面の奥側を「左側」として説明することとする。抄紙部3は、湿紙形成部11、脱水部14及び乾燥部15が図示しない筐体内に収容されてなる。筐体内には、左右一対の図示しない側板が配設されており、この側板が各部を構成するほとんどのローラを、回動自在に軸支している。
【0042】
湿紙形成部11では、湿紙Wが形成される。湿紙形成部11は、ヘッドボックス12と、ワイヤー部13とを備える。ヘッドボックス12は、脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に均一に供給するためのものである。ヘッドボックス12は、パルプ懸濁液を貯留する貯留部18と、貯留部18に貯留するパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に流出させる流出部19と、貯留部18の底部に形成されたパルプ懸濁液の流入部20とを備える。
【0043】
流入部20には、脱墨部2から脱墨後のパルプ懸濁液を取出し、貯留部18へ送るための図示しない輸送ポンプが接続されている。
【0044】
ワイヤー部13は、抄紙ワイヤー23と、抄紙ワイヤー23を走行させる図示しないワイヤー駆動部とを備える。抄紙ワイヤー23は複数のベルトローラ24に掛け渡され、展張され、無端状に形成される。抄紙ワイヤー23は上側を走行する往路軌道の下流側端部近傍に設けられた湾曲部21において、上方へ向けて湾曲して走行する。
【0045】
抄紙ワイヤー23は、ヘッドボックス12から供給されるパルプ懸濁液を濾過して湿紙Wを形成する。上側を走行する往路軌道の抄紙ワイヤー23の下方には、複数の水切り板26が所定間隔で配置されている。水切り板26はパルプ懸濁液を水切りする。各水切り板26は抄紙ワイヤー23の走行方向と交差する左右幅方向に向けて延在し、抄紙ワイヤー23の下面に摺接される。水切り板26は、抄紙ワイヤー23の網目を通過した液体分である白水を下方へと導くようになっている。
【0046】
また、水切り板26の下方には、該水切り板26より、または抄紙ワイヤー23の網目から直接流下する白水を受ける受水部27を設けている。受水部27は図示しない配管、ガイド等により下方に設置された白水タンク29に接続されている。白水タンク29は、内部に収容する白水をパルプ製造部1及び脱墨部2に送るための図示しない配管及び白水循環用ポンプを備え、受水部27において回収した白水を再利用可能に構成している。
【0047】
脱水部14は、抄紙ワイヤー23を介して対向し、抄紙ワイヤー23上に形成された湿紙Wを挟持し、脱水する一対の脱水ローラ45を備える。一対の脱水ローラ45は、抄紙ワイヤー23との間で湿紙Wを挟持可能な第1脱水ローラ67と、前記第1脱水ローラ67に抄紙ワイヤー23を介して対向配置された第2脱水ローラ68とが設けられる。第1、第2脱水ローラ67、68は、抄紙ワイヤー23の走行に伴って従動回転する。
【0048】
脱水ローラ45の材質は、ステンレス、鉄やアルミ等の金属、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS系樹脂やフッ素系樹脂等の合成樹脂、これらが層状に形成され、組み合わされて用いられたもの、金属または合成樹脂のいずれかまたは双方と合成繊維や天然繊維とが組み合わせて用いられたもの等とすることができる。
【0049】
これらのうち、脱水ローラ45に金属を用いることで、強度を確保できる。抄紙ワイヤー23によって濾過され、形成された湿紙Wは、脱水部14による脱水前後の状態では、含水率が比較的高いために脱水ローラ45が金属であっても張りつきの問題が生じにくい。
【0050】
乾燥部15は、挟持用ベルト48、加熱部72及びスクレーパ55を備えている。挟持用ベルト48は、加熱搬送部材との間で処理物を挟持する挟持用部材を構成する。挟持用ベルト48は、抄紙ワイヤー23から受け渡された湿紙Wを乾燥ドラム50との間で挟持して走行する。挟持用ベルト48は、無端状に形成され、乾燥ドラム50及び複数のカンバスローラ49に掛け渡されている。
【0051】
挟持用ベルト48は、乾燥ドラム50の外周の略4分の3の範囲に巻回される。挟持用ベルト48は、上方に向けて突出して走行する抄紙ワイヤー23に対向するよう上方に向けて突出して走行する。抄紙ワイヤー23と挟持用ベルト48とは、対向位置において接触することなく所定量離間して配置される。挟持用ベルト48は、図示しない挟持用ベルト駆動部によって走行駆動される。
【0052】
挟持用ベルト48は、乾燥ドラム50に巻回された範囲で、湿潤状態にある湿紙Wを乾燥ドラム50との間で挟持して搬送する。挟持用ベルト48の材質は特に限定されず、例えば、金属、ポリエステルやポリフェニレンサルファィド等の合成繊維、麻や木綿等の天然繊維等が用いられる。挟持用ベルト48は、経糸と緯糸を織り込んだ織物によって形成されることが湿紙Wの乾燥効率が高い点で好ましい。
【0053】
加熱部72は、処理物としての湿紙Wに接触し、該湿紙Wを加熱しながら搬送する加熱搬送部材と、前記加熱搬送部材の温度を検出する温度センサ66とを備える。加熱搬送部材は、1つの乾燥ドラム50により構成される。乾燥ドラム50は、中空円筒状に形成された筒体58を備え、該筒体58の筒心に直交する左右の側面は、円盤形状の蓋体59により閉塞されている。また、筒体58は、複数の支持ローラ61により回転自在に支持されている。
【0054】
筒体58の内方には、柔軟で可撓性を有し、シート状に形成されたシリコンラバーヒータ等の加熱体62が、乾燥ドラム50の内周面に全周に亘って貼着されている。筒体58は、挟持用ベルト48が挟持用ベルト駆動部によって走行駆動されることにより、従動して回転する。
【0055】
温度センサ66は、図2に示すように、乾燥ドラム50の上部後方に設置される。温度センサ66は、加熱搬送部材と挟持用部材とが非接触となる位置であって、加熱搬送部材の処理物搬送面に接触または非接触で設置される。図2では、加熱搬送部材としての乾燥ドラム50が円筒状に形成される場合が示され、温度センサ66は、この円筒状に形成された乾燥ドラム50の湿紙W乃至帯状の再生紙7が接触しない範囲であって、帯状の再生紙7の剥離位置Cから湿紙Wの接触開始位置Aまでの範囲に設置される場合が示されている。
【0056】
この温度センサ66の設置位置は、加熱処理後の処理物としての帯状の再生紙7が加熱搬送部材としての乾燥ドラム50から剥離される剥離位置Cから乾燥ドラム50の回転角度で例えば3度から180度といった所定範囲内であって、該剥離位置Cより乾燥ドラム50の移動方向としての図2において反時計回りの回転方向R1で所定量下流側である。更に、この温度センサ66の設置位置は、加熱処理前の処理物である湿紙Wが加熱搬送部材としての乾燥ドラム50に接触開始する位置Aから乾燥ドラム50の回転角度で例えば3度から180度といった所定範囲内であって、所定範囲内であって該接触開始位置Aより乾燥ドラム50の移動方向としての回転方向R1で所定量上流側となる。
【0057】
温度センサ66は、筒体58の表面温度を検出する。本実施形態では、温度センサ66が、処理物である湿紙Wが加熱搬送部材である乾燥ドラム50を構成する筒体58の表面に摺動接触し、筒体58の温度を検出する構成としたが、筒体58に非接触のセンサを用いてもよい。スクレーパ55は、乾燥ドラム50の上部後方であって温度センサ66より乾燥ドラム50の回転方向上流側に設置される。スクレーパ55は乾燥ドラム50から乾燥後の帯状再生紙を剥離し、再生紙を仕上部4へと案内する。
【0058】
(仕上部)
図1に示す仕上部4は、帯状の再生紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。裁断刃は、左右一対のスリッターとカッターとを備える。スリッターは、丸刃により構成される。カッターは、幅方向に沿って延在する上下一対の直刃により構成される。裁断刃の下方には、裁断により生じた端材を回収する図示しない端材回収箱が設置されている。
【0059】
(制御部)
制御部8は、各処理部における処理の開始後であって、各処理部で処理が施されて得られた処理物を、加熱部72において加熱開始する時点より所定時間前に加熱部72の昇温を開始するよう制御する。例えば、制御部8は、処理部としての湿紙形成部11において帯状に形成された処理物としての湿紙Wの先頭部分Mが加熱部72へ搬送される時点より所定時間前に、加熱部72の昇温を開始することができる。また、制御部8は、処理部としてのパルプ製造部1におけるパルプ製造処理または脱墨部2における脱墨処理のいずれかの開始後であって、各処理部で処理が施されて得られた処理物としての脱墨前または脱墨後のパルプ懸濁液を、加熱部72において加熱開始する時点より所定時間前に加熱部72の昇温を開始するよう制御してもよい。
【0060】
そして、制御部8は、帯状の処理物の先頭部分Mを、後続の部分より高い温度で加熱するよう前記加熱部72を制御する先頭高温加熱制御部を備える。更に、制御部8は、処理物の最後に加熱される湿紙Wの後端部分を、先行して加熱される先行加工処理部分より低い温度で加熱する後端低温加熱制御部を備える。また、制御部8は、処理物の先頭部分Mを後続の部分より厚く形成するよう処理部を制御する先頭厚制御部を備える。そして、制御部8は、加熱搬送部材としての乾燥ドラム50の筒体58の外周面うち、帯状の処理物としての湿紙Wの先頭部分に接触する先頭接触箇所が所定位置に至ると、加熱部72の加熱量を変更するよう制御する加熱制御部を備える。加熱制御部は、前記先頭接触箇所が温度センサ66の設置位置に至ったとき加熱部72の加熱量を変更する。また、加熱制御部は、前記先頭接触箇所が帯状の処理物としての湿紙Wの先頭部分Mに接触するとき加熱部72の加熱量を変更する。
【0061】
(作用)
本実施形態にかかる古紙処理装置100の作用につき以下に説明する。まず、パルプ製造部1において所定量の古紙10を所定量の水とともに所定時間攪拌することで、パルプ懸濁液を製造する。次に、得られたパルプ懸濁液を脱墨部2へ送り、脱墨処理を行って、脱墨後のパルプ懸濁液を得る。脱墨後のパルプ懸濁液に対し、脱墨部2においてまたは脱墨部2から抄紙部3への流通経路の途中位置で加水し、抄紙に適する所定のパルプ濃度に調製し、抄紙部3のヘッドボックス12へ送る。
【0062】
パルプ懸濁液は、ヘッドボックス12の流入部20から貯留部18に流入する。そして、パルプ懸濁液は、流出部19から抄紙ワイヤー23上に流出される。抄紙ワイヤー23上に供給されたパルプ懸濁液は、液体分が抄紙ワイヤー23の網目を通り抜ける。その後、パルプ懸濁液の液体分は、抄紙ワイヤー23の内方位置で水切り板26により下方の受水部27へと導かれ、受水部27で受水された後、白水タンク29内に収容される。白水タンク29内の白水は、パルプ製造部1や脱墨部2等へ送られ、再利用される。
【0063】
抄紙ワイヤー23上に残存したパルプは、水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙Wとして形成される。制御部8は、抄紙ワイヤー23上で形成される湿紙Wの先頭部分の紙厚を、この先頭部分に続く他の部分より厚く形成するよう制御する。
【0064】
このため制御部8の先頭厚制御部は、湿紙Wの先頭部分Mを形成するときの抄紙ワイヤー23の走行速度を、後続の他の部分を形成するときより遅くするようワイヤー駆動部を制御する。また、これに替えて、制御部8の先頭厚制御部は、ヘッドボックス12から抄紙ワイヤー23上へパルプ懸濁液の供給を開始し、湿紙Wの先頭部分を形成するときに抄紙ワイヤー23の走行を所定時間停止するよう制御してもよい。更に、制御部8は、輸送ポンプの駆動量を湿紙Wの先頭部分Mを形成するときの方が、後続の他の部分を形成するときより多くするよう制御し、流入部20へ流入させるパルプ懸濁液の量を多くすることで、湿紙Wの先頭部分を厚くしてもよい。
【0065】
湿紙Wの先頭部分Mが形成された後、この先頭部分Mが脱水部14に至ると、湿紙Wは、第1脱水ローラ67の外周面に沿って上方へ向けて湾曲して走行することで、抄紙ワイヤー23と第1脱水ローラ67との間で挟持され、脱水される。また、ニップ部Nにおいては、第1脱水ローラ67と第2脱水ローラ68とによって湿紙Wが挟持された脱水される。脱水により生じた液体分は、第2脱水ローラ68の後側周面を下方向けてへと伝い、下方に設置された受水部27に受水される。
【0066】
湾曲部21における抄紙ワイヤー23の上方に向けた走行に伴い、図2に示すように湿紙Wの先頭部分Mは上方へ向けて搬送される。先頭厚制御部によって、湿紙Wの先頭部分Mは厚く形成されており、且つ脱水部14で脱水されることで、該湿紙Wの先頭部分Mはある程度のコシを有することとなる。湿紙Wの先頭部分Mが抄紙ワイヤー23の転換位置Tに至ったときに、抄紙ワイヤー23から分離され、図2において実線で示すように斜め前上方へ向けて独立して搬送される。
【0067】
抄紙ワイヤー23から上方へ伸びた湿紙Wの先頭部分Mの長さが、所定長さに至ると、一点鎖線で示すように、湿紙Wの先頭部分Mは自重によって座屈する。そして、抄紙ワイヤー23に対向する挟持用ベルト48によって支持される。湿紙Wの先頭部分Mは挟持用ベルト48と乾燥ドラム50の間に入り込み、これらの当接部分において挟持用ベルト48と乾燥ドラム50との間で挟持され搬送される。このように、先頭厚制御部によって、湿紙Wの先頭部分Mは厚く形成され、ある程度のコシを有することで、処理部としての湿紙形成部から加熱部72の挟持用ベルト48へ確実に湿紙Wを転移させることができる。
【0068】
湿紙Wは、加熱部72によって加熱された乾燥ドラム50に当接され、乾燥される。乾燥部15における湿紙Wの乾燥には、予め乾燥ドラム50及びカンバスローラ49、挟持用ベルト48等が十分に予熱されていることが望ましい。また、電気量等のエネルギーの節約の観点からは、湿紙Wの加熱のために必要となるタイミングで加熱部72の昇温を開始することが望ましい。よって、古紙処理装置100の運転開始時点で、制御部8が加熱部72の昇温を開始するより、最低限の予熱時間のみが確保できるタイミングである運転開始からしばらく経過後に昇温を開始した方が望ましい。
【0069】
また、古紙処理装置100の運転開始直後に処理が始まるパルプ製造部1では、古紙10に加水し、図示しない撹拌翼を高速回転し、古紙10と水の混合液を所定時間に渡って撹拌する。これより離解処理を行って、パルプ懸濁液を調製する。この撹拌翼の駆動には、特に離解処理の開始からしばらくは、非常に大きな電力を消費する。このため、古紙処理装置100の運転開始直後から所定時間経過するまでの間、好ましくは離解処理終了までの間、加熱部72の昇温を行わないことで、各処理部における高電力負荷動作を同時に行わないようにすることができる。これより、古紙処理装置100のピーク電力を抑制でき、古紙処理装置100を安定して運転動作することができ、使用者の使用電力契約を安価なものにすることが可能である。
【0070】
制御部8は、加熱部72の昇温を開始するタイミングを、処理部における処理の開始後であって湿紙Wが加熱部72によって加熱され、乾燥される時点より所定時間前とすることができる。加熱部72の昇温開始のタイミングは、種々の設定が可能である。例えば、制御部8は、加熱部72の昇温を開始するタイミングを、輸送ポンプの駆動開始の10分前となるよう制御することができる。輸送ポンプの駆動開始時点は、湿紙形成処理の開始時点となる。輸送ポンプの駆動開始から湿紙Wの加熱部72による加熱開始まで3分間要する場合には、湿紙Wが加熱部72によって加熱される時点より13分前に加熱部72の昇温を開始することとなる。
【0071】
この所定時間が13分となるタイミングの場合、古紙処理装置100は、パルプ製造部1で撹拌槽への古紙10投入後となる古紙10の離解処理中、離解処理終了時点、パルプ製造部1から脱墨部2へのパルプ懸濁液の輸送中、または脱墨部2でのパルプ懸濁液の脱墨処理中のいずれかの状態とするよう調整することができる。またこれらに替えて、輸送ポンプの駆動開始以降の時点を所定時間の計測開始タイミングとしてもよく、例えば、脱墨部2からヘッドボックス12へのパルプ懸濁液の輸送ポンプによる輸送中や抄紙ワイヤー23へのパルプ懸濁液の供給開始時点としてもよい。
【0072】
湿潤状態にある湿紙Wが、位置Aにおいて乾燥ドラム50に接触すると、湿紙Wからの熱伝導、及び湿紙Wの液体分が蒸発する際の気化熱によって当該接触箇所の乾燥ドラム50、挟持用ベルト48及びカンバスローラ49の温度は、位置Aの周辺のみで局部的に低下する。図2に示す抄紙装置Sでは、温度センサ66の設置位置が、湿潤状態にある湿紙Wが最初に乾燥ドラム50に接触する位置Aより乾燥ドラム50の回転方向に乾燥ドラム50の回転角度で180度、より詳しくは270度以上下流側にある。このため、湿紙Wとの接触によって乾燥ドラム50の温度が局部的に低下しても温度センサ66の検出する値に反映されない。温度センサ66の検出値は、湿紙Wの先頭部分Mが乾燥ドラム50へ接触した後に変化することはなく、接触前と同じ温度となる。
【0073】
この場合、制御部8が温度センサ66の検出値に基づき加熱部72を制御すると、乾燥ドラム50の局部的な温度の低下に十分に対応できなくなり、湿紙Wの加熱不足が生じる恐れがある。そこで、制御部8の先頭高温加熱制御部は、帯状の処理物としての湿紙Wのうち先行して加熱される湿紙Wの先頭部分Mを、後続の部分より高い温度で加熱するよう制御する。先頭部分M及び後続の部分をそれぞれ加熱する際の設定温度は、実験データ等を基に予め設定される。
【0074】
例えば、実験データ等を基にして、湿紙Wのうち、後続の部分を加熱する際には、加熱部72の温度が95℃に設定されるとする。これに対し、湿紙Wのうち先行して加熱される先頭部分Mを加熱する際は、後続の部分より所定量、例えば25℃高い130℃に設定して加熱する。更に、湿紙Wの加熱前に、加熱部72を予熱する際には、加熱部72を105℃に維持するよう設定することとする。
【0075】
図3は、加熱部72の設定温度Ts、温度センサ66の検出値Tk、乾燥ドラム50の複数の位置A,B,Cでの表面温度Ta,Tb,Tc、及び帯状の処理物である湿紙Wの先頭部分Mに接触する乾燥ドラム50の先頭接触箇所の温度Twの時系列の変化を示す図である。図3の縦軸は、温度Tを示し、横軸は、加熱部72の昇温開始後の経過時間tを示す。尚、加熱体62には、例えば設定温度Tsに達するまで通電し、設定温度Tsに至った時点で通電を遮断する制御を繰り返すタイプのものが用いられる場合、温度センサ66の検出値は、厳密には小さな上昇と降下とを繰り返すが、図3において、この小さな温度変化を省略して表示する。
【0076】
制御部8は、例えば、加熱部72による湿紙Wの加熱開始の13分前となったとき、加熱体62に通電し、予熱段階の設定温度Ts、例えば105℃として加熱部72の昇温を開始する。昇温前の状態では、図示省略するが、温度センサ66の検出値Tkは、古紙処理装置100の設置場所の環境温度付近となる。
【0077】
昇温開始から乾燥ドラム50の表面温度が70℃以下の間は、連続して加熱体62に通電する。加熱体62が70℃を超えると加熱体62を、例えば30秒間の通電と30秒間の遮断とを交互に繰り返すよう制御する。これより、乾燥ドラム50の内部温度が高温になり過ぎずないようにしつつ表面温度を設定温度Tsの105℃まで徐々に上げていくことができ、乾燥ドラム50の内部温度のオーバーシュートを軽減することができる。
【0078】
その後、図3のt1の時点で、細い実線で示す温度センサ66の検出値Tkが太い実線で示す設定温度Tsの105℃に達する。そして、t1からt2までの間、この予熱温度が維持され、乾燥ドラム50、挟持用ベルト48、カンバスローラ49等が予熱される。設定温度Tsの105℃を維持する間、加熱体62は、通電と遮断とが繰り返される。
【0079】
t2で、湿紙Wの先端が図2の位置Aに到達し、湿紙Wの先頭部分Mが、乾燥ドラム50と挟持用ベルト48とによって挟持され加熱が開始される。このt2乃至その直前のタイミングで、太い実線で示すように、加熱部72の設定温度Tsを130℃に変更する。このように、湿紙Wの先頭部分Mの加熱開始またはその前に、設定温度Tsを一時的に130℃まで上げ、乾燥ドラム50の内部温度が高い状態で湿紙Wの加熱を開始することによって、乾燥ドラム50の表面温度の低下を抑制できる。
【0080】
加熱体62は、t2からt4までの間、通電を継続する状態へ移行し、加熱部72が昇温され、細い実線で示す温度センサ66の検出値Tkが徐々に上昇する。t4において、温度センサ66の検出値Tkが設定温度Tsに達する。このとき、乾燥ドラム50の位置B,Cの温度も温度センサ66の検出値Tkと同じ130℃であると考えられる。
【0081】
一方、乾燥ドラム50の位置Aでは、湿紙Wが接触することで、温度が低下すると思われる。位置Aの温度低下の割合は、湿紙Wの含水率、筒体58の肉厚、加熱体62の加熱量、古紙処理装置100の設置位置の環境温度等に影響されるが、一例として、図3の細い破線Taで示すように、湿紙Wが接触するt2の時点で、位置Aの温度Taは、設定温度と同じ105℃であり、その後短時間のうちに低下し、t3の時点で例えば85℃付近となると思われる。
【0082】
t2において設定温度が105℃から130℃へ変更されたために、加熱体62は通電される状態がしばらくの間継続されている。これより、位置Aの温度Taはt3を最低点として以降上昇に転じる。そして、湿紙Wの先頭部分Mの厚みが厚く形成された範囲が位置Aを通過完了し、先頭部分Mより厚みが薄く形成された後続の部分が、乾燥ドラム50の位置Aを通過開始するころには、加熱体62の負担は軽減され、位置Aの温度が更に上昇すると思われる。なお、後続の部分の方が先頭部分Mより湿紙Wに含まれる水分の量は少ないと思われる。
【0083】
t5において、位置Aにおける定常的な温度、例えば、90℃付近に達し、t5以降は位置Aではこの温度が維持される。
【0084】
図2に示す乾燥ドラム50の位置Bは、乾燥ドラム50への処理物としての湿紙Wの接触範囲の中間点である。湿紙Wの先頭部分Mは、位置Aから乾燥ドラム50の回りを下流側へ反時計回りに周回しつつ加熱され、乾燥されることで、帯状の再生紙7が形成される。湿紙Wの先頭部分Mが位置Bに至ると、位置Bの温度は低下すると思われる。例えば、図3のt6において湿紙Wの先頭部分Mが位置Bに至るとすると、破線Tbで示すように、位置Bの温度は短時間で低下し、t7で91℃乃至92℃付近となる。
【0085】
このt7以降は、位置Bの温度が徐々に上昇する。湿紙Wの先頭部分Mの厚みが厚く形成された部分が位置Bを通過完了した後暫くたって、先頭部分Mより厚みが薄く形成されている後続の部分が通過しているt10において定常温度に至る。t10以降は、位置Bの温度が約93℃程度に維持されると考えられる。
【0086】
図2に示す乾燥ドラム50の位置Cは、湿紙Wがスクレーパ55によって乾燥ドラム50から剥離される剥離位置である。例えば、図3のt8において乾燥後の湿紙Wの先頭部分Mが位置Cに至るとすると、破線Tcで示すように、設定温度の130℃を維持していた位置Cの温度が低下し、t11の時点で95℃付近となる。位置Cでは、湿紙Wは加熱されることで液体分が蒸発して、乾燥され、帯状の再生紙7に近い状態となる。よって、位置Cでは、位置A,Bよりも温度低下の割合が少なくなる。
【0087】
乾燥ドラム50のうち、湿紙Wの先頭部分Mが接触していた先頭接触箇所が、図2に示す温度センサ66の設置位置に至ると、温度センサ66の検出値が変化する。例えば、図3のt11の時点で、位置Cの温度が95℃まで低下し、スクレーパ55によって乾燥ドラム50から剥離された乾燥後の湿紙W、即ち帯状の再生紙7の先頭部分Mの温度も位置Cと同じ95℃であったとする。そして、湿紙Wの先頭部分Mが接触していた先頭接触箇所が、温度センサ66の設置位置に至った図3のt12において、細い実線で示す温度センサ66の検出値Tkは、太い実線で示す設定温度Tsである130℃から95℃前後に低下する。
【0088】
制御部8は、温度センサ66の設置位置に、湿紙Wの先頭部分Mが接触していた先頭接触箇所が至るt12のタイミングに合わせて、加熱部72の設定温度Tsを所定量低くするよう加熱部72を制御する。例えば、制御部8は、温度センサ66の検出値が低下するt12のタイミングで、加熱部72の設定温度Tsを130℃から95℃に変更する。その後、加熱部72の設定温度Tsは、湿紙Wを適正に乾燥できる温度である95℃として、湿紙Wの後続の部分を加熱し乾燥するよう制御することができる。
【0089】
設定温度Tsを130℃から95℃に変更する際に、図3に示すようにt12で一度だけ変更するのに替えて、所定時間毎に所定量ずつ下げる、即ち、例えば5分毎に1℃といった少しの温度幅低下させるよう制御してもよい。これより、乾燥ドラム50の内部温度を下げ過ぎないようにできる。
【0090】
これより、乾燥ドラム50のうち湿紙Wに接触している部分の温度が局部的に低下する場合でも、湿紙Wを適正に乾燥することができ、乾燥不足による再生紙7の破れや損傷を抑制でき、得られる再生紙7の品質を向上可能である。また、湿紙Wが過剰に加熱され、縮みや皺、カール、乾燥ドラム50への貼りつき等が発生することなく、適正に湿紙Wを加熱することができる。
【0091】
湿紙Wの先頭部分Mの乾燥ドラム50との接触面の温度Twは、図3において一点鎖線で示すように、t2での乾燥ドラム50との接触開始によって温度が急激に上昇すると思われる。そして、乾燥ドラム50の回転に伴って加熱されつつ搬送され、湿紙Wに含まれる液体分が蒸発し乾燥される。乾燥ドラム50との接触面の温度は上昇し、図3のt11で、仕上げ処理が行われるのに必要な温度に達し乾燥ドラム50から剥離される。
【0092】
古紙処理装置100の大きさや抄紙速度、再生紙7の厚さ、材料である古紙10の種類等によっては、帯状の処理物の先頭部分Mを加熱する際の設定温度Tsを、図3に示した温度とは異なる温度としてもよい。例えば設定温度Tsを、予熱段階と先頭部分Mを加熱する際の加熱部72の設定温度Tsを同じとしてもよい。
【0093】
この場合、図3の湿紙Wの加熱開始前のt2までの予熱時における加熱部72の設定温度を105℃とし、湿紙Wの先頭部分Mが乾燥ドラム50に接触開始するt2から、先頭接触箇所が温度センサ66の設置位置に至るt12まで、図3の太い破線Ts1で示すように、制御部8は、乾燥ドラム50の温度を予熱時と同じ105℃に維持するよう加熱部72を制御してもよい。この場合にも、他の条件を調整し、湿紙Wを適正に加熱し、乾燥できるよう設定することで、効率よく古紙を再生処理し、品質の良好な再生紙7を得ることができる。
【0094】
湿紙Wの先頭部分Mが接触している先頭接触箇所が温度センサ66の設置位置に至るまでの加熱部の設定温度Ts1を予熱段階と同じ105℃とする場合、位置Aの温度は、図3において細い破線Ta1で示すように、t2で低下開始し、t3で80℃前後まで低下する場合があると考えられる。この80℃前後の温度Ta1は、設定温度Tsが130℃のときの位置Aの温度Taより例えば5℃程度低い温度である。
【0095】
その後位置Aの温度Ta1が定常温度の90℃に回復するまでに、設定温度Tsが130℃のときより長い時間を要すると思われ、例えばt9で定常温度の90℃に至ると考えられる。
【0096】
同様に、位置Bについても、湿紙Wの先頭部分Mが位置Bに至るときの加熱部72の設定温度Ts1を予熱段階と同じ105℃とする場合、図3のt6で位置Bに湿紙Wの先頭部分Mが到達したときの位置Bの温度Tb1は、図3で細い破線で示すように、設定温度Ts1の105℃から低下し、t7で、加熱部72の設定温度Tsが130℃のときより低い例えば86℃から89℃程度になると考えられる。また、その後、位置Bの温度Tb1が定常的な温度の93℃前後に上昇するまでに、設定温度Tsが130℃のときより長い時間、例えばt10で定常温度に至ると考えられる。
【0097】
位置Cについては、図3のt8で位置Cに先頭接触箇所が到達した後、位置Cの細い破線で示す温度Tc1は、設定温度Ts1の105℃から低下し、加熱部72の設定温度Tsが130℃のときのように、定常的な温度95℃に至る前に、これより低い例えば92℃から94℃程度まで一旦低下すると思われる。その後上昇して定常温度になると考えられる。この場合、特に先頭厚制御部によって湿紙Wの先頭部分Mの厚みが厚く形成されているときには、当該先頭部分Mは完全に乾燥されておらず、更に加熱することで液体分を蒸発させ、余分に乾燥することが可能な所定量の含水率を有することもあると考えられる。
【0098】
処理物としての湿紙Wが乾燥され、帯状の再生紙7となって乾燥ドラム50から剥離されるとき、処理物の含水率が非常に高く0%に近いときには、処理物は容易に乾燥ドラム50から剥離される。また、乾燥ドラム50から剥離される際の処理物の含水率が0%より低いが、比較的高い1~5%のときには、処理物が仕上部4で裁断処理され、図示しない紙受け台上に載置されている間に、湿度の高い季節などおいては、空気中の湿気を吸収して皺や波打ちが発生するのを抑制することができる。
【0099】
また、乾燥ドラム50から剥離される際の処理物の含水率が比較的高く6%以上あり、湿紙Wの先頭部分Mの厚みが厚く形成されている箇所が十分に乾燥できていない状態のときには、特に湿度の高い季節などに、空気中の湿気を、仕上部4を搬送中の帯状の処理物が吸収することで生じる問題、即ち、処理物の先頭部分Mが反り返り、スリッターやカッターなどの裁断機構へ上手く搬送できないといった問題を抑制することができる。
【0100】
スクレーパ55によって剥離された帯状の再生紙7は、仕上部4に送られる。仕上部4では、帯状の再生紙7が、裁断刃で所定のシートサイズに裁断されて再生紙7が完成する。その際、スリッターは、帯状の再生紙7の幅方向両端部を長手方向に沿って裁断する。カッターは、上直刃が下直刃に対し、上下動し、再生紙を幅方向に沿って裁断する。裁断刃により裁断された再生紙7の端材は、端材回収箱に回収される。端材回収箱内の端材は、図1に示すようにパルプ製造部1に戻され、再度古紙原料として再生紙7の製造に利用される。
【0101】
以上より、本実施形態に係る古紙処理装置100は、古紙10に所定の処理を施す処理部としてのパルプ製造部1、脱墨部2及び湿紙形成部11を備え、前記処理部において処理が施され、得られた処理物としての湿紙Wを加熱する加熱部72と、前記処理部における処理の開始後であって、前記処理物の加熱部72における加熱開始時点より所定時間前に加熱部72の昇温を開始するよう制御する制御部8とを備えたので、エネルギーを節約しつつ効率よく処理物を加熱することができる。
【0102】
特に、本実施形態に示すような抄紙ワイヤー23上で湿紙Wを脱水するのみで、フェルト等の吸水ベルトや非常に高い押圧力で湿紙Wを押圧するプレスローラ等の脱水機構を備えない古紙処理装置100においては、加熱部72で加熱すべき湿紙Wの含水率が非常に高くなる。このような場合、加熱部72における湿紙Wの加熱の際に、乾燥ドラム50やカンバスローラ49等の温度が局部的に急激に低下しやすく、加熱不足を引き起こしやすい。しかし本実施形態では、適正に湿紙を加熱することができる。
【0103】
本実施形態では、制御部8が、処理部としてのパルプ製造部1における離解処理の開始、脱墨部2の脱墨処理、または湿紙形成部3の湿紙形成処理のいずれかの後であって、各処理部で処理され、得られたパルプ懸濁液を抄紙して形成された湿紙Wを加熱部72において加熱開始時点より所定時間前に加熱部72の昇温を開始するよう制御するので、パルプ製造部1における高電力負荷動作の実行中に、加熱部72の加熱動作を行わないようにすることができる。
【0104】
従来からある大型の製紙装置では、水蒸気を内部に収容した巨大な加熱シリンダーを設置し、これにより高速で湿紙Wを加熱し、乾燥を行うので、設定温度の微妙な調整が困難である。本実施形態では、加熱部72にヒーターを用いることで、温度を細かく設定することができ、湿紙Wの一部のみ高い温度で、他の部分をそれより低い温度で加熱するよう制御することも可能となる。
【0105】
また、制御部8は、処理部において処理され、帯状に形成された湿紙Wの先頭部分が加熱部72へ搬送される時点より所定時間前に、加熱部72の昇温を開始するので、処理物が加熱部72に到着したときには適切に加熱部72が昇温された状態にすることができ、湿紙Wとの接触によって、加熱部72を構成する乾燥ドラム50、抄紙ワイヤー48やカンバスローラ49等の局部的な温度低下を最小限にとどめることができ、加熱不足を抑制しつつ処理物を加熱し、乾燥することができる。
【0106】
そして、制御部8は、帯状の処理物としての湿紙Wの先頭部分Mを、後続の部分より高い温度で加熱するよう加熱部72を制御する先頭高温加熱制御部を備えたので、処理物の先頭部分を加熱する際、処理物からの熱伝導や気化熱等によって局部的に温度が低下する場合でも適正に効率よく加熱することができる。
【0107】
制御部8が、処理物の最後に加熱される湿紙Wの後端部分を、この後端部分より先行して加熱される部分に比較してより低い温度で加熱する後端低温加熱制御部を備える場合には、帯状の湿紙Wの後端部分が通過した後に、湿紙Wがない状態であるにも関わらず、温度センサ66の個数や設置位置が原因で、該温度センサ66の検出値が適正な値を示さないために加熱部72が過剰に加熱されるのを抑制することができる。また、湿紙Wの後端部分はヘッドボックス12から抄紙ワイヤー23上へ流出されるパルプ懸濁液の流出量が低下し、湿紙Wの厚みが薄く形成されやすい。後端低温加熱制御部が、処理物の最後に加熱される湿紙Wの後端部分を、低い温度で加熱することで、乾燥ドラム50が過剰に乾燥されるのを抑制することができる。この湿紙Wの後端部分は、再生紙7として定型サイズに裁断せず、定型サイズより小さく裁断することで、再度古紙原料として利用することができる。
【0108】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態にかかる抄紙装置Saの概略構成を示す縦断面図である。図4に示す本第2の実施形態では、乾燥ドラム50aの設置高さが図2に示す上記第第1の実施形態に係る乾燥ドラム50より低く設定されている。
【0109】
また、図4では、抄紙ワイヤー23aが上方に向けて湾曲して走行していない。往路軌道を走行する上側の抄紙ワイヤー23aの下流側端部で、抄紙ワイヤー23aは下方へ向けて湾曲して走行するよう設置される。脱水部14aを構成する脱水ローラ45aは、水平方向へ向けて上側を走行する往路軌道の抄紙ワイヤー23aの下流側端部近傍位置に設置される。
【0110】
脱水部14aでは、一対の脱水ローラ45aによって抄紙ワイヤー23a上に形成された湿紙Wを脱水する。一対の脱水ローラ45aのうち抄紙ワイヤー23aの上側に設置された第1脱水ローラ67aによって抄紙ワイヤー23aを外方から内方へ押圧する。そして、抄紙ワイヤー23aの内方に設置された他方の脱水ローラ68aで、脱水により網目を通過した液体を下方へ案内し、液体分が湿紙Wへ逆戻りするのを防止して脱水する。第2脱水ローラ68aは、抄紙ワイヤー23aを掛け渡すベルトローラ24aを兼ねて構成する。
【0111】
図4では、挟持用ベルト48aは、乾燥ドラム50aの前側の略半円部分に巻回される。挟持用ベルト48aは、乾燥ドラム50aの下部で乾燥ドラム50aから離れ、抄紙ワイヤー23aの下方位置にまで後方へ延びて設置される。挟持用ベルト23aがかけられるカンバスローラ49aの一つは、抄紙ワイヤー23aが走行方向を上側から下側へ転換する転換位置Taの真下より後側、即ち図4において左方に位置する。
【0112】
第2の実施形態に係る抄紙部3aでは、湿紙Wの先端部分が抄紙ワイヤー23aの転換位置Taに至り、抄紙ワイヤー23aの走行方向が転換されるとき、湿紙Wの自重によって下方へ進行しようとする。この結果、湿紙Wの先端部分は抄紙ワイヤー23aから分離され、独立した状態で移動し、その後下方に設置された挟持用ベルト48aによって支持され前方へ向けて搬送される。
【0113】
第1の実施形態と同様に、湿紙Wが転換位置Taにおいて抄紙ワイヤー23aから、より確実に分離され、挟持用ベルト48へ受け渡されるようにするため、制御部が先頭厚制御部を備えることで、湿紙Wの先頭部分を、当該先頭部分に続く他の部分より厚くするようにしてもよい。
【0114】
湿紙Wの先端部分が、挟持用ベルト48aと乾燥ドラム50aとの当接部に至り、挟持用ベルト48aと乾燥ドラム50aとの間で挟持され、脱水され、乾燥される。これより、第2の実施形態に係る抄紙装置Saは、抄紙ワイヤー23aの下方に挟持用ベルト48aが設置され、湿紙Wの先端部分が抄紙ワイヤー23aから挟持用ベルト48aへ受け渡されるので、湿紙Wの先頭部分がより確実に挟持用ベルト48に受け渡される。
【0115】
本第2の実施形態では挟持用ベルト48aが、乾燥ドラム50aの前側の略半円部分に巻回されるので、第1の実施形態に比較して乾燥ドラム50aは、挟持用ベルト48aに覆われていない範囲が広い。よって、温度センサ66aの設置位置を自由に選択することができる。図4では、帯状の再生紙7を乾燥ドラム50aから剥離する剥離位置の近傍に、温度センサ66aを設置する場合を示したが、湿紙Wが乾燥ドラム50aと挟持用ベルト48aの間で挟持され、加熱部72による加熱の開始する位置の近傍に温度センサを設定してもよい。
【0116】
尚、上記各実施形態では、古紙処理装置100が、処理部として脱墨部2を備えたが、脱墨部2を省略しても構わない。また、処理部が、パルプ製造部1、脱墨部2、抄紙部3を含んだが、処理部は、古紙を繊維にまで裁断処理する裁断処理部、古紙に所定の薬剤や接着剤、バインダー等を添加して処理する添加処理部、古紙に加水処理する加水処理部、加水された古紙を圧縮する圧縮部、圧縮された古紙の処理物をシート状に形成する形成部等のうち少なくともいずれか1つとして構成してもよい。
【0117】
また、処理部において処理が施され、得られた処理物が、帯状の湿紙である場合を示したが、これに限定されず、処理物が、古紙の圧縮物であってもよく、処理物が、古紙を裁断し、薬品や接着剤を添加し、圧縮し、シート状物へ形成することで得られるシート状物であってもよい。このシート状物は、必ずしも古紙への加水または、古紙を離解する工程を含まなくてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、古紙処理装置100の運転が、一定の条件下で行われ、運転中になんからの条件が変更されることがない場合について示した。即ち、原料古紙の種類や品質、厚みなどが変更されたり、処理物として得られる湿紙Wや得られる再生紙7の厚さ、品質やサイズ、帯状の湿紙Wの搬送方向に直交す幅方向の長さ、輸送ポンプによるパルプ懸濁液のヘッドボックスへの輸送速度、抄紙ワイヤー23,23aの走行速度などの条件を一定として変更しないで古紙を処理してもよいが、しかし、これに限定されず、これらの条件の少なくともいずれ1つかを変更してもよい。条件の変更があった場合、制御部は、このような条件変更後であって、処理物の加熱部による加熱開始時点より所定時間前に、加熱部の設定温度を変更するよう制御することとしてもよい。
【0119】
即ち、例えば、処理される原料古紙の種類が、古紙処理装置の運転中に変更になる場合であって、先行して処理される古紙に比較して、後続の古紙の方が例えば炭酸カルシウム等の吸湿性の高い成分を多く含むときには、古紙の状態が異なるために、加熱部で加熱すべき熱量が異なったものとなり、設定温度を高くしなければ適正に乾燥できないといったことがある。このような場合には、制御部は、例えば後続の炭酸カルシウムを多く含む古紙のパルプ製造処理開始、またはこの古紙を離解し得られたパルプ懸濁液の抄紙開始の後、形成された処理物の加熱部による加熱開始時点より所定時間前に加熱部の昇温を開始するよう制御することができる。
【0120】
また、古紙処理装置の運転中に、処理物としての湿紙やシート状物の厚みを変更したり、湿紙や圧縮物の含水率を変更したり、湿紙やシート状物の搬送速度等といった処理速度を変更したりする場合、制御部は、条件の変更後であって、これら処理物の加熱部による加熱開始時点より所定時間前に加熱部の設定温度を変更するよう制御することができる。
【0121】
また、古紙処理装置の運転が、不具合の発生や、使用者による停止操作等何らかの理由により中断された場合、その後運転再開する際に、制御部は、加熱部による加熱を一旦中断してすぐに通電を行わないままとなるよう制御する。そして、一旦乾燥ドラム全体が、70℃といった所定温度以下になるまで放置し、温度を低下させる。加熱体への通電の再開は、温度センサの検出する乾燥ドラムの表面温度が所定温度以下である状態が所定時間に渡って継続された後とすることができる。
【0122】
これより、運転再開までの時間が短い場合、乾燥ドラムの湿紙に接触していた部分のみ表面温度が低い状態であり、他の部分は高いときに、加熱体を通電することで既に設定温度に達ししている部分を、不必要に加熱して高温にするといったことを防止できる。また、表面温度の低い部分を、設定温度まで加熱するには時間がかかるので、乾燥ドラムの表面温度が全体で所定温度以下とすることで、加熱体の通電を継続して行うようにし、短時間で、設定温度まで昇温することができる。
【0123】
また、制御部8は、処理物の先頭部分Mを後続の部分より厚く形成するよう前記処理部を制御する先頭厚制御部を備えたが、先頭部分を後続の部分と同じ厚さで形成してもよく、薄く形成してもよい。加熱部72は、処理物に接触し、処理物を加熱しながら搬送する加熱搬送部材としての乾燥ドラムと、加熱搬送部材の温度を検出する温度センサ66,66aとを備えたが、加熱搬送部材または温度センサのいずれか一方または双方を備えなくてもよい。加熱部搬送部材は、1つの乾燥ドラムによって構成される加熱搬送部材に替えて例えば、処理物を搬送した後所定位置に停止させた状態で、温風、赤外線など他のなんらかの加熱部によって加熱してもよい。
【0124】
温度センサ66,66aは、加熱処理後の処理物が加熱搬送部材から剥離される剥離位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量下流側に設置されたが、剥離位置と加熱搬送部材の移動方向で同じ位置または上流側に設置してもよい。温度センサ66,66aは、加熱処理前の処理物が加熱搬送部材に接触開始する位置より加熱搬送部材の移動方向で所定量上流側に設置されたが、接触開始位置と加熱搬送部材の移動方向で同じ位置または下流側に設置してもよい。
【0125】
制御部は、加熱搬送部材のうち、帯状の処理物の先頭部分に接触する先頭接触箇所が所定位置に至ると、加熱部72の加熱状態を変更するよう制御する加熱制御部を備えた。加熱制御部は、先頭接触箇所が温度センサの設置位置に至ったとき加熱部の加熱状態を変更した。また、加熱制御部は、先頭接触箇所が帯状の処理物の先頭部分に接触するとき加熱部の加熱状態を変更する。しかし、これらに替えて、制御部は、先頭接触箇所の位置とは無関係に、加熱部の加熱状態を変更してもよい。例えば、処理物の加熱搬送部材へ接触開始時点から所定時間経過後に加熱部を加熱するか、または加熱部の設定温度を低くすることで加熱量を低下させるよう制御してもよい。
【0126】
加熱搬送部材は、1つの乾燥ドラムによって構成されたが、複数の乾燥ドラムを備えてもよく、乾燥ドラムにかけてベルトやローラ、送風等他の手段によって処理物を搬送してもよい。加熱部72は、加熱搬送部材との間で処理物を挟持する挟持用部材としての挟持用ベルト48を備えたが、挟持用部材を備えず、加熱搬送部材へ処理物を直接転移させ、搬送してもよい。温度センサ66は、加熱搬送部材と挟持用部材とが非接触となる位置であって、加熱搬送部材の処理物搬送面に接触または非接触で設置されたが、温度センサが加熱搬送部材と挟持用部材とが接触する位置に設定されてもよい。
【0127】
また、加熱部72は、運転開始からしばらく経過後に昇温を開始した方が望ましい旨記載したが、これに替えて、古紙の処理を開始する前の時点で昇温を開始してもよい。古紙処理開始前に、抄紙ワイヤー等古紙処理装置の内部を洗浄処理する場合、このような洗浄処理と加熱部の加熱を同時に行って時間を効率よく利用することもできる。
【符号の説明】
【0128】
8 制御部、10 古紙、72 加熱部、100 古紙処理装置。
図1
図2
図3
図4