IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許-断熱材及びその方法 図1
  • 特許-断熱材及びその方法 図2
  • 特許-断熱材及びその方法 図3
  • 特許-断熱材及びその方法 図4
  • 特許-断熱材及びその方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】断熱材及びその方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20220412BHJP
   D04H 1/485 20120101ALI20220412BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F16L59/02
D04H1/485
B60R13/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020525918
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 CN2017110372
(87)【国際公開番号】W WO2019090659
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】サイ,ゾン ハイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ピンファン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ティエン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ホフダール,ゲリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】リ,カレン
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505865(JP,A)
【文献】特開平07-317173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0040580(US,A1)
【文献】国際公開第2017/084721(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0160454(US,A1)
【文献】特表平08-501655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
D04H 1/485
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維を含む不織布繊維ウェブを備える、EVバッテリー用断熱材であって、前記複数の繊維は、
100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有しない、60~100重量%の酸化ポリアクリロニトリル繊維と、
0~40重量%の、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と、
を含み、
前記不織布繊維ウェブは、15kg/m~50kg/mの平均嵩密度を有し、前記複数の繊維は、前記不織布繊維ウェブの主表面に対して垂直な方向に沿って実質的に交絡しており
前記不織布繊維ウェブは、初期厚さの37%に60時間にわたって圧縮された5分間後に、初期厚さの少なくとも70%まで回復する、
EVバッテリー用断熱材。
【請求項2】
前記不織布繊維ウェブは、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する、3~19重量%の強化繊維を含有する、請求項1に記載のEVバッテリー用断熱材。
【請求項3】
前記酸化ポリアクリロニトリル繊維は、強化繊維を除いた前記複数の繊維の85体積%超を占める、請求項1又は2に記載のEVバッテリー用断熱材。
【請求項4】
前記実質的に交絡している複数の繊維は、ニードルタック繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のEVバッテリー用断熱材。
【請求項5】
前記酸化ポリアクリロニトリル繊維は、1マイクロメートル~100マイクロメートルのメジアン繊維径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のEVバッテリー用断熱材。
【請求項6】
前記酸化ポリアクリロニトリル繊維は、5マイクロメートル~20マイクロメートルのメジアン繊維径及び25ミリメートル~75ミリメートルのメジアン繊維長を有する、請求項5に記載のEVバッテリー用断熱材。
【請求項7】
熱源と、
前記熱源を少なくとも部分的に取り囲んでいる、請求項1~のいずれか一項に記載のEVバッテリー用断熱材と、
を備える、断熱されたアセンブリ。
【請求項8】
EVバッテリー用断熱材の製造方法であって、
100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有さずかつ捲縮構成を有する酸化ポリアクリロニトリル繊維を、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と混合することと、
前記繊維の混合物を、前記強化繊維の前記外面を溶融させるのに十分な温度まで加熱して、不織布繊維ウェブを提供することと、
前記酸化ポリアクリロニトリル繊維と前記強化繊維とを、前記不織布繊維ウェブに対して垂直な方向に沿って互いに交絡させ、前記不織布繊維ウェブにおいて10kg/m~35kg/mの平均嵩密度を提供することと、を含
前記不織布繊維ウェブは、初期厚さの37%に60時間にわたって圧縮された5分間後に、初期厚さの少なくとも70%まで回復する、
EVバッテリー用断熱材の製造方法。
【請求項9】
EVバッテリー用断熱材の製造方法であって、
不織布繊維ウェブを得るために、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有しない酸化ポリアクリロニトリル繊維を、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と混合することであって、前記酸化ポリアクリロニトリル繊維は、強化繊維を除いた繊維の85体積%超を占める、混合することと、
前記繊維の混合物を、前記強化繊維の前記外面を溶融させるのに十分な温度まで加熱して、不織布繊維ウェブを提供することと、
前記酸化ポリアクリロニトリル繊維と前記強化繊維とを、前記不織布繊維ウェブに対して垂直な方向に沿って互いに交絡させ、前記不織布繊維ウェブにおいて10kg/m~50kg/mの平均嵩密度を提供することと、
を含
前記不織布繊維ウェブは、初期厚さの37%に60時間にわたって圧縮された5分間後に、初期厚さの少なくとも70%まで回復する、
EVバッテリー用断熱材の製造方法。
【請求項10】
前記不織布繊維ウェブをカレンダー加工すること、前記不織布繊維ウェブを加熱すること、及び/又は前記不織布繊維ウェブに張力を加えることによって、前記不織布繊維ウェブの主表面を平滑化することを更に含む、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項11】
前記不織布繊維ウェブは、前記平滑化された表面において密度勾配を更に含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
シリコーン、アクリレート、及びフルオロポリマーからなる群から選択されるコーティング流体で前記不織布繊維ウェブをコーティングすることを更に含み、前記不織布繊維ウェブは、0.5未満の放射率を有する、請求項8~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるEVバッテリー用断熱材。
【請求項14】
EVバッテリーを絶縁する方法であって、
前記EVバッテリーに隣接するエンクロージャを提供することと、
請求項1~及び請求項13のいずれか一項に記載のEVバッテリー用断熱材を、前記エンクロージャ内に圧縮状態で配置することと、
前記断熱材を膨張させて前記エンクロージャを実質的に満たさせることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱絶縁に使用するための物品が提供される。提供される物品は、電気自動車のためのバッテリーコンパートメントなど、自動車用途及び航空宇宙用途において断熱材(thermal insulators)として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
断熱材は、互いに熱接触している構造の間の、あるいは熱対流又は熱放射の範囲内にある構造の間の熱伝達を低減する。これらの材料は、伝導、対流、及び/又は放射の影響を軽減し、したがって、別の構造体に近接している構造体の温度を、著しくより高い又はより低い温度で安定化するのを助けることができる。構成要素の過熱を防止すること、又は高温が望まれる場合に熱損失を防止することによって、熱管理は、広範な商業用途及び工業用途において要求される機能及び性能を達成する際に重要であり得る。
【0003】
断熱材は、自動車分野及び航空宇宙分野において特に有用であり得る。例えば、自動車の内燃機関は、それらの燃焼サイクル中に大量の熱を生成する。車両の他の分野では、熱に敏感な電子構成要素を保護するために熱絶縁が使用される。このような構成要素として、例えば、センサ、バッテリー、及び電気モータを挙げることができる。燃費を最大化するために、これらの構成要素を適切に保護しながら、可能な限り薄く軽量にするような熱絶縁に対する解決策が望ましい。これらの材料は、車両の寿命にわたって耐久性が十分に維持されることが理想的である。
【0004】
好適な絶縁材料に対する需要は、電気自動車(「EV」)の出現と共に高まってきた。EVは、既定された温度範囲内で、より具体的には周囲温度付近で最適に動作する多くのリチウムイオン電池を用いる。EVは、一般に、バッテリー温度が最適温度よりも著しく低くなった場合には電気ヒータを起動し、バッテリー温度が最適温度よりも著しく高くなったときには冷却システムを起動する、バッテリー管理システムを有する。
【発明の概要】
【0005】
EVバッテリーを加熱及び冷却するために使用される動作は、加熱及び冷却しない場合に車両の駆動装置に向けられてきたバッテリーパワーを大幅に消耗し得る。冬季の間、温度が-30℃程度まで低下する可能性がある一方で、夏季の路面温度は、65℃を超えることがある。寒い気候において毛布が人体の熱を温存することによって快適性を提供するのと同様に、熱絶縁は、極端な温度においてEVバッテリーを保護するために必要とされるパワーを受動的に最小限に抑える。
【0006】
EVバッテリー用途のための絶縁材料の開発者は、手強い技術的課題に直面している。例えば、EVバッテリーの絶縁材料は、バッテリーからの発火を消火する又はその広がりを遅らせるために、厳格な難燃性要件を満たしながら、低い熱伝導率を示さなければならない。難燃性の一般的な試験は、UL-94V0火炎試験である。また、好適な断熱材は、弾性的に曲がりかつ縮むことで不規則な形状のエンクロージャに容易に挿入されて膨張し、その周囲の空間を完全に占めることができることが望ましい。最後に、これらの材料は、製造プロセスにおける取り扱い及び設置を容易にするために、十分な機械的強度及び引き裂き抵抗を示さなければならない。
【0007】
提供される物品及び方法は、酸化ポリアクリロニトリル繊維と任意に1種以上の強化繊維とを含む熱絶縁性繊維を含有する交絡不織布繊維ウェブを使用して、これらの問題に対処する。繊維は、材料に強度を付与し、かつ、火炎処理への曝露時に膨らまないようにするために、不織布繊維ウェブの主表面に対して垂直な方向に交絡している。強化繊維を加熱時に少なくとも部分的に溶融させて、強度が向上した結合ウェブを形成することができる。任意に、繊維の1つ又は両方のセットは、ウェブ厚さをより大きくし、かつ、嵩密度を低減するために、捲縮構成を有する。
【0008】
第1の態様において、断熱材が提供される。断熱材は、複数の繊維を含む不織布繊維ウェブを備え、複数の繊維は、60~100重量%の酸化ポリアクリロニトリル繊維と、0~40重量%の、100℃~300℃であるポリマーで構成される外面を有する強化繊維と、を備え、不織布繊維ウェブは、15kg/m~50kg/mの平均嵩密度を有し、複数の繊維は、不織布繊維ウェブの主表面に対して垂直な方向に沿って実質的に交絡している。
【0009】
第2の態様において、熱源と、熱源を少なくとも部分的に取り囲んでいる、前述の断熱材と、を備える、断熱されたアセンブリが提供される。
【0010】
第3の態様において、断熱材の製造方法であって、捲縮構成を有する酸化ポリアクリロニトリル繊維を、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と混合することと、繊維の混合物を、強化繊維の外面を溶融させるのに十分な温度まで加熱して、不織布繊維ウェブを提供することと、酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維とを、不織布繊維ウェブに対して垂直な方向に沿って互いに交絡させ、不織布繊維ウェブにおいて10kg/m~35kg/mの平均嵩密度を提供することと、を含む、製造方法が提供される。
【0011】
第4の態様において、断熱材の製造方法であって、不織布繊維ウェブを得るために、酸化ポリアクリロニトリル繊維を、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と混合することであって、酸化ポリアクリロニトリル繊維は、強化繊維を除いた繊維の85体積%超を占める、混合することと、繊維の混合物を、強化繊維の外面を溶融させるのに十分な温度まで加熱して、不織布繊維ウェブを提供することと、酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維とを、不織布繊維ウェブに対して垂直な方向に沿って互いに交絡させ、不織布繊維ウェブにおいて10kg/m~35kg/mの平均嵩密度を提供することと、を含む、製造方法が提供される。
【0012】
第5の態様では、電気自動車用バッテリーを絶縁する方法であって、電気自動車用バッテリーに隣接するエンクロージャを提供することと、前述の断熱材を、エンクロージャ内に圧縮状態で配置することと、熱絶縁を膨張させてエンクロージャを実質的に満たさせることと、を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書で提供されるように、
図1】様々な例示的実施形態による、断熱材の側面断面図である。
図2】様々な例示的実施形態による、断熱材の側面断面図である。
図3】様々な例示的実施形態による、断熱材の側面断面図である。
図4】様々な例示的実施形態による、断熱材の側面断面図である。
図5】断熱されたEVバッテリーアセンブリの側面断面図である。
【0014】
明細書及び図面中での参照文字の繰り返しの使用は、本開示の同じ又は類似の特徴部又は要素を表すことが意図されている。多くの他の修正形態及び実施形態を当業者は考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に含まれることが理解されるべきである。図面は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【0015】
定義
本明細書で用いる場合、
「周囲条件」は、25℃かつ101.3kPaの圧力を意味する。
「平均」は、特に指定しない限り、数平均を意味する。
「コポリマー」は、2つ以上の異なるポリマーの繰り返し単位から作製されるポリマーを指し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及び星型(例えば樹状)コポリマーを含む。
不織布繊維ウェブにおける繊維の「メジアン繊維径」は、走査型電子顕微鏡を使用することなどによって、繊維構造体の1つ以上の画像を生成し、1つ以上の画像においてはっきりと見えている繊維の横断方向寸法を測定して、繊維径の合計数を求め、その繊維系の合計数に基づいてメジアン繊維径を計算することによって決定される。
「不織布繊維ウェブ」は、個々の繊維又はフィラメントが相互に重なり合っているが、編布として識別可能な状態ではない構造を呈するシート又はマットを形成する、繊維の交絡又は点接着を特徴とする複数の繊維を意味する。
「ポリマー」は、少なくとも10,000g/molの分子量を有する、比較的高い分子量の材料を意味する。
「サイズ」は、所与の物体又は表面の最長寸法を指す。
「実質的に」は、少なくとも、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は99.999%、又は100%の量のように有意な程度を意味する。
「厚さ」は、単層物品又は多層物品の対向する面の間の距離を意味する。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本明細書で使用するとき、「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の利点をもたらすことができる本明細書に記載される実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを意図するものでもない。
【0017】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上特に明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、1つ以上の構成要素及び当業者に公知のその等価物を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0018】
用語「含む」及びその変形は、これらの用語が添付の説明に現れた場合、限定的意味はないことに注意されたい。また更に、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、垂直などの相対語が、本明細書において使用される場合があり、その場合、特定の図面において見られる視点からのものである。これらの用語は、説明を簡単にするためだけに使用される。しかしながら、本発明の範囲を決して制限しない。
【0019】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」に対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」、又は「ある実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。該当する場合、商品名は、全て大文字で記載する。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態による断熱材を示し、以降では参照数字100で示す。断熱材100は、対向している第1の主表面104及び第2の主表面106を有する不織布繊維ウェブ102を含む。
【0021】
不織布繊維ウェブ102は、酸化ポリアクリロニトリル繊維108を含む複数の繊維で構成される。酸化ポリアクリロニトリル繊維108として、商品名PYRON(Zoltek Corporation(Bridgeton,MO))及びPANOX(SGL Group(Meitingen,GERMANY))で入手可能なものが挙げられる。
【0022】
酸化ポリアクリロニトリル繊維100は、アクリロニトリル及び1種以上のコモノマーを含有するポリマー前駆体から誘導される。有用なコモノマーとして、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ビニルアセテート、及び塩化ビニルが挙げられる。コモノマー(単数又は複数)は、ポリマー前駆体の総重量に対して、最大で、15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、11重量%、10重量%、9重量%、又は8重量%の量で存在し得る。
【0023】
前駆体繊維の酸化は、最初に、前駆体繊維を高温で安定化させて繊維の溶融又は溶解を防止し、安定化された繊維を炭化して非炭素元素を除去し、最後に、更に高温で黒鉛化処理を行って不織布繊維の機械的特性を向上させることによって達成することができる。酸化ポリアクリロニトリル繊維100は、部分的に又は完全に酸化されていてもよい。
【0024】
安定化は、空気中又は何らかの他の酸化性雰囲気中で、前駆体繊維を制御して加熱することによって実行することができる。酸化は、典型的には180℃~300℃の範囲の温度で、1分当たり1~2℃の加熱速度で起こる。
【0025】
所望であれば、低温安定化処理中に繊維をそれらの軸に沿って伸張させることによって、前駆体繊維の収縮を最小限に抑えることができる。伸張は、繊維の軸に沿って高度な好ましい配向を有する酸化ポリアクリロニトリル繊維を生成することができる。安定化プロセスにより、アクリル前駆体の化学構造の変化が生じ、それにより、後続の高温処理に対して材料が熱的に安定する。このプロセスの間、繊維の色が黒色に変化する。黒色の繊維を、繊維の分子秩序に対する損傷を回避するために、不活性雰囲気中で典型的には1000℃~1500℃の高温で、かつ、ゆっくりとした加熱速度で炭化させる。繊維のテクスチャを改善し、かつ、不織布繊維ウェブ102の引張弾性率を高めるために、繊維に対して、高温で、例えば2000℃超~3000℃で黒鉛化処理を行うことができる。所望であれば、繊維の強度及び引張弾性率は、高い温度で伸張することによって更に改善され得る。
【0026】
酸化ポリアクリロニトリル繊維108は、不織布繊維ウェブ内における繊維の交絡を可能にする繊維径及び繊維長を有することが好ましい。しかしながら、繊維は、ウェブ強度が過度に損なわれるほど細くないことが好ましい。繊維108は、1マイクロメートル~100マイクロメートル、2マイクロメートル~50マイクロメートル、5マイクロメートル~20マイクロメートルのメジアン繊維径を有してもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、1マイクロメートル、2マイクロメートル、3マイクロメートル、5マイクロメートル、7マイクロメートル、10マイクロメートル、15マイクロメートル、20マイクロメートル、25マイクロメートル、30マイクロメートル、40マイクロメートル、50マイクロメートル、60マイクロメートル、70マイクロメートル、80マイクロメートル、90マイクロメートル、又は100マイクロメートルよりも小さい、それに等しい、又はそれよりも大きいメジアン繊維径を有してもよい。
【0027】
長い繊維を含めることにより、繊維の脱落を低減し、横断方向に沿った不織布繊維ウェブの強度を更に向上させることができる。酸化ポリアクリロニトリル繊維108は、10ミリメートル~100ミリメートル、15ミリメートル~100ミリメートル、25ミリメートル~75ミリメートルのメジアン繊維長を有してもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、10ミリメートル、12ミリメートル、15ミリメートル、17ミリメートル、20ミリメートル、25ミリメートル、30ミリメートル、35ミリメートル、40ミリメートル、45ミリメートル、50ミリメートル、55ミリメートル、60ミリメートル、65ミリメートル、70ミリメートル、又は75ミリメートルよりも小さい、それに等しい、又はそれよりも大きいメジアン繊維長を有してもよい。
【0028】
不織布繊維ウェブ102を形成するために使用される酸化ポリアクリロニトリル繊維108は、バルク繊維から調製することができる。バルク繊維を、開放/混合機械の入口コンベヤーベルト上に置いて、開放/混合機械の中で、バルク繊維を引き裂いて離し、コームを回転させることによって混合することができる。次いで、繊維をウェブ形成機器にブローイングして、ドライレイド不織布繊維ウェブを形成する。
【0029】
代替として、SPIKEエアレイ式形成装置(FormFiber NV(Denmark)から市販されている)を使用して、これらのバルク繊維を含有する不織布繊維ウェブを調製することができる。SPIKE装置及びエアレイドウェブを形成する際のSPIKE装置の使用方法の詳細は、米国特許第7,491,354号(Andersen)及び同第6,808,664号(Falkら)に記載されている。
【0030】
コンベヤーベルトを用いて、バルク繊維を、2つの回転するスパイクローラーを有する分割型プレオープン及びブレンドチャンバに供給することができる。その後、ブロワーを用いて、バルク繊維を形成チャンバの上部に供給する。チャンバの上部で繊維材料を開放して毛羽立たせ、次いで、スパイクローラーの上側列を通して形成チャンバの底部に落とすことによって、スパイクローラーの下側列を通過させることができる。次いで、多孔質の形成ベルト/ワイヤの下端から形成チャンバに加えられる重力と真空との組み合わせによって、多孔質の無端ベルト/ワイヤ上に材料を引き下げることができる。
【0031】
あるいは、エアレイド機械で不織布繊維ウェブ102を形成することができる。ウェブ形成機器は、例えば、Rando Machine Co.,(Macedon,NY)から市販されているRANDO-WEBBERデバイスであってもよい。あるいは、ウェブ形成機器は、エアレイ加工ではなく、梳綿及びクロスラッピングによってドライレイドウェブを生成するものであってもよい。クロスラッピングは、(例えば、ASSELIN-THIBEAU(Elbeuf sur Seine,76504 France)から市販されているPROFILE SERIESのクロスラッパーを使用して)水平としても、あるいは、(例えば、University of Liberec(Czech Republic)のSTRUTOシステム、又はSantex AG(Switzerland)のWAVE-MAKERシステムを使用して)垂直としてもよい。
【0032】
不織布繊維ウェブ102は、第1の主表面104と第2の主表面106との間に完全に又は部分的に延在する交絡領域110を含む。交絡領域110は、2種以上の別個の繊維108が撚り合わされている場所を表す。これらの交絡領域110内の繊維は、物理的に付着されていないが、反対方向に引っ張られたときに抵抗して離れないように相互に撚られている。交絡領域110が存在する場合、不織布繊維ウェブ102中の複数の繊維は、第1の主表面104及び第2の主表面106に対して垂直な方向に沿って実質的に交絡している。
【0033】
いくつかの実施形態では、交絡は、ニードルタックプロセス又は水流交絡プロセスによって誘導される。これらのプロセスのそれぞれについて、下記により詳細に記述する。
【0034】
不織布繊維ウェブは、有刺ニードル(例えば、Foster Needle Company,Inc.(Manitowoc,WI)から市販されている)と共に、従来のニードルタック装置(例えば、ドイツのDiloからDILOの商品名で市販されているニードルタッカーを使用してニードルタックすることができ、それによって、上述の実質的に交絡している繊維が、ニードルタック繊維となる。ニードルパンチとも呼ばれるニードルタックは、不織布繊維ウェブを通して有刺ニードルのアレイを繰り返し通過させ、不織布繊維ウェブの繊維に沿って引っ張りながら有刺ニードルを引っ込めることによって、不織布繊維ウェブの主表面に対して垂直な繊維を交絡させる。
【0035】
使用される針の種類、貫通深さ、及びストローク速度を含むニードルタックプロセスのパラメータは、特に制限されない。更に、マットの面積当たりのニードルタックの最適数は、適用例に応じて変動する。典型的には、不織布繊維ウェブは、少なくとも5ニードルタック/cmの平均を提供するようにニードルタックされる。好ましくは、マットは、平均約5~60ニードルタック/cm、より好ましくは平均約10~約20ニードルタック/cmを提供するようにニードルタックされる。
【0036】
ニードルタックに関連する更なる選択肢及び利点は、例えば、米国特許公開第2006/0141918号(Rienke)及び同第2011/0111163号(Bozouklianら)に記載されている。
【0037】
不織布繊維ウェブは、従来の水交絡ユニット(Honeycomb Systems Inc.(Bidderford,Me.)から市販されており、その繊維交絡の教示に関して参照によりその開示が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,880,168号(Randall,Jr.)を参照されたい)を使用して水流交絡することができる。水流交絡装置と共に使用するのに好ましい液体は水であるが、水と共に又は水の代わりに、他の好適な液体を使用してもよい。
【0038】
水交絡プロセスでは、水などの加圧された液体が、カーテン状のアレイで、液体流の下を通る不織布繊維ウェブ上に送達される。マット又はウェブは、コンベヤーベルトとして機能するワイヤスクリーンによって支持されている。マットは、ジェットオリフィスの下で、ワイヤスクリーンコンベヤー上の交絡ユニットに供給される。ワイヤスクリーンは、交絡されたマットの最終的な所望の外観に応じて選択される。粗いスクリーンは、スクリーンの穴に対応する穿孔を有するマットを生成することができ、一方、非常に細かいスクリーン(例えば、100メッシュ)は、目立った穿孔がないマットを生成することができる。
【0039】
図2は、対向している第1の主表面204及び第2の主表面206を有する不織布繊維ウェブ202を有する、絶縁体(insulator)100と同様の断熱材200を示している。ウェブ202は、複数の酸化ポリアクリロニトリル繊維208と複数の強化繊維216の両方を含むという点で、前述の例とは異なっている。
【0040】
強化繊維216は、不織布繊維ウェブ202の後続の溶融処理を可能にするのに十分に低い溶融温度を有するバインダー繊維を含んでもよい。バインダー繊維は一般に、ポリマーであり、均一な組成を有してもよく、又は2種以上の成分を含有してもよい。いくつかの実施形態では、バインダー繊維は、繊維の軸に沿って延在し、かつ、円筒状シェルポリマーによって取り囲まれている、コアポリマーで構成される2成分繊維である。シェルポリマーは、コアポリマーの溶融温度よりも低い溶融温度を有することができる。
【0041】
しかしながら、本明細書で使用するとき、「溶融(melting)」は、ポリエステルが接触することになる他の繊維と接合するのに十分に柔らかく、かつ粘着性になる高い温度における、繊維の、又は2成分シェル/コア繊維の場合には繊維の外面の漸進的な変換を指し、これらの繊維は、酸化ポリアクリロニトリル繊維及び同じ特性を有する任意の他のバインダー繊維を含み、上記のように、より高い又はより低い溶融温度を有し得る。
【0042】
ポリエステルなどの特定の熱可塑性材料は、溶融されると粘着性になることができ、バインダー繊維の外面にとって好適な材料になる。有用なバインダー繊維は、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面、あるいは、いくつかの実施形態では、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、又は300℃よりも低い、それと等しい、又はそれよりも高い溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する。
【0043】
例示的なバインダー繊維としては、例えば、ポリエステルコア及びコポリエステルシースを有する2成分繊維である、KoSaのType 254 CELBONDが挙げられる。シース成分の溶融温度は、約230°F(110℃)である。バインダー繊維はまた、2成分繊維ではなく、ポリエステルのホモポリマー又はコポリマーとすることができる。
【0044】
バインダー繊維は、構成繊維が互いに物理的に付着されているノードの3次元アレイを生成することによって、絶縁体200内の構造的一体性を増大させる。これらのノードは、巨視的な繊維ネットワークを提供し、それによって引き裂き強度、引張弾性率が増大し、最終製品の寸法安定性が維持され、繊維の脱落が最小限に抑えられる。有利には、バインダー繊維を組み込むことにより、不織布繊維ウェブの構造的一体性を維持しながら、嵩密度を低減することが可能になり、その結果、重量と熱伝導率の両方が減少する。
【0045】
不織布繊維ウェブ102、202の熱伝導係数Kは、その平均嵩密度に強く依存し得ることが分かった。不織布繊維ウェブの平均嵩密度が50kg/mよりも著しく高い場合、例えば、繊維自体を通じた熱伝導によって、絶縁体を通じて有意な量の熱を伝達することがある。平均嵩密度が15kg/mよりも著しく低い場合、繊維を通じた熱伝導は小さくなるが、対流熱伝達は有意になり得る。平均嵩密度の更なる低下はまた、不織布繊維ウェブの強度を著しく低下させることがあり、これは望ましくない。
【0046】
例示的な実施形態では、不織布繊維ウェブ102、202は、15kg/m~50kg/m、15kg/m~40kg/m、20kg/m~30kg/mの平均嵩密度を有し、あるいは、いくつかの実施形態では、15kg/m、16kg/m、17kg/m、18kg/m、19kg/m、20kg/m、22kg/m、24kg/m、25kg/m、26kg/m、28kg/m、30kg/m、32kg/m、35kg/m、37kg/m、40kg/m、42kg/m、45kg/m、47kg/m、又は50kg/mよりも低い、それと等しい、又はそれよりも高い平均嵩密度を有する。
【0047】
したがって、熱伝導及び対流の全体的な影響を低減することにより、驚くほど低い熱伝導係数を達成することが可能である。提供される断熱材の不織布繊維ウェブは、ASTM D1518-85(再承認2003)に従った周囲条件において、0.035W/K-m未満、0.033W/K-m未満、0.032W/K-m未満の熱伝導係数を示してもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、0.031W/K-m、0.032W/K-m、0.033W/K-m、0.034W/K-m、又は0.035W/K-mよりも低い、それと等しい、又はそれよりも高い熱伝導係数を示してもよい。これらの範囲の熱伝導係数は、不織布繊維ウェブがその弛緩構成(すなわち、圧縮されていない)で得ることができ、あるいは、ASTM D5736-95(再承認2001)に基づいて元の厚さの20%まで圧縮することができる。
【0048】
不織布繊維ウェブ202中の酸化ポリアクリロニトリル繊維208は可燃性ではない。驚くべきことに、FAR 25-856a火炎試験において、強化繊維の燃焼は、断熱材において有意な寸法変化を起こさない(収縮せず、かつ膨張しない)ことが分かった。この利点は、不織布繊維ウェブの主表面に対して垂直な繊維交絡の効果であると思われる。
【0049】
酸化ポリアクリロニトリル繊維208は、絶縁体200に適切な難燃性及び絶縁性を提供するのに十分な任意の量で存在し得る。酸化ポリアクリロニトリル繊維208は、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、81重量%~100重量%の量で存在してもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、又は95重量%よりも低くても、それと等しくても、又はそれよりも高くても、あるいは、100重量%以下であってもよい。強化繊維216は、0重量%~40重量%、3重量%~30重量%、3重量%~19重量%の量で存在してもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、0重量%以上、あるいは、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、7重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、又は50重量%よりも低くても、それと等しくても、又はそれよりも高くてもよい。
【0050】
酸化ポリアクリロニトリル繊維208と強化繊維216との好ましい重量比は、絶縁体200に高い引張強度と引き裂き抵抗の両方、並びに、許容可能な難燃性、例えば、UL-94V0火炎試験に合格する能力を与える。酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維との重量比は、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1であってもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1よりも小さくても、それと等しくても、又はそれよりも大きくてもよい。
【0051】
更なる選択肢として、不織布繊維ウェブ102、202は、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する酸化ポリアクリロニトリル繊維でも強化繊維でもない複数の繊維を含むことが可能である。このような繊維は、例えば、溶融温度が300℃を超えるポリエステル繊維を含んでもよい。しかしながら、絶縁体100、200の難燃性を最大化するために、酸化ポリアクリロニトリル繊維は、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有さない複数の繊維の85体積%超、90体積%超、又は95体積%超を占めることが好ましい。
【0052】
任意に、図に示されるように、酸化ポリアクリロニトリル繊維108、208及び強化繊維116、216をそれぞれ捲縮して、捲縮構成(例えば、ジグザグ形状、正弦波形状、又は螺旋形状)を提供する。あるいは、酸化ポリアクリロニトリル繊維108、208及び強化繊維116、216の一部又は全ては、直線的な構成を有する。捲縮される酸化ポリアクリロニトリル繊維108、208及び/又は強化繊維116、216の画分は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%よりも低くても、それと等しくても、又はそれよりも高くてもよい。捲縮は、欧州特許第0714248号により詳細に記載されており、不織布繊維ウェブの単位重量当たりの嵩又は体積を著しく増大させることができる。
【0053】
図3は、絶縁体100、200の同じ特徴部を有するが、絶縁体300の第1及び第2の主表面上に露出した平滑化された表面320、322を更に含む、断熱材300を対象とする。平滑化された表面320、322は、任意の既知の方法によって得ることができる。例えば、不織布繊維ウェブをカレンダー加工すること、不織布繊維ウェブを加熱すること、及び/又は不織布繊維ウェブに張力を加えることによって、平滑化を達成してもよい。いくつかの実施形態では、平滑化された表面320、322は、不織布繊維ウェブの露出面において繊維を部分的に溶融することによって生成されるスキン層である。
【0054】
いくつかの実施形態では、平滑化された表面320、322に密度勾配が存在してもよい。例えば、平滑化された表面の、露出した主表面に近接している部分は、露出した主表面から離れている部分よりも高い密度を有してもよい。平滑化された表面320、322の一方又は両方における嵩密度が増大すると、不織布繊維ウェブの引張強度及び引き裂き抵抗を更に向上させることができる。表面の平滑化はまた、平滑化されていない場合に絶縁体300の取り扱い又は輸送において起こる繊維の脱落の程度を低減することができる。更に別の利点は、空気の通過を妨げることによって熱対流が、したがって、不織布繊維ウェブを通る熱対流が低減されることである。いくつかの実施形態では、一方又は両方の平滑化された表面320、322は、不織布繊維ウェブを通って空気が流れることを防止するように、非多孔質であってもよい。
【0055】
図4は、酸化ポリアクリロニトリル繊維408及び強化繊維416を含む、複数の繊維で構成される不織布繊維ウェブ402を有する更に別の断熱材400を示している。図4の色のコントラストによって示されるように、酸化ポリアクリロニトリル繊維408及び強化繊維416はコーティングされている。繊維上のコーティングは、例えば、シリコーン、アクリレート、及びフルオロポリマーから選択することができ、それにより、不織布繊維ウェブは0.5未満の放射率を有する。ここで、「放射率」は、同じ温度及び波長で、かつ、同じ観察条件下において、材料の表面から放射されるエネルギーと黒体(完全放射体)から放射されるエネルギーの比率として定義される。放射率の低減は、熱放射による材料が熱を損失する程度を低下させるのに役立つ。
【0056】
不織布繊維ウェブ402の構成繊維をコーティングすることにより、様々な機能的及び/又は審美的な利点を付与することができる。例えば、繊維のコーティングは、繊維を強化する効果を有し、したがって、ウェブの全体的な強度を増大させる。フルオロポリマー及びシリコーンなどの特定のコーティング材料は、繊維の表面に浮遊物質が付着していることに起因する着色又は汚染に対する耐性を向上させることができる。いくつかの用途では、繊維を不透明なコーティングにシースすることが望ましいことがあり、また、酸化ポリアクリロニトリル繊維に起因して典型的には黒色又は灰色である、不織布繊維ウェブ402の色を変化させるために使用することができる。
【0057】
絶縁体200、300、400の更なる態様は、絶縁体100に関して既に説明されたものと類似しており、ここでは繰り返さない。
【0058】
図1図4に関して記載される断熱材の不織布繊維ウェブは、手で適用するために割り当てられた空間に基づいて、任意の好適な厚さを有することができる。一般的な用途では、不織布繊維ウェブは、1ミリメートル~50ミリメートル、2ミリメートル~25ミリメートル、3ミリメートル~20ミリメートルの厚さを有してもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、1ミリメートル、2ミリメートル、3ミリメートル、4ミリメートル、5ミリメートル、6ミリメートル、7ミリメートル、8ミリメートル、9ミリメートル、10ミリメートル、12ミリメートル、15ミリメートル、17ミリメートル、20ミリメートル、22ミリメートル、25ミリメートル、27ミリメートル、30ミリメートル、35ミリメートル、40ミリメートル、45ミリメートル、又は50ミリメートルよりも小さい、それに等しい、又はそれよりも大きい厚さを有してもよい。
【0059】
前述したように、繊維寸法、強化繊維上における結合部位の存在、繊維の交絡、及び全体の嵩密度を含む多くの因子が、不織布繊維ウェブによって示される機械的特性に影響を及ぼす。引張強度及び引張弾性率は、不織布繊維ウェブの特性を特徴付けることができる指標である。
【0060】
引張弾性率は、一般に、材料の剛性を示しており、7kPa~1400kPa、70kPa~550kPa、140kPa~350kPaであってもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、5kPa、7kPa、10kPa、15kPa、20kPa、25kPa、30kPa、40kPa、50kPa、60kPa、70kPa、80kPa、90kPa、100kPa、120kPa、140kPa、150kPa、200kPa、250kPa、300kPa、350kPa、400kPa、450kPa、500kPa、550kPa、600kPa、700kPa、800kPa、900kPa、1000kPa、1100kPa、1200kPa、1300kPa、又は1400kPaよりも低くても、それと等しくても、又はそれよりも高くてもよい。引張強度は、引き裂き又は恒久的歪みに対する不織布繊維ウェブの抵抗を表し、少なくとも28kPa、少なくとも32kPa、少なくとも35kPaであってもよく、あるいは、いくつかの実施形態では、28kPa、29kPa、30kPa、31kPa、32kPa、33kPa、34kPa、35kPa、36kPa、37kPa、38kPa、39kPa、40kPa、42kPa、44kPa、45kPa、47kPa、又は50kPaよりも低くても、それと等しくても、又はそれよりも高くてもよい。
【0061】
驚くべきことに、不織布繊維ウェブの主表面に対して垂直に不織布繊維ウェブの繊維を交絡させ、15kg/m~50kg/mの範囲の嵩密度を有する材料を生成することにより、UL-94V0火炎試験又はFAR 25-856a火炎試験における体積膨張に関連する技術的問題を解決したことが分かった。具体的には、従来の酸化ポリアクリロニトリル材料は火炎試験後に大幅に膨らむことが観察されたが、提供される断熱材は膨らまないことが分かった。いくつかの実施形態では、火炎試験後における、提供される不織布繊維ウェブの厚さの元の寸法に対する偏差は、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、若しくは3%未満であり、あるいは、いくつかの実施形態では、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、又は3%よりも低い、それと等しい、又はそれよりも大きい。
【0062】
断熱材100、200、300、400は、任意に、図1図4には明示されていない追加の層を含んでもよい。設置を支援するために、例えば、これらの例示的な断熱材のいずれかは、感圧接着剤層などの接着剤層、又は不織布繊維ウェブ全体に延在し、不織布繊維ウェブと接触する他の付着層を更に含んでもよい。別の可能性として、これらの絶縁体のいずれかは、不織布繊維ウェブに隣接するアルミニウムシート又は箔層などの中実の熱バリアを含んでもよい。いくつかの用途では、不織布繊維ウェブに、1つ以上の音響絶縁層が結合されていてもよい。
【0063】
図5は、自動車用途のEVバッテリーパックを収容する受動断熱されたアセンブリ500の概略図である。アセンブリ500は、車のシャーシの下方に取り付けられ、典型的にはガラス繊維で作製される底部プレート530によって保持され得る。本明細書に記載されるような断熱材532によって境界を定められた底面を有するバッテリーパック540が中央に位置している。ここには示されていないが、バッテリーパック540の上部に知って又は側面のいずれかに沿って、追加の断熱材を配置してもよい。
【0064】
図5に更に示すように、バッテリーパック540及び絶縁体532は、アルミニウム又は複合材料で作製され得るケース542の中にまとめて封入されている。追加の断熱材534、536、538、539は、図示のようにケース542の周囲に配置され、外部環境からの更なる絶縁を提供するためにその周囲を部分的に取り囲んでいる。任意に、図示されるように、ケース542は、冷媒を循環させるためのチャネルを収容するために、その底面に沿って複数の突出部543を有する。この受動熱システムでは、バッテリーパック540は、ケース542内のエンクロージャを所定の温度範囲内に維持するのを助ける熱源として機能する。
【0065】
熱絶縁は、任意の好適な方法を使用して設置することができる。提供される断熱材は、適合可能であるだけでなく、圧縮すること、及び空洞又はエンクロージャを満たすために膨張することが可能であり、その中に、断熱材が収容される。ケース542の外周に沿ったエンクロージャは、不規則な形状であってもよく、及び/又は、図示のように、厚さを有意に変動させてもよい。EV用途で使用されるエンクロージャは、場合によっては、エンクロージャの最大厚さ寸法に対して10%~100%の範囲の厚さ変動率を有し得る。例示的な設置において、提供される断熱材を、このようなエンクロージャ内に圧縮状態で置き、次いで膨張させてエンクロージャを実質的に満たさせることができる。
【0066】
これらの材料の弾力性は、圧縮直後の寸法回復に基づいて特徴付けることができる。好ましい実施形態では、例えば、厚さは、周囲条件において、元の厚さの37%に圧縮された5分後に、元の厚さの少なくとも70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、87%、90%、92%、又は95%まで回復する。
【0067】
包括的であることを意図するものではないが、例示的実施形態のリストは次のとおりにである。
1.複数の繊維を含む不織布繊維ウェブを備える、断熱材であって、複数の繊維は、60~100重量%の酸化ポリアクリロニトリル繊維と、0~40重量%の、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と、を含み、不織布繊維ウェブは、15kg/m~50kg/mの平均嵩密度を有し、複数の繊維は、不織布繊維ウェブの主表面に対して垂直な方向に沿って実質的に交絡している、断熱材。
2.不織布繊維ウェブは、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する、3~30重量%の強化繊維を含有する、実施形態1に記載の断熱材。
3.不織布繊維ウェブは、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する、3~19重量%の強化繊維を含有する、実施形態2に記載の断熱材。
4.不織布繊維ウェブは、15kg/m~40kg/mの平均嵩密度を有する、実施形態1~3のいずれか一つに記載の断熱材。
5.不織布繊維ウェブは、20kg/m~30kg/mの平均嵩密度を有する、実施形態4に記載の断熱材。
6.酸化ポリアクリロニトリル繊維は、強化繊維を除いた複数の繊維の85体積%超を占める、実施形態1~5のいずれか一つに記載の断熱材。
7.酸化ポリアクリロニトリル繊維の少なくとも一部は、捲縮構成を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の断熱材。
8.実質的に交絡している複数の繊維は、ニードルタック繊維を含む、実施形態1~7のいずれか一つに記載の断熱材。
9.不織布繊維ウェブは、1ミリメートル~50ミリメートルの厚さを有する、実施形態1~8のいずれか一つに記載の断熱材。
10.不織布繊維ウェブは、2ミリメートル~25ミリメートルの厚さを有する、実施形態9に記載の断熱材。
11.不織布繊維ウェブは、3ミリメートル~20ミリメートルの厚さを有する、実施形態10に記載の断熱材。
12.酸化ポリアクリロニトリル繊維は、1マイクロメートル~100マイクロメートルのメジアン繊維径を有する、実施形態1~11のいずれか一つに記載の断熱材。
13.酸化ポリアクリロニトリル繊維は、2マイクロメートル~50マイクロメートルのメジアン繊維径を有する、実施形態12に記載の断熱材。
14.酸化ポリアクリロニトリル繊維は、5マイクロメートル~20マイクロメートルのメジアン繊維径を有する、実施形態13に記載の断熱材。
15.酸化ポリアクリロニトリル繊維は、10ミリメートル~100ミリメートルのメジアン繊維長を有する、実施形態1~14のいずれか一つに記載の断熱材。
16.酸化ポリアクリロニトリル繊維は、15ミリメートル~100ミリメートルのメジアン繊維長を有する、実施形態15に記載の断熱材。
17.酸化ポリアクリロニトリル繊維は、25ミリメートル~75ミリメートルのメジアン繊維長を有する、実施形態16に記載の断熱材。
18.酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維との重量比は、少なくとも4:1である、実施形態1~17のいずれか一つに記載の断熱材。
19.酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維との重量比は、少なくとも5:1である、実施形態18に記載の断熱材。
20.酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維との重量比は、少なくとも10:1である、実施形態19に記載の断熱材。
21.不織布繊維ウェブは、7kPa~1400kPaの引張弾性率を有する、実施形態1~20のいずれか一つに記載の断熱材。
22.不織布繊維ウェブは、70kPa~550kPaの引張弾性率を有する、実施形態21に記載の断熱材。
23.不織布繊維ウェブは、140kPa~350kPaの引張弾性率を有する、実施形態22に記載の断熱材。
24.不織布繊維ウェブは、28kPa超の引張強度を有する、実施形態1~23のいずれか一つに記載の断熱材。
25.不織布繊維ウェブは、周囲条件で元の厚さの37%に圧縮された5分後に、元の厚さの少なくとも70%まで回復する、実施形態1~24のいずれか一つに記載の断熱材。
26.不織布繊維ウェブは、その弛緩構成において、0.035W/K-m未満の熱伝導係数を有する、実施形態1~25のいずれか一つに記載の断熱材。
27.不織布繊維ウェブは、元の厚さの20%に圧縮されたときに、0.035W/K-m未満の熱伝導係数を有する、実施形態26に記載の断熱材。
28.熱源と、熱源を少なくとも部分的に取り囲んでいる、実施形態1~27のいずれか一つに記載の断熱材と、を備える、断熱されたアセンブリ。
29.熱源は、電気自動車用バッテリーを含む、実施形態28に記載のアセンブリ。
30.断熱材の製造方法であって、捲縮構成を有する酸化ポリアクリロニトリル繊維を、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と混合することと、繊維の混合物を、強化繊維の外面を溶融させるのに十分な温度まで加熱して、不織布繊維ウェブを提供することと、酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維とを、不織布繊維ウェブに対して垂直な方向に沿って互いに交絡させ、不織布繊維ウェブにおいて10kg/m~35kg/mの平均嵩密度を提供することと、を含む、製造方法。
31.断熱材の製造方法であって、不織布繊維ウェブを得るために、酸化ポリアクリロニトリル繊維を、100℃~300℃の溶融温度を有するポリマーで構成される外面を有する強化繊維と混合することであって、酸化ポリアクリロニトリル繊維は、強化繊維を除いた繊維の85体積%超を占める、混合することと、繊維の混合物を、強化繊維の外面を溶融させるのに十分な温度まで加熱して、不織布繊維ウェブを提供すると、酸化ポリアクリロニトリル繊維と強化繊維とを、不織布繊維ウェブに対して垂直な方向に沿って交絡させ、不織布繊維ウェブにおいて10kg/m~35kg/mの平均嵩密度を提供することと、を含む、製造方法。
32.不織布繊維ウェブは、15kg/m~30kg/mの平均嵩密度を有する、実施形態30又は31に記載の製造方法。
33.不織布繊維ウェブは、20kg/m~30kg/mの平均嵩密度を有する、実施形態32に記載の製造方法。
34.不織布繊維ウェブをカレンダー加工すること、不織布繊維ウェブを加熱すること、及び/又は不織布繊維ウェブに張力を加えることによって、不織布繊維ウェブの主表面を平滑化することを更に含む、実施形態30~33のいずれか一つに記載の製造方法。
35.平滑化された表面において密度勾配を更に含む、実施形態34に記載の製造方法。
36.シリコーン、アクリレート、及びフルオロポリマーからなる群から選択されるコーティング流体で不織布繊維ウェブをコーティングすることを更に含み、不織布繊維ウェブは、0.5未満の放射率を有する、実施形態30~35のいずれか一つに記載の製造方法。
37.得られた不織布繊維ウェブは、UL-94V0火炎試験に合格する、実施形態30~36のいずれか一つに記載の製造方法。
38.実施形態30~37のいずれか一つに記載の製造方法によって製造される断熱材。
39.電気自動車用バッテリーを絶縁する方法であって、電気自動車用バッテリーに隣接するエンクロージャを提供することと、実施形態1~27及び実施形態38のいずれか一つに記載の断熱材を、エンクロージャ内に圧縮状態で配置することと、断熱材を膨張させてエンクロージャを実質的に満たさせることと、を含む、方法。
40.エンクロージャは、エンクロージャの最大厚さ寸法に対して10%~100%の厚さ変動率を有する、実施形態39に記載の方法。
【実施例
【0068】
本開示の目的及び利点は以下の非限定的な実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限しないものと解釈されるべきである。
【0069】
【表1】
【0070】
試験方法
表面坪量測定:不織布ウェブの一部を12インチ×12インチ(30.5cm×30.5cm)の正方形に切断して、重量を測定した。重量を表面積(0.0929m)で除して表面坪量を求め、g/m(「gsm」)単位で報告した。
【0071】
不織布ウェブの厚さ測定:高ロフト不織布の厚さの試験方法に従って、ASTM D5736-95の方法を行った。プレート圧力を0.002psi(13.790パスカル)に較正した。
【0072】
平均嵩密度測定:表面坪量を試料の厚さで除して平均嵩密度を求め、kg/m単位で報告した。
【0073】
絶対熱伝導係数測定(熱伝導係数+対流及び放射):NETZSCH HFM436機械を使用して、織物材料の熱透過率に関するASTM D1518-86標準試験方法を行った。上部プレート温度及び底部プレート温度を、20℃デルタ(すなわち、平均温度に対して+10℃及び-10℃)に設定した。
【0074】
火炎試験1:FAR 25-853a及びFAR 25-853bの縦型バーナー。UL94-V0標準を参照し、火炎高さ20mmで、それぞれ10秒で2回燃焼させた。
【0075】
火炎試験2:FAR 25-856a放射パネル試験。
【0076】
引張強度測定:Instronを使用して、ASTM D882-12標準を行う。幅1インチ(25.4mm)かつ把持距離2インチ(50.8mm)の試料を切断した。
【0077】
比較例1(CE-1)
HT500T2の試料の両方の主表面からスクリム材料を手で除去して、CE-1として試験されるポリエステル繊維のウェブを得た。
【0078】
比較例2(CE-2)
100重量%のOPAN、ニードルタック。SGL Group(Charlotte,NC)による13oz/yd(又は440gsm)
【0079】
比較例3(CE-3)
OPANの供給元名は、Zhenjiang Yishengyu Co.Ltd.(鎮江市益盛裕有限公司)であり、この種類のOPANは、2.5デニールかつ長さ64mmである。バインダーの供給元名は、SINOPEC Yizheng Chemical Fiber Co.Ltd.(中石化儀征化繊有限公司)であり、この種類のバインダーは4080(標準PET2成分繊維、メルティファイバー(Melty fiber))である。30重量%のバインダー繊維及び70重量%のOPAN繊維を使用して、梳綿プロセスによってウェブを作製した。
【0080】
比較例4(CE-4)
CE-3の層の約1/3を手で剥がして、試験に使用した。
【0081】
実施例1(EX-1):90重量%のOPAN-1+10重量%のPET-FR、ニードルタック
90(重量)%のPANOX(登録商標)A140(1.7dtex(12マイクロメートル)、切断長さ50mm、短繊維)と、10(重量)%のTREVIRA T270(3.3dtex(17マイクロメートル)、切断長さ60mmの単成分FR変性PET)との混合物を開放してブレンドし、18インチ幅のRando Lab Series Model SB-Feeder/SBD-Webberを使用して、5.7フィート/分でエアレイドし、Webber Lickerinを3000rpmで動作させて、150gsmの非結合ウェブを形成した。この非結合ウェブを、75ニードル/列の23列のニードルボードアレイを有するDilo Needle Loom,Model DI-Loom OD-1 6に搬送した。これらの列は、パターンをランダム化するためにわずかにオフセットされている。ニードルは、Foster 20 3-22-1.5Bのニードルである。アレイは、機械方向において深さ約7インチ、かつ、公称幅24インチ(61cm)であり、ニードルの間隔は、約0.30インチ(7.6mm)である。ニードルボードを91ストローク/分で動作させて交絡させ、ウェブを約0.20インチ(5.1mm)の厚さまで圧縮した。ニードルタックによって、ウェブの主表面に対して垂直な方向に物理的交絡を導入した。
【0082】
次いで、ウェブを、1.1m/分のライン速度で電気オーブン(225~230℃)に搬送し、これによりTREVIRA T270(3.3dtex(17マイクロメートル)、切断長さ60mmの単成分FR変性PET繊維)を溶融させた。この例では、オーブンの直後にウェブを除去した。オーブンは、International Thermal System,LLC(Milwaukee,WI)による電気オーブンである。これは、長さ5.5メートルの1つの加熱チャンバを有し、原理は、上部からチャンバ内へのエアブローである。エアブローされた空気の一部(20~100%に設定)を排気することができ、一部(20~100%に設定)を再循環させることができるように、循環を設定することができる。この例では、空気は60%設定で排気され、40%が再循環され、チャンバ内の温度は、227℃であった。試料はチャンバ内で2回通った。
【0083】
実施例1、圧縮(EX-1、圧縮)
初期厚さが5.1mmであるEX-1のウェブを、厚さ1.9mmまで60時間にわたって圧搾し、次いで、約5分間にわたって、3.6mmまで回復させた。2日後、試料は、4.2mmまで回復した。
【0084】
比較例5(CE-5):90重量%のOPAN+10重量%FRバインダー、ニードルタックなし
ニードルタック工程を省略したことを除いて、実施例1において行った手順に従って、不織布繊維ウェブを生成した。
【0085】
実施例2(EX-2):80重量%のOPAN+20重量%のFRバインダー、ニードルタック
OPAN-1とPET-FRの重量比が80:20であったことを除いて、実施例1において行った手順に従って、不織布繊維ウェブを生成した。
【0086】
実施例2、圧縮(EX-2、圧縮)
初期厚さが4.4mmであるEX-2のウェブを、厚さ1.9mmまで20時間にわたって圧搾し、次いで、約1分間にわたって、3.6mmまで弛緩させた。
【0087】
比較例6(CE-6):80重量%のOPAN+20重量%のFRバインダー、ニードルタックなし
ニードルタック工程を省略したことを除いて、実施例2において行った手順に従って、不織布繊維ウェブを生成した。
【0088】
実施例3(EX-3):80重量%のOPAN+20重量%のFRバインダー、ニードルタック+シリコーンコーティング
実施例2(ニードルタックを含む)に従って不織布繊維ウェブを調製し、表2に従ってシリコーンコーティング混合物でコーティングした。表2の全ての材料をパンに置き、シリコーンコーティング混合物によって不織布繊維ウェブが完全に飽和されたように見えるまで不織布繊維ウェブを浸漬することによって、シリコーンコーティング混合物を適用した。シリコーンコーティング混合物を、4分間にわたって、105℃の対流オーブン内で不織布繊維ウェブ上で硬化させた。
【0089】
【表2】
【0090】
表2では、Zn-DBU-AA=亜鉛+1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン+無水酢酸(その明細書が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,006,357号に見られる触媒と類似)。
【0091】
実施例4:75重量%のOPAN+25重量%のバインダー、ニードルタック
OPAN-1とPET-FRの重量比が75:25であったことを除いて、実施例1において行った手順に従って、不織布繊維ウェブを生成した。
【0092】
実施例5:75重量%のOPAN+25重量%のバインダー、平滑かつ高密度の表面を有するためのニードルタック+シリコーンコーティング+カレンダー加工工程
OPAN-1とPET-FRの重量比が75:25であったことを除いて、シリコーンコーティングを有する不織布繊維ウェブを実施例3に従って生成した。次いで、平滑かつ高密度の表面を有するコーティングされたウェブを得るために、シリコーンコーティングされた不織布繊維ウェブに対してカレンダー加工手順を行った。上部ロールが219℃に設定され、下部ロールが222℃に設定された2つの平滑なスチールロールの間でウェブをカレンダー加工した。2つのロールの間の間隙を0.030インチ(7.6mm)に設定し、圧力を500ポンド/リニアルインチ(89kg/リニアルセンチメートル)に設定した。速度は3フィート/分(0.91メートル/分)とした。
【0093】
実施例6:70重量%のOPAN+30重量%のバインダー、ニードルタック
70(重量)%のPANOX(登録商標)A140(1.7dtex(12マイクロメートル)、切断長さ50mmの短繊維)と、30(重量)%のTREVIRA T270(6.7dtex(25マイクロメートル)、切断長さ60mmの単成分FR変性PET)との混合物を、幅0.6mのコンベヤーベルトを用いて、速度0.8m/分で、2つの回転スパイクローラーを有する分割型プレオープン及びブレンドチャンバに供給した。チャンバの上部で繊維材料を開放して毛羽立たせ、次いで、スパイクローラーの上側列を通って形成チャンバの底部に落とすことによって、スパイクローラーの下側列を通過させた。多孔質の形成ベルト/ワイヤの下端から形成チャンバに加えられる重力と真空との組み合わせによって、多孔質無端ベルト/ワイヤ上に材料を引き下げた。JM 688-80タイプの支持層(支持層1)を、1.1m/分の速度で、移動する形成チャンバの下端部で稼働する無端形成ベルト/ワイヤの上面において形成チャンバ内に供給した。
【0094】
この非結合ウェブを、75ニードル/列の23列のニードルボードアレイを有するDilo Needle Loom,Model DI-Loom OD-1 6に搬送した。これらの列は、パターンをランダム化するためにわずかにオフセットされていた。ニードルは、Feltloomによる36ゲージの3.5インチ(8.9cm)の円錐形フェルティングニードルであった。アレイは、機械方向において深さ約7インチ(18cm)、かつ、公称幅24インチ(61cm)であり、ニードルの間隔は、約0.30インチ(7.6mm)であった。ニードルボードを225ストローク/分で動作させてウェブを交絡させ、約0.20インチ(5.1mm)の厚さまで圧縮した。
【0095】
次いで、ウェブを、1.1m/分のライン速度で電気オーブン(225℃~230℃)に搬送し、これによりTREVIRA T270(3.3dtex(17マイクロメートル)、切断長さ60mmの単成分FR変性PET繊維)を溶融させた。この例では、オーブンの直後にウェブを除去した。オーブンは、International Thermal System,LLC(Milwaukee,WI)による電気オーブンであった。これは、長さ5.5メートルの1つの加熱チャンバを有していた。原理は、上部からチャンバ内へのエアブローである。エアブローされた空気の一部を排気(20~100%設定)することができ、一部を再循環(20~100%設定)させることができるように、循環を設定することができる。この実施例では、空気は60%設定で排気され、40%が再循環され、チャンバ内の温度は、227℃であった。試料はチャンバ内で2回通った。
【0096】
試料を、記載した試験方法に従って、耐炎性、引張強度、及び熱伝導率について試験し、結果を表3~表6にまとめた。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
上記特許出願において引用された全ての文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でそれらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。上の記載は、当業者が請求の範囲の開示を実施することを可能にするために与えられており、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5