(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】粘着シート、及び粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/00 20180101AFI20220412BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220412BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220412BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220412BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20220412BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C09J7/00
C09J11/04
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B3/30
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2017543457
(86)(22)【出願日】2016-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2016078531
(87)【国際公開番号】W WO2017057406
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2015190524
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
(72)【発明者】
【氏名】柳本 海佐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 揮一郎
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530923(JP,A)
【文献】特開2001-348544(JP,A)
【文献】米国特許第06074745(US,A)
【文献】特表平09-504325(JP,A)
【文献】特開2009-035609(JP,A)
【文献】実開平07-019346(JP,U)
【文献】特開2012-197332(JP,A)
【文献】特開2004-115766(JP,A)
【文献】特開2008-150431(JP,A)
【文献】特開2005-298674(JP,A)
【文献】特開2009-057432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00
C09J 11/04
C09J 201/00
B32B 27/00
B32B 3/30
B32B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材又は剥離材上に、少なくとも層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造体である樹脂層を有し、
層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)が粘着性樹脂を含有し、
前記樹脂層の層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する粘着シートであって、
少なくとも層(Y1)に含まれる構成成分が、層(Xα)に含まれる構成成分及び層(Xβ)に含まれる構成成分と相違し、
表面(α)上の一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)を任意に選択し、当該正方形の2本の対角線のそれぞれを通り、表面(α)上の領域(P)に対して垂直となるような平面で厚さ方向に前記粘着シートを切断して得られる2つの断面のうち、少なくとも1つの断面(P1)において、
当該断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xα)及び層(Y1)の厚さが、下記要件(Xα-I)及び(Y1-I)を満たす、粘着シート。
要件(Xα-I):層(Xα)の厚さの最大値(H
MAX(Xα))と、層(Xα)の厚さの最小値(H
MIN(Xα))との差[H
MAX(Xα)-H
MIN(Xα)]が
8.00μm以上である。
要件(Y1-I):層(Y1)の厚さの最大値(H
MAX(Y1))と、層(Y1)の厚さの最小値(H
MIN(Y1))との差[H
MAX(Y1)-H
MIN(Y1)]が
12.00μm以上である。
【請求項2】
前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xα)及び層(Y1)の厚さが、さらに下記要件(Xα-II)及び(Y1-II)を満たす、請求項1に記載の粘着シート。
要件(Xα-II):層(Xα)の厚さの平均値に対する標準偏差が1.00以上である。
要件(Y1-II):層(Y1)の厚さの平均値に対する標準偏差が2.00以上である。
【請求項3】
前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xβ)の厚さが、下記要件(Xβ-I)を満たす、請求項1又は2に記載の粘着シート。
要件(Xβ-I):層(Xβ)の厚さの最大値(H
MAX(Xβ))と、層(Xβ)の厚さの最小値(H
MIN(Xβ))との差[H
MAX(Xβ)-H
MIN(Xβ)]が3.00μm以上である。
【請求項4】
前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xβ)の厚さが、下記要件(Xβ-II)を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
要件(Xβ-II):層(Xβ)の厚さの平均値に対する標準偏差が1.00以上である。
【請求項5】
前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さを示すグラフにおいて、当該範囲での層(Y1)の厚さの算術平均値をRa(μm)とした際、下記要件(III)を満たす極大値(Q)を含む水平方向における範囲が1箇所以上存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
要件(III):前記グラフにおいて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さの値が、Ra(μm)を超えた後、続いてRa+3(μm)を超えて、極大値(Q)に到達した後、Ra+3(μm)を下回り、更にRa(μm)を下回るまでの水平方向における範囲。
【請求項6】
前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲で、層(Y1)の厚さの最小値(H
MIN(Y1))となる層(Y1)内の箇所の鉛直上方に積層する層(Xα)の表面(α)に凹部が存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記樹脂層が、粘着性樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含み、
層(Xβ)が、主に樹脂部分(X)を含み、
層(Y1)が、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)を含み、
層(Xα)が、主に樹脂部分(X)を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記樹脂層を800℃で30分間加熱した後の質量保持率が3~90質量%である、請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
樹脂部分(X)が、さらに金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含む、請求項7又は8に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記微粒子が、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上である、請求項7~9のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記基材又は剥離材が設けられた側の前記樹脂層の表面(β)が粘着性を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項12】
層(Xβ)が、粘着性樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xβ)から形成された層であり、
層(Y1)が、粘着性樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y)から形成された層であり、
層(Xα)が、粘着性樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xα)から形成された層である、請求項1~11のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項13】
前記粘着性樹脂が、アクリル系樹脂である、請求項1~12のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の粘着シートを製造する方法であって、少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する、粘着シートの製造方法。
工程(1A):基材又は剥離材上に、粘着性樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、粘着性樹脂を含み、前記微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び粘着性樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の粘着シートを製造する方法であって、少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する、粘着シートの製造方法。
工程(1B):基材又は剥離材上に設けられた、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)上に、粘着性樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び粘着性樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シート、及び粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な粘着シートは、基材と、該基材上に形成された粘着剤層と、必要に応じて該粘着剤層上に設けられた剥離材から構成されており、使用に際しては、剥離材が設けられている場合には、その剥離材を剥がし、粘着剤層を被着体に当接させて貼付する。
ところで、粘着シートの粘着性能向上や特定の機能を付与する目的で、粘着シートが有する粘着剤層を、二層以上の多層構造体とする場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、撥水加工処理の施された布地等の被着材にも接着できるようにするため、アクリル系粘着剤やポリエステル系粘着剤から形成された粘着剤層と、低融点ホットメルト接着剤から形成された表面処理層との2層構造からなる接着剤層を有する熱圧着型マーキングフィルムが開示されている。
特許文献1に記載の熱圧着型マーキングフィルムは、2層構造からなる接着剤層の被着体側に、低融点ホットメルト接着剤から形成された表面処理層を設けたため、撥水加工処理の施された布地等の被着材にも接着できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、特許文献1の熱圧着型マーキングフィルム等のように、粘着シートの粘着剤層が、2層以上の多層構造体である場合、多層構造体である粘着剤層を構成する2層間での層間密着性(界面強度)が劣るという問題が生じ易い。また、粘着剤層の膜強度が劣るという問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであって、優れた粘着力を有すると共に、層間密着性も良好である多層構造体の樹脂層を有する粘着シート、及び、当該粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、少なくとも層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造体である樹脂層を有し、層(Xα)の表面が粘着性を有する粘着シートにおいて、当該樹脂層の所定の断面から測定される、層(Xα)の厚さの最大値と最小値の差、及び、層(Y1)の厚さの最大値と最小値との差を特定値以上に調整した粘着シートが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[15]を提供するものである。
[1]基材又は剥離材上に、少なくとも層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造体である樹脂層を有し、少なくとも当該樹脂層の層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する粘着シートであって、
少なくとも層(Y1)に含まれる構成成分が、層(Xα)に含まれる構成成分及び層(Xβ)に含まれる構成成分と相違し、
表面(α)上の一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)を任意に選択し、当該正方形の2本の対角線のそれぞれを通り、表面(α)上の領域(P)に対して垂直となるような平面で厚さ方向に前記粘着シートを切断して得られる2つの断面のうち、少なくとも1つの断面(P1)において、
当該断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xα)及び層(Y1)の厚さが、下記要件(Xα-I)及び(Y1-I)を満たす、粘着シート。
要件(Xα-I):層(Xα)の厚さの最大値(HMAX(Xα))と、層(Xα)の厚さの最小値(HMIN(Xα))との差[HMAX(Xα)-HMIN(Xα)]が3.00μm以上である。
要件(Y1-I):層(Y1)の厚さの最大値(HMAX(Y1))と、層(Y1)の厚さの最小値(HMIN(Y1))との差[HMAX(Y1)-HMIN(Y1)]が5.00μm以上である。
【0009】
[2]前記樹脂層が、樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含み、
層(Xβ)が、主に樹脂部分(X)を含み、
層(Y1)が、粒子部分(Y)を含み、
層(Xα)が、主に樹脂部分(X)を含む、
上記[1]に記載の粘着シート。
[3]前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xα)及び層(Y1)の厚さが、さらに下記要件(Xα-II)及び(Y1-II)を満たす、上記[1]又は[2]に記載の粘着シート。
要件(Xα-II):層(Xα)の厚さの平均値に対する標準偏差が1.00以上である。
要件(Y1-II):層(Y1)の厚さの平均値に対する標準偏差が2.00以上である。
[4]前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xβ)の厚さが、下記要件(Xβ-I)を満たす、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の粘着シート。
要件(Xβ-I):層(Xβ)の厚さの最大値(HMAX(Xβ))と、層(Xβ)の厚さの最小値(HMIN(Xβ))との差[HMAX(Xβ)-HMIN(Xβ)]が3.00μm以上である。
[5]前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xβ)の厚さが、下記要件(Xβ-II)を満たす、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の粘着シート。
要件(Xβ-II):層(Xβ)の厚さの平均値に対する標準偏差が1.00以上である。
[6]前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さを示すグラフにおいて、当該範囲での層(Y1)の厚さの算術平均値をRa(μm)とした際、下記要件(III)を満たす極大値(Q)を含む水平方向における範囲が1箇所以上存在する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の粘着シート。
要件(III):前記グラフにおいて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さの値が、Ra(μm)を超えた後、続いてRa+3(μm)を超えて、極大値(Q)に到達した後、Ra+3(μm)を下回り、更にRa(μm)を下回るまでの水平方向における範囲。
[7]前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲で、層(Y1)の厚さの最小値(HMIN(Y1))となる層(Y1)内の箇所の鉛直上方に積層する層(Xα)の表面(α)に凹部が存在する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[8]前記樹脂層を800℃で30分間加熱した後の質量保持率が3~90質量%である、上記[2]~[7]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[9]樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂が、粘着性樹脂を含む、上記[2]~[8]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[10]樹脂部分(X)が、さらに金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含む、上記[2]~[9]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[11]前記微粒子が、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上である、上記[2]~[10]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[12]前記基材又は剥離材が設けられた側の前記樹脂層の表面(β)が粘着性を有する、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[13]層(Xβ)が、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xβ)から形成された層であり、
層(Y1)が、微粒子を15質量%以上含む組成物(y)から形成された層であり、
層(Xα)が、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xα)から形成された層である、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の粘着シート。
【0010】
[14]上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の粘着シートを製造する方法であって、少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する、粘着シートの製造方法。
工程(1A):基材又は剥離材上に、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、前記微粒子を15質量%以上含む組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
[15]上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の粘着シートを製造する方法であって、少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する、粘着シートの製造方法。
工程(1B):基材又は剥離材上に設けられた、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)上に、前記微粒子を15質量%以上含む組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着シートは、優れた粘着力を有すると共に、多層構造体である樹脂層を有するが、当該多層構造体の層間密着性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、該粘着シートの断面模式図である。
【
図2】本発明で規定する「粘着シートの2つの断面」を取得する方法を説明するための図であって、本発明の一態様の粘着シートの斜視図である。
【
図3】
図2に示された断面61を例に、断面61から「水平方向250μmの範囲」の選択する方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の一態様である、実施例1で作製した粘着シートの樹脂層の断面(P1)について、任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Xα)、層(Y1)、及び層(Xβ)の厚さを示すグラフである。
【
図5】
図4の各層の厚さの変化を示すグラフのうち、断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さを示すグラフのみを抜粋したものである。
【
図6】実施例1で作製した粘着シートの断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察して取得した断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、例えば、「主成分としてXX成分を含むYY」や「主にXX成分からなるYY」との記載は、「YYに含まれる成分のうち、最も含有量が多い成分はXX成分である」ということを意味している。当該記載における具体的なXX成分の含有量としては、YYの全量(100質量%)に対して、通常50質量%以上、好ましくは65~100質量%、より好ましくは75~100質量%、更に好ましくは85~100質量%である。
また、本発明において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
さらに、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0014】
〔本発明の粘着シートの構成〕
本発明の粘着シートは、基材又は剥離材上に、少なくとも層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造体である樹脂層を有し、少なくとも当該樹脂層の層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する。
【0015】
図1は、本発明の粘着シートの構成の一例を示す、当該粘着シートの断面模式図である。
本発明の一態様の粘着シートとしては、例えば、
図1(a)に示すような、基材11上に、樹脂層12を有する粘着シート1aや、
図1(b)に示すような、剥離材21上に、樹脂層12を有する粘着シート1bが挙げられる。
【0016】
本発明の粘着シートは、少なくとも樹脂層12の層(Xα)の表面(α)12aが粘着性を有している。
そのため、取扱性の観点から、本発明の別の一態様の粘着シートとしては、
図1に示す粘着シート1a、1bに対して、樹脂層12の層(Xα)の表面(α)12a上に、さらに剥離材22を設けた、
図1(c)又は(d)に示すような、粘着シート2a、2bのような構成を有するものが好ましい。
【0017】
また、本発明の一態様である粘着シートにおいて、基材11又は剥離材21が設けられた側の樹脂層12の層(Xβ)の表面(β)12bも粘着性を有していてもよい。
表面(β)も粘着性を有することで、
図1(a)及び(c)に示す粘着シート1a、2aであれば、樹脂層12と基材11との密着性が良好となり、
図1(b)及び(d)に示す粘着シート1b、2bであれば、両面粘着シートとすることができる。
【0018】
図1に示す粘着シート1a等のように、本発明の一態様である粘着シートは、樹脂層12の表面(α)に、凹部13及び平坦面14が存在していることが好ましい。
表面(α)に存在する凹部13は、本発明の粘着シートの樹脂層の表面(α)を被着体に貼付する際に生じる「空気溜まり」を外部へ逃すための空気排出通路としての役割を担うものである。そのため、表面(α)に凹部13が存在する粘着シートは、優れたエア抜け性を有するものとなる。
一方、表面(α)に存在する平坦面14は、被着体との貼り合わせ時に、被着体と直接接触して密着する面であり、粘着シートの粘着力に影響を及ぼす箇所である。
【0019】
また、本発明の粘着シートは、少なくとも層(Y1)に含まれる構成成分が、層(Xα)に含まれる構成成分及び層(Xβ)に含まれる構成成分と相違する。
多層構造体を構成する各層の形成材料にもよるが、一般的に互いに接触する2層の形成材料が互いに異なる場合、この2層の層間密着性は低下しやすい。
一方、本発明の粘着シートは、層(Xα)の厚さの最大値と最小値との差、及び、層(Y1)の厚さの最大値と最小値との差が所定値以上に調整しているため、層(Xα)及び層(Y1)の厚さが不均一である。また、樹脂層の厚さが均一である場合、層(Xα)及び層(Y1)の厚さが不均一であれば、層(Xβ)の厚さも不均一となる。
それにより、樹脂層が、互いに接触する2層の形成材料が互いに異なる多層構造体である樹脂層であっても、隣接する2層の層間密着性に優れている。
【0020】
つまり、本発明の粘着シートは、表面(α)上の一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)を任意に選択し、当該正方形の2本の対角線のそれぞれを通り、表面(α)上の領域(P)に対して垂直となるような平面で厚さ方向に前記粘着シートを切断して得られる2つの断面のうち、少なくとも1つの断面(P1)において、当該断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xα)及び層(Y1)の厚さが、下記要件(Xα-I)及び(Y1-I)を満たす。
・要件(Xα-I):層(Xα)の厚さの最大値(HMAX(Xα))と、層(Xα)の厚さの最小値(HMIN(Xα))との差[HMAX(Xα)-HMIN(Xα)]が3.00μm以上である。
・要件(Y1-I):層(Y1)の厚さの最大値(HMAX(Y1))と、層(Y1)の厚さの最小値(HMIN(Y1))との差[HMAX(Y1)-HMIN(Y1)]が5.00μm以上である。
本発明の粘着シートは、上記要件(Xα-I)及び(Y1-I)を満たすため、互いに接触する2層の形成材料が互いに異なる多層構造体である樹脂層であっても、隣接する2層の層間密着性に優れる。また、形成される樹脂層の膜強度も優れたものとなり得る。
【0021】
<粘着シートの断面の選択方法>
ここで、
図2を適宜参照して、上述の「粘着シートの2つの断面」を取得するまでの流れについて説明する。
図2は、本発明で規定する「粘着シートの2つの断面」を取得する方法を説明するため図であって、本発明の一態様の粘着シートの斜視図である。
図2では、一例として、基材11上に樹脂層12を有する粘着シート11aの斜視図を示している。
なお、本発明の粘着シートの樹脂層12の表面(α)12aには凹部及び平坦面が存在していてもよいが、
図2では、それらの記載は省略している。
【0022】
はじめに、樹脂層12の表面(α)12a上に、一辺5mmの正方形50で囲まれた領域(P)を任意に選択する。この際、選択する領域(P)について、表面(α)12a上での選択位置や選択した領域(P)を構成する正方形50の向き等の制限は無い。
そして、領域(P)を構成する正方形50の2本の対角線51、52のそれぞれを通り、表面(α)12aに対して垂直となるような平面で、厚さ方向に粘着シートを切断した場合、2つの断面61、62が得られる。
つまり、対角線51を通るように、厚さ方向Aに沿って、表面(α)12aに対して垂直となるような平面で、粘着シートを切断した場合には、断面61が得られる。
一方、対角線52を通るように、厚さ方向Aに沿って、表面(α)12aに対して垂直となるような平面で、粘着シートを切断した場合には、断面62が得られる。
【0023】
ここで、本発明では、粘着シートの2つの断面61、62について、少なくとも一つの断面が、任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xα)及び層(Y1)の厚さが、上記要件(Xα-I)及び(Y1-I)を満たすことを要する。
つまり、本明細書において、上記のように取得した2つの断面61、62のうち、上記要件(Xα-I)及び(Y1-I)を満たす断面を「断面(P1)」と標記する。
【0024】
図3は、
図2に示された断面61を例に、断面61から「水平方向250μmの範囲」を選択する方法を説明するための図である。
本発明において、
図3に示すように、選択した断面において、基材又は剥離材と樹脂層12との境界線と平行な方向を「水平方向Wx」とし、水平方向Wxと垂直な方向を「鉛直方向Wy」とする。鉛直方向Wyは、粘着シートの厚さ方向と一致する。
図3に示す断面61において、始点S
0と終点S
250との距離が250μmとなる「水平方向250μmの幅」を任意に選択することで、水平方向250μmの幅を含む断面の範囲70が「水平方向250μmの範囲」となる。
【0025】
なお、本発明において、2つの断面61、62が、上記要件(Xα-I)及び(Y1-I)を満たす断面(P1)に該当するか否かの判断や、断面(P1)が後述の各種要件を満たしているか否かの判断は、対象となる断面を走査型電子顕微鏡(倍率:100~1000倍)を用いて取得した画像から判断することができる。
【0026】
<要件(Xα-I)、要件(Y1-I)、要件(Xβ-I)>
図4は、本発明の一態様である、後述の実施例1で作製した粘着シートの樹脂層の断面(P1)について、任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Xα)、層(Y1)、及び層(Xβ)の厚さを示すグラフである。
なお、「任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させる」とは、
図3に示す始点S
0から終点S
250まで水平方向に沿って変化させることを意味する。
図4に示されたグラフから、本発明の粘着シートでは、層(Xα)、層(Y1)、及び層(Xβ)のいずれの厚さも、水平方向に対して均一ではなく、不均一であり、特に、各層の厚さの最大値と最小値との差が大きいことが分かる。
【0027】
本発明においては、上記要件(Xα-I)にて、層(Xα)の厚さの最大値(HMAX(Xα))と、層(Xα)の厚さの最小値(HMIN(Xα))との差[HMAX(Xα)-HMIN(Xα)]が3.00μm以上である旨を規定する。
また、要件(Y1-I)では、層(Y1)の厚さの最大値(HMAX(Y1))と、層(Y1)の厚さの最小値(HMIN(Y1))との差[HMAX(Y1)-HMIN(Y1)]が5.00μm以上である旨を規定する。
層(Xα)の厚さの最大値と最小値との差が3.00μm未満であると、層(Y1)と層(Xα)との層間密着性が劣り、層(Y1)と層(Xα)との間で剥離してしまう場合もある。
一方、層(Y1)の厚さの最大値と最小値との差が5.00μm未満である場合、層(Y1)と層(Xα)との層間密着性も劣るが、層(Y1)と層(Xβ)との層間密着性も同様に劣る。
【0028】
さらに、当該要件(Xα-1)及び(Y1-I)を共に満たすことで、各層の層間密着性が向上するだけでなく、膜強度及び粘着力が向上した樹脂層を形成することができる。
例えば、層(Y1)が粒子部分(Y)を含む層である場合には、層(Y1)の厚さが大きい程、膜強度は向上する傾向にあり、また、表面(α)に粘着性を有する層(Xα)の厚さが大きい程、粘着力が向上する傾向にある。この場合、要件(Xα-1)及び(Y1-I)を満たすように、層(Xα)及び層(Y1)の各層の厚さの最大値と最小値との差が一定以上であれば、膜強度が非常に優れた箇所と、粘着力が非常に優れた箇所とが、広く分布した樹脂層が形成されているといえ、膜強度及び粘着力のバランスに優れた粘着シートとすることができる。
【0029】
上記観点から、要件(Xα-I)で規定する、層(Xα)の厚さの最大値と最小値との差[HMAX(Xα)-HMIN(Xα)]としては、3.00μm以上であるが、好ましくは4.00μm以上、より好ましくは5.00μm以上、更に好ましくは6.00μm以上、より更に好ましくは8.00μm以上であり、また、好ましくは80μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは25μm以下である。
【0030】
上記観点から、要件(Y1-I)で規定する、層(Y1)の厚さの最大値と最小値との差[HMAX(Y1)-HMIN(Y1)]としては、5.00μm以上であるが、好ましくは7.00μm以上、より好ましくは9.00μm以上、更に好ましくは10.50μm以上、より更に好ましくは12.00μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、より更に好ましくは30μm以下である。
【0031】
本発明の一態様の粘着シートは、前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xβ)の厚さが、下記要件(Xβ-I)を満たすと好ましい。
要件(Xβ-I):層(Xβ)の厚さの最大値(HMAX(Xβ))と、層(Xβ)の厚さの最小値(HMIN(Xβ))との差[HMAX(Xβ)-HMIN(Xβ)]が3.00μm以上である。
【0032】
要件(Xβ-I)で規定のとおり、層(Xβ)の厚さの最大値と最小値との差が3.00μm以上であることで、層(Y1)と層(Xβ)との層間密着性を良好とすることができる。
また、層(Y1)が粒子部分(Y)を含む層である場合には、層(Xβ)の厚さが最小値付近の箇所では、層(Y1)の厚さが大きいため、膜強度が良好となる。
一方、層(Xβ)が粘着性樹脂を含む場合、層(Xβ)の厚さが最大値付近の箇所では、優れた粘着性が発現し易い。そのため、基材付き粘着シートの態様においては、基材との密着性により優れた粘着シートとすることができ、基材無し両面粘着シートの態様においては、粘着力に優れた両面粘着シートとすることができる。
【0033】
上記観点から、要件(Xβ-I)で規定する、層(Xβ)の厚さの最大値と最小値との差[HMAX(Xβ)-HMIN(Xβ)]としては、3.00μm以上であるが、好ましくは4.00μm以上、より好ましくは5.00μm以上、更に好ましくは6.00μm以上、より更に好ましくは8.00μm以上であり、また、好ましくは80μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは25μm以下である。
【0034】
<要件(Xα-II)、要件(Y1-II)、要件(Xβ-II)>
本発明の一態様の粘着シートは、前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲での層(Xα)及び層(Y1)の厚さが、下記要件(Xα-II)及び(Y1-II)を満たすことが好ましく、要件(Xα-II)及び(Y1-II)と共に、さらに層(Xβ)の厚さが、下記要件(Xβ-II)を満たすことがより好ましい。
・要件(Xα-II):層(Xα)の厚さの平均値に対する標準偏差が1.00以上である。
・要件(Y1-II):層(Y1)の厚さの平均値に対する標準偏差が2.00以上である。
・要件(Xβ-II):層(Xβ)の厚さの平均値に対する標準偏差が1.00以上である。
【0035】
上記要件(Xα-II)、(Y1-II)、及び(Xβ-II)では、各層の平均の厚さに対する各層の厚さの値の分布が広範囲である旨を示している。
各層の厚さの平均値に対する標準偏差が大きい程、つまり、各層の厚さの値の分布が広範囲であることで、隣接する2層の層間密着性が向上すると共に、膜密度に優れた箇所と、優れた粘着性が発現された箇所とを、満遍なく分布した樹脂層とすることができる。
つまり、これらの要件を満たす粘着シートは、層間密着性により優れ、膜強度及び粘着力のバランスにより優れたものとなり得る。
【0036】
上記観点から、要件(Xα-II)で規定する、層(Xα)の厚さの平均値に対する標準偏差は、1.00以上であるが、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.35以上、更に好ましくは1.50以上、より更に好ましくは1.65以上であり、また、好ましくは10.00以下、より好ましくは8.00以下、更に好ましくは5.00以下である。
【0037】
上記観点から、要件(Y1-II)で規定する、層(Y1)の厚さの平均値に対する標準偏差は、2.00以上であるが、好ましくは2.30以上、より好ましくは2.50以上、更に好ましくは2.70以上、より更に好ましくは2.85以上であり、また、好ましくは10.00以下、より好ましくは8.00以下、更に好ましくは6.00以下である。
【0038】
上記観点から、要件(Xβ-II)で規定する、層(Xβ)の厚さの平均値に対する標準偏差は、1.00以上であるが、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.35以上、更に好ましくは1.50以上、より更に好ましくは1.65以上であり、また、好ましくは10.00以下、より好ましくは8.00以下、更に好ましくは5.00以下である。
【0039】
<要件(III)を満たす極大値(Q)>
本発明の一態様の粘着シートにおいて、前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さを示すグラフにおいて、当該範囲での層(Y1)の厚さの算術平均値をRa(μm)とした際、下記要件(III)を満たす極大値(Q)を含む水平方向における範囲が1箇所以上存在することが好ましい。
・要件(III):前記グラフにおいて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さの値が、Ra(μm)を超えた後、続いてRa+3(μm)を超えて、極大値(Q)に到達した後、Ra+3(μm)を下回り、更にRa(μm)を下回るまでの水平方向における範囲。
【0040】
図5は、
図4の各層の厚さの変化を示すグラフのうち、断面(P1)の任意に選択した水平方向に0μmから250μmまでの範囲を観察した層(Y1)の厚さの変化を示すグラフのみを抜粋したものである。
要件(III)で規定の「極大値(Q)」及び「範囲」について、
図5を用いて説明する。
図5中の範囲(a)に着目すると、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さの値が、点p1でRa(μm)を超えた後、続いてRa+3(μm)も超えて、点q1に達する。そして、水平方向へ更に進行すると、層(Y1)の厚さの値は、下降し、Ra+3(μm)を下回り、更に点p2に到達した後、Ra(μm)も下回る。
このとき、上記の点p1から点p2まで変化した際の層(Y1)の厚さの値の変化を、要件(III)の規定にあてはめると、
図5中の「点q1」は、要件(III)で規定の「極大値(Q)」に該当し、点p1から点p2までの変化した水平方向における「範囲(a)」は要件(III)で規定の範囲に該当する。
【0041】
また、
図5中の水平方向に沿って点p7から点p8まで変化した範囲(d)に着目すると、「点p7」→「層(Y1)の厚さの値が上昇」→「層(Y1)の厚さの値がRa(μm)を超える」→「層(Y1)の厚さの値がRa+3(μm)を超える」→「点q6に到達」→「層(Y1)の厚さの値が下降」→「層(Y1)の厚さの値がRa+3(μm)を下回る」→「点p8」→「層(Y1)の厚さの値がRa(μm)を下回る」と変化する。
そのため、
図5中の「点q7」は、要件(III)で規定の「極大値(Q)」に該当し、点p7から点p8までの変化した水平方向における「範囲(d)」は要件(III)で規定の範囲に該当する。
【0042】
なお、
図5中の水平方向に沿って点p3から点p4まで変化した範囲(b)では、「点q2」と「点q3」が、双方とも、要件(III)で規定の極大値(Q)に該当する。
要件(III)で規定の「範囲」とは、「層(Y1)の厚さの値がRa(μm)を超える」状態から、「層(Y1)の厚さの値がRa(μm)を下回る」までの水平方向における範囲である。
図5中の水平方向に沿って点p3から点p4まで変化した範囲(b)では、層(Y1)の厚さの値は、点p3から、一旦Ra+3(μm)を超えて「点q2」まで到達した後、下降して、Ra+3(μm)を下回った後、再度上昇して、Ra+3(μm)を超え、グラフの極値となる「点q3」に到達している。この場合、「点q2」及び「点q3」は、双方とも要件(III)で規定の「極大値(Q)」に該当する。
ただし、「点q3」に至るまでの間、層(Y1)の厚さの値は、一度もRa(μm)を下回っていないため、未だ要件(III)で規定の「範囲」の終点は特定されていない。
その後、層(Y1)の厚さの値は、点q3から、下降し、点p4に到達し、Ra(μm)を下回っている。
つまり、
図5中の「点q2」及び「点q3」は極大値(Q)に該当し、点p3から点p4までの変化した水平方向における「範囲(b)」は要件(III)で規定の範囲に該当する。
【0043】
また、同様の理由から、
図5中の「点q4」及び「点q5」は極大値(Q)に該当し、点p5から点p6までの変化した水平方向における「範囲(c)」は要件(III)で規定の範囲に該当する。
以上より、
図5に示す層(Y1)の厚さの値のグラフにおいては、要件(III)で規定の「範囲」は4箇所(つまり、範囲(a)~(d))存在していることとなる。
【0044】
層(Y1)の厚さの値のグラフにおいて、要件(III)で規定するような「範囲」が存在することで、水平方向における層(Y1)の厚さは、大きくなる場合と小さくなる場合の落差が激しいことを意味している。
そのことは、層間密着性の向上にも寄与するが、層(Y1)の厚さが大きくなる箇所では膜強度が向上し、層(Y1)の厚さが小さくなる箇所では、層(Xα)や層(Xβ)の厚さが大きくなるため、粘着力が向上する傾向にある。
その結果、要件(III)で規定の範囲を1箇所以上有する粘着シートは、層間密着性により優れ、膜強度及び粘着力のバランスにより優れたものとなり得る。
【0045】
要件(III)で規定の範囲の数としては、上記観点から、好ましくは2箇所以上、より好ましくは3箇所以上、更に好ましくは4箇所以上であり、また、好ましくは10箇所以下、より好ましくは8箇所以下である。
【0046】
<樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)を含む樹脂層の態様>
本発明の一態様の粘着シートにおいて、樹脂層が、樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含み、層(Xβ)が、主に樹脂部分(X)を含み、層(Y1)が、粒子部分(Y)を含み、層(Xα)が、主に樹脂部分(X)を含む多層構造体であることが好ましい。
このように粒子部分(Y)を含む樹脂層とすることで、当該樹脂層の膜強度を向上させることができる。
【0047】
上記態様において、層(Xβ)及び層(Xα)は、主に樹脂部分(X)を含む層であるが、粒子部分(Y)を含んでいてもよい。
ただし、層(Xβ)及び層(Xα)中の粒子部分(Y)の含有量は、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、15質量%未満であり、且つ層(Xβ)又は層(Xα)中の樹脂の含有量よりも少ない。
つまり、当該態様においては、粒子部分(Y)の含有量の点において、層(Xβ)及び層(Xα)と、層(Y1)とは区別される。
なお、層(Xβ)及び層(Xα)は、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)以外に、更に空隙部分(Z)を有してもよい。
【0048】
上記態様における、層(Xβ)及び層(Xα)中の樹脂部分(X)の含有量としては、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、通常85質量%超であり、好ましくは87~100質量%、より好ましくは90~100質量%、更に好ましくは95~100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
なお、上記の「樹脂部分(X)の含有量」は、層(Xβ)又は層(Xα)中に含まれる樹脂部分(X)を構成する、樹脂、粘着付与剤、架橋剤、及び汎用添加剤等の微粒子以外の成分の合計含有量を意味する。
【0049】
上記態様における、層(Xβ)及び層(Xα)中の粒子部分(Y)を構成する微粒子の含有量としては、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、15質量%未満であるが、好ましくは0~13質量%、より好ましくは0~10質量%、更に好ましくは0~5質量%、より更に好ましくは0質量%である。
なお、本明細書において、「層(Xβ)及び層(Xα)中の微粒子の含有量」は、当該層(Xβ)又は層(Xα)の形成材料である樹脂組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の微粒子の含有量とみなすこともできる。
【0050】
上記態様における、層(Xα)中の樹脂の含有量としては、層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、通常30~100質量%、好ましくは40~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは60~100質量%である。
一方、層(Xβ)中の樹脂の含有量としては、層(Xβ)の全質量(100質量%)に対して、通常50~100質量%、好ましくは65~100質量%、より好ましくは75~100質量%、更に好ましくは85~100質量%である。
なお、本明細書において、「層(Xβ)及び層(Xα)中の樹脂の含有量」は、当該層(Xβ)又は層(Xα)の形成材料である樹脂組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の樹脂の含有量とみなすことができる。
【0051】
上記態様における、層(Y1)は、粒子部分(Y)のみからなる層であってもよく、粒子部分(Y)と共に樹脂部分(X)を含む層であってもよく、更に空隙部分(Z)を有する層であってもよい。
上記態様における、層(Y1)中の粒子部分(Y)を構成する微粒子の含有量としては、層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、通常15質量%以上であるが、好ましくは20~100質量%、より好ましくは25~90質量%、更に好ましくは30~85質量%、より更に好ましくは35~80質量%である。
【0052】
上記態様における、層(Y1)中の樹脂の含有量としては、層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、通常0~85質量%、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~75質量%、更に好ましくは10~70質量%、より更に好ましくは20~65質量%である。
【0053】
なお、本明細書において、「層(Y1)中の微粒子の含有量」及び「層(Y1)中の樹脂の含有量」は、当該層(Y1)の形成材料である組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の微粒子又は樹脂の含有量とみなすこともできる。
【0054】
本発明の上記態様において、層(Xα)は、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xα)から形成された層であることが好ましい。
同様に、層(Xβ)も、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xβ)から形成された層であることが好ましい。
また、上記層(Y1)は、微粒子を含む組成物(y)から形成された層であることが好ましく、微粒子を15質量%以上含む組成物(y)から形成された層であることがより好ましい。
なお、組成物(xα)、組成物(xβ)、及び組成物(y)の好適な態様(含有成分、含有量等)については、後述のとおりである。
【0055】
本発明の一態様において、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)を有する多層構造体である樹脂層を形成する観点から、樹脂層が、自己形成化によって形成されたものであることが好ましい。
本発明において、「自己形成化」とは、樹脂層の自律的な形成過程において、自然に無秩序な形状を作り出す現象を意味し、より詳しくは、樹脂層の形成材料である組成物から形成された塗膜を乾燥して、樹脂層の自律的な形成過程において、自然に無秩序な形状を作り出す現象を意味する。
この自己形成化により形成された樹脂層を構成する各層の厚さは、不均一となり易く、上述の要件を満たすような層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成され易い。
【0056】
また、
図1に示す粘着シートのように、樹脂層の自己形成化の過程において、層(Xα)の表面(α)12aには、不定形の凹部13が形成され易く、当該凹部13の形成と共に、各層の厚さもより不均一となり易い。
樹脂層の自己形成化によって形成された各層の厚さが不均一な樹脂層及び凹部の形成過程は、以下のように考えられる。
まず、相違した構成成分である少なくとも2層の樹脂層の形成過程において、互いに異なる組成物から形成された複数の塗膜を乾燥させる工程にて、塗膜内部に収縮応力が発生して、樹脂の結合力が弱くなった部分で、複数の塗膜内での構成成分の移動と、更には表面(α)上に割れが生じる。そして、構成成分の移動した部分への更なる周辺に存在していた構成成分の移動によって、各層の厚さが不均一となり、また、当該割れ部分の周辺に存在していた樹脂が、割れにより一時的に生じた空間に流入することで、樹脂層の表面(α)上に凹部とが形成されると考えられる。
つまり、凹部の形成と同時に大規模な樹脂の移動が起こることから、より各層の厚さが不均一となり、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成され易い。
樹脂の構成成分が異なる2層の塗膜を形成した後、当該2層の塗膜を同時に乾燥させることで、乾燥する際に塗膜内部に収縮応力差が発生し、各層の厚さが不均一となると共に、表面(α)上に割れを生じ易くなると考えられる。
【0057】
表面(α)に凹部を形成し、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成し易くする観点から、以下の事項を適宜考慮の上、調整することが好ましい。これらの事項による要因が複合的に作用して、凹部が形成し易くなり、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成され易くなるものと考えられる。ちなみに、凹部を形成し易くするための各事項の好適な態様は、後述の該当項目での記載のとおりである。
・塗膜の形成材料である組成物中に含まれる樹脂の種類、構成モノマー、分子量、含有量。
・塗膜の形成材料である組成物中に含まれる架橋剤の種類、溶媒の種類。
・塗膜の形成材料である組成物の粘度、固形分濃度。
・形成する塗膜の厚さ。(複層の場合は、各塗膜の厚さ)
・形成した塗膜の乾燥温度、乾燥時間。
【0058】
上記の事項は、形成される塗膜中に含まれる樹脂の流動性等を考慮して、適宜設定されることが好ましい。
例えば、組成物中に微粒子を含む場合、微粒子を多く含む組成物からなる塗膜の粘度を適度な範囲に調整することで、塗膜中での微粒子の所定の流動性を維持しつつも、他の塗膜(樹脂を多く含む塗膜)との入り混じりを適度に抑制することができる。このように調整することで、樹脂を多く含む塗膜において、水平方向に割れが生じ、凹部が形成され易くなり、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成される傾向にある。
【0059】
また、上記の事項の中でも、樹脂を多く含む塗膜に含まれる樹脂が適度な粘弾性を有するように、当該樹脂の種類、構成モノマー、分子量、樹脂の含有量を適宜調整することが好ましい。
つまり、塗膜の硬さ(樹脂の粘弾性、塗布液の粘度等の因子で決まる硬さ)を適度に硬くすることで、樹脂部分(X)の収縮応力が強くなり、凹部が形成し易くなり、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成される。
当該塗膜の硬さが硬いほど収縮応力が強くなり、凹部が発生しやすくなるが、硬すぎると塗布適性が低下する。また、樹脂の弾性を上げ過ぎると、塗膜から形成される樹脂層の粘着力が低下する傾向にある。その点を考慮して、樹脂の粘弾性を適度に調整することが好ましい。
また、組成物や塗膜中に微粒子を含む場合、微粒子の分散状態を適切化することで、微粒子による樹脂層の厚さの膨れ上がりの程度や、凹部の自己形成力を調節し、結果的に表面(α)上に凹部を形成し易く調整し、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成されると考えられる。
【0060】
さらに、形成した塗膜(もしくは形成材料である組成物)の架橋速度を考慮して、上記の事項を適宜設定することが好ましい。
つまり、塗膜の架橋速度が速すぎる場合には、凹部が形成される前に、塗膜が硬化してしまう恐れがある。また、塗膜の割れの大きさ及び凹部の大きさにも影響を及ぼす。
塗膜の架橋速度は、形成材料である組成物中の架橋剤の種類及び溶媒の種類や、塗膜の乾燥時間及び乾燥温度を適宜設定することで調整可能である。
【0061】
なお、樹脂層が、樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含む層である場合、上述の自己形成化により形成された樹脂層において、
図1(a)~(d)に示すように、粒子部分(Y)は、表面(α)上に凹部13が存在する箇所においては、粒子部分(Y)が占める割合が他に比べて少なくなるような分布となる傾向がある。
これは、樹脂層の自己形成化の過程において、樹脂層の表面(α)に凹部が形成される際に、凹部が形成された位置に存在していた微粒子が移動することで、このような分布になったものと考えられる。
つまり、自己形成化により形成された樹脂層であると、当該樹脂層は、下記要件(IV)を満たすものとなり易い。
・要件(IV):前記断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲で、層(Y1)の厚さの最小値(H
MIN(Y1))となる層(Y1)内の箇所の鉛直上方に積層する層(Xα)の表面(α)に凹部が存在する。
【0062】
なお、上記のように樹脂層の自己形成化によって形成された凹部の形状は、乾燥条件や樹脂層の形成材料である組成物中の成分の種類や含有量を調整することで、ある程度の調整は可能ではあるものの、エンボスパターンの転写により形成される溝とは異なり、「全く同じ形状のものを再現することは事実上できない」といえる。
そのため、当該凹部13の形状は、不定形となり易く、また、不定形の凹部が形成されることで、平坦面14の形状も不定形となる。
【0063】
<表面(α)に存在し得る凹部について>
本発明の一態様の粘着シートは、
図1に示すように、樹脂層を構成する層(Xα)の表面(α)に凹部13及び平坦面14が存在していてもよい。
表面(α)に存在する凹部13は、表面(α)を被着体に貼付する際に生じる「空気溜まり」を外部へ逃すための空気排出通路としての役割を担うことができる。そのため、表面(α)に凹部13が存在する粘着シートは、エア抜け性に優れたものとなり得る。
また、表面(α)に存在する平坦面14は、被着体との貼り合わせ時に、被着体と直接接触して密着する面であり、粘着シートの粘着力に影響を及ぼす箇所である。
【0064】
なお、上記の表面(α)に存在する凹部及び平坦面は、樹脂層の自己形成化の過程において、上述の要件を満たす層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)が形成される際の副産物として形成されるものであることが好ましい。
つまり、表面(α)に存在する凹部及び平坦面は、エンボスパターンを有する剥離材を用いて形成されたものではないことが好ましい。
【0065】
本発明の一態様において、エア抜け性に優れた粘着シートとする観点から、表面(α)に存在する凹部13は、不定形の凹部であることが好ましく、目視により不定形と認識できる凹部であることがより好ましい。不定形の凹部であることで、一定方向からの圧力を加えても全ての凹部13が潰れてエア抜けの経路が消失することを防ぐことが出来る。
また、本発明の一態様において、粘着特性に優れた粘着シートとする観点から、樹脂層12の表面(α)12a側から観察した際に、表面(α)に存在する平坦面14は、不定形の平坦面であることが好ましく、目視により不定形と認識できる平坦面であることがより好ましい。
なお、樹脂層の自己形成化により形成される凹部及び平坦面は、目視により不定形と認識できる凹部又は平坦面となり易い。
【0066】
なお、
図1(c)又は(d)に示すような、樹脂層12の表面(α)12a上に剥離材22が積層した粘着シート2a、2bにおいては、当該剥離材22を除去した際に、表出した表面(α)を目視で観察するものとする。
【0067】
本発明において、「形状が不定形」とは、円や楕円等の中心を作図可能な図形、及び多角形等といった定形の形状を有さず、形に規則性が無く、個々の形状に類似性が見られない形状であることを意味する。
なお、ここでいう、不定形の形状から除外している「多角形」とは、その内部に(外部にはみ出さずに)対角線を作図可能な図形であって、内角の和が180×n(度)(nは自然数)の直線で囲まれた図形を指す。当該多角形は、その角部がアール状の湾曲形状であるものも含まれる。
【0068】
以下、本発明の粘着シートの各構成について説明する。
〔基材〕
本発明の一態様で用いる基材としては、特に制限はなく、例えば、紙基材、樹脂フィルム又はシート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられ、本発明の一態様の粘着シートの用途に応じて適宜選択することができる。
紙基材を構成する紙としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂フィルム又はシートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
紙基材を樹脂でラミネートした基材としては、上記の紙基材を、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0069】
これらの基材の中でも、樹脂フィルム又はシートが好ましく、ポリエステル系樹脂からなるフィルム又はシートがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるフィルム又はシートが更に好ましい。
また、本発明の粘着シートを耐熱性が要求される用途に使用する場合には、ポリエチレンナフタレート及びポリイミド系樹脂から選ばれる樹脂から構成されるフィルム又はシートが好ましく、耐候性が要求される用途に使用する場合には、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、及びフッ素樹脂から選ばれる樹脂から構成されるフィルム又はシートが好ましい。
【0070】
基材の厚さは、本発明の粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、取扱性及び経済性の観点から、好ましくは5~1000μm、より好ましくは10~500μm、更に好ましくは12~250μm、より更に好ましくは15~150μmである。
なお、基材には、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0071】
また、本発明の一態様で用いる基材は、得られる粘着シートの耐ブリスター性向上の観点から、非通気性基材であることが好ましく、具体的には、上述の樹脂フィルム又はシートの表面上に金属層を有する基材が好ましい。
当該金属層に含まれる金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等の金属光沢を有する金属等が挙げられる。
当該金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられるが、上記金属をPVD法により蒸着する方法が好ましい。
【0072】
さらに、基材として樹脂フィルム又はシートを用いる場合、これらの樹脂フィルム又はシート上に積層する樹脂層との密着性を向上させる観点から、樹脂フィルム又はシートの表面に対して、酸化法や凹凸化法等による表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、及び紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0073】
〔剥離材〕
本発明の一態様で用いる剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
なお、当該剥離処理面は、凹凸形状が形成されておらず、平坦である剥離材(例えば、エンボスパターンが施されていない剥離材)が好ましい。
剥離材用の基材としては、例えば、本発明の一態様の粘着シートが有する基材として用いられる上述の紙基材、樹脂フィルム又はシート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは25~170μm、更に好ましくは35~80μmである。
【0074】
〔樹脂層〕
図1に示すように、本発明の粘着シートが有する樹脂層12は、樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含むものであることが好ましい。
樹脂部分(X)は、樹脂層中に含まれる微粒子以外の成分を含む部分を示す。つまり、樹脂層中に含まれる、樹脂だけでなく、粘着付与剤、架橋剤、汎用添加剤等の微粒子以外の成分は「樹脂部分(X)」に含まれる。
一方、粒子部分(Y)は、樹脂層中に含まれる微粒子からなる部分を示す。
【0075】
樹脂層中に粒子部分(Y)が含まれることで、貼付後の形状維持性を向上することができ、得られる粘着シートを高温下で使用した場合に、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
樹脂層12中の樹脂部分(X)と粒子部分(Y)との分布の構成としては、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とがほぼ均等に分布した構成であってもよく、局所的に主に樹脂部分(X)からなる箇所と、主に粒子部分(Y)からなる箇所と、分けられるような構成であってもよい。
【0076】
本発明の一態様の粘着シートが有する樹脂層は、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)以外に、更に空隙部分(Z)を有することが好ましい。樹脂層中に空隙部分(Z)を有することで、粘着シートの耐ブリスター性を向上させることができる。
この空隙部分(Z)は、前記微粒子同士の間に存在する空隙や、前記微粒子が二次粒子である場合、当該二次粒子内に存在する空隙等も含まれる。
なお、当該樹脂層が多層構造を有する場合、樹脂層の形成過程や形成直後において、空隙部分(Z)が存在していたとしても、空隙部分(Z)に樹脂部分(X)が流入して、空隙が消失し、空隙部分(Z)が無い樹脂層となることもある。
なお、このように樹脂層中に一時期存在していた空隙部分(Z)が消失した場合であっても、樹脂層の表面(α)に凹部が存在する場合には、凹部が存在することでエア抜け性だけでなく耐ブリスター性も良好とすることができる。
【0077】
また、本発明の一態様の粘着シートが有する樹脂層の100℃における剪断貯蔵弾性率は、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点から、好ましくは9.0×103Pa以上、より好ましくは1.0×104Pa以上、更に好ましくは2.0×104Pa以上である。
なお、本発明において、樹脂層の100℃における剪断貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製、装置名「DYNAMIC ANALYZER RDA II」)を用いて、周波数1Hzで測定することにより測定した値を意味する。
【0078】
樹脂層の厚さは、好ましくは1~300μm、より好ましくは5~150μm、更に好ましくは10~75μmである。
【0079】
本発明の粘着シートは、少なくとも基材又は剥離材が設けられた側とは反対側の当該樹脂層の表面(α)が粘着性を有しているが、基材又は剥離材が設けられた側の当該樹脂層の表面(β)も粘着性を有していてもよい。
【0080】
本発明の一態様の粘着シートの樹脂層の表面(α)における粘着力としては、好ましくは0.5N/25mm以上、より好ましくは2.0N/25mm以上、より好ましくは3.0N/25mm以上、更に好ましくは4.0N/25mm以上、より更に好ましくは7.0N/25mm以上である。
また、樹脂層の表面(β)も粘着性を有する場合、表面(β)における粘着力は、上記の範囲に属することが好ましい。
なお、粘着シートの当該粘着力の値は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0081】
<樹脂部分(X)>
樹脂層を構成する樹脂部分(X)は、樹脂層中に含まれる微粒子以外の成分を含む部分であって、その点で粒子部分(Y)とは区別される。
樹脂部分(X)は、樹脂と共に、粘着付与剤、架橋剤、汎用添加剤等が含まれていてもよい。
【0082】
樹脂部分(X)中の樹脂の含有量は、樹脂部分(X)の全量(100質量%)に対して、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂部分(X)の形成材料となる樹脂組成物中の樹脂の含有量の値を、上記「樹脂部分(X)中の樹脂の含有量」とみなすこともできる。
【0083】
樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂としては、形成される樹脂層の表面(α)に粘着性を発現させる観点から、粘着性樹脂を含むことが好ましい。
特に、
図1(a)の粘着シート1a等のように、樹脂層が、基材又は剥離材が設けられた側から、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造を有する場合には、上記観点から、少なくとも層(Xα)は、粘着性樹脂を含むことが好ましい。また、両面粘着シートの構成とする観点、並びに、基材との密着性を向上させる観点から、少なくとも層(Xα)及び層(Xβ)が、粘着性樹脂を含むことが好ましい。
【0084】
当該粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂の中でも、粘着特性及び耐候性が良好であり、樹脂層の表面(α)に凹部形成しやすくする観点から、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
アクリル系樹脂の含有量は、樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは25~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
【0085】
また、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、官能基を有する樹脂を含むことが好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂を含むことがより好ましい。
特に、上記観点から、少なくとも層(Y1)は、官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。
当該官能基は、架橋剤との架橋起点となる基であって、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、ケト基、アルコキシシリル基等が挙げられるが、カルボキシ基が好ましい。
【0086】
樹脂部分(X)は、前記官能基を有する樹脂と共に、さらに架橋剤を含有することが好ましい。特に、樹脂層が上述の多層構造体である場合には、少なくとも層(Y1)は、前記官能基を有する樹脂と共に、架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0087】
イソシアネート系架橋剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに、これらの化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、及び、低分子活性水素含有化合物(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等)との反応物であるアダクト体;等が挙げられる。
【0088】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0089】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-(2-メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0090】
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられるが、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、アルミニウムキレート系架橋剤が好ましい。
アルミニウムキレート系架橋剤としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0091】
なお、これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
【0092】
樹脂部分(X)中の架橋剤の含有量は、樹脂部分(X)に含まれる官能基を有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.3~7.0質量部である。
【0093】
また、本発明の一態様としては、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
樹脂部分(X)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、上記観点から、樹脂部分(X)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90~99.5/0.5、より好ましくは50/50~99.0/1.0、更に好ましくは65/35~98.5/1.5、より更に好ましくは75/25~98.0/2.0である。
【0094】
樹脂部分(X)は、表面(α)の粘着特性をより向上させる観点から、粘着性樹脂と共に、さらに粘着付与剤を含有することが好ましい。特に、樹脂層が上述の多層構造体である場合には、層(Xα)が、粘着性樹脂及び粘着付与剤を含有することが好ましい。
【0095】
なお、本発明で用いる粘着付与剤は、粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が通常1万未満のオリゴマーを指し、上述の粘着性樹脂とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400~8000、より好ましくは500~5000、より好ましくは800~3500である。
【0096】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;α-メチルスチレン又はβ-メチルスチレン等のスチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとを共重合して得られるスチレン系樹脂;これらスチレン系樹脂を水素化した水素化スチレン系樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂の水素化石油樹脂;等が挙げられる。
本発明で用いる粘着付与剤は、単独で又は軟化点や構造が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
粘着付与剤の軟化点としては、好ましくは80℃以上、より好ましくは80~180℃、更に好ましくは83~170℃、より更に好ましくは85~150℃である。
なお、本発明において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
また、2種以上の複数の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0098】
樹脂部分(X)中に粘着付与剤を含有する場合における、粘着付与剤の含有量は、樹脂部分(X)に含まれる粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1~200質量部、更に好ましくは3~150質量部、より更に好ましくは5~90質量部である。
【0099】
また、樹脂部分(X)には、上述の架橋剤や粘着付与剤以外の汎用添加剤を含有していてもよい。
汎用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
なお、これらの汎用添加剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの汎用添加剤を含有する場合、それぞれの汎用添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~60質量部、より好ましくは0.001~50質量部である。
【0100】
樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂は、1種のみでもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の粘着シートが有する樹脂層の樹脂部分(X)の形成材料としては、官能基を有する粘着性樹脂を含む粘着剤であることが好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂(A)(以下、単に「アクリル系樹脂(A)」ともいう)を含むアクリル系粘着剤であることがより好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂(A)及び架橋剤(B)を含むアクリル系粘着剤であることが更に好ましい。
当該アクリル系粘着剤は、溶媒型、エマルション型のいずれであってもよい。
以下、樹脂部分(X)を形成材料として好適な、上記のアクリル系粘着剤について説明する。
【0101】
当該アクリル系粘着剤中に含まれるアクリル系樹脂(A)としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体等が挙げられる。
アクリル系樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは5万~150万、より好ましくは15万~130万、更に好ましくは25万~110万、より更に好ましくは35万~90万である。
【0102】
アクリル系樹脂(A)としては、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)、及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A1)を含むことが好ましく、アクリル系共重合体(A1)であることがより好ましい。
アクリル系共重合体(A1)の含有量は、アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
なお、アクリル系共重合体(A1)の共重合の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0103】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、より好ましくは4~12、更に好ましくは4~8、より更に好ましくは4~6である。
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0104】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~99.5質量%、より好ましくは60~99質量%、更に好ましくは70~95質量%、より更に好ましくは80~93質量%である。
【0105】
モノマー(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基含有モノマーがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0106】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~40質量%、更に好ましくは5~30質量%、より更に好ましくは7~20質量%である。
【0107】
なお、アクリル系共重合体(A1)は、上記モノマー(a1’)及び(a2’)以外のその他のモノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
その他のモノマー(a3’)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0108】
構成単位(a3)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~20質量%、更に好ましくは0~10質量%、より更に好ましくは0~5質量%である。
なお、上述のモノマー(a1’)~(a3’)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0109】
アクリル系共重合体(A1)成分の合成方法については、特に限定されるものではなく、例えば、原料モノマーを溶媒中に溶解して、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤等の存在下で、原料モノマーを用いて水系でエマルション重合する方法にて製造される。
【0110】
前記アクリル系粘着剤中に含まれる架橋剤(B)としては、上述のものが挙げられるが、粘着特性を良好とする観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
また、本発明の一態様としては、樹脂層の表面(α)に存在する複数の凹部の形状維持性を向上させる観点から、架橋剤(B)としては、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
【0111】
架橋剤(B)の含有量は、前記アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.3~7.0質量部である。
【0112】
金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を併用する場合、金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90~99.5/0.5、より好ましくは50/50~99.0/1.0、更に好ましくは65/35~98.5/1.5、より更に好ましくは75/25~98.0/2.0である。
【0113】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、汎用添加剤を含有してもよい。汎用添加剤としては、上述のものが挙げられ、また、当該汎用添加剤の含有量も、上述のとおりである。
【0114】
また、本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤は、表面(α)の粘着特性をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有することが好ましい。粘着付与剤としては、上述のものが挙げられ、また、当該粘着付与剤の含有量も、上述のとおりである。
【0115】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリル系樹脂(A)以外の粘着性樹脂(例えば、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等)を含有していてもよい。
アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)の含有量は、アクリル系粘着剤に含まれる粘着性樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
【0116】
<粒子部分(Y)>
本発明の一態様の粘着シートが有する樹脂層においては、微粒子からなる粒子部分(Y)を含むことが好ましい。
微粒子の平均粒径としては、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、好ましくは0.01~100μm、より好ましくは0.05~25μm、更に好ましくは0.1~10μmである。
【0117】
本発明の一態様で用いる微粒子としては、特に制限はなく、シリカ粒子、酸化金属粒子、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ、スメクタイト等の無機粒子や、アクリルビーズ等の有機粒子等が挙げられる。
これらの微粒子の中でも、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上が好ましく、シリカ粒子がより好ましい。
【0118】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子は、乾式シリカ及び湿式シリカのいずれであってもよい。
また、本発明の一態様で用いるシリカ粒子は、反応性官能基を有する有機化合物等で表面修飾された有機修飾シリカ、アルミン酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等の無機化合物で表面処理された無機修飾シリカ、並びに、これらの有機化合物及び無機化合物で表面処理された有機無機修飾シリカ、シランカップリング剤等の有機無機ハイブリッド材料で表面処理された有機無機修飾シリカ等であってもよい。
なお、これらのシリカ粒子は、2種以上からなる混合物であってもよい。
【0119】
シリカ粒子中におけるシリカの質量濃度は、シリカ粒子の全量(100質量%)に対して、好ましくは70~100質量%、より好ましくは85~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。
また、本発明の一態様で用いるシリカ粒子の体積平均二次粒子径は、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~8μm、更に好ましくは1.5~5μmである。
なお、本発明において、シリカ粒子の体積平均二次粒子径の値は、マルチサイザー・スリー機等を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより求めた値である。
【0120】
酸化金属粒子としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、及びこれらの複合酸化物から選ばれる酸化金属からなる粒子等が挙げられ、これらの酸化金属からなるゾル粒子も含まれる。
【0121】
スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイト等が挙げられる。
【0122】
本発明の一態様の粘着シートが有する樹脂層を800℃で30分間加熱した後の質量保持率は、好ましくは3~90質量%、より好ましくは5~80質量%、更に好ましくは7~70質量%、より更に好ましくは9~60質量%である。
当該質量保持率は、樹脂層中に含まれる微粒子の含有量(質量%)を示すとみなすことができる。
当該質量保持率が3質量%以上であれば、エア抜け性及び耐ブリスター性に優れた粘着シートとなり得る。また、本発明の粘着シートの製造時において、樹脂層の表面(α)に凹部が形成されやすくなる。一方、当該質量保持率が90質量%以下であれば、膜強度が高く、耐水性や耐薬品性が優れた樹脂層が形成され易くなる。なお、質量保持率が上記範囲であることで、樹脂層の自己形成化の過程で、表面(α)に凹部が形成されやすくなる。
【0123】
〔粘着シートの製造方法〕
次に、本発明の粘着シートの製造方法について説明する。
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はないが、生産性の観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する第1の態様の製造方法、もしくは、少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する第2の態様の製造方法が好ましい。
【0124】
工程(1A):基材又は剥離材上に、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、前記微粒子を15質量%以上含む組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
【0125】
工程(1B):基材又は剥離材上に設けられた、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)上に、前記微粒子を15質量%以上含む組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満の組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
【0126】
第1又は第2の態様の製造方法で用いる組成物(xβ)及び(xα)は、樹脂部分(X)の形成材料であり、上述の樹脂と共に、架橋剤を含有することが好ましく、さらに粘着付与剤や上述の汎用添加剤を含有してもよい。
また、組成物(y)は、粒子部分(Y)の形成材料となるが、さらに樹脂や架橋剤、粘着付与剤、及び上述の汎用添加剤が含まれていてもよい。これらの樹脂等の微粒子以外の成分が含まれている組成物(y)は、粒子部分(Y)の形成材料であると共に、樹脂部分(X)の形成材料ともなる。
【0127】
(組成物(xβ)及び(xα))
組成物(xβ)、(xα)中に含有する樹脂としては、上述の樹脂部分(X)を構成する樹脂が挙げられ、官能基を有する粘着性樹脂が好ましく、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)がより好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)が更に好ましい。
【0128】
組成物(xβ)、(xα)中の樹脂の含有量は、組成物(xβ)又は(xα)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0129】
また、組成物(xβ)、(xα)中に含有する架橋剤としては、上述の樹脂部分(X)中に含有する架橋剤が挙げられるが、組成物(xβ)、(xα)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましい。
さらに、本発明の一態様としては、組成物(xβ)、(xα)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
組成物(xβ)、(xα)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、組成物(xβ)又は(xα)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90~99.5/0.5、より好ましくは50/50~99.0/1.0、更に好ましくは65/35~98.5/1.5、より更に好ましくは75/25~98.0/2.0である。
【0130】
架橋剤の含有量は、組成物(xβ)又は(xα)中に含有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.3~7.0質量部である。
【0131】
組成物(xβ)、(xα)としては、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)及び架橋剤(B)を含むアクリル系粘着剤であることが好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)及び架橋剤(B)を含むアクリル系粘着剤であることがより好ましい。また、当該アクリル系粘着剤は、さらに粘着付与剤や汎用添加剤を含有してもよい。
なお、上記アクリル系粘着剤の詳細は、上述のとおりである。
【0132】
組成物(xβ)、(xα)は、上述の微粒子を含有していてもよい。
ただし、組成物(xβ)、(xα)中の当該微粒子の含有量は、15質量%未満であり、且つ組成物(xβ)、(xα)中に含まれる樹脂の含有量よりも少ない。
具体的な組成物(xβ)、(xα)中の微粒子の含有量としては、組成物(xβ)又は(xα)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、15質量%未満であるが、好ましくは0~13質量%、より好ましくは0~10質量%、更に好ましくは0~5質量%、より更に好ましくは0質量%である。
【0133】
(組成物(y))
組成物(y)は、粒子部分(Y)の形成材料であり、少なくとも上述の微粒子を15質量%以上含むが、微粒子の分散性の観点から、微粒子と共に、樹脂を含有することが好ましく、さらに当該樹脂と共に架橋剤を含有することがより好ましい。また、組成物(y)は、さらに粘着付与剤や汎用添加剤を含んでもよい。
なお、組成物(y)中に含まれる、微粒子以外の成分(樹脂、架橋剤、粘着付与剤及び汎用添加剤)は、樹脂部分(X)の形成材料となる。
【0134】
組成物(y)中に含まれる微粒子としては、上述のものが挙げられるが、樹脂層中に空隙部分(Z)を形成し、耐ブリスター性を向上させた粘着シートとする観点から、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上が好ましい。
組成物(y)中の微粒子の含有量は、樹脂層の表面(α)上に、樹脂層の自己形成化によって形成される不定形の凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、組成物(y)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、通常15質量%以上であるが、好ましくは20~100質量%、より好ましくは25~90質量%、更に好ましくは30~85質量%、より更に好ましくは35~80質量%である。
【0135】
組成物(y)中に含まれる樹脂としては、上述の組成物(x)に含まれる樹脂と同じものが挙げられ、組成物(x)と同じ樹脂を含むことが好ましい。なお、これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、組成物(y)中に含まれるより具体的な樹脂としては、官能基を有する樹脂が好ましく、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)がより好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)が更に好ましい。
【0136】
組成物(y)中の樹脂の含有量は、組成物(y)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、通常0~85質量%、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~75質量%、更に好ましくは10~70質量%、より更に好ましくは20~65質量%である。
【0137】
また、組成物(y)中に含有する架橋剤としては、上述の樹脂部分(X)中に含有する架橋剤と同じものが挙げられる。これらの中でも、組成物(y)は、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましい。さらに、本発明の一態様としては、組成物(y)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
なお、組成物(y)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、組成物(y)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との好適な含有比(質量比)の範囲は、上述の組成物(x)と同じである。
【0138】
組成物(y)中の架橋剤の含有量は、組成物(y)中に含有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.3~7.0質量部である。
【0139】
(塗膜(xβ’)、(xα’)、(y’)の形成方法)
なお、塗膜を形成する際に、塗膜を形成しやすくするため、組成物(xβ)、(xα)及び(y)に、溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とすることが好ましい。
このような溶媒としては、水や有機溶媒等が挙げられる。
当該有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、s-ブタノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0140】
塗膜(xβ’)、(xα’)、及び(y’)の形成方法としては、各塗膜を逐次形成する方法でもよく、また、生産性の観点から、各塗膜を多層コーターで同時塗布し形成する方法でもよい。
逐次形成する際に用いるコーターとしては、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ナイフロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられる。
多層コーターで同時塗布する際に用いるコーターとしては、例えば、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられるが、これらの中でも、操作性の観点から、ダイコーターが好ましい。
【0141】
(第1の態様の製造方法)
工程(1A)では、組成物(xβ)、組成物(y)、及び組成物(xα)には、上述の溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とした後、塗布することが好ましい。
塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)の形成方法としては、基材又は剥離材上に、塗膜(xβ’)を形成した後、塗膜(xβ’)上に塗膜(y’)を形成し、さらに塗膜(y’)上に塗膜(xα’)を形成するというように、上述のコーターを用いて逐次形成する方法でもよく、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、上述の多層コーターを用いて同時塗布し形成する方法でもよい。
【0142】
なお、本工程(1A)において、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)の1層以上の塗膜を形成後に、工程(2A)に移る前に、当該塗膜の硬化反応が進行しない程度のプレ乾燥処理を施してもよい。
例えば、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)のそれぞれの塗膜の形成後に、その都度上記のプレ乾燥処理を行ってもよく、塗膜(xβ’)及び塗膜(y’)の形成後に、まとめて上記のプレ乾燥処理を行った後、塗膜(xα’)を形成してもよい。
本工程(1A)における、当該プレ乾燥処理を行う際の乾燥温度としては、通常は、形成した塗膜の硬化が進行しない程度の温度範囲で適宜設定されるが、好ましくは工程(2A)での乾燥温度未満である。「工程(2A)での乾燥温度未満」との規定が示す具体的な乾燥温度としては、好ましくは10~45℃、より好ましくは10~34℃、更に好ましくは15~30℃である。
【0143】
工程(2A)は、工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程である。
本工程における乾燥温度としては、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、好ましくは35~200℃、より好ましくは60~180℃、更に好ましくは70~160℃、より更に好ましくは80~140℃である。
本工程により、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む樹脂層が形成される。
【0144】
なお、本工程により形成される樹脂層の粒子部分(Y)の周辺において、空隙部分(Z)が形成されやすい。
空隙部分(Z)は、上述の組成物(y)中に含有する微粒子として、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上を用いることで、容易に形成することができる。
【0145】
〔第2の態様の製造方法〕
工程(1B)において、「主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)」は、上述の主成分として樹脂を含む組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)を乾燥させて形成することができる。
層(Xβ)が組成物(xβ)から形成されるため、層(Xβ)には、樹脂以外にも、架橋剤や汎用添加剤等が含有していてもよい。層(Xβ)中の樹脂部分(X)の含有量としては、上述のとおりである。
【0146】
層(Xβ)の形成方法としては、基材又は剥離材上に、主成分として樹脂を含む組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)を形成し、該塗膜(xβ’)を乾燥させて形成することができる。
このときの乾燥温度としては、特に制限はなく、好ましくは35~200℃、より好ましくは60~180℃、更に好ましくは70~160℃、より更に好ましくは80~140℃である。
【0147】
なお、本態様においては、塗膜(xβ’)上ではなく、乾燥後に得られた層(Xβ)上に、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)をこの順で形成する点で、上述の第1の態様とは異なる。
工程(1B)においても、組成物(y)及び組成物(xα)には、上述の溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とした後、塗布することが好ましい。
塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の形成方法としては、層(Xβ)上に、塗膜(y’)を形成した後、塗膜(y’)上に塗膜(xα’)を形成するというように、上述のコーターを用いて逐次形成する方法でもよく、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、上述の多層コーターを用いて同時塗布し形成する方法でもよい。
【0148】
なお、本工程(1B)において、塗膜(y’)の形成後、もしくは塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の形成後に、工程(2B)に移る前に、当該塗膜の硬化反応が進行しない程度のプレ乾燥処理を施してもよい。
本工程(1B)における、当該プレ乾燥処理を行う際の乾燥温度としては、通常は、形成した塗膜の硬化が進行しない程度の温度範囲に適宜設定されるが、好ましくは工程(2B)での乾燥温度未満である。「工程(2B)での乾燥温度未満」との規定が示す具体的な乾燥温度としては、好ましくは10~45℃、より好ましくは10~34℃、更に好ましくは15~30℃である。
【0149】
工程(2B)は、工程(1B)で形成した塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程であるが。
本工程における乾燥温度としては、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、好ましくは35~200℃、より好ましくは60~180℃、更に好ましくは70~160℃、より更に好ましくは80~140℃である。
本工程により、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む樹脂層が形成される。
【0150】
なお、本工程により形成される樹脂層の粒子部分(Y)の周辺において、空隙部分(Z)が形成されやすい。
空隙部分(Z)は、上述の組成物(y)中に含有する微粒子として、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上を用いることで、容易に形成することができる。
【実施例】
【0151】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0152】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0153】
<シリカ粒子の体積平均二次粒子径の測定>
シリカ粒子の体積平均二次粒子径は、マルチサイザー・スリー機(ベックマン・コールター社製)を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより求めた。
【0154】
<樹脂層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
具体的には、測定対象の粘着シートの総厚を測定した上で、予め測定した基材もしくは剥離シートの厚みを差し引いた値を「樹脂層の厚さ」とした。
【0155】
製造例x-1~x-4
(樹脂組成物の溶液(xβ-1)~(xβ-2)及び(xα-1)~(xα-2)の調製)
表1に記載の種類及び固形分量の粘着性樹脂であるアクリル系樹脂の溶液に対して、表1に記載の種類及び配合量の架橋剤、及び粘着付与剤を添加した。そして、表1に記載の希釈溶媒を用いて希釈し、表1に記載の固形分濃度を有する樹脂組成物の溶液(xβ-1)~(xβ-2)及び(xα-1)~(xα-2)をそれぞれ調製した。
【0156】
なお、樹脂組成物の溶液(xβ-1)~(xβ-2)及び(xα-1)~(xα-2)の調製に使用した表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<アクリル系樹脂の溶液>
・溶液(i):アクリル系樹脂(x-i)(BA/AA=90/10(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:63万)を含有する固形分濃度34.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
・溶液(ii):アクリル系樹脂(x-ii)(BA/AA=90/10(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:47万)を含有する固形分濃度37.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
・溶液(iii):アクリル系樹脂(x-iii)(2EHA/VAc/AA=75/23/2(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:66万)を含有する固形分濃度37.0質量%のトルエンとイソプロピルアルコール(IPA)との混合溶液。
・溶液(iv):アクリル系樹脂(x-iv)(BA/AA/HEA=94/3/3(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:100万)を含有する固形分濃度37.0質量%の酢酸エチルの溶液。
なお、上記のアクリル系共重合体の構成する原料モノマーの略称は、以下のとおりである。
・BA:n-ブチルアクリレート
・2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
・AA:アクリル酸
・VAc:酢酸ビニル
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
【0157】
<架橋剤>
・Al系架橋剤:製品名「M-5A」、綜研化学株式会社製、アルミニウムキレート系架橋剤、固形分濃度=4.95質量%。
・エポキシ系架橋剤:「TETRAD-C」(製品名、三菱ガス化学株式会社製)をトルエンで希釈し、固形分濃度5質量%としたエポキシ系架橋剤の溶液。
【0158】
<粘着付与剤>
・ロジンエステル系TF:ロジンエステル系粘着付与剤、Mw:1万未満、軟化点:85℃。
・スチレン系TF:スチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合体からなるスチレン系粘着付与剤、Mw:1万未満、軟化点:95℃。
【0159】
<希釈溶媒>
・混合溶媒(1):トルエン/イソプロピルアルコール(IPA)=65/35(質量比)で混合してなる混合溶媒。
・混合溶媒(2):酢酸エチル/IPA=86/14(質量比)で混合してなる混合溶媒。
【0160】
【0161】
製造例f-1
(微粒子分散液(f-1)の調製)
上述のアクリル系樹脂(x-i)を含むアクリル系樹脂の溶液(i)(ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)に由来する構成単位を有するアクリル系共重合体、BA/AA=90/10(質量%)、Mw:63万)を含有する固形分濃度34.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液100質量部(固形分:34.0質量部)に対して、微粒子として、シリカ粒子(製品名「ニップシール E-200A」、東ソー・シリカ社製、体積平均二次粒子径:3μm)を51.0質量部(固形分:51.0質量部)及びトルエンを添加して、微粒子を分散させて、アクリル系樹脂及びシリカ粒子を含む固形分濃度27質量%の微粒子分散液(f-1)を調製した。
【0162】
製造例f-2
(微粒子分散液(f-2)の調製)
溶液(i)に代えて、上述のアクリル系樹脂(x-ii)を含む溶液(ii)(ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)に由来する構成単位を有するアクリル系共重合体、BA/AA=90/10(質量%)、Mw:47万)を含有する固形分濃度37.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液100質量部(固形分:37.0質量部)に対して、微粒子として、シリカ粒子(製品名「ニップシール E-200A」、東ソー・シリカ社製、体積平均二次粒子径:3μm)を55.5質量部(固形分:55.5質量部)及びトルエンを添加して、微粒子を分散させて、アクリル系樹脂及びシリカ粒子を含む固形分濃度30質量%の微粒子分散液(f-2)を調製した。
【0163】
製造例y-1~y-2
(塗膜(y’)形成用塗布液(y-1)~(y-2)の調製)
表2に記載の種類及び配合量の微粒子分散液、アクリル系樹脂の溶液、架橋剤、及び希釈溶媒を添加して、表2に記載の固形分濃度の塗膜(y’)形成用塗布液(y-1)~(y-2)をそれぞれ調製した。
【0164】
なお、塗膜(y’)形成用塗布液(y-1)~(y-2)の調製に使用した表2に記載の各成分
の詳細は以下のとおりである。
<微粒子分散液>
・分散液(f-1):製造例f-1で調製した、アクリル系樹脂(x-i)及びシリカ粒子を含む固形分濃度27質量%の微粒子分散液(f-1)。
・分散液(f-2):製造例f-2で調製した、アクリル系樹脂(x-ii)及びシリカ粒子を含む固形分濃度30質量%の微粒子分散液(f-2)。
<アクリル系樹脂の溶液>
・溶液(i):アクリル系樹脂(x-i)(BA/AA=90/10(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:63万)を含有する固形分濃度34.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
・溶液(ii):アクリル系樹脂(x-ii)(BA/AA=90/10(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:47万)を含有する固形分濃度37.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
<架橋剤>
・Al系架橋剤:製品名「M-5A」、綜研化学株式会社製、アルミニウムキレート系架橋剤、固形分濃度=4.95質量%。
・エポキシ系架橋剤:「TETRAD-C」(製品名、三菱ガス化学株式会社製)をトルエンで希釈し、固形分濃度5質量%としたエポキシ系架橋剤の溶液。
<希釈溶媒>
・IPA/CHN:イソプロピルアルコール(IPA)及びシクロヘキサノン(CHN)からなる混合溶媒(IPA/CHN=95/5(質量比))。
【0165】
【0166】
実施例1~2
(1)塗膜の形成
第1の剥離材である剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、厚み38μm、PETフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層を設けたもの)の剥離剤層上に、表3に記載のとおり、製造例x-1で調製した樹脂組成物の溶液(xβ-1)と、製造例y-1で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y-1)と、塗膜(xα’)形成用として、製造例x-1で調製した樹脂組成物の溶液(xβ-1)とを、剥離剤層上からこの順で多層ダイコーター(幅:250mm)を用いて同時に塗布し、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の順で同時に形成した。
なお、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を形成するための各溶液(塗布液)の塗布速度及び各塗膜の塗布量は、表3に記載のとおりである。
【0167】
(2)乾燥処理
そして、3層の塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表3に示す厚さの樹脂層を形成した。
なお、実施例1~2のいずれにおいても、形成した樹脂層の表面(α)には、複数の凹部と平坦面が目視によっても確認された。
【0168】
(3)基材無し粘着シート及び基材付き粘着シートの作製
形成した樹脂層の表面(α)に、第2の剥離材である剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET386040」)の剥離剤層の表面と貼合するようにラミネートし、基材無し粘着シートを作製した。
また、同様に作製した、上記の基材無し粘着シートを23℃環境下で1週間静置した後、第1の剥離材を除去し、表出した樹脂層の表面(β)と、基材である、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、製品名「ルミラーT60 #50」、厚さ50μm)と貼合するようにラミネートし、基材付き粘着シートを作製した。
【0169】
実施例3~4
(1)塗膜の形成
片面にアルミ蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック株式会社製、「FNSケシN50」、厚さ50μm)のアルミ蒸着層の表面上に、表3に記載のとおり、製造例x-2で調製した樹脂組成物の溶液(xβ-2)と、製造例y-2で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y-2)と、製造例x-3~x-4で調製した樹脂組成物の溶液(xα-1)又は(xα―2)とを、アルミ蒸着層上からこの順で多層ダイコーター(幅:250mm)を用いて同時に塗布し、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の順で同時に形成した。
なお、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を形成するための各溶液(塗布液)の塗布速度及び各塗膜の塗布量は、表3に記載のとおりである。
【0170】
(2)乾燥処理
そして、3層の塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表3に示す厚さの樹脂層を形成した。
なお、実施例3~4のいずれにおいても、形成した樹脂層の表面(α)には、複数の凹部と平坦面が目視によっても確認された。
【0171】
(3)基材付き粘着シートの作製
剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」)の剥離剤層の表面と貼合するようにラミネートし、基材付き粘着シートを得た。
【0172】
【0173】
実施例1~4で作製した基材付き粘着シート又は基材無し粘着シートを用いて、以下の測定及び評価を行った。これらの結果を表4に示す。
【0174】
<水平方向0μmから250μmにおける各層の厚さの変化>
(1)測定試料の作製
実施例で作製した、基材付き粘着シートの剥離材を除去し、表面(α)を表出させたものを測定試料とした。
(2)樹脂層の断面画像撮影装置、測定条件
図2に示すように、上記測定試料の樹脂層12の表面(α)12a上の一辺5mmの正方形50で囲まれた領域(P)を任意に選択した。
そして、領域(P)の正方形50の2本の対角線51、52のそれぞれを通り、表面(α)12a上の領域(P)に対して垂直となるような平面で厚さ方向に粘着シートを切断して得られた2つの断面61、62のうち一つを選択した。
その上で、選択した断面において、
図3に示すように、始点S
0と終点S
250との距離が250μmとなる「水平方向250μmの幅」を任意に選択し、水平方向250μmを含む断面の範囲70である「水平方向250μmの範囲」を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、製品名「S-4700」)を用いて加速電圧5kV、倍率500倍の条件で観察し、断面のデジタル画像(JPEG形式)を取得した。
(3)各層の厚みの算出
得られた断面のデジタル画像(JPEG形式)を画像編集・処理ソフト「GIMP」(フリーソフト)を用いて、各層を3値化グレースケール画像とした後、PNM形式(ファイルディスクリプター:P2、タイプ:Portable Grayscale、エンコーディング:ASCII)に画像フォーマットを変換し、画像の1ピクセル毎に対応する文字列に変換した。
次に、テキストエディタ「秀丸エディタ」(有限会社サイトー企画社製)を用いて、得られた文字列をJPEG形式の元画像と同じマトリクスになるように置換し、断面のデジタル画像のピクセルと同一の場所に色情報を保持するCSV形式のファイルを作成した。
得られた各層(層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)のいずれか)に対応する文字列の数と、上述の方法で測定した樹脂層の総厚の値を基に、表計算ソフト「Microsoft Excel」(マイクロソフト社製)の関数を利用し、水平距離を0μmから250μmまで変化した際の各位置における、層(Xα)、層(Y1)及び層(Xβ)の厚さを数値化し、水平距離と各層の厚さとの関係をグラフ化した。そして、各層の厚さの最大値と最小値との差、平均値に対する標準偏差、及び層(Y1)の
厚さの算術平均値Raをそれぞれ算出した。
また、各実施例の粘着シートの水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さの変化を示すグラフから、上述の要件(III)で規定の「範囲」の個数を算出した。
【0175】
<粘着シートの樹脂層の質量保持率>
粘着シートから樹脂層の単体を得た後、加熱前の樹脂層の質量を測定した。そして、当該樹脂層をマッフル炉(デンケン株式会社製、製品名「KDF-P90」)内に投入し、800℃にて30分間加熱した。そして、加熱後の樹脂層の質量を測定し、下記式により、樹脂層の質量保持率を算出した。その値を表4に示す。
樹脂層の質量保持率(%)=[加熱後の樹脂層の質量]/[加熱前の樹脂層の質量]×100
【0176】
<粘着力>
実施例で作製した基材付き粘着シートを縦25mm×横300mmの大きさに切断した後、当該粘着シートの樹脂層の表面(α)を、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、ステンレス板(SUS304、360番研磨)に貼付し、同じ環境下で24時間静置した。静置後、JISZ0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、各粘着シートの粘着力を測定した。
【0177】
<層間強度試験>
実施例で作製した基材付き粘着シートを縦25mm×横300mmの大きさに切断した後、当該粘着シートの樹脂層の表面(α)を、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、表面にプライマー層を有するステンレス板(SUS304、360番研磨)の当該プライマー層と貼付し、同じ環境下で5分間静置した。
なお、上記プライマー層は、アミノ基含有アクリル系ポリマー(製品名「ポリメントNK-350」、株式会社日本触媒製、固形分33~37質量%)をトルエン/IPA=7/3の混合溶媒で希釈した固形分濃度2質量%の溶液を、上記ステンレス板の表面に刷毛を用いて塗布し、塗膜を50℃で2分間乾燥して形成したものである。
静置後、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて基材付き粘着シートをステンレス板から剥離した後の被着体及び粘着シートを目視により観察し、以下の基準により、各粘着シートの層間強度を評価した。
A:粘着シートの樹脂層の層間以外の箇所で剥がれた。
F:粘着シートの樹脂層の層間における破壊が確認された。
【0178】
【0179】
表4より、実施例1~4で作製した粘着シートは、優れた粘着力を有すると共に、多層構造体である樹脂層の隣接する2層の層間密着性にも優れる結果となった。
なお、実施例1~4で作製した粘着シートの樹脂層の表面(α)には、目視でも認識できる、不定形の凹部及び不定形の平坦面の存在が確認された。
【0180】
図4は、実施例1で作製した粘着シートの樹脂層の断面(P1)について、任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Xα)、層(Y1)、及び層(Xβ)の厚さを示すグラフである。
図4に示すグラフから、各層の厚さの最大値と最小値との差が大きいことが分かる。
なお、実施例2~4の水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Xα)、層(Y1)、及び層(Xβ)の厚さの変化を示すグラフにおいても、同様の結果となった。
また、
図5は、
図4の各層の厚さの変化を示すグラフのうち、断面(P1)の任意に選択した水平方向250μmの範囲にて、水平距離を0μmから250μmまで変化させた際の各位置における層(Y1)の厚さを示すグラフのみを抜粋したものである。当該グラフからも、実施例1の粘着シートにおいて、上述の要件(III)で規定の範囲が4箇所存在することがわかる。
加えて、上述の要件(IV)に記載のとおり、層(Y1)の厚さの最小値(H
MIN(Y1))となる層(Y1)内の箇所の鉛直上方に積層する層(Xα)の表面(α)に凹部が存在することも確認された。
さらに、
図6は、実施例1で作製した粘着シートの断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察して取得した断面画像である。なお、実施例2~4の粘着シートの断面についても、
図6の断面画像と同様の層構成であった。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の一態様の粘着シートは、識別又は装飾用、塗装マスキング用、金属板等の表面保護用等に使用する、貼付面積が大きい粘着シートとして有用である。
【符号の説明】
【0182】
1a、11a、1b、2a、2b 粘着シート
11 基材
12 樹脂層
12a 表面(α)
12b 表面(β)
(X) 樹脂部分(X)
(Y) 粒子部分(Y)
13 凹部
14 平坦面
21、22 剥離材
50 正方形
51、52 対角線
61、62 断面
70 範囲