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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】防護マスク用のセンサ保持具
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/08 20060101AFI20220412BHJP
   G21F 3/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A62B18/08 D
G21F3/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018018129
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019134841
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(72)【発明者】
【氏名】菊池 耕平
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060585(JP,A)
【文献】登録実用新案第3069644(JP,U)
【文献】米国特許第07494218(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0125623(US,A1)
【文献】特開2000-270060(JP,A)
【文献】特開昭58-133210(JP,A)
【文献】実開平04-126505(JP,U)
【文献】特開2007-275555(JP,A)
【文献】特開2017-179757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00-33/00
G21F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向と、幅方向及び前後方向とを有する防護マスクに取り付けられるセンサ保持具であって、
細棒状部材から形成されており、前記前後方向の前方へ屈曲して延びて前記防護マスクに係止されるフック部と、係止された状態にある前記フック部の前記幅方向の両側に位置する第1及び第2ばね部とを備え、
前記第1及び前記第2ばね部は、前記幅方向の外側へ延びた後に屈曲部分において前記上下方向の下方へ延びる脚部と、前記脚部から前記センサ保持具の縦中心線へ向かって傾斜するように前記下方へ延びていて前記センサ保持具で保持するセンサの下側角部が嵌挿される環状の支持部とを有する
ことを特徴とする前記センサ保持具。
【請求項2】
前記センサは、断面矩形のもので、一対の上側角部と一対の下側角部とを有し、前記一対の下側角部が前記環状の支持部に嵌挿されるときに、前記第1ばね部及び前記第2ばね部が前記幅方向の外側へ押し拡げられ、そのときの弾性復元力が前記幅方向の内側へ作用するとともに、前記一対の上側角部のそれぞれが前記第1及び前記第2ばね部の前記屈曲部分のそれぞれに当接して、前記上下方向の上方への移動が阻止される請求項1記載のセンサ保持具。
【請求項3】
前記防護マスクは、透明のアイピースから後方へ延びる後方周壁部を有し、前記フック部は、前記後方周壁部の上側部分の内側壁に位置する係止部に係止され、着用者の眉間の上方に位置する部分と対向するように吊持された状態となる請求項1または2記載のセンサ保持具。
【請求項4】
前記吊持された状態において、前記アイピースの内面に倒伏する請求項1-3のいずれかに記載のセンサ保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護マスク用のセンサ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高濃度の有毒ガスや高い放射線量を含む環境下で作業する場合に着用する防護マスクは、公知である。例えば、特許文献1には、着用者の顔面全体を覆うことのできる面体と、着用者の顔面に当接される接顔パッドと、防毒用又は防塵用のフィルタユニットとを備えた防護マスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-20675号公報
【0004】
かかる防護マスクは、着用者の全身を覆う防護服とともに使用されるものであって、防護服のフードに粘着テープなどの連結手段を介して連結され、防護服及び防護マスクの内部被ばくを防止するように全身が完全に防護された状態で着用される。
【0005】
しかしながら、高い放射線量を含む環境下において作業を行う場合には、身体に対する線量管理が重要であって、防護マスクを長時間にわたり使用すると、着用者の眼の水晶体が被曝するおそれがある。水晶体の等価線量は、防護マスクの内面にセンサ(放射線量計)を配置することによってモニタリングすることができるが、面体の透明の前面部は球体面状又は凸曲面状であって、粘着テープ等の固定手段を介して固定するのが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の発明の改良であって、防護マスクの面体の内側に、簡易かつ安定的にセンサを配置するための防護マスク用のセンサ保持具の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上下方向と、幅方向及び前後方向とを有する防護マスク用に取り付けられるセンサ保持具に関する。
【0008】
本発明に係る防護マスク用のセンサ保持具は、細棒状部材から形成されており、前記前後方向の前方へ屈曲して延びて前記防護マスクに係止されるフック部と、係止された状態にある前記フック部の前記幅方向の両側に位置する第1及び第2ばね部とを備え、前記第1及び前記第2ばね部は、前記幅方向の外側へ延びた後に屈曲部分において前記上下方向の下方へ延びる脚部と、前記脚部から前記センサ保持具の縦中心線へ向かって傾斜するように前記下方へ延びていて前記センサ保持具で保持するセンサの下側角部が嵌挿される環状の支持部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る防護マスク用のセンサ保持具は、以下の実施態様を含む。
(1)前記センサは、断面矩形のもので、一対の上側角部と一対の下側角部とを有し、前記一対の下側角部が前記環状の支持部に嵌挿されるときに、前記第1ばね部及び前記第2ばね部が前記幅方向の外側へ押し拡げられ、そのときの弾性復元力が前記幅方向の内側へ作用するとともに、前記一対の上側角部のそれぞれが前記第1及び前記第2ばね部の前記屈曲部分のそれぞれに当接して、前記上下方向の上方への移動が阻止される。
)前記防護マスクは、透明のアイピースから後方へ延びる後方周壁部を有し、前記フック部は、前記後方周壁部の上側部分の内面に位置する係止部に係止され、着用者の眉間の上方に位置する部分と対向するように吊持された状態となる。
)前記吊持された状態において、前記アイピースの内面に倒伏する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る防護マスク用のセンサ保持具では、細棒状部材から形成されており、前方へ屈曲して延びるフック部と、フック部の幅方向の両側から延びて下方へ屈曲する第1及び第2ばね部とを備え、第1及び第2ばね部は、それぞれ、センサの下側角部が挿通される環状の支持部を有することから、防護マスクの内面側において、センサを吊持した状態で安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】本発明に係るセンサ保持具を取り付けた防護マスクの使用状態における斜視図。
図2】センサ保持具を取り付けた防護マスクを正面から視た斜視図。
図3】センサ保持具を取り付けた防護マスクを背面から視た斜視図。
図4】(a)センサ保持具の斜視図。(b)センサを保持した状態におけるセンサ保持具の斜視図。
図5】防護マスクに取り付けたセンサ保持具の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の実施の形態は、図1図5に示すセンサ保持具10に関し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい構成を含む。
【0013】
図1,2を参照すると、本発明に係るセンサ保持具10が取り付けられる防護マスク1は、上下方向Yと、幅方向X及び前後方向Zと、前面1aと、後面1bとを有し、フルフェイス型の面体2と、面体2の前面1a側に位置する着脱可能な吸排気ユニット3とを備える。
【0014】
防護マスク1は、例えば、高濃度の有毒ガスや高い放射線量が存在する環境下(施設内)等においては、フード部5を有した着用者の全身を覆う防護服4とともに使用される。防護マスク1の外周縁部は、防護服のマスク取付用開口の開口縁部の内面に当接されており、防護マスク1の外周縁部と該開口縁部とが合成ゴム等から形成された環状の取付バンド6によって互いに密接してシールされている。
【0015】
図2及び3を参照すると、面体2は、ポリカーボネート樹脂等の透明で硬質な合成樹脂から形成されたアイピース(透明部、視野カバー)21と、前面部の後方において環状に延びる合成ゴム等の柔軟弾性材料から形成された後方周壁部22とを有する。後方周壁部22は、硬質合成樹脂から形成されたアイピース21を囲む枠状部分26の外周縁から後方へ延びている。後方周壁部22の後端縁側には、着用者の周囲に密着可能な環状のリップ部22bが位置する。
【0016】
後方周壁部22の外周面の外面から後方へ突出して延びる取付部22cには、着用者の頭部に掛け回されるヘッドバンド24がバックルを介して取り付けられている。吸排気ユニット3は、電動ファンとバッテリーとの制御回路を内蔵するものであって電動ファンが回転することによってろ過材ユニット(ガス吸収缶)7でろ過された空気を面体の内側に供給することができる。
【0017】
図3を参照すると、着用者がリップ部22bを上方へ捲り上げると、後方周壁部22の上側部分の内側面22aには、後方へ環状に延びる帯片から形成された係止部27が位置する。係止部27には、センサ30を保持したセンサ保持具10が吊持されている。センサ30は、例えば、防護マスク1内の放射線量を測定するためのものであって、比較的に小型かつ軽量である。センサ保持具10は、防護マスク1内であって着用者の両眼近傍の線量を直接測定することができることから、防護服4内の胴回りに配置する場合に比べて、水晶体の等価線量を高精度で測定することができる。また、図1を参照すると、センサ保持具10は、防護マスク1の正面視において、着用者の額または眉間の上方に位置する部分と対向するように吊持されていることから、着用者の視界を遮ることはない。
【0018】
図3及び図4(b)を参照すると、センサ30は、断面矩形のボックス状かつ四隅が角鋭状であって、上側角部31,32と下側角部33,34とを有する。センサ30の前面部30aには、その外形輪郭に沿う内周溝30bが形成されており、内周溝30b内には、例えば、作業者の個人名や緊急時の搬送先の病院名等が記された貼付シール等を配置することができる。なお、センサ30の上下側角部31-34は、後記の本願発明の技術的効果を奏する限りにおいて、曲状であってもよい。
【0019】
図4(a),(b)を参照すると、センサ保持具10は、硬質の合成樹脂又は金属材料から形成された1本の線材から形成されており、前方へコ字状に屈曲して延びるフック部40と、フック部40の幅方向Xの両側に位置する第1及び第2ばね部50,60とを有する。センサ保持具10は、幅方向Xの寸法を2等分する縦中心線Pをさらに有する。センサ保持具10は、細棒状の部材から形成されたフレーム状のものであって、1本の線材を折り曲げて形成するほかに、例えば、合成樹脂製の成形品であってもよいし、複数の線材を公知の接着又は溶着手段を介して互いに繋げて形成したものであってもよい。
【0020】
第1及び第2ばね部50,60は、フック部40の両側から幅方向Xの外側へ延びた後、屈曲して下方へ延びる脚部51,61と、脚部51,61からさらに縦中心線Pへ向かって傾斜するように下方へ延びる環状の支持部52,62とを有する。なお、センサ保持具10は、縦中心線Pに関して対称であって、センサ保持具10の上下方向Y、幅方向X及び前後方向Zは、防護マスク1の上下方向Y、幅方向X及び前後方向Zと同じである。センサ保持具10は、幅方向Xの寸法を2等分する縦中心線Pをさらに有する。センサ保持具10を形成する線材の両端部10a,10bは、支持部52,62の上方側に位置してセンサ30の両側部と対向して位置していることから、前方に位置するアイピース21に両端部10a,10bが触れてそれを傷つけることはない。
【0021】
図4(b)を参照すると、センサ保持具10は、第1ばね部50と第2ばね部60との間にそれらに挟持されるように保持される。具体的には、センサ30の上側角部31,32が第1及び第2ばね部50,60の脚部51,61の屈曲部分51a,61aに対向して位置し、センサ30の下方に位置する一対の下側角部33,34が縦中心線Pに関して傾斜した第1ばね部50の支持部52と第2ばね部60の支持部62とにそれぞれ嵌挿された状態で保持される。すなわち、下側角部33,34が第1及び第2ばね部50,60の支持部52,62に嵌挿されるときに、第1ばね部50と第2ばね部60とが幅方向Xの外側へ僅かに押し拡げられ、その弾性復元力が幅方向Xの内側へ作用する。それによって、第1及び第2ばね部50,60の支持部52,62によってセンサ30の下側部分が挟持された状態となる。
【0022】
また、センサ30の上側角部31,32が第1及び第2ばね部50,60の脚部51,61の屈曲部分51a,61aに当接されることによって、センサ30の上側への移動が阻止される。このように、センサ30は、上側角部31,32と下側角部33,34とによる四隅すべてが第1及び第2ばね部50,60に支持された状態でセンサ保持具10に安定して保持されているので、センサ保持具10が上下方向Y、幅方向X及び前後方向Zの各方向から外部衝撃を受けてもセンサ30がセンサ保持具10から不用意に外れて落下するおそれはない。
【0023】
着用者が、センサ保持具10にセンサ30を保持させるときには、まず、第1ばね部50(又は第2ばね部60)に下側角部33を嵌挿して支持し、次に、第2ばね部60を摘持してその弾性を利用して幅方向Xの外側へ引っ張るように移動さながら支持部62に下側角部34を嵌挿すればよいから、比較的容易にセンサ30の取り付け操作を行うことができる。また、センサ30をセンサ保持具10から取り外すときには、センサ30が第1及び第2ばね部50,60に挟持された状態から第1ばね部50(又は第2ばね部60)を摘持して幅方向Xの外側へ移動させて支持部52から下側角部33を外した後に、支持部62から下側角部34を外せばよい。
【0024】
図5を参照すると、センサ保持具10のフック部40が係止される係止部27は、面体2に沿う後方周壁部22の上側部分の内側面22aから後方に突出していることから、防護マスク1の側面視において前方へ僅かに傾斜した態様を有している。したがって、係止部27にフック部40を係止した状態において、センサ保持具10は、アイピース21の位置する前方へ向かって傾斜してそれに倒伏したような状態となる。
【0025】
このように、センサ保持具10が防護マスク1内に吊持された状態であってアイピース21に倒伏していることから、着用者の頭部が前後、左右に移動しても防護マスク1内で揺動して着用者の視界を遮ったり、目障りになるおそれはない。また、係止部27は柔軟弾性材料から形成された後方周壁部22の一部であることから、例えば、着用者が頭部を前後、左右に大きく振ってセンサ保持具10がアイピース21の内面から離間しても、係止部27がその動きを吸収して、係止部27からフック部40が外れるのを抑制することができる。
【0026】
以上のとおり、センサ保持具10は、細棒状部材のばね性を利用してセンサ30を簡易に取り付けることができるので、容易に着脱することができる。また、センサ保持具10を1本の線材を折り曲げて形成した場合には、簡易かつ安価に製造することができる。また、センサ保持具10は、軽量であるから、小型のセンサ30を保持して吊持された状態において、自重によって落下するおそれはない。さらに、防護マスク1の球面状又は凸曲面状を有するアイピース21の内面に貼付されるものではないから、その内面側において吊持された状態を維持し、センサ30を安定して保持することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 防護マスク
10 センサ保持具
21 アイピース
22 後方周壁部
22a 内側面
27 係止部
30 センサ
33,34 下側角部
40 フック部
50 第1ばね部
52 支持部
60 第2ばね部
62 支持部
X 幅方向
Y 上下方向
Z 前後方向
図1
図2
図3
図4
図5