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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20220412BHJP
   H04B 7/155 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H04B7/08 802
H04B7/08 480
H04B7/155
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018065226
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176414
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 茂
(72)【発明者】
【氏名】谷島 正信
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-131164(JP,A)
【文献】特開2005-233723(JP,A)
【文献】特開2000-92545(JP,A)
【文献】特開平10-145342(JP,A)
【文献】特開2013-162230(JP,A)
【文献】特開2004-235845(JP,A)
【文献】特開平11-326478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0177000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04B 7/155
H04B 7/185
Cinii
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナが互いに間隔を開けて配置されたフェーズドアレイアンテナと、
前記複数の前記アンテナのそれぞれ毎に受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相を移相する移相部と、
前記移相部により移相された前記アナログ信号それぞれの位相に基づくビーム内から到来する電波を対象電波として復調する第1復調部と、
前記複数の前記アンテナのそれぞれにより受信された前記受信電波それぞれについて、前記受信電波に応じた前記アナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部により変換された前記複数の前記デジタル信号を示すデジタル情報を受信時刻同期が可能な態様で記憶される記憶部と、
前記第1復調部が前記対象電波の復調に失敗した場合、前記記憶部に記憶されている前記デジタル情報に基づいて前記対象電波を復調する第2復調部と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記複数の前記アナログ信号のそれぞれを前記変換部に出力するとともに前記移相部に出力する分岐部を備え、
前記変換部は、前記分岐部から取得した前記複数の前記アナログ信号のそれぞれを前記デジタル信号に変換し、
前記移相部は、前記分岐部から取得した前記複数の前記アナログ信号それぞれの位相を移相する、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記フェーズドアレイアンテナが備える前記複数の前記アンテナはそれぞれ、第1グループと第2グループとのいずれか一方又は両方に属しており、
前記第1復調部は、前記移相部により移相された前記複数の前記受信電波のうち前記第1グループに属する前記アンテナにより受信された前記受信電波それぞれに応じた前記アナログ信号の位相に基づくビームである第1ビーム内から到来する電波を前記対象電波として復調し、
前記移相部により移相された前記複数の前記受信電波のうち前記第2グループに属する前記アンテナにより受信された前記受信電波それぞれに応じた前記アナログ信号の位相に基づくビームである第2ビーム内から到来した電波を誤差電波として復調し、復調した前記誤差電波の強度と前記第2ビームの方向とのそれぞれを示す誤差情報を生成し、生成した前記誤差情報を前記移相部に出力する誤差情報生成部を備え、
前記移相部は、前記誤差情報生成部から取得した前記誤差情報に基づいて、前記第1グループに属する前記アンテナのそれぞれ毎に受信された前記受信電波それぞれに応じた前記アナログ信号の位相を移相する、
請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記第2復調部は、前記誤差情報生成部を更に備える、
請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記第1復調部が前記対象電波の復調に失敗した場合において、
前記第2復調部は、形成したビームの方向を示すビーム方向情報を前記移相部に出力し、
前記移相部は、前記第2復調部から取得した前記ビーム方向情報が示す方向のビームを形成する位相へと前記受信電波の位相を移相する、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記移相部は、前記移相部により移相された前記アナログ信号それぞれの位相に基づくビームの形状と前記対象電波の復調の成否と当該ビームの方向の変化とが対応付けられた情報を含む情報が学習された機械学習のアルゴリズムに基づいて、前記複数の前記アンテナのそれぞれ毎に受信された前記受信電波それぞれに応じた前記アナログ信号の位相を移相する、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記第2復調部は、前記第2復調部により形成されたビームの形状と前記対象電波の復調の成否と当該ビームの方向の変化とが対応付けられた情報を含む情報が学習された機械学習のアルゴリズムと、前記記憶部に記憶されている前記デジタル情報とに基づいて1以上のビームを形成する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナによって電波を受信する受信装置に関する技術の研究や開発が行われている。
【0003】
これに関し、複数のアンテナが互いに間隔を開けて配置されたフェーズドアレイアンテナを備えた受信装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7787819号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェーズドアレイアンテナを備えた受信装置がビームを形成する方法としては、ABF(Analog Beam Forming)とDBF(Digital Beam Forming)との2つの方法が知られている。
【0006】
ABFでは、フェーズドアレイアンテナが備える複数のアンテナのそれぞれによって受信された電波それぞれに応じたアナログ信号に基づいてビームが形成される。ABFによってビームを形成する受信装置は、DBFによってビームを形成する場合と比較して、当該ビーム内から到来する電波を受信してから復調するまでの間の時間を短くすることができる場合がある。これは、DBFは、当該ビームの形成に応じた処理が必要であるためである。しかしながら、ADFの当該受信装置は、複数の人工衛星のそれぞれから送信された電波を同時刻に受信するためには、当該人工衛星の数と同じ数のフェーズドアレイアンテナを備える必要があることが知られている。また、当該受信装置は、例えば、電波を受信したい対象となる人工衛星の軌道の推定精度が低い等の理由によって当該人工衛星から送信された電波の受信に失敗した場合、受信に失敗した時間から受信可能となるまでの時間の間に取得されたはずの情報が失われるとともに、当該電波の復調を再開することが困難な場合があった。
【0007】
一方、DBFでは、フェーズドアレイアンテナが備える複数のアンテナのそれぞれによって受信された電波に応じたデジタル信号を示すデジタル情報として記憶し、記憶したデジタル情報に基づいてビームが形成される。DBFによってビームを形成する受信装置は、当該受信装置の上空を通過する複数の人工衛星のそれぞれから送信された電波を、1つのフェーズドアレイによって同時刻に受信することができる。このため、ABFとDBFとのそれぞれによってビームを形成可能な受信装置は、例えば、電波を受信したい対象となる人工衛星の軌道の推定精度が低い等の理由によって当該人工衛星から送信された電波の受信に失敗した場合であっても、記憶したデジタル情報に基づいて、当該電波を受信可能なビームを形成し直すことができ、その結果、当該電波の情報を欠損することなく、当該電波の復調を容易に再開することができる。しかしながら、DBFによってビームを形成する受信装置は、ABFによってビームを形成する場合と比較して、形成したビーム内から到来する電波を受信してから復調するまでの間の時間が長くなってしまう。その結果、受信装置は、ユーザーが所望するタイミングに、ユーザーが所望する情報を提供することができない場合があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、ビーム内から到来する電波を受信してから復調するまでの間の時間を短くすることができるとともに、当該電波の復調に失敗した場合であっても当該電波の情報を欠損することなく復調を再開することができる受信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、複数のアンテナが互いに間隔を開けて配置されたフェーズドアレイアンテナと、前記複数の前記アンテナのそれぞれ毎に受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相を移相する移相部と、前記移相部により移相された前記アナログ信号それぞれの位相に基づくビーム内から到来する電波を対象電波として復調する第1復調部と、前記複数の前記アンテナのそれぞれにより受信された前記受信電波それぞれについて、前記受信電波に応じた前記アナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、前記変換部により変換された前記複数の前記デジタル信号を示すデジタル情報を受信時刻同期が可能な態様で記憶される記憶部と、前記第1復調部が前記対象電波の復調に失敗した場合、前記記憶部に記憶されている前記デジタル情報に基づいて前記対象電波を復調する第2復調部と、を備える受信装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ビーム内から到来する電波を受信してから復調するまでの間の時間を短くすることができるとともに、当該電波の復調に失敗した場合であっても当該電波の情報を欠損することなく復調を再開することができる受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】受信装置1の構成の一例を示す図である。
図2】受信制御装置20の機能構成の一例を示す図である。
図3】受信制御部21の機能構成の一例を示す図である。
図4】受信制御装置20がデジタル情報を記憶部214に記憶させる処理の流れの一例を示す図である。
図5】移相制御部215Aが移相器215Bに設定された移相量を変化させる処理の流れの一例を示す図である。
図6】移相器215Bがアナログ信号の移相量を変化させる処理の流れの一例を示す図である。
図7】受信制御装置20が対象電波を復調する処理の流れの一例を示す図である。
図8】誤差情報生成部216が誤差情報を生成する処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
<受信装置の概要>
まず、実施形態に係る受信装置1の概要について説明する。図1は、受信装置1の構成の一例を示す図である。
【0014】
受信装置1は、電波を送信する1つ以上の送信元から送信された電波を受信する。図1では、一例として、1つ以上の送信元が3つの人工衛星Sである場合について説明する。
【0015】
3つの人工衛星Sは、受信装置1に対して各種の情報に応じて変調された電波を送信する。図1に示した人工衛星S1、人工衛星S2、人工衛星S3は、当該3つの人工衛星Sの一例である。なお、人工衛星S1、人工衛星S2、人工衛星S3のうちの一部又は全部は、互いに異なる構成であってもよく、互いに同じ構成であってもよい。
【0016】
受信装置1は、フェーズドアレイアンテナ10と、受信制御装置20を備える。
【0017】
フェーズドアレイアンテナ10は、複数のアンテナ11を備える。図1に示した例では、フェーズドアレイアンテナ10は、N個のアンテナ11としてアンテナ11-1~アンテナ11-Nを備えている。ここで、Nは、2以上の整数である。
【0018】
また、フェーズドアレイアンテナ10では、N個のアンテナ11が互いに間隔を開けて予め決められた位置関係となるように配置されている。
【0019】
N個のアンテナ11のそれぞれは、フェーズドアレイアンテナ10に向かって到来する電波を受信する。すなわち、N個のアンテナ11のそれぞれは、フェーズドアレイアンテナ10のアンテナエレメントである。以下では、説明の便宜上、N個のアンテナ11それぞれが受信した電波を、受信電波と称して説明する。N個のアンテナ11のそれぞれは、受信電波を受信する毎に、受信した受信電波に応じたアナログ信号を受信制御装置20に出力する。
【0020】
受信制御装置20は、ABF(Analog Beam Forming)によってビームを形成し、形成したビーム内から到来する電波を対象電波として復調する。
【0021】
より具体的には、受信制御装置20は、フェーズドアレイアンテナ10が備える複数のアンテナ11のそれぞれについて、アンテナ11により受信された受信電波に応じたアナログ信号をアンテナ11から取得する。受信制御装置20は、取得したアナログ信号それぞれの位相を移相し、ビームを形成する。受信制御装置20は、形成したビーム内から到来する電波を、前述の対象電波として復調する。
【0022】
また、受信制御装置20は、DBF(Digital Beam Forming)によって同一時刻において1以上のビームを形成し、形成したビーム内から到来する電波を対象電波として復調する。
【0023】
より具体的には、受信制御装置20は、複数のアンテナ11のそれぞれ毎に受信された受信電波それぞれについて、受信電波に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換する。受信制御装置20は、変換したデジタル信号のそれぞれを示すデジタル情報を、受信時刻同期が可能な態様で記憶する。受信時刻同期が可能な態様とは、例えば、受信時刻が互いに同じである受信電波に応じたデジタル信号を示すデジタル情報同士を対応付けた態様である。受信制御装置20は、記憶したデジタル情報に基づいて、1以上のビームを仮想的に形成する。受信制御装置20は、形成した1以上のビームのうち対象電波が到来するビームを特定する。そして、受信制御装置20は、特定したビーム内から到来する電波を対象電波として復調する。
【0024】
また、受信制御装置20は、ABFによって形成したビームに基づく対象電波の復調に失敗した場合、記憶したデジタル情報に基づいて、1以上のビームを仮想的に形成する。受信制御装置20は、形成した1以上のビーム内から到来する電波を復調する。受信制御装置20は、復調した1以上の電波の中から対象電波を特定する。後述する第1復調部22によって当該電波の復調に失敗した場合であっても記憶したデジタル情報に基づいて当該電波の復調を再開することができる。
【0025】
以下では、受信制御装置20の機能構成と、受信制御装置20が行う各種の処理とのそれぞれについて詳しく説明する。
【0026】
<受信制御装置の機能構成>
以下、図2及び図3を参照し、受信制御装置20の機能構成について説明する。
【0027】
図2は、受信制御装置20の機能構成の一例を示す図である。受信制御装置20は、受信制御部21と、第1復調部22と、第1情報処理装置23と、第2情報処理装置24を備える。また、第2情報処理装置24は、第2復調部241を備える。
【0028】
受信制御部21は、フェーズドアレイアンテナ10が備える複数のアンテナ11のそれぞれについて、アンテナ11により受信された受信電波に応じたアナログ信号をアンテナ11から取得する。また、受信制御部21は、取得したアナログ信号をデジタル信号に変換する。受信制御部21は、変換したデジタル信号それぞれを示すデジタル情報を、受信時刻同期が可能な態様で記憶する。また、受信制御部21は、取得したアナログ信号のそれぞれについて、アナログ信号の位相を移相する。この際、受信制御部21は、予め記憶された予報値情報が示す予報値に基づいて対象電波を送信している人工衛星Sの位置を特定し、特定した位置へのフェーズドアレイアンテナ10からの方向を到来方向として算出する。受信制御部21は、算出した到来方向にビームの方向が向かう位相、且つ、ビームの形状が所望の形状となる位相へと、取得したアナログ信号それぞれの位相を移相する。受信制御部21は、移相した複数のアナログ信号のそれぞれを第1復調部22に出力する。また、受信制御部21は、第2情報処理装置24が備える第2復調部241からの要求に応じて、記憶したデジタル情報を第2復調部241に出力する。
【0029】
ここで、図3を参照し、受信制御部21の機能構成について説明する。図3は、受信制御部21の機能構成の一例を示す図である。受信制御部21は、複数のアンテナ11のそれぞれ毎にアンテナ11と接続するハードウェア機能部として、低雑音増幅器211と、ダウンコンバーター212と、AD変換部213と、記憶部214を備える。図3では、図が煩雑になるのを防ぐため、1個のアンテナ11によってN個のアンテナ11を表している。このため、図3では、1個の低雑音増幅器211によってN個の低雑音増幅器211を表し、1個のダウンコンバーター212によってN個のダウンコンバーター212を表し、1個のAD変換部213によってN個のAD変換部213を表し、1個の記憶部214によってN個の記憶部214を表している。
【0030】
また、以下では、一例として、フェーズドアレイアンテナ10において、N個のアンテナ11が、第1グループに2以上の第1アンテナとして属する2以上のアンテナ11と、第1グループと異なる第2グループに2以上の第2アンテナとして属する2以上のアンテナ11とに分けられている場合について説明する。ここで、2以上の第1アンテナは、前述の対象電波を復調するために用いられる受信電波を受信するアンテナである。また、2以上の第2アンテナは、後述する誤差情報生成部216が誤差電波を復調するために用いられる受信電波を受信するアンテナである。なお、フェーズドアレイアンテナ10において、第2グループは、1つのみあってもよく、複数あってもよい。以下では、一例として、フェーズドアレイアンテナ10において、N個のアンテナ11が、第1グループと、第21グループ、第22グループ、第23グループ、第24グループの4つの第2グループとに分けられている場合について説明する。この場合、第21グループには、2以上のアンテナ11が、2以上の第21アンテナとして属している。また、当該場合、第22グループには、2以上のアンテナ11が、2以上の第22アンテナとして属している。また、当該場合、第23グループには、2以上のアンテナ11が、2以上の第23アンテナとして属している。また、当該場合、第24グループには、2以上のアンテナ11が、2以上の第24アンテナとして属している。ここで、以下では、説明の便宜上、第21グループ、第22グループ、第23グループ、第24グループのそれぞれを区別する必要がない限り、まとめて第2グループと称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、第1アンテナと第2アンテナとを区別する必要がない限り、まとめてアンテナ11と称して説明する。また、フェーズドアレイアンテナ10では、第1グループに属する2以上のアンテナ11のうちの一部又は全部が、第2グループに属するアンテナ11として振る舞うように構成されてもよい。すなわち、フェーズドアレイアンテナ10が備える複数のアンテナ11はそれぞれ、第1グループと第2グループとのいずれか一方又は両方に属する構成であってもよい。
【0031】
低雑音増幅器211は、低雑音増幅器211が接続されているアンテナ11から取得したアナログ信号を増幅する。低雑音増幅器211は、増幅したアナログ信号をダウンコンバーター212に出力する。
【0032】
ダウンコンバーター212は、ダウンコンバーター212が接続されている低雑音増幅器211が増幅したアナログ信号を当該低雑音増幅器211から取得する。ここで、ダウンコンバーター212は、周波数変換部212Aと、分岐部212Bを備える。
【0033】
周波数変換部212Aは、ダウンコンバーター212が低雑音増幅器211から取得したアナログ信号の周波数を予め決められた周波数に変換する。周波数変換部212Aは、周波数を変換したアナログ信号を分岐部212Bに出力する。
分岐部212Bは、周波数変換部212Aが周波数を変換したアナログ信号を周波数変換部212Aから取得する。分岐部212Bは、取得したアナログ信号をAD変換部213に出力するとともに移相部215に出力する。
【0034】
AD変換部213は、AD変換部213が接続されているダウンコンバーター212の分岐部212Bからアナログ信号を取得する。AD変換部213は、取得したアナログ信号をデジタル信号に変換する。AD変換部213は、変換したデジタル信号を、当該デジタル信号を示すデジタル情報として記憶部214に出力し、記憶部214に記憶させる。
【0035】
記憶部214は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリー等を含む。記憶部214は、記憶部214が接続されたAD変換部213から出力されたデジタル情報を格納する。
【0036】
移相部215は、移相制御部215Aを備える。また、移相部215は、複数の分岐部212Bのそれぞれ毎に分岐部212Bと接続するハードウェア機能部として、移相器215Bを備える。図3では、図が煩雑になるのを防ぐため、1個の移相器215BによってN個の移相器215Bを表している。
【0037】
移相制御部215Aは、N個の移相器215Bのそれぞれについて、移相器215Bが分岐部212Bから取得したアナログ信号の位相を移相する移相量を制御する。具体的には、移相制御部215Aは、図示しない記憶部に予め記憶された予報値情報が示す予報値に基づいて対象電波を送信している人工衛星Sの位置を特定し、特定した位置へのフェーズドアレイアンテナ10からの方向を前述の到来方向として算出する。また、移相制御部215Aは、後述する誤差情報生成部216から誤差情報を取得する。移相制御部215Aは、算出した到来方向を、誤差情報に基づいて補正する。移相制御部215Aが誤差情報に基づいて当該到来方向を補正する処理についての詳細は、後述する。
【0038】
移相制御部215Aは、所望の第1位相へと、第1移相器が取得したアナログ信号の位相が移相されるように第1移相器を制御する。第1位相は、補正された到来方向にビームの方向が向かう位相であり、且つ、ビームの形状が所望の形状となる位相である。第1移相器は、2以上の第1アンテナのそれぞれに接続された移相器215Bのことである。以下では、説明の便宜上、当該到来方向に向いているビームを第1ビームと称して説明する。
【0039】
また、移相制御部215Aは、所望の第21位相へと、第21移相器が取得したアナログ信号の位相が移相されるように第21移相器を制御する。第21位相は、算出された到来方向からアジマス方向の正方向に予め決められた角度である角度θずれた方向にビームの方向が向かう位相であり、且つ、ビームの形状が所望の形状となる位相である。第21移相器は、2以上の第21アンテナのそれぞれに接続された移相器215Bのことである。
【0040】
また、移相制御部215Aは、所望の第22位相へと、第22移相器が取得したアナログ信号の位相が移相されるように第22移相器を制御する。第22位相は、算出された到来方向からアジマス方向の負方向に角度θずれた方向にビームの方向が向かう位相であり、且つ、ビームの形状が所望の形状となる位相である。第22移相器は、2以上の第22アンテナのそれぞれに接続された移相器215Bのことである。
【0041】
また、移相制御部215Aは、所望の第23位相へと、第23移相器が取得したアナログ信号の位相が移相されるように第23移相器を制御する。第23位相は、算出された到来方向からエレベーション方向の正方向に角度θずれた方向にビームの方向が向かう位相であり、且つ、ビームの形状が所望の形状となる位相である。第23移相器は、2以上の第23アンテナのそれぞれに接続された移相器215Bのことである。
【0042】
また、移相制御部215Aは、所望の第24位相へと、第24移相器が取得したアナログ信号の位相が移相されるように第24移相器を制御する。第24位相は、算出された到来方向からエレベーション方向の負方向に角度θずれた方向にビームの方向が向かう位相であり、且つ、ビームの形状が所望の形状となる位相である。第24移相器は、2以上の第24アンテナのそれぞれに接続された移相器215Bのことである。
【0043】
移相器215Bは、移相器215Bが接続された分岐部212Bからアナログ信号を取得する。移相器215Bは、取得したアナログ信号の位相を、移相制御部215Aにより指定された位相量移相する。そして、移相器215Bは、移相したアナログ信号を第1復調部22に出力するとともに、当該アナログ信号を誤差情報生成部216に出力する。
【0044】
誤差情報生成部216は、2以上の第21移相器からアナログ信号を、当該2以上の第21アナログ信号として取得する。また、誤差情報生成部216は、2以上の第22移相器からアナログ信号を、当該2以上の第22アナログ信号として取得する。また、誤差情報生成部216は、2以上の第23移相器からアナログ信号を、当該2以上の第23アナログ信号として取得する。また、誤差情報生成部216は、2以上の第24移相器からアナログ信号を、当該2以上の第24アナログ信号として取得する。誤差情報生成部216は、取得した2以上の第21アナログ信号それぞれの位相に基づく第21ビーム内から到来する電波を、第21誤差電波として復調する。また、誤差情報生成部216は、取得した2以上の第22アナログ信号それぞれの位相に基づく第22ビーム内から到来する電波を、第22誤差電波として復調する。また、誤差情報生成部216は、取得した2以上の第23アナログ信号それぞれの位相に基づく第23ビーム内から到来する電波を、第23誤差電波として復調する。また、誤差情報生成部216は、取得した2以上の第24アナログ信号それぞれの位相に基づく第24ビーム内から到来する電波を、第24誤差電波として復調する。誤差情報生成部216は、復調した第21誤差電波、第22誤差電波、第23誤差電波、第24誤差電波それぞれの強度と、第21ビーム、第22ビーム、第23ビーム、第24ビームそれぞれの方向とのそれぞれを示す情報を前述の誤差情報として生成し、生成した誤差情報を移相制御部215Aに出力する。
【0045】
なお、移相制御部215Aが初めて各移相器215Bを制御する前のタイミングにおいて、誤差情報生成部216は、誤差がないことを示す誤差情報を移相制御部215Aに出力する構成であってもよく、当該誤差情報を出力しない構成であってもよい。当該タイミングにおいて当該誤差情報を出力しない場合、移相制御部215Aは、誤差がないと判定する。
また、受信制御部21は、誤差情報生成部216を備えない構成であってもよい。この場合、N個のアンテナ11は、すべて第1グループに属する第1アンテナである。
【0046】
第1復調部22は、2以上の第1移相器215Bからアナログ信号を、当該2以上の第1アナログ信号として取得する。第1復調部22は、取得した2以上の第1アナログ信号それぞれの位相に基づく第1ビーム、すなわち、当該2以上の第1アナログ信号を合波することによって形成される第1ビーム内から到来する電波を対象電波として復調する。第1復調部22は、復調した対象電波を示す対象電波情報を第1情報処理装置23に出力する。なお、第1アナログ信号の合波については、既知の方法によって行われてもよく、これから開発される方法によって行われてもよいため、これ以上の説明を省略する。また、第1アナログ信号を合波する機能は、第1復調部22と別体に構成されてもよい。
【0047】
第1情報処理装置23は、CPU(Central Processing Unit)等の図示しないプロセッサーを備え、当該プロセッサーが各種のプログラムを実行することにより、各種の機能部を実現する。
【0048】
第1情報処理装置23は、第1復調部22から対象電波情報を取得する。また、第1情報処理装置23は、ユーザーから操作を受け付ける。第1情報処理装置23は、ユーザーから受け付けた操作に応じて、取得した対象電波情報に基づく処理を行う。例えば、当該処理は、当該対象電波情報を記憶する処理等である。
【0049】
第2情報処理装置24は、第2復調部241を備える。
【0050】
第2情報処理装置24は、CPU等の図示しないプロセッサーを備え、当該プロセッサーが各種のプログラムを実行することにより、第2復調部241等の各種の機能部を実現する。
【0051】
第2復調部241は、第2情報処理装置24がユーザーから受け付けた操作に応じて、記憶部214に記憶されたデジタル情報を記憶部214から読み出す。第2復調部241は、読み出したデジタル情報に基づいて、1以上のビームを仮想的に形成する。第2復調部241は、復調した1以上の電波の中から対象電波を特定する。なお、第2復調部241は、前述の誤差情報生成部216を更に備える構成であってもよい。
【0052】
<受信制御装置がデジタル情報を記憶部に記憶させる処理>
以下、図4を参照し、受信制御装置20がデジタル情報を記憶部214に記憶させる処理について説明する。図4は、受信制御装置20がデジタル情報を記憶部214に記憶させる処理の流れの一例を示す図である。ここで、N個のアンテナ11のうちのあるアンテナ11に接続された周波数変換部212A、分岐部212B、AD変換部213、記憶部214の組み合わせは、他のアンテナ11に接続された周波数変換部212A、分岐部212B、AD変換部213、記憶部214の組み合わせと同様の処理を行う。このため、以下では、1つのアンテナ11である対象アンテナに接続された周波数変換部212A、分岐部212B、AD変換部213、記憶部214のそれぞれを対象周波数変換部、対象分岐部、対象AD変換部、対象記憶部と称し、対象周波数変換部、対象分岐部、対象AD変換部、対象記憶部が行う処理を例に挙げて、受信制御装置20がデジタル情報を記憶部214に記憶させる処理について説明する。すなわち、図4に示したフローチャートの処理は、対象周波数変換部、対象分岐部、対象AD変換部、対象記憶部のそれぞれが行う処理である。対象周波数変換部、対象分岐部、対象AD変換部、対象記憶部は、対象アンテナが受信電波を受信する毎に、図4に示したフローチャートのステップS110~ステップS160の処理を繰り返し行う。
【0053】
対象低雑音増幅器は、対象アンテナが受信した受信電波に応じたアナログ信号を取得する(ステップS110)。
【0054】
次に、対象低雑音増幅器は、取得したアナログ信号を増幅する(ステップS120)。そして、対象低雑音増幅器は、増幅したアナログ信号を、対象周波数変換部に出力する。
【0055】
次に、対象周波数変換部は、増幅されたアナログ信号を取得する。対象周波数変換部は、取得したアナログ信号の周波数を予め決められた周波数に変換する(ステップS130)。そして、対象周波数変換部は、周波数を変換されたアナログ信号を対象分岐部に出力する。
【0056】
次に、対象分岐部は、取得したアナログ信号を対象分岐部に接続された移相器215Bに出力するとともに、当該アナログ信号を対象AD変換部に出力する(ステップS140)。ステップS140において対象分岐部から出力されたアナログ信号を取得した当該移相器215Bが行う処理については、図6に示したフローチャートにおいて説明する。
【0057】
次に、対象AD変換部は、取得したアナログ信号をデジタル信号に変換する(ステップS150)。
【0058】
次に、対象AD変換部は、変換したデジタル信号を示すデジタル情報を生成し、生成したデジタル情報を対象記憶部に記憶させ(ステップS160)、処理を終了する。
【0059】
ここで、複数のアンテナ11のそれぞれに接続された周波数変換部212A、分岐部212B、AD変換部213、記憶部214のそれぞれは、ステップS110~ステップS160の処理を行う。すなわち、受信制御部21は、フェーズドアレイアンテナ10が備えるN個のアンテナ11のそれぞれが受信電波を受信する毎に、ステップS110~ステップS160の処理を繰り返し行う。これにより、受信制御部21は、フェーズドアレイアンテナ10が備えるN個のアンテナ11のそれぞれが受信電波に応じたデジタル信号を示すデジタル情報を記憶部214に記憶させることができる。
【0060】
<移相制御部が移相器に設定された移相量を変化させる処理>
以下、図5を参照し、移相制御部215Aが移相器215Bに設定された移相量を変化させる処理について説明する。図5は、移相制御部215Aが移相器215Bに設定された移相量を変化させる処理の流れの一例を示す図である。移相制御部215Aは、移相器215Bがアナログ信号を分岐部212Bから取得する前のタイミングにおいて、図5に示したフローチャートのステップS210~ステップS230の処理を行い、各移相器215Bに設定された移相量を変化させる。また、移相制御部215Aは、予め決められた周期が経過する毎に、ステップS210~ステップS230の処理を繰り返し行う。
【0061】
移相制御部215Aは、図示しない記憶部に予め記憶された予報値情報を当該記憶部から読み出す。また、移相制御部215Aは、誤差情報生成部216から誤差情報を取得する(ステップS210)。
【0062】
次に、移相制御部215Aは、読み出した予報値情報が示す予報値に基づいて、対象電波を送信している人工衛星Sの位置を特定し、特定した位置へのフェーズドアレイアンテナ10からの方向を到来方向として算出する(ステップS220)。
【0063】
次に、移相制御部215Aは、算出した到来方向に基づいて、各移相器215Bに設定された移相量を変化させ(ステップS230)、処理を終了する。
【0064】
ここで、ステップS230の処理について説明する。移相制御部215Aは、ステップS230において算出した到来方向を、ステップS210において取得した誤差情報に基づいて補正する。例えば、移相制御部215Aは、誤差情報が示す第21誤差電波、第22誤差電波、第23誤差電波、第24誤差電波それぞれの強度と、第21ビーム、第22ビーム、第23ビーム、第24ビームそれぞれの方向とのそれぞれを特定する。移相制御部215Aは、特定した第21誤差電波、第22誤差電波、第23誤差電波、第24誤差電波それぞれの強度の平均値を平均強度として算出する。そして、移相制御部215Aは、算出した平均強度と、特定した第21ビーム、第22ビーム、第23ビーム、第24ビームそれぞれの方向とに基づいて、平均強度の電波が到来していると推定される方向を算出する。移相制御部215Aは、算出した方向と、算出した到来方向との間の差分が予め決められた許容値未満であると判定した場合、当該到来方向の補正を行わない。一方、移相制御部215Aは、当該差分が当該許容値以上であると判定した場合、当該到来方向を補正し、当該方向と当該到来方向との間の方向を新たな到来方向として算出する。移相制御部215Aは、前述の第1位相へと、2以上の第1移相器が取得したアナログ信号それぞれの位相が移相されるように当該2以上の第1移相器に設定された移相量を変化させる。また、移相制御部215Aは、補正した到来方向に基づいて、第21ビーム、第22ビーム、第23ビーム、第24ビームそれぞれの方向を算出する。移相制御部215Aは、第21位相へと、2以上の第21移相器が取得したアナログ信号それぞれの位相が移相されるように当該2以上の第21移相器に設定された移相量を変化させる。また、移相制御部215Aは、第22位相へと、2以上の第22移相器が取得したアナログ信号それぞれの位相が移相されるように当該2以上の第22移相器に設定された移相量を変化させる。また、移相制御部215Aは、第23位相へと、2以上の第23移相器が取得したアナログ信号それぞれの位相が移相されるように当該2以上の第23移相器に設定された移相量を変化させる。また、移相制御部215Aは、第24位相へと、2以上の第24移相器が取得したアナログ信号それぞれの位相が移相されるように当該2以上の第24移相器に設定された移相量を変化させる。
【0065】
以上のように、移相制御部215Aは、ステップS210において読み出した予報値情報と、ステップS210において取得した誤差情報とに基づいて、N個の移相器215Bそれぞれに設定された移相量を変化させる。これにより、受信装置1は、第1ビームを、受信制御装置20により復調される対象電波の強度が強くなる方向に形成することができる。すなわち、受信装置1は、到来する対象電波の時間的な位置変化に追随することができる。
【0066】
<移相器がアナログ信号の移相量を変化させる処理>
以下、図6を参照し、移相器215Bがアナログ信号の移相量を変化させる処理について説明する。図6は、移相器215Bがアナログ信号の移相量を変化させる処理の流れの一例を示す図である。各移相器215Bは、各分岐部212Bからアナログ信号が出力される毎に、ステップS250~ステップS260の処理を繰り返し行う。また、N個の移相器215Bは、それぞれ同様の処理を行うため、以下では、1つの移相器215Bが行う処理を例に挙げて、アンテナ11-1に接続された移相器215Bである移相器215B-1がアナログ信号の移相量を変化させる処理について説明する。
【0067】
移相器215B-1は、移相器215B-1が接続された分岐部212Bからアナログ信号を取得する(ステップS250)。ここで、移相器215B-1が当該分岐部212Bから取得するアナログ信号は、図4に示したフローチャートのステップS140において当該分岐部212Bから移相器215B-1に出力されたアナログ信号のことである。
【0068】
次に、移相器215B-1は、移相器215B-1に設定されている移相量に基づいて、ステップS250において取得したアナログ信号の位相を移相する(ステップS260)。ここで、当該移相量は、図5に示したフローチャートのステップS230において移相制御部215Aにより変化させられた(すなわち、設定された)移相量のことである。当該位相を移相した後、移相器215B-1が第1アンテナである場合、移相器215B-1は、移相したアナログ信号を第1復調部22に出力し、処理を終了する。一方、当該位相を移相した後、移相器215B-1が第2アンテナである場合、移相器215B-1は、移相したアナログ信号を誤差情報生成部216に出力し、処理を終了する。
【0069】
<受信制御装置がアナログ信号の移相量を変化させる処理>
以下、図7を参照し、受信制御装置20が対象電波を復調する処理について説明する。図7は、受信制御装置20が対象電波を復調する処理の流れの一例を示す図である。受信制御装置20は、2以上の第1移相器からアナログ信号が出力される毎に、ステップS310~ステップS340の処理を繰り返し行う。
【0070】
第1復調部22は、2以上の第1移相器からアナログ信号を、当該2以上の第1アナログ信号として取得する。第1復調部22は、取得した2以上の第1アナログ信号それぞれの位相に基づく第1ビーム内から到来する電波を対象電波として復調する(ステップS310)。第1復調部22が行うステップS310の処理は、既知の方法に基づく処理であってもよく、これから開発される方法に基づく処理であってもよい。
【0071】
次に、第1復調部22は、ステップS310において対象電波の復調に失敗したか否かを判定する(ステップS320)。ここで、第1復調部22は、例えば、ステップS310において復調した対象電波の強度が前述の予め決められた閾値未満である場合、当該対象電波の復調に失敗したと判定する。一方、第1復調部22は、当該対象電波の強度が前述の予め決められた閾値以上である場合、当該対象電波の復調に成功したと判定する。当該対象電波の復調に成功したと判定した場合(ステップS320-NO)、第1復調部22は、当該対象電波を示す対象電波情報を生成し、生成した対象電波情報を第1情報処理装置23に出力する。第1情報処理装置23は、対象電波情報を取得し、取得した対象電波情報に基づく処理を行う。当該処理は、例えば、当該対象電波情報を他の装置に出力する処理、当該対象電波情報を記憶する処理等のことである。そして、第1復調部22は、処理を終了する。一方、当該対象電波の復調に失敗したと判定した場合(ステップS320-YES)、第1復調部22は、当該対象電波の復調の失敗を示す情報を第2情報処理装置24に出力する。第2情報処理装置24が当該情報を取得した場合、第2情報処理装置24が備える第2復調部241は、記憶部214に記憶されたデジタル情報のうち、例えば、復調失敗後の最新の時刻に対応付けられたデジタル情報を記憶部214から読み出す(ステップS330)。
【0072】
次に、第2復調部241は、読み出したデジタル情報のそれぞれが示すデジタル信号の位相に基づいて、形成した1以上のビーム内から到来する電波を復調する。第2復調部241は、復調した1以上の電波の中から対象電波を特定する(ステップS340)。そして、第2復調部241は、特定した対象電波を示す対象電波情報を生成し、生成した対象電波情報に基づく処理を行う。当該処理は、例えば、当該対象電波情報を他の装置に出力する処理、当該対象電波情報を記憶する処理等のことである。また、第2復調部241は、ステップS340において特定した対象電波の到来方向を含むビームの方向を示すビーム方向情報を移相制御部215Aに出力する。そして、第2復調部241は、処理を終了する。なお、移相制御部215Aは、ビーム方向情報を取得した場合、図5に示したフローチャートのステップS220の処理において、対象電波の復調に成功している時のビーム方向情報に基づいて、ステップS220において算出した到来方向を補正する。例えば、移相制御部215Aは、当該到来方向を、ビーム方向情報が示す方向に置き換える。これにより、受信制御装置20は、第1復調部22による対象電波の復調に失敗した場合であっても対象電波の第1復調部22による復調を再開することができる。なお、例えば、DBFによって人工衛星Sの追尾を続ける場合、第2情報処理装置24が、誤差情報生成部216が行う処理と同様の処理を行う構成であってもよい。
【0073】
<誤差情報生成部が誤差情報を生成する処理>
以下、図8を参照し、誤差情報生成部216が誤差情報を生成する処理について説明する。図8は、誤差情報生成部216が誤差情報を生成する処理の流れの一例を示す図である。誤差情報生成部216は、2以上の第21移相器、2以上の第22移相器、2以上の第23移相器、2以上の第24移相器のそれぞれからアナログ信号が出力される毎に、図8に示したフローチャートのステップS410~ステップS430の処理を繰り返し行う。
【0074】
誤差情報生成部216は、第2アンテナに接続された各移相器215Bからアナログ信号を取得する(ステップS410)。具体的には、誤差情報生成部216は、2以上の第21移相器から2以上の第21アナログ信号を取得する。また、誤差情報生成部216は、2以上の第22移相器から2以上の第22アナログ信号を取得する。また、誤差情報生成部216は、2以上の第23移相器から2以上の第23アナログ信号を取得する。また、誤差情報生成部216は、2以上の第24移相器から2以上の第24アナログ信号を取得する。
【0075】
次に、誤差情報生成部216は、取得した2以上の第21アナログ信号、2以上の第22アナログ信号、2以上の第23アナログ信号、2以上の第24アナログ信号のそれぞれに基づいて、前述した第21誤差電波~第24誤差電波のそれぞれを復調する(ステップS420)。
【0076】
次に、誤差情報生成部216は、復調した第21誤差電波、第22誤差電波、第23誤差電波、第24誤差電波それぞれの強度と、前述した第21ビーム、第22ビーム、第23ビーム、第24ビームそれぞれの方向とのそれぞれを示す情報を誤差情報として生成し、生成した誤差情報を移相制御部215Aに出力する(ステップS430)。そして、誤差情報生成部216は、処理を終了する。
【0077】
以上のように、誤差情報生成部216は、誤差情報を生成する。これにより、受信制御装置20は、第1ビームを、受信制御装置20により復調される対象電波の強度が強くなる方向に形成することができる。
【0078】
なお、上記において説明した移相制御部215Aは、移相器215Bにより移相されたアナログ信号それぞれの位相に基づくビームの形状と対象電波の復調の成否と当該ビームの方向の変化とが対応付けられた情報を含む情報が学習された機械学習のアルゴリズムに基づいて、複数のアンテナ11のそれぞれ毎に受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相を移相する構成であってもよい。ここで、当該アルゴリズムは、例えば、深層学習のアルゴリズムであってもよく、機械学習における他のアルゴリズムであってもよい。これにより、受信装置1は、第1復調部による対象電波の復調を、より確実に精度よく行うことができる。
【0079】
また、上記において説明した第2復調部241は、第2復調部241により形成されたビームの形状と対象電波の復調の成否と当該ビームの方向の変化とが対応付けられた情報を含む情報が学習された機械学習のアルゴリズムと、記憶部214に記憶されているデジタル情報とに基づいて1以上のビームを形成する。ここで、当該アルゴリズムは、例えば、深層学習のアルゴリズムであってもよく、機械学習における他のアルゴリズムであってもよい。これにより、受信装置1は、第2復調部241による対象電波の復調を、より確実に精度よく行うことができる。
【0080】
また、上記において説明した第2情報処理装置24は、ユーザーから受け付けた操作に基づいて、当該操作に応じた時刻に受信された受信電波に応じたデジタル信号を示すデジタル情報を記憶部214から第2復調部241に読み出させる構成であってもよい。この場合、第2復調部241は、読み出したデジタル情報に基づいて、ステップS330及びステップS340の処理を行う。これにより、ユーザーは、受信制御装置20を操作することによって、所望の時刻にフェーズドアレイアンテナ10によって受信された対象電波を、ユーザーが所望するタイミングにおいて受信制御装置20に復調させることができる。また、これにより、受信制御装置20は、フェーズドアレイアンテナ10によって複数の人工衛星Sのそれぞれから同時刻に受信された対象電波のそれぞれを復調することができる。これは、例えば、受信制御装置20が予め予報値情報を取得不可能な場合であっても、受信制御装置20によって対象電波の復調を行うことが可能であることを示している。また、受信制御装置20は、所望の時刻にフェーズドアレイアンテナ10によって受信された対象電波を、ユーザーが所望するタイミングにおいて受信制御装置20に復調させることができるため、複数の人工衛星Sの運用を1つのフェーズドアレイアンテナ10を用いて行うことができる。すなわち、受信制御装置20は、同一時間帯において複数の人工衛星Sが編隊を組むことによって観測が行われるコンステレーションにも好適に適用することも可能である。また、受信制御装置20は、高緯度の地球局における人工衛星Sから送信された対象電波の高頻度な受信にも好適に適用することができる。また、受信制御装置20は、ある時刻において受信装置1に対象電波を送信する人工衛星Sが1つのみの場合、第1復調部22により対象電波を復調することにより、デジタル情報を使う場合と比較して、対象電波の受信から復調までの間の時間を短縮することができる。また、受信装置1は、所望の時刻にフェーズドアレイアンテナ10によって受信された対象電波を、ユーザーが所望するタイミングにおいて受信制御装置20に復調させることができるため、例えば、パラボラアンテナのようなアンテナにおいて発生する機械的駆動に伴う追尾の特異点が存在せず、対象電波の初期捕捉方向、すなわち、人工衛星Sの初期捕捉方向へ当該アンテナを向ける時間を確保する必要がない。以上のことから、受信装置1は、人工衛星運用における運用コストの低減、限られたリソースでの運用能力の向上等を図ることができるとともに、仰角に応じてのビームの形状を最適化して、人工衛星Sの確実な捕捉、受信利得の安定化等を図ることができる。
【0081】
また、上記において説明した第1ビーム、第21ビーム、第22ビーム、第23ビーム、第24ビームのうちの一部又は全部の形状は、複数の人工衛星Sのそれぞれ毎に変化させてもよい。この場合、受信制御装置20は、ユーザーから受け付けた形状を移相制御部215Aに設定する。
【0082】
また、上記において説明したAD変換部213と記憶部214との少なくとも一方は、第2情報処理装置24に備えられる構成であってもよい。
【0083】
なお、上記において説明したAD変換部213は、変換部の一例である。
【0084】
以上のように、受信装置1は、複数のアンテナ(この一例において、アンテナ11)が互いに間隔を開けて配置されたフェーズドアレイアンテナ(この一例において、フェーズドアレイアンテナ10)と、複数のアンテナのそれぞれ毎に受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相を移相する移相部(この一例において、移相部215)と、移相部により移相されたアナログ信号それぞれの位相に基づくビーム内から到来する電波を対象電波として復調する第1復調部(この一例において、第1復調部22)と、複数のアンテナのそれぞれにより受信された受信電波それぞれについて、受信電波に応じたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部(この一例において、AD変換部213)と、変換部により変換された複数のデジタル信号を示すデジタル情報を受信時刻同期が可能な態様で記憶される記憶部(この一例において、記憶部214)と、第1復調部が対象電波の復調に失敗した場合、記憶部に記憶されているデジタル情報に基づいて対象電波を復調する第2復調部(この一例において、第2復調部241)と、を備える。これにより、受信装置1は、ビーム内から到来する電波を受信してから復調するまでの間の時間を短くすることができるとともに、当該電波の復調に失敗した場合であっても、当該電波の情報を欠損することなく、当該電波の復調を再開することができる。
【0085】
また、受信装置1は、複数のアナログ信号のそれぞれを変換部に出力するとともに移相部に出力する分岐部(この一例において、分岐部212B)を備える。また、受信装置1では、変換部は、分岐部から取得した複数のアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換し、移相部は、分岐部から取得した複数のアナログ信号それぞれの位相を移相する。これにより、受信装置1は、ABFによる対象電波の復調と、DBFによる対象電波の復調とを効率よく行うことができる。
【0086】
また、受信装置1において、フェーズドアレイアンテナが備える複数のアンテナはそれぞれ、第1グループと第2グループとのいずれか一方又は両方に属しており、第1復調部は、移相部により移相された複数の受信電波のうち第1グループに属するアンテナ(この一例において、第1アンテナ)により受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相に基づくビームである第1ビーム内から到来する電波を対象電波として復調し、移相部により移相された複数の受信電波のうち第2グループに属するアンテナ(この一例において、第21アンテナ~第24アンテナ)により受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相に基づくビームである第2ビーム(この一例において、第21ビーム~第24ビーム)内から到来した電波を誤差電波(この一例において、第21誤差電波~第24誤差電波のそれぞれ)として復調し、復調した誤差電波の強度と第2ビームの方向とのそれぞれを示す誤差情報を生成し、生成した誤差情報を移相部に出力する誤差情報生成部(この一例において、誤差情報生成部216)を備え、移相部は、誤差情報生成部から取得した誤差情報に基づいて、第1グループに属するアンテナのそれぞれ毎に受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相を移相する。これにより、受信装置1は、復調される対象電波の強度が強くなる方向に第1ビームを形成することができる。
【0087】
また、受信装置1では、第2復調部は、誤差情報生成部を更に備える。これにより、受信装置1は、DBFによって復調される対象電波の強度を保持することができる。
【0088】
また、受信装置1では、第1復調部が対象電波の復調に失敗した場合において、第2復調部は、形成したビームの方向を示すビーム方向情報を移相部に出力し、移相部は、第2復調部から取得したビーム方向情報が示す方向のビームを形成する位相へと受信電波の位相を移相する。これにより、受信装置1は、第1復調部22が対象電波の復調に失敗した場合においても、第1復調部による対象電波の復調を容易に再開することができる。
【0089】
また、受信装置1では、移相部は、移相部により移相されたアナログ信号それぞれの位相に基づくビームの形状と対象電波の復調の成否と当該ビームの方向の変化とが対応付けられた情報を含む情報が学習された機械学習のアルゴリズムに基づいて、複数のアンテナのそれぞれ毎に受信された受信電波それぞれに応じたアナログ信号の位相を移相する。これにより、受信装置1は、第1復調部による対象電波の復調を、より確実に精度よく行うことができる。
【0090】
また、受信装置1では、第2復調部は、第2復調部により形成されたビームの形状と対象電波の復調の成否と当該ビームの方向の変化とが対応付けられた情報を含む情報が学習された機械学習のアルゴリズムと、記憶部に記憶されているデジタル情報とに基づいて1以上のビームを形成する。これにより、受信装置1は、第2復調部による対象電波の復調を、より確実に精度よく行うことができる。
【0091】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0092】
また、以上に説明した装置(例えば、受信制御装置20)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0093】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…受信装置、10…フェーズドアレイアンテナ、11、11-1~11-N…アンテナ、20…受信制御装置、21…受信制御部、22…第1復調部、23…第1情報処理装置、24…第2情報処理装置、211…低雑音増幅器、212…ダウンコンバーター、212A…周波数変換部、212B…分岐部、213…変換部、214…記憶部、215…移相部、215A…移相制御部、215B、215B-1…移相器、216…誤差情報生成部、241…第2復調部、S、S1、S2、S3…人工衛星
図1
図2
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図5
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図7
図8