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<図1>
  • 特許-電線用カバー 図1
  • 特許-電線用カバー 図2
  • 特許-電線用カバー 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】電線用カバー
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20220412BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220412BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20220412BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
H01B17/58 F
H01B17/56 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018071440
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019186995
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000207311
【氏名又は名称】大東電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】三上 悟
(72)【発明者】
【氏名】友本 尭文
(72)【発明者】
【氏名】久和 孝大
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓也
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-020678(JP,A)
【文献】特開2011-250599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 1/02
H01B 17/58
H01B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに組み合わされることによって電線の外側を覆う筒状体となる一対の半筒体を備える電線用カバーであって、
前記半筒体の両端部には、前記電線用カバーの内外を連通する水抜き孔が形成されており、
前記水抜き孔よりも内側には、前記電線用カバーの内側から外側に向けて、前記電線用カバーの長手方向の中心軸から離間する方向に傾斜する内側テーパー部が形成されており、
前記水抜き孔は、前記筒状体の長手方向の中心軸を中心として放射状に複数設けられていることを特徴とする電線用カバー。
【請求項2】
前記水抜き孔は、外側に向けて高さ寸法が徐々に高くなる形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の電線用カバー。
【請求項3】
前記水抜き孔の内側端部には、前記中心軸から離間する方向に突設されたフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電線用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆から芯線を露出させた部分や一対の電線の端部同士を互いに接続した部分などにおける短絡を防止することを目的として使用する電線用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
架空配電線の工事において、作業者の安全を確保するために工事個所箇所周辺にバイパス経路を施す手法が広く採用されている。そして、必要な工事が完了した後、架空配電線の被覆から芯線を露出させた部分を補修することになる。
【0003】
架空配電線の芯線露出部分を補修する際、この露出部分からの短絡(ショート)を防止するために、絶縁性樹脂等で形成された電線用カバーを電線に被せる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。もちろん、このような電線用カバーは、架空配電線の端部同士を接続した部分にも使用される。
【0004】
また、架空配電線は長期間風雨にさらされることから、芯線とこれを覆う絶縁被覆との間に水分が結露し、当該水分が電線用カバー内に溜まってしまい、短絡の要因となるおそれがある。さらに、雨水が電線用カバー内に直接浸入して当該電線用カバー内に溜まることも考えられる。
【0005】
そこで、電線用カバー内に溜まった水分を排出するため、水抜き孔を設ける技術(例えば、特許文献2)や、水抜き用の凹溝を設ける技術(例えば、特許文献3)が提案されている。さらには、電線用カバーの両端部に粘着テープ等を巻き付けることによって外部からの雨水等が浸入しにくくする施策が一般に施されており、これとは別に、電線用カバー内に外部からの雨水等が浸入するのを防止する技術も提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-264917号公報
【文献】実開昭48-113000号公報
【文献】特開昭57-183211号公報
【文献】特開2011-250599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単に水抜き用の「孔」を設けるだけでは電線用カバー内に溜まった水分を排出することが十分に行われず、また、その水抜き孔を通って雨水が電線用カバー内に浸入してくるおそれもあった。さらに、粘着テープ等を巻き付ける等して外部からの雨水等の浸入を困難にさせると、逆に電線用カバー内に溜まった水分の排出も困難になってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線用カバー内の水分を効率よく排出することができるとともに、雨水等が電線用カバー内に浸入するおそれを低減できる電線用カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面によれば、
互いに組み合わされることによって電線の外側を覆う筒状体となる一対の半筒体を備える電線用カバーであって、
前記半筒体の両端部には、前記電線用カバーの内外を連通する水抜き孔が形成されており、
前記水抜き孔よりも内側には、前記電線用カバーの内側から外側に向けて、前記電線用カバーの長手方向の中心軸から離間する方向に傾斜する内側テーパー部が形成されており、
前記水抜き孔は、前記筒状体の長手方向の中心軸を中心として放射状に複数設けられていることを特徴とする電線用カバーを提供する。
【0010】
好適には、前記水抜き孔は、外側に向けて高さ寸法が徐々に高くなる形状となっている。
【0011】
好適には、前記水抜き孔の内側端部には、前記中心軸から離間する方向に突設されたフランジ部が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電線用カバー内の水分を効率よく排出することができるとともに、雨水等が電線用カバー内に浸入するおそれを低減することができ、短絡が生じる可能性をより低減できる電線用カバーを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用された電線用カバー10の開いた状態を示す斜視図である。
図2】本発明が適用された電線用カバー10の開いた状態における内側を示す正面図である。
図3】本発明が適用された半筒体12における電線挟持部22を中心とした拡大正面図である。なお、説明の便宜のため、一部の構造を省略して描いている。
図4】本発明が適用された半筒体12,14における電線挟持部22を中心とした拡大背面図である。
図5】水抜き孔100を中心とした拡大正面図である。
図6】本発明が適用された半筒体12,14を閉じた状態における、水抜き孔100を示す断面図である。
図7】電線用カバー10を取り付ける電線を示す図である。
図8】電線用カバー10を電線に掛けた状態を示す図である。
図9】電線用カバー10を電線に掛けた状態を示す図である。
図10】電線用カバー10を電線に取り付ける作業が完了した状態を示す図である。
図11】電線用カバー10内に電線を嵌め込んだ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(電線用カバー10の構成)
図1および図2は、本発明が適用された実施形態に係る電線用カバー10を示す。この電線用カバー10は、一対の半筒体12,14およびヒンジ16を備えており、これら半筒体12,14が互いに組み合わされることによって電線の外側を覆う筒状体となる。両半筒体12,14は互いに対向する縁部がヒンジ16によって接続され、一体的に形成されている。また、両半筒体12,14は、上記ヒンジ16を中心として基本的に互いに線対称に形成されている。そこで、以下では半筒体12の構成について詳細に説明し、半筒体14については基本的に半筒体12についての説明を援用して半筒体12と異なる部分についてのみ説明する。
【0016】
なお、本明細書全体を通して、電線の内部にある通電部材を芯線Sといい、当該芯線Sの外側を覆う絶縁部材を被覆Hといい、さらに、被覆Hによって覆われた芯線Sの全体を被覆電線Lあるいは単に電線という。
【0017】
半筒体12は、大略、本体部20と、この本体部20の両端部にそれぞれ形成された電線挟持部22と、本体部20におけるヒンジ16が形成された端部とは反対側の端部に設けられた係着部24とを有しており、これらが一体となって半筒体12を構成している。もちろん、本体部20や電線挟持部22等を別体として形成し、然る後、接着等の手段で組み合わせて半筒体12を構成してもよい。また、ヒンジ16は、必須の構成要素ではなく、一対の半筒体12,14を別体として形成し、これらを嵌め合わせ等の手段で組み合わせて筒状体を形成してもよい。
【0018】
本体部20は、長手方向に延びる半筒状の部材である。また、本体部20の内側外端部には、長手方向に延び、両半筒体12,14が組み合わされた際に電線が収容される内部空間を水密する庇部31が突設されている。
【0019】
半筒体12における本体部20の内面30には、一対の電線保持部32が形成されている。各電線保持部32は、本体部20の長手方向中心から等しい距離だけ離間した位置に配置されている。また、電線保持部32は、それぞれ一対の保持体34で構成されている。また、一対の保持体34には芯線Sの外周面に沿うように形成された円弧状の切欠き35が形成されている。さらに、一対の保持体34は、芯線Sの径寸法よりも狭く離間するように配設されている。なお、電線保持部32の態様はこれに限定されるものではなく、ひとつの保持体34でひとつの電線保持部32を形成してもよいし、一対の保持体34を芯線Sの径寸法よりもやや広く離間するように配置させて、これら一対の保持体34間に芯線Sが嵌まり込むようにしてもよい。
【0020】
また、半筒体14における本体部20の内面30には、一対の電線押さえ部42が形成されている。各電線押さえ部42は、半筒体12に形成された各電線保持部32と対応する位置に配置されている。つまり、後述するように、半筒体12および14を組み合わせて電線を挟み込んだとき、電線保持部32における円弧状の切欠き35と電線押さえ部42とで芯線Sを挟持できるようになっている。
【0021】
電線挟持部22は、上述のように本体部20の両端部に設けられており、図3および図4に示すように、本体部20に続いて電線用カバー10の長手方向中心に近い位置に形成された半円柱状部26と、それに続く位置に形成された半円錐台状部28と、半円柱状部26の外側を覆う外側覆部29とを有している。半円錐台状部28は、円錐台をその中心軸を含む面で半分に割ったような形状を有している。つまり、半円錐台状部28は、電線用カバー10の長手方向中心から離間するにつれてその径が小さくなるような内部形状を有している。
【0022】
なお、半円錐台状部28の先端部の径D1(図3を参照)は、電線用カバー10が取り付けられる被覆電線Lの径よりもやや小さく形成されている。また、半円錐台状部28には長手方向に延びる切欠き36が形成されており、半円錐台状部28はこの切欠き36で一部分離された複数の保持片38を有している。これにより、電線用カバー10を取り付ける被覆電線Lの径が予定よりも少し大きいものであっても、保持片38の先端がそれに応じて拡径することによって被覆電線Lの径に対応することができる。
【0023】
また、半円柱状部26の内面には、被覆電線Lの外面に当接することにより、当該被覆電線Lの表面を伝って外部から雨水や虫やゴミなどが電線用カバー10内に侵入するのを防止する短冊状の雨水浸入防止用舌片40が複数突設されている。
【0024】
外側覆部29は、上述のように半円柱状部26の外側を覆う部分である。当該外側覆部29の内面と半円柱状部26の外面とは互いに離間しており、この間が水抜き孔100となる。
【0025】
図5を用いて、本実施形態における半円柱状部26および外側覆部29の形状を詳述することにより、この水抜き孔100の構造を説明する。
【0026】
水抜き孔100とは、半円柱状部26の外面と、外側覆部29の内面との間の空間(図5中、斜線で示す部分)をいう。
【0027】
半円柱状部26の外面形状は、電線用カバー10の長手方向の内側から外側に向けて、長手方向の中心軸Cに近づく方向に傾斜する水抜き孔テーパー部50と、当該水抜き孔テーパー部50における電線用カバー10の内側端において、中心軸Cから離間する方向に突設されたフランジ部52とで規定されている。また、水抜き孔テーパー部50とフランジ部52との間には、段54が形成されている。
【0028】
次に、外側覆部29の内面形状は、半筒体12の本体部20における内面30から続いて中心軸Cに対してほぼ垂直方向に離間する段部61と、当該段部61から続く、電線用カバー10の長手方向の内側から外側に向けて、中心軸Cから離間する方向に傾斜する内側テーパー部60と、当該内側テーパー部60の外側端から続く、中心軸Cと略平行な水平部62とで規定されている。
【0029】
これにより、本実施形態における水抜き孔100は、電線用カバー10の内外を連通するようになっている。また、上述のように、当該水抜き孔100よりも内側には、電線用カバー10の内側から外側に向けて、電線用カバー10の長手方向の中心軸Cから離間する方向に傾斜する内側テーパー部60が形成されている。
【0030】
さらに、水抜き孔100は、中心軸Cと略平行な水平部62と、電線用カバー10の内側から外側に向けて当該中心軸Cに近づく方向に傾斜する水抜き孔テーパー部50との間の空間であることから、当該水抜き孔100は、電線用カバー10の外側に向けて高さ寸法HDが徐々に高くなる形状となっている。
【0031】
また、水抜き孔テーパー部50における電線用カバー10の内側端において、中心軸Cから離間する方向に突設されたフランジ部52が設けられていることから、半円柱状部26の外面と、外側覆部29の内面との間の距離LDは、当該フランジ部52において最も短くなっている。加えて、半円柱状部26の外面における水抜き孔テーパー部50とフランジ部52との間には段54が形成されていることから、半円柱状部26の外面と、外側覆部29の内面との間の距離LDは、フランジ部52から水抜き孔テーパー部50に移るときにおいて、急激に長く(広く)なる。
【0032】
また、本実施形態では、図6に示すように、上述したような水抜き孔100は、電線用カバー10の中心軸Cを中心として放射状にかつ円周方向に略均等な間隔で8つ構成されているが、水抜き孔100の数はこれに限定されるものではなく、2つ以上であればいくつでもよい。
【0033】
図1および図2に戻り、係着部24は、本実施形態の場合、3組の係着具70と、ひとつの把持部74とを備えている。
【0034】
係着具70は、電線用カバー10をヒンジ16で折り曲げて半筒体12,14を互いに組み合わせた状態を保持するためのものである。一方の半筒体(本実施形態では半筒体12)には雄係着具76が形成されており、他方の半筒体(本実施形態では、半筒体14)には雌係着具78が形成されている。
【0035】
把持部74は、一方の半筒体12,14(本実施形態では半筒体12)における中央の
係着具70(雄係着具76)となりから突設された舌片であり、電線用カバー10を電線に取り付ける際にヤットコ等の把持工具で把持される部分である。把持部74の数は、本実施形態のような個数(ひとつ)に限定されるものではなく、2つ以上でもよい。また、半筒体12,14に対する把持部74の付け根部分を薄肉に形成しておき、電線に電線用カバー10を取り付け終えた後に半筒体12,14から把持部74を捩り取ることができるようにしてもよい。
【0036】
(実施形態に係る電線用カバー10の取り付け手順)
上述した電線用カバー10の電線への取り付け手順を簡単に説明する。図7に示すように、被覆電線Lの中間部に露出させた芯線Sに対して、電線用カバー10における一対の電線保持部32同士の離間距離は、当該露出させた芯線Sの長さよりやや短めに設定されている。もちろん、露出させた芯線Sに限定されず、切断された架空配電線の端部の芯線S同士を直線スリーブや他の方法で接続させた部分にも本実施形態に係る電線用カバー10を使用することができる。
【0037】
次に、把持工具で把持部74を把持して、電線保持部32を構成する一対の保持体34における切欠き35に芯線Sをあてがう。このとき、本体部20に形成された一対の電線保持部32間に芯線Sが位置するとともに、被覆電線Lが電線挟持部22(あるいは、電線挟持部22における半円錐台状部28の先端部)の中心軸に沿うように位置決めする。
【0038】
然る後、図8に示すように、図示しない把持工具で把持部74を把持して電線用カバー10の位置を保持しつつ、他方の半筒体12,14(本実施形態では半筒体14)にバインド打ち器等のフック型工具を掛けて下方向に引き、ヒンジ16を中心として電線用カバー10を折り曲げることによって両半筒体12,14を閉じていく。これにより、図9に示すように、電線用カバー10は電線を覆ってほぼ閉じた状態を維持するとともに、図示しない把持工具による下向きの引っ張り力によって、ヒンジ16が鉛直上向き、そして、把持部74がほぼ鉛直下向きとなる適正な位置を維持できる。この状態で把持部74を把持していた把持工具を外しても電線用カバー10が電線から落下する等の問題は生じない。
【0039】
最後に、フック型工具を掛けた状態のまま、把持工具等を用いて、互いに対応する雄係着具76と雌係着具78とを互いに係着させる。その後、フック型工具を取り外す。これにより、図10に示すように、両半筒体12,14が電線を覆った状態で互いに固定され、電線用カバー10の電線への取り付けが完了する。
【0040】
(実施形態に係る電線用カバー10の特徴)
(1)
上述のように、図5を参照して、本実施形態における水抜き孔100よりも内側には、電線用カバー10の内側から外側に向けて、電線用カバー10の長手方向の中心軸Cから離間する方向に傾斜する内側テーパー部60が形成されている。これにより、当該水抜き孔100が中心軸Cよりも鉛直下方にある場合、内側テーパー部60は、電線用カバー10の内側から外側に向かう下り傾斜となり、電線用カバー10内の水分がこの下り傾斜によって外側に排出されやすくなる。
【0041】
(2)
また、水抜き孔100は、電線用カバー10の外側に向けて高さ寸法HDが徐々に高くなる形状となっている。内側テーパー部60を下ってきて水抜き孔100に入った水分は、半円柱状部26の外面および外側覆部29の内面との流体摩擦を受けることによって外側への流出を抑制する抵抗を受けるが、水抜き孔100を外側に向けて高さ寸法HDが徐々に高くなる形状とすることにより、当該抵抗を受け難くして、水分の排出を良好に維持することができる。
【0042】
(3)
さらに、半円柱状部26の外面と外側覆部29の内面との間の距離LDを、当該フランジ部52において最も短く、かつ、半円柱状部26の外面と外側覆部29の内面との間の距離を、フランジ部52から水抜き孔テーパー部50に移るときにおいて急激に長く(広く)することにより、上述した特徴(1)および(2)と相まって、フランジ部52を通過した水分によってフランジ部52よりも内側にある水分が外側へ誘引されることにより、電線用カバー10内の水分がより効率よく排出されることが期待される。
【0043】
(4)
また、本実施形態における水抜き孔100の形状であれば、上述したように電線用カバー10内の水分を効率よく排出できるだけでなく、当該水抜き孔100が中心軸Cよりも鉛直上方にある場合、雨水等の水分が当該水抜き孔100を通して電線用カバー10内に浸入する可能性を低減できる。すなわち、水抜き孔100が中心軸Cよりも鉛直上方にある場合、内側テーパー部60は、電線用カバー10の内側から外側に向かって突出することとなり、水抜き孔100を通って浸入してきた水分は当該内側テーパー部60に当たる。これにより、浸入してきた水分が有する内側向きの勢いはなくなり、本体部20内に入った当該水分はそのまま鉛直下方に落下し、そこにある別の(下り傾斜の)内側テーパー部60から、対応する水抜き孔100を通って外側へ排出される。
【0044】
(5)
また、水抜き孔100が中心軸Cよりも鉛直上方にある場合、半円柱状部26の水抜き孔テーパー部50は外側向きに下り傾斜となることから、当該水抜き孔100を通って浸入しようとする水分はこの下り傾斜を逆に上らなければならず、結果として、外側からの水分が水抜き孔100を通過して本体部20内に入るのが困難である。
【0045】
(6)
さらに、水抜き孔100が中心軸Cよりも鉛直上方にある場合、水抜き孔テーパー部50における電線用カバー10の内側端において中心軸Cから離間する方向に突設されたフランジ部52は「堰」の役割を果たすようになり、下り傾斜の水抜き孔テーパー部50を上ってきた水分はこの「堰」(=フランジ部52)を乗り越えなければ電線用カバー10内に浸入することはできない。このフランジ部52の存在により、外側からの水分が水抜き孔100を通過して本体部20内に入るのをさらに困難にすることができる。
【0046】
(7)
また、水抜き孔100は、電線用カバー10の中心軸Cを中心として放射状にかつ円周方向に略均等な間隔で複数構成されているので、電線に取り付けた電線用カバー10が当該電線を中心に不所望に回転した場合であっても、いずれかの水抜き孔100が鉛直下方に位置するので電線用カバー10内の水分を排出できる。もちろん、その際に鉛直上方に位置する水抜き孔100を通して外側からの雨水等は浸入し難いようになっているのは上述の通りである。
【0047】
(8)
また、本実施形態に係る電線用カバー10における本体部20の内面には、一対の電線保持部32が形成されている。これにより、図11に示すように、芯線Sを露出させた位置を中心として電線用カバー10を取り付けたとき、電線保持部32における一対の保持体34同士は芯線Sの露出寸法よりもやや狭く離間して配置されていることから、電線の長手方向に電線用カバー10が移動しようとしても、芯線Sよりも径が大きい被覆電線Lが保持体34に当接する。これにより、電線の長手方向に対して、電線用カバー10が不所望に移動してしまうのを防止することができる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
10…電線用カバー、12…半筒体、14…半筒体、16…ヒンジ
20…本体部、22…電線挟持部、24…係着部、26…半円柱状部、28…半円錐台状部、29…外側覆部、
30…内面、31…庇部、32…電線保持部、34…保持体、35…切欠き、36…切欠き、38…保持片、40…雨水浸入防止用舌片、42…電線押さえ部
50…(半円柱状部50の)水抜き孔テーパー部、52…(半円柱状部50の)フランジ部、54…段、
60…(外側覆部29の)内側テーパー部、61…段部、62…(外側覆部29の)水平部、
70…係着具、74…把持部、76…雄係着具、78…雌係着具
100…水抜き孔
L…被覆電線、S…芯線、H…被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11