(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20220412BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H01L23/46 B
H01L23/40 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018107731
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2020-09-14
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518198901
【氏名又は名称】ユナイテッド アラブ エミレーツ ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】サラー アディン ブルハン アル オマリ
(72)【発明者】
【氏名】アブダラ ガザル
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-002051(JP,A)
【文献】特開2004-152905(JP,A)
【文献】特開2011-054883(JP,A)
【文献】特表2005-510876(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068476(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0038053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34 - 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却を要する熱源と直接的な接触をするように適合された少なくとも1つの接触面を規定し、内部に複数の密封キャビティが規定された、固相の単体ガリウムの本体部と、
前記キャビティ内に
、前記固相の単体ガリウムの本体部と直接的に接触するように配置された、ガリウムより高い比熱容量を有するカプセル化されていない相変化材料と、
を備え
たヒートシンクであって、
前記カプセル化されていない相変化材料は、前記固相の単体ガリウムの本体部から熱を吸収して、当該ヒートシンクの活性を維持する
ことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記固相の単体ガリウムの本体部は、前記少なくとも1つの接触面と前記複数の密封キャビティとの間である厚み部分を有しており、
前記厚み部分は、前記熱源が前記少なくとも1つの接触面と直接的な接触状態に置かれる時、前記少なくとも1つの接触面から前記複数の密封キャビティに向かって延在する溶融ガリウムのインタフェース領域を規定するようになっており、
前記インタフェース領域は、前記キャビティを無傷(intact)のまま残す
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記相変化材料は、パラフィンを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記相変化材料は、脂肪酸を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記相変化材料は、n-ヘキサデカンを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記相変化材料は、n-ヘプタデカンを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記複数のキャビティは、均一に離れて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項8】
前記複数のキャビティは、ランダムに離れて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項9】
前記複数のキャビティは、均一に成形されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項10】
前記複数のキャビティは、ランダムに成形されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記固相の単体ガリウムの本体部の前記少なくとも1つの接触面を露出するように、寸法決めされて構成された少なくとも1つの開口面を有する容器を規定するハウジング
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項12】
前記容器は、開口した上部を有しており、前記熱源が当該ヒートシンク上に置かれるようになっている
ことを特徴とする請求項11に記載のヒートシンク。
【請求項13】
前記ハウジングは、熱伝導性材料で製造されており、
前記固相の単体ガリウムの本体部は、冷熱源上に前記容器を置くことによって冷却されるようになっている
ことを特徴とする請求項11に記載のヒートシンク。
【請求項14】
前記ハウジングは、前記容器から外方へ延在するフィンを有している
ことを特徴とする請求項11に記載のヒートシンク。
【請求項15】
前記ハウジングは、前記固相の単体ガリウムの本体部内へ延在するフィンを有している
ことを特徴とする請求項11に記載のヒートシンク。
【請求項16】
前記固相の単体ガリウムの本体部を冷却するための手段
を更に備えたことを特徴とする請求項11に記載のヒートシンク。
【請求項17】
前記ハウジングと前記固相の単体ガリウムの本体部とを斜め角度に貫通して延在する複数の冷却管
を更に備えたことを特徴とする請求項11に記載のヒートシンク。
【請求項18】
前記複数の冷却管は、当該複数の冷却管を通る周辺空気の通過のために開口する対向端部を有している
ことを特徴とする請求項17に記載のヒートシンク。
【請求項19】
前記複数の冷却管を通る冷却流体の通過を強制するための手段
を更に備えたことを特徴とする請求項17に記載のヒートシンク。
【請求項20】
前記相変化材料は、無機相変化材料を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに関し、特に、固相ガリウムの本体部またはブロックの中に規定された複数の密封キャビティ内に相変化材料を配置することによって製造されるヒートシンクに関している。当該ヒートシンクは、電気回路内の集積回路のような電子要素によって生成される熱を消散させるべく、熱水のような熱い流体を冷却するために、あるいは、他の材料を冷却するために、使用され得る。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンクは、熱源(例えば熱い流体または熱い固体)からシンクまで熱が伝達されることを許容して、トランジスタや他のパワーエレクトロニクスのような熱源内の過剰な熱の帰結を回避する。様々な材料がヒートシンクにおいて利用されているが、依然として、特にはガリウムのような液体金属の高い熱伝導率をフル活用するような用途において、熱源から過剰な熱を迅速に除去することの改良のニーズが存在する。ガリウムは、高い熱伝導率を有するが、その低い比熱容量のために、ヒートシンクとしての利用は制限されている。その低い比熱容量の結果として、所与の量のガリウムは十分な熱をすぐに吸収してしまって、冷却されるべき材料から熱を引き出すシンクとしてはもはや機能しなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、前述の問題を解決するヒートシンクが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のヒートシンクは、カプセル化されていない相変化材料(ガリウム以外の材料)を内部に収容する複数の密封キャビティが規定された、固相のガリウムの本体部またはブロックである。当該固相のガリウムは、冷却を要する熱源と直接的な接触をするように適合された少なくとも1つの開口面(接触面)を有する容器内に配置され得て、前記熱源と当該ヒートシンクとの間のインタフェースは、改良された熱伝達のための溶融ガリウム領域を含む。熱源からの熱は、溶融ガリウムの領域を通って、次いで固相ガリウムを通って、迅速に伝達され、キャビティ内の相変化材料によって有意な温度変化無しで吸収され、ヒートシンクの活性(viability)を維持する。ヒートシンクは、固相のガリウムの本体部を通る傾斜管を含み得て、当該管は、空気や冷却水のような冷却媒体の通過のために対向端部において開口している。当該ヒートシンクは、電気回路内の集積回路のような電子要素によって生成される熱を消散させるべく、熱水のような熱い流体を冷却するために、あるいは、他の材料を冷却するために、使用され得る。
【0005】
本発明のこれら及び他の特徴は、以下の詳細な説明と添付の図面とを更に参照することで、容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明によるヒートシンクの一実施形態の上方から見た断面斜視図である。
【0007】
【
図2】
図2は、
図1のヒートシンクの下方から見た断面斜視図である。
【0008】
【
図3A】
図3Aは、固相のガリウムの本体部内に規則的に分布された複数のキャビティを有する、本発明によるヒートシンクの一実施形態の概略図である。
【0009】
【
図3B】
図3Bは、固相のガリウムの本体部内に略均一の深さでランダムに分布された複数の不規則な形状のキャビティを有する、本発明によるヒートシンクの一実施形態の概略図である。
【0010】
【
図3C】
図3Cは、固相のガリウムの本体部内に2つの異なるレベル(深さ)でランダムに分布された複数の不規則な形状のキャビティを有する、本発明によるヒートシンクの一実施形態の概略図である。
【0011】
【
図4】
図4は、ヒートシンク無しでの熱水の冷却速度を、固相ガリウムで製造されたヒートシンク(液相のインタフェースを伴う)を用いた熱水冷却と比較し、また、
図3A、
図3B及び
図3Cで示されたような固相ガリウム内に分布された複数のキャビティ内に相変化材料が配置されたヒートシンクを用いた場合と比較した、グラフである。
【0012】
【
図5】
図5は、固相のガリウムの本体部を貫通して延びる傾斜冷却管を有する、本発明によるヒートシンクの一実施形態の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
同様の参照符号は、添付の図面を通して一貫して、対応する特徴を指し示している。
【0014】
本発明のヒートシンクは、カプセル化されていない相変化材料(ガリウム以外の材料)を内部に収容する複数の密封キャビティが規定された、固相のガリウムの本体部またはブロックである。当該固相のガリウムは、冷却を要する熱源と直接的な接触をするように適合された少なくとも1つの開口面(接触面)を有する容器内に配置され得て、前記熱源と当該ヒートシンクとの間のインタフェースは、改良された熱伝達のための溶融ガリウム領域を含む。熱源からの熱は、溶融ガリウムの領域を通って、次いで固相ガリウムを通って、迅速に伝達され、キャビティ内の相変化材料によって有意な温度変化無しで吸収され、ヒートシンクの活性(viability)を維持する。ヒートシンクは、固相のガリウムの本体部を通る傾斜管(すなわち、ハウジングと固相のガリウムの本体部とを斜め角度で貫通する管)を含み得て、当該管は、空気や冷却水のような冷却媒体の通過のために対向端部において開口している。当該ヒートシンクは、電気回路内の集積回路のような電子要素によって生成される熱を消散させるべく、熱水のような熱い流体を冷却するために、あるいは、他の材料を冷却するために、使用され得る。
【0015】
図5に示すように、ヒートシンクは、開口した上部を有する容器ないしハウジング内に配置され得る。熱源は、固相のガリウムの本体部ないしブロックと直接的な接触をするように、ヒートシンクの上面に直接載置され得る。ハウジングの底部は、真鍮のような熱伝導性材料であり得て、固相ガリウム13内の複数のキャビティ14の一体性の維持を助けるべく、氷や他の冷却媒体との接触状態に置かれ得る。その低い融点(約29℃。約25℃である室温よりもほんの数度高い。)のために、熱源125と接触する固相のガリウムの一部は溶融して、液相または半固相19となる。適切に選択される時、固相のガリウム13は、十分な厚みを有していて、相変化材料15を収容する複数のキャビティの一体性が、熱源125と直接接触するガリウム領域の溶融によって影響されることはない。
【0016】
熱源125は、熱水のような流体であり得る。水と液相ガリウムとは混和せず、液相ガリウムの方が水よりも密度が高いため、水と溶融ガリウムないし液相ガリウムとは相分離状態を維持して、水125は溶融ガリウムないし液相ガリウム19の上方にある。本件発明者は、熱水と液体ガリウムとの間の熱伝導性が、熱水が液体ガリウムと直接的に接触している状態の時の方が、熱水が管や他の熱交換容器ないし熱交換路内に配置されている時よりも高い、という知見を得た。後者の場合、熱は、中間の壁を通ってからヒートシンクに伝達されるためであると考えられる。熱源125と固相ガリウム13との間の液体ガリウムまたは溶融ガリウムのインタフェース19は、熱伝導性と熱伝達速度との両方を高めると思われる。
【0017】
あるいは、熱源125は、電子回路内で動作する電子要素によって生成される熱であり得る。電気接点の短絡から回路を保護する必要があるため、回路は、熱発生要素とヒートシンクとの間で電気的絶縁を維持可能であるが良好な熱伝導性を有するというような回路基板上に取り付けられるべきである。そのような回路基板は、例えばセラミック回路基板であり、当業者にはよく知られている。しかしながら、セラミック材料は、固相ガリウムとの接触状態に置かれる時に不活性であることが、留意されるべきである。従って、アルミニウム系セラミックは、使用されるべきでない。一方、当該基板の上面に要素が取り付けられた状態の好適な回路基板が、当該回路基板の熱伝導性の底面がヒートシンクのガリウムと直接接触する状態で、ヒートシンク上に載置され得る。
【0018】
図1及び
図2は、電子回路を熱消散のためのヒートシンクに取り付けるための代替的な形態を図示している。回路は、上面において、あるいは、底面において、ヒートシンクハウジングに取り付けられ得る。
図1及び
図2に示されたヒートシンク10は、ガリウムよりも高い比熱容量を有する相変化材料(PCM)15を収容する複数のキャビティ14を有する、固相のガリウムの本体部ないしブロック13を備えている。様々なPCMが利用され得る。例えば、様々な種類のパラフィン、脂肪酸、及び、他の有機材料及び向き材料が利用され得る。例えば、n-ヘキサデカンや、n-ヘプタデガンも利用され得る。それらの両方とも、電子冷却用途での利用にとって、特には本実施形態のヒートシンク10のようなヒートシンクを用いた電子冷却用途での利用にとって、好適な範囲の融点、すなわち概ね18℃から23℃の融点、を有する。相変化材料15は、固相のガリウムの本体部ないしブロック13内にキャビティ14をドリル(孔開け)加工し、当該キャビティ14内に相変化材料15を入れ、当該キャビティ14を付加的な固相ガリウムで密封する、ことによって導入され得る。相変化材料15は、カプセル化されていないので、熱は、複数のキャビティ14の壁を通して、固相のガリウム13から相変化材料15まで直接的に伝達される。これは、相変化材料15へのより迅速な熱伝達をもたらし、更に、ガリウムの温度上昇を回避させる。相変化材料15は、粉末やビードのような流動性材料であり得るし、あるいは、何らかの塊で(in chunks)あり得るが、いずれにしても、キャビティ14の壁において固相ガリウム13と直接接触する。ガリウムの比較的低い融点(約29℃)は、エレクトロニクス産業において典型的に見出される熱源を冷却するために、シンク材料としてのガリウムを非常に魅力的にする。主な焦点は、エレクトロニクス産業の冷却のために本実施形態のヒートシンクを適用することであるが、本実施形態のヒートシンクは、熱源(熱い固体でも流体でもよい)からの熱の効果的な除去が求められる広い範囲の産業に適用可能である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ヒートシンク10の当該実施形態は、開口する上部を有する箱型構造を含むハウジング11を備えており、底部壁内に細長い中央凹部を有し、それは、平行な細長い(2本の)チャネルを規定していて、それらの外壁は対応するそれらの内壁よりも高い。ヒートシンク10及びハウジング11の全体の輪郭及び相対的な寸法は、例示的な目的のみのために図示されている。上方の回路基板12aは、熱を発生する電子要素16aが上面に取り付けられており、ハウジング11の前方から後方まで対向する外壁の間でハウジング11の開口する上部に亘って延在している。下方の回路基板12bは、内壁間に延在していて、熱を発生する電子要素16aが底に面する面に取り付けられている。これにより、ハウジング11は、浅い中央領域によって結合された2つの深い井戸状部を規定している。それらは、固相ガリウムで充填され得る。相変化材料15を収容するキャビティ14は、深い井戸状部内に位置され得る。電子回路が動作する時、ヒートシンク上に取り付けられた要素16aによって発生される熱は、上方の回路基板12aを介してガリウムに伝達され、要素16aによって発生される熱は、下方の回路基板12bを介してガリウムに伝達され、上方の回路基板12aと下方の回路基板12aとの間の固相のガリウムが溶融して液相19になることを引き起こす。熱は、更に、液相19から固相のガリウム13に伝達され、更に相変化材料15によって当該相変化材料15の熱容量まで固相のガリウム13の温度変化無しで吸収される。
【0020】
基本概念は、熱を発生する要素を回路基板の上面に置いて、当該回路基板を、両者の間のギャップ無しでシンク材料に直接接触するように、基材に取り付けることである。溶融されたシンク液体材料と回路基板の底面側との間にギャップが存在しないことは、熱い要素からヒートシンクへの熱伝達の熱障壁を低減する。回路基板は、エレクトロニクスからの電気的絶縁を阻害しない程度にそれを下向きに押すことによって、シンク材料内に部分的に浸漬され得て、シンクへの熱伝達速度を増大し得る。これは、シンク材料と基板の底側との完全な接触をもたらし、熱伝達速度の低減を引き起こすギャップを許容しない。固体と固体とが接触する場合に必要とされるような、ヒートシンク材料と回路基板との間に熱的フィラー材料を設ける必要がない。ここで、両者の間にフィラーやギャップが無い状態で回路基板の底側と直接的に接触する溶融された高い熱伝導性の液体が存在して、同時に、ヒートシンクに取り付けられる伝統的な回路基板において典型的な接触及び接着の問題がないという事実は、熱を発生する要素からの高い熱伝達速度を保証する。印刷回路基板を最初にシンク材料内に押し込むことは、システムが停止されていて、シンク材料が全体的に凍結されている(すなわち完全に固相である)場合において、本質的に必要とされる。この時に、回路基板を固相のシンク材料内に深く浸透させることは、後において、ヒートシンクと回路基板との間に何らの種類のギャップ無しでの完全で深い(intimate)接触、ひいては高い熱伝達速度、を保証するであろう。
【0021】
回路基板は、高い熱伝導性を有すると同時に必要とされる電気絶縁性を有することが知られている、例えばセラミックのような材料で製造され得る。例えば、幾つかのセラミックは、例えばアルミニウムのような金属と互換可能なレベルの熱伝導性を有する。セラミックは、シンク材料と両立可能(compatible)であるべきである。例えば、アルミニウムはガリウムと両立可能でないので、これらのセラミックの成分は、それらがアルミニウム系である場合には特に、使用されるシンク材料との両立可能性(compatibility)が検査(check)される必要がある。
【0022】
印刷回路基板上に取り付けられた熱を発生する要素からの熱伝達を更に高めるために、シンク材料と接触する基板の側は、例えば波形が設けられ得るし、あるいは、フィンのように振る舞う割込要素を有するように成形され得る。
【0023】
ヒートシンクに対して熱を発生する要素を載置することに関する向き(orientation)については、様々な概念が存在する。例えば
図5では、熱源がヒートシンクの上面に取り付けられている。別の向きの可能性においては、ヒートシンクは、上面上に配置され得て、熱を発生する要素が下方からそれに取り付けられ得る。例えば、液相ガリウム19が
図1及び
図2において回路基板12bの上方に配置されているように。そのような場合、熱伝達の経路は、熱源から回路基板を介してヒートシンクに向かって、上向き方向になるであろう。この配置は、
図1及び
図2に示す回路基板12aと要素16aとの配置と比較して、それ自身好適な熱伝達特性を有し得る。
【0024】
ヒートシンク10の外側の物理的なハウジング11は、当該ハウジング11がより低温の外側環境への熱伝達を高めるためのフィンを含むように、製造され得る。これは、全体のアセンブリが空調空間内に位置される場合に、最も良く機能するであろう。また、ハウジング11の外面は、多孔性であってシンク10の外面の温度低下を引き起こすような水の吸収を許容する、高い熱伝導性の覆いによって覆われ得る。それは、ヒートシンク10から外側環境への熱の移動をより効果的に助けるであろう。この場合、特に湿度に関する注意や所定の予防措置を要求する全体のシステム内にシンク10が一体化される時、湿度レベルが考慮される必要がある。外部ファンが、ヒートシンク10の外側ケーシングまたはハウジング11の周辺の環境冷却空気を吹き付けるために付加され得る。これは、特に外部壁が多孔性で冷却水を吸収している場合において、低温を維持することを助けるであろう(水の蒸発冷却のため)。
【0025】
PCM充填キャビティの様々な配置が考慮され得る。キャビティは、十分に規定された反復構造であってもよいし、固相のシンク材料の本体部内にランダムに分散されていてもよい。PCM材料のできるだけ多い量を収容するために(同時に、固相のシンク内への円滑で有効な熱伝達路を保証するための固相のガリウムとの相互接続性を維持するために)、PCMキャビティは、互いの上方に1より多い層が積層され得る。例えば、
図3Aに示すように、PCM充填キャビティ14は、円筒形キャビティや直方体形キャビティのような、規則性のある形状で設計され得る。あるいは、
図3Bに示すように、ヒートシンクは、固相のガリウム部分13内において単一の層内に配置された不規則な形状のPCM充填キャビティ144を含み得る。更に別の実施形態では、
図3Cに示すように、ヒートシンクは、固相のガリウム部分13内において複数層内に配置された不規則な形状のPCM充填キャビティ144を含み得る。
【0026】
典型的な室温では、ガリウムは固相で存在する(その融点は約29℃)。液体ガリウムは、熱伝達用途における他の典型的な流体(例えば、水、空気、油、等)と比較して、高熱伝導性を有する。ガリウムが、熱源との直接的な接触状態にもたらされた時に、熱伝達において非常に良好な性能を示すことについては、強力な証拠がある。例えば、ガリウムとの直接接触の間に熱水の熱をガリウムへ移動させることで当該熱水を冷却することは、熱水とガリウムシンクとを分離する固体壁(例えば管壁や固体金属板等)を介しての熱水からガリウムシンクへの熱伝達よりも、より効果的であることが証明されている。ガリウムの熱伝達媒体としての前述の魅力的な特徴にも拘わらず、ガリウムのようなシンク材料は、依然として、適切に扱われない場合、前述された熱伝達の優れた特徴を相殺し得る不利な特徴がある。当該不利な特徴というのは、シンク材料としては低い比熱容量である。例えば、ガリウムの低い比熱容量は、所定量のガリウムが、明瞭な温度上昇を経験せずに、冷却するべき熱源から適切な量の熱を取り出すことを困難にする。この温度上昇は、ガリウムと熱源との間の顕著な温度差の低下に帰結する。熱交換する2つの物体間の温度差は当該熱交換の駆動力であることが、思い出されるべきである。それがより小さくなる時、当該2つの物体間の熱交換の速度も小さく(遅く)なる。
【0027】
ガリウムの低い比熱容量と、その結果としての熱源からの熱の捕捉時の温度差低下と、に起因する前述の制限を克服するため、文献において、大変小さな粒子の形態の相変化材料(PCM)をシンク流体(例えば液体ガリウム)内に懸濁することが(当該問題を克服するための1方法として)提案されている。これによって、PCM装填のシンク流体(本質的に当然制限される)の比熱容量が高められる。シンク材料の比熱容量の増大の効果は、懸濁されたPCM粒子が相変化中に温度上昇を経験することなく潜熱を吸収することによる、と説明され得る。換言すれば、熱源から高い熱伝導性のシンク材料に伝達され、更にPCMに伝達される熱は、感知できる熱としてシンク材料内に貯蔵されないで、全体のシンクマトリクスのためのPCM粒子の潜熱となる(温度上昇を引き起こさない)。従って、冷却するべき熱源から熱を受容した時に、低い比熱容量のシンク材料の温度が迅速に上昇してしまうという傾向を抑制できる。これは、熱交換処理中のできるだけ長い時間、シンクと熱源との間の十分に高い温度差を維持することを助け、結果的に、高い熱交換速度をもたらす。
【0028】
本実施形態によるヒートシンクの以前は、当該液体内に均一に分散されたマイクロスケールまたはナノスケールのPCM粒子をもたらすという低い比熱容量の液体への懸濁PCM粒子の処理は、典型的には多くの技術的困難を伴っていて、未だ幅広い商業規模では実践されていなかった。本実施形態によるヒートシンクによれば、PCM材料が、液体金属のような高い熱伝導性材料内に一体化されて、ヒートシンクマトリクスの生産を果たすことができる。当該ヒートシンクマトリクスは、それと直接接触する熱源から効果的に熱を除去するために利用され得る。熱源は、エレクトロニクスデバイスの基材のような熱い固体でもよいし、熱い流体でもよい。本実施形態のヒートシンクは、低い比熱容量と高い熱伝導性とによって特徴付けられるシンク材料内へのPCMの個別的な粒子の利用を実装するための、より実践的で容易な態様を提供するものである。そのようなシンク材料の例は、一般的には液体金属であり、特にはガリウムである。
【0029】
本実施形態のヒートシンクにおいて、PCM材料の比較的大きい片が、固相のガリウムブロック13内に一体化されていて、シンク材料(ガリウム)のブロック内に均一に分散されている必要はない。比較的大きいPCMの塊が、固相のガリウムブロック内に分布される。ガリウムが典型的な室温(約29℃未満)において固相として存在するという事実から、利点が得られる。高い熱伝導性のガリウムのブロックの内部に、比較的大きいサイズであるPCM片が一体化されている。それらは、非設計的(non-engineered)な態様でランダムに分布されているか、あるいは、設計的(engineered)な態様で規則正しく(orderly)分布されている。PCMの塊のガリウム内の分布は、PCM装填シンク全体の最適な性能が達成され得るように、最適化され得る。本実施形態のヒートシンクの顕著な特徴は、使用されるPCMの塊を取り囲むカプセルシェルを利用する必要がないことである。代わりに、PCM材料は、シンク本体部のブロックの内部にドリル加工された所定のキャビティ内に充填されて、シンク材料は当該キャビティを充填するPCM材料と直接的に接触する。それら2つを分離するバリヤは存在せず、従って、付加的な熱抵抗がマトリクス全体内に含まれない。
【0030】
キャビティ(孔またはボイド)は、固体ガリウム内に製造され、所定量の好適なPCM材料で充填される(要求される設計及び熱吸収量による)。PCM材料で充填された後、キャビティは、シールを形成するべく、同一の固相ガリウムのキャップで閉塞される。これにより、PCMは、熱源から受容された熱が周辺のガリウムから当該PCMに伝達されて溶融する時に、キャビティから漏洩できない。キャビティ内のPCM材料は、この場合、全方位において固体ガリウム本体内に吸い込まれて(engulfed)沈められて(submerged)いる。前述の最終結果が、好適なPCM材料で充填された複数のキャビティを有するガリウム製のシンク材料の固体ブロックである。このPCM装填の固体ブロックが、熱源から所望の熱を除去するためのシンクとして利用され得る。熱源は、例えば、熱い流体や、熱を発生させるエレクトロニクスデバイスであり得る。
【0031】
熱源については、PCM装填の固体ブロックと直接的に接触するか、あるいは、所定の流体(例えば水)を介して当該熱源から熱が取り出されて加熱された当該流体が固体のPCMブロックシンクにその熱を伝達してもよいが、いずれも例示的な使用例である。この場合の熱い流体は、固相のガリウムの上面に直接接触することが許容される。熱い流体とガリウムのような物質との間のこの種類の直接接触は、当該熱い流体からガリウムへの熱伝達が当該2媒体を分離する管壁や固体金属板を介する場合よりも、より効果的であることが証明されている。
【0032】
本実施形態のヒートシンクは、好適なPCM内容物で充填された固体ガリウム内のキャビティを伴う、固体ガリウムのブロックの既成品を供給し得る。これらの既製品のブロックは、所定の熱伝達用途において容易に適合され得て熱源から除去される熱のためのシンクとして利用され得る、シンク用ブロックとして市場で購入され得る。固体のブロックシンク内に埋め込まれるPCMのタイプ及び量は、キャビティのサイズ及び形状と同様、除去されるべき熱量と当該処理に関する作業温度範囲とに基づいて決定される。考慮され得る他のパラメータは、使用されるPCMのタイプ及び量を含む。
【0033】
ガリウムは、約29℃の温度で溶融することが思い出される。結果的に、PCM装填の固体ガリウムブロック13と熱源との間の熱交換プロセスの開始時、熱源と直接接触しているガリウムの一部が溶融を開始する。これにより、PCM装填の固体ガリウムブロックの製造時、個別的な複数のPCMキャビティを覆うガリウムの固体層が常時存在することを保証するように、そして、当該ブロックによって吸収される熱量がPCM充填キャビティの上方の固体ガリウム層全ての溶融を引き起こさないことを保証するように、注意が払われるべきである。固体ガリウムの溶融が、PCMキャビティの上方の全てのガリウムが溶融される程度にまで進んでしまった場合、キャビティは決壊され、PCM材料はキャビティから漏洩してキャビティ上方の溶融ガリウム層を通って上方へと流れ、液体ガリウム面の上面で群集するであろう。これが生じる時、PCMは、熱源からの熱の受容時にガリウムシンクブロックの温度が迅速に増大する傾向を抑制する手段としての役割を、失ってしまう。
【0034】
前述の制限に基づいて、熱源と直接接触するガリウムの溶融波がPCMキャビティに到達しないことを保証するように、所定の用途にとって正確なPCMブロックサイズが利用されるべきである。所定の熱源用途のために製造ないし購入されるべきPCMブロックのサイズの選択は、全体としてPCMブロックによって吸収されるべき熱量、キャビティ内のPCMによって潜熱として吸収されるであろう一部の熱量、及び、対応して予測される所定の熱源冷却用途のための温度上昇及び熱伝達速度、の正確な評価を要求するであろう。キャビティ内のPCMのカプセル化が、ガリウム溶融の程度についての前述の制限が緩和され得るように、なされ得る。しかしながら、PCMのこの種のカプセル化は、周辺のガリウム本体部からPCMキャビティに向かう熱伝達に更なる抵抗を付加する。
【0035】
PCM充填キャビティは、余分な境界(ライナ)を有しておらず、PCM材料は、周辺のシンク材料と直接的に接触している。換言すれば、キャビティ内でPCMのためにカプセル化材料を使用する必要がない。PCMのためのカプセル化材料の必要を回避することは、固体ガリウムとキャビティ内のPCMとの間の熱伝達の抵抗を低減する。付加的に、本実施形態のヒートシンク10では、PCMの塊を固体ガリウム本体部内に均一に懸濁する必要がないし、固体シンク材料内に分布される個別的なPCMの塊が均一な形状及びサイズを有する必要もない。とはいえ、PCMの塊の最適な分布、形状及びサイズが、PCMの塊の注意深い配置と共に、常に所望され得る。PCMキャビティは、固体ブロック内にランダムに分布され得るが、固体ブロック内のPCMキャビティの所定のパターンの最適化された分布もまた、採用され得る。PCMキャビティのサイズについては、何らの制限なく、選択され得る。主に留意すべきは、所定の熱伝達用途にとってキャビティ内に挿入されるPCM材料の全体の適切な量である。
【0036】
小さいカプセル内へのPCM材料のカプセル化は、また、固相のシンク材料を用いるという制限をも緩和する。この場合、完全に液相のシンク材料(例えば液体ガリウム)が最初から使用可能である。もっとも、概ね室温での相変化に関連する本来的特徴を有する固体ガリウムのようなシンク材料を有することは、固体シンクが温度変化無しで熱源から潜熱を吸収することを可能にする。この効果は、キャビティ内のPCM材料の相変化効果によってサポートされるという利点がある。
【0037】
所定の熱源のためにPCMブロックの前述の選択作業を十分に果たすことによって、それらの上方の固体キャップの完全な溶融に起因するキャビティ壁の崩壊のリスク無しで、PCMキャビティを無傷(intact)の状態で保存することができる。これは、様々な熱除去サイクルのために、何度も何度もシンクブロックを反復使用することを許容する。
【0038】
これは、製造されたPCM固体ブロックシンクの持続可能で連続的な反復使用を保証する。PCMキャビティを閉じる固体ガリウム層は、完全に溶融されてはならないし、キャビティは、常時、ガリウムの固体層で覆われて密封されていなければならない。もっとも、所定量の熱が熱源からPCM装填の固体シンクブロックによって繰り返し吸収される時、キャビティの上方の固体ガリウムの層は、次第に溶融していくであろう。従って、シンクブロックが熱源から熱を連続的に受容する場合には、キャビティの上方の固体ガリウム全体が溶融してしまうであろう。そのような場合、キャビティは崩壊されて、内部のPCMは上方に漏洩して溶融ガリウムの上面において層化し、PCMブロックは更なる反復使用にとって活性でなくなって有用でなくなる。
【0039】
前述の点に加えて、キャビティの上方の固体ガリウム層全体の溶融に起因してPCMキャビティの崩壊に到達する前でさえ、キャビティ内のPCMが、周辺のガリウム本体部からの十分な熱量の受容時に、完全な溶融に到達するかもしれない。そのような場合、キャビティ内部のPCMは、相変化材料としてもはや有用でなくなって、シンクブロックの合理的な低温を維持するという重要な役割を奏することがもはやできなくなるであろう。
【0040】
前述のシナリオ(状況)により、ガリウムの温度は、熱源から更に熱を受容する時、より顕著に上昇を継続し、ガリウムと熱源との間の温度差が、より明瞭に減少し始めて、これにより熱源からの熱の除去速度が低減してしまう。キャビティ内のPCMの完全な溶融、あるいは、キャビティの上方の個体ガリウム層の溶融に起因するキャビティの崩壊、によって引き起こされる当該問題を克服するために、様々な技術及び選択肢が利用可能である。
【0041】
例えば、PCM固体ブロックは、間欠的に利用され得る。これは、PCMキャビティの上方で固体ガリウムの所定の厚さが溶融されずに維持される時点まで、PCM固体ブロックによって所定の熱量が吸収されることを許容する、ということを意味する。キャビティ上方の固体ガリウムの厚さについての当該制限に到達する時には、熱源からの熱伝達は停止されるべきであり、PCM固体ブロックが吸収した熱を放熱する時間が与えられるべきであり、キャビティ内のPCMが冷却するべき熱源から周辺のガリウムを介して捕捉した潜熱を放熱して再生され再び固相に戻される時間が与えられるべきである。前記処理の完了後、PCM固体ブロックは、熱源との熱交換の次の反復サイクルのための準備が整うであろう。
【0042】
PCM固体ブロックの前述の種類の間欠的な周期動作は、あまり利便性が良くないかもしれない。これは、バッチタイプの熱伝達動作にとっては適当かもしれないが、熱源からの連続的な熱除去にとっては適当でないかもしれない。更に、この間欠的な動作タイプは、動作の間欠性の頻度を低減する意図がある場合や、間欠的な動作が回避されるべき場合には、嵩張った不必要に過剰な量の固体ブロック材料を使用するという必要性を暗示し得る(ガリウムの過剰な量及びPCM材料の量の両方)。シンクブロックのバルキネス(嵩高さ)の問題は、様々な理由において明らかに魅力的でない。
【0043】
嵩高なシステムを有する必要性無しに、間欠的な動作の欠点を回避するか少なくともその程度を軽減するより魅力的な選択肢は、「連続的な熱伝達モード」であり、それは、ブロックによって熱源から熱を捕捉する主たるプロセスと並列に実装された、PCM固体ブロック全体の連続的な冷却手段を含むことである。この選択肢は、コスト及び複雑さにおいて異なる、様々な態様によって実装され得る。
【0044】
PCM材料及び全体のガリウムシステムの熱源に対する効果的な冷却能力を更に高めるために、あるいは、冷却処理の全体時間を短縮するために、あるいは、熱源から除去される熱量を増大するために、キャビティ内のPCM材料と全体としての固体ブロックは、冷却するべき熱源から熱を吸収するのと同時に、内部から冷却される必要がある。この種類のブロックの内部冷却は、周辺の固体ブロック材料から熱を受容しながらも、キャビティ内のPCMが完全には溶融されないことを可能にするであろう。これは、ガリウム本体部内の温度上昇傾向を抑制することを可能にするであろう。このことは、前述されて強調されたような、シンクブロックと熱源との間の十分に高い温度差を実現することを可能にするであろう。結果として、この実践は、不所望な間欠的な動作モードの回避を可能にするであろう。また、これは、多量の熱を収容するための嵩張ったシンクブロックの必要性を回避することを助けるであろう。この場合、シンク材料によって吸収される熱の一部は、すでに(すぐに)内部の熱除去システムに伝達されているであろう。
【0045】
熱源から熱を受容している間にシンクブロックの有効な内部冷却処理が不在である場合の結果は、キャビティ内のPCMが所定量(全体のシステムの設計者によって予め決定される)の熱を捕捉して完全に溶融してしまうという事実を含む。この時、PCMは、熱源からの熱を繰り返し捕捉可能な状態になるために、元の固相に再生されて戻される必要がある。シンクブロックにおける効果的な内部冷却機構の不在は、シンクブロックが捕捉した熱を放熱するために必要とされる時間をシンクブロックに与えるために、全体の熱伝達動作を停止することを要求する。また、シンクブロックを冷却する前記ステップを実施することが必要になる前の動作時間を延長するために、より多量のPCM及びより多量のガリウムシンク本体部が要求されるであろう。これにより、PCMの冷却及び再生のために全体のプロセスが停止される必要が生じる前に、より多量の熱が除去され得る。間欠的な動作についての前記制限及び/または大型シンクの必要性を克服するべく、熱源からシンクブロックによって熱が吸収されるのと同時にシンクブロックの内部冷却を実施するための技術が採用される。
【0046】
図5に示すように、傾斜管99が、固相のガリウム層13内に挿入され得る。これらの管99は、ガリウム本体部内のPCMキャビティを貫通する必要はないが、それらを貫通していてもよい。これらの管99の両端は、シンクブロックが存在する周辺媒体(例えば、部屋内の周辺環境空気)に対して開口している(すなわち管99は入口と出口とを有している)。
【0047】
シンクブロックが熱源125から熱を受容する時、当該熱の一部は、ガリウム材料内に留まって、ガリウムの温度上昇を引き起こす。当該熱の他の一部は、ガリウムからキャビティ内のPCMに移動して、第3の部分が、ブロックを取り囲む環境流体(例えば部屋の空気)で充填された傾斜管に移動する。勿論、幾らかの熱は、シンクブロックの外側境界を通って周辺環境に漏洩する(逃れる)であろう。傾斜管内の流体(例えば周辺空気)は、加熱されて、当該管の傾斜と誘発される浮力とにより、例えばファンやポンプのような外力機構の必要無しで、自然に上方に流れる。もっとも、傾斜管99を循環する力を与える機構が、シンクブロックのより効果的な熱除去及び内部冷却を助けるべく、実装されてもよい。傾斜管99を通す強制循環機構の後者のシナリオは、全体のシステムの複雑さとコストとを付加する可能性がある。従って、この選択肢は可能であれば回避されるべきである。
【0048】
シンクブロックから自然に(あるいは強制対流により)傾斜管99内を上方へ流れる流体へと熱が移動して、シンクブロックの冷却がなされる。従って、同時に、キャビティ内のPCM材料の一部を固相に維持することを助ける。これは、キャビティ周辺の固体ブロック材料からPCMが常時潜熱を吸収して、全体のブロックの有意な温度上昇を抑制することを保証する。これは、前述のように、シンクブロックと冷却するべき熱源との間の十分に高い温度差(従って高い熱伝達速度)を維持するであろう。また、傾斜管99は、シンクブロックを直接冷却するように作用するので、所定の熱伝達用途にとって最適に小さいブロックサイズを有することを可能にし、必要とされるPCM材料も少なくて済む。
【0049】
更に、傾斜管99の前記特徴の採用は、過剰に大きい熱除去速度を要求する動作条件下において、PCMキャビティが相変化の熱吸収の最大限に到達する前に、当該動作の中断の必要無しで、熱源からの熱除去プロセスの連続動作時間をより長くする。
【0050】
前述の傾斜管99の様々な変形例が実装され得る。例えば、管の入口と出口とは、部屋の周辺環境空気とは異なる環境流体に直接接続されてもよい。別の代替的な提案として、シンクブロックは、液体水や他の関連流体のような他の流体で充填された外部タンク内に浸漬されてもよい。前述のように空気が管を通る循環媒体である場合と同様、水は、それがシンクブロックから受容する熱に起因する密度の変動に起因して、傾斜管内を上方に循環するであろう。傾斜管内で加熱された水は、管の上端を出る時に冷却される機会を得るであろう。そこで、水は、他の周辺空気環境(室内動作の場合、典型的には空調されている)に曝されるであろう。全体のシステムの設計者によって必要であると考えられる場合、他の技術が、傾斜管内の加熱された水を冷却するために付加され得る。
【0051】
更に、傾斜管99の構造の他の変形例として、これらの管は、閉ループタイプであるように選択され得る。その場合、それらは、典型的なヒートパイプとして振る舞うように、単純に製造され得る。これらのヒートパイプ内の揮発性材料は、シンクブロックからの熱を吸収して、当該ヒートパイプの凝縮側において凝縮される。中空でなく中実の傾斜(あるいは非傾斜)金属管も、シンク本体部内に配置され得て、外部の空調空間へとシンクからの熱を移動させ得るフィンのように振る舞う。これは、本実施形態のヒートシンク10が包含し得る特徴に加えられ得る。
【0052】
(前述のような)シンクブロックの内部冷却の様々な変形例のいずれかを一体化することは、熱源からのより高い熱除去能力の機会を与える。前述の様々なアイディア及びコンセプトは、シンクブロック内への多量の熱の放出のためのより拡張された創造的な案を実装することを容易化して助けるであろう。これは、熱を発生させるデバイスのために、より顕著な冷却がなされ得て、従って、過剰な熱の除去が求められる産業用途において、より効果的でより高い能力を推進する、ということを意味する。
【0053】
前述のように、熱源からシンクへの熱のより効果的な放出がなされるアイディアの一例として、例えば熱源からシンクブロックのスラリ部19内の溶融液体ガリウム内に来る熱水を用いた、熱い流体のバブリング(泡立ち)が提案される。既に知られているように、混和しない高熱伝導性の液体浴(例えば液体ガリウム)への熱い流体の直接のバブリングは、当該泡立てられた熱い流体から当該液体浴への熱伝達を高める。結果的に、このバブリング技術は、前述されたPCM材料と付加的に一体化される内部冷却管機構とによって提供される助けに起因して、固体のシンクブロック内により多くの熱が放出され得て、その後に容易かつ効果的に取り扱われ得る、ということを意味するであろう。PCM材料用のキャビティを含まない固体ブロックシンクにおいても、前述の態様による内部管冷却方法を用いる前述の概念が同様に実装され得る、ということが強調される。もっとも、提案された管概念に加えてのPCMキャビティの存在は、熱源からの更に高められた熱除去を容易化するであろう。
【0054】
本発明のヒートシンクの特徴は、現在の技術における困難の克服を許容する態様で、熱伝達用途にとって優れた材料(シンク)内にPCM材料を一体化するための効果的でシンプルな態様を提供する。更に、PCMがシンク内に分布されるべき態様に、制限がない。加えて、本発明のヒートシンクは、様々な種類の熱伝達産業において用いられ得る、既製品としてのPCMベースのシンクブロックを準備する機会を提供する。これらの既製品としてのブロックは、様々な産業のために、容易に市場取引され得る。本発明のヒートシンク10は、液体金属と熱源のような2つの本体部間での直接接触による熱伝達の概念に基づいて、製造される。本発明のヒートシンクは、シンク媒体内に多量の熱を放出する効果的な実践を創造的に実装する機会を提供する。例えば、熱い流体から多量の熱を除去するためのバブリングによる直接接触の熱交換方法を実装することは、大いに実行可能になる。本発明のヒートシンクは、大変にコンパクトであり得て、シンプルな自然な仕組みに基づく内部傾斜管の形態で提案される付加的特徴を実装することによってPCM材料の再生を実施するために必要とされる中断を回避できる。本発明のヒートシンクは、熱交換用途の幅広い範囲のために、カスタムメードされ得てサイズ決めされ得る。本発明のヒートシンクは、最大の潜在能力の閾値を押し上げ、液体金属のような特殊な熱交換特性を有する優れた冷媒の使用を許容する。本発明のヒートシンクは、熱発生源から熱を除去する能力の増大を許容するシンプルな設計及び製造を伴い、冷却を要する現存の熱発生システムの動作制限の拡張を許容する。これは、電子デバイスやコンピュータのような用途にとって大変重要な状況である。
【0055】
ヒートシンク材料は、熱い流体の所望される冷却温度未満または当該温度以下である融点を有しており、当該熱い流体の冷却中、固体のシンク材料(固相のガリウム)の部分的溶融が生じる。PCMがシンク内に一体化された本発明のヒートシンクの助けにより、シンク材料の完全な溶融は生じない。従って、シンク材料温度の上限は、PCM材料によって捕捉される熱に起因して、熱交換中に設定される。ヒートシンク材料の部分的溶融は、冷却対象の熱い流体がシンク材料の溶融部と直接熱交換することを保証する。
【0056】
本発明のヒートシンク10の実行可能性を検証するべく、予備的試験が実施された。それは、ヒートシンク内のガリウムブロックの頂面上に注がれた1バッチの熱水の冷却履歴を示している。実施された実験の1つにおいて、使用されたヒートシンクは、内部にPCM孔が配置された固体シリンダであった。実験セットアップは、ガリウムスラリ内、固体ガリウム内、及び、水の支持層内、に配置された温度プローブを含んでいた。熱水の冷却履歴がモニタリングされた。1回は、ヒートシンク容器内にPCMが存在しないでガリウムのみ(溶融層と固体部の両方)が存在している間に熱水が冷却された。他の場合には、ガリウムの固体部内にPCMが一体化されていた。実験は、繰り返し実施されたが、
図3B及び
図3Cに示されるランダム分布の非構造化(非パターン化)PCMキャビティ144が、PCM孔の構造化パターンに置換された。熱水の冷却履歴結果は、
図4のプロット400に図示されている。提案された態様のいずれにおいても(構造化パターンでも非構造化パターンでも)、PCMの存在は、明らかに、熱水の優れた冷却速度を提供する。全ての実験は、同じ外部境界条件下で実施された。ヒートシンクの底部である真鍮ベース部は、室温の冷水の大部分に接触することが許容されて、最終的にそれに熱を放出することが許容された。
【0057】
前述の処置及び結果は、まさに、特許請求される発明(概念)が十分機能することを示す。処理を最適化して、提案される発明(概念、アイディア)を実装する最良の態様に至るための更なる試験は、本明細書に示された前述の様々な付加的な特徴と共に探求され得る。例えば、シンク内にシステム周りの空調空間からの冷却空気の自然循環を許容する傾斜管を一体化することや、シンクケーシングにフィン状外面を含めることや、ヒートシンク外壁周りに環境冷却空気を強制通流させる小型ファンを含めること等は、システムに付加され得る選択肢である。また、熱水が直接接触によってシンク材料に熱を放出することが許容される態様は、バブルディスペンサを用いることによってシンク材料の溶融層内で熱水をバブリングすることによって、顕著に改良され得て、高められた対流熱伝達をもたらす。熱水バブリングの最終の選択肢は、シンク内の周辺の固体材料からより多くの熱を受容するようPCMの能力を増大して、シンク材料の溶融速度を遅くして、シンク材料の作動時間を増大するか嵩張るシンクの必要性を低減するように、選択されるべきPCMの配置、構造及びタイプを最適化する必要性を伴う。プロット400のデータは、ガリウム液状本体の頂面上に着座した1バッチの熱水(60ml)の冷却履歴を含んでいる。実験の幾つかにおいて、ガリウムは内部に一体化されたPCMを含んでいなかった。他のケースでは、ガリウムの固体部が、3つの異なる態様でPCMを含んでいた。これらの実験の2つにおいて、PCMの(質量基準の)1.6%が、円筒状の構造化キャビティ内に射出されて、あるいは、ランダムな単一層として提供されていた。他のPCM試験では、PCM塊の二重のランダム層が配置されて、約3.2%の(ガリウムに対するPCMの)合計体積分率がシンク本体内に実現されていた。
【0058】
結果から分かるように、PCMの存在は、PCMが用いられていない時より顕著に速い熱水の冷却速度を導く。更に、シンクマトリクス内のより多いPCMの存在は、水冷却速度の更なる上昇を導く。全ての試験において最初の熱水温度は約70℃であり、開始から30秒後、PCMが3.2%のPCM含有量で用いられている時、約15℃温度低下した。PCMガリウムシステムの更なる試験及び最適化が、この新しい発明(概念)の利益を最大化して熱源からの熱伝達速度を高めることを目的として、更に導入され得る。幾つかの可能性ある提案が、前述されている。プロット400に示された曲線のうちの2つは、PCMが存在しない比較例での熱水冷却に対応している。これらのケースの一方では、水が単独で容器内に存在していて、ガリウムもPCMも存在しない。当該実験では、PCMを有する場合のそれらと同じ境界条件で、水が冷却された。他の比較実験では、ガリウム(溶融層及びその下方のガリウム固相)と直接接触しながら熱水が冷却されたが、ガリウム内にPCMは一体化されていなかった。これらの2つの比較例に対応する結果をPCMを用いる場合と比較することによって、PCMの一体化を用いる利点が極めて明らかである。全ての場合において、処理開始時の熱水の初期温度は、約68℃~70℃であった。ガリウムシンク内に3.2%のPCMを有する場合が、最速の時間当たりの熱源の温度低下を導くことが、理解され得る。PCMを含む全ての場合において、PCMの影響は、極めて明らかである。もっとも、シンクブロック内のPCMの量、分布及び種類の更なる最適化によって、シンクと直接接触する熱源の冷却速度を更に高めることが期待され得る。
【0059】
本発明は、前述の実施形態に限定されないで、特許請求の範囲に含まれる任意の全ての実施形態を包含するものであることが、理解されるべきである。