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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】二重管の継手構造
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20220412BHJP
   F28F 9/26 20060101ALI20220412BHJP
   F16L 39/00 20060101ALI20220412BHJP
   F16L 9/18 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F28F9/26
F16L39/00
F16L9/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019085856
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180767
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】596024013
【氏名又は名称】株式会社渡辺製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-124854(JP,A)
【文献】特開昭52-150855(JP,A)
【文献】特開2002-318083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/10
F28F 9/26
F16L 39/00
F16L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の螺旋状の凹凸部を備えた内管と外管との間に熱交換通路が形成された熱交換器用二重管に対して、前記熱交換通路を流通する流体のインレット、アウトレットとなる接続管を接続した二重管の継手構造において、
前記内管には、外管端部の内壁の対面部位を環状に膨出させたシール用膨張部を設け、前記凹凸部はその端部を該シール用膨張部に対して接近させて設け、前記接続管には、その端部に、外管端部の内側形状と前記内管のシール用膨張部の外側形状とによって囲まれた略D形の異形形状の接続端末を設け、
前記外管には、その端部に、前記接続管の接続端末と前記内管のシール用膨張部とを囲うダルマ形の嵌合接続部と、前記接続管の端口と内管の凹凸部の端部の外側を覆って、前記接続管の端口から前記凹凸部間に形成される各旋回流路へと流体を誘導する誘導通路を形成する流体誘導部とを設け、
前記流体誘導部は、最大口径部分を内管の凹凸部の頂部の外接円と複数本の旋回流路の断面積の総和よりも大きな断面積を有する略円形とし、且つ、内管の中心から内管の壁面と外管の壁面までの距離の差が接続管へ向かうに従って漸増するよう各旋回流路を囲繞して誘導通路を形成し、前記最大口径部分から一方側には流体誘導部外の外管に繋がるテーパー状の主壁部を配し、他方側には接続管に繋がる従壁部を配したことを特徴とする二重管の継手構造。
【請求項2】
前記主壁部の最大口径は、前記シール用膨張部と前記接続管の外径の合計値よりも小さな口径としたことを特徴とする請求項1に記載の二重管の継手構造。
【請求項3】
前記内管の凹凸部の端部と前記シール用膨張部との間を、環状溝を介して接近させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二重管の継手構造。
【請求項4】
前記内管の凹凸部に近い主壁部の内壁の口径を、拡大したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の二重管の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管と外管との間に螺旋状の熱交換通路を形成した熱交換器として使用される二重管と接続管との継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の空調機の熱交換系等では、小型で熱交換効率の高い熱交換器として、内管と外管の間の螺旋状の熱交換通路に熱交換用の一方の流体を流通させ、他方の流体を内管に流通させて両流体間で熱交換を行う二重管が多用されている。
螺旋状の熱交換通路は内管に設けた螺旋状の凹凸部によって形成され、該二重管の両端部には該熱交換通路を流通する流体のインレット用とアウトレット用の接続管が連結される。
該二重管と接続管を連結した継手は、外管の端部に穿孔された接続孔に接続管が直立状態に接続された構造とするのが一般的であり、螺旋状の熱交換通路で旋回される流体のインレットとアウトレットの際の接続部分の急激な方向変換によって流体の流通が阻害され、熱交換性能が低下するという不具合があった。
【0003】
この不具合を改良するものとして、接続管の端口に対面する位置の内管の周面に環状溝を設け、流体の急激な方向変換を回避しようとする技術が知られている。しかし、この技術でも接続管が直交しているという基本構造が維持されているため流体の急激な方向変換は避けられず、根本的な改良とはならないだけではなく、急激な方向変換を回避するため環状溝の幅を広くすればするほど強度が低下し、流体から受ける流通圧力によって溝内の管壁が変形され易くなるという新たな問題が生じた。
【0004】
これに対して、本願発明者は先に下記特許文献1の二重管の継手構造を提案し、二重管の外管の端部に軸方向へ平行に接続管を繋ぎ、該接続管に繋がる筒状の流通案内部を設けることで流路の急激な方向変換による流通性に対する阻害要因が解消され、流体の流通性が高められ充分な熱交換性能を得ることが可能となった。
又、上記従来の継手構造における環状溝は設ける必要がなくなったため内管の強度低下による問題も解決された。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、筒状の流通案内部が接続部から螺旋状の凹凸部間の旋回流路に確実に届くよう軸方向へ長く形成されるため、凹凸部の本数が多くなればなるほど各凹凸部に被せる流通案内部の長さを増加させなければならず、流通案内部の長さを増加させると、二重管の限られた長さの中で、増加させた分二重管を自由に屈曲させることが可能となる範囲が狭まることとなり、空調機等への組み付けの際のレイアウトの自由性が失われてしまうという問題があった。
又、シール用膨張部で旋回流路の端部が閉じられるため流通案内部の裏側では一部にデッドスペースができ、そこでは熱交換機能が損なわれ、熱交換効率が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-124854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記特許文献1の二重管の継手構造の問題点を改良し、接続管との継手内を流体が二重管の端部まで全体に流通して充分な熱交換性能が得られ、内管の強度低下を起こさせずに使用場所における組み付けレイアウトの自由度をより高めることが可能となる二重管の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の二重管の継手構造における請求項1の発明は、複数本の螺旋状の凹凸部を備えた内管と外管との間に熱交換通路が形成された熱交換器用二重管に対して、前記熱交換通路を流通する流体のインレット、アウトレットとなる接続管を接続した二重管の継手構造において、前記内管には、外管端部の内壁の対面部位を環状に膨出させたシール用膨張部を設け、前記凹凸部はその端部を該シール用膨張部に対して接近させて設け、前記接続管には、その端部に、外管端部の内側形状と前記内管のシール用膨張部の外側形状とによって囲まれた略D形の異形形状の接続端末を設け、前記外管には、その端部に、前記接続管の接続端末と前記内管のシール用膨張部とを囲うダルマ形の嵌合接続部と、前記接続管の端口と内管の凹凸部の端部の外側を覆って、前記接続管の端口から前記凹凸部間に形成される各旋回流路へと流体を誘導する誘導通路を形成する流体誘導部とを設け、前記流体誘導部は、最大口径部分を内管の凹凸部の頂部の外接円と複数本の旋回流路の断面積の総和よりも大きな断面積を有する略円形とし、且つ、内管の中心から内管の壁面と外管の壁面までの距離の差が接続管へ向かうに従って漸増するよう各旋回流路を囲繞して誘導通路を形成し、前記最大口径部分から一方側には流体誘導部外の外管に繋がるテーパー状の主壁部を配し、他方側には接続管に繋がる従壁部を配したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、上記発明において、前記主壁部の最大口径は、前記シール用膨張部と接続管の外径の合計値よりも小さな口径としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、上記発明において、前記内管の凹凸部の端部と前記シール用膨張部との間を、環状溝を介して接近させたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、上記発明において、前記内管の凹凸部に近い主壁部の内壁の口径を、拡大したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成であり、外管の端部に設けた流体誘導部内の流体は、外管の端部に差し込まれた接続管から二重管と同じ軸方向へ流れ、その際、主壁部は全長に渡って内管の外周よりも大きい口径なので、接続管前の広い誘導通路内を通りテーパー状の主壁部に誘導されて各旋回流路に分かれて流通する。このため、急激な方向変換を起さず円滑に流通させることが可能となる。
そして、流体誘導部には、内管の中心から内管の壁面と外管の壁面までの距離の差が接続管へ向かうに従って漸増するよう各旋回流路を囲繞した誘導通路が形成される。
このため、流体の取入口となる旋回流路の端口が存在する接続管により近い位置の複数の旋回流路の端口に対しては、漸増した広い空間を保持して充分な量の流体が供給可能となる。一方、接側管からより離れた位置の複数の旋回流路の端口に対しては、誘導通路の幅は徐々に狭まるので、円形の主壁部に誘導されて回り込むように狭い方へ収束されつつ周方向へ流通する。即ち、流体が各旋回流路を囲繞した誘導通路によって円滑に誘導され、求められる量に応じて必要な量の流体を的確に供給することが可能となる。
その際、接続部の端口から離れた位置にある凹凸部の端部にも流体が周方向に回り込んで流通するので、全ての旋回流路に流体の滞留するデッドスペースは生じることがない。
又、流体誘導部には、流体誘導部外の外管に繋がるテーパー状の主壁部と接続管に繋がる従壁部の間の略円形の最大口径部分の誘導通路を、全ての旋回流路の断面積の総和よりも大きな断面積としたので、接続管から直接流入する最大口径部分で誘導通路の断面積が一旦増大して、誘導通路内に全ての旋回流路内に必要とされる充分な量の流体が流通可能となる。流体はその増大した誘導通路を通り、徐々に狭くなる主壁部のテーパー状の斜面に誘導されて軸方向へ収束されつつ、最後に主壁部の末端から全ての旋回流路内へ分かれて円滑に流通することとなる。
【0013】
又、誘導通路は接続管の前側の広い空間には流通に余裕があるので、その接続管の前側から周方向へ離れた各旋回流路へは流通量は少なくて済み、従って、誘導通路を、流量が多く必要な接続管側はより広くし、少ない流量で済む接続管から遠い側は徐々に狭くなるよう形成することで、最大口径部分の外径を小さくすることが可能となる。
このため、継手部分の外径のコンパクト化が可能となり、使用場所における組み付けのレイアウトの自由度を高めることができるようになる。
そして、上記の如き各旋回流路への流通を円滑に誘導させる誘導機能を備えた誘導通路により、継手内において各旋回流路との間に流路の急激な方向変換による大きな流通抵抗を発生させずに、二重管全体に流体を円滑に流通させることが可能となる。
【0014】
又、主壁部は広い最大口径部分で必要とされる量の流体が余裕を待って流通可能とするため、主壁部のテーパー状の末端側では各旋回流路へ流入させる量は少なくて済み、主壁部を不必要に長くする必要がない。
このため、螺旋状の凹凸部の本数を増加させたとしても、その増加した本数に応じて主壁部を軸方向へ延ばす必要がなく、誘導通路の最大口径部分の容積の大きさに応じて、流体誘導部を短くすることができる。
そして、継手部分の領域を軸方向に短くすることで、使用場所の空間の形状に応じて主壁部の末端近くまで折り曲げることが可能となり、狭い場所でも使用できるよう組み付けのレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0015】
又、内管の凹凸部の端部がシール用膨張部に接近しているので、二重管と接続管との継手の内管に脆弱となる広い平坦状の部分は形成されず、薄く柔らかいアルミニュウム製の内管に対して流体から大きな圧力を受けても変形や損傷を生じることがなくなる。
【0016】
請求項2の発明は、主壁部の最大口径をシール用膨張部と接続管の外径の合計値よりも小さな口径とすることで、流体誘導部の軸方向の長さを短くして継手全体を短くするだけではなく、継手部分における最大口径部分の外径を小さくなるように設定して径方向でもコンパクト化でき、レイアウトの自由度をより高めることが可能となる。
【0017】
請求項3の発明は、前記内管の凹凸部の端部と該シール用膨張部との間を、環状溝を介して接近させたことで、該環状溝からも内管の凹凸部の端部間の旋回流路の端口に対してより多く流通させることが可能となる。
この結果、流体誘導部の軸方向の長さをさらに短くして継手全体をさらにコンパクト化でき、レイアウトの自由度をより高めることが可能となる。
【0018】
請求項4の発明は、前記内管の凹凸部に近い主壁部の内壁の口径を、拡大したことで、その拡大部からも内管の凹凸部の端部間の各旋回流路に対してより多く流通させることが可能となる。
この結果、流体誘導部の軸方向の長さをさらに短くして継手全体をさらにコンパクト化でき、レイアウトの自由度をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1例の図3のA-A線で外管を縦断した状態を示す縦断側面図である。
図2】第1例の図3のB-B線で外管を横断した状態を示す横断平面図である。
図3】第1例及び第2例の継手を外管の端部方向から見た正面面である。
図4】第1例の端部側から斜に見た斜視図である。
図5】第1例の接続管を接続した側から見た平面図である。
図6】第1例の図1の(イ)はC-C線で切断し、(ロ)はD-D線で切断し、(ハ)はE-E線で切断し、(二)はF-F線で切断した各部の断面を示す輪切り断面図である。
図7】本発明の第2例の図3のA-A線で外管を縦断した状態を示す縦断側面図である。
図8】第2例の図3のB-B線で外管を横断した状態を示す横断平面図である。
図9】第2例の図7の(イ)はG-G線で切断し、(ロ)はH-H線で切断した各部の断面を示す輪切り断面図である。
図10】本発明の第3例の図11のI-I線で外管を縦断した状態を示す縦断側面図である。
図11】第3例の継手を外管の端部方向から見た正面面である。
図12】第3例の図10の(イ)はJ-J線で切断し、(ロ)はK-K線で切断した各部の断面を示す輪切り断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
先ず本発明の基本形態となる第1例で継手構造を説明する。
図1図6はその第1例を示すものである。
本来、二重管には上下及び左右として使用を限定するものでないが、以下、側面図である図1を基にして接続管が接続されている上側を上としその下側を下とし、正面図である図3を基にして接続管が接続されている方を上側にしたときの左側を左としその右側を右とし、図4に示す二重管の中心線の方向bを軸方向として説明することとする。
【0021】
本発明は、図1及び図2に示すように、外管2と、該外管2内に貫挿された内管1と、外管2の拡張した端部2bに差し込まれて固定された接続管3とで構成される二重管の継手構造である。
該接続管3は、外管2と内管1との間に形成される熱交換通路5に流体を流通させるためにインレット側とアウトレット側に接続し、該接続管3の端部3aの軸方向aは二重管の軸方向bと平行となるように固定する。
使用する材料である素管は、いずれも熱伝導率の大きいアルミニウム製の管を用いる。
そして例えば、壁面の厚さは、外管及び内管では1.5mmとし、接続管では1mmとする。又、口径は、外管では19mm、内管では12mm、接続管では6mmとする。この場合、接続管の内径の断面積は約28mmである。
【0022】
前記内管1は、図1及び図2に示すように、素管の壁面1aを外周に向けて隆起させた螺旋状の凹凸部11が複数並行して外管2の両端部2b間の長さより極僅かに短い長さに途中で切れることなく連続して管壁を旋回するよう設けられる。
そして、内管1の該凹凸部11の端部11bに繋がる素管部分には、前記凹凸部11の両端部11bに対して接近させた状態で管壁を一周膨出させた環状のシール用膨張部13を形成し、その際、該シール用膨張部13は前記外管2の端部2bの内壁面の対面部位に形成する。
なお、図1及び図2は二重管の片側のみを図示しており、それ以下の各図も同様に二重管の片側のみを図示したものである。二重管の両側は外管2のインレット側とアウトレット側となり、その両側は同じ構造となるので以下図1及び図2の如く一方側の構造で説明することとする。
【0023】
前記内管1の凹凸部11の両端部11bとシール用膨張部13とは接近させるが、その接近状態は、接した状態であるか又は僅かに離れて接近した状態であるかのいずれかとする。
第1例は接した状態の実施例であり、接していない状態は第2例で後述することとする。
この第1例は凹凸部11の端部11bとシール用膨張部13の側部との間に素管部分が無く、凹凸部11の端部11bとシール用膨張部13の側部が接して管壁から立ち上がった構造である。
このため、その両側の立ち上がり部分により強化された構造となって壁面が強化され、この接した部分では加圧による変形は起こらない。
【0024】
前記凹凸部11及びシール用膨張部13の形成方法は、例えば、各凹凸部11に対応した凹凸が形成された金型内に挿通して、内管1の内部に圧力を加えて管壁を膨出させる方法等が可能である。
該凹凸部11は、例えば、ピッチ38mmで3本の凹凸部11を螺旋状に並行するように膨出させ、その凹凸部11の横幅は9mmとし、高さは2mmとし、膨出させずに残される各凹凸部11間の凹部12の底幅を4mmとする。各凹凸部11間の総計断面積を28mmとすれば、接続管3の内径の断面積と同じとなる。シール用膨張部13は、環状に管壁を15mm幅で凹凸部11の膨出高さと同様の2mmの高さに形成する。
【0025】
前記外管2は、図1及び図6の(二)に示すように、その内部に貫挿させた内管1の凹凸部11の頂部11aを内壁面に当接できる口径の素管を用いる。
例えば、内管1の凹凸部11の頂部11aの外径を19mmとしたとき、外管2の口径も19mmとする。即ち、外管2の内径と内管の凹凸部11の頂部11aの外径とを一致させる。
これにより、前記内管1を該外管2内に嵌挿すると、内管1の螺旋状の各凹凸部11間と外管2の内壁2aとの間に各々が独立した複数の旋回流路51a、51b、51cを有する熱交換通路5が形成される。
図1図2及び図6の(二)には、3本の凹凸部11により、それらの間に3本の旋回流路51a、51b、51cが形成された態様を示している。なお凹凸部11の本数は複数とするものであるが、実用的な範囲としては2本~5本程度である。
【0026】
前記外管2の端部2bは口径をテーパー状に拡張して、図1及び図2に示すように、内管1のシール用膨張部13との間に接続管3の端部3aを差し込み可能な広さの嵌合接続部21と、該嵌合接続部21に続けて接続管3の端部3aから複数の旋回流路51a、51b、51cへ流体を流通させる流体誘導部22とを形成する。
【0027】
前記接続管3はその端部3aに、拡張した外管2の端部2b内に差し込むための接続端末31を形成する。
図4は接続管3の接続端末31を差し込む前の状態を示している。この接続端末31は、外管2の端部1bの嵌合接続部21の内側形状と内管1のシール用膨張部13の外側形状とによって囲まれる異形形状(D形)に変形加工し、その異形形状部分31aには、シール用膨張部13の外周面に密接可能となる凹面部31bを形成する。
該異形形状部分31aは、凹面部31bの両側を下へ突き出すように拡張させ、変形による容積の減少を解消し、又内管1のシール用膨張部13に凹面部31bが安定的に接合できるようにする。
又、異形形状部分31aの凹面部31bで外管2の拡張した端部2bに幅広く接するため、各管を固着する際に、ろう付け(図1中にろう材を符号6で示す)不良が起きなくなり、内管1、外管2及び接続管3の各接続部分のシール性が向上する。
【0028】
該接続管3の接続端末31は、図6の(イ)に示すように、外管2の嵌合接続部21内に差し込まれ、内管1のシール用膨張部13の外周面13aに凹面部31bが当接されるが、その際、図4に示すように、接続された接続管3の中心線aは、二重管の内管1の中心線bとを略平行とする。
従って、内管1に接続管3が添うように近接配管されるので、継手の周囲をコンパクト化することが可能となる。
又、外管2の端部2bに接続管3を内管1と略平行に接続したことで、流体は急激な方向変換を起こさず円滑に流通可能となる。
【0029】
前記外管2の端部2bは、図1に示すように、テーパー状に拡張する際に、接続管3の接続端末31が差し込まれる側が広く、接続端末31が差し込まれないシール用膨張部13を囲う側が狭くなるよう、テーパー状の管の中心線を上側の接続管3側に向けて傾斜させる。
そして、外管2の拡張部分の端口2c側に、シール用膨張部13及び接続管3の両外壁面に密着可能な嵌合接続部21を形成する。
【0030】
該嵌合接続部21の形成方法は、接続管3とシール用膨張部13に相当する金型を外管の拡張部分に差し込み、外管2の端部2bの外周側を加圧して、金型の外形に馴染むように凹ませる方法が可能である。
そして、一方にはシール用膨張部13に対して大きく絞られた絞り部26が、他方には接続端末31に対して大きく絞られた絞り部27が形成され、接続管3の接続端末31と内管1のシール用膨張部13に内壁が接するように囲われて、拡張された外管2の端口2cがダルマ形となる。
ダルマ形とは、図3及び図6の(イ)に示すように、下側のシール用膨張部13の半円形と、上側の接続管3の接続端末31を半円径と、両半円形を繋ぐ接続管3の異形形状部分31aの左右の側面とが連続した雪ダルマの外形の如き形状のことである。
【0031】
接続管3は外管2の端部2bに差し込まれた後、接続端末31及びシール用膨張部13と嵌合接続部21内面との間にできた隙間にはろう付けをして、隙間からの流体の漏出を防ぎ、外管2と内管1と接続管3とを強固に固着する。
【0032】
又、前記流体誘導部22には、各旋回流路51a、51b、51cを囲繞し、図1及び図2に示すように、接続管3の端口3bと凹凸部11の頂部11a間の各旋回流路51a、51b、51cとの間に流体を流通させる誘導通路53を形成する。
該誘導通路53は、流体をインレット側では流体を接続管3の端口3bから凹凸部11間の各旋回流路51a、51b、51cへと誘導し、アウトレット側ではインレット側とは逆に、凹凸部11間の各旋回流路51a、51b、51cから接続管3の端口3bへと誘導するものである。
【0033】
該流体誘導部22は、嵌合接続部21から軸方向の内側に向けて誘導通路53が広がる従壁部23と、該従壁部23から内管1の凹凸部11の頂部11aに接するまで口径がテーパー状に漸減する主壁部24とで構成する。
そして、図2に示すように、該従壁部23に繋がって主壁部24の基端は最大口径αとなり、その最大口径部分24aの近傍では軸方向両側に周壁面がなだらかに連続する曲面となるように形成する。
【0034】
前記従壁部23は、図4に示すように、素管を一旦円錐筒形の円形の底側形状に拡張し、端部2bの嵌合接続部21をダルマ形に変形する際に、円形部分が加圧されてダルマ形になるまで遷移して行く曲面部分に形成する。
その際、外管2の端口2c側の左右が陥没されるので壁面内の面積が嵌合接続部21へ向かって減少し、陥没されずに円形のまま残る部分が次に繋がる主壁部24の基端の最大口径部分24aとなる。
即ち、下半分の絞り部26ではシール用膨張部13に向かって左右の断面積が減少し、上半部の絞り部27では接続端末31の端口31bに向かって左右の断面積が減少する。
【0035】
なお、前記従壁部23に臨む接続管3の端口3bは、図1に示すように、誘導通路53内へ突出しないようにシール用膨張部13の内側側壁よりも僅かに後退させて配設することで、流体がここを流通する際に、接続管3の管口部分における大きな乱流を発生させずに誘導通路53へ円滑に流通可能となる。
【0036】
前記主壁部24は、図4に示すように、基端は、最大口径αとなって従壁部23に繋がり、末端は、テーパー状に先細りして、内管1の凹凸部11の頂部11aに接する円と同径の最小口径βとなる。
主壁部24は、テーパー状とした管の中心線を上側の接続管3側に向けて傾斜させることで、図6の(ロ)の輪切り断面で示した最大口径部分24aでは、内部の誘導通路53は接続管3に近い上側が広く、接続管3から離れた下側が狭くなる。
そして、主壁部24の中間部位でも、図6の(ハ)に示すように、口径は小さくなるものの内管1の凹凸部11との間に上側が広く、下側が狭い誘導通路53が形成される。
【0037】
第1例では、図6の(ロ)に示すように、主壁部24の下側のシール用膨張部側の内壁28は最下部では内管1の凹凸部11の頂部11aに接しているので、内管1の中心Pからの主壁部24の壁面の距離Lと、内管1の半径Rとの距離の差はない。
そして、シール用膨張部側の内壁28の最下部から左右の上側に行くに従って、内管1の中心Pからの主壁部24の壁面の距離Lと内管1の半径Rとの距離の差は大きくなる。そして、最上側では両者の距離の差が最大となる。
従って、該流体誘導部22は、流体が直接流入する接続管3の端口3前の近い位置で最大口径αとなって、その距離の差が最大となり、その広くなった空間内に接続管3の口径の大きさに応じて必要とされる流量が円滑に流通可能となる。
そして、接続管33の端口3bから下側へ最も遠い旋回流路51cの旋回流路の端口52cでは、旋回流路の端口52cから下側へ離れて行くに従って狭まるが、旋回流路51cの流路途中が左右側方に旋回して左右の開いた円形内の空間に続くので、下側の旋回流路51cの旋回流路の端口52c部分はシール用膨張部13で塞がれていても、流通の滞るデッドスペースはできず、流体は旋回流路の端口52cまで流通可能となる。
【0038】
また、軸方向では、主壁部24の壁面の距離Lと内管1の半径Rとの距離の差は、最大口径部分24aから末端に向かって漸減して行き、その末端の最小口径部分24bで内管1の中心Pから凹凸部11の頂部11aに接する円と同一径となり、図6の(二)に示すように、その距離の差がなくなる。
そして、主壁部24の全長に亘って渡って、誘導通路53に臨む下側の旋回流路51b、51cに、流体が最大口径部分24aの広い左右の誘導通路からテーパー状の壁面に絞り込むように誘導されて流通する。
【0039】
上記特許文献1では、流通案内部の先端部に突き当たったり、斜めに屈折したりして複雑な方向変換が起こり各所に乱流を発生させるが、これに対して本発明では、誘導通路53の広い接続管側から流体が流入して凹凸部間の旋回流路へ流出するまで流体誘導部22が旋回流路の全周を略円形に囲繞し、流体が最大口径部分24aの広い左右の誘導通路から隙間が漸減するテーパー状の壁面によって絞り込むように収束されて行き、その間、殆ど乱流を発生させずに円滑に流通させることができる。
【0040】
そして、流体誘導部22は、誘導通路53の左右の空間が過度に狭くなるのを避けるため、最大口径部分24aを内管1の凹凸部11の頂部11aの外接円と複数本の旋回流路51の断面積の総和よりも大きな断面積を有する略円形とする。
このため、従壁部23と主壁部24の内部の誘導通路53には流体が円滑に流通するに必要な一定の容積が保持される。
前記主壁部24内の誘導通路53の下側は下に行くに従って徐々に狭くなるが、主壁部24の内壁の軸方向部位が内管2の各凹凸部11の頂部11aに対して一列に接している場合であっても、接続管3前の流体が直接流入する広い上側から円形に膨らんだ誘導通路53の左右の空間を通って下側へ供給され、又流体を受け入れるよう誘導通路53に臨んで開いた旋回流路51は螺旋状に旋回することで最下部から上側の左右の空間に続いて斜めに開いているので、下側は上側に較べて少ない流入量で済み、誘導通路53はより狭くすることができる。
このように、誘導通路53は流量が多く必要な上側の接続管3側はより広く、少ない流量で済む下側の接続管3から遠い側は徐々に狭くなるよう形成することで、二重管の継手部分の外径を小さくコンパクト化することが可能となる。そして、使用場所における組み付けのレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0041】
例えば、前記主壁部24は、最大口径部分24aである最大口径α部分の口径を22mmとすると、その円形の断面積が約414mmとなる。
凹凸部11のある内管の外径の断面積238mmであるので、最大口径α部分では差し引き176mmの断面積となる誘導通路53ができる。
この断面積は、各凹凸部間の各旋回流路51a、51b、51cの断面積の総和が28mmに対して約6倍の断面積となり、流体を円滑に流通させるに充分な断面積である。
なお、図3では主壁部24の輪郭が略円形を成しているが、その略円形の形状は、円形に近い真円、楕円、長円等を含ものである。
【0042】
又、図3に示すように、前記従壁部23と主壁部24の境界である最大口径αとなる部分を、シール用膨張部13と接続管3の外径の合計値よりも小さな口径とすれば、外管2と接続管3の外周に外接する円形内に全て納まって外径をコンパクト化でき、使用場所の配管が厳しい状況に対応して使用できるようにレイアウトの自由度をより高めることが可能となる。
【0043】
なお、流体誘導部22の主壁部24の末端の最小口径部分24b付近では、誘導通路53は徐々に狭くなる。このため、最小口径部分24bが嵌合接続部21に近く、且つ主壁部24が過度に短く、内部に形成される誘導通路53の容積が過度に小さくなる場合には、一部の旋回流路51cへ繋がる流路が極めて狭小となり、その旋回流路51cでは流体が流通し難くなるので好ましくない。
例えば、凹凸部11の横幅を9mmとした場合では、前記流体誘導部22の軸方向の長さを4mm程度と短くすると、その部分の輪切り断面積は大きくても水平断面積が極めて小さくなり、誘導通路53が上下方向に偏平となってこの部分の容積が過度に小さくなり、又主壁部24の壁面が急傾斜することによって、接続管3内を直進したる流体がその急傾斜壁に突き当たり、流れる方向の急激な方向変換により円滑な流通が阻害されることとなってしまうので好ましくない。
また、嵌合接続部21から主壁部の末端の最小口径部分24bが遠く離れ、形成される誘導通路53が不必要に長い場合には、流体の流れは阻害されないが、加工範囲が広く製造が困難となるだけではなく、嵌合接続部21から遠くなる程レイアウトする際に屈曲できる範囲がより狭まってしまい、又凹凸部11の頂部11aと外管2の間に横隙が長く形成されて各旋回流路の独立性が損なわれ熱交換効率が低下することとなるので好ましくない。
即ち、主壁部24の軸方向の長さは短くても流通性は充分であるので無駄に長くする必要がなく、嵌合接続部21の長さは嵌合接続部21から螺旋状の凹凸部11を少なくとも1つは越え、3つを越えない程度の範囲とすることが好ましい。
【0044】
この主壁部24の最小口径部分24bの位置は、例えば、各部を上記例示の如く3本の凹凸部11を38ピッチにした場合には、上述の如く、誘導通路53の最大口径α部分では176mmの断面積であり、各旋回流路51a、51b、51cの断面積の合計28mmに対して、主壁部24の中間部における誘導通路53の断面積が、最大口径α部分の半分の約88mmとなる。このため、主壁部24の最小口径部分24bの位置は、嵌合接続部21から螺旋状の凹凸部11を少なくとも1つは越える場合から3つを越えない場合の数値の9mmから27mmと、極めて短くすることができる。
第1例の図1では主壁部24の末端の最小口径部分24bが嵌合接続部21から凹凸部11の2つを越えない程度である態様を示し、これより主壁部24の長さを短くできる第2例の図7では、主壁部24の主壁部の末端の最小口径部分24bの位置が嵌合接続部21から凹凸部11の1つを越えた程度である態様を示している。
このように、主壁部24の最小口径βとなる最小口径部分24bの位置は、熱交換通路5を形成する各旋回流路51a、51b、51cに流体が接続管3の端口3bから誘導通路53を介して過不足なく円滑に流通可能な位置となるように調節して決めることができる。
【0045】
この主壁部24内で流体は螺旋状の凹凸部11間の旋回流路51内を旋回でき、その凹凸部11間の旋回流路51は最大口径部分24a側では円周方向に大きく広かった誘導通路53内の空間に臨み、末端の最小口径部分24b側では空間が狭くなる。
誘導通路53は最大口径部分24aで断面積が最大となるが、そこでの流体の容量に余裕があるので、主壁部24は不必要に長くはしない。
そして、その狭い末端部分が軸方向に短くても各旋回流路51a、51b、51c全てに流体が流通されるので、最小口径部分24bの位置は凹凸部11の頂部11a間の幅が同じであれば凹凸部の本数が3本以上であっても変わらない。
【0046】
この点で、本発明の改良対象である上記特許文献1では、凹凸部の本数が多くなればなるほど各凹凸部に届くように筒状の流通案内部の長さを増加させなければなかったが、本発明ではその必要がなく、テーパー状の主壁部24の基端の口径を最大な円形に拡張したことで複数の全ての旋回流路51への円滑な流通性が確保され、そのことで、上記特許文献1とは逆に、継手部分の軸方向の長さを短くすることが可能となる。
そして、例えば、自動車の空調機での使用では、熱交換系の配管の設計は、通常他の装置に較べて優先順位が低く、エンジン等各種装置のレイアウトが決まった後に、残された狭く複雑な空間に配管のルートが決められることが多く、そのため、熱交換用の二重管は数ミリ単位で長さぎりぎりまで屈曲しなければ納まらないことがある。
このような状況にあって、本発明では、屈曲できない継手部分の流体誘導部22を短くすることで屈曲可能範囲を広げ、又継手部分の外径を小さくすることで限られた空間にあっても多様に対応できるレイアウトが可能となる。
【0047】
前記流体誘導部22内の流体は、インレット方向の流れとアウトレット方向の流れとが逆に流れる。
インレット方向へは、図1及び図2に示すように、上側では流体は接続管3端口3bから軸方位に進み、主壁部24によって絞られるようその末端の最小口径部分24bから全て各旋回流路51内に進むこととなる。一方、下側では、図6の(ロ)及び(ハ)の矢印で示すように、接続管3端口3bから入った流体は下側に向かって徐々に狭くなる誘導通路53を左右に分かれて下側へ回り込み、各旋回流路51b、51cへ分かれて徐々に収束されて行く。
この結果、図6の(二)に示すように、誘導通路53を通って各旋回流路51a、51b、51cに全て円滑に流出することとなる。
アウトレット方向へは、螺旋状の凹凸部11間の各旋回流路51を旋回しつつ進行してきた流体が、各旋回流路51a、51b、51cに臨んで開放された誘導通路53内へ流出する。
更に円周方向に広がった誘導通路53を壁部24の旋回しつつ接続管3の端口3bに向かって前進し、従壁部23の漸閉面に誘導されて接続管3の端口3bへと収束されて出て行く。
従って、インレットとアウトレットのいずれの方向へも円滑に流通することとなる。
【0048】
以上が本発明の第1例であり、次に、上記第1例とは別の形態である第2例について説明する。
図7図9は第2例を示すものである。
第2例は、基本となる継手構造は上記第1例と同様であるものの 上記第1例では、内管1の螺旋状の凹凸部11の端部11bがシール用膨張部13に接しているが、第2例では、図7及び図8に示すように、内管1のシール用膨張部13と凹凸部11の端部11bとの間を僅かに離している。この離した部分には凹凸部11の凹部12の底面に溝底が繋がる環状溝4が形成され、該環状溝4の内部には、誘導通路53の一部を成す環状空間55が形成される。
なお、第2例では、図7及び図9の(ロ)に示すように、外管2の主壁部24の内壁に内管2の凹凸部11の頂部11aが下側で軸方向に一列に接しており、この点は上記第1例と同様である。
【0049】
前記環状溝4の溝底と螺旋状の凹凸部11間の凹部12の底面とは、図7及び図8に示すように、素管の壁面として段差無く繋がっている。このため凹凸部11の端部11b間の旋回流路の端口52が環状溝4の溝底に接して環状空間55から誘導通路53内に流体の流路がそのまま直接的に接続される。
【0050】
該環状溝4は、溝幅を大きくするほど前記環状溝4内の環状空間55の容量が増えて流体が流通し易くなる。
しかし、環状溝4の溝底は平坦的であるので、その溝幅を大きくすればするほど流体からの圧力に対する管壁の強度が低下して変形や圧潰され易くなってしまう。そして変形してしまうと内管1内の流体の通路が狭小化して流体が流れ難くなってしまうという不具合を生じることとなる。
このため、本発明では環状溝4を極めて狭い幅とし、最大でも内管1の一つの凹凸部11間の溝幅よりも狭い溝幅とすることが好ましい。このような狭い溝幅であると、凹凸部11の端部11bとシール用膨張部13の側部と接近して環状溝4の両側に立ち上がり、その立ち上がり面がリブ構造の如く作用して溝底の強度低下が起こらなくなる。
例えば、凹凸部11間の凹部12の底の幅を4mmとした場合、環状溝4の溝底幅は4mm程度までとし、凹凸部11の高さを2mmとし、シール用膨張部13の高さを2mmとした場合、両側に形成した2mmの立ち上がった壁面で環状溝4が強化される。
【0051】
このような環状溝4を設けるのは、二重管のレイアウトの自由度が更に大きくなるよう主壁部24をより短くするためである。
誘導通路53に臨んで下側に開く旋回流路の端口52cは、上側に開く旋回流路の端口52aよりも誘導通路53が狭くなるので流通性が劣る傾向がある。従って、主壁部24の長さを短くするには、流通性が劣る下側に開く旋回流路の端口52cの方への流通性を高めれば効果的に改善されることとなる。
第2例では、図9の(イ)及び(ロ)に矢印で示したように、流体は接続管3側から環状溝4内の環状空間55の下側へ回り込むように下降し、その流体は環状空間55から下側の旋回流路51cの端口52cを通過して相当な流量が旋回流路51cへ流入する。
この環状空間55に流通する下側の旋回流路51cへの流量と、誘導通路53に臨む凹凸部11の上側の頂部11a側から旋回流路に流入する量とを合計すれば、全ての旋回流路51a、51b、51cへより多くの流量の流体が流通可能となる。
【0052】
例えば、第1例では環状溝4がなくて主壁部24の末端が嵌合接続部21から15mm程度離れた位置にあったものを、これと同程度の流通性能を得るのに、第3例では環状溝4の溝幅を凹凸部11の凹部12の底幅と同じ4mmとした場合には、主壁部24の末端の最小口径部分24bを嵌合接続部21から1本の旋回流路51の幅だけ離れた9mm程度の位置にまで短縮させることが可能となる。
【0053】
次に、前記第1例及び第2例とは別の形態である第3例について説明する。
図10図12は第3例を示すものである。
第3例では、図10に示すように、主壁部24の最大口径部分24aと最小口径部分24bとの間の下側の内壁が凹凸部11の頂部11aから離れるようテーパー状に管径を下側に拡張して拡大部25が形成され、該拡大部25の内部には、誘導通路53の一部を成す開拡空間55が形成される。
この開拡空間54により主壁部24の内壁と内管1の凹凸部11の頂部11aとの間に流体が流量を増して流通可能となる。
上記第1例及び第2例が、主壁部24の下側の壁面に内管1の凹凸部11の頂部11aが軸方向に一列に並ぶように接するものなので、この点で第3例は上記第1例及び第2例とは異なるが、この他の基本となる継手構造は上記第1例と同様である。
【0054】
又、第1例では、誘導通路53が下側に向かうに従って空間が狭くなるので凹凸部11の頂部11aを越えて流れる量が減少して行き、最下側では主壁部24の下側の壁面が凹凸部11の頂部11aと接触することで誘導通路53の隙間は殆どなくなってしまう。
しかし、凹凸部11の頂部11a間の旋回流路51c自体は、流路の断面積は全く減少せずに接触部分の両側へ斜めに連通しているので、旋回流路51cの流体は充分流通させることができる。
第3例では、その誘導通路53の下側部分を広げた拡大部25を設ける。この結果、主壁部24内の最下側からも流体が凹凸部11の頂部11aを越えて開拡空間54内に流通可能となる。
この第3例では、誘導通路53の下側に形成される開拡空間54から流体が多く流通できるため、この拡大部25の拡張の大きさに応じて、第1例よりも主壁部24の軸方向の長さを短くすることが可能となる。
そして、継手部分全体をより短くすることで二重管の組み付けのレイアウトの自由度をより高めることが可能となる。
拡大部25内に開拡空間54がある誘導通路53の断面は、図12の(イ)及び(ロ)に示すように、基本的には全長を円形とするものであるが、下側を拡張するので、円形に近い楕円形や長円形等の真円ではない円形とすることもできる。
【0055】
前記拡大部25は、主壁部24の下側に下側の旋回流路51cと流体が流れ易くなるように開拡空間54を設けるものであり、図11に示すように、拡大部25の範囲は下側半分程度とする。
そして、その拡張する内管1からの高さは、下側の旋回流路51cの断面積が得られる凹凸部11の凹部12から頂部11aまでの高さと同程度以下の小さい距離で充分である。この高さで、拡大部25内に開拡空間54のある誘導通路53の断面積は各旋回流路51b、51cの総計した断面積をより大きいので、流体の充分な流通性が確保できる。
【0056】
第3例では、図12の(イ)に示すように、拡大部25の両側の拡張基端部25aと拡張末端部25bの両端部は拡張による段差部分を緩傾斜にして乱流を発生させ難くする。
この結果、下側の流体の流通性が改善され、主壁部24の長さを第1例よりもさらに短くすることが可能となる。
なお、口径の拡張により継手の径が下側に僅かに大きくなるとしても、その口径の増加は極めて僅かであるので径方向におけるレイアウトの自由度には殆ど影響なく、それよりも継手部分を軸方向により短くすることで二重管の組み付けレイアウトの自由度を更に広げることが可能となる。
例えば、凹凸部11の高さを2mmとし、開拡空間54の幅をこれと同じ2mmとする。主壁部24の最大口径部分24aの口径を第1例では22mmとすると、この第3例では、最大口径部分24aは下方へ2mm拡大されて24mmと僅かに拡大される。そして嵌合接続部21から主壁部24の末端までの距離を第1例では15mmとすると、この第3例では嵌合接続部21から1本の旋回流路51の幅だけ離れた9mm程度の位置にまで短縮させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、自動車の空調機の熱交換器の他に、家庭用や産業用の各種熱交換装置の熱交換器として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 内管
1a 外壁
11 凹凸部
11a 頂部
11b 端部
12 凹部
13 シール用膨張部
2 外管
2a 内壁
2b 端部
2c 端口
21 嵌合接続部
22 流体誘導部
23 従壁部
24 主壁部
24a 最大口径部分
24b 最小口径部分
25 拡大部
25a 拡大基端部
25b 拡大末端部
26 絞り部
27 絞り部
28 シール用膨張部側の内壁
3 接続管
3a 端部
3b 端口
31 接続端末
31a 異形形状部分
31b 凹面部
4 環状溝
5 熱交換通路
51 旋回流路
51a、51b、51c 旋回流路
52 旋回流路の端口
52a、52b、52c 旋回流路の端口
53 誘導通路
54 開拡空間
55 環状空間
6 ろう材
a 接続管端部の軸方向
b 二重管の軸方向
α 最大口径
β 最小口径
P 内管の中心
R 内管の凹凸部の頂部に接する円の半径
L 流体誘導部の壁面の内管の中心からの距離


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12