(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】棒材供給機
(51)【国際特許分類】
B23B 13/02 20060101AFI20220412BHJP
B23B 13/12 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B23B13/02 B
B23B13/12 Z
(21)【出願番号】P 2019536378
(86)(22)【出願日】2017-08-15
(86)【国際出願番号】 JP2017029363
(87)【国際公開番号】W WO2019035179
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507351850
【氏名又は名称】育良精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 清
(72)【発明者】
【氏名】曽根 栄二
(72)【発明者】
【氏名】中里 幸司
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-155603(JP,A)
【文献】特開2017-094405(JP,A)
【文献】特開2006-007416(JP,A)
【文献】特開平09-019803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/02
B23B 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材加工機に設けられたチャックに対して
短尺の棒材を供給する棒材供給機であって、
前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、
前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、
を備え、
前記案内部材自体が、前記チャックの軸線方向に移動可能となっており、前記棒材加工機の主軸部
の後端部に当接可能かつ離反可能となっており、
前記送り部材は、前記案内部材と前記主軸部
の後端部とが当接している状態で前記棒材の後端部を押し込むことで、当該棒材を所定の位置まで送り込
んで前記棒材加工機による加工を可能にし、且つ、当該棒材の当該加工の最中に次の棒材を所定の待機位置まで送り込むようになっている
ことを特徴とする棒材供給機。
【請求項2】
前記案内部材と前記主軸部
の後端部とが当接している状態を検出可能なセンサ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の棒材供給機。
【請求項3】
前記案内部材は、前記案内部材と前記主軸部
の後端部とが当接している状態で、前記主軸部と連動して前記チャックの軸線方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の棒材供給機。
【請求項4】
前記案内部材及び/または前記主軸部
の後端部は、当該案内部材と当該主軸部
の後端部とを一時的に連結するための連結部を有している
ことを特徴とする請求項3に記載の棒材供給機。
【請求項5】
棒材加工機に設けられたチャックに対して
短尺の棒材を供給する棒材供給機であって、
前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、
前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、
を備え、
前記案内部材自体が、前記チャックの軸線方向に移動可能となっており、前記棒材加工機の主軸部
の後端部に対して所定距離未満に近接可能かつ前記所定距離以上に離反可能となっており、
前記送り部材は、前記案内部材と前記主軸部
の後端部とが前記所定距離未満に近接された状態で前記棒材の後端部を押し込むことで、当該棒材を所定の位置まで送り込
んで前記棒材加工機による加工を可能にし、且つ、当該棒材の当該加工の最中に次の棒材を所定の待機位置まで送り込むようになっている
ことを特徴とする棒材供給機。
【請求項6】
前記案内部材と前記主軸部
の後端部とが前記所定距離未満に近接された状態を検出可能なセンサ
を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の棒材供給機。
【請求項7】
前記所定距離は、設定変更可能である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の棒材供給機。
【請求項8】
前記所定の位置は、設定変更可能である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の棒材供給機。
【請求項9】
前記案内部材上に棒材を移載する棒材移載装置が、給材機の一部として設けられており、
前記案内部材も、前記給材機の一部として設けられており、
前記案内部材は、前記給材機から取り外し可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の棒材供給機。
【請求項10】
前記案内部材は、前記棒材加工機の一部として設けられており、前記棒材加工機から取り外し可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の棒材供給機。
【請求項11】
前記案内部材は、前記チャックの軸線方向に対する高さが変更可能である
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の棒材供給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤等の棒材加工機の主軸部に棒材を給送するための棒材供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、主軸移動型棒材加工機の主軸部に対して、送り部材(送り矢)によって棒材を給送する棒材供給機が知られている。送り部材は、一般的に、モータによって回転駆動されるスプロケットに巻き掛けられた無端チェーンに連結されている。
【0003】
送り部材が無端チェーンの走行に伴って前方に移動することで、給材機において送り部材の軌道上に移載された棒材が棒材加工機に向かって押し出され、棒材加工機内の待機位置に至る。その後、先行する棒材の加工が終了すると、待機位置の棒材が更に送り部材によって押し出されて棒材加工機のチャックによって把持される。その後、例えば主軸部が前後移動しながら棒材が加工される。
【0004】
このように次の棒材の待機位置を設けておくことで、先行する棒材の加工終了時から次の棒材の加工開始時までの時間を短縮することができる。
【0005】
なお、主軸部は、加工の際に前後移動することがある。このため、
図12に示すように、給材機104と主軸部102との間には、当該前後移動の最大ストロークSTに対応した隙間Gが設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年では、棒材加工機において、短尺の棒材(長さ30~180mm程度)が加工されることもある。前記隙間Gよりも短尺の棒材103を主軸部102に受け渡す際には、
図13に示すように、棒材の加工終了毎に主軸部102を後退させ、主軸部102の側から主軸延長パイプ又はVレール111を給材機104側に延伸して、前記隙間Gを狭めるという工程が必要となっている。このため、棒材103の加工の最中に次の棒材103を棒材加工機内の待機位置にまで給送しておいてスループットを向上させる、ということが実現できていない。
【0007】
本発明は、以上の背景に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、短尺の棒材を主軸部に受け渡す際においても、棒材の加工終了毎に主軸部を後退させる必要がなく、棒材の寸法や棒材加工機のタイプに合わせた個別の対応が不要な棒材供給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、棒材加工機に設けられたチャックに対して棒材を供給する棒材供給機であって、前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、を備え、前記案内部材自体が、前記チャックの軸線方向に移動可能となっており、前記棒材加工機の主軸部に当接可能かつ離反可能となっており、前記送り部材は、前記案内部材と前記主軸部とが当接している状態で前記棒材の後端部を押し込むことで、当該棒材を所定の位置まで送り込むようになっていることを特徴とする棒材供給機である。
【0009】
本発明によれば、案内部材自体がチャックの軸線方向に移動可能で主軸部に当接可能となっているため、従来のように棒材の加工終了毎に主軸部を後退させて主軸延長パイプ又はVレールを延伸させるという必要がない。このため、例えば棒材の加工の最中に次の棒材を棒材加工機内の待機位置(所定の位置)にまで給送することができる。
【0010】
また、本発明による棒材供給機は、前記案内部材と前記主軸部とが当接している状態を検出可能な接触を確認するセンサを更に備えることが好ましい。この場合、当該センサの検出情報を活用することによって、案内部材と主軸部との間から短尺の棒材が落下してしまうことを確実に防止することができる。
【0011】
また、前記案内部材は、前記案内部材と前記主軸部とが当接している状態で、前記主軸部と連動して前記チャックの軸線方向に移動可能であることが好ましい。この場合、案内部材と主軸部とが当接している状態を、効果的に維持することができる。
【0012】
例えば、リニアスケールを使用して、主軸部の移動に対して案内部材を同期移動させてもよい。あるいは、案内部材を主軸部に向けて付勢させておいて、案内部材が主軸部から力を受ける時に当該力を付勢力から控除する機構を採用してもよい。
【0013】
あるいは、前記案内部材及び/または前記主軸部は、当該案内部材と当該主軸部とを一時的に連結するための連結部を有していてもよい。具体的には、主軸部と案内部材とをバネ等を介して一時的に連結させてもよい。あるいは、主軸部と案内部材とをボールキャッチやマグネット等を介して一時的に連結させてもよい。
【0014】
また、本発明は、棒材加工機に設けられたチャックに対して棒材を供給する棒材供給機であって、前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、を備え、前記案内部材自体が、前記チャックの軸線方向に移動可能となっており、前記棒材加工機の主軸部に対して所定距離未満に近接可能かつ前記所定距離以上に離反可能となっており、前記送り部材は、前記案内部材と前記主軸部とが前記所定距離未満に近接された状態で前記棒材の後端部を押し込むことで、当該棒材を所定の位置まで送り込むようになっていることを特徴とする棒材供給機である。
【0015】
本発明によれば、案内部材自体がチャックの軸線方向に移動可能で主軸部に対して所定距離未満に近接可能となっているため、従来のように棒材の加工終了毎に主軸部を後退させて主軸延長パイプ又はVレールを延伸させるという必要がない。このため、例えば棒材の加工の最中に次の棒材を棒材加工機内の待機位置(所定の位置)にまで給送することができる。
【0016】
また、本発明による棒材供給機は、前記案内部材と前記主軸部とが前記所定距離未満に近接された状態を確認するセンサを更に備えることが好ましい。この場合、当該センサの検出情報を活用することによって、案内部材と主軸部との間から短尺の棒材が落下してしまうことを確実に防止することができる。
【0017】
また、前記所定距離は、設定変更可能であることが好ましい。これによって、棒材の長さに合わせて所定距離を任意に調整することができる。
【0018】
また、以上の各発明において、前記所定の位置は、設定変更可能であることが好ましい。これによって、待機位置を任意に調整することができる。あるいは、前記所定の位置は、前記案内部材上の位置に設定されてもよい。
【0019】
また、以上の各発明において、前記案内部材上に棒材を移載する棒材移載装置が、給材機の一部として設けられており、前記案内部材も、前記給材機の一部として設けられており、前記案内部材は、前記給材機から取り外し可能となっていることが好ましい。この場合、例えばメンテナンス作業等を実施する際において、案内部材を取り外すことによって、より広い作業スペースを確保することができる。
【0020】
あるいは、以上の各発明において、前記案内部材は、前記棒材加工機の一部として設けられており、前記棒材加工機から取り外し可能となっていることが好ましい。この場合も、例えばメンテナンス作業等を実施する際において、案内部材を取り外すことによって、より広い作業スペースを確保することができる。
【0021】
また、前記案内部材は、前記チャックの軸線方向に対する高さが変更可能であることが好ましい。この場合、棒材の直径の変更に対応することができる。前記案内部材がパイプ状のものであれば、内径が変更可能となっていてもよい。この場合も、棒材の直径の変更に対応することができる。
【0022】
また、本発明は、棒材加工機に設けられたチャックに対して棒材を供給する棒材供給機であって、前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、前記案内部材上において棒材の先端部を停止させるストッパと、前記送り部材の移動を制御する送り制御部と、を備え、前記送り制御部は、前記ストッパに前記送り部材を直接当接させた状態と、前記ストッパによって先端部を停止された棒材の後端部に前記送り部材を当接させた状態と、を比較することによって、当該棒材の長さを測定できるようになっていることを特徴とする棒材供給機である。
【0023】
本発明によれば、棒材を供給する一連の動作の途中で、当該棒材の長さを簡単に測定することができる。これにより、主軸部内の所定の位置に、より高い位置決め精度で棒材を給送することが可能となる。
【0024】
本発明においては、前記ストッパによって先端部を停止された棒材の上面を押さえ付ける浮き上がり防止片を更に備え、前記送り制御部は、前記ストッパに前記送り部材を直接当接させた状態と、前記ストッパによって先端部を停止され前記浮き上がり防止片によって上面を押さえ付けられた棒材の後端部に前記送り部材を当接させた状態と、を比較することによって、当該棒材の長さを測定できるようになっていることが好ましい。
【0025】
浮き上がり防止片によって棒材の上面の浮き上がりを防止することによって、棒材の長さをより正確に測定することができる。
【0026】
また、本発明においては、前記送り制御部によって測定された棒材の長さが所定の範囲外である場合にアラームを発するアラーム装置を更に備えることが好ましい。この場合、所望で無い寸法の棒材が誤って供給されてしまうことを、事前に効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、案内部材自体がチャックの軸線方向に移動可能で主軸部に当接可能となっているため、従来のように棒材の加工終了毎に主軸部を後退させて主軸延長パイプ又はVレールを延伸させるという必要がない。このため、例えば棒材の加工の最中に次の棒材を棒材加工機内の待機位置(所定の位置)にまで供給することができる。
【0028】
あるいは、本発明によれば、棒材を供給する一連の動作の途中で、当該棒材の長さを簡単に測定することができる。これにより、主軸部内の所定の位置に、より高い位置決め精度で棒材を給送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る棒材供給機の概略正面図である。
【
図2】
図1の棒材供給機の要部の概略正面図である。
【
図3】
図2の案内部材を主軸部に当接させた状態を示す概略図である。
【
図4】接触を確認するセンサの搭載例を示す概略図である。
【
図5】案内部材を主軸部に向けて移動させる機構例を示す概略図である。
【
図6】ボールキャッチの搭載例を示す概略図である。
【
図7】待機位置まで棒材を送り込んだ状態を示す概略図である。
【
図8】案内部材の取り外しを説明するための概略断面図である。
【
図9】案内部材の高さ調整を説明するための概略断面図である。
【
図10】棒材の長さ測定を説明するための概略断面図である。
【
図11】大径部と小径部とを有する素材の例を示す概略図である。
【
図12】従来の棒材供給機の隙間を説明するための概略図である。
【
図13】従来の棒材供給機での短尺の棒材の受け渡しを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る棒材供給機1の概略正面図である。本実施形態の棒材供給機1は、棒材加工機2に設けられたコレットチャック23(チャックの典型例)に対して棒材3を供給する棒材供給機である。
図1において、41は操作パネルであり、22は主軸部カバーである。
【0032】
図2は、
図1の棒材供給機1の要部の概略正面図であり、
図3は、
図2の案内部材11を主軸部21に当接させた状態を示す概略図である。
図2及び
図3に示すように、送り部材としての送り矢12が、コレットチャック23(
図1参照)の軸線方向に移動可能に設けられ、棒材3の後端部32をコレットチャック23へ向けて押し込むようになっている。
【0033】
そして、送り矢12によって押し込まれる棒材3をコレットチャック23の軸線方向に摺動させる(案内する)べく、案内部材11が設けられている。
図1乃至
図3に示すように、本実施形態の案内部材11は、それ自体が、コレットチャック23の軸線方向に移動可能となっている。そして、案内部材11は、主軸部21の後端部21aに当接可能かつ離反可能となっている。案内部材11は、例えばレール(例えばVレール)またはパイプからなる。
【0034】
また、送り矢12が後退位置にある時に案内部材11上に棒材3を移載する棒材移載装置42が設けられている(
図2参照)。棒材移載装置42は、給材機棚部から棒材3を1本ずつ案内部材11上の所定位置に移載するようになっている。
【0035】
そして、送り矢12は、案内部材11と主軸部21の後端部21aとが当接している状態で、案内部材11上に移載された棒材3の後端部32を押し込むことで、当該棒材3を所定の位置まで送り込むようになっている(
図7を参照して後述する)。
【0036】
また、本実施形態の棒材供給機1は、案内部材11と主軸部21の後端部21aとが当接している状態を検出可能なセンサ5を更に備えている。
図4に示すように、本実施形態の接触センサ5は、案内部材11の先端部から垂下する第1センサ要素51と、主軸部21の後端部21aから垂下する第2センサ要素52と、から構成されていて、両者間の接近ないし距離を適宜の方法で検出するようになっている。もっとも、他のタイプの接触検知センサを採用することも可能で、センサ要素が主軸部カバー22等に設置されることもあり得る。
【0037】
また、本実施形態の案内部材11は、当該案内部材11と主軸部21の後端部21aとが当接している状態で、主軸部21と連動してコレットチャック23の軸線方向に移動可能となっている。本実施形態では、
図5に示すように、エアーシリンダ13によって、案内部材11を主軸部21に向けて移動させる付勢力が付与されるようになっており、且つ、精密レギュレータ14が、案内部材11が主軸部21から力を受ける時に当該力を前記付勢力から控除するようになっている。
【0038】
本実施形態の案内部材11は、主軸部21の後端部21aと当接した後、主軸部21との連動を継続するようになっている。しかしながら、案内部材11は、棒材の受け渡しが終了した時点で主軸部21から離反するようになっていてもよい。
【0039】
その他、
図5において、15は、フィルタレギュレータであり、16は、3ポート電磁弁であり、17は、エアーシリンダ13のロッド13aの速度を制御するためのスピードコントローラである。
図5の例では、圧力P1が圧力P2より常に大である(P1>P2)ように調整される。
【0040】
図5を用いて説明した付勢機構の代わりに、あるいは、当該付勢機構と組み合わせて、主軸部21の後端部21aと案内部材11とは、バネ等を介して一時的に連結されてもよいし、あるいは、ボールキャッチないしマグネット等を介して一時的に連結されてもよい。ボールキャッチとは、
図6に示すように、球状の突部と、球孔状の凹部と、の嵌合を利用した一対の結合要素である。
【0041】
次に、
図3及び
図7を参照しながら、本実施形態の作用について説明する。
【0042】
前述のように、本実施形態では、
図3に示すように案内部材11と主軸部21の後端部21aとが一旦当接した後、案内部材11は、主軸部21と連動してコレットチャック23の軸線方向に移動される。そのような連動状態が維持される間に、先行する棒材が加工される。
【0043】
そして、そのような加工の最中に、送り矢12が、棒材移載装置42によって案内部材11上に移載された次の棒材3の後端部32を押し込んで、
図7に示すように当該棒材3を所定の待機位置まで送り込む。
【0044】
その後、先行する棒材の加工が終了して、当該棒材がコレットチャック23から取り出された後、待機位置にて待機していた棒材3が更に送り矢12によって押し込まれ、コレットチャック23に把持されて、所望の加工に供される。
【0045】
以上のように、本実施形態の棒材供給機1によれば、案内部材11自体がコレットチャック23の軸線方向に移動可能で、主軸部21の後端部21aに当接可能となっていることにより、従来のように棒材3の加工終了毎に主軸部21を後退させて主軸延長パイプ又はVレール(
図12及び
図13参照)を延伸させるという必要がない。このため、棒材の加工の最中に次の棒材3を主軸部21内の待機位置(所定の位置)にまで供給することができる。
【0046】
このように次の棒材3の待機位置を設けておくことで、先行する棒材の加工終了時から次の棒材3の加工開始時までの時間を短縮することができる。待機位置は、主軸部21の内部のみならず、主軸部21の外部であってもよい。
【0047】
また、本実施形態の棒材供給機1によれば、案内部材11と主軸部21の後端部21aとの当接状態を検出可能なセンサ5が設けられているため、当該センサ5の検出情報を活用することによって、案内部材11と主軸部21との間から短尺の棒材3が落下してしまうことを確実に防止することができる。リニアスケール等によって主軸部21の動きに案内部材11の動きを同期させる場合には、当該同期状態を確認するセンサによって、センサ5の機能を代用させることができる。
【0048】
また、本実施形態の棒材供給機1によれば、案内部材11が、当該案内部材11と主軸部21の後端部21aとが当接している状態で、主軸部21と連動してコレットチャック23の軸線方向に移動可能となっているため、案内部材11と主軸部21とが当接している状態を効果的に維持することができる。これによっても、案内部材11と主軸部21との間から短尺の棒材3が落下してしまうことを確実に防止することができる。
【0049】
なお、送り矢12が棒材3を送り込む前記所定の位置は、設定変更可能であることが好ましい。これによって、「待機位置」を任意に調整することができる。更には、前記所定の位置は、案内部材11上に設定されてもよい。
【0050】
また、一般的に、棒材移載装置42は、給材機4の一部として設けられ、案内部材11も、給材機4の一部として設けられる。そして、案内部材11は、給材機4から取り外し可能となっていることが好ましい。
【0051】
案内部材11の取り外しは、エアーシリンダ13を含む関連要素の全体を取り外す態様も排除はされないが、
図8に示すように、エアーシリンダ13のロッド13aと案内部材11とを接続する支持部13bに対して、案内部材11(例えばVレールまたはパイプ)のみが取り外されるようになっていることが好ましい。後者の態様の方が、案内部材11の取り外し作業が容易である。例えば、案内部材11は、
図8に示すように、周知の皿ネジ13c等を用いて支持部13bに固定され得る。
【0052】
このように、案内部材11を取り外し可能に構成しておくことによって、例えばメンテナンス作業等を実施する際において、より広い作業スペースを確保することができる。
【0053】
もっとも、案内部材11は、主軸部21含む棒材加工機2の一部として設けられていてもよく、その場合も、案内部材11は、棒材加工機2から取り外し可能となっていることが好ましい。この場合も、例えばメンテナンス作業等を実施する際において、案内部材11を取り外すことによって、より広い作業スペースを確保することができる。更に、棒材移載装置42についても、棒材加工機2の側に設けられ得る。
【0054】
更に、案内部材11は、コレットチャック23の軸線方向に対する高さが変更可能であることが好ましい。例えば
図9に示すように、固定ブロック61に対する位置調整ボルト62の螺合位置を調整することによって、エアーシリンダ13を含む関連要素の全体の支持高さを調整することで、案内部材11の高さを変更することが可能である。これにより、供給される棒材3の直径の変更に容易に対応することができる。
【0055】
以上の実施形態において、案内部材11と主軸部21との間の互いの当接は、直接的なものに限定されず、中間部材を介した間接的なものも含む。また、リニアスケール等を利用して両者を連動させる場合には、両者が必ずしも当接した状態で連動する必要はなく、所望の短尺の棒材の受け渡しに支障がない程度に(所定距離未満に)両者が近接した状態で連動すればよい。また、両者の当接状態ないし近接状態は、常時維持されるようになっていてもよいが、棒材の受け渡し時に維持されれば足りる。また、「近接状態が維持される」とは、所望の短尺の棒材の受け渡しに支障がない程度に、両者間の距離が変動している場合をも含む。
【0056】
続いて、
図10は、棒材3の長さ測定を説明するための概略断面図である。
図10に示すように、本実施形態の棒材供給機1は、案内部材11上において棒材3の先端部31を停止させるストッパ71と、当該ストッパ71によって先端部31を停止された棒材3の上面33を押さえ付ける浮き上がり防止片72と、送り矢12の移動を制御する送り制御部19と、を更に備えている。
【0057】
ストッパ71は、
図10に示す作動位置と、棒材3の停止を解除する退避位置と、の間で移動可能に設けられている。同様に、浮き上がり防止片72も、
図10に示す作動位置と、棒材3の上面の押さえ付けを解除する退避位置と、の間で移動可能に設けられている。本実施形態では、ストッパ71と浮き上がり防止片72とが互いに固定されていて、それらの作動位置と退避位置との間の移動も一体的に行われるようになっているが、それぞれの移動が独立に行われるようになっていてもよい。なお、浮き上がり防止片72は、必ずしも必須ではない。例えば、棒材3が極めて短い場合等では、浮き上がり防止片72は不要である。また、浮き上がり防止片72は、取り外し可能であって、棒材3の直径に応じて変更ないし調整可能であることが好ましい。
【0058】
そして、送り制御部19は、ストッパ71に送り矢12を直接当接させた状態と、ストッパ71によって先端部31を停止され浮き上がり防止片72によって上面33を押さえ付けられた棒材3の後端部32に送り矢12を当接させた状態と、を比較することによって、当該棒材3の長さを測定できるようになっている。
【0059】
このような構成によって、棒材3を供給する一連の動作の途中で、当該棒材3の長さを簡単に測定することができる。これにより、主軸部21内の所定の位置に、より高い位置決め精度で棒材3を供給することが可能である。
【0060】
そして、送り制御部19に接続されたアラーム装置20が、送り制御部19によって測定された棒材3の長さが所定の範囲外である場合に、アラームを発するようになっている。これにより、所望で無い寸法の棒材が誤って供給されてしまうことを、事前に効果的に抑制することができる。
【0061】
更に、このような構成によって、棒材3の後端部32の形態に適した送り矢12の先端形状を採用することができる。すなわち、棒材3の後端部32が中心孔を有するような場合には、当該中心孔を保持する(いわゆる「内径チャック」)ような送り矢12の先端形状を採用することができる(ストッパ71が棒材3を停止させている状態で、送り矢12の先端形状をして当該中心孔を保持させることが可能である)。
【0062】
なお、短尺の棒材3の典型的な寸法例としては、長さ30~180mm程度、直径10~130mm程度である。さらに、本明細書における棒材3とは、直径が均一の素材に限定されず、例えば
図11に示すような大径部と小径部とを有する素材(素形材と呼ばれている)を含む。
本件出願の時点の特許請求の範囲は、以下の通りである。
[請求項1]
棒材加工機に設けられたチャックに対して棒材を供給する棒材供給機であって、
前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、
前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、
を備え、
前記案内部材自体が、前記チャックの軸線方向に移動可能となっており、前記棒材加工機の主軸部に当接可能かつ離反可能となっており、
前記送り部材は、前記案内部材と前記主軸部とが当接している状態で前記棒材の後端部を押し込むことで、当該棒材を所定の位置まで送り込むようになっている
ことを特徴とする棒材供給機。
[請求項2]
前記案内部材と前記主軸部とが当接している状態を検出可能なセンサ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の棒材供給機。
[請求項3]
前記案内部材は、前記案内部材と前記主軸部とが当接している状態で、前記主軸部と連動して前記チャックの軸線方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の棒材供給機。
[請求項4]
前記案内部材及び/または前記主軸部は、当該案内部材と当該主軸部とを一時的に連結するための連結部を有している
ことを特徴とする請求項3に記載の棒材供給機。
[請求項5]
棒材加工機に設けられたチャックに対して棒材を供給する棒材供給機であって、
前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、
前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、
を備え、
前記案内部材自体が、前記チャックの軸線方向に移動可能となっており、前記棒材加工機の主軸部に対して所定距離未満に近接可能かつ前記所定距離以上に離反可能となっており、
前記送り部材は、前記案内部材と前記主軸部とが前記所定距離未満に近接された状態で前記棒材の後端部を押し込むことで、当該棒材を所定の位置まで送り込むようになっている
ことを特徴とする棒材供給機。
[請求項6]
前記案内部材と前記主軸部とが前記所定距離未満に近接された状態を検出可能なセンサ
を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の棒材供給機。
[請求項7]
前記所定距離は、設定変更可能である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の棒材供給機。
[請求項8]
前記所定の位置は、設定変更可能である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の棒材供給機。
[請求項9]
前記案内部材上に棒材を移載する棒材移載装置が、給材機の一部として設けられており、
前記案内部材も、前記給材機の一部として設けられており、
前記案内部材は、前記給材機から取り外し可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の棒材供給機。
[請求項10]
前記案内部材は、前記棒材加工機の一部として設けられており、前記棒材加工機から取り外し可能となっている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の棒材供給機。
[請求項11]
前記案内部材は、前記チャックの軸線方向に対する高さが変更可能である
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の棒材供給機。
[請求項12]
棒材加工機に設けられたチャックに対して棒材を供給する棒材供給機であって、
前記チャックの軸線方向に移動可能に設けられ、棒材の後端部を前記チャックへ向けて押し込む送り部材と、
前記送り部材によって押し込まれる棒材を前記チャックの軸線方向に案内する案内部材と、
前記案内部材上において棒材の先端部を停止させるストッパと、
前記送り部材の移動を制御する送り制御部と、
を備え、
前記送り制御部は、前記ストッパに前記送り部材を直接当接させた状態と、前記ストッパによって先端部を停止された棒材の後端部に前記送り部材を当接させた状態と、を比較することによって、当該棒材の長さを測定できるようになっている
ことを特徴とする棒材供給機。
[請求項13]
前記ストッパによって先端部を停止された棒材の上面を押さえ付ける浮き上がり防止片を更に備え、
前記送り制御部は、前記ストッパに前記送り部材を直接当接させた状態と、前記ストッパによって先端部を停止され前記浮き上がり防止片によって上面を押さえ付けられた棒材の後端部に前記送り部材を当接させた状態と、を比較することによって、当該棒材の長さを測定できるようになっている
ことを特徴とする請求項12に記載の棒材供給機。
[請求項14]
前記送り制御部によって測定された棒材の長さが所定の範囲外である場合に、アラームを発するアラーム装置
を更に備えたことを特徴とする請求項12または13に記載の棒材供給機。
【符号の説明】
【0063】
1 棒材供給機
11 案内部材
12 送り矢(送り部材)
13 エアーシリンダ
13a ロッド
13b 支持部
13c 皿ねじ
14 精密レギュレータ
15 フィルタレギュレータ
16 3ポート電磁弁
17 スピードコントローラ
19 送り制御部
20 アラーム装置
2 棒材加工機
21 主軸部
21a 主軸部の後端部
22 主軸部カバー
23 コレットチャック
3 棒材
31 先端部
32 後端部
33 上面
4 給材機
41 操作パネル
42 棒材移載装置
5 接触確認用のセンサ
51 第1センサ要素
52 第2センサ要素
61 固定ブロック
62 位置調整ボルト
71 ストッパ
72 浮き上がり防止片
102 主軸部
103 棒材
104 給材機
111 主軸延長パイプまたはVレール