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特許7056977海藻変性ポリプロピレンスパンボンド不織布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】海藻変性ポリプロピレンスパンボンド不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20220412BHJP
   D01D 5/098 20060101ALI20220412BHJP
   D06C 15/08 20060101ALI20220412BHJP
   D01F 6/06 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
D04H3/16
D01D5/098
D06C15/08
D01F6/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020137409
(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2021038495
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】201910822451.6
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518407652
【氏名又は名称】中科紡織研究院(青島)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Sinotech Academy of Textile (Qingdao) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】80-Yi Siliu South Road, (5) #90, Room 210A, Shibei District, Qingdao city, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】黄 効華
(72)【発明者】
【氏名】黄 効謙
(72)【発明者】
【氏名】劉 宇
(72)【発明者】
【氏名】劉 潔
(72)【発明者】
【氏名】黄 効龍
(72)【発明者】
【氏名】甄 麗
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/140432(WO,A1)
【文献】特開平09-291479(JP,A)
【文献】特開2004-176230(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107974831(CN,A)
【文献】特開2018-140184(JP,A)
【文献】特開2007-091952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
D06M 13/00-15/715
D01F 1/00-6/96
D01F 9/00-9/04
D01D 1/00-13/02
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
D06C 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布中にアルギン酸塩を0.1~2質量%含有する海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法であって、
ポリプロピレンと、総質量の0.1~2%のアルギン酸塩とを横型二軸リボンミキサー中に入れ、40~80℃に加熱し、20~40分間混合した後、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及び酸化防止剤を添加し、180~190℃に加熱して、20~40分間混合し、混合物溶液を得るステップ1と、
ステップ1で得られた混合物溶液を制糸箱体に押し込み、紡糸、サイドブロー箱体による冷却、牽引を経て、繊維ウェブを得、得られた繊維ウェブを熱間圧延機において布に熱間圧延し、海藻変性PPスパンボンド不織布を得るステップ2と、
を含み、
前記アルギン酸塩は、アルギン酸で変性してなり、前記アルギン酸は、天然藻類から抽出されたものであり、
前記アルギン酸塩は、
アルギン酸を溶媒に溶解し、10~35℃の条件下、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5~10時間反応させた後、得られた反応液にポリアミンを添加して、40~80℃で撹拌しながら10~24時間反応させ、得られた混合液に脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して、得られた透析液を凍結乾燥させてアルギン酸塩を得るステップを含む製法で得られ、
前記溶媒はN,N-ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドであり、
前記ポリアミンはヘキサメチレンジアミン又はトリス(2-アミノエチル)アミンであり、
アルギン酸、溶媒、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N-ヒドロキシこはく酸イミド、ポリアミン及び脱イオン水の質量比が100:300~600:5~15:7~14:1~10:300~600であることを特徴とする海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項2】
ステップ2において熱間圧延機の繊維ウェブの圧延ローラ温度が140~150℃であることを特徴とする、請求項1に記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項3】
ステップ2において混合物溶液を制糸箱体に押し込む動作圧力が2~5MPaであることを特徴とする、請求項1に記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項4】
前記海藻変性PPスパンボンド不織布の製造原料は、ポリエチレングリコールをさらに含み、前記ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール4000又はポリエチレングリコール6000であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンボンド不織布に関し、具体的には海藻変性ポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
PPスパンボンド不織布は、ポリプロピレン原料を使用して、高温紡糸、カーディングを経てウェブ状に粘着して形成された通気性はあるが透水性はない繊維構造であり、主に使い捨て医療用衛生用品、使い捨て防汚服、農業用布、家具用布及びライナー材料等に用いられる。従来のPPスパンボンド不織布衛生用品の表層は、有孔フィルム、サーマルボンド不織布及び純綿のスパンレース不織布であるものが多い。しかしながら、有孔フィルム不織布は通気性が悪く、サーマルボンド不織布は乾きが良いが、生体適合性が悪く、バリ感が強く、純綿のスパンレース不織布は乾きが悪く、濡れた感触が出やすいという問題がある。
【0003】
また、従来のPPスパンボンド不織布には、通気性及び機械的特性を両立できないという問題が存在する。例えば中国登録特許CN102336961B及びCN102336929Bには、それぞれ重質炭酸カルシウム、コーンスターチ変性のPPスパンボンド不織布複合材料及びコーンスターチ変性のPPスパンボンド不織布が開示されている。いずれも環境保護機能を有し、分解可能であるが、コーンスターチの添加により不織布の破断強度が低下し、機械的特性が低下する。
【0004】
中国登録実用新案CN208760115Uには、抗菌性スパンボンド不織布が開示されている。この不織布は、上から下まで順次接着された第1イオン殺菌層、第1竹炭繊維層、第1スパンボンド不織布層、第1樹脂接着層、補強ベース層、第2樹脂接着層、第2スパンボンド不織布層、第2竹炭繊維層及び第2イオン殺菌層を含む。第1スパンボンド不織布層は、抗菌性ポリプロピレンスパンボンド不織布から製造され、抗菌性ポリプロピレンスパンボンド不織布は、抗菌性で分解可能なポリプロピレンスパンボンド不織布マスターバッチをスパンボンドして得られ、第2スパンボンド不織布層は、ポリエチレンポリプロピレンスパンボンド不織布から製造され、ポリエチレンポリプロピレンスパンボンド不織布は、抗菌性ポリエチレンポリプロピレンスパンボンド不織布マスターバッチをスパンボンドして得られる。しかしながら、上記登録実用新案は、抗菌性不織布の構造を簡略に紹介しているに過ぎず、具体的な製造プロセスを開示しておらず、スパンボンド不織布の吸湿性、通気性に関する技術課題を解決するものでもない。
【0005】
中国特許公開CN103132319Aには、難燃性スパンボンド不織布の製造方法及びその使用が開示されている。当該難燃性スパンボンド不織布は、重量部で、スパンボンド不織布60~80部、難燃剤15~30部及びカップリング剤5~10部を含む。その製造方法は、難燃剤を15~30部秤量して15~30質量%の水溶液に調製して難燃剤溶液を形成した後、5~10部のカップリング剤を難燃剤溶液に添加し、均一な混合液となるように十分に撹拌する。その後、60~80部のスパンボンド不織布を上記混合液に10~20min浸漬し、最後に、浸漬したスパンボンド不織布をプレスローラ装置の2つのゴムプレスローラの間に静置して押圧し、乾燥させて難燃性スパンボンド不織布を製造する。製造した難燃性スパンボンド不織布を重ね、ニードルパンチして補強し、仕様に従って裁断し、自動車用加飾材料を得る。製造した難燃性スパンボンド不織布を濯ぎ、風乾させ、仕様に従った大きさに裁断し、家庭用紡績品材料を得る。当該特許では、スパンボンド不織布に難燃性を付与することが技術課題であり、吸湿、通気性の技術課題を解決するものではない。
【0006】
そのため、吸湿性及び通気性に優れ、抗菌性を有し、柔らく肌に優しく、生体適合性が良く、機械的特性に優れた不織布製品の開発が望まれている。
【発明の概要】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、海藻変性PPスパンボンド不織布を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を実現するために、本発明は、以下の解決手段を用いる。
すなわち、PPスパンボンド不織布中にアルギン酸塩を0.1~2質量%含有することを特徴とする、海藻変性PPスパンボンド不織布を提供する。
【0009】
上記海藻変性PPスパンボンド不織布の水分率は0.2~3.5%であり、抗菌率は≧98%であることが好ましい。
上記海藻変性PPスパンボンド不織布におけるアルギン酸塩は、アルギン酸を変性してなり、前記海藻変性PPスパンボンド不織布の製造原料は、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及び酸化防止剤をさらに含み、
上記酸化防止剤が酸化防止剤3125又は酸化防止剤2013であり、
アルギン酸塩は、
アルギン酸を溶媒に溶解し、10~35℃の条件下、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5~10時間反応させた後、得られた反応液にポリアミンを添加し、40~80℃で撹拌しながら10~24時間反応させ、得られた混合液に脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得るステップにより得られ、
上記溶媒はN,N-ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドであり、
上記ポリアミンはヘキサメチレンジアミン又はトリス(2-アミノエチル)アミンであり、
アルギン酸、溶媒、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N-ヒドロキシこはく酸イミド、ポリアミン及び脱イオン水の質量比が100:300~600:5~15:7~14:1~10:300~600であることが好ましい。
【0010】
本発明で用いるアルギン酸塩は、アルギン酸のカルボキシ基をポリアミンのアミノ基と反応させ、架橋した変性アルギン酸を生成する方法で製造することが好ましい。緻密な相互侵入ネットワーク構造を形成し、さらに透析バッグで分子量が3500以上の大分子を貯留する。海藻変性PPスパンボンド不織布にアルギン酸の迅速分解性能を発現させる一方、大分子のネットワーク構造により不織布に高い機械的強度及び耐摩耗性能を保有させる。変性後のアルギン酸は、水酸基、アミド基等の親水性官能基と分岐鎖アルキル基等の疎水性官能基とを同時に有するので、PPと不織布に製糸した後、PP繊維は両親性界面活性剤に類似する性能を有し、不織布の表面が液体に触れる時、液体の表面張力が顕著に低下し、不織布の吸湿性及び乾きが良くなる。また、変性後のアルギン酸で形成された緻密的な相互侵入ネットワーク構造内に大量の隙間があり、スポンジに類似する構造が形成され、迅速に吸水することができ、かつ、大量に吸水する性能を持つ。
【0011】
ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール4000又はポリエチレングリコール6000であることが好ましく、上記ポリエチレングリコールは、分子量が適切であり、海藻変性PPスパンボンド不織布の引張強度を10~15%向上させることができる。
【0012】
ポリビニルピロリドンがポリビニルピロリドンK30であることが好ましく、上記ポリビニルピロリドンK30は、粘度が低く、不織布の平滑性能がより良い。
【0013】
適切な割合のポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンを添加することにより、アルギン酸塩とポリプロピレンとの相性を増加させ、アルギン酸塩とポリプロピレンとを溶融した後の単一材料のざらつき感を低減し、不織布の平滑性能を増加させることができる。
本発明の海藻変性PPスパンボンド不織布は以下のステップ1及び2を含む方法で製造することが好ましい。
ステップ1:ポリプロピレンと、混合材料の総重量の0.1~2%を占めるアルギン酸塩とを、横型二軸リボンミキサー中に仕込み、40~80℃に加熱し、中速で20~40分間混合し、その後、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及び酸化防止剤を添加し、180~190℃に加熱し、高速で20~40分間混合し、混合物を得る。
アルギン酸塩は、
アルギン酸を溶媒に溶解し、10~35℃の条件下、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5~10時間反応させた後、得られた反応液にポリアミンを添加し、40~80℃で撹拌しながら10~24時間反応させ、得られた混合液に脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して、得られた透析液を凍結乾燥させてアルギン酸塩を得るステップにより得られることが好ましい。
上記酸化防止剤は酸化防止剤3125又は酸化防止剤2013であることが好ましい。酸化防止剤は、主にアルギン酸塩を高温ポリプロピレンに添加するときの炭化を防止するために用いられ、酸化防止剤3125又は酸化防止剤2013はより良い流動性及び付着性を有し、変性アルギン酸の炭化程度を顕著に低下させ、変性アルギン酸塩の構造が炭化により変化して機能性を失うことを防止することができる。
【0014】
ステップ2:ステップ1で得られた混合物を制糸箱体に押し込み、紡糸、牽引を経て繊維ウェブを得、得られた繊維ウェブを熱間圧延機において布に熱間圧延し、海藻変性PPスパンボンド不織布を得る。
【0015】
ステップ2において繊維ウェブの熱間圧延機における圧延ローラ温度は140~150℃であることが好ましい。
【0016】
ステップ2において溶融体を制糸箱体に押し込む動作圧力は2~5MPaであることが好ましい。
【0017】
本発明は、海藻変性PPスパンボンド不織布の使用をさらに含み、使い捨て医療衛生用品、例えば生理用ナプキン、乳幼児用のおむつ、ウェットティッシュ、乳汁漏出パッド等に用いられる。
【0018】
本発明は、従来技術と比べて、以下の利点を有する。
1.変性後のアルギン酸は水酸基、アミド等の親水性官能基と、分岐鎖アルキル基等の疎水性官能基とを同時に有するので、PPと不織布に製糸した後、PP繊維は両親性界面活性剤に類似する性能を有する。即ち、プロトンの供与及び受容が可能となり、不織布の表面が液体に触れる時に、液体の表面張力を顕著に低下させ、不織布の吸湿性及び乾きを良くすることができる。また、変性アルギン酸で形成された緻密的な相互侵入ネットワーク構造内に大量の隙間があり、スポンジに類似する構造が形成され、良好な吸湿性を有し、かつ、吸水速度が速く、吸水後にも表面は依然として乾きが良く、しかも、その質量の12倍以上の水分を吸収することができ、非常に良い親水性能を有し、公定水分率は0.2~3.5%である。
【0019】
2.アルギン酸の変性により、製造されたPPスパンボンド不織布は、優れた抗菌性能を有し、総合抗菌率が98%以上である。
【0020】
3.アルギン酸の変性により、繊維は大分子のネットワーク構造を有し、不織布に高い機械的強度及び耐摩耗性を保有させることができ、破断強度及び破断伸び率が一般のPPスパンボンド不織布より20%程度向上し、耐摩耗性が一般の製品より少なくとも30%以上向上する。
【0021】
4.本発明の海藻変性PPスパンボンド不織布は、マイクロ孔構造により、製品の通気率が一般のPPスパンボンド不織布以上となり、非常に良い通気性能及び吸湿性を有し、業界の合成繊維水分率がほぼ0であることに対し、飛躍的進歩と言える。
【0022】
5.本発明の海藻変性PPスパンボンド不織布は、柔らかくて肌に優しく、良好な生体適合性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0024】
実施例1
海藻変性PPスパンボンド不織布は、原料として、ポリプロピレン 90kg、変性アルギン酸 0.2kg、ポリエチレングリコール 1kg、ポリビニルピロリドン 0.3kg、及び酸化防止剤 0.3kgを含む。
上記酸化防止剤は酸化防止剤3125である。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を300kgのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、10℃で、5kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び7kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら10時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に1kgのヘキサメチレンジアミンを添加し、40℃で撹拌しながら10時間反応させ、混合液を得た。得られた混合液に300kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
【0025】
実施例2
海藻変性PPスパンボンド不織布は、原料として、ポリプロピレン 100kg、変性アルギン酸 1kg、ポリエチレングリコール 5kg、ポリビニルピロリドン 0.1kg、及び酸化防止剤 0.6kgを含む。
上記酸化防止剤は酸化防止剤2013である。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を600kgのジメチルスルホキシドに溶解し、35℃で、15kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び14kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に10kgのトリス(2-アミノエチル)アミンを添加し、80℃で撹拌しながら24時間反応させ、混合液を得た。得られた混合液に600kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
【0026】
実施例3
海藻変性PPスパンボンド不織布は、原料として、ポリプロピレン 94kg、変性アルギン酸 1.2kg、ポリエチレングリコール 4kg、ポリビニルピロリドン 0.15kg、及び酸化防止剤 0.4kgを含む。
上記酸化防止剤が酸化防止剤3125である。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を400kgのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、25℃で、10kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び10kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら4時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に5kgのヘキサメチレンジアミンを添加し、50℃で撹拌しながら14時間反応させて混合液を得た。得られた混合液に400kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
【0027】
実施例4
海藻変性PPスパンボンド不織布は、原料として、ポリプロピレン 95kg、変性アルギン酸 1.5kg、ポリエチレングリコール4000 3kg、ポリビニルピロリドンK30 0.2kg、及び酸化防止剤 0.5kgを含む。
前記酸化防止剤は酸化防止剤3125である。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を400kgのジメチルスルホキシドに溶解し、20℃で、8kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び10kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に6kgのポリアミンを添加し、60℃で撹拌しながら15時間反応させ、混合液を得た。得られた混合液に450kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
【0028】
実施例5
海藻変性PPスパンボンド不織布は、原料として、ポリプロピレン 95kg、変性アルギン酸 1.9kg、ポリエチレングリコール6000 3kg、ポリビニルピロリドンK30 0.2kg、及び酸化防止剤 0.5kgを含む。
前記酸化防止剤は酸化防止剤3125である。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を400kgのジメチルスルホキシドに溶解し、20℃で、8kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び10kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に6kgのポリアミンを添加し、60℃で撹拌しながら15時間反応させ、混合液を得た。得られた混合液に450kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
【0029】
実施例6
実施例1に記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法は、下記のステップ1及び2を含む。
ステップ1:ポリプロピレン 90kg、及び変性アルギン酸 0.2kgを横型二軸リボンミキサーに仕込み、40℃に加熱し、中速で20分間混合し、その後、ポリエチレングリコール 1kg、ポリビニルピロリドン 0.3kg、及び酸化防止剤 0.3kgを添加し、180℃に加熱し、高速で20分間混合し、混合物溶液を得る。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を300kgのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、10℃で、5kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び7kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら10時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に1kgのヘキサメチレンジアミンを添加し、40℃で撹拌しながら10時間反応させ、混合液を得た。得られた混合液に300kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得た。得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
上記酸化防止剤は酸化防止剤3125である。
ステップ2:ステップ1で得られた混合物溶液を制糸箱体に押し込み、紡糸、サイドブロー箱体により冷却、牽引を経て繊維ウェブを得た。得られた繊維ウェブを熱間圧延機において布に熱間圧延し、海藻変性PPスパンボンド不織布を得た。
【0030】
実施例7
実施例2に記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法は、下記のステップ1及び2を含む。
ステップ1:ポリプロピレン 100kg、及び変性アルギン酸 0.9kgを横型二軸リボンミキサーに仕込み、80℃に加熱し、中速で40分間混合し、その後、ポリエチレングリコール 5kg、ポリビニルピロリドン 0.1kg、及び酸化防止剤2013 0.6kgを添加し、190℃に加熱し、高速で40分間混合し、混合物溶液を得た。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を600kgのジメチルスルホキシドに溶解し、35℃で、15kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び14kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に10kgのトリス(2-アミノエチル)アミンを添加し、80℃で撹拌しながら24時間反応させて混合液を得た。得られた混合液に600kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
ステップ2:ステップ1で得られた混合物溶液を制糸箱体に押し込み、紡糸、サイドブロー箱体による冷却、牽引を経て繊維ウェブを得、得られた繊維ウェブを熱間圧延機において布に熱間圧延し、海藻変性PPスパンボンド不織布を得た。
【0031】
実施例8
実施例3に記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法は、下記のステップ1及び2を含む。
ステップ1:ポリプロピレン 94kg、及び変性アルギン酸 1.2kgを横型二軸リボンミキサーに仕込み、50℃に加熱し、中速で25分間混合し、その後、ポリエチレングリコール 4kg、ポリビニルピロリドン 15kg、及び酸化防止剤 0.4kgを添加し、182℃に加熱し、高速で25分間混合し、混合物溶液を得る。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を400kgのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、25℃で、10kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び10kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら4時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に5kgのヘキサメチレンジアミンを添加し、50℃で撹拌しながら14時間反応させて混合液を得た。得られた混合液に400kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液で凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
上記酸化防止剤は酸化防止剤3125である。
ステップ2:ステップ1で得られた混合物溶液を制糸箱体に押し込み、紡糸、サイドブロー箱体による冷却、牽引を経て、繊維ウェブを得、得られた繊維ウェブを熱間圧延機において布に熱間圧延し、海藻変性PPスパンボンド不織布を得た。
【0032】
実施例9
実施例4に記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法は、下記のステップ(1)及び(2)を含む。
(1)ポリプロピレン95 kg、及び変性アルギン酸 1.5kgを横型二軸リボンミキサーに仕込み、60℃に加熱し、中速で30分間混合し、その後、ポリエチレングリコール4000 3kg、ポリビニルピロリドンK30 0.2kg、及び酸化防止剤 0.5kgを添加し、185℃に加熱し、高速で30分間混合して、混合物溶液を得る。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を400kgのジメチルスルホキシドに溶解し、20℃で、8kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び10kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に6kgのポリアミンを添加し、60℃で撹拌しながら15時間反応させて、混合液を得た。得られた混合液に450kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
前記酸化防止剤は酸化防止剤3125である。
ステップ2:ステップ1で得られた混合物溶液を制糸箱体に押し込み、紡糸、サイドブロー箱体による冷却、牽引を経て繊維ウェブを得、得られた繊維ウェブを熱間圧延機において布に熱間圧延し、海藻変性PPスパンボンド不織布を得た。
【0033】
実施例10
実施例5に記載の海藻変性PPスパンボンド不織布の製造方法は、下記のステップ1及び2を含む。
ステップ1:ポリプロピレン 95kg、及び変性アルギン酸 1.9kgを横型二軸リボンミキサーに仕込み、60℃に加熱し、中速で30分間混合し、その後、ポリエチレングリコール6000 3kg、ポリビニルピロリドンK30 0.2kg、及び酸化防止剤 0.5kgを添加し、185℃に加熱し、高速で30分間混合し、混合物溶液を得る。
変性アルギン酸は、下記のステップにより製造される。
100kgのアルギン酸を400kgのジメチルスルホキシドに溶解し、20℃で、8kgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及び10kgのN-ヒドロキシこはく酸イミドを添加し、撹拌しながら5時間反応させて反応液を得た。得られた反応液に6kgのポリアミンを添加し、60℃で撹拌しながら15時間反応させて、混合液を得た。得られた混合液に450kgの脱イオン水を添加し、分子量が3500の透析バッグで透析して透析液を得、得られた透析液を凍結乾燥させて変性アルギン酸を得た。
前記酸化防止剤は酸化防止剤3125である。
ステップ2:ステップ1で得られた混合物溶液を制糸箱体に押し込み、紡糸、サイドブロー箱体による冷却、牽引を経て繊維ウェブを得、得られた繊維ウェブを熱間圧延機において布に熱間圧延し、海藻変性PPスパンボンド不織布を得た。
【0034】
比較例11
実施例10の方法を用い、添加するアルギン酸塩の量を3.5Kgに変更し、その他のパラメータをそのままにした。
【0035】
比較例12
実施例10の方法を用い、アルギン酸塩の量を4.0Kgに変更し、その他のパラメータをそのままにした。
【0036】
比較例13
実施例10の方法を用い、添加するアルギン酸塩の量を4.5Kgに変更し、その他のパラメータをそのままにした。
【0037】
比較例14
実施例10の方法を用い、添加するアルギン酸塩の量を0.09Kgに変更し、その他のパラメータをそのままにした。
【0038】
比較例15
実施例10の方法を用い、添加するアルギン酸塩の量を0.05Kgに変更し、その他のパラメータをそのままにした。
【0039】
実施例6~10と比較例11~13の海藻変性PPスパンボンド不織布の性能測定を行った。比較例では同一グラム重のPPスパンボンド不織布を用い、グラム重がいずれも20±0.5g/cmであり、ISO9237-1995規格に従って材料の通気率の測定を行い、GB/T 24218.3-2010を用いて破断強度及び破断伸び率の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
表1
表1より、本発明の海藻変性PPスパンボンド不織布の通気率が非常に良く、従来の不織布製品の100%以上であり、破断強度及び破断伸び率がいずれも従来のPPスパンボンド不織布より20%程度高いことがわかった。分子量が3500以上の変性アルギン酸は、構造上の緻密的な相互侵入ネットワーク構造により不織布に高い機械的強度及び耐摩耗性能を有することがわかった。
【0041】
同時に、製造した不織布中のアルギン酸塩の含有量が0.1~2%である場合、製造した繊維の抗菌性が一番よく、かつ物理的性能が生産の要求を満足できることがわかった。アルギン酸塩の含有量が<0.1%である場合、製造した不織布の通気性及び抗菌性が明らかに低下し、アルギン酸塩の含有量が≧2%である場合、製造した不織布の物理的指標が明らかに低下し、通常の応用における要求特性を満足できなかった。上記結果より、本発明では海藻変性PPスパンボンド不織布中のアルギン酸塩の最適含有量を0.1~2%とした。
【0042】
実施例6~10の海藻変性PPスパンボンド不織布に対して吸水性測定を行った。比較例では同一グラム重のPPスパンボンド不織布を用い、グラム重がいずれも20±0.5g/cmであり、その吸水速度及び吸水量を測定した。吸水速度の測定方法は以下のとおり行った。実施例6~10の海藻変性PPスパンボンド不織布を10cm*10cmの正方形シート状のものにカットし、1mlの水を実験台に滴下し、シート状の不織布をゆっくりと水に近づけ、ストップウオッチを用いて不織布が完全吸水、即ち、全部湿潤となる時間を記録して吸水速度の測定を行った。吸水量の測定は以下のとおり行った。10cm*10cmの正方形シート状ものを秤量した後、水中に10s浸漬し、取り出した後、不織布から水が滴下しなくなった後、天秤に放置して秤量し、不織布の重量mを記録し、1グラム当たりの吸水量=(m-5)/5を算出した。その結果を表2に示す。
【0043】
表2 実施例6~10の海藻変性PPスパンボンド不織布の吸水性測定結果
注:吸水量実験を行う時、比較例の従来の不織布の表面は水に触れない。
【0044】
表2の結果から明らかなように、本発明実施例6~10の海藻変性PPスパンボンド不織布は、吸水速度が速く、吸水後も表面が乾いたままであり、かつ、その質量の12倍以上の水分を吸収することができ、公定水分率が0.2~3.5%の範囲であり、吸湿性が良好で、非常に良い親水性能を有する。
【0045】
本発明で用いるアルギン酸は、市販品でよく、本発明における要求以外、その具体的な指標に対して特に要求はない。
【0046】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明をその他の形で制限するものではなく、当業者であれば上述した技術内容を示唆として利用して等価実施例に変更又は変形することができる。しかし、本発明の技術的解決手段の内容から逸脱しない限り、本発明の技術的内容に基づいて上記の実施例に対して行った簡単な変更、等価変化及び変形は、依然として本発明の請求項の保護範囲に属する。