(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】電動モビリティ
(51)【国際特許分類】
B62K 5/007 20130101AFI20220412BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20220412BHJP
A61G 5/08 20060101ALI20220412BHJP
B62K 5/01 20130101ALI20220412BHJP
【FI】
B62K5/007
A61G5/04
A61G5/08 703
B62K5/01
(21)【出願番号】P 2021092200
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512250902
【氏名又は名称】WHILL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 智之
(72)【発明者】
【氏名】塚本 皓之
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 将洋
(72)【発明者】
【氏名】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】赤間 礼
(72)【発明者】
【氏名】許 書毓
(72)【発明者】
【氏名】永田 伸
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211943625(CN,U)
【文献】米国特許第09533729(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0156727(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111252179(CN,A)
【文献】特開2003-146282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/007
A61G 5/04
A61G 5/08
B62K 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を有する前輪側ボディと、
後輪を有する後輪側ボディと、
使用状態において乗車者が着座する座席と、
前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、
前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、
前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地
し、
前記座席は前記前輪側ボディの一部で構成される座席支持部に支持され、前記揺動軸線は前記座席支持部を挿通する位置に配置され、又は、前記座席支持部の近傍に配置され、これにより前記前輪側ボディと前記後輪側ボディは車両幅方向から見た時に略X字形状を成す、電動モビリティ。
【請求項2】
前輪を有する前輪側ボディと、
後輪を有する後輪側ボディと、
使用状態において乗車者が着座する座席と、
前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、
前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、
前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地
し、
前記座席はその座面の一部として機能する座面支持フレームを有し、前記揺動軸線は前記座面又は前記座面支持フレームを挿通する位置に配置され、又は、前記座面又は前記座面支持フレームの近傍に配置され、これにより前記前輪側ボディと前記後輪側ボディは車両幅方向から見た時に略X字形状を成す、電動モビリティ。
【請求項3】
キャスタ又は全方向移動車輪である前輪を有する前輪側ボディと、
後輪を有する後輪側ボディと、
使用状態において乗車者が着座する座席と、
前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、
前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、
前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、
前記折り畳み状態において、前記前端ローラ又は前記前端キャスタは、車両前後方向にのみ回転可能である、電動モビリティ。
【請求項4】
電動モビリティであって、
当該電動モビリティの幅方向に並んだ一対の前輪を有する前輪側ボディと、
後輪を有する後輪側ボディと、
使用状態において乗車者が着座する座席と、
前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、
前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、
前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地
し、前記前輪は床面から1cm以下の距離だけ離れるように構成されている、電動モビリティ。
【請求項5】
前記前端ローラ又は前記前端キャスタは前記前輪側ボディのフレームに固定されている、請求項1
~4の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項6】
前記後輪側ボディに設けられ、前記使用状態において後端部が前記後輪の後端よりも当該電動モビリティの車両後方に配置される転倒防止部材を備え、
前記転倒防止部材はその後端部に後端ローラを有し、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記後端ローラが接地する、請求項1
~4の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項7】
前輪を有する前輪側ボディと、
後輪を有する後輪側ボディと、
使用状態において乗車者が着座する座席と、
前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、
前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、
前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、
前記前端ローラ又は前記前端キャスタは、前記フットレストの前記車両幅方向の中央部に対応した位置に配置される、
電動モビリティ。
【請求項8】
前記連結機構は、前記折り畳み状態において前記前輪側ボディの前記後輪側ボディに対する揺動を規制する揺動位置規制を行うように構成され、
前記連結機構は、前記揺動位置規制を解除する被操作部材を有し、
前記連結機構は、前記前輪側ボディ又は前記後輪側ボディの少なくとも一方に折り畳む方向の力を加えた時に、前記被操作部材による前記揺動位置規制の解除が可能となるように構成され
、前記前輪側ボディ又は前記後輪側ボディの前記少なくとも一方に前記折り畳む方向の力を加えていない時には前記被操作部材の操作によって前記揺動位置規制が解除されないように構成されている、請求項1~
7の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項9】
前記後輪側ボディは前記車両幅方向に並ぶ一対の上下方向延在部を有し、
各前記上下方向延在部における前記揺動軸線よりも下側の下側部分は、その下端側から前記揺動軸線の位置まで斜め前方に向かって延びており、
前記下側部分の太さは前記下側部分の長手方向の実質的に全体に亘って8cm以上であり、前記太さは前記長手方向と直交する方向であって前記車両前後方向に対応する方向の寸法である、請求項1~
8の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項10】
前輪を有する前輪側ボディと、
後輪を有する後輪側ボディと、
使用状態において乗車者が着座する座席と、
前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、
前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、
前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、
前記連結機構は、前記折り畳み状態において前記前輪側ボディの前記後輪側ボディに対する揺動を規制する揺動位置規制を行うように構成され、
前記後輪側ボディは前記車両幅方向に並ぶ一対の上下方向延在部を有し、
前記一対の上下方向延在部の一方に前記揺動位置規制を解除する被操作部材が設けられ、
前記被操作部材が設けられている前記上下方向延在部における前記被操作部材よりも前記車両幅方向の内側に、前記被操作部材と共に押下げることができない固定部材が設けられ、
前記被操作部材と前記固定部材との距離は3mm以下である、
電動モビリティ。
【請求項11】
前輪を有する前輪側ボディと、
後輪を有する後輪側ボディと、
使用状態において乗車者が着座する座席と、
前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、
前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、
前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、
前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、
前記後輪側ボディは前記車両幅方向に並ぶ一対の上下方向延在部を有し、
各前記上下方向延在部は取外し可能な上端側部分を有し、
前記上端側部分は、前記車両幅方向の内側に向かって凸形状を有する凸部であって、前記座席に着座する前記乗車者の腿又は膝の外側が連続して又は間欠的に接触する凸部を有し、
各前記上下方向延在部は、前記上端側部分を前記凸部が前記車両幅方向の外側に配置される姿勢で取付可能である、又は、前記車両幅方向の内側に前記凸部が突出していない他の上端側部分を取付け可能である、
電動モビリティ。
【請求項12】
前記前端ローラ又は前記前端キャスタは、車両前後方向にのみ回転可能である、請求項1
、2、又は4に記載の電動モビリティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動モビリティに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モビリティとして、キャスター車輪である前輪と、前輪を有する前輪側ボディと、通常車輪である後輪と、後輪を有する後輪側ボディと、前輪側ボディを後輪側ボディに対して車両前後方向に揺動可能に連結する連結機構と、乗車者が着座する座席と、を備え、前輪側ボディを後輪側ボディに対して揺動させて折り畳むことができる折り畳み型の車椅子が知られている。例えば特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年は車椅子を電動化することが行われている。上記のような折り畳み型の車椅子の電動化も考えられる。上記のような車椅子を電動化するためには、キャスター車輪である前輪はモータ駆動できないので、一対の後輪をそれぞれ一対のモータによって駆動するのが一般的である。当該構成では、各モータの駆動速度および方向をコントロールすることによって車椅子の前進、後進、右折、左折等が可能となる。
【0005】
しかし、電動化のために上記のような車椅子にモータ、バッテリ、制御装置等を取付けると、車椅子の重量が10kg以上、多くの場合は20kg以上となる。折り畳まれた車椅子の車両前後方向の寸法は小さいことが好ましい。一方、電動車椅子の前輪および後輪の直径が小さいと乗り心地、段差乗り越え性能等が著しく悪化する。このため、前述のように重量が増した状態で、前記の方式で上記車椅子を折り畳むと、接地位置が互いに車両前後方向に近い前輪および後輪によって折り畳まれた車椅子が床面上に支持されることになる。これは、折り畳まれた車椅子の置き場所の選択の幅を狭め、置き場所の床面に関しユーザが注意すべき事項の増加等に繋がる。また、折り畳まれた車椅子の安定性が重要であると感じるユーザも多く、折り畳まれた車椅子を床面上に安定して支持するための大きめの構造を用いると、車椅子の重量増加、折り畳み作業の煩雑化等に繋がる。
【0006】
前記事情に鑑み、ユーザが快適に使用できる電動モビリティが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の電動モビリティは、前輪を有する前輪側ボディと、後輪を有する後輪側ボディと、使用状態において乗車者が着座する座席と、前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラが接地し、前記座席は前記前輪側ボディの一部で構成される座席支持部に支持され、前記揺動軸線は前記座席支持部を挿通する位置に配置され、又は、前記座席支持部の近傍に配置され、これにより前記前輪側ボディと前記後輪側ボディは車両幅方向から見た時に略X字形状を成す。
本発明の第2の態様の電動モビリティは、前輪を有する前輪側ボディと、後輪を有する後輪側ボディと、使用状態において乗車者が着座する座席と、前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、前記座席はその座面の一部として機能する座面支持フレームを有し、前記揺動軸線は前記座面又は前記座面支持フレームを挿通する位置に配置され、又は、前記座面又は前記座面支持フレームの近傍に配置され、これにより前記前輪側ボディと前記後輪側ボディは車両幅方向から見た時に略X字形状を成す。
本発明の第3の態様の電動モビリティは、キャスタ又は全方向移動車輪である前輪を有する前輪側ボディと、後輪を有する後輪側ボディと、使用状態において乗車者が着座する座席と、前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、前記折り畳み状態において、前記前端ローラ又は前記前端キャスタは、車両前後方向にのみ回転可能である。
本発明の第4の態様の電動モビリティは、当該電動モビリティの幅方向に並んだ一対の前輪を有する前輪側ボディと、後輪を有する後輪側ボディと、使用状態において乗車者が着座する座席と、前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、前記前輪は床面から1cm以下の距離だけ離れるように構成されている。
本発明の第5の態様の電動モビリティは、前輪を有する前輪側ボディと、後輪を有する後輪側ボディと、使用状態において乗車者が着座する座席と、前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、前記前端ローラ又は前記前端キャスタは、前記フットレストの前記車両幅方向の中央部に対応した位置に配置される。
本発明の第6の態様の電動モビリティは、前輪を有する前輪側ボディと、後輪を有する後輪側ボディと、使用状態において乗車者が着座する座席と、前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、前記連結機構は、前記折り畳み状態において前記前輪側ボディの前記後輪側ボディに対する揺動を規制する揺動位置規制を行うように構成され、前記後輪側ボディは前記車両幅方向に並ぶ一対の上下方向延在部を有し、前記一対の上下方向延在部の一方に前記揺動位置規制を解除する被操作部材が設けられ、前記被操作部材が設けられている前記上下方向延在部における前記被操作部材よりも前記車両幅方向の内側に、前記被操作部材と共に押下げることができない固定部材が設けられ、前記被操作部材と前記固定部材との距離は3mm以下である。
本発明の第7の態様の電動モビリティは、前輪を有する前輪側ボディと、後輪を有する後輪側ボディと、使用状態において乗車者が着座する座席と、前記前輪側ボディを前記後輪側ボディに車両幅方向に延びる揺動軸線周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前記前輪と前記後輪とが近づくように前記前輪側ボディおよび前記後輪側ボディが互いに対して車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前記前輪側ボディに設けられ、前記座席に着座している前記乗車者の足が置かれるフットレストと、前記前輪側ボディに設けられ、前記使用状態において前記前輪の前端よりも当該電動モビリティの車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ又は前端キャスタと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前記前端ローラ又は前記前端キャスタが接地し、前記後輪側ボディは前記車両幅方向に並ぶ一対の上下方向延在部を有し、各前記上下方向延在部は取外し可能な上端側部分を有し、前記上端側部分は、前記車両幅方向の内側に向かって凸形状を有する凸部であって、前記座席に着座する前記乗車者の腿又は膝の外側が連続して又は間欠的に接触する凸部を有し、各前記上下方向延在部は、前記上端側部分を前記凸部が前記車両幅方向の外側に配置される姿勢で取付可能である、又は、前記車両幅方向の内側に前記凸部が突出していない他の上端側部分を取付け可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動モビリティの後方斜視図である。
【
図2】本実施形態の電動モビリティの正面図である。
【
図3】本実施形態の電動モビリティの平面図である。
【
図4】本実施形態の電動モビリティの側面図である。
【
図5】本実施形態の電動モビリティの折り畳み状態を示す側面図である。
【
図6】本実施形態の電動モビリティのブロック図である。
【
図7】本実施形態の電動モビリティの要部縦断面図である。
【
図8】本実施形態の折り畳み状態の電動モビリティの要部縦断面図である。
【
図9】本実施形態の電動モビリティの上下方向延在部の要部縦断面図である。
【
図10】本実施形態の電動モビリティの幅方向中央における要部縦断面図である。
【
図11】本実施形態の折り畳み状態の電動モビリティの幅方向中央における要部縦断面図である。
【
図12】本実施形態の電動モビリティの正面図である。
【
図13】本実施形態の電動モビリティの要部斜視図である。
【
図14】本実施形態の電動モビリティの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電動モビリティが、図面を参照して以下に説明される。
この電動モビリティは、
図1~
図4に示すように、前輪側ボディ10と後輪側ボディ50とを有し、一人が着座して乗る。本実施形態では、
図3に示す電動モビリティの幅方向は、後輪側ボディ50の一対の後輪60が並ぶ方向、又は、後輪60の車軸に沿って延びる水平方向である。電動モビリティの幅方向が、前輪側ボディ10の一対の前輪20が並ぶ方向であってもよい。
図3に示す電動モビリティの前後方向は、電動モビリティの幅方向に垂直な水平方向、又は、電動モビリティが直進する方向である。
【0010】
以下の説明では、前輪20および後輪60が水平な平面に接地又は近接した状態を基準に方向が説明されている。また、以下の説明では、電動モビリティの前後方向を単に前後方向又は車両前後方向と称し、電動モビリティの幅方向を単に幅方向又は車両幅方向と称する場合がある。以下の説明において、右および左は幅方向に対応しており、前および後ろは前後方向に対応している。また、以下の説明では、
図1~
図4に示す状態を使用状態と称し、
図5に示す状態を折畳まれた状態と称する。
【0011】
図4および
図5に示すように、前輪側ボディ10と後輪側ボディ50とは、幅方向に延びる揺動軸線SA周りに互いに対し揺動可能である。本実施形態では、前輪側ボディ10の高さ方向の中間部が後輪側ボディ50の高さ方向の中間部に前後方向に揺動可能に支持されている。本実施形態では、前輪側ボディ10と後輪側ボディ50とは幅方向から見た時にX字形状を成すXフレームを有するとも言える。なお、下記の実施形態において、Xフレームにおける揺動軸線SAの下側が揺動軸線SAの上側よりかなり大きくてもよい。また、Xフレームにおける揺動軸線SAの上側が揺動軸線SAの下側よりもかなり大きい場合も、前輪20と後輪60の幅方向の位置をずらすこと等によって、下記実施形態を実現できる場合がある。
【0012】
前記使用状態において、前輪側ボディ10は、揺動軸線SAよりも下方に配置され少なくとも下方に延びる、幅方向に間隔をおいて並ぶ一対の前輪支持フレーム30を有する。本実施形態では各前輪支持フレーム30は下方且つ前方に向かって斜めに延びている。各前輪支持フレーム30の下端部には前輪支持部31が固定されて、前輪支持部31は前輪支持フレーム30の下端部から電動モビリティの幅方向の外側および内側にそれぞれ突出している。以下の説明では、電動モビリティの幅方向の外側および内側をそれぞれ単に幅方向の外側および内側と称する場合がある。
【0013】
本実施形態では、
図4に示すように、各前輪20は上下方向に延びる旋回軸線RA周りにフォーク21が回転するキャスター車輪であり、各前輪20の回転軸線20aは旋回軸線RAの真下に配置されない。例えば、
図4に示すように、電動モビリティが前進している時に回転軸線20aは旋回軸線RAよりも電動モビリティの後側に配置される。
フォーク21の上端には軸部21aが設けられ、軸部21aによってフォーク21は前輪支持部31の幅方向の外側部に旋回軸線RA周りに回転可能に支持されている。軸部21aと前輪支持部31との間には公知のラジアルベアリング、スラストベアリング等が介在している。
【0014】
各フォーク21は下方に延びる一対のフォークプレート21bを有し、一対のフォークプレート21bの下端側に前輪20の車軸が支持されている。また、車軸によって前輪20が回転軸線20a周りに回転可能に支持されている。車軸と前輪20との間には公知のラジアルベアリング等が介在している。
【0015】
前輪側ボディ10は、前輪支持部31から少なくとも下方に延びるフットレストフレーム32を有する。フットレストフレーム32は、一対の前輪支持部31からそれぞれ下方に延びる一対の上下方向フレーム33と、一対の上下方向フレーム33の下端同士を接続する接続部34とを有する。
図3に示すように、接続部34は、一対の上下方向フレーム33の下端からそれぞれ車両前側に延びる一対の前後方向フレーム34aと、一対の前後方向フレーム34aの前端側を互いに接続している前側接続フレーム34bとを有する。
【0016】
また、接続部34は、
図3に示すように、一対の前後方向フレーム34aの後端側同士又は中間部同士を接続する少なくとも1つの後側接続フレーム34cも有する。前側接続フレーム34bと後側接続フレーム34cの一方だけが設けられてもよい。
フットプレート(フットレスト)35は接続部34に前後方向に揺動可能に取付けられている。
【0017】
本実施形態では、フットプレート35の前後方向の中間部又は後端部が後側接続フレーム34cに前後方向に揺動可能に取付けられているが、フットプレート35がフットレストフレーム32の他の部分に揺動可能に取付けられてもよい。また、フットプレート35がフットレストフレーム32に固定されてもよい。
【0018】
接続部34の前端部には前端ローラ36又は前端キャスタが支持され、前端ローラ36又は前端キャスタは前後方向に回転可能である。前端ローラ36又は前端キャスタは前輪20よりも直径が小さいことが好ましい。前端ローラ36又は前端キャスタの直径は前輪20の直径の2/3以下であることが好ましい。具体的に、前端ローラ36又は前端キャスタの直径は好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下である。
なお、本実施形態では前輪20の直径は12cm以上であり、好ましくは15cm以上であり、より好ましくは18cm以上である。このように前輪20の直径が大きいことによって、電動モビリティの段差乗り越え性能が効果的に向上する。
【0019】
この電動モビリティでは、後輪60の直径と前輪20の直径との差異が4cm以下であり、より好ましくは2.5cm以下である。このため、当該電動モビリティは上記のように折り畳み型であるが、駆動輪である後輪60と同等の直径を有する前輪20を有する当該電動モビリティを見る者、乗車者等のユーザは、当該電動モビリティが安定しているとの安心感をより抱く傾向がある。これはユーザによる電動モビリティの快適な使用に資する。なお、後輪60の直径が前輪20の直径に対して4cmを超えて大きい場合もある。
【0020】
本実施形態では、前側接続フレーム34bがローラ支持部36bを有し、ローラ支持部36bは前後方向に延びる一対の支持部材である。ローラ支持部36bは前端ローラ36の車軸を支持する。各支持部材は例えばプレートであり、各支持部材の後端は前側接続フレーム34bに固定されている。各支持部材の後端は後側接続フレーム34c等に固定されてもよく、各支持部材は接続部34の一部である。
【0021】
このように前端ローラ36は電動モビリティの幅方向の中央部に対応した位置に配置される。また、
図3および
図4に示すように、フットプレート35の前端部から前端ローラ36の一部が少なくとも前側に出る態様で、フットレストフレーム32に前端ローラ36が支持される。本実施形態では前端ローラ36の一部がフットプレート35の前端部から下方にも出ている。なお、フットプレート35の前端部から前端ローラ36の一部が少なくとも斜め下方又は下方に出る態様で、フットレストフレーム32に前端ローラ36が支持されていてもよい。
【0022】
本実施形態では、フットプレート(フットレスト)35の前端部に少なくとも前方に開口しているホイルハウス35aが設けられ、ホイルハウス35a内に前端ローラ36の一部が配置されている。このため、乗車者の靴の泥、塩水等が前端ローラ36に付着し難い。また、前述のように、前端ローラ36はその一部がフットレストから前方、斜め下方等に出ている。このように一部だけが出る場合、乗車者の靴の泥、塩水等が前端ローラ36のベアリング付近に付着し難い。これら構造は、それぞれ、前端ローラ36の機能を長期に亘って維持するため、前端ローラ36のメンテナンスの手間の低減等のために有用である。
【0023】
なお、フットプレート35を設けずに、乗車者の足がフットレストフレーム32の例えば前後方向フレーム34a、前側接続フレーム34b、および後側接続フレーム34cによって支持されてもよい。この場合、フットレストフレーム32がフットレストとして機能する。この場合でも、フットレストとして機能するフットレストフレーム32の前端部から前端ローラ36の一部が少なくとも前側および/又は斜め下方に出る態様で、フットレストフレーム32に前端ローラ36が支持される。一例では、前端ローラ36の一部がフットレストフレーム32の前端部から下方にも出る。
【0024】
また、接続部34が設けられずにフットプレート35が一対の上下方向フレーム33の下端同士を接続してもよい。この場合、フットプレート(フットレスト)35が接続部として機能し、フットプレート35の前端部から前端ローラ36の一部が少なくとも前側および/又は斜め下方に出る態様で、フットプレート35に前端ローラ36が支持される。
【0025】
また、一対の上下方向フレーム33の上端部が一対の前輪支持フレーム30に直接固定されてもよく、一対の上下方向フレーム33の例えば上端部が前輪側ボディ10の他の部分に固定されてもよい。
前輪側ボディ10において強度を求められる構造は金属、金属とプラスチックとの組合せ等を用いて作られ、その他の部分は機能、美観等に応じてプラスチック、ゴム等の適宜選択された材料を使って作られる。後輪側ボディ50についても同様である。
【0026】
後輪側ボディ50は幅方向に間隔をおいて並ぶ一対の上下方向延在部80を有し、前記使用状態において、各上下方向延在部80は、揺動軸線SAよりも下方に配置された下側部分を有する。本実施形態では、
図4等に示すように、各上下方向延在部80の下側部分は、その下端側から揺動軸線SAの位置まで斜め前方に向かって延びている。各上下方向延在部80の長さ方向と直交する方向であって、電動モビリティの前後方向に対応する方向の寸法(太さ)α(
図4)は、上記下側部分の実質的に全体に亘って8cm以上である。
【0027】
当該電動モビリティは上記のように折り畳み型であるから本来は華奢に見え易いが、上記寸法αを有する一対の上下方向延在部80を有するので、当該電動モビリティを見る者、乗車者等のユーザは、当該電動モビリティが安定しているとの安心感を抱き、利用者の快適な使用に資する。このような安心感は、当該電動モビリティが貸し出される場合、当該電動モビリティが山道を含むオフロードで使用される場合等に、特に有用である。上記下側部分において、当該寸法αが8cm以上である範囲が40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であれば、同様の効果を奏し得る。上下方向延在部80は、例えば、内部に金属製のフレームを有し、当該フレームの一部又は全部がプラスチックのカバーによって覆われ、当該カバーが前記寸法αで形成されている。各上下方向延在部80の車両幅方向の寸法が前記寸法αよりも小さい方が好ましい。
【0028】
本実施形態では、各上下方向延在部80はその下側から座席90の座面91よりも上方まで斜め前方に向かって延び、揺動軸線SAの上側でも前記寸法αを有する。一例では各上下方向延在部80の上端は座面91よりも8cm以上高く、より好ましくは10cm以上高い。このため、当該電動モビリティを見る者、乗車者等のユーザは、当該電動モビリティが安定しているとの安心感をよりしっかりと抱く傾向がある。
【0029】
また、
図3等に示すように、寸法αが上下方向延在部80の長さ方向の略全体に亘って維持され、上下方向延在部80の略全体が一定の傾向で斜め前方に延びていると、電動モビリティが安定しているとの印象を持つ傾向がある。前記略全体は好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、本実施形態では90%以上である。
【0030】
各上下方向延在部80の下端は後輪側ボディ50のベース部82に支持されている。本実施形態では、
図1に示すように、各上下方向延在部80の下端はそれぞれ幅方向延在部81を介してベース部82の中央部に支持又は固定されている。当該中央部にはバッテリBAが着脱可能に挿入される。ベース部82内には、
図6に示す制御装置70、駆動装置としての一対のモータM、およびモータドライバ71が設けられ、装着されたバッテリBAからの電力が電力線により制御装置70およびモータドライバ71に供給される。
【0031】
図1等に示すように、後輪側ボディ50は例えばベース部82から後方に延びる一対の転倒防止部材52を有する。各転倒防止部材52の前端部は後輪側ボディ50の例えばベース部82に固定され、又は、上方に傾動しない態様でベース部82に固定されている。一対の転倒防止部材52はその後端部にそれぞれ後端ローラ53を有し、各後端ローラ53は前後方向に回転可能である。
図4に示すように、転倒防止部材52の後端部は後輪60の後端よりも後方に配置されている。
【0032】
例えば電動モビリティが急な上り坂等を登る時に後ろ側に倒れそうになった時に、転倒防止部材52は接地して電動モビリティの転倒を妨げる。一対の転倒防止部材52は幅方向に間隔をおいて配置されている。当該間隔は10cm以上である。ベース部82から後方に単一の転倒防止部材52が延び、転倒防止部材52に一対の後端ローラ53が互いに幅方向に間隔をおいて配置されてもよい。
【0033】
転倒防止部材用の後端ローラ53は一般的に小さい。本実施形態では、後端ローラ53の直径は前輪20の直径の1/2以下であり、2/3以下であることが好ましい。
前記使用状態で電動モビリティが水平面上に置かれた時に、各後端ローラ53と水平面との上下方向の距離は10cm以下である。電動モビリティの後方への転倒を防止するため前記距離は好ましくは7cm以下であり、更に好ましくは6cm以下である。
【0034】
一対の転倒防止部材52の間は幅方向に延びる足載せプレート54によって連結されている。足載せプレート54は、電動モビリティの折り畳みおよび展開の際にユーザが足を載せる部分であり、金属製の板状部材を屈曲することによって形成されている。
【0035】
制御装置70は、例えばCPUを有するプロセッサ70aと、送受信部70bと、不揮発性メモリ、ROM、RAM等を有する記憶装置70cとを有する。記憶装置70cには電動モビリティを制御するためのプログラムが格納されている。プロセッサ70aはプログラムに基づき動作し、上下方向延在部80の上端側部分85に設けられた操作部73および設定部からの信号に基づき、各モータMを駆動するための駆動信号をモータドライバ71に送信する。
【0036】
右および左の上下方向延在部80の少なくとも一方の上端には、操作レバー73aを有する操作部73が設けられ、操作レバー73aの操作に応じた信号が有線又は無線通信によって制御装置70に送信される。操作レバー73aの代わりに、操作ボタン、タブレットコンピュータ等のコンピュータが用いられてもよい。当該コンピュータの場合、そのディスプレイ装置に表示される操作レバー、操作ボタン等が乗車者等のユーザによって操作され、設定部の機能も備える当該コンピュータは、操作に応じた信号を制御装置70に有線又は無線通信によって送信する。
【0037】
右および左の上下方向延在部80の少なくとも一方の上端には、最高速度設定、運転モード設定、電動モビリティのロックの設定等、電動モビリティに関する各種設定を行うことが可能な設定部が設けられている。設定部には複数の操作ボタン、表示装置等が設けられている。設定部の設定信号は有線又は無線通信によって制御装置70に送信され、制御装置70において電動モビリティの設定が登録又は変更される。前記コンピュータが設定部の機能を有する場合もある。
【0038】
ベース部82の幅方向の両側にはそれぞれ後輪60が設けられ、各後輪60は対応するモータMによって駆動される。各モータMの駆動速度に応じて電動モビリティが前進、曲がりながら前進、後進、曲がりながら後進、および前進および後進を殆どしない状態での回転を行う。
【0039】
各上下方向延在部80の上端側部分85から後側に向かってアームレスト84が延びており、アームレスト84および上下方向延在部80の上端側部分85には、座席90に座っている乗車者の腕および手が置かれる。
【0040】
座席90は、座面91と、背凭れ92と、を有する。背凭れ92の背面には、ユーザ等が電動モビリティの折り畳み時、展開時、電動モビリティを押して移動する時等に掴むつかみ部92aが設けられている。
本実施形態では、座面91および背凭れ92は前輪側ボディ10によって支持されている。具体的には、前輪側ボディ10は、前後方向に延びる一対の座面支持フレーム37と、一対の座面支持フレーム37の後端からそれぞれ上方に延びる背凭れフレーム38と、を有する。
【0041】
一対の座面支持フレーム37は互いに1以上の幅方向フレーム37aによって接続されている。また、一対の背凭れフレーム38もその上端部等で互いに幅方向フレームによって接続されている。本実施形態では、座面支持フレーム37と前輪支持フレーム30とは一体に形成されている。また、座面支持フレーム37の後端に背凭れフレーム38の下端が前後方向に揺動可能に支持されている。背凭れフレーム38は
図1および
図4に示す位置よりも後方に揺動しないが、背凭れフレーム38は前側、即ち座面91に向かって揺動可能である。
【0042】
後輪側ボディ50には、例えば上下方向延在部80の金属製フレーム86から車両幅方向に延びる軸51が設けられ、前輪側ボディ10の例えば前輪支持フレーム30又は座面支持フレーム37に設けられた孔等の軸保持部H(
図7)が軸51にその中心軸線周りに回転可能に支持されている。当該中心軸線は揺動軸線SAと一致しており、前輪側ボディ10と後輪側ボディ50とが揺動軸線SA周りに互いに対し揺動可能である。軸51が前輪側ボディ10に設けられ、後輪側ボディ50が軸51に支持されてもよい。また、その他の構造によって前輪側ボディ10と後輪側ボディ50が互いに対し揺動可能に構成されてもよい。複数の軸、孔、リンク等を用いる場合は、揺動に応じて揺動軸線SAの位置が移動することもあり得る。
【0043】
電動モビリティは、前輪側ボディ10を後輪側ボディ50に車両前後方向に揺動可能に連結し、電動モビリティを少なくとも前記使用状態に保持する連結機構100を有する(
図7)。
連結機構100は、前記軸51および軸保持部Hを有する。また、
図7および
図8に示すように、連結機構100は、例えば、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50のうち軸51が設けられた方に設けられるピン等である係合部110を有する。また、連結機構100は、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50のうち軸51が設けられていない方に設けられ、係合部110が例えば揺動軸線SAを中心とする周方向に係合する穴等である第1の被係合部121を有する。係合部110と第1の被係合部121とが他の方向に係合してもよい。
【0044】
係合部110は、車両前後方向、車両幅方向、および上下方向の少なくとも一つの方向に移動可能に、例えば一方の上下方向延在部80の金属製フレーム86によって支持されている。本実施形態では、
図9に示すように、金属製フレーム86は上下方向延在部80の長手方向に延び、スライド部材87が金属製フレーム86に前記長手方向に移動可能に支持されている。スライド部材87の前記長手方向の一端部に係合部110が固定され、スライド部材87の前記長手方向の他端部にリンク部材88の一端部が車両前後方向および上下方向の少なくとも一方に揺動可能に連結されている。
【0045】
リンク部材88の他端部にはボタン部材、レバー等の被操作部材89が取付けられ、被操作部材89の少なくとも一部は上下方向延在部80から突出している。被操作部材89の代わりにレバーが用いられてもよい。
図9に示すように、ユーザが被操作部材89を押す方向に操作すると、リンク部材88が揺動すると共にスライド部材87が前記長手方向に移動し、係合部110と第1の被係合部121との係合が解除される。
なお、本実施形態では、前記使用状態において、係合部110の一部が第1の被係合部121に挿入され、係合部110が第1の被係合部121に前記周方向に係合する。これにより、電動モビリティは前記使用状態に保持される(
図7)。
【0046】
前記使用状態において、係合部110と第1の被係合部121との係合が解除されると、ユーザは前輪側ボディ10と後輪側ボディ50とを互いに対し揺動させ、これにより電動モビリティを前記折り畳み状態とすることができる(
図5)。折り畳み状態においてこの電動モビリティは下記のように自立するように構成されている。折り畳み状態において背凭れ92を車両前方に向かって揺動させると、折り畳み状態の電動モビリティがよりコンパクトになる。
【0047】
図3および
図5に示すように、本実施形態では、前記使用状態から前記折り畳み状態に移行する時に、後輪側ボディ50は折り畳む方向に揺動軸線SA周りに20°以上揺動し、前輪側ボディ10も折り畳む方向に揺動軸線SA周りに20°以上揺動する。後輪側ボディ50および前輪側ボディ10が直立位置に向かって揺動するとも言える。後輪側ボディ50および前輪側ボディ10はそれぞれ揺動軸線SA周りに15°以上揺動することが好ましい。
【0048】
図5の折り畳み状態に示すように、上下方向延在部80は後輪60側からその上端まで略全体に亘って寸法αを有し、上下方向延在部80も折り畳み時に直立位置に向かって揺動する。これにより、使用状態では斜め前方に延びていた上下方向延在部80が折り畳み状態では主に上下方向に延びることになる。上下方向延在部80の長手方向と鉛直方向との成す角度が25°以下である場合、より好ましくは15°以下である場合、主に上下方向に延びていると言え、当該角度は
図5では約12°である。当該構造は、他の折り畳み式のモビリティ、荷物等に対して、前記折り畳み状態の電動モビリティが目立つことに繋がる。つまり、ユーザは自分の電動モビリティを見つけ易くなり、これは快適な使用に資する。目立たたせるために、前記略全体は好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、本実施形態では90%以上である。なお、本実施形態では、電動モビリティを折り畳むと、自然に上下方向延在部80が主に上下方向に延び、これもユーザによる快適な使用に資する。
【0049】
連結機構100は、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50のうち軸51が設けられていない方に第2の被係合部122を有し、第2の被係合部122の位置と第1の被係合部121の位置とは前記周方向に異なっている。
【0050】
前記折り畳み状態になると、係合部110の位置が第2の被係合部122に対応する位置に配置され、係合部110の一部が第2の被係合部122に挿入される(
図8)。これにより、係合部110が第2の被係合部122に前記周方向に係合し、前輪側ボディ10の後輪側ボディ50に対する位置が前記折り畳み状態の揺動位置に規制される揺動位置規制が行われる。つまり、前記折り畳み状態が維持される。逆に、係合部110の位置が第1の被係合部121に対応する位置まで前記揺動が行われると、係合部110の一部が第1の被係合部121に挿入される。
なお、係合部110を第1の被係合部121および第2の被係合部122に挿入する方向に付勢する付勢部材が後輪側ボディ50の例えば上下方向延在部80内に設けられていることが好ましい。
【0051】
本実施形態では、
図7に示す状態で、少なくとも前輪側ボディ10および後輪側ボディ50の重量によって、前輪20と後輪60が離れる方向に、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50が互いに対し揺動しようとする。これにより、係合部110が第1の被係合部121に前記周方向に押付けられた状態となる。
【0052】
この状態では、被操作部材89を操作することによって係合部110を第1の被係合部121から抜くことができない。このため、前記使用状態に維持するためのロックが意図せず解除される事態を回避できる。本実施形態では、係合部110を第1の被係合部121から抜くためには、被操作部材89の操作を行いながら、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50の少なくとも一方を後輪60と前輪20とが近づく方向、つまり折り畳む方向に僅かに揺動させる必要がある。例えば、前輪側ボディ10の一部である座席90を上方に向かって少し持ち上げると、前輪側ボディ10に折り畳む方向の力が加わる。
【0053】
前輪側ボディ10の座席90を上方に向かって少し持ち上げる際に、ユーザは後輪側ボディ50の足載せプレート54に足を載せることができる。これにより、ユーザは折り畳み作業をより容易且つ安定して行うことが可能になる。
図10および
図11にハッチングで断面が示されている足載せプレート54は、前記使用状態において、車両前方に向かって略水平方向又は斜め上方に延びる水平部54aと、水平部54aの前端部から車両前方に向かって斜め下方に延びる傾斜部54bとを有する。
【0054】
ユーザの足から足載せプレート54への力は、前記使用状態の時は水平部54aに主に加わり、前記折り畳み状態になる時に傾斜部54bにより多く加わるようになる。傾斜部54bがあることによって、折り畳み状態に移行する時にユーザは足載せプレート54に力を加え易い。
【0055】
図8に示す状態でも、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50の重量によって、前輪20と後輪60が離れる方向に、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50が互いに対し揺動しようとする。これにより、係合部110が第2の被係合部122に前記周方向に押付けられた状態となる。この状態では、被操作部材89を操作することによって係合部110を第2の被係合部122から抜くことができず、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50が前記使用状態の揺動位置にロックされる。本実施形態では、係合部110を第2の被係合部122から抜くためには、被操作部材89を押す作業と、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50の少なくとも一方を後輪60と前輪20とが近づく方向、つまり折り畳む方向に僅かに揺動させる必要がある。このため、意図せず通行人の接触等によって被操作部材89が押されて電動モビリティが意図せず展開することが防止される。
【0056】
例えば、前輪側ボディ10の一部である座席90を上方に向かって少し持ち上げ、前輪側ボディ10に折り畳む方向に力を加える。前輪側ボディ10の座席90を上方に向かって少し持ち上げる際に、ユーザは後輪側ボディ50の足載せプレート54に足を載せることができる。これにより、ユーザは折り畳み作業をより容易且つ安定して行うことが可能になる。
【0057】
上記説明のように、被操作部材89を押す時に前輪側ボディ10および後輪側ボディ50の少なくとも一方が折り畳む時と同じ方向に支えられる。このため、前輪側ボディ10および後輪側ボディ50が支えられずに被操作部材89だけが押されて前記揺動位置規制が解除され、これにより前輪側ボディ10および後輪側ボディ50が重力によって勢いよく使用状態になることが効果的に防止される。電動モビリティの重量は10kg以上又は20kg以上であることが多いので、当該構成は安全性を向上するために有用である。
【0058】
ユーザの足から足載せプレート54への力は、前記折り畳み状態の時に主に傾斜部54bに加わり、前記使用状態になる時に水平部54aに主に加わるようになる。傾斜部54bがあることにより、折り畳み状態において、ユーザは足載せプレート54に力を加え易い。これは、ユーザによる電動モビリティの快適な使用に資する。
【0059】
ここで、
図4等に示すように、前記使用状態において、被操作部材89は後輪側ボディ50における一対の上下方向延在部80の少なくとも一方の車両前側の面に設けられている。このため、ユーザが一方の手で前輪側ボディ10を折り畳み方向に少し揺動させる時に、ユーザは他方の手を被操作部材89の位置に自然に配置できる。これは、ユーザによる電動モビリティの快適な使用に資する。
【0060】
例えば水平な床面上において、前記使用状態から前記折り畳み状態にするために、後輪60と前輪20が近付くように後輪側ボディ50が前輪側ボディ10に対して揺動する。当該過程で、前輪側ボディ10の前端ローラ36が床面に接触し、後輪側ボディ50の後端ローラ53が床面に接触する。フットレストの下側に少なくとも一部が配置されている前端ローラ36はフットレストの前端部から前方、斜め下方等に出ているので、前述のように前端ローラ36が床面に接触する。そして、前記折り畳み状態とするために前輪側ボディ10および後輪側ボディ50を更に揺動させると、前端ローラ36と後端ローラ53とが互いに前後方向に近付き、
図3に示すように前輪20および後輪60が床面から離れる。
【0061】
このように、折り畳み状態の電動モビリティは、前端ローラ36および後端ローラ53によって床面に支持される。前端ローラ36は前輪20よりも前側で接地するので、折り畳み状態の電動モビリティは前端ローラ36によって安定して支持され、これはユーザによる電動モビリティの快適な使用に資する。前端ローラ36の代わりに前記前端キャスタが用いられる場合も電動モビリティは同様に安定して支持される。以下では主に前端ローラ36について説明されているが、前端ローラ36の代わりに前記前端キャスタが用いられる場合も同様である。
【0062】
本実施形態では、前端ローラ36および後端ローラ53は前後方向にのみ回転可能である。従って、床面が少し傾いている時に、電動モビリティの前後方向と傾斜方向とを実質的に直交させると、電動モビリティの傾斜に沿った移動が防止される。これは、ユーザによる電動モビリティの快適な使用に資する。なお、前端ローラ36および後端ローラ53の少なくとも一方にローラの回転を止めるためのブレーキが設けられてもよく、前端ローラ36および後端ローラ53とは別の場所に電動モビリティの移動を止めるためのストッパ、ブレーキ等が設けられてもよい。
【0063】
なお、本実施形態では、折り畳み状態の電動モビリティが前端ローラ36および後端ローラ53によって床面に支持されるが、折り畳み状態の電動モビリティが前端ローラ36および後輪60又は電動モビリティの他の車輪(図示せず)によって床面に支持されてもよい。上記実施形態では後輪側ボディ50は折り畳む方向に揺動軸線SA周りに20°以上揺動するが、例えば後輪側ボディ50の折り畳む方向の揺動角度が10°以下である場合に後端ローラ53が接地しない。この場合でも、前端ローラ36は前輪20よりも前側で接地し、前端ローラ36および後輪60は前後方向にのみ回転可能なので、前述と同様の作用効果を奏し得る。
【0064】
また、本実施形態では、後端ローラ53が後輪60よりも車両後方において床面に接地する。このため、折り畳み状態の電動モビリティがより安定し、ユーザによる電動モビリティの快適な使用に資する。
【0065】
電動モビリティの接地面は、アスファルト、コンクリート、石、土、タイル、プラスチック等の様々な材質から成る。前端ローラ36および後端ローラ53はそれぞれ前輪20および後輪60に比べて直径が小さいので、接地面上で電動モビリティが移動し難い。これは、折り畳み状態の電動モビリティが意図せず動くことを防止する上で有利であり、ユーザによる電動モビリティの快適な使用に資する。
【0066】
接地面が空港の床面、大型商業施設の床面、アスファルト等のように比較的平坦である場合、ユーザは折り畳み状態の電動モビリティを前端ローラ36および後端ローラ53によって容易に移動させることができる。この時、前端ローラ36および後端ローラ53が車両前後方向にしか回転しないので、意図しない方向にローラが向いていることもない。これは、電動モビリティのユーザによる快適な使用に資する。
【0067】
また、前端ローラ36を支持しているフットレストフレーム32は、左右の前輪20の支持部である2つの前輪支持部31を互いに連結する比較的強いフレームでもある。このため、前記折り畳み状態において前端ローラ36はしっかりと自立し、当該自立のための専用の部材が少なく、これは電動モビリティの軽量化に貢献する。このためには、前述のように、前端ローラ36がフットレストフレーム32に固定されること、より具体的には前端ローラ36の車軸を支持するローラ支持部36bがフットレストフレーム32に固定されることが好ましい。
【0068】
また、前端ローラ36がフットレストフレーム32に前後方向又は上下方向に移動できる態様で支持される構造も作成可能である。例えば、公知のリニアガイドをフットレストフレーム32に固定し、リニアガイドによって前端ローラ36を前後方向に移動可能に支持することも可能である。この場合、前記使用状態ではリニアガイドによって前端ローラ36がフットレストの下側に配置される。また、前記折り畳み状態になる時に、リニアガイドによって前端ローラ36が車両前方に移動し、前端ローラ36の少なくとも一部がフットレストの前端部から出る。本実施形態ではフットレストフレーム32に位置が変わらないように前端ローラ36が取付けられており、当該構成は折り畳み状態の電動モビリティが安定して自立することおよび軽量化に貢献する。これは、電動モビリティのユーザによる快適な使用に資する。
【0069】
または、フットプレート(フットレスト)35が前述のように揺動可能である場合は、足が載せられて下側揺動位置にあるフットプレート35の下側に前端ローラ36が配置され、前端ローラ36がフットプレート35の前端部から出ないこともある。この場合、前記折り畳み状態になる時に、フットプレート35を上方に揺動させることにより、フットプレートの前端部から前端ローラ36が前側、斜め下方、下方等に出る。この場合は、フットレストフレーム32に位置が変わらないように前端ローラ36を取付けることが可能であり、前述と同様の作用効果を奏する。
【0070】
また、前端ローラ36はフットレストの車両幅方向の中央部に対応した位置の下に配置されている。このため、乗車者がフットレストに足を置くときに前端ローラ36やホイルハウス35aが邪魔になり難い。前端ローラ36をフットレストの車両幅方向の中央部の下に2つ以上設けることも可能である。この場合も上記と同様の効果を奏し得る。
なお、例えば前端ローラ36が小さい時は、2つ又はそれ以上の前端ローラ36をフットレストの下側に互いに幅方向に間隔をおいて配置することもできる。当該間隔は10cm以上又は20cm以上の場合もあり得る。
【0071】
前記折り畳み状態において、一例では、前輪20は床面から1cm以下の距離だけ離れる。前端ローラ36は幅方向の中央部に対応した位置に配置されているので、折り畳み状態の電動モビリティが幅方向に倒れそうになる場合もある。この場合に、前輪20は床面から離れる距離が1cm以下であるため、前輪20が前記倒れを防ぐことに貢献する。当該距離は5mm以下であることがより好ましい。前記折り畳み状態において前輪20が接地面に接触していてもよい。この場合でも、各前輪20と比べて前端ローラ36に多くの荷重が加わっていれば、折り畳み状態の電動モビリティは前端ローラ36によって安定して支持される。
【0072】
図2に示すように、上端側部分85には、上端側部分85の他の部分よりも幅方向内側に凸形状を有する凸部85aが形成されている。凸部85aは乗車者の例えば腿又は膝の外側に連続して又は間欠的に接触し、これにより乗車者の姿勢が安定し易くなる。本実施形態では、
図12に示すように、一対の上端側部分85をそれぞれ対応する上下方向延在部80から取外し、一対の上下方向延在部80の上端側部分85を左右で交換すること、又は、上端側部分85を車両幅方向に反転することが可能である。この時に、凸部85aが幅方向外側に突出する姿勢で上端側部分85を上下方向延在部80に取付けることができる。当該構成は安価に実現可能であり、身体の大きな乗車者による電動モビリティの快適な使用に資する。なお、幅方向内側に突出している凸部85aを有さない他の上端側部分85を準備することも可能である。また、
図12において操作部73の位置を元の
図2の位置に残すように構成することも可能である。
【0073】
図13および
図14に示すように、被操作部材89よりも幅方向の内側に被操作部材89と共に押下げることができない固定部材89aが設けられることが好ましい。固定部材89aは例えば右側の上下方向延在部80に固定され、被操作部材89とほぼ同じ寸法だけ上下方向延在部80の前側面から突出している。固定部材89aの突出寸法が被操作部材89の突出寸法よりも小さくてもよく、大きくてもよい。被操作部材89と固定部材89aの距離は3mm以下であることが好ましく、被操作部材89と固定部材89aとが接触している場合もある。
固定部材89aがあることによって、ユーザが被操作部材89を押し下げる時に、ユーザの手が固定部材89aよりも幅方向内側に配置され難い。これは、折り畳み作業時および展開作業時におけるユーザの怪我のリスクを低減することに繋がり、電動モビリティの快適な使用に資する。
【0074】
なお、前輪20を公知の全方向移動車輪とすることも可能である。一例の全方向移動車輪は、外周面が複数のローラによって形成され、複数のローラはそれぞれ全方向移動車輪の回転軸線に沿った方向に回転可能であり、全方向車輪は当該回転軸線に沿った方向にも移動可能である。
【0075】
前記前端キャスタは、例えば、車輪と、車両幅方向に互いに対向し前記車輪を支持する一対のプレート状の支持部と、前記一対の支持部を互いに繋げるベース部とを有する。前記前端キャスタは、例えば、前記ベース部が接続部34、フットプレート35の下面等に固定され、これにより揺動しない公知の固定タイプキャスタであり得る。また、前記前端キャスタは、前記ベース部が接続部34、フットプレート35の下面等に上下方向に延びる軸線周りに揺動する公知の揺動キャスタであり得る。前記前端キャスタは、前記軸線の真下に前記車輪の回転軸線が存在するタイプ、前記軸線の真下に前記車輪の回転軸線が存在しないタイプ等であり得る。
【0076】
前記前端キャスタは、金属球が回転自在に支持された公知のボールキャスタ、車輪が前後方向および左右方向に転動するキャスタ等であってもよい。この場合でも、折り畳み状態の電動モビリティが前端キャスタによって安定して支持される。
【符号の説明】
【0077】
10 前輪側ボディ
20 前輪
30 前輪支持フレーム
31 前輪支持部
32 フットレストフレーム(フットレスト)
35 フットプレート(フットレスト)
36 前端ローラ
50 後輪側ボディ
51 軸
60 後輪
73 操作部
80 上下方向延在部
89 被操作部材
SA 揺動軸線
BA バッテリ
【要約】 (修正有)
【課題】ユーザが快適に使用できる電動モビリティを提供する。
【解決手段】この電動モビリティは、前輪側ボディ10と、後輪側ボディ50と、使用状態において乗車者が着座する座席90と、前輪側ボディ10を後輪側ボディ50に車両幅方向に延びる揺動軸線SA周りに揺動可能に連結する連結機構と、を備え、前輪20と後輪60とが近づくように前輪側ボディ10および後輪側ボディ50が車両前後方向に揺動することにより折り畳み状態となる電動モビリティであって、前輪側ボディ10に設けられたフットレスト35と、前輪側ボディ10に設けられ、前記使用状態において前輪20の前端よりも車両前側に配置され、前記使用状態において接地しない前端ローラ36又は前記前端キャスタと、を備え、前記折り畳み状態において、当該電動モビリティを自立させるために前端ローラ36又は前記前端キャスタが接地する。
【選択図】
図5