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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】半導体素子メモリ装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/04 20060101AFI20220412BHJP
   G11C 11/401 20060101ALI20220412BHJP
   H01L 27/10 20060101ALI20220412BHJP
   H01L 21/8242 20060101ALI20220412BHJP
   H01L 27/108 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
G11C16/04
G11C11/401
H01L27/10 451
H01L27/108 321
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021525272
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002368
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】311014428
【氏名又は名称】ユニサンティス エレクトロニクス シンガポール プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Unisantis Electronics Singapore Pte Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(72)【発明者】
【氏名】作井 康司
(72)【発明者】
【氏名】原田 望
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-218556(JP,A)
【文献】特開2006-80280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/04
G11C 11/401
H01L 27/10
H01L 21/8242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、前記基板に対して、垂直方向に立つか、または水平方向に伸延する半導体母体と、
前記半導体母体の両端にある第1の不純物層と、第2の不純物層と、
前記第1の不純物層と前記第2の不純物層の間の前記半導体母体の側面の一部または全てを囲み、前記第1の不純物層に接するか、または、近接した第1のゲート絶縁層と、
前記半導体母体の側面の一部または全てを囲み、前記第1のゲート絶縁層に繋がり、且つ前記第2の不純物層に接するか、または、近接した第2のゲート絶縁層と、
前記第1のゲート絶縁層を覆う第1のゲート導体層と、
前記第2のゲート絶縁層を覆う第2のゲート導体層と、
前記半導体母体が前記第1のゲート絶縁層と、前記第2のゲート絶縁層とで覆われたチャネル半導体層をと、有し、
前記第1のゲート導体層と、前記第2のゲート導体層と、前記第1の不純物領域と、前記第2の不純物領域と、に印加する電圧を制御して、前記チャネル半導体層の内部に、インパクトイオン化現象、またはゲート誘起ドレインリーク電流により生成した正孔群を保持し、
書込み動作時に、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層の一方もしくは両方の電圧より、ビルトイン電圧だけ高い、第1のデータ保持電圧とし、
前記第1のゲート導体層と前記チャネル半導体層との間の第1の容量結合と、前記第2のゲート導体層と前記チャネル半導体層との間の第2の容量結合とにより、前記チャネル半導体層の電圧を前記第1のデータ保持電圧よりも高い電圧に制御して、前記チャネル半導体層の電圧が、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層の一方もしくは両方の電圧より、ビルトイン電圧だけ高くなるまで、前記正孔群のうちの残存正孔群を前記チャネル半導体層の内部から、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層の一方もしくは両方通して除去し、
消去動作時に、前記第1の容量結合及び前記第2の容量結合により、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1のデータ保持電圧よりも低い、第2のデータ保持電圧とする、
ことを特徴とする柱状半導体メモリセル。
【請求項2】
前記消去動作時に、
前記第1のゲート導体層の電圧を、第1の電圧から、前記第1の電圧よりも高い第2の電圧とし、前記第2のゲート導体層の電圧を、第3の電圧から、前記第3の電圧よりも高い第4の電圧とし、
第1の期間において、前記第1の容量結合と前記第2の容量結合とにより、前記チャネル半導体層の電圧を前記第1のデータ保持電圧よりも高い電圧に制御し、
第2の期間において、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1の不純物層と前記第2の不純物層の一方もしくは両方の電圧より、ビルトイン電圧だけ高くなるまで、前記正孔群のうちの残存正孔群を前記チャネル半導体層の内部から、前記第1の不純物層と、前記第2の不純物層の一方もしくは両方を通して抜きとり、
第3の期間において、前記第1の容量結合と前記第2の容量結合とにより、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1のデータ保持電圧よりも低い、第2のデータ保持電圧とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の柱状半導体メモリセル。
【請求項3】
前記第1の不純物領域と、前記第2の不純物領域と、に印加する電圧により前記第1の容量結合及び前記第2の容量結合の一方もしくは両方を用い、前記チャネル半導体層の電圧を変化させる前記第1の期間と、前記第2の期間の一部、又はすべての期間で、前記チャネル半導体層に反転層を形成させない、
ことを特徴とする請求項1に記載の柱状半導体メモリセル。
【請求項4】
前記第1のゲート導体層と、前記チャネル半導体層との間、の第1のゲート容量が、前記第2のゲート導体層と、前記チャネル半導体層との間、の第2のゲート容量よりも大きくなるように形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の柱状半導体メモリセル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の柱状半導体メモリセルを複数個行列状に配列してブロックとし、前記メモリ消去動作の際に前記ブロック内の全ての前記半導体母体に対して、同時に前記メモリ消去動作を行う、
ことを特徴とする柱状半導体メモリ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の柱状半導体メモリ装置を複数配置したブロック群を含み、
前記第1の不純物層は、ソース線と接続し、前記第2の不純物層は、ビット線と接続し、前記第1のゲート導体層と前記第2のゲート導体層のうちの一方がワード線と接続すれば、他方が第1の駆動制御線と接続し、
前記ソース線は、前記ブロック内の前記半導体母体間で繋がり、
前記ソース線と、前記ビット線と、前記第1の駆動制御線と、前記ワード線とに印加する電圧により、前記ブロック群の中の選択した前記ブロックの全ての前記半導体母体にある前記残存正孔群を除去する前記消去動作を行う、
ことを特徴とする柱状半導体メモリ装置。
【請求項7】
前記ブロックの物理アドレスと論理アドレスを対応させる論物変換テーブルと、前記論物変換テーブルを管理するコントローラ回路を備え、
前記論物変換テーブルと、前記コントローラ回路とが、片方、もしくは、両方が前記柱状半導体メモリセルの外部にある、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の柱状半導体メモリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を用いた柱状半導体メモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(Large Scale Integration) 技術開発において、メモリ素子の高集積化と高性能化が求められている。
【0003】
通常のプレナー型MOSトランジスタでは、チャネルが半導体基板の上表面に沿う水平方向に延在する。これに対して、SGTのチャネルは、半導体基板の上表面に対して垂直な方向に延在する(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。このため、SGTはプレナー型MOSトランジスタと比べ、半導体装置の高密度化が可能である。このSGTを選択トランジスタとして用いて、キャパシタを接続したDRAM(Dynamic Random Access Memory、例えば、非特許文献2を参照)、抵抗変化素子を接続したPCM(Phase Change Memory、例えば、非特許文献3を参照)、RRAM(Resistive Random Access Memory、例えば、非特許文献4を参照)、電流により磁気スピンの向きを変化させて抵抗を変化させるMRAM(Magneto-resistive Random Access Memory、例えば、非特許文献5を参照)などの高集積化を行うことができる。また、キャパシタを有しない、1個のMOSトランジスタで構成された、DRAMメモリセル(非特許文献7を参照)などがある。本願は、抵抗変化素子やキャパシタを有しない、MOSトランジスタのみで構成可能な、ダイナミック フラッシュ メモリに関する。
【0004】
図8(a)~(d)に、前述したキャパシタを有しない、1個のMOSトランジスタで構成された、DRAMメモリセルの書込み動作と、図9(a)と(b)に、動作上の問題点と、図10(a)~(c)に、読出し動作を示す(非特許文献7~10を参照)。図8(a)は、“1”書込み状態を示している。ここで、メモリセルは、SOI基板100に形成され、ソースN+層103にはソース線SLが接続され、ドレインN+層104にはビット線BLが接続され、ゲート導電層105にはワード線WLが接続され、MOSトランジスタ110のフローティングボディ(Floating Body)102により構成され、キャパシタを有さず、MOSトランジスタ110が1個でDRAMのメモリセルが構成されている。なお、フローティングボディ102直下には、SOI基板のSiO2層101が接している。このMOSトランジスタ110、1個で構成されたメモリセルの“1”書込みを行う際には、MOSトランジスタ110を飽和領域で動作させる。すなわち、ソースN+層103から延びる電子のチャネル107には、ピンチオフ点108があり、ビット線が接続しているドレインN+層104までには、到達していない。このようにドレインN+層に接続されたビット線BLとゲート導電層105に接続されたワード線WLを共に高電圧にして、ゲート電圧をドレイン電圧の約1/2程度で、MOSトランジスタ110を動作させると、ドレインN+層104近傍のピンチオフ点108において、電界強度が最大となる。この結果、ソースN+層103からドレインN+層104に向かって流れる加速された電子は、Siの格子に衝突して、その時に失う運動エネルギーによって、電子・正孔対が生成される(インパクトイオン化現象)。発生した大部分の電子(図示せず)は、ドレインN+層104に到達する。また、ごく一部のとても熱い電子は、ゲート酸化膜109を飛び越えて、ゲート導電層105に到達する。そして、同時に発生した正孔106は、フローティングボディ102を充電する。この場合、発生した正孔は、フローティングボディ102がP型Siのため、多数キャリアの増分として、寄与する。フローティングボディ102は、生成された正孔106で満たされ、フローティングボディ102の電圧がソースN+層103よりもVb以上に高くなると、さらに生成された正孔は、ソースN+層103に放電する。ここで、Vbは、ソースN+層103とP層のフローティングボディ102との間のPN接合のビルトイン電圧であり、約0.7Vである。図8(b)には、生成された正孔106でフローティングボディ102が飽和充電された様子を示している。
【0005】
次に、図8(c)を用いて、メモリセル110の“0”書込み動作を説明する。共通な選択ワード線WLに対して、ランダムに“1”書込みのメモリセル110と“0”書込みのメモリセル110が存在する。図8(c)では、“1”書込み状態から“0”書込み状態に書き換わる様子を示している。“0”書込み時には、ビット線BLの電圧を負バイアスにして、ドレインN+層104とP層のフローティングボディ102との間のPN接合を順バイアスにする。この結果、フローティングボディ102に予め前サイクルで生成された正孔106は、ビット線BLに接続されたドレインN+層104に流れる。書込み動作が終了すると、生成された正孔106で満たされたメモリセル110(図8(b))と、生成された正孔が吐き出されたメモリセル110(図8(c))の2つのメモリセルの状態が得られる。正孔106で満たされたメモリセル110のフローティングボディ102の電位は、生成された正孔がいないフローティングボディ102よりも高くなる。したがって、“1”書込みのメモリセル110のしきい値電圧は、“0”書込みのメモリセル110のしきい値電圧よりも低くなる。その様子を図8(d)に示している。
【0006】
次に、この1個のMOSトランジスタ110で構成されたメモリセルの動作上の問題点を図9(a)と(b)を用いて、説明する。図9(a)で示したように、フローティングボディの容量CFBは、ワード線の接続されたゲートとフローティングボディ間の容量CWLと、ソース線の接続されたソースN+層103とフローティングボディ102との間のPN接合の接合容量CSLと、ビット線の接続されたドレインN+層104とフローティングボディ102との間のPN接合の接合容量CBLとの総和で、
CFB = CWL + CBL + CSL (10)
で表される。また、ワード線の接続されたゲートとフローティングボディ間の容量結合比βWLは、
βWL=CWL/(CWL + CBL + CSL) (11)
で表される。したがって、読出し時または書込み時にワード線電圧VWLが振幅すると、メモリセルの記憶ノード(接点)となるフローティングボディ102の電圧も、その影響を受ける。その様子を図9(b)に示している。読出し時、または、書込み時にワード線電圧VWLが0VからVWLHに上昇すると、フローティングボディ102の電圧VFBは、ワード線電圧が変化する前の初期状態の電圧VFB1からVFB2へワード線との容量結合によって上昇する。その電圧変化量ΔVFBは、
ΔVFB = VFB1 - VFB2
= βWL ×VWLH (12)
で表される。
ここで、式(11)のβWLにおいて、CWLの寄与率が大きく、例えば、CWL:CBL:CSL=8:1:1である。この場合、β=0.8となる。ワード線が、例えば、書込み時の5Vから、書込み終了後に0Vになると、ワード線WLとフローティングボディ102との容量結合によって、フローティングボディ102が、5V×βWL=4Vも振幅ノイズを受ける。このため、書込み時のフローティングボディ102の“1”電位と“0”電位との電位差マージンを十分に取れない問題点があった。
【0007】
図10(a)~(c)に読出し動作を示しており、図10(a)は、“1”書込み状態を、図10(b)は、“0”書込み状態を示している。しかし、実際には、“1”書込みでフローティングボディ102にVbが書き込まれていても、書込み終了でワード線が0Vに戻ると、フローティングボディ102は、負バイアスに引き下げられる。“0”が書かれる際には、さらに深く負バイアスになってしまうため、図10(c)に示すように、書込みの際に“1”と“0”との電位差マージンを十分に大きく出来ないため、実際にキャパシタを有しない、DRAMメモリセルの製品化が困難な状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平2-188966号公報
【文献】特開平3-171768号公報
【文献】特許第3957774号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Hiroshi Takato, Kazumasa Sunouchi, Naoko Okabe, Akihiro Nitayama, Katsuhiko Hieda, Fumio Horiguchi, and Fujio Masuoka: IEEE Transaction on Electron Devices, Vol.38, No.3, pp.573-578 (1991)
【文献】H. Chung, H. Kim, H. Kim, K. Kim, S. Kim, K. Dong, J. Kim, Y.C. Oh, Y. Hwang, H. Hong, G. Jin, and C. Chung: “4F2 DRAM Cell with Vertical Pillar Transistor (VPT),” 2011 Proceeding of the European Solid-State Device Research Conference, (2011)
【文献】H. S. Philip Wong, S. Raoux, S. Kim, Jiale Liang, J. R. Reifenberg, B. Rajendran, M. Asheghi and K. E. Goodson: “Phase Change Memory,” Proceeding of IEEE, Vol.98, No 12, December, pp.2201-2227 (2010)
【文献】T. Tsunoda, K. Kinoshita, H. Noshiro, Y. Yamazaki, T. Iizuka, Y. Ito, A. Takahashi, A. Okano, Y. Sato, T. Fukano, M. Aoki, and Y. Sugiyama: “Low Power and High Speed Switching of Ti-doped NiO ReRAM under the Unipolar Voltage Source of less than 3V,” IEDM (2007)
【文献】W. Kang, L. Zhang, J. Klein, Y. Zhang, D. Ravelosona, and W. Zhao: “Reconfigurable Codesign of STT-MRAM Under Process Variations in Deeply Scaled Technology,” IEEE Transaction on Electron Devices, pp.1-9 (2015)
【文献】M. G. Ertosum, K. Lim, C. Park, J. Oh, P. Kirsch, and K. C. Saraswat: “Novel Capacitorless Single-Transistor Charge-Trap DRAM (1T CT DRAM) Utilizing Electron,” IEEE Electron Device Letter, Vol. 31, No.5, pp.405-407 (2010)
【文献】J. Wan, L. Rojer, A. Zaslavsky, and S. Critoloveanu: “A Compact Capacitor-Less High-Speed DRAM Using Field Effect-Controlled Charge Regeneration,” Electron Device Letters, Vol. 35, No.2, pp.179-181 (2012)
【文献】T. Ohsawa, K. Fujita, T. Higashi, Y. Iwata, T. Kajiyama, Y. Asao, and K. Sunouchi: “Memory design using a one-transistor gain cell on SOI,” IEEE JSSC, vol.37, No.11, pp1510-1522 (2002).
【文献】T. Shino, N. Kusunoki, T. Higashi, T. Ohsawa, K. Fujita, K. Hatsuda, N. Ikumi, F. Matsuoka, Y. Kajitani, R. Fukuda, Y. Watanabe, Y. Minami, A. Sakamoto, J. Nishimura, H. Nakajima, M. Morikado, K. Inoh, T. Hamamoto, A. Nitayama: “Floating Body RAM Technology and its Scalability to 32nm Node and Beyond,” IEEE IEDM (2006).
【文献】E. Yoshida: “A Capacitorless 1T-DRAM Technology Using Gate-Induced Drain-Leakage (GIDL) Current for Low-Power and High-Speed Embedded Memory,” IEEE IEDM (2006).
【文献】J. Y. Song, W. Y. Choi, J. H. Park, J. D. Lee, and B-G. Park: “Design Optimization of Gate-All-Around (GAA) MOSFETs,” IEEE Trans. Electron Devices, vol. 5, no. 3, pp.186-191, May 2006.
【文献】N. Loubet, et al.: “Stacked Nanosheet Gate-All-Around Transistor to Enable Scaling Beyond FinFET,” 2017 IEEE Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers, T17-5, T230-T231, June 2017.
【文献】H. Jiang, N. Xu, B. Chen, L. Zeng1, Y. He, G. Du, X. Liu and X. Zhang: “Experimental investigation of self-heating effect (SHE) in multiple-fin SOI FinFETs,” Semicond. Sci. Technol. 29 (2014) 115021 (7pp).
【文献】E. Yoshida, and T. Tanaka: “A Capacitorless 1T-DRAM Technology Using Gate-Induced Drain-Leakage (GIDL) Current for Low-Power and High-Speed Embedded Memory,” IEEE Transactions on Electron Devices, Vol. 53, No. 4, pp. 692-69, Apr. 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
SGTを用いたメモリ装置でキャパシタを無くした、1個のトランジス型のDRAM(ゲインセル)では、ワード線とフローティング状態のSGTのボディとの容量結合カップリングが大きく、データ読み出し時や書き込み時にワード線の電位を振幅させると、直接SGTボディへのノイズとして、伝達されてしまう問題点があった。この結果、誤読み出しや記憶データの誤った書き換えの問題を引き起こし、キャパシタを無くした1トランジス型のDRAM(ゲインセル)の実用化が困難となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る柱状半導体メモリセルは、
基板上に、前記基板に対して、垂直方向に立つか、または水平方向に伸延する半導体母体と、
前記半導体母体の両端にある第1の不純物層と、第2の不純物層と、
前記第1の不純物層と前記第2の不純物層の間の前記半導体母体の側面の一部または全てを囲み、前記第1の不純物層に接するか、または、近接した第1のゲート絶縁層と、
前記半導体母体の側面の一部または全てを囲み、前記第1のゲート絶縁層に繋がり、且つ前記第2の不純物層に接するか、または、近接した第2のゲート絶縁層と、
前記第1のゲート絶縁層を覆う第1のゲート導体層と、
前記第2のゲート絶縁層を覆う第2のゲート導体層と、
前記半導体母体が前記第1のゲート絶縁層と、前記第2のゲート絶縁層とで覆われたチャネル半導体層をと、有し、
前記第1のゲート導体層と、前記第2のゲート導体層と、前記第1の不純物領域と、前記第2の不純物領域と、に印加する電圧を制御して、前記チャネル半導体層の内部に、インパクトイオン化現象、またはゲート誘起ドレインリーク電流により生成した正孔群を保持し、
書込み動作時に、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層の一方もしくは両方の電圧より、ビルトイン電圧だけ高い、第1のデータ保持電圧とし、
前記第1のゲート導体層と前記チャネル半導体層との間の第1の容量結合と、前記第2のゲート導体層と前記チャネル半導体層との間の第2の容量結合とにより、前記チャネル半導体層の電圧を前記第1のデータ保持電圧よりも高い電圧に制御して、前記チャネル半導体層の電圧が、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層の一方もしくは両方の電圧より、ビルトイン電圧だけ高くなるまで、前記正孔群のうちの残存正孔群を前記チャネル半導体層の内部から、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層の一方もしくは両方通して除去し、
消去動作時に、前記第1の容量結合及び前記第2の容量結合により、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1のデータ保持電圧よりも低い、第2のデータ保持電圧とする、
ことを特徴とする。(第1発明)
【0012】
上記第1発明において、
前記消去動作時に、
前記第1のゲート導体層の電圧を、第1の電圧から、前記第1の電圧よりも高い第2の電圧とし、前記第2のゲート導体層の電圧を、第3の電圧から、前記第3の電圧よりも高い第4の電圧とし、
第1の期間において、前記第1の容量結合と前記第2の容量結合とにより、前記チャネル半導体層の電圧を前記第1のデータ保持電圧よりも高い電圧に制御し、
第2の期間において、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1の不純物層と前記第2の不純物層の一方もしくは両方の電圧より、ビルトイン電圧だけ高くなるまで、前記正孔群のうちの残存正孔群を前記チャネル半導体層の内部から、前記第1の不純物層と、前記第2の不純物層の一方もしくは両方を通して抜きとり、
第3の期間において、前記第1の容量結合と前記第2の容量結合とにより、前記チャネル半導体層の電圧を、前記第1のデータ保持電圧よりも低い、第2のデータ保持電圧とする、
ことを特徴とする。(第2発明)
【0013】
上記第1発明において、前記第1の不純物領域と、前記第2の不純物領域と、に印加する電圧により前記第1の容量結合及び前記第2の容量結合の一方もしくは両方を用い、前記チャネル半導体層の電圧を変化させる前記第1の期間と、前記第2の期間の一部、又はすべての期間で、前記チャネル半導体層に反転層を形成させない、
ことを特徴とする。(第3発明)
【0014】
上記第1発明において、前記第1のゲート導体層と、前記チャネル半導体層との間、の第1のゲート容量が、前記第2のゲート導体層と、前記チャネル半導体層との間、の第2のゲート容量よりも大きくなるように形成する、
ことを特徴とする。(第4発明)
【0015】
本発明に係る柱状半導体メモリ装置は、上記第1乃至4発明のいずれかの柱状半導体メモリセルを複数個行列状に配列してブロックとし、前記メモリ消去動作の際に前記ブロック内の全ての前記半導体母体に対して、同時に前記メモリ消去動作を行う、
ことを特徴とする。(第5発明)
【0016】
本発明に係る柱状半導体メモリ装置は、上記第5発明の柱状半導体メモリ装置を複数配置したブロック群を含み、
前記第1の不純物層は、ソース線と接続し、前記第2の不純物層は、ビット線と接続し、前記第1のゲート導体層と前記第2のゲート導体層のうちの一方がワード線と接続すれば、他方が第1の駆動制御線と接続し、
前記ソース線は、前記ブロック内の前記半導体母体間で繋がり、
前記ソース線と、前記ビット線と、前記第1の駆動制御線と、前記ワード線とに印加する電圧により、前記ブロック群の中の選択した前記ブロックの全ての前記半導体母体にある前記残存正孔群を除去する前記消去動作を行う、
ことを特徴とする。(第6発明)
【0017】
上記第5及び第6発明のいずれかにおいて、前記ブロックの物理アドレスと論理アドレスを対応させる論物変換テーブルと、前記論物変換テーブルを管理するコントローラ回路を備え、
前記論物変換テーブルと、前記コントローラ回路とが、片方、もしくは、両方が前記柱状半導体メモリセルの外部にある、
ことを特徴とする。(第7発明)
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るSGTを有するメモリ装置の構造図である。
図2】第1実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のプレート線PLに接続された第1のゲート導体層5aのゲート容量が、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくなるようにした場合の効果を説明する図である。
図3】第1実施形態に係るSGTを有するメモリ装置の書込み動作メカニズムを説明するための図である。
図4A】第1実施形態に係るSGTを有するメモリ装置の消去動作メカニズムを説明するための図である。
図4B】第1実施形態に係るSGTを有するメモリ装置の消去動作メカニズムを説明するための図である。
図5】第1実施形態に係るSGTを有するメモリ装置の読出し動作メカニズムを説明するための図である。
図6A】第2実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のブロック消去動作を説明するための回路ブロック図とブロック消去を行うための印加電圧図である。
図6B】第2実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のブロック消去動作を説明するための回路ブロック図とブロック消去を行うための印加電圧図である。
図7A】第3実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のブロック書き換え動作とブロック消去動作を説明するための回路ブロック図である。
図7B】第3実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のブロック書き換え動作とブロック消去動作を説明するための回路ブロック図である。
図7C】第3実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のブロック書き換え動作とブロック消去動作を説明するための回路ブロック図である。
図7D】第3実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のブロック書き換え動作とブロック消去動作を説明するための回路ブロック図である。
図8】従来例のキャパシタを有しない、DRAMメモリセルの書込み動作を説明するための図である。
図9】従来例のキャパシタを有しない、DRAMメモリセルの動作上の問題点を説明するための図である。
図10】従来例のキャパシタを有しない、DRAMメモリセルの読出し動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る、半導体素子を用いたメモリ装置(以後、ダイナミック フラッシュ メモリと呼ぶ)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1図5を用いて、本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルの構造と動作メカニズムを説明する。図1を用いて、ダイナミック フラッシュ メモリセルの構造を説明する。そして、図2を用いて、プレート線PLに接続された第1のゲート導体層5aのゲート容量が、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくなるようにした場合の効果を説明する。そして、図3を用いてデータ書込み動作メカニズムを、図4を用いてデータ消去動作メカニズムを、図5を用いてデータ読出し動作メカニズムを説明する。
【0021】
図1に、本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルの構造を示す。基板1(特許請求の範囲の「基板」の一例である)上に形成した、P型又はi型(真性型)の導電型を有するシリコン半導体柱2(以下、シリコン半導体柱を「Si柱」と称する。)(特許請求の範囲の「半導体母体」の一例である)内の上下の位置に、一方がソースとなる場合に、他方がドレインとなるN+層3a、3b(以下、ドナー不純物を高濃度で含む半導体領域を「N+層」と称する。)(特許請求の範囲の「第1の不純物層」、「第2の不純物層」の一例である)が形成されている。このソース、ドレインとなるN+層3a、3b間のSi柱2の部分がチャネル領域7(特許請求の範囲の「チャネル半導体層」の一例である)となる。このチャネル領域7を囲むように第1のゲート絶縁層4a(特許請求の範囲の「第1のゲート絶縁層」の一例である)、第2のゲート絶縁層4b(特許請求の範囲の「第2のゲート絶縁層」の一例である)が形成されている。この第1のゲート絶縁層4a、第2のゲート絶縁層4bは、このソース、ドレインとなるN+層3a、3bに、それぞれ接する、または近接している。この第1のゲート絶縁層4a、第2のゲート絶縁層4bを囲むように第1のゲート導体層5a(特許請求の範囲の「第1のゲート導体層」の一例である)、第2のゲート導体層5b(特許請求の範囲の「第2のゲート導体層」の一例である)がそれぞれ形成されている。そして、第1のゲート導体層5a、第2のゲート導体層5bは絶縁層6(特許請求の範囲の「第1の絶縁層」の一例である)により分離されている。そして、N+層3a、3b間のチャネル領域7は、第1のゲート絶縁層4aで囲まれた第1のチャネルSi層7a(特許請求の範囲の「第1のチャネル半導体層」の一例である)と、第2のゲート絶縁層4bで囲まれた第2のチャネルSi層7b(特許請求の範囲の「第2のチャネル半導体層」の一例である)と、よりなる。これによりソース、ドレインとなるN+層3a、3b、チャネル領域7、第1のゲート絶縁層4a、第2のゲート絶縁層4b、第1のゲート導体層5a、第2のゲート導体層5bからなるダイナミック フラッシュ メモリセル10が形成される。そして、ソースとなるN+層3aはソース線SL(特許請求の範囲の「ソース線」の一例である)に、ドレインとなるN+層3bはビット線BL(特許請求の範囲の「ビット線」の一例である)に、第1のゲート導体層5aは第1の駆動制御線(特許請求の範囲の「第1の駆動制御線」の一例である)であるプレート線PLに、第2のゲート導体層5bはワード線WL(特許請求の範囲の「ワード線」の一例である)に、それぞれ接続している。プレート線PLが接続された、第1のゲート導体層5aのゲート容量は、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくなるような構造を有することが望ましい。
【0022】
なお、図1では、プレート線PLに接続された第1のゲート導体層5aのゲート容量が、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくなるように第1のゲート導体層5aのゲート長を、第2のゲート導体層5bのゲート長よりも長くしている。しかし、その他にも、第1のゲート導体層5aのゲート長を、第2のゲート導体層5bのゲート長よりも長くせずに、それぞれのゲート絶縁層の膜厚を変えて、第1のゲート絶縁層4aのゲート絶縁膜の膜厚を、第2のゲート絶縁層4bのゲート絶縁膜の膜厚よりも薄くしてもよい。また、それぞれのゲート絶縁層の材料の誘電率を変えて、第1のゲート絶縁層4aのゲート絶縁膜の誘電率を、第2のゲート絶縁層4bのゲート絶縁膜の誘電率よりも高くしてもよい。また、ゲート導体層5a、5bの長さ、ゲート絶縁層4a、4bの膜厚、誘電率のいずれかを組み合わせて、プレート線PLに接続された第1のゲート導体層5aのゲート容量が、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくしてもよい。
【0023】
図2(a)~(c)は、プレート線PLに接続された第1のゲート導体層5aのゲート容量が、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくなるようにした場合の効果を説明する図である。
【0024】
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルの構造図を主要部分のみを簡略化して示している。ダイナミック フラッシュ メモリセルには、ビット線BL、ワード線WL、プレート線PL、ソース線SLが接続されており、その電圧状態によって、チャネル領域7の電位状態が決まる。
【0025】
図2(b)は、それぞれの容量関係を説明するための図である。チャネル領域7の容量CFBは、ワード線WLの接続されたゲート導体層5bとチャネル領域7間の容量CWLと、プレート線PLの接続されたゲート導体層5aとチャネル領域7間の容量CPLと、ソース線SLの接続されたソースN+層3aとチャネル領域7との間のPN接合の接合容量CSLと、ビット線BLの接続されたドレインN+層3bとチャネル領域7との間のPN接合の接合容量CBLとの総和で、
CFB = CWL + CPL + CBL + CSL (1)
で表される。
したがって、ワード線WLとチャネル領域7間のカップリング率βWL、プレート線PLとチャネル領域7間のカップリング率βPL、ビット線BLとチャネル領域7間のカップリング率βBL、ソース線SLとチャネル領域7間のカップリング率βSLは、以下でそれぞれ表される。
βWL= CWL / (CWL + CPL+ CBL + CSL) (2)
βPL= CPL / (CWL + CPL+ CBL + CSL) (3)
βBL= CBL / (CWL + CPL+ CBL + CSL) (4)
βSL= CSL / (CWL + CPL+ CBL + CSL) (5)
ここで、CPL >CWL であるため、βPL>βWLとなる。
【0026】
図2(c)は、ワード線WLの電圧VWLが、読出し動作と書込み動作で、上昇し、その後に下降する時のチャネル領域7の電圧VFBの変化を説明するための図である。ここで、ワード線WLの電圧VWLが、0Vから高電圧状態VWLHに上がった時に、チャネル領域7の電圧VFBが、低電圧状態VFBLから高出圧状態VFBHの電位差ΔVFBは、以下となる。
ΔVFB=VFBH-VFBL
=βWL×VWLH (6)
ワード線WLとチャネル領域7間のカップリング率βWLが小さく、プレート線PLとチャネル領域7間のカップリング率βPLが大きいため、ΔVFBは、小さく、ワード線WLの電圧VWLが、読出し動作と書込み動作で、上下しても、チャネル領域7の電圧VFBは、殆ど変化しない。
【0027】
図3(a)~(d)に、本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルの書込み動作を示す。図3(a)に書込み動作のメカニズム、図3(b)にビット線BL、ソース線SL、プレート線PL、ワード線WLと、フローティングボディFBとなっているチャネル領域7の動作波形を示す。時刻T0で、ダイナミック フラッシュ メモリセルは、“0”消去状態にあり、チャネル領域7の電圧は、VFB“0”となっている。また、ビット線BL、ソース線SL、ワード線WLには、Vssが、プレート線PLには、VPLLが印加している。ここで、例えば、Vssは0Vで、VPLLは、2Vである。次に時刻T1~T2で、ビット線BLがVssからVBLHへと上がると、例えば、Vssが0Vの場合、チャネル領域7の電圧は、ビット線BLとチャネル領域7との容量結合により、VFB“0”+βBL×VBLHとなる。
【0028】
引き続き、図3(a)と(b)を用いて、ダイナミック フラッシュ メモリセルの書込み動作を説明する。時刻T3~T4で、ワード線WLがVssからVWLHへと上がる。これにより、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層5bがチャネル領域7を取り囲む第2のNチャネルMOSトランジスタの“0”消去のしきい値電圧をVtWL“0”とすると、ワード線WLの電圧上昇に伴い、VssからVtWL“0”までは、ワード線WLとチャネル領域7との第2の容量結合(特許請求の範囲の「第2の容量結合」の一例である)により、チャネル領域7の電圧は、VFB“0”+βBL×VBLH+βWL×VtWL“0”となる。ワード線WLの電圧がVtWL“0”以上に上昇すると、第2のゲート導体層5bの内周のチャネル領域7に環状の反転層12bが形成され、ワード線WLとチャネル領域7との第2の容量結合を遮る。
【0029】
引き続き、図3(a)と(b)を用いて、ダイナミック フラッシュ メモリセルの書込み動作を説明する。時刻T3~T4で、プレート線PLの接続された第1のゲート導体層5aに、例えば、VPLL=2Vを固定入力し、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層5bに、例えば、VWLH=4Vまで上がる。その結果、図3(a)で示したように、プレート線PLの接続された第1のゲート導体層5aの内周のチャネル領域7に環状の反転層12aが形成され、その反転層12aには、ピンチオフ点13が存在する。この結果、第1のゲート導体層5aを有する第1のNチャネルMOSトランジスタは線形領域で動作する。一方、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層12bを有する第2のNチャネルMOSトランジスタは飽和領域で動作する。この結果、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層5bの内周のチャネル領域7にピンチオフ点は存在せずにゲート導体層5bの内周全面に反転層12bが形成される。このワード線WLの接続された第2のゲート導体層5bの内周に全面に形成された反転層12bは、第2のゲート導体層5bを有する第2のNチャネルMOSトランジスタの実質的なドレインとして働く。この結果、直列接続された第1のゲート導体層5aを有する第1のNチャネルMOSトランジスタと、第2のゲート導体層5bを有する第2のNチャネルMOSトランジスタとの間のチャネル領域7の第1の境界領域で電界は最大となり、この領域でインパクトイオン化現象が生じる。この領域は、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層5bを有する第2のNチャネルMOSトランジスタから見たソース側の領域であるため、この現象をソース側インパクトイオン化現象と呼ぶ。このソース側インパクトイオン化現象により、ソース線SLの接続されたN+層3aからビット線の接続されたN+層3bに向かって電子が流れる。加速された電子が格子Si原子に衝突し、その運動エネルギーによって、電子・正孔対が生成される。生成された電子の一部は、第1のゲート導体層5aと第2のゲート導体層5bに流れるが、大半はビット線BLの接続されたN+層3bに流れる(図示せず)。
【0030】
そして、図3(c)に示すように、生成された正孔群9(特許請求の範囲の「正孔群」の一例である)は、チャネル領域7の多数キャリアであり、チャネル領域7を正バイアスに充電する。ソース線SLの接続されたN+層3aは、0Vであるため、チャネル領域7はソース線SLの接続されたN+層3aとチャネル領域7との間のPN接合のビルトイン電圧Vb(約0.7V)まで充電される。チャネル領域7が正バイアスに充電されると、第1のNチャネルMOSトランジスタと第2のNチャネルMOSトランジスタのしきい値電圧は、基板バイアス効果によって、低くなる。
【0031】
引き続き、図3(b)を用いて、ダイナミック フラッシュ メモリセルの書込み動作を説明する。時刻T6~T7で、ワード線WLの電圧がVWLHからVssに低下する。その際にワード線WLとチャネル領域7とは、第2の容量結合をするが、ワード線WLの電圧VWLHが、チャネル領域7の電圧がVbの時の、第2のNチャネルMOSトランジスタのしきい値電圧VtWL“1”以下になるまでは、反転層12bが、この第2の容量結合を遮る。したがって、ワード線WLとチャネル領域7との、実質的な容量結合は、ワード線WLがVtWL“1”以下になり、Vssまで下降する時のみである。この結果、チャネル領域7の電圧は、Vb-βWL×VtWL“1”となる。ここで、VtWL“1”は、前記VtWL“0”よりも低く、βWL×VtWL“1”は小さい。
【0032】
引き続き、図3(b)を用いて、ダイナミック フラッシュ メモリセルの書込み動作を説明する。時刻T8~T9で、ビット線BLが、VBLHからVssへと低下する。ビット線BLとチャネル領域7とは、容量結合しているため、最終的にチャネル領域7の“1”書込み電圧VFB“1”は、以下のようになる。
FB“1”=Vb-βWL×VtWL“1”-βBL×VBLH (7)
ここで、ビット線BLとチャネル領域7とのカップリング比βBLも小さい。これにより、図3(d)で示すように、ワード線WLの接続された第2のチャネル領域7bの第2のNチャネルMOSトランジスタのしきい値電圧は、低くなる。このチャネル領域7の“1”書込み状態を第1のデータ保持電圧(特許請求の範囲の「第1のデータ保持電圧」の一例である)とする、メモリ書込み動作(特許請求の範囲の「メモリ書込み動作」の一例である)を行い、論理記憶データ“1”に割り当てる。
【0033】
なお、書込み動作時に、第1の境界領域に替えて、第1の不純物層3aと第1のチャネル半導体層7aとの間の第2の境界領域、または、第2の不純物層3bと第2のチャネル半導体層7bとの間の第3の境界領域において、インパクトイオン化現象で、電子・正孔対を発生させ、発生した正孔群9でチャネル領域7を充電しても良い。
【0034】
図4A(a)~図4B(e)を用いて、消去動作メカニズムを説明する。N+層3a、3b間のチャネル領域7は、電気的に基板から分離され、フローティングボディとなっている。図4A(a)は、消去動作の主要ノードのタイミング動作波形図を示している。図4A(a)において、T0~T12は、消去動作開始から終了までの時刻を表している。図4A(b)に消去動作前の時刻T0に、前のサイクルでインパクトイオン化により生成された正孔群9がチャネル領域7に蓄えられている状態を示す。そして、時刻T1~T2において、ビット線BLとソース線SLとが、それぞれVssからVBLHとVSLHの高電圧状態になる。ここで、Vssは、例えば、0Vである。この動作は、次の第1の期間(特許請求の範囲の「第1の期間」の一例である)の時刻T3~T4で、プレート線PLとワード線WLとが、それぞれ第1の電圧(特許請求の範囲の「第1の電圧」の一例である)VPLLから第2の電圧(特許請求の範囲の「第2の電圧」の一例である)VPLHと、第3の電圧(特許請求の範囲の「第3の電圧」の一例である)Vssから第4の電圧(特許請求の範囲の「第4の電圧」の一例である)VWLHと高電圧状態になり、チャネル領域7にプレート線PLの接続された第1のゲート導体層5aの内周の反転層12a(特許請求の範囲の「反転層」の一例である)と、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層5bの内周の反転層12bとを、形成させない。したがって、VBLHとVSLHの電圧は、ワード線WL側の第2のNチャネルMOSトランジスタとプレート線PL側の第1のNチャネルMOSトランジスタのしきい値電圧を、それぞれVtWLとVtPLとした場合、VBLH>VWLH+VtWL、VSLH>VPLH+VtPLであることが望ましい。例えば、VtWLとVtPLが0.5Vの場合、VWLHとVPLHは、3Vに設定して、VBLHとVSLHは、3.5V以上に設定すれば良い。
【0035】
引き続き、図4A(a)の消去動作メカニズムを説明する。第1の期間の時刻T3~T4で、プレート線PLとワード線WLとが、第2の電圧VPLHと第4の電圧VWLHの高電圧状態になるのに伴い、フローティング状態のチャネル領域7の電圧が、プレート線PLとチャネル領域7との第1の容量結合(特許請求の範囲の「第1の容量結合」の一例である)と、ワード線WLとチャネル領域7との第2の容量結合とによって、押し上げられる。チャネル領域7の電圧は、“1”書込み状態のVFB“1”から高電圧になる。これは、ビット線BLとソース線SLの電圧が、VBLHとVSLHと高電圧であるため、ソースN+層3aとチャネル領域7との間のPN接合と、ドレインN+層3bとチャネル領域7との間のPN接合が逆バイアス状態であるため、昇圧することが可能である。
【0036】
引き続き、図4A(a)の消去動作メカニズムを説明する。次に第2の期間(特許請求の範囲の「第2の期間」の一例である)の時刻T5~T6で、ビット線BLとソース線SLの電圧が、高電圧のVBLHとVSLHからVssへと低下する。この結果、ソースN+層3aとチャネル領域7との間のPN接合と、ドレインN+層3bとチャネル領域7との間のPN接合は、図4A(c)に示すように、順バイアス状態となり、チャネル領域7の正孔群9のうちの残存正孔群(特許請求の範囲の「残存正孔群」の一例である)は、ソースN+層3aと、ドレインN+層3bとに、排出する。その結果、チャネル領域7の電圧VFBは、ソースN+層3aとP層のチャネル領域7とが形成するPN接合と、ドレインN+層3bとP層のチャネル領域7とが形成するPN接合のビルトイン電圧Vbとなる。
【0037】
引き続き、図4A(a)の消去動作メカニズムを説明する。次に時刻T7~T8で、ビット線BLとソース線SLの電圧が、Vssから高電圧のVBLHとVSLHへと上昇する。この施策によって、図4B(d)に示すように、第3の期間(特許請求の範囲の「第3の期間」の一例である)の時刻T11~T12で、プレート線PLとワード線WLを第2の電圧VPLHと第4の電圧VWLHからそれぞれ第1の電圧VPLLと第3の電圧Vssに下降する際に、チャネル領域7にプレート線PL側の反転層12aとワード線側の反転層12bを形成させずに、効率良く、チャネル領域7の電圧VFBは、プレート線PLとチャネル領域7との第1の容量結合と、ワード線WLとチャネル領域7との第2の容量結合によって、VbからVFB“0”となる。したがって、“1”書込み状態と“0”消去状態のチャネル領域7の電圧差ΔVFBは、以下の式で表される。

FB“1”=Vb-βWL×VtWL“1”-βBL×VBLH (7)
FB“0”=Vb-βWL×VWLH-βPL×(VPLH-VPLL) (8)
ΔVFB=VFB“1”-VFB“0”
=βWL×VWLH+βPL×(VPLH-VPLL
-βWL×VtWL“1”-βBL×VBLH (9)
ここで、βWLとβPLとの和は、0.8以上あり、ΔVFBは、大きくなり、十分にマージンが取れる。その結果、図4B(e)に示すように、“1”書込み状態と“0”消去状態とで、マージンを大きく取れる。
【0038】
引き続き、図4A(a)の消去動作メカニズムを説明する。次に第3の期間の時刻T11~T12で、ビット線BLとソース線SLの電圧が、VBLHからVssへ、VSLHからVssへとそれぞれ下降して、消去動作が終了する。その際、ビット線BLとソース線SLとが、チャネル領域7の電圧を容量結合で若干引き下げるが、時刻T7~T8にビット線BLとソース線SLとが、チャネル領域7の電圧を容量結合で引き上げていた分と同等であるため、ビット線BLとソース線SLの電圧の上げ下げは相殺され、結果的にチャネル領域7の電圧に影響を与えない。このチャネル領域7の“0”消去状態の電圧VFB“0”を第2のデータ保持電圧(特許請求の範囲の「第2のデータ保持電圧」の一例である)とする、メモリ消去動作(特許請求の範囲の「メモリ消去動作」の一例である)を行い、論理記憶データ“0”に割り当てる。
【0039】
図5(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルの読出し動作を説明するための図である。図5(a)に示すように、チャネル領域7がビルトイン電圧Vb(約0.7V)まで充電されると、ワード線WLの接続された第2のゲート導体層5bを有する第2のNチャネルMOSトランジスタのしきい値電圧が基板バイアス効果によって、低下する。この状態を論理記憶データ“1”に割り当てる。図5(b)に示すように、書込みを行う前に選択するメモリブロックは、予め消去状態“0”になっており、チャネル領域7の電圧VFBはVFB“0”となっている。書込み動作によってランダムに書込み状態“1”が記憶される。この結果、ワード線WLに対して、論理“0”と“1”の論理記憶データが作成される。図5(c)に示すように、このワード線WLに対する2つのしきい値電圧の高低差を利用して、センスアンプで読出しが行われる。
【0040】
なお、図1において、プレート線PLの接続する第1のゲート導体層5aの垂直方向の長さを、ワード線WLの接続する第2のゲート導体層5bの垂直方向の長さより更に長くし、CPL>CWLとすることが、望ましい。しかし、プレート線PLを付加することだけで、ワード線WLのチャネル領域7に対する、容量結合のカップリング比(CWL/(CPL+CWL+CBL+CSL))が小さくなる。その結果、フローティングボディのチャネル領域7の電位変動ΔVFBは、小さくなる。
【0041】
また、プレート線PLの電圧VPLLは、ブロック消去動作で選択消去される以外の各動作モードでは、例えば、2Vの固定電圧を印加しても良い。
【0042】
また、図1において、Si柱2の断面形状は、円形状、楕円状、長方形状であっても、本実施形態で説明したダイナミック フラッシュ メモリ動作ができる。また、同一チップ上に、円形状、楕円状、長方形状のダイナミック フラッシュ メモリセルを混在させてもよい。
【0043】
また、図1では、基板1上に垂直方向に立ったSi柱2の側面全体を囲んだ第1のゲート絶縁層4a、第2のゲート絶縁層4bを設け、第1のゲート絶縁層4a、第2のゲート絶縁層4bの全体を囲んで第1のゲート導体層5a、第2のゲート導体層5bを有するSGTを例にダイナミック フラッシュ メモリ素子を説明した。本実施形態の説明で示したように、本ダイナミック フラッシュ メモリ素子は、インパクトイオン化現象により発生した正孔群9がチャネル領域7に保持される条件を満たす構造であればよい。このためには、チャネル領域7は基板1と分離されたフローティングボディ構造であればよい。これより、例えばSGTの1つであるGAA(Gate All Around : 例えば非特許文献10を参照)技術、Nanosheet技術(例えば、非特許文献11を参照)を用いて、チャネル領域の半導体母体を基板1に対して水平に形成されていても、前述のダイナミック フラッシュ メモリ動作ができる。また、SOI(Silicon On Insulator)を用いたデバイス構造(例えば、非特許文献7~10を参照)であってもよい。このデバイス構造ではチャネル領域の底部がSOI基板の絶縁層に接しており、且つ他のチャネル領域を囲んでゲート絶縁層、及び素子分離絶縁層で囲まれている。この構造においても、チャネル領域はフローティングボディ構造となる。このように、本実施形態が提供するダイナミック フラッシュ メモリ素子では、チャネル領域がフローティングボディ構造である条件を満足すればよい。また、Finトランジスタ(例えば非特許文献13を参照)をSOI基板上に形成した構造であっても、チャネル領域がフローティングボディ構造であれば、本ダイナミック フラッシュ動作が出来る。
【0044】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「ゲート絶縁層やゲート導体層等がチャネル等を覆う」と言った場合の「覆う」の意味として、SGTやGAAのように全体を囲む場合、Finトランジスタのように一部を残して囲む場合、さらにプレナー型トランジスタのように平面的なものの上に重なるような場合も含む。
【0045】
なお、図4Bで消去動作条件の一例を示した。これに対して、チャネル領域7にある正孔群9を、N+層3a、N+層3bのいずれか、または両方から除去する状態が実現できれば、ソース線SL、プレート線PL、ビット線BL、ワード線WLに印加する電圧を変えてもよい。
【0046】
また、図1において、垂直方向において、第1の絶縁層である絶縁層6で囲まれた部分のチャネル領域7では、第1のチャネル領域7a、第2のチャネル領域7bの電位分布が繋がって形成されている。これにより、第1のチャネル領域7a、第2のチャネル領域7bのチャネル領域7が、垂直方向において、第1の絶縁層である絶縁層6で囲まれた領域で繋がっている。
【0047】
本実施形態は、下記の特徴を供する。
(特徴1)
本実施形態のダイナミック フラッシュ メモリセルでは、ソース、ドレインとなるN+層3a、3b、チャネル領域7、第1のゲート絶縁層4a、第2のゲート絶縁層4b、第1のゲート導体層5a、第2のゲート導体層5bが、全体として柱状に形成される。また、ソースとなるN+層3aはソース線SLに、ドレインとなるN+層3bはビット線BLに、第1のゲート導体層5aはプレート線PLに、第2のゲート導体層5bはワード線WLに、それぞれ接続している。プレート線PLが接続された、第1のゲート導体層5aのゲート容量は、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくなるような構造を特徴としている。本ダイナミック フラッシュ メモリセルでは、垂直方向に第1のゲート導体層と、第2のゲート導体層が、積層されている。このため、プレート線PLが接続された、第1のゲート導体層5aのゲート容量が、ワード線WLが接続された、第2のゲート導体層5bのゲート容量よりも、大きくなるような構造にしても、平面視において、メモリセル面積を大きくさせない。これによりダイナミック フラッシュ メモリセルの高性能化と高集積化が同時に実現できる。
【0048】
(特徴2)
本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルの消去動作をする際に、プレート線PLが接続された第1のゲート導体層5aと、ワード線WLが接続された第2のゲート電極5bと、の両者が、低電圧状態から高電圧状態になり、チャネル領域7との容量結合によって、ソースN+層3aとチャネル領域7との間のPN接合と、ドレインN+層3bとチャネル領域7との間のPN接合を、順バイアス状態として、チャネル領域7の正孔群9は、ソースN+層3aと、ドレインN+層3bとに、排出する。
【0049】
(特徴3)
本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルの(特徴2)で説明した動作に続いて、プレート線PLが接続された、第1のゲート導体層5aと、ワード線WLが接続された第2のゲート導体層5bと、の両者が、高電圧状態から低電圧状態に戻り、再びチャネル領域7との容量結合によって、チャネル領域7の電圧を負バイアスにする。このように、ソースN+層3a、または、ドレインN+層3bに負バイアスを印加せずに“0”消去状態のチャネル領域7の電圧を負バイアスすることが可能である。これにより、負バイアスを印加するための二重構造ウェルや負バイアス発生回路が必要なくなり、メモリコアおよび周辺回路設計とプロセスが容易になる。
【0050】
(特徴4)
本発明の第1実施形態に係るダイナミック フラッシュ メモリセルのプレート線PLの接続する第1のゲート導体層5aの役割に注目すると、ダイナミック フラッシュ メモリセルが書込み、読出し動作をする際に、ワード線WLの電圧が上下に振幅する。この際に、プレート線PLは、ワード線WLとチャネル領域7との間の容量結合比を低減させる役目を担う。この結果、ワード線WLの電圧が上下に振幅する際の、チャネル領域7の電圧変化の影響を著しく抑えることができる。これにより、論理“0”と“1”を示すワード線WLのSGTトランジスタのしきい値電圧差を大きくすることが出来る。これは、ダイナミック フラッシュ メモリセルの動作マージンの拡大に繋がる。
【0051】
(第2実施形態)
図6A図6Bを参照して、第2実施形態に係るSGTを有するメモリ装置のブロック消去動作を説明する。
【0052】
図6Aに、ブロック消去のために選択されたメモリブロック回路図を示す。ここでは、メモリセルは、3行×3列の計9個CL11~CL33を示しているが、実際のメモリブロックは、この行列よりも大きい。各メモリセルには、ソース線SL1~SL3、ビット線BL1~BL3、プレート線PL1~PL3、ワード線WL1~WL3が接続されている。図6Bに示すように、ブロック消去のために選択されたメモリブロックのソース線SL1~SL3、ビット線BL1~BL3、プレート線PL1~PL3、ワード線WL1~WL3には、図3(b)に示したパルス波形が入力する。そして、消去をしないブロック(記録データ維持ブロック)では、パルス波形は入力しない。
【0053】
(特徴1)
第2実施形態のダイナミック フラッシュ メモリセルでは、ブロック毎で独立にブロック消去を行うために、ブロック毎で、ビット線BL、ソース線SL、プレート線PL、ワード線WLを独立に制御することができる。
【0054】
(特徴2)
第2実施形態のダイナミック フラッシュ メモリセルでは、フラッシュメモリと同様な、図6A図6Bで説明したブロック消去動作を行うが、フラッシュメモリに比べて、遥かに低電界で書き換えを行っている。このため、信頼性上、ブロック毎の書き換え回数制限を定める必要がない。
【0055】
(第3実施形態)
図7(a)~(d)は、第3実施形態のダイナミック フラッシュ メモリセルのブロック書き換え動作とブロック消去動作を説明するための回路ブロック図を示している。
【0056】
図7Aにおいて、コントローラ回路33(特許請求の範囲の「コントローラ回路」の一例である)と、論理・物理ブロックアドレス変換ルックアップテーブル回路32(省略形は、論物変換テーブル(特許請求の範囲の「論物変換テーブル」の一例である))によって、論理ブロックアドレスに記憶しているデータは、ダイナミック フラッシュ メモリのどの物理ブロックアドレスに対応しているかを常に管理している。これは、ダイナミック フラッシュ メモリでは、フラッシュメモリと同様にブロックのデータ書き換えに関して、既に消去しているブロックを用いて書き換えるため、論理ブロックアドレスと物理ブロックアドレスとの対応関係を常に管理する必要があるためである。このコントローラ回路33と、論物変換テーブル32は、ダイナミック フラッシュ メモリのチップ内に設けても良いが、図7(a)に示すようにチップ外に設けても良い。論物変換テーブル32からの命令は、ブロックアドレスデコーダー回路34に入力し、書き換えを行うブロックと、消去を行うブロックとが、ブロックBLK00~BLK33(特許請求の範囲の「ブロック」の一例である)の中から、選択される。
【0057】
図7B図7Dを用いて、記憶データの書き換えに伴う、消去動作を具体的に説明する。図7Bにおいて、ダイナミック フラッシュ メモリのブロックBLK00~BLK33の4×4=16ブロックの内、ブロックBLK01とBLK13は、既に消去されているブロックであり、その他のブロックには、データが記憶されている。例えば、ブロックBLK21の記憶データを書き換える命令がコントローラ回路33から出た場合を想定する。最初にコントローラ回路33は、論物変換テーブル32を参照して、どのブロックが消去済ブロックであるかを探す。次に所望の消去済ブロックBLK01を見つける。
【0058】
その後、図7Cに示すように、書き換えを行うブロックBLK21内の書き換えを行わないデータは、消去済みのブロックBLK01にコピーされ、書き換えを行うワード線WLに関するページデータをブロックBLK01に新たに書き込む。
【0059】
その後、図7Dに示すように、ブロックBLK21からブロックBLK01へのデータコピーと、ブロックBLK01内の新規データの書込みが終了すると、ブロックBLK21内の古い記憶データは、ブロック消去される。そして、物理ブロックBLK01が、コントローラ回路33を通して、論物変換テーブル32に登録される。
【0060】
なお、図7A図7Dにおいて、1個のブロックBLK21を選択して、ブロックBLK21からブロックBLK01へのデータコピーと、ブロックBLK01内の新規データの書込みが終了すると、ブロックBLK21内の古い記憶データは、ブロック消去を行っているが、ブロック消去は、少なくとも1個以上の複数個のブロックを同時に選択して、ブロック消去を行っても良い。
【0061】
なお、フラッシュメモリでは、図7B図7Dで説明したブロック書き換えとブロック消去と同様な動作を行うが、フラッシュメモリでは、それに加えて、ブロック毎に何回書き換えたかをコントローラ回路でモニター管理している。フラッシュメモリでは、高電界を印加して、トンネル酸化膜を通して、ストレージノードに蓄積される電子の出し入れを行っている。このため、トンネル酸化膜に関する、書き換えの寿命がスペック上定められている。しかし、本実施形態のダイナミック ・フラッシュ メモリセルにおいては、フラッシュメモリに比べて、遥かに低電界で書き換えを行っている。このため、信頼性上、ブロック毎の書き換え回数制限を定める必要がない。
【0062】
なお、図7B図7Dで説明したブロック書き換えとブロック消去動作において、書き換えを行うブロックの記憶データを一時保管するキャッシュメモリ(図示せず)が必要な場合がある。そのキャッシュメモリは、本実施形態のダイナミック フラッシュ メモリのチップ内、あるいは、チップ外に設けても良い。
【0063】
また、論物変換テーブル32、または、前記キャッシュメモリは、ダイナミック フラッシュ メモリセルを高速にアクセス可能にしたメモリセルアレイで構成しても良い。
【0064】
また、ブロック内の記憶データの保持のため、ブロック毎のリフレッシュ動作を行っても良い。この場合には、当該物理アドレスのブロック内でリフレッシュを行うため、ブロック書換え動作、または、ブロック消去動作をしなくても良い。
【0065】
(特徴)
第3実施形態のダイナミック フラッシュ メモリセルでは、揮発性メモリでありながら、従来、不揮発性メモリのフラッシュメモリにしか無かった機能である、ブロック書き換え動作とブロック消去動作を実現し、より高集積化が可能なメモリセルを提供することが可能となる。
【0066】
(その他の実施形態)
なお、本発明では、Si柱を形成したが、Si以外の半導体材料よりなる半導体柱であってもよい。このことは、本発明に係るその他の実施形態においても同様である。
【0067】
また、第3実施形態では図7A図7Dの論物変換テーブルを柱状半導体メモリ装置チップ外に設けているが、柱状半導体メモリ装置内のオンチップに設けてもよい。このことは、本発明に係るその他の実施形態においても同様である。
【0068】
また、第3実施形態の図7A図7Dの論物変換テーブルのメモリ素子を高速アクセス可能なダイナミック フラッシュ メモリで構成してもよい。このことは、本発明に係るその他の実施形態においても同様である。
【0069】
また、第3実施形態の図7A図7DのブロックBLK00~BLK33毎にタイマー回路を設けて、そのタイマー回路の指示に従って、各ブロックをリフレッシュしてもよい。このことは、本発明に係るその他の実施形態においても同様である。
【0070】
また、第3実施形態の図7A図7DのブロックBLK00~BLK33において、少なくとも2個以上の複数個のブロックを同時にブロック消去してもよい。このことは、本発明に係るその他の実施形態においても同様である。
【0071】
また、第3実施形態の図7A図7DのブロックBLK00~BLK33のあるブロックが選択的にブロック消去中に、同時にその他のブロックにおいて、書き込み、あるいは、読出しをしてもよい。このことは、本発明に係るその他の実施形態においても同様である。
【0072】
また、縦型NAND型フラッシュメモリ回路では、半導体柱をチャネルにして、この半導体柱を囲んだトンネル酸化層、電荷蓄積層、層間絶縁層、制御導体層から構成されるメモリセルが複数段、垂直方向に形成される。これらメモリセルの両端の半導体柱には、ソースに対応するソース線不純物層と、ドレインに対応するビット線不純物層がある。また、1つのメモリセルに対して、その両側のメモリセルの一方がソースならば、他方がドレインの役割を行う。このように、縦型NAND型フラッシュメモリ回路はSGT回路の1つである。従って、本発明はNAND型フラッシュメモリ回路との混在回路に対しても適用することができる。
【0073】
また、“1”書込みにおいて、〔非特許文献14〕を参照したGIDL(Gate Induced Drain Leakage)電流を用いた、インパクトイオン化現象により、電子・正孔対を発生させ、生成された正孔群でフローティングボディFB内を満たしてもよい。このことは、本発明に係るその他の実施形態においても同様である。
【0074】
また、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した各実施形態は、本発明の一実施例を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。上記実施例及び変形例は任意に組み合わせることができる。さらに、必要に応じて上記実施形態の構成要件の一部を除いても本発明の技術思想の範囲内となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る、SGTを用いたメモリ装置の製造方法によれば、高密度で、かつ高性能のSGTを用いたメモリ装置であるダイナミック フラッシュ メモリが得られる。
【符号の説明】
【0076】
10:ダイナミック フラッシュ メモリセル
2:P型又はi型(真性型)の導電型を有するSi柱
3a、3b:N+
7:チャネル領域
4a、4b:ゲート絶縁層
5a、5b:ゲート導体層
6:2層のゲート導体層を分離するための絶縁層
BL:ビット線
SL:ソース線
PL:プレート線
WL:ワード線
FB:フローティングボディ

CL11~CL33、CL0~CL3:メモリセル
SL1~SL3、SL:ソース線
BL1~BL3、BL0~BL3:ビット線
PL1~PL3、PL:プレート線
WL1~WL3、WL:ワード線
35、BLK00~BLK33:ブロック
34:ブロックアドレスデコーダー回路
33:コントローラ回路
32:論物変換テーブル

110:キャパシタを有しない、DRAMメモリセル
100:SOI基板
101:SOI基板のSiO2
102:フローティングボディ(Floating Body)
103:ソースN+
104:ドレインN+
105:ゲート導電層
106:正孔
107:反転層、電子のチャネル
108:ピンチオフ点
109:ゲート酸化膜
【要約】
第1のゲート導体層と、第2のゲート導体層と、第1の不純物領域と、第2の不純物領域と、に印加する電圧を制御して、チャネル半導体層の内部に、インパクトイオン化現象、またはゲート誘起ドレインリーク電流により形成した正孔群を保持するデータ保持動作と、前記第1のゲート導体層と、前記第2のゲート導体層と、前記第3のゲート導体層と、前記第4のゲート導体層と、前記第1の不純物領域と、前記第2の不純物領域と、に印加する電圧を制御して、前記正孔群を前記チャネル半導体層の内部から除去し、さらにチャネル半導体層の電圧を、前記第1のゲート導体層と、前記第2のゲート導体層との、容量結合により、引き下げる、データ消去動作と、を行う柱状半導体メモリ装置である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10