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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】電子装置および音響システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/12 20060101AFI20220412BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220412BHJP
   H04R 3/04 20060101ALI20220412BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H04R3/12 A
B60R11/02 S
H04R3/04
H04R1/02 102B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018076281
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019186764
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】藤野 喜得
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-157597(JP,A)
【文献】特開2003-005752(JP,A)
【文献】特開2009-171364(JP,A)
【文献】特開2001-301536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0060430(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響機能を備えた電子装置であって、
音声信号を生成する生成手段と、
生成された音声信号を出力するスピーカーと、
外部スピーカー装置との間でデータの送受信を可能にする接続手段と、
外部スピーカー装置の接続の有無を検出する検出手段と、
外部スピーカー装置の接続が検出されたとき、音響環境に基づき外部スピーカー装置の音響設定を行うための外部音響設定情報を生成し、生成した外部音響設定情報を前記接続手段を介して外部スピーカー装置に送信する外部音響設定手段とを有し、
前記外部音響設定手段は、音響環境に不足している不足周波数帯域を決定する決定手段を含み、
前記外部音響設定手段は、前記決定手段により決定された不足周波数帯域に基づき低周波数帯域、中周波数帯域および高周波数帯域のいずれかが強調されるような前記外部音響設定情報を生成する、電子装置。
【請求項2】
電子装置は、スピーカーから出力される音声信号に関する音響を設定する内部音響設定手段を含み、
前記決定手段は、前記内部音響設定手段の設定に基づき不足周波数帯域を決定する、請求項に記載の電子装置。
【請求項3】
前記内部音響設定手段は、スピーカーの設定のオン/オフを含み、
前記決定手段は、スピーカーの設定がオフである周波数帯域が不足周波数帯域であると決定する、請求項に記載の電子装置。
【請求項4】
前記内部音響設定手段は、音声信号の周波数特性を調整するイコライザの調整回数を含む調整履歴を保持し、
前記決定手段は、前記調整履歴に基づき不足周波数帯域を決定する、請求項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記外部音響設定手段は、外部スピーカー装置による音声信号の再生可能帯域を判定する判定手段を含み、
前記決定手段は、前記判定手段の判定結果に基づき不足周波数帯域を決定する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記再生可能帯域が音響環境に不足する周波数帯域に一致しない場合、前記再生可能帯域を不足周波数帯域に決定しない、請求項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記判定手段は、外部スピーカー装置の大きさまたは種別に基づき再生可能帯域を判定する、請求項に記載の電子装置。
【請求項8】
電子装置は、車内に配置されたものである、請求項1ないしいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項9】
請求項1ないしいずれか1つに記載の電子装置と、前記外部スピーカー装置とを含む音響システムであって、
前記外部スピーカー装置は、
前記電子装置と接続する接続手段と、
前記接続手段を介して前記外部音響設定手段から受信した前記外部音響設定情報に基づき外部スピーカー装置の音響設定を行う設定手段と、
前記接続手段を介して前記生成手段により生成された音声信号を受け取り、前記設定手段により設定された音響設定に従い、受け取った音声信号をスピーカーから出力させる出力手段と、
を有する、音響システム。
【請求項10】
前記外部スピーカー装置は、多機能型スマートスピーカーである、請求項に記載の音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システムに関し、特に、車内空間における車載装置を利用した音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
AI(Artificial Intelligence)を搭載したスマートスピーカー市場が活性化し、今後、自動車内で使用されるケースが増加すると想定される。スマートスピーカーは、基本的なスピーカー機能を有するほか、インターネットとの接続や音声認識を用いた入力操作、AIとの会話機能などを有する多機能型スピーカーである。また、高性能のスマートスピーカーでは、360℃方向に音声を出力することも可能である。さらに、SDL(Smart Device Link)規格に代表されるように、車載機器とスマートスピーカーを含むスマートデバイスとの間で、データの送受をする規格も構築されており、スマートスピーカーは、車内環境の1パーツとしての需要の増加が想定される。
【0003】
一方で、車内には、音声再生機能を備えた車載装置および純正スピーカーが搭載されており、スマートスピーカーが無くとも音楽を聴く車内環境が整備されている。例えば、特許文献1のオーディオシステムは、サブウーハが接続されているか否かを判定し、サブウーハが接続されていない場合には、低域が強調されるようにフィルタ特性を設定し、サブウーハが接続されている場合には、通常の音声出力となるようにフィルタ特性を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-171364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車内環境の純正スピーカーは、スピーカーそのものの性能や、種々の走行中のノイズにより、音楽を楽しむには不向きな音場環境になり得る課題を有している。そのため、音響機器メーカーは、スピーカーそのものの変更、低音用のサブウーハや高音用のツイーターの追加、車載装置側での音声信号のデジタル処理等を行うことで、車内の音場環境のチューニング機能を提供している。
【0006】
図15は、従来の音響システムの課題を説明する図である。同図に示すように、車両に搭載された純正スピーカーのみの場合、音声信号の再生帯域が限定的になりがちである。つまり、純正スピーカーは、中音域(ミドルレンジ)の出力能力が高いが、低周波数および高周波数の出力能力が限られてしまう。特に、低周波数領域は、走行中のロードノイズやエンジンノイズなどの影響を受け易く、その結果、車内環境において出力音声がノイズによってかき消されてしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、高品質な音場環境を生成する電子装置および音響システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る音響機能を備えた電子装置は、声信号を生成する生成手段と、生成された音声信号を出力するスピーカーと、外部スピーカー装置を接続可能な接続手段と、外部スピーカー装置の接続の有無を検出する検出手段と、外部スピーカー装置の接続が検出されたとき、音響環境に基づき外部スピーカー装置の外部音響設定を行う外部音響設定手段とを有する。
【0009】
ある実施態様では、前記外部音響設定手段は、音響環境に不足している不足周波数帯域を決定する決定手段を含み、前記外部音響設定手段は、不足周波数帯域が強調されるような音響設定を行う。ある実施態様では、電子装置は、スピーカーから出力される音声信号に関する音響を設定する内部音響設定手段を含み、前記決定手段は、前記内部音響設定手段に基づき不足周波数帯域を決定する。ある実施態様では、前記内部音響設定手段は、スピーカーの設定のオン/オフを含み、前記決定手段は、スピーカーの設定がオフである周波数帯域が不足周波数帯域であると決定する。ある実施態様では、前記内部音響設定手段は、音声信号の周波数特性を調整するイコライザを含み、前記決定手段は、イコライザによって強調されている周波数帯域が不足周波数帯域であると決定する。ある実施態様では、前記外部音響設定手段は、外部スピーカーによる音声信号の再生可能帯域を判定する判定手段を含み、前記外部音響設定手段は、前記再生可能帯域が強調されるような音響設定を行う。ある実施態様では、前記外部音響設定手段は、前記再生可能帯域が音響環境に不足する周波数帯域に一致しない場合、前記再生可能帯域が強調されるような音響設定を行わない。ある実施態様では、前記判定手段は、外部スピーカー装置の大きさまたは種別に基づき再生可能帯域を判定する。ある実施態様では、電子装置は、車内に配置されたものである。
【0010】
本発明に係る音響システムは、上記構成の電子装置と、前記外部スピーカー装置とを含むものであって、前記外部スピーカー装置は、電子装置と接続する接続手段と、前記接続手段を介して前記外部音響設定手段により設定された外部音響設定に基づき外部スピーカー装置の音響設定を行う設定手段と、前記接続手段を介して前記生成手段により生成された音声信号を受け取り、前記設定手段により設定された音響設定に従い、受け取った音声信号をスピーカーから出力させる出力手段とを有する。ある実施態様では、前記外部スピーカーは、多機能型スマートスピーカーである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、音響環境に基づき外部スピーカー装置の外部音響設定を行うようにしたので、高品質な音場環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施例に係る音響システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る車載装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施例に係る音響設定部の設定内容を説明する図である。
図4】本発明の第1の実施例に係る音場環境プログラムの機能的な構成を示す図である。
図5】本発明の第1の実施例に係るスマートスピーカーの構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第1の実施例に係る音響システムの動作を示すフローである。
図7】車載スピーカーの設置例を示す図である。
図8】本実施例により低周波帯域および高周波帯域がスマートスピーカーによって強調された例を示す図である。
図9】車載スピーカーの他の設置例を示す図である。
図10】他の設置例の音響設定部の設定例を示す図である。
図11】他の設置例であるときの高周波帯域がスマートスピーカーによって強調された例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施例に係るイコライザの調整履歴情報の一例を示す図である。
図13】サイズの異なるスマートスピーカーを例示する図である。
図14】本発明の第3の実施例に係る音場環境プログラムの機能的な構成を示す図である。
図15】従来の音響システムの課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る音響システムについて図面を参照して詳細に説明する。本発明の音響システムは、音響機能を備えた電子装置と、当該電子装置に接続される外部スピーカー装置とを含む。電子装置および外部スピーカー装置とは、有線または無線により接続され、相互にデータの送受信を行うことができる。また、本発明の音響システムは、自動車等の移動体の車内空間に配置される。
【0014】
ある実施態様では、電子装置は、例えば、車内に取り付けられるAVN(Audio Visual Navigation)、スピーカーシステム、オーディオ装置、車載装置等であることができる。また、車内には、電子装置から出力される音声信号を出力するための純正スピーカーが搭載される。純正スピーカーは、例えば、中音域の出力能力に優れたミドルレンジスピーカーに加えて、低音域用のサブウーハや高音用のツイーターを含んでいてもよい。
【0015】
ある実施態様では、外部スピーカー装置は、少なくとも電子装置と接続する機能、電子装置から受信した音声信号を出力する機能を備えるものであればよく、その他の詳細な構成は特に限定されない。外部スピーカー装置は、例えば、スマートスピーカーであることができる。スマートスピーカーは、音声を出力するためのスピーカーの基本機能に加えて、音声認識機能、AI機能、通信機能などを含む多機能型スピーカーである。また、外部スピーカー装置は、出力音声の周波数特性を変更または設定する機能を備ることができる。
【実施例
【0016】
図1は、本発明の第1の実施例に係る音響システムの全体構成を示す図である。音響システム10は、車載装置100と、スマートスピーカー200とを含む。車載装置100とスマートスピーカー200は、有線または無線による通信手段20により接続され、相互にデータ送受を行うことができる。
【0017】
図2は、本実施例に係る車載装置の構成を示すブロック図である。車載装置100は、入力部110、ナビゲーション部120、マルチメディア再生部130、音響設定部140、音声出力部150、表示部160、通信部170、記憶部180、制御部190を含んで構成される。但し、この構成は一例である。
【0018】
入力部110は、ユーザーからの指示を受け取り、これを制御部190へ提供する。ナビゲーション部130は、目的地までの経路の探索や自車位置周辺の道路地図の案内を行う。マルチメディア再生部130は、CD、DVD、記憶部180等の記憶媒体に記憶された音声や画像等を再生したり、通信部170を介して外部サーバ等から取得した音声や画像等を再生する。再生された音声信号は音声出力部150から出力され、画像信号は表示部160から出力される。
【0019】
音響設定部140は、車両に搭載されたスピーカーの有無に応じた音響設定を行う。例えば、低音域用のウーハまたはサブウーハ、中音域用のミドルレンジスピーカー、高音用のツイーターが車両に搭載されているか否かの設定を行う。図3に、音響設定部140の設定内容の一例を示す。ここでは、ウーハとミドルレンジスピーカーが車両に搭載(接続済)され、ツイーターが未搭載(未接続)である。音響設定部140は、ミドルレンジスピーカーによる音声出力を有効に設定(ON)し、それ以外の音声出力を無効に設定(OFF)している。この設定は、ユーザーによって変更可能である。
【0020】
音声出力部150は、マルチメディア再生部130等によって再生された音声信号を出力する。ある実施態様では、音声出力部150は、音響設定部140による音響設定に基づき音声信号の周波数特性等を処理するデジタルフィルタ、D/A変換器、アンプ等を備えることができる。
【0021】
表示部160は、例えば、ナビゲーション部130により生成された道路地図やマルチメディア再生部130で再生された画像信号等を表示する。通信部170は、スマートスピーカー200との間で、有線または無線による通信を確立する。後述するように、通信部170は、スマートスピーカー200が接続されたとき、スマートスピーカー200に音響設定信号を送信したり、マルチメディア再生部130等によって再生された音声信号を送信する。
【0022】
記憶部180は、車載装置100が実行するプログラムやアプリケーション、その他の必要なデータを記憶する。制御部190は、ROM、RAMなどを含むマイクロコントローラ等を含み、制御部190は、車載装置100の各部の動作を制御するための種々のプログラムを実行する。本実施例では、制御部190は、スマートスピーカー200が接続されたとき、車内の最適な音場環境を生成するための音場環境プログラム300を実行する。
【0023】
図4に、音場環境プログラムの機能的な構成を示す図である。本実施例に係る音場環境プログラム300は、スマートスピーカー検出部310、不足周波数決定部320、外部音響設定指示部330を含む。スマートスピーカー検出部310は、通信部170を介してスマートスピーカー200が接続されたか否かを検出する。この検出結果は、不足周波数決定部320に提供される。
【0024】
不足周波数決定部320は、車内の音場環境において不足している音声周波数を決定する。ある実施態様では、不足周波数決定部320は、音響設定部140により設定された車載スピーカーの設定状況に基づき不足する音声周波数帯域を決定する。例えば、図3に示すように、ウーハおよびツイーターの設定がOFFであるとき、不足周波数決定部320は、低周波帯域および高周波帯域が不足すると判定する。また、他の実施態様では、不足周波数決定部320は、車載スピーカーの接続または未接続の情報を入手することができる場合には、その情報に基づき不足周波数を決定するようにしてもよい。図3の例であれば、ツイーターが未接続であるため、不足周波数決定部320は、高周波帯域が不足すると判定する。その他の態様として、表示部160に不足周波数帯域を入力する画面を表示し、当該入力画面を介してユーザーから入力された周波数帯域を不足周波数帯域に決定するようにしてもよい。
【0025】
外部音響設定指示部330は、不足周波数決定部320により決定された不足周波数帯域が強調されるような外部音響設定情報を生成し、生成した外部音響設定情報を通信部170を介してスマートスピーカー200に送信する。
【0026】
次に、スマートスピーカー200について図5を参照して説明する。スマートスピーカー200は、一例として、ユーザーからの入力を受け取る入力部210、スマートスピーカーの音響を設定する音響設定部220、音声を出力する音声出力部230、車載装置等の外部とのデータ通信またはネットワーク通信を可能にする通信部240、種々のデータやプログラム等を記憶する記憶部250、スマートスピーカー200の動作を制御する制御部260を含む。ある実施態様では、制御部260には人工知能AIが備えられており、AIの学習により、様々な機能を実現することができる。
【0027】
音響設定部220は、入力部210からのユーザー入力に応じて音響を設定したり、車載装置100の外部音響設定指示部330からの外部音響設定情報に従い音響を設定する。音響設定部220は、音声出力部230から出力される音声の周波数特性を設定し、例えば、低周波数帯域、中周波数帯域または高周波数帯域を強調する設定、あるいは反対に、低周波数帯域、中周波数帯域または高周波数帯域を弱める設定を行う。
【0028】
音声出力部230は、通信部240を介して、車載装置100によって再生された音声信号、あるいはサーバ等から音声信号を取得し、取得した音声信号を出力する。また、音声出力部230は、音響設定部220により設定された音響設定に従い音声を出力する。ある実施態様では、音声出力部230は、音響設定部220によって設定された音響設定に基づき音声信号を処理するデジタルフィルタを含み、あるいは音響設定部220によって設定された音響設定に基づき音声信号を増幅するアンプを備えることができる。
【0029】
次に、本実施例に係る音響システムの動作について図6のフローを参照して説明する。まず、スマートスピーカー200が車内に持ち込まれ、スマートスピーカー200が車載装置100に接続されると、当該接続がスマートスピーカー検出部310によって検出される(S100)。
【0030】
次に、不足周波数決定部320は、音響設定部140の設定内容等を参照し、車内の音場環境において不足する音声周波数帯域を決定する(S102)。図7に、車載スピーカーの設置例を示す。同図に示すように、車内の前方座席および後方座席には、左右にそれぞれ4つのミドルレンジスピーカーF-L1、F-R1、R-L2、R-R2が設置されている。不足周波数決定部320は、音響設定部140の設定内容に基づき、あるいは図7に示すような4つのスピーカーの接続状況に基づき、あるいはユーザーからの指示に基づき不足する音声周波数帯域を決定する。この場合、不足周波数決定部320は、低周波数帯域か高周波数帯域かの少なくとも一方を不足周波数帯域であると決定する。
【0031】
次に、外部音響設定指示部330は、決定された不足周波数帯域に基づき、スマートスピーカー200の音響設定をするための外部音響設定情報を生成する。不足周波数帯域が低周波数帯域であるならば、低周波数帯域が強調されるような外部音響設定情報が生成され、不足周波数帯域が低周波数帯域および高周波数帯域であるならば、低周波数帯域および高周波数帯域が強調されるような外部音響設定情報が生成される。そして、生成された外部音響設定情報は、通信部170を介してスマートスピーカー200に送信される(S104)。
【0032】
スマートスピーカー200は、通信部240を介して外部音響設定情報を取得すると(S106)、制御部260は、外部音響設定情報に基づき音響設定部220の音響を設定する(S108)。例えば、不足周波数決定部320によって低周波数帯域の音声が不足していると決定された場合、スマートスピーカー200の音響設定部220は、低周波数帯域の音声を強調する音響設定、あるいは、中周波数帯域および高周波数帯域を弱めるような音響設定を行う。
【0033】
その後、車載装置100のマルチメディア再生部130により音声信号が再生されると、車載スピーカーから音声が出力され、同時に、車載装置100からスマートスピーカー200へ送信された音声信号がスマートスピーカー200から音声出力される(S110)。図8に、車載スピーカーがミドルレンジであるときに、スマートスピーカー200によって低周波数が強調された例と、高周波数が強調された例を示す。このように、本実施例によれば、スマートスピーカー200は、車載スピーカーによって不足された音声周波数帯域を補うような音声を出力することが可能になるため、車内空間において高品質の音場環境を得ることができる。
【0034】
図9に、他の車載スピーカーの設置例を示す。本例では、図7に示す4つのスピーカーに加えて、車内後部の中央に低音域用のウーハWHが設置されている。また、図10に、音響設定部140の設定例を示す。この場合、不足周波数決定部320は、車内の音場環境として、高周波帯域が不足すると決定し、スマートスピーカー200に対して、高周波数帯帯域を強調するような外部音響設定情報が送信される。スマートスピーカー200は、図11に示すように、高周波数帯域を補うような音声を出力する。
【0035】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、音響設定部140は、イコライザの設定機能を備えている。イコライザは、好ましくはParametricEQ(パラメトリックイコライザ)を用いた音声信号の周波数の調整が可能である。例えば、音声信号のある周波数帯域を強調する調整を行うことができる。音響設定部140は、イコライザによって調整履歴を併せて保持する。図12に、イコライザの調整履歴の一例を示す。
例えば、調整履歴は、複数の周波数帯域、例えば、低周波数帯域、中周波数帯域、高周波数帯域毎に、ユーザーによってイコライズされた回数を保持する。同図の例からは、低周波数帯域の調整回数が多いことがわかり、音場環境として低周波数帯域の音声が不十分であることが推測される。
【0036】
第2の実施例では、不足周波数決定部320は、音響設定部140に保持されたイコライザの調整履歴も考慮して音場環境の不足周波数を決定する。但し、イコライザの調整履歴に基づく不足周波数が、第1の実施例のときの不足周波数と相反するような場合には、イコライザの調整履歴による不足周波数は採用しないようにしてもよい。例えば、イコライザの調整履歴により低周波数帯域が不足すると判定され、他方、車内にはウーハが搭載され、かつウーハの使用状態が有効に設定されている場合には、車内の音場環境として必ずしも低周波数帯域が不足しているとは言えない。このため、低周波帯域が不足していると決定しない。また、イコライザによる調整履歴を利用する場合、閾値以上の調整が行われた場合にのみ、調整履歴を参照するようにしてもよい。
【0037】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例では、スマートスピーカー200の外観、形状、サイズ等の特徴からスマートスピーカーにより強調可能な周波数帯域を判定する。
【0038】
図13は、外観形状の異なるスマートスピーカーの例示である。一般的に言えることは、図13(A)のようにスマートスピーカーの外観形状またはサイズが大きければ、そこに搭載されるスピーカーの径も大きくなり、それ故、低周波数帯域の音声出力に適していることが予測され、反対に、図13(C)のようにサイズが小さくなれば、スピーカーの径も小さくなる、それ故、高周波数帯域の音声出力に適していることが予測される。また、図13(B)に示すような、中間のサイズであれば、中周波数帯域の音声出力に適していると予測される。
【0039】
図14は、第3の実施例に係る音場環境プログラムの機能的な構成を示す図である。第4の実施例に係る音響プログラム300Aは、第1の実施例のときに加えて、スマートスピーカー情報取得部315を有する。スマートスピーカー検出部310によってスマートスピーカー200の接続が検出されると、スマートスピーカー情報取得部315は、通信部170を介してスマートスピーカー200に製品情報の要求を行う。例えば、スマートスピーカー200の記憶部250には、スマートスピーカー200の外観形状、サイズ、機種、性能などの製品情報が記憶されている。また、製品情報には、スマートスピーカーの出力特性などが含まれていてもよい。スマートスピーカー200は、車載装置100からの要求に応じて製品情報を送信する。
【0040】
不足周波数決定部320は、スマートスピーカー情報取得部315によって取得された製品情報を参照して不足周波数を決定する。例えば、車載スピーカーがミドルレンジスピーカーのみであるとき、スマートスピーカー200が低周波数帯域の音声出力を得意とする大型サイズのスマートスピーカーである場合、低周波数帯域を不足周波数と決定することができる。また、スマートスピーカー200が高周波数帯域の音声出力を得意とする小型サイズのスマートスピーカーである場合、高周波数帯域を不足周波数と決定することができる。大型サイズか中型サイズか小型サイズかの判定は、予め用意された閾値と比較することによって行われる。
【0041】
また、第3の実施例では、第1および第2の実施例における不足周波数の決定と相反する場合には、必ずしも第1ないし第3の実施例よる不足周波数の決定を採用することを要しない。例えば、車載スピーカーがミドルレンジスピーカーのみであり、第1の実施例により低周波数帯域および高周波数帯域が不足周波数として決定され、他方、スマートスピーカーのサイズが中型のサイズであり、低周波数帯域および高周波数帯域の音声出力に適していなければ、スマートスピーカーによる補足が難しいため、外部音響設定指示部330は、外部音響設定情報をスマートスピーカーへ指示しないようにしてもよい。
【0042】
第1ないし第3の実施例によれば、車内の音場環境に応じてスマートスピーカー200に外部音響設定を指示するようにしたので、スマートスピーカーの音響機能を利用して音場環境を改善することができ、高品質の音場環境を提供することが可能になる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10:音響システム 20:通信
100:車載装置 100A:車載装置
110:入力部 120:位置情報算出部
130:ナビゲーション部 140:マルチメディア再生部
150:音声出力部 160:表示部
170:通信部 180:記憶部
190:制御部 200:スマートスピーカー
210:入力部 220:音響設定部
230:音声出力部 240:音声出力部
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