IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7057056粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、及び画像表示装置
<>
  • 特許-粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、及び画像表示装置 図1
  • 特許-粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、及び画像表示装置 図2
  • 特許-粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、及び画像表示装置 図3
  • 特許-粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、及び画像表示装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20220412BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220412BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20220412BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220412BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220412BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20220412BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220412BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220412BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20220412BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C09J133/00
B32B15/08 D
B32B15/082 Z
B32B27/00 M
B32B27/18 J
C09J7/20
C09J9/02
C09J11/06
C09J133/04
G02B5/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2016065389
(22)【出願日】2016-03-29
(65)【公開番号】P2016191050
(43)【公開日】2016-11-10
【審査請求日】2019-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2015068751
(32)【優先日】2015-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 潤枝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】川端 修
【審判官】蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152319(JP,A)
【文献】特開2015-10191(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125684(WO,A1)
【文献】特開2014-195988(JP,A)
【文献】特開2003-331654(JP,A)
【文献】特開2014-124538(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208695(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/18733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 1/00-5/10、7/20
C09J 9/00-201/00
B32B 7/023、27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルム及び透明導電層に貼り合せて用いられる粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルム、並びに透明導電層を含み、前記粘着剤層付偏光フィルムと前記透明導電層が貼り合わされている画像表示装置であって、
前記透明導電層が、金属を含む透明導電層であり、かつ、
前記透明導電層の厚みは、0.01~10μm(但し、60nm以下を除く)であり、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)及び分子量が380以上の導電剤(B)を含有する粘着剤組成物(但し、有機材料と反応する官能基としてメルカプト基を有するシランカップリング剤(C)を含有する場合を除く)から形成されること特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記導電剤(B)が、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物であって、前記アニオン成分の総炭素数が6以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記導電剤(B)のカチオン成分の総炭素数が6以上であることを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーからなる群から選択される1種以上のモノマー、並びに、アルキル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記導電剤(B)の分子量が、600以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記金属が、金、白金、銀、アルミニウム、及び銅からなる群より選ばれた1種以上の金属であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電層に貼り合わされて用いられる粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物、及び当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層に関する。また、本発明は、偏光フィルム、及び前記粘着剤層を有し、透明導電層に貼り合せて用いられることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルムに関する。さらには、本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムを用いた、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像表示装置において、タッチセンサーの電極等として透明樹脂フィルム上にITO(インジウム・スズ複合酸化物)等の金属酸化物層を形成して得られる透明導電性フィルムが多用されている。また、前記金属酸化物層を形成して得られる透明導電性フィルムの代替として、金属メッシュを含む透明導電性フィルムが知られている。
【0003】
前記透明導電性フィルムは、画像表示装置等において用いられ、当該透明導電性フィルム上には粘着剤層を介して偏光フィルムが積層される場合がある。
【0004】
また、画像表示装置において用いられる粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤が広く用いられており、例えば、粘着剤層付透明導電性フィルムの粘着剤層であって、炭素数2~14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートをモノマー単位として含むアクリル系ポリマーを含有する粘着剤層が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、炭素数4~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマー及びリン酸エステル系化合物を含む光学フィルム用粘着剤組成物等も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-016908号公報
【文献】特開2015-028138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の粘着剤層は、透明プラスチック基材の透明導電層を有さない面に設けられるものであって、粘着剤層と透明導電層が接触するものではなく、粘着剤層による腐食については何ら検討がなされていないものであった。また、特許文献2においては、透明導電層の腐食について検討がなされているものの、粘着剤層にリン酸エステル系化合物を添加することで腐食を抑制するものであり、特定の導電剤については何ら記載されていないものであった。
【0007】
偏光フィルムと透明導電層とを、帯電防止機能が付与された粘着剤層を介して積層すると、透明導電層が端部から腐食する場合があった。このような腐食現象は、前記透明導電層が、金属メッシュを含む透明導電層の場合により顕著であり、さらに、加湿環境下において特に顕著であった。前記透明導電層は、水分と帯電防止機能を付与するための導電剤により腐食していることが新たに分かった。
【0008】
これは、帯電防止機能を付与するために添加される導電剤の種類によっては、粘着剤層の吸水率が高くなり、当該粘着剤層に含まれた水分により透明導電層の腐食が進行することによると考えられる。また、導電剤の種類によっては、粘着剤層と透明導電層との界面付近に導電剤が偏在する場合があり、界面付近に偏在した導電剤により腐食の進行が加速されることも今回新たに分かった。
【0009】
従って、本発明においては、偏光フィルムと透明導電層が粘着剤層を介して積層された場合においても、透明導電層の腐食を抑制することができ、かつ、透明導電層の表面抵抗上昇や外観低下を抑制できる粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。また、このような腐食現象は、前記透明導電層が、金属メッシュを含む透明導電層の場合に顕著であるため、透明導電層が金属メッシュを含む導電層であっても、当該金属メッシュを含む導電層の腐食を抑制することができ、かつ、金属メッシュを含む導電層の表面抵抗上昇や外観低下を抑制できる粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、当該粘着剤層付偏光フィルムを用いた画像表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、透明導電層に貼り合わされて用いられる粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物であって、
(メタ)アクリル系ポリマー(A)及び分子量が380以上の導電剤(B)を含有することを特徴とする、粘着剤組成物に関する。
【0012】
前記導電剤(B)が、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物であって、前記アニオン成分の総炭素数が6以上であることが好ましい。
【0013】
前記導電剤(B)のカチオン成分の総炭素数が6以上であることが好ましい。
【0014】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーからなる群から選択される1種以上のモノマー、並びに、アルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0015】
前記導電剤(B)の分子量が、600以上であることが好ましい。
【0016】
前記透明導電層が、金属メッシュを含む透明導電層である場合に、本発明の効果が顕著である。
【0017】
また、本発明は、前記粘着剤組成物から形成されることを特徴とする粘着剤層に関する。
【0018】
また、本発明は、偏光フィルム、及び前記粘着剤層を有し、透明導電層に貼り合せて用いられることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルムに関する。
【0019】
さらに、本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルム、及び透明導電層を含み、前記粘着剤層付偏光フィルムと前記透明導電層が貼り合わされていることを特徴とする画像表示装置に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粘着剤組成物は、分子量が380以上の導電剤(B)を含有するため、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層を介して、偏光フィルムと透明導電層を積層した場合に、当該透明導電層の腐食を抑制することができ、かつ、透明導電層の表面抵抗上昇や外観低下を抑制できるものである。また、当該効果は、透明導電層が金属メッシュを含む透明導電層である場合に顕著である。これは、本発明においては、分子量が大きい導電剤(B)を用いるため、加湿環境下においても粘着剤層の吸水率が低くすることができ、さらに、前記分子量が大きい導電剤(B)は、加湿環境下において移動しにくく、粘着剤層と透明導電層との界面付近に導電剤が偏在しにくいため、加湿環境下においても、前記導電剤が粘着剤層中において均一に分散した状態を保持しやすく、結果として、透明導電層の腐食を抑制できると考えられる。
【0021】
また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、前記粘着剤層を含むため、透明導電層に積層された場合でも、当該透明導電層の腐食を抑制できるものである。また、前記透明導電層が金属メッシュを含む導電層であっても、当該金属メッシュを含む導電層の腐食を抑制することができる。また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムを含む画像表示装置は、透明導電層の腐食が抑制されているため、信頼性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.粘着剤組成物
本発明の粘着剤組成物は、透明導電層に貼り合わされて用いられる粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物であって、
(メタ)アクリル系ポリマー(A)及び分子量が380以上の導電剤(B)を含有することを特徴とする。
【0024】
本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層について、図面を用いて説明する。但し、本発明は、図面の実施形態に限定されるものではない。図1に示すように、本発明の粘着剤組成物は、偏光フィルム1と粘着剤層2が積層された粘着剤層付偏光フィルム3の前記粘着剤層2を形成するための粘着剤組成物である。図2~4に示すように、本発明の粘着剤層付偏光フィルム3は、透明導電層4に貼り合わされて用いられる。以下、本発明の粘着剤組成物の組成について説明する。
【0025】
(1)(メタ)アクリル系ポリマー(A)
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を含む。(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0026】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等を例示できる。これらは単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー中の主成分とするものである。ここで、主成分とは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー中、アルキル(メタ)アクリレートが70~100重量%程度であることをいい、80~99.9重量%程度が好ましく、90~99.9重量%程度がより好ましい。
【0028】
また、本発明においては、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーからなる群から選択される1種以上のモノマーを含有することが、透明導電層の腐食抑制の観点から好ましく、特に、金属メッシュを含む透明導電層の腐食抑制の観点から好ましい。前記カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマーは、これらの中のいずれか一つを用いてもよく、これらを併用して用いてもよいが、耐腐食性の観点からは、アミド基含有モノマーを含むことが最も好ましく、ヒドロキシル基含有モノマーを含むことが次に好ましく、カルボキシル基含有モノマーを含むことがその次に好ましい。
【0029】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用できる。イタコン酸、マレイン酸はこれらの無水物を用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。一般的に、カルボキシル基含有モノマーをモノマー単位として含むポリマーを含む粘着剤層を、透明導電層等の金属を含む層に用いた場合、カルボキシル基に起因する金属層の腐食が発生する場合がある。従って、通常、カルボキシル基含有モノマーは、耐腐食性を目的とする粘着剤には用いられないものである。本発明においては、粘着剤組成物に、カルボキシル基含有モノマー、後述する、ヒドロキシル基含有モノマー及び/又はアミド基含有モノマーを含むことにより導電剤の分散性を向上することができる。導電剤の分散性が向上した粘着剤組成物から形成された粘着剤層では、導電剤が偏在することがなく、その結果、より高い透明導電層の腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0030】
前記カルボキシル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー中、5重量%以下であることが好ましく、0.1~3重量%がより好ましく、0.1~1重量%がさらに好ましい。カルボキシル基含有モノマーの割合が5重量%を超えると、透明導電層の腐食抑制効果が低減するため好ましくない。また、本発明においては、分子量が380以上の導電剤(B)を含有することで透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)の腐食を抑制できるものであるが、(メタ)アクリル系ポリマー
(A)がモノマー単位として前記カルボキシル基含有モノマーを5重量%以下程度の微量含むことで、より高い腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0031】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等が挙げられる。前記ヒドロキシル基含有モノマーの中でも、耐久性の点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー中、0.01~15重量%が好ましく、0.03~10重量%がより好ましく、0.05~7重量%がさらに好ましい。
【0033】
前記アミド基含有モノマーは、その構造中にアミド基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。アミド基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系モノマー等が挙げられる。これらの中でも、N-ビニル基含有ラクタム系モノマーが好ましい。
【0034】
前記アミド基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー中、10重量%以下であることが好ましく、0.01~10重量%がより好ましく、0.03~7重量%がさらに好ましく、0.05~5重量%が特に好ましい。本発明においては、分子量が380以上の導電剤(B)を含有することで透明導電層の腐食を抑制できるものであるが、(メタ)アクリル系ポリマー(A)がモノマー単位として前記アミド基含有モノマーを10重量%以下程度含むことで、ヒドロキシル基含有モノマーやカルボキシル基含有モノマーを添加した場合と同様に、より高い腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0035】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)中には、前記アルキル(メタ)アクリレートや、カルボキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、上記モノマー以外の共重合モノマーを導入することができる。その配合割合は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー中10重量%以下程度であることが好ましい。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、重量平均分子量が50万~300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は70万~270万であるものを用いることが好ましい。さらには80万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、塗工するための粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストアップとなることから好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0037】
このような(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0038】
前記溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。具体的な溶液重合例としては、窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50~70℃程度で、5~30時間程度の反応条件で行われる。
【0039】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0040】
重合開始剤としては、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル、2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´-アゾビス(N,N´-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(商品名:VA-057、和光純薬工業(株)製)等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー100重量部に対して、0.005~1重量部程度であることが好ましく、0.02~0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0042】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマー(A)を製造するには、重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全モノマー100重量部に対して、0.06~0.2重量部程度とするのが好ましく、0.08~0.175重量部程度とするのがより好ましい。
【0043】
また、連鎖移動剤、乳化重合する場合に用いる乳化剤又は反応性乳化剤を用いる場合、これらは従来公知のものを適宜用いることができるものである。また、これらの添加量としては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定することができる。
【0044】
(2)導電剤(B)
本発明の粘着剤組成物は、分子量が380以上の導電剤(B)を含有するため、透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)の腐食を抑制することができ、透明導電層の表面抵抗上昇や外観低下を抑制できる。前記導電剤(B)の分子量は、380以上であり、400以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましく、600以上であることが特に好ましい。導電剤(B)の分子量が大きいほど、当該導電剤(B)を含む粘着剤層の吸水率が低くなり、かつ、粘着剤層と透明導電層の界面での前記導電剤(B)の偏在が起こりにくいため、透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)の腐食を抑制できる。また、導電剤(B)の分子量の上限値としては特に限定されるものではないが、2000以下であることが粘着剤層の帯電防止機能を確保する点から好ましい。
【0045】
導電剤(B)の分子量が380未満であると、粘着剤層の吸水率が高くなり、粘着剤層に含まれる水分により透明導電層の腐食が進行すると考えられる。また、導電剤(B)の分子量が380未満であると、分子量が小さいため、当該導電剤が粘着剤層中において、透明導電層との界面付近に移動しやすくなるため、偏析してしまい、当該界面付近の導電剤により腐食を引き起こしてしまうと考えられる。当該導電剤が粘着剤層中において、透明導電層との界面付近に多く偏在する傾向があり、当該界面付近の導電剤により腐食の進行が加速されると考えられる。これらの現象は、金属メッシュを含む透明導電層において特に顕著である。また、加湿環境下においても特に顕著である。本発明においては、分子量が380以上の導電剤(B)を用いることで、分子量が大きいため、加湿環境下においても、当該導電剤が粘着剤層中において移動しにくく、偏析しにくいため、導電剤が均一に分散した状態を保持しやすいため、結果として、透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)の腐食を抑制できると考えられる。
【0046】
前記導電剤(B)は、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物であることが好ましい。前記カチオン成分、アニオン成分について説明する。
【0047】
(イオン性化合物のアニオン成分)
本発明においては、アニオン成分の総炭素数が6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、アニオン成分の総炭素数の上限値は特に限定されるものではないが、16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。アニオン成分の総炭素数が6以上であることで、導電剤(B)自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくくなり、その結果、透明導電層の腐食が抑制できるため好ましい。
【0048】
また、前記アニオン成分は、有機基を有することが好ましく、前記有機基は、炭素数3以上の有機基であることが好ましく、炭素数4以上の有機基であることがより好ましい。
【0049】
前記アニオン成分の分子量としては、特に限定されるものではなく、導電剤(B)としての分子量が380以上であればよいが、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることがさらに好ましい。アニオン成分の分子量が前記範囲になることで、導電剤(B)自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくく、その結果、透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)の腐食が抑制できるため好ましい。また、アニオン成分の分子量の上限値としては特に限定されるものではないが、1000以下であることが粘着剤層の帯電防止機能を確保する点から好ましい。
【0050】
アニオン成分としては、下記一般式(1):
(C2n+1SO (1)
(一般式(1)中、nは1~10の整数(好ましくはnは3~10の整数))、下記一般式(2):
CF(C2mSO (2)
(一般式(2)中、mは1~10の整数(好ましくはmは2~10の整数))、及び、下記一般式(3):
S(CFSO (3)
(一般式(3)中、lは1~10の整数(好ましくはlは3~10の整数))で表される少なくとも1種のアニオン成分であることが、腐食抑制の観点から好ましい。
【0051】
上記一般式(1)で表されるアニオン成分としては、具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ウンデカフルオロペンタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリデカフルオロヘキサンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンダデカフルオロヘプタンスルホニル)イミドアニオン等が挙げられる。これらの中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオンが好ましく、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオンが特に好ましい。
【0052】
上記一般式(2)で表されるアニオン成分としては、具体的には、シクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミドアニオンが挙げられ、好適に使用可能である。
【0053】
上記一般式(3)で表されるアニオン成分としては、具体的には、ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホン酸アニオンが挙げられ、好適に使用可能である。
【0054】
(イオン性化合物のカチオン成分)
イオン性化合物のカチオン成分としては、有機カチオンが好ましい。カチオンの総炭素数は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また、カチオンの総炭素数の上限値は特に限定されないが、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。カチオン成分の総炭素数が6以上であることで、導電剤(B)自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくくなり、その結果、透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)の腐食が抑制できるため好ましい。
【0055】
また、前記カチオン成分は、有機基を有することが好ましく、前記有機基としては、炭素数3以上の有機基が好ましく、炭素数7以上の有機基がより好ましい。
【0056】
本発明においては、前記有機カチオンを用いることが好ましいが、導電剤(B)としての分子量が380以上となるのであれば、カチオン成分として、リチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ金属イオン等を用いることができる。
【0057】
イオン性化合物のカチオン成分が有機カチオンである場合、上記アニオン成分と共に、イオン性化合物としての有機カチオン-アニオン塩を構成する。有機カチオン-アニオン塩は、イオン性液体、イオン性固体とも言われる。有機カチオンとしては、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0058】
有機カチオン-アニオン塩の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせからなる化合物が適宜選択して用いられ、例えば、ブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N-ブチル-メチルピリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、メチルプロピルピロリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムシクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミド、ビス(1-ブチル-3-メチルピリジニウム)ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドイミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムシクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミド、ビス(1-エチル-3-メチルピリジニウム)ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホン酸、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、ヘキシルメチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ブチルメチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-デシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0059】
また、アルカリ金属塩としては、具体的には、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドカリウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム等が挙げられる。
【0060】
本発明の粘着剤組成物における導電剤(B)の割合は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.001~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましく、0.3~3重量部がさらに好ましい。前記導電剤(B)が0.001重量部未満では、腐食抑制効果が十分ではない場合がある。一方、前記導電剤(B)は10重量部より多いと、耐久性が十分ではなくなる場合がある。
【0061】
(3)架橋剤(C)
本発明の粘着剤組成物には、前記以外にも、架橋剤(C)を含有することできる。架橋剤(C)としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合又は配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0062】
架橋剤(C)の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.01~20重量部が好ましく、0.03~10重量部がより好ましい。
【0063】
(4)その他
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、各種シランカップリング剤、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0064】
2.粘着剤層
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物から形成されることを特徴とする。
【0065】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ等に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を形成する方法を挙げることができる。また、後述する偏光フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を偏光フィルムに形成する方法等により作製することもできる。なお、粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0066】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する場合、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0067】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0068】
前記粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0069】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1~100μm程度である。好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。
【0070】
3.粘着剤層付偏光フィルム
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、偏光フィルム、及び前記粘着剤層を有し、透明導電層に貼り合せて用いられることを特徴とする。
【0071】
粘着剤層を形成する方法としては、前述の通りである。
【0072】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、粘着剤層を剥離処理したセパレータ等上に形成した場合、当該セパレーター上の粘着剤層を偏光フィルムの透明保護フィルム面に転写して粘着剤層付偏光フィルムを形成することができる。また、偏光フィルムに直接前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層付偏光フィルムを形成することもできる。
【0073】
また、前記偏光フィルムの粘着剤組成物を塗布する表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理等の各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0074】
また、粘着剤層付偏光フィルムにおいて粘着剤層が露出する場合には、透明導電層に貼り合せるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0075】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等を挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0076】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0077】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0078】
なお、上記の粘着剤層付偏光フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着剤層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0079】
偏光フィルムは、偏光子の少なくとも片側に透明保護フィルムを有するものが用いられる。
【0080】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好ましく、ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子がより好ましい。また、これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5~80μm程度である。
【0081】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0082】
また、本発明においては、厚みが10μm以下の薄型偏光子も用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚みは1~7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0083】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51-069644号公報や特開2000-338329号公報や、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法により得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0084】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることができる点で、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0085】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0086】
前記偏光子の少なくとも片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされる。偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5~60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光フィルム用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
【0087】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、透明導電層に貼り合せて用いるものであるが、透明導電層としては、金属細線が格子状のパターンに形成されてなる金属メッシュやITO(インジウム・スズ複合酸化物)等の金属酸化物層を形成して得られるものを挙げることができ、特に金属メッシュに対して耐腐食性の効果が顕著である。
【0088】
前記金属メッシュを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いることができる。上記金属メッシュを構成する金属としては、金、白金、銀、アルミニウム、及び銅からなる群より選ばれた1種以上の金属が好ましく、導電性の観点からは、アルミニウム、銀、銅、又は金であることが好ましい。
【0089】
金属メッシュを含む透明導電層は、任意の適切な方法により形成させることができる。該透明導電層は、例えば、銀塩を含む感光性組成物(透明導電層形成用組成物)を離型フィルム等の被着体上に塗布し、その後、露光処理及び現像処理を行い、金属細線を所定のパターンに形成することにより得ることができる。また、該透明導電層は、金属微粒子を含むペースト(透明導電層形成用組成物)を所定のパターンに印刷して得ることもできる。このような透明導電層及びその形成方法の詳細は、例えば、特開2012-18634号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。また、金属メッシュから構成される透明導電層及びその形成方法の別の例としては、特開2003-331654号公報に記載の透明導電層及びその形成方法が挙げられる。
【0090】
(金属メッシュを含む)透明導電層の厚みは、0.01~10μm程度であることが好ましく、0.05~3μm程度であることがより好ましく、0.1~1μmであることがさらに好ましい。
【0091】
また、前記(金属メッシュを含む)透明導電層上には、オーバーコート(OC)層(不図示)を有してもよい。
【0092】
オーバーコート層としては、本分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができるが、例えば、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等から形成される層を挙げることができる。オーバーコート層の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.1~10μmであることが好ましい。
【0093】
4.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、前記粘着剤層付偏光フィルム、及び透明導電層を含み、前記粘着剤層付偏光フィルムと前記透明導電層が貼り合わされていることを特徴とする。ここで、前記「粘着剤層付偏光フィルムと前記透明導電層が貼り合わされている」状態は、前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層と前記透明導電層が接するように貼り合わされていてもよいし、透明導電層上に前述のオーバーコート層を有する場合は、前記粘着剤付偏光フィルムの粘着剤層と前記オーバーコート層が接するように貼り合わされていてもよい。
【0094】
前述の通り、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、本発明の粘着剤層を有するため、(金属メッシュを含む)透明導電層に貼り合せた際にも、(金属メッシュを含む)透明導電層の腐食を抑制することができ、(金属メッシュを含む)透明導電層の表面抵抗上昇や外観低下を抑制できるものである。
【0095】
例えば、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、入力装置(タッチパネル等)を備えた画像表示装置(液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等)、入力装置(タッチパネル等)等の機器を構成する基材(部材)又はこれらの機器に用いられる基材(部材)の製造において好適に用いることができるが、特に、タッチパネル用の光学基材の製造において好適に用いることができる。また、抵抗膜方式や静電容量方式といったタッチパネル等の方式に関係なく使用することができる。
【0096】
また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、光学デバイス用基材(光学部材)として用いることができる。光学デバイス用基材としては、光学的特性を有する基材であれば、特に限定されないが、例えば、画像表示装置(液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等)、入力装置(タッチパネル等)等の機器を構成する基材(部材)又はこれらの機器に用いられる基材(部材)が挙げられる。
【0097】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムを用いた画像表示装置の具体例としては、例えば、透明導電膜を帯電防止層用途として使用する画像表示装置や、透明導電膜をタッチパネルの電極用途として使用する画像表示装置を挙げることができる。透明導電膜を帯電防止層用途として使用する画像表示装置としては、具体的には、例えば、図2に示すように、偏光フィルム1/粘着剤層2/透明導電層4/ガラス基板5/液晶層6/駆動電極7/ガラス基板5/粘着剤層8/偏光フィルム9からなる構成であって、透明導電層4が帯電防止層として機能し、駆動電極7が透明導電層から形成される画像表示装置が挙げられる。当該画像表示装置の上側(視認側)の偏光フィルム1/粘着剤層2として、本発明の粘着剤層付偏光フィルム3を用いることができる。また、透明導電膜をタッチパネルの電極用途として使用する画像表示装置としては、例えば、図3に示すように、偏光フィルム1/粘着剤層2/透明導電層4/ガラス基板5/液晶層6/駆動電極兼センサー層10/ガラス基板5/粘着剤層8/偏光フィルム9の構成(インセル型タッチパネル)や、図4に示すように、偏光フィルム1/粘着剤層2/透明導電層4/センサー層11/ガラス基板5/液晶層6/駆動電極7/ガラス基板5/粘着剤層8/偏光フィルム9の構成(オンセル型タッチパネル)であって、前記透明導電層4が、帯電防止層兼センサー層として機能し、センサー層11、駆動電極7が透明導電層から形成される画像表示装置が挙げられる。当該画像表示装置の上側(視認側)の偏光フィルム1/粘着剤層2として、本発明の粘着剤層付偏光フィルム3を用いることができる。また、画像表示装置の下側(バックライト側)の粘着剤層8、偏光フィルム9としては、本分野において広く用いられるものを適宜用いることができる。
【実施例
【0098】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0099】
製造例1(アクリル系ポリマー(A-1)の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート97.8部、N-ビニルピロリドン1.5部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.4部、及び、アクリル酸0.3部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度20%に調整した、重量平均分子量160万のアクリル系ポリマー(A-1)の溶液を調製した。
【0100】
製造例2(アクリル系ポリマー(A-2)の調製)
製造例1において、モノマー混合物として、ブチルアクリレート99部、及びアクリル酸4-ヒドロキシブチル1部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量170万のアクリル系ポリマー(A-2)の溶液を調製した。
【0101】
製造例3(アクリル系ポリマー(A-3)の調製)
製造例1において、モノマー混合物として、ブチルアクリレート97.5部、アクリル酸2部、アクリル酸ヒドロキシエチル0.1部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量190万のアクリル系ポリマー(A-3)の溶液を調製した。
【0102】
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、以下の方法により測定した。
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm・カラム温度:40℃・流量:0.8ml/min・注入量:100μl・溶離液:テトラヒドロフラン・検出器:示差屈折計(RI)・標準試料:ポリスチレン
【0103】
製造例4(偏光フィルムの作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍になるように延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ20μmの偏光子を得た。当該偏光子の両面に、けん化処理した厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを、それぞれ、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルムを作製した。
【0104】
実施例1
(粘着剤組成物の調製)
製造例1で得られたアクリル系ポリマー(A-1)溶液の固形分100部に対して、導電剤(B)として、ブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(商品名:BMI・N441、三菱マテリアル電子化成(株)製)1部、さらに、イソシアネート架橋剤(商品名:タケネートD160N、トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.1部、ベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.3部、及びγーグリシドキシプロピルメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)0.2部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0105】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで1分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ23μmの粘着剤層を形成した。次いで、製造例4で作製した偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0106】
実施例2~17、比較例1~9
実施例1において、粘着剤組成物の調製にあたり、アクリル系ポリマー、導電剤の種類を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。なお、導電剤の添加量は、実施例1と同じモル濃度となる量で添加した。
【0107】
上記実施例及び比較例で得られた、粘着剤層付偏光フィルムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0108】
<腐食試験>
表面に厚さ0.1μmのアルミニウム系金属層が形成された導電性ガラスに、実施例、及び比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを15mm×15mmに切断し、セパレータフィルムを剥がして貼り合わせた後、50℃、5atmで15分間オートクレーブにかけたものを耐腐食性の測定サンプルとした。得られた測定用サンプルを温度60℃、湿度95%の環境に、500時間投入した後に、目視及び光学顕微鏡にて金属層の外観を評価した。なお欠陥の大きさは、欠陥の一番長い部分を測定した。
◎・・・欠陥なし
○・・・周辺の一部に僅かに欠陥(欠陥の大きさは0.5mm未満)あるが、内部には欠陥がなく、問題のないレベル
△・・・周辺部に断続的な欠陥(欠陥の大きさは0.5mm以上、1mm未満)があるが、内部には欠陥がなく、問題のないレベル
×・・・周辺部に連続的な欠陥(欠陥の大きさは1mm以上)があるか、又は内部に欠陥があり、問題になるレベル
【0109】
<表面抵抗値>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムのセパレータフィルムを剥がした後、粘着剤表面の表面抵抗値(Ω/□)を(株)三菱化学アナリテック製、MCP-HT450を用いて測定した。表面抵抗値は、1.0×1012Ω/□未満であるのが好ましい。
【0110】
【表1】
【0111】
表1中、
(A-1)は、製造例1で作製したアクリル系ポリマー(A-1)、
(A-2)は、製造例2で作製したアクリル系ポリマー(A-2)、
(A-3)は、製造例3で作製したアクリル系ポリマー(A-3)、
BMI-NFSIは、ブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、
BMPy-NFSIは、N-ブチル-メチルピリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、
MPP-NFSIは、メチルプロピルピロリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、
MTOA-TFSIは、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
HMPy-TFSIは、ヘキシルメチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
EMP-TFSIは、エチルメチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
MPP-TFSIは、メチルプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
BMPp-TFSIは、ブチルメチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
MTOA-NFSIは、メチルトリオクチルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、
Li-NFSIは、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、
Dcpy-TFSIは、1-デシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
MTOA-FSIは、メチルトリオクチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、
Li-TFSIは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
K-TFSIは、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
TMA-TFSIは、テトラメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
EMI-TFは、エチルメチルイミダゾリウムトリフルオロスルホネート、
MOPy-PF6は、メチルオクチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、
Li-FSIは、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、
を示す。
【符号の説明】
【0112】
1 偏光フィルム
2 粘着剤層
3 粘着剤層付偏光フィルム
4 透明導電層
5 ガラス基板
6 液晶層
7 駆動電極
8 粘着剤層
9 偏光フィルム
10 駆動電極兼センサー層
11 センサー層
図1
図2
図3
図4