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▶ リープヘル−フェアツァーンテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】歯車素材のデバリング方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/10 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B23F19/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016184780
(22)【出願日】2016-09-21
(65)【公開番号】P2017064903
(43)【公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-06-10
(31)【優先権主張番号】10 2015 012 603.2
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594012634
【氏名又は名称】リープヘル-フェアツァーンテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンケル オリバー
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505844(JP,A)
【文献】特開昭61-152320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0294530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称性の強い形状のデバリングカッター(チャンファーカット)で形成された歯のエッジにおける面取りの大きさ、面取りの形状及び面取りの対称性を修正する、歯車素材のデバリング方法であって、
面取り、すなわち、面取りの幅と面取りの形状の半自動修正が、少なくとも、ワークピースの回転軸であるC1軸、ツール移動の空間変位軸であるZ1軸、X1軸、及びY1軸、またはツール軸の軸方向の変位方向であるV1方向を有する歯車切削装置の、複数の軸の移動の組み合わせにより行われ、
軸方向の補正値を特定する工程と、
コントローラにより、さらなる軸の必要な補正量を、
面取りの幅を変更すべきであるときに、歯部のらせん角度によりC1軸をZ1軸に組み合わせて、面取りが大きい場合はZ1軸で値をプラスに補正し、面取りが小さい場合はZ1軸で値をマイナスに補正する工程、または、
面取りの大きさを歯の左側エッジと右側エッジで変えるべきときに、歯車切削装置がV1軸を有する場合、ツールの旋回角度と歯部の正面接触角度によりC1軸とZ1軸をV1方向に組み合わせて歯の左側面の面取りが大きい場合はV1軸又はC1軸で値をプラスに補正し、歯の右側面の面取りが大きい場合はV1軸又はC1軸で値をマイナスに補正する工程、または、
面取りの大きさを歯の左側エッジと右側エッジで変えるべきときに、歯車切削装置がY1軸を有する場合、歯部の正面接触角度によりY1軸をC1軸に組み合わせて歯の左側面の面取りが大きい場合はY1軸又はC1軸で値をプラスに補正し、歯の右側面の面取りが大きい場合はY1軸又はC1軸で値をマイナスに補正する工程
により計算する工程と、
を有することを特徴とする歯車素材のデバリング方法。
【請求項2】
請求項1において、
左側面及び/または右側面の面取りの幅が、測定された面取りの幅の入力値を、入力された設定値と比較して、自動的に補正されることを特徴とする歯車素材のデバリング方法。
【請求項3】
請求項1において、
左側面及び/または右側面の面取りの幅が、歯車切削装置内で測定手段(測定センサ)を用いて測定された面取りの幅の測定結果を、入力された設定値と比較して、自動的に補正されることを特徴とする歯車素材のデバリング方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
コントローラでの制御に用いるフライスのデータが、電子データ形式(例えばXML:Extensible Markup Language(拡張可能なマーク付け言語))により取り込まれ
ることを特徴とする歯車素材のデバリング方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
コントローラでの制御に用いるフライスのデータが、切れ味が悪いツールを修理するときにオンラインで取り出されることを特徴とする歯車素材のデバリング方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つにおいて、
予め形成された歯の面取りの幅が、歯の側面の機械加工の許容差を考慮することにより、最終的に形成された歯の面取りの幅に変換されることを特徴とする歯車素材のデバリング方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1つにおいて、
測定された面取りの値が、図面仕様書の値と比較されることを特徴とする歯車素材のデバリング方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1つに記載された方法を実施する装置であって、
機械の操作者によって行われる操作のほかの処理を自動的に実行するコントローラを有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車素材のデバリング方法に関し、特に、形状の非対称性が強い歯を有するデバリングカッター(チャンファーカット)によって形成された歯のエッジの面取りの大きさ、面取りの形状及び面取りの対称性の修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チャンファーカットフライスは、形状の非対称性が強く、連続したフライス工程で歯付きのワークピースの歯のエッジに面取りを形成する総形フライスである。また、このフライスは、スターツ(starts)の多さによって特徴付けられている。ホビングカッターと対照的に、チャンファーカットフライスは連続的に機能するが、回転しては機能しない。
【0003】
このことは、新たなギャップに入るチャンファーカットフライスの各歯が、歯部(toothing)の端面に沿って面取りを形成することを意味する。しかしながら、このことは、歯車のホブ加工の場合のように、数回の外形切削でなされるのではなく、面取りの全体形状(歯の両側面と底部)を1回の切削で形成するこのツールの特殊な形状によってなされる。
【0004】
したがって、チャンファーカットフライスには、ワークピースによる強い制限がある。同一の(または同じ基準形状の)ホビングカッターで形成された歯部は、歯部が、例えばらせん角度、形状のシフト、または歯の数に関して異なるときに、別々のチャンファーカットフライスも必要とする。
【0005】
円筒状の平歯車を面取りするためのツールセットは、一般に、2つの同一のチャンファーカットツールを、歯部の上面と底面に1つずつ有している。しかしながら、歯部の一方の側だけをデバリングする場合やフライスを180°旋回させることができる場合は、フライスを1つだけ使用することも可能である。上面と底面を面取りすべきである円錐型の歯部の場合は、2つの異なるチャンファーカットツールが必要である。
【0006】
歯部の上面と底面がツールの回転と反対方向に面取りされるように、2つのチャンファーカットフライスが、マンドレルに反対向きにクランプされる。したがって、2回の機械加工工程の間に、ツールのスピンドルの回転方向を変更することが必要になる。
【0007】
チャンファーカットフライスで歯車を面取りするための一般的な方法が特許文献1に記載されている。この特許文献1には、歯車素材から歯車を形成する方法が記載されており、この方法では、マシンツールにクランプされて回転駆動される歯車素材が、回転駆動されるツール軸に設けられたホビングカッターで機械加工され、形成された未加工歯車が次いで回転駆動されるデバリングツールによってデバリングされ、歯溝の正面のエッジが面取りされる。デバリングツールと未加工歯車の回転速度は一定の比率を有し、マシンツールにクランプされた未加工歯車のデバリングが、ホビングカッターの軸に回転不可に設けられた切断歯を有する側フライスと同様のデバリングツールの連続的な通過により行われる。歯溝の正面エッジは、歯車のホブ加工方法で次々に機械加工され、軸は歯車のホブ加工位置からデバリング位置へ移動する。しかしながら、ここでは、特別なチャンファーカットツールによって面取りを形成する方法だけを概略説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第1495825号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
チャンファーカットフライスは設定ツールであり、ワークピースとチャンファーカットフライスの間の位置的な方向付けを行わなければならない。このツールは、特定の基準歯を用いて歯車のギャップに正確に中心を合わせなければならない。この基準歯は、マシニングヘッドのメインベアリングに対して正確な距離に、かつ歯部の端面の一方に合う特定の回転位置に位置決めされる必要がある。
【0010】
ツールの設定とチャンファーカットフライスの面取り形成とにおける特殊性により、フライスの仕様書(description)のためだけのパラメータのほとんどは数学的に計算されるということにつながり、フライスで測定することはできない。したがって、正確な設定データは、ツールの製造業者により、特別な設定データシートで提供される。このツールの場合には、理論的に正確な設定データを機械のコントローラに入力することにより、設計に適合した歯の面取りを形成できる。しかしながら、面取りが要求された値に対応していない場合、データシートからの設定値は、形成される面取りの測定値を基準にして修正しなければならない。
【0011】
このツールは非対称性が強い総形フライスであり、これまで、実際にいくつかの実験で、正確な歯の面取りを形成できる修正された設定データが決定されている。面取りの形成には複数の軸が含まれるので、正確な設定は、ときには非常に難しくなる。
【0012】
らせん状の歯部を面取り及びデバリングするとき、設定データの補正は、鋭角なエッジと鈍角なエッジとの間で効果が異なるので特に困難である。
【0013】
本発明の目的は、面取りの大きさ、面取りの形状及び面取りの対称性に影響する補正値を測定データまたは入力データに基づいて決定でき、その後に歯車の切削装置の設定データをそれに対応して補正できる方法を提供することである。この設定データの変更により、正確な面取り形状及び適切な面取りの大きさと面取りの対称性が、続いて行われる面取り及びデバリングの工程の間に実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、請求項1の特徴の組み合わせにより解決できる。
【0015】
本発明の第1の態様では、面取りの形状の半自動修正方法が提供される。面取りの幅を変更すべきであるとき、ツールの垂直方向(Z1方向)の現在位置が、機械の操作者により補正量(図4a参照)を以て補正される。しかしながら、らせん状の歯部においては、純粋に垂直なZ1補正は、歯の左側エッジと右側エッジとの間で不均一な影響を有する。したがって、ワークピースの回転位置の修正(C1方向)をさらに行わなければならず、その大きさと方向は、歯部のらせん角度と歯の方向に左右され、さらに、歯部の上面または下面に面取りを形成すべきかどうかに左右される。
【0016】
本発明の第1の解決手段によれば、機械の操作者はZ1方向の補正値を特定し、機械のNCコントローラ(数値制御コントローラ)がツールと歯部データを用いてC1方向に必要な追加の補正値を算出する。
【0017】
面取りの大きさを歯の左側エッジと右側エッジで変えるべきときは、ツールのギャップに対するツールのエッジの位置の接線補正(tangential correction)を効かせなければならない。ユニットの構成に応じて2つの可能性がある。
【0018】
ユニットがV1軸を有する場合、チャンファーカットツールはその中間軸に沿って位置が変えられる。そして、コントローラは、さらにZ1軸とC1軸の補正をしなければならない。Z1軸の方向の補正はツールの旋回角度に左右され、C1軸の方向の補正は歯部の正面接触角度に左右される。
【0019】
一方、ユニットがY1軸を有するときは、この場合のユニット全体がワークピースに対して接線方向に(tangentially)位置が変えられる。そして、C1軸によるさらなる補正がなされ、その大きさは、今度は歯部の正面接触角度により決定される。この目的のために、歯部のデータと必要な面取りの寸法から、三角関数を用いた計算が行われる。
【0020】
本発明の他の態様は、外部から行われた面取りの測定結果に基づいて、または機械の内部で行った面取りの測定値に基づいて、面取りの形状を全自動で補正することである。補正のメカニズムは、この場合にはどの軸の移動で面取りを最適に補正できるかをコントローラがさらに決定しなければならない点を除いて、上述の補正と同一である。面取りの幅が入力されるか測定されるのが好ましく、補正は測定結果から求められる。コントローラは、もちろん、面取りの深さ及び/または面取りの角度を入力するか測定するようにしてもよく、それから軸移動の補正係数を求めてもよい。
【0021】
上記の三角関数を用いると、コントローラは、面取りの幅から面取りの深さ及び/または面取りの角度も計算することが可能になる。このことにより、機械の操作者にとって、機械のコントローラによって容易に測定できる値(面取りの幅)から、その結果としての値を得ることに関して可能性が広がり、さらに、その値は、図面仕様書と比較してから、面取りの補正値を特定するのに用いることができる。例えば、図面において面取り深さだけが特定されているとき、面取り幅をより容易に測定してから決定することができ、制御値として出力することができる。
【0022】
一つの拡張例として、この出力機能は、歯部をソフトマシニング(soft machining)するために面取りの大きさを決定するのに用いることもできる。面取りは、通常はソフトマシニング中に既に形成されるが、ハードフィニッシング(hard finishing)後に一定の大きさにしなければならない。従来の技術では、面取りの大きさに関する指示は、通常は仕上げ部品の図面に設けられ、ソフトマシニングでは得られない。機械の操作者は、ワークピースの既知の側面剰余(flank overmeasure)で正確な面取りの大きさを決定し、その整合性をチェックするという課題を負う。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明に係る方法を適用した装置の実施形態を示す斜視図である。
図2a図2aは、歯の上側のエッジの面取りとデバリング中のフライスの状況を示す図である。
図2b図2bは、歯の下側のエッジの面取りとデバリング中のフライスの状況を示す図である。
図3図3は、ツールクランピングアセンブリの正面図である。
図4a図4aは、歯車に対する個々の軸の移動の影響を示す図である。
図4b図4bは、歯車に対する個々の軸の移動の影響を示す図である。
図4c図4cは、歯車に対する個々の軸の移動の影響を示す図である。
図4d図4dは、歯車に対する個々の軸の移動の影響を示す図である。
図5a図5aは、歯の側面のエッジを面取りの種々のパラメータとともに示す図である。
図5b図5bは、歯の側面のエッジを面取りの種々のパラメータとともに示す図である。
図5c図5cは、歯の側面のエッジを面取りの種々のパラメータとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付の図面を参照して好適な実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る方法を適用した装置10の実施形態を示している。機械加工されるワークピース50は、ワークピースホルダ30と上部クランプベル(upper clamping bell)35の間にクランプされている。ワークピースは駆動部40によりC1軸の周りで回転駆動される。ツール軸B1はこのC1軸に対して回転可能に連結された態様で回転し、それによってツールマンドレル70を駆動する。このツールマンドレルは、ツールの位置を歯部のらせん角度とツールのピッチ角に関して調整するために、A1軸の周りで回転可能なマシニングヘッド25に収容されている。ツールの送り動作は、歯部の下方または上方のフライス加工位置に近づけるようにX1軸とZ1軸に沿って行われる。Y1軸により、ツールはワークピースに対して接線方向へ位置を変更することができる。これらの軸により、この方法において必要な修正動作が、修正値の量の移動が通常の位置決め移動と重なることにおいて部分的に効果を奏する。
【0026】
変形例においては、このツールは、ユニット全体をワークピースの接線方向(Y1方向)へ移動させる代わりに、ツール軸(V1方向)に沿って移動させることができる。
【0027】
図2a,bは、歯のエッジの面取りとデバリング中のフライス加工の状況を示している。図2aは、歯部の上側のエッジ用のフライスツール71で、歯の上側のエッジ71で機械加工するときの状況を示している。このツールは設定寸法M1,M2で正確に位置させる必要があり、その結果、歯のエッジを所望のエッジ形状及び大きさに形成することができる。図2bは、歯の下側のエッジの面取りとデバリング中の状況を示している。寸法M3はカッター中心から端面までの距離を示している。角度φは、(グレーの下地を有する)基準歯の切削エッジが歯部の端面と水平方向に交わる、面取りカッター72の回転位置を示している。寸法M4は、ツールの軸とワークピースの軸の間の正確な中心距離の基準値である。これらのデータは、フライスの設定データシート上で求めることができ、ツールの正確な設計データに対応している。これらの設定データに一致していれば、設計に適合した面取りが可能になる。製造許容誤差やツールの位置決め誤差、ツールの再形成中の再研削量のため、これらのデータは、正確に面取りをするために、補正データを用いて修正しなければならない。
【0028】
図3に示したツールクランピングアセンブリ75は、ツール71,72に適合するツールマンドレル74と、チャンファーカットツールをクランプする機能を有する数個のフライスアーバーリング73を有している。メインベアリングとフライスの間の距離を表す寸法M5,M6もまた、可能な限り正確である必要がある。寸法M5,M6は、同様に、フライスの製造業者の設定データシートから採用しなければならないデータである。
【0029】
歯車に対する個々の軸の移動の影響、すなわちどのような修正をすれば歯のエッジにどのような結果が生じるかについての説明図が、図4aから図4dに示されている。
【0030】
図4aは、ワークピースのX1軸とZ1軸に沿った方向へのツールの送りの影響を示している。X1軸で値をプラスに補正すれば、ツール軸とワークピース軸の間の中心距離が大きくなり、それによって面取りの大きさは小さくなる。逆の場合、面取りは大きくなる。Z1軸で値をプラスに補正すれば面取りは小さくなり、値をマイナスに補正すればフライスとワークピースが近づくので面取りは大きくなる。
【0031】
ワークピースに対するツールの移動(tangential displacement)がY1軸の方向であれば、歯の左側面と右側面の間に異なる大きな面取りが形成される。歯の左側面の面取りが大きい場合、Y1軸の「プラス方向」の変更をしなければならない。歯の右側面から離れる補正は「マイナス補正」によってなされる。この効果を図4bに示している。この効果は、図4cに示すように、C1軸の周りでさらに回転させることによっても達成できる。
【0032】
面取りの幅が歯の先端から歯の底部へ向かって変化する場合、このことは、A1軸の周りでのさらなる旋回によって対処しなければならない。歯の側面への影響の結果と、それに対してしなければならない修正の方向が、図4dに明確に示されている。
【0033】
これらの図により、修正をしなければならない方向を極めて容易に説明することができる。しかしながら、図は方向を示しているだけで、その量は示していない。特に、らせん状の歯部の場合は、その歯部の形状のために、修正結果が歯の右側面と左側面とで異なるので、いくつかの軸で同時に修正しなければならない。
【0034】
この場合、機械の操作者は歯の2つの側面の面取り形状のために測定値を入力しなければならないだけで、機械のコントローラが引き続いていくつかの軸にも同時に必要な補正を決定し、次のワークピースが機械加工されるときに同様のことが考慮されるので、本発明に係る方法は有用である。
【0035】
図5a~5cは歯の側面のエッジを面取りの種々のパラメータとともに示している。
【0036】
図5a~5cのパラメータは、
αt 歯部の正面接触角
αn 歯部の標準接触角
β 歯部のらせん角度
η チャンファーカットの旋回角度
bF 面取り幅
tF 面取り深さ
ρF 面取り角度(常数)
ρR,L 面取り角度(常数)
Δs 側面剰余(flank overmeasure)
C 面取り幅に対する面取り深さの比率
Z,R,L 軸変位に対する面取り幅の比率
R,L 面取りの軸変位
K エッジ角係数
目的の面取り
実際の面取り
指数v 予め歯が形成された
指数f 完全に歯が形成された
指数R 右側面
指数L 左側面
である。
【0037】
図5bは、面取り幅、面取りの大きさ、及び面取り角度の関係を、鋭角の面取りと鈍角の面取りの両方について示している。図では、面取り幅と面取り深さが同じでも、歯部のらせん角も考慮する必要があり、面取り角度が異なることが明確に示されている。
【0038】
図5cは面取りの大きさbFとtFのそれぞれの、機械加工の許容誤差Δの影響を示している。
【0039】
以上のように、本発明の方法は、非対称性の強い形状のデバリングカッター(チャンファーカット)で形成された歯のエッジにおける面取りの大きさ、面取りの形状及び面取りの対称性を修正する、歯車素材のデバリング方法であって、
面取り、すなわち、面取りの幅と面取りの形状の半自動修正が、少なくとも、ワークピースの回転軸であるC1軸、ツール移動の空間変位軸であるZ1軸、X1軸、及びY1軸、及びツール軸の軸方向の変位方向であるV1方向を有する歯車切削装置の、複数の軸の移動の組み合わせにより行われ、
軸方向の補正値を特定する工程と、
コントローラにより、さらなる軸の必要な補正量を、
面取りの幅を変更すべきであるときに、歯部のらせん角度によりC1軸をZ1軸に組み合わせる工程、及び/または、
面取りの大きさを歯の左側エッジと右側エッジで変えるべきときに、歯車切削装置がV1軸を有する場合、ツールの旋回角度と歯部の正面接触角度によりC1軸とZ1軸をV1方向に組み合わせる工程、及び/または、
面取りの大きさを歯の左側エッジと右側エッジで変えるべきときに、歯車切削装置がY1軸を有する場合、歯部の正面接触角度によりY1軸をC1軸に組み合わせる工程
により計算する工程と、
を有する。
【0040】
また、上記の方法では、左側面及び/または右側面の面取りの幅が、入力された設定値と比較して、測定された面取りの幅を入力することにより、自動的に補正される。
【0041】
また、上記の方法では、左側面及び/または右側面の面取りの幅が、入力された設定値と比較して、歯車切削装置内で測定手段(測定センサ)を用いて測定された測定結果に基づいて、自動的に補正される。
【0042】
また、上記の方法では、フライスのデータが、電子データ形式(例えばXML:Extensible Markup Language(拡張可能なマーク付け言語))により取り込まれる。
【0043】
また、上記の方法では、フライスのデータが、切れ味が悪いツールを修理するときにオンラインで取り出される。
【0044】
また、上記の方法では、予め歯が形成されたツールの面取りの幅が、歯の側面の機械加工の許容差を考慮することにより、最終的な歯が形成されたツールの面取りの幅に変換される。
【0045】
また、上記の方法では、測定された面取りの値が、測定されたデータ形式で表されていなくても、図面仕様書の値と比較される。
【0046】
また、本発明は、上記の方法を実施する装置であって、上記方法を自動的に実行するコントローラを有する。
【0047】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、歯車素材のデバリング方法について有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 装置
50 ワークピース(歯車素材)
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c