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特許7057080トルク保持が向上したディスクドライブサスペンションベースプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】トルク保持が向上したディスクドライブサスペンションベースプレート
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20220412BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
G11B21/21 C
G11B5/60 C
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017168862
(22)【出願日】2017-09-01
(65)【公開番号】P2018073450
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】62/383,053
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/691,627
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521362645
【氏名又は名称】イントリ-プレックス(タイランド)リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】シェリー,ジェームス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェックワース,ジェフリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ボップ,ショーン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リーブチ,クレイグ エー.
(72)【発明者】
【氏名】リーマー,ダグラス ピー.
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0156357(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0061510(US,A1)
【文献】特開2010-262705(JP,A)
【文献】特開2013-069376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/21
G11B 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の部分と、
板状の部分から突出し、ディスクドライブのアクチュエータアームの開口部に固定される円筒状のボスとを備え、
前記ボスは、粗さパラメータRa≧0.15μmによって特徴づけられるボス外面を有するディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項2】
前記ボスは、粗さパラメータRa≧0.20μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項1に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項3】
前記ボスは、粗さパラメータRa≧0.25μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項1に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項4】
前記ボスは、0.40μmを含む粗さパラメータRaによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項3に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項5】
前記ボスは、粗さパラメータRa≧0.70μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項1に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項6】
板状の部分と、
板状の部分から突出し、ディスクドライブのアクチュエータアームの開口部に固定される円筒状のボスとを備え、
前記ボスは、粗さパラメータRq≧0.2μmによって特徴づけられるボス外面を有するディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項7】
前記ボスは、粗さパラメータRq≧0.3μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項6に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項8】
前記ボスは、粗さパラメータRq≧0.5μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項6に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項9】
前記ボスは、0.7μmを含む粗さパラメータRqによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項8に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項10】
前記ボスは、粗さパラメータRq≧0.7μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項6に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項11】
板状の部分と、
板状の部分から突出し、ディスクドライブのアクチュエータアームの開口部に固定される円筒状のボスとを備え、
前記ボスは、粗さパラメータH≧0.5μmによって特徴づけられるボス外面を有するディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項12】
前記ボスは、粗さパラメータH≧0.6μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項11に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項13】
前記ボスは、粗さパラメータH≧0.8μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項11に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項14】
前記ボスは、1.4μmを含む粗さパラメータによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項13に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【請求項15】
前記ボスは、粗さパラメータH≧2.0μmによって特徴づけられるボス外面を有する、請求項11に記載のディスクドライブサスペンションのベースプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年9月2日に出願された米国仮特許出願第62/383,053号の優先権を主張し、その全体が言及によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、ディスクドライブサスペンションに組み込まれるタイプのベースプレートと、そうしたベースプレートを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
ディスクドライブサスペンションのベースプレート及び該ベースプレートを製造する方法は、Yabuによる特許文献1に公開されており、その全体があらゆる目的のために言及によって本明細書に組み込まれる。特許文献1に記載されるように、ベースプレートは、サスペンションの近位端部分に(例えば溶接によって)取り付けられ、筒状ボス又はボスタワーを有する。ベースプレートは、一般に、ステンレス鋼などの金属からスタンピング加工によって製造され、その製造に関して様々な化学的研磨又はエッチング処理が施され得る。サスペンションは、スエージ加工によってディスクドライブのアクチュエータアームに取り付けられる。スエージ加工時、ボスはアクチュエータアームの開口部に配置され、ボールがボスに圧入されてボスを変形させ、ボスの外面(外径又はODとしても知られる)をアクチュエーターアームの開口部の内面と係合させる。ボスとアクチュエータアームとの間の機械的接続の強度は、トルク保持として知られる特性及び尺度によって特徴付けられる。トルク保持は、スエージ後のベースプレートとアクチュエータアームとの間の垂直力、スエージ後の接触面積、及びこれらの2つの表面間の静止摩擦係数により影響を受ける。静的摩擦係数はベースプレートの表面粗さを変えることで改善され得る。改善されたベースプレートや製造方法が引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,339,745号明細書
【発明の概要】
【0005】
ディスクドライブサスペンションのベースプレートを製造するシステム及び方法が記載される。ディスクドライブサスペンションのベースプレートは粗さパラメータRa≧0.15μmで特徴づけられるボス外面を備える。
本発明の実施形態の他の特性及び有利性は、添付の図面と、以下の詳細な説明とから明らかになる。
本発明の実施形態は一例として示され、同様の符号が類似の要素を示す添付の図面の図において限定とならない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態によるボスを含むベースプレートを示す。
図2図2は、2段アクチュエーションサスペンション組立体の部分として、実施形態によるボスを含むベースプレートを示す。
図3図3は、サスペンション組立体の部分として、実施形態によるボスを含むベースプレートを示す。
図4図4は、実施形態による粗さによって特徴づけられる表面を有するようにベースプレートを製造する工程のフローチャートを示す。
図5図5は、本明細書に記載されるようなベースプレートを製造する工程を用いないボス外面を示す。
図6図6は、実施形態による粗さによって特徴づけられる表面を有するようにベースプレートを製造する工程を用いて製造されたボス外面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、トルク保持を向上させるボス表面粗さ特性を有するより小さいスエージ力のベースプレートと、該ベースプレートを製造する方法とを含む。現在のベースプレートは、例えば、典型的には0.04μm~0.14μmであるRa、典型的には0.07μm~0.18μmであるRq、及び典型的には0.16μm~0.50μmであるHの粗さパラメータで特徴づけられるボス外面を有する。図1は、一実施形態によるボス20を含むベースプレート10を示す。図示されるように、ベースプレート10は、圧電モータなどのモータのための開口部16を含む。図2は、2段アクチュエータサスペンション組立体の部分として実施形態によるボス20を含むベースプレート10を示す。サスペンション組立体22は、モータ24と、ロードビーム30と、ジンバル可撓部26とを含む。図3は、ロードビーム30とジンバル可撓部26とを含むサスペンション組立体22の部分として実施形態によるボス20を含むベースプレート10を示す。実施形態によると、ジンバル可撓部26は、ジンバル可撓部26に実装された1つ又は2つのモータを含むことができる。
【0008】
実施形態において、ベースプレート10は、粗さパラメータR≧0.15μmで特徴づけられるボス外面14を有する。他の実施形態は、粗さパラメータR≧0.20μmで特徴づけられるボス外面14を有する。さらに他の実施形態は、0.40μmを含む粗さパラメータR≧0.25μmで特徴づけられるボス外面14を有する。実施形態によるボス外面14は、粗さパラメータR≧0.70μmによって特徴づけられることができる。
【0009】
実施形態において、ベースプレート10は、粗さパラメータR≧0.2μmで特徴づけられるボス外面14を有する。他の実施形態は、粗さパラメータR≧0.3μmで特徴づけられるボス外面14を有する。さらに他の実施形態は、0.7μmを含む粗さパラメータR≧0.5μmで特徴づけられるボス外面14を有する。実施形態によるボス外面14は、粗さパラメータR≧0.7μmによって特徴づけられることができる。これらの表面粗さ特性の測定は、例えば、白色レーザ干渉計などの機器を用いて行うことができる。
【0010】
実施形態において、ベースプレート10は、粗さパラメータH≧0.5μmで特徴づけられるボス外面14を有する。他の実施形態は、粗さパラメータH≧0.6μmで特徴づけられるボス外面14を有する。さらに他の実施形態は、1.4μmを含む粗さパラメータH≧0.8μmで特徴づけられるボス外面14を有する。実施形態によるボス外面14は、粗さパラメータH≧2.0μmによって特徴づけられることができる。これらの表面粗さ特性の測定は、例えば、白色レーザ干渉計などの機器を用いて行うことができる。
【0011】
実施形態において、トルク保持を向上させる表面粗さ特性を有するベースプレートは、図4に示されるような、(ボス外面を含む)ベースプレートの不動態化(401)、その後の化学エッチング(404)を含む、複数のステップ(例えば2ステップ)の工程によって製造されることができる。不動態化されたベースプレートは、化学エッチングステップ(402)の前に、リンス(例えば、脱イオン水を用いて)及び乾燥を行うことができる。不動態化(401)と、任意のリンス及び乾燥ステップ(402)との後、化学エッチングステップ(404)の前に、ベースプレートをアルカリ洗浄及びリンスステップ(403)に供することができる。ベースプレートには、化学エッチングステップの後にリンス及び乾燥を行うこともできる(405)。
【0012】
実施形態において、不動態化は、ベースプレートをクエン酸又は硝酸などの酸性浴に曝露することによって行われる。クエン酸不動態化の実施形態は、(1)3%~15%(w/w)の濃度、(2)70~200°Fの温度、及び(3)10~120分の浸漬時間でのクエン酸浴にベースプレートを曝露することを含む。クエン酸不動態化の他の実施形態は、(1)8%~12%(w/w)の濃度、(2)160~180°Fの温度、及び(3)20~75分の浸漬時間でのクエン酸浴にベースプレートを曝露することを含む。硝酸不動態化の実施形態は、(1)15%~70%(v/v)の濃度、(2)100~200°Fの温度、及び(3)10~60分の浸漬時間での硝酸浴にベースプレートを曝露することを含む。硝酸不動態化の他の実施形態は、(1)40%~60%(v/v)の濃度、(2)160~180°Fの温度、及び(3)20~75分間の浸漬時間での硝酸浴にベースプレートを暴露することを含む。これらの実施形態で使用される酸は、不動態化及び洗浄を向上させるために(例えば、ASTM規格A967の7.1.1.5に従って)不動態化に対する特定の試験要件を満たす部品を製造することができる促進剤、抑制剤及び/又は溶液などの他の添加剤を含むことが可能である。
【0013】
実施形態では、不動態化後の化学エッチングは、上述され組み込まれるYabuの特許文献1に記載される方法によって行われる。例として、化学エッチングの実施形態は、(1)0%~50%(w/w)の塩酸、(2)0%~50%(w/w)の硝酸、(3)0%~50%(w/w)のリン酸、(4)0~20g/lの鉄(Fe+3及びFe+2)、並びに(5)0%~10%の界面活性剤、抑制剤、レベラー及び安定剤を含む浴成分にベースプレートを暴露することを含む。化学エッチングの他の実施形態は、(1)1%~10%(w/w)の塩酸、(2)1%~10%(w/w)の硝酸、(3)10%~30%(w/w)のリン酸、(4)6~15g/lの鉄(Fe+3及びFe+2)、並びに(5)0.1%~5%の界面活性剤、抑制剤、レベラー及び安定剤を含む浴成分にベースプレートを暴露することを含む。
【0014】
他の実施形態において、上述のタイプの化学エッチングステップを2回以上行うことによって、トルク保持を向上させる表面粗さ特性を有するベースプレートを製造することができる。実施形態において、1回以上の化学エッチングステップの前に、ベースプレートを、リンス及び乾燥ステップ、並びに/又はアルカリ洗浄及びリンスステップに供することができる。図5は、本明細書に記載の不動態化及び化学エッチング方法などの、本明細書に記載のようなベースプレートを製造する工程を用いないボス外面を示す。図6は、本明細書に記載の不動態化及び化学エッチング方法に供されるなど、本明細書に記載される実施形態による粗さによって特徴づけられる表面を有するようにベースプレートを製造する工程を用いて製造されたボス外面を示す。図示されるように、図6に示されるボス外面は、図5に示されるボス外面よりも粗い表面を有する。
【0015】
本発明の実施形態による表面粗さ特性を有するベースプレートには、顕著な有利性がある。例として、ベースプレートは、ドライブアクチュエータアームにスエージされるとき、トルク保持を改善する。本発明の実施形態に従って製造されたベースプレートの試験は、顕著なトルク保持増大(例えば、先行技術のプロセスを用いた約10oz.-in.から約15oz.-in.に)を示した。同じ設計におけるさらなるトルク保持により、スエージ加工が有利性へと変わり得る。例として、より小さいスエージボールを使用して、上述の製造方法で製造されるベースプレートをスエージすることができる。このように、本明細書に記載された製造方法を用いて、より小さいスエージ力のベースプレートが得られる。小さいボールは、十分なトルクを達成しながら、スエージ加工時のベースプレートのフランジ部分の反りなどの有害な影響をより少なくする。これは、結果として、グラムロード、又はディスクに対する読み取り/書き込みヘッドの垂直配置の変化を少なくする。代替的に、上述の方法で製造されたベースプレートは、ボス高さをより低くして設計されることができ、アクチュエータアームをより薄くすることを可能にして、ディスクの間隔をより狭くすることができ、全体的なドライブ高さをより低くすることができる。上述のベースプレートの製造方法は、効率的で、反復可能且つ効果的である。
【0016】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されているが、当業者は、本発明の趣旨や範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に変更を行うことができることを認識するであろう。例えば、単一工程における他の化学エッチング剤、研磨剤、酸洗い溶液に関与する他の化学的方法を用いて、表面粗さを作り出すことができる。さらに、熱(例えば熱処理)、電気化学(例えば化学溶液と組み合わせたアノード電流)及び機械(例えば、ショットピーニング又は媒体とともにタンブリング)に関与する方法などの他の方法も、本発明の実施形態によってベースプレートを製造するために用いられ得る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6