(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】破砕機、演算装置、通知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B02C 23/04 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B02C23/04
(21)【出願番号】P 2017238467
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】塚田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】羽金 拓也
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-313960(JP,A)
【文献】実開昭57-126533(JP,U)
【文献】特開2000-045745(JP,A)
【文献】特開2016-165692(JP,A)
【文献】特開平01-015152(JP,A)
【文献】特表2004-519325(JP,A)
【文献】実開平07-037334(JP,U)
【文献】実開昭50-105670(JP,U)
【文献】米国特許第05927623(US,A)
【文献】国際公開第02/077476(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102698862(CN,A)
【文献】中国実用新案第202715471(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 23/04
B02C 2/00-2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンケーブとマントルとを有する破砕機構と、
ポンプを備え、前記破砕機構に潤滑油を供給する潤滑油供給機構と、
前記潤滑油供給機構から供給された潤滑油の圧力を測定する測定装置と、
前記潤滑油の圧力の基準値からの低下率に基づきメンテナンスタイミングを通知する演算装置と、
を有
し、
前記演算装置は、前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する破砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕機において、
前記演算装置は、前記低下率が閾値に達した時にメンテナンスを要求する通知を行う破砕機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の破砕機において、
前記測定装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた参照温度になった時の圧力を測定する破砕機。
【請求項4】
請求項3に記載の破砕機において、
前記測定装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度各々になった時の圧力を測定する破砕機。
【請求項5】
請求項4に記載の破砕機において、
前記演算装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する破砕機。
【請求項6】
請求項5に記載の破砕機において、
予め複数の参照温度に優先順位が定められており、
前記演算装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が到達した参照温度の中の優先順位が最も高い参照温度に潤滑油の温度がなった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する破砕機。
【請求項7】
コンケーブとマントルとを有する破砕機構と、
ポンプを備え、前記破砕機構に潤滑油を供給する潤滑油供給機構と、
前記潤滑油供給機構から供給された潤滑油の圧力を測定する測定装置と、
前記潤滑油の圧力の基準値からの低下率に基づきメンテナンスタイミングを通知する演算装置と、
を有
し、
前記測定装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度各々になった時の圧力を測定し、
前記演算装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する破砕機。
【請求項8】
請求項7に記載の破砕機において、
前記演算装置は、前記低下率が閾値に達した時にメンテナンスを要求する通知を行う破砕機。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の破砕機において、
予め複数の参照温度に優先順位が定められており、
前記演算装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が到達した参照温度の中の優先順位が最も高い参照温度に潤滑油の温度がなった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する破砕機。
【請求項10】
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出部と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定部と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知部と、
を有
し、
前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する演算装置。
【請求項11】
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出部と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定部と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知部と、
を有
し、
破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する演算装置。
【請求項12】
コンピュータが、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出工程と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定工程と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知工程、
を実行
し、
前記コンピュータが、前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する通知方法。
【請求項13】
コンピュータが、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出工程と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定工程と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知工程、
を実行
し、
前記コンピュータが、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する通知方法。
【請求項14】
コンピュータを、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出手段、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定手段、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知手段、
として機能させ
、
前記コンピュータが、前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知するプログラム。
【請求項15】
コンピュータを、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出手段、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定手段、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知手段、
として機能させ
、
前記コンピュータが、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕機、演算装置、通知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンケーブとマントルとを有する破砕機においては、運転前及び運転中に潤滑油を供給する必要がある。特許文献1に、潤滑油の供給方法及び供給構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石粉等による潤滑油の汚染等に起因してポンプが劣化する。ポンプの劣化が進むと使用不可となり、破砕機を意図せぬタイミングで停止させる必要がある。その時点でポンプの替えの用意がない場合、長時間にわたり破砕機を停止させることとなる。
【0005】
本発明は、適切なタイミングで破砕機のメンテナンスを行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構と、
ポンプを備え、前記破砕機構に潤滑油を供給する潤滑油供給機構と、
前記潤滑油供給機構から供給された潤滑油の圧力を測定する測定装置と、
前記潤滑油の圧力の基準値からの低下率に基づきメンテナンスタイミングを通知する演算装置と、
を有し、
前記演算装置は、前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する破砕機が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出部と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定部と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知部と、
を有し、
前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する演算装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
コンピュータが、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出工程と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定工程と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知工程、
を実行し、
前記コンピュータが、前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する通知方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
コンピュータを、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出手段、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定手段、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知手段、
として機能させ、
前記コンピュータが、前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知するプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切なタイミングで破砕機のメンテナンスを行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の粉砕機の機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の破砕機の構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態の粉砕機構の概略図の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の演算装置のハードウエア構成の一例を概念的に示す図である。
【
図5】本実施形態の演算装置の機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態の演算装置の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
まず、本実施形態の破砕機(コーンクラッシャ)の概要を説明する。破砕機構に潤滑油を供給するためのポンプが劣化すると、ポンプの動作で供給される潤滑油の圧力(管路内の潤滑油の圧力)が低下する。ポンプが劣化するほど当該圧力が低下する。そこで、本実施形態の破砕機は、潤滑油供給機構から破砕機構に供給される潤滑油の圧力を監視し、当該圧力の基準値からの低下率に基づきメンテナンスタイミングを判断して通知する。このような本実施形態の破砕機によれば、潤滑油の圧力を用いて潤滑油やポンプのメンテナンスタイミングを定量的に決定できるので、適切なタイミングで破砕機のメンテナンスを行えるようになる。
【0013】
以下、本実施形態の破砕機の構成を詳細に説明する。
図1に、本実施形態の破砕機1の機能ブロック図の一例を示す。
図2に、破砕機1の構成例を示す。なお、
図2では実線で潤滑油の管路を示し、点線で通信線を示している。図示するように、破砕機1は、破砕機構10と、潤滑油供給機構20と、測定装置30と、演算装置40とを有する。
【0014】
破砕機構10は、コンケーブとマントルとを有し、これらが協働して被破砕物を破砕する。
図3に、破砕機構10の一例を示す。なお、図示する破砕機構10の構成はあくまで一例であり、破砕機構10の構成は図示するものに限定されない。
【0015】
ここで、破砕機構10の構成を簡単に説明する。図示するように、破砕機構10は、ホッパ11及びコンケーブ12を含む筒状体13と、マントル14と、主軸15と、駆動軸16とを有する。
【0016】
筒状体13の内部に、被破砕物が供給される。例えば、図示しないコンベアーで運ばれてきた被破砕物が、筒状体13の図中上側の開口から、筒状体13内に供給される。被破砕物は、例えば、岩石等である。
【0017】
マントル14は、筒状体13の下方の開口側に位置する。マントル14は、コンケーブ12の下面との間で被破砕物を挟み込んで、被破砕物を破砕する。コンケーブ12は、装置本体の上部に上下方向に変位自在かつ交換自在に装着されている。マントル14は、回転軸心から傾斜した駆動軸16で支持されており、いわゆる歳差運動の状態で回転駆動される。そこで、マントル14の上面とコンケーブ12の下面との間隙で原料を破砕する破砕室が形成されている。
【0018】
不図示の駆動手段(例:電動モータ、油圧モータ等)により駆動軸16に力が加えられると、駆動軸16は回転する。駆動軸16と主軸15とは、歯車等を介して互いに噛合している。駆動軸16が回転すると、主軸15に力が加わり、主軸15が回転する。この主軸15の回転に伴い、マントル14が回転する。当該回転で被破砕物に力を加えて破砕する。
【0019】
図1に戻り、潤滑油供給機構20は、破砕機構10に潤滑油を供給する。潤滑油供給機構20は潤滑油を送り出すためのポンプを備える。ポンプの種類としては、ギヤポンプ、スクリューポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプなどが例示される。
【0020】
図2に、潤滑油供給機構20の構成例を示す。なお、当該構成例はあくまで一例であり、これに限定されない。
図2に示す潤滑油供給機構20は、ポンプ21と、フィルタ22と、冷却器23と、フィルタ24と、収容室25とを有する。
【0021】
収容室25には、潤滑油が貯められる。ポンプ21は、収容室25に貯められている潤滑油を汲み出し、破砕機構10に向けて送り出す。ポンプ21から送り出された潤滑油は、フィルタ22及び冷却器23を通った後、破砕機構10に供給される。また、破砕機構10から排出された潤滑油はフィルタ24を通った後、収容室25に戻される。
【0022】
図1に戻り、測定装置30は、潤滑油供給機構20から供給された潤滑油の圧力(管路内の潤滑油の圧力)を測定する。
【0023】
図2に、測定装置30の設置位置の一例を示す。測定装置30は、例えば破砕機構10と冷却器23との間の管路における潤滑油の圧力を測定するように設置される。なお、フィルタ22と冷却器23の間の管路や、ポンプ21とフィルタ22の間の管路における潤滑油の圧力を測定するように設置されてもよい。
【0024】
測定装置30は、破砕機1を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた参照温度になった時の圧力を測定する。例えば、測定装置30は、破砕機1を稼働した日に潤滑油の温度が初めて予め定められた参照温度になった時の圧力を測定してもよい。参照温度としては、例えば40℃やその周辺温度が例示される。
【0025】
潤滑油の温度を測定する位置は特段制限されない。例えば、破砕機構10とフィルタ24との間の管路で測定してもよいし、破砕機構10と冷却器23との間の管路で測定してもよいし、冷却器23とフィルタ22の間の管路で測定してもよいし、フィルタ22とポンプ21の間の管路で測定してもよいし、ポンプ21と収容室25の間の管路で測定してもよいし、フィルタ24と収容室25の間の管路で測定してもよいし、収容室25で測定してもよい。
【0026】
測定装置30は破砕機1を稼働した日毎に上記圧力を測定するのが好ましいが、2稼動日毎、5稼動日毎、10稼動日毎等、所定の稼働日毎に上記圧力を測定してもよい。
【0027】
図1に戻り、演算装置40は、潤滑油の圧力の基準値からの低下率に基づきメンテナンスタイミングを通知する。演算装置40は、測定装置30の測定値を取得し、当該取得値に基づき当該処理を実行する。
【0028】
まず、当該処理を実現する演算装置40のハードウエア構成の一例について説明する。本実施形態の演算装置40が備える各部は、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、メモリにロードされたプログラム(あらかじめ機器を出荷する段階からメモリ内に格納されているプログラムのほか、CD(Compact Disc)等の記憶媒体やインターネット上のサーバ等からダウンロードされたプログラムも含む)、そのプログラムを格納するハードディスク等の記憶ユニット、ネットワーク接続用インターフェイスを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、機器にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0029】
図4は、演算装置40のハードウエア構成の一例を概念的に示す図である。図示するように、演算装置40は、プロセッサ1A、メモリ2A、入出力インターフェイス3A、周辺回路4A、バス5Aを有する。周辺回路4Aには、様々なモジュールが含まれる。なお、周辺回路4Aを有さなくてもよい。
【0030】
バス5Aは、プロセッサ1A、メモリ2A、周辺回路4A及び入出力インターフェイス3Aが相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。プロセッサ1Aは、例えばCPUやGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ2Aは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス3Aは、入力装置(例:キーボード、マウス、マイク等)、外部装置、外部サーバ、外部センサ等から情報を取得するためのインターフェイスや、出力装置(例:ディスプレイ、スピーカ、プリンター、メーラ等)、外部装置、外部サーバ等に情報を出力するためのインターフェイスなどを含む。プロセッサ1Aは、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行うことができる。
【0031】
次に、演算装置40の機能構成を説明する。
図5は、演算装置40の機能ブロック図の一例を示す。図示するように、演算装置40は、算出部41と、判定部42と、通知部43とを有する。
【0032】
算出部41は、破砕機構10に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する。以下、破砕機構10に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を、単に「低下率」という場合がある。
【0033】
上記基準値は予め定められ、算出部41に登録された値であってもよい。例えば、オペレータが所定の値を基準値として演算装置40に登録してもよい。その他、測定装置30の測定値に基づき算出部41が基準値を決定してもよい。
【0034】
算出部41が基準値を決定する例の場合、例えば、測定装置30により最初に測定された潤滑油の圧力を基準値としてもよい。測定装置30により最初に測定された潤滑油の圧力は、破砕機1の最初の稼動日に潤滑油の温度が予め定められた参照温度になった時の圧力を意味する。
【0035】
低下率の算出方法は、例えば、(低下率[%])={(基準値)-(測定された圧力)}×100/(基準値)である。
【0036】
判定部42は、低下率が閾値に達したか否かを判定する。通知部43は、低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知をオペレータに向けて行う。通知は、ディスプレイ、スピーカ、ランプ、ブザー、メーラー、プリンターなどのあらゆる出力装置を介して実現される。
【0037】
なお、複数レベルの閾値が定められていてもよい。そして、判定部42は、最初は低下率が第1のレベルの閾値に達したか否かを判定し、低下率が第1のレベルの閾値に達した後は、低下率が第2のレベルの閾値に達したか否かを判定し、低下率が第2のレベルの閾値に達した後は、低下率が第3のレベルの閾値に達したか否かを判定するという具合に、閾値を切り替えてもよい。この場合、通知部43は、低下率が達した閾値のレベルに応じて、通知内容を切り替えてもよい。
【0038】
例えば、
図6に示すように、低下率の閾値と通知内容とが対応付けられていてもよい。この例の場合、第1のレベルの閾値は10[%]、第2のレベルの閾値は20[%]、第3のレベルの閾値は30[%]、第4のレベルの閾値は40[%]である。
【0039】
そして、低下率が第1のレベルの閾値に達した場合、通知部43はオイル交換(潤滑油の交換)を要求する。また、低下率が第2のレベルの閾値に達した場合に、通知部43はオイル交換を要求する。さらに、低下率が第3のレベルの閾値に達した場合に、通知部43はオイル交換を要求する。そして、低下率が第4のレベルの閾値に達した場合に、通知部43はポンプの予備の準備を要求する。
【0040】
なお、オイル交換によりポンプの劣化の速度を緩やかにすることができる。しかし、オイル交換ではポンプの劣化具合を改善することはできない。このため、例えば低下率が第1のレベルの閾値(10%)に達した際の通知に応じてオイル交換が行われても、低下率は改善されず、10%に達した状態のままとなる。このため、次の比較対象となる閾値は第2のレベルの閾値(20%)となる。
【0041】
なお、測定装置30が破砕機1を稼働した日毎に上記圧力を測定する場合、破砕機1を稼働した日毎に、算出部41は上記低下率を算出し、判定部42は低下率が閾値に達したか否かを判定し、通知部43は判定結果に応じた通知処理を行うことができる。測定装置30が破砕機1の所定の稼働日毎(例:2稼働日毎)に上記圧力を測定する場合、破砕機1の所定の稼働日毎(例:2稼働日毎)に、算出部41は上記低下率を算出し、判定部42は低下率が閾値に達したか否かを判定し、通知部43は判定結果に応じた通知処理を行う。
【0042】
以上説明した本実施形態の破砕機1によれば、潤滑油の圧力を用いて潤滑油やポンプのメンテナンスタイミングを定量的に決定できるので、適切なタイミングで破砕機のメンテナンスを行えるようになる。
【0043】
また、本実施形態の破砕機1によれば、潤滑油の圧力の基準値からの低下率に基づきメンテナンスタイミングを決定することができる。基準値を、破砕機1の最初の稼動日に潤滑油の温度が予め定められた参照温度になった時の圧力とすれば、上記低下率により、基準状態(最初の状態)からの破砕機1(具体的にはポンプ)の劣化具合をよく表すことができる。このような低下率を用いて潤滑油やポンプのメンテナンスタイミングを決定できるので、適切なタイミングで破砕機のメンテナンスを行えるようになる。
【0044】
また、測定装置30は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた参照温度になった時の圧力を測定する。例えば、測定装置30は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が初めて予め定められた参照温度になった時の圧力を測定する。このような条件下で測定された値を用いることで、メンテナンスタイミングの通知の信頼度を高めることができる。
【0045】
<第2の実施形態>
本実施形態の破砕機1は、測定装置30及び演算装置40の構成が第1の実施形態と異なる。破砕機構10及び潤滑油供給機構20の構成は第1の実施形態と同様である。
【0046】
測定装置30は、破砕機1を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度各々になった時の圧力を測定する。例えば、測定装置30は、破砕機1を稼働した日に潤滑油の温度が初めて予め定められた複数の参照温度各々になった時の圧力を測定してもよい。複数の参照温度としては、例えば、30℃、40℃、50℃等やその周辺温度が例示される。測定装置30のその他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
演算装置40は、破砕機1を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する。すなわち、算出部41は複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力の基準値からの低下率を算出し、判定部42は当該低下率が閾値に達したか否かを判定し、通知部43は判定結果に応じた通知処理を行う。
【0048】
なお、基準値は複数の参照温度毎に定められる。基準値は予め定められ、算出部41に登録された値であってもよい。例えば、オペレータが参照温度毎に基準値を決定し、演算装置40に登録してもよい。その他、測定装置30による測定結果に基づき算出部41が参照温度毎に基準値を決定してもよい。
【0049】
算出部41が基準値を決定する例の場合、例えば、測定装置30により最初に測定された各参照温度の時の潤滑油の圧力を基準値としてもよい。破砕機1の最初の稼動日に潤滑油の温度が予め定められた参照温度になった場合、その時に測定された圧力をその参照温度の基準値とする。最初の稼働日に潤滑油の温度が到達しなかった参照温度がある場合、それ以降の稼働日において最初に潤滑油の温度が到達した時に測定された圧力をその参照温度の基準値とする。
【0050】
ここで、複数の参照温度の中からメンテナンスタイミングの通知に用いる1つを決定する処理を説明する。
【0051】
例えば、予め複数の参照温度に優先順位が定められていてもよい。そして、演算装置40は、破砕機1を稼働した日に潤滑油の温度が到達した参照温度の中の優先順位が最も高い参照温度に潤滑油の温度がなった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知してもよい。
【0052】
演算装置40のその他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
以上説明した本実施形態の破砕機1によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を実現できる。また、本実施形態の破砕機1によれば、複数の参照温度各々になった時の圧力を測定し、その中のいずれかを用いてメンテナンスタイミングの判断を行うことができる。季節、天気、設置環境等に応じて、潤滑油の到達温度が異なり得る。参照温度をただ1つに定めている場合、潤滑油の温度がその参照温度に到達しない日が発生し得る。このような場合、その日の潤滑油の圧力は測定されないので、メンテナンスの要否を判断できない。このような日が発生すると、また、このような日が連続して発生すると、メンテナンスタイミングの検知や通知が遅れるという不都合が発生し得る。
【0054】
本実施形態のように複数の参照温度を定めた場合、上記不都合の発生を抑制できる。また、複数の参照温度に優先順位を付すことで、好ましい参照温度での判断を優先的に行わせることができる。
【0055】
<第3の実施形態>
本実施形態の破砕機1は、演算装置40の構成が第1及び第2の実施形態と異なる。破砕機構10、潤滑油供給機構20及び測定装置30の構成は第1及び第2の実施形態と同様である。
【0056】
演算装置40の判定部42は、上記低下率の時間変化に基づき低下率が閾値に達するタイミングを予測する。そして、通知部43は、判定部42が予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する。
【0057】
算出部41により算出された複数の稼働日分の低下率に基づき、複数日に跨る当該低下率の時間変化を把握することができる。例えば、低下率の時間変化をよく表す近似曲線を求め、当該近似曲線を示す式を用いて、低下率が閾値に達するタイミング(日)を予測してもよい。
【0058】
なお、複数レベルの閾値が定められている場合、判定部42は、低下率が複数レベルの閾値各々に達するタイミングを予測してもよい。
【0059】
演算装置40のその他の構成は、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0060】
以上説明した本実施形態の破砕機1によれば、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を実現できる。また、本実施形態によれば、低下率が閾値に達する前に、そのタイミングの予測結果をオペレータに通知することができる。オペレータは予測結果に基づきメンテナンスの準備を行うことで、低下率が閾値に達した際のメンテナンスを確実に実行できるようになる。
【0061】
以下、参考形態の例を付記する。
1. コンケーブとマントルとを有する破砕機構と、
ポンプを備え、前記破砕機構に潤滑油を供給する潤滑油供給機構と、
前記潤滑油供給機構から供給された潤滑油の圧力を測定する測定装置と、
前記潤滑油の圧力の基準値からの低下率に基づきメンテナンスタイミングを通知する演算装置と、
を有する破砕機。
2. 1に記載の破砕機において、
前記演算装置は、前記低下率が閾値に達した時にメンテナンスを要求する通知を行う破砕機。
3. 1又は2に記載の破砕機において、
前記測定装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた参照温度になった時の圧力を測定する破砕機。
4. 3に記載の破砕機において、
前記測定装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度各々になった時の圧力を測定する破砕機。
5. 4に記載の破砕機において、
前記演算装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が予め定められた複数の参照温度の中のいずれかになった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する破砕機。
6. 5に記載の破砕機において、
予め複数の参照温度に優先順位が定められており、
前記演算装置は、破砕機を稼働した日に潤滑油の温度が到達した参照温度の中の優先順位が最も高い参照温度に潤滑油の温度がなった時の圧力に基づきメンテナンスタイミングを通知する破砕機。
7. 1から6のいずれかに記載の破砕機において、
前記演算装置は、前記低下率の時間変化に基づき前記低下率が閾値に達するタイミングを予測し、予測したタイミングをメンテナンスタイミングとして通知する破砕機。
8. コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出部と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定部と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知部と、
を有する演算装置。
9. コンピュータが、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出工程と、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定工程と、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知工程、
を実行する通知方法。
10. コンピュータを、
コンケーブとマントルとを有する破砕機構に供給される潤滑油の圧力の基準値からの低下率を算出する算出手段、
前記低下率が閾値に達したか否かを判定する判定手段、
前記低下率が閾値に達した場合、メンテナンスを要求する通知を行う通知手段、
として機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0062】
1A プロセッサ
2A メモリ
3A 入出力I/F
4A 周辺回路
5A バス
1 破砕機
10 破砕機構
11 ホッパ
12 コンケーブ
13 筒状体
14 マントル(破砕手段)
15 主軸
16 駆動軸
20 潤滑油供給機構
21 ポンプ
22 フィルタ
23 冷却器
24 フィルタ
25 収容室
30 測定装置
40 演算装置
41 算出部
42 判定部
43 通知部