(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】開閉体装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20220412BHJP
E06B 9/82 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
E06B9/17 Z
E06B9/82 J
(21)【出願番号】P 2017240043
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】若井 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大助
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒平
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-082974(JP,A)
【文献】特開平11-098677(JP,A)
【文献】特開2007-138393(JP,A)
【文献】特開2009-002104(JP,A)
【文献】実開平02-045294(JP,U)
【文献】実開平06-059597(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00 - 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体側面に設けられた開口部を挿通して、前記開口部よりも下側の前記筐体内に設けられた端子台に電気的に接続された1又は複数のケーブルを介して開閉手段の開閉動作を制御するように構成された開閉体装置において、
前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルを配線したことを特徴とする開閉体装置。
【請求項2】
請求項1
に記載の開閉体装置において、
前記ケーブルが前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルの配線経路を案内する配線案内手段を前記筐体内に設けたことを特徴とする開閉体装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の開閉体装置において、
前記配線案内手段は、前記挿通箇所の高さよりも下側に向かって配線される前記ケーブルを一旦上側に向かうように案内し、その後で前記端子台に接続するように構成されていることを特徴とする開閉体装置。
【請求項4】
請求項1、2
又は3に記載の開閉体装置において、前記筐体内に非常電源装置が内蔵されていることを特徴とする開閉体装置。
【請求項5】
筐体側面に設けられた開口部を挿通して、前記開口部よりも下側の前記筐体内に設けられた端子台に1又は複数のケーブルを電気的に接続するケーブル接続方法において、
前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で前記ケーブルを凹状又は下に凸状となるように配線することを特徴とするケーブル接続方法。
【請求項6】
請求項
5に記載のケーブル接続方法において、
前記ケーブルが前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルの配線経路を案内する配線案内手段を前記筐体内に設けたことを特徴とするケーブル接続方法。
【請求項7】
請求項
6に記載のケーブル接続方法において、
前記配線案内手段は、前記挿通箇所の高さよりも下側に向かって配線される前記ケーブルを一旦上側に向かうように案内するように構成されていることを特徴とするケーブル接続方法。
【請求項8】
請求項
5、6又は7に記載のケーブル接続方法において、開閉体装置用の非常電源装置を内蔵した筐体内でケーブルを前記端子台に配線したことを特徴とするケーブル接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、工場、倉庫などの建物を含む構造物躯体の開口部などをシャッターなどの開閉体を用いて仕切るように構成された開閉体装置に係り、特に端子台に筐体の上側から配線するように構成された非常電源装置又は制御盤等を備えた開閉体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターカーテンなどのような開閉体装置は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物を含む構造物躯体の開口部や窓部あるいは内部の通路や空間などの開口部に設置され、その開閉体を移動させることによってその開口部を開放、閉鎖するものである。この開閉体装置は、多数の短冊状のスラット材からなるスラットカーテン、多数のパイプ材をリンク材などで連結させてなるパイプグリルカーテン、一枚状あるいは多数連結されたパネル材からなるパネルカーテン、ネット材からなるネットカーテン、合成樹脂あるいは布繊維製のシート材からなるシートカーテン、あるいはこれらの複合部材などからなる複合カーテンなどの開閉体を、開口部の上部から繰り出し下降させて開口部全体を閉鎖するように構成されている。このような開閉体装置は、開閉体の開閉動作を電動で行なう場合が多い。電動の開閉体装置としては、電動シャッター装置、電動ドア装置、電動オーニング装置などがある。
【0003】
このような電動の開閉体装置の中には、火災による停電時でも、消防隊のホースを給水口(送水口)に連結し放水することによって、開閉体装置を電動にて動作させて開閉体を非常開放するように構成された非常電源装置を備えたものがある。このような非常電源装置を備えた開閉体装置として、特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非常電源装置は、バッテリからなる予備電源を搭載しており、インバータなどの電子部品などから構成されているため、開閉体装置とは別個の場所、例えば、壁面に沿った床面などに設置されることが多い。開閉体装置の自動閉鎖装置、障害物感知装置、危害防止用連動中継器、電気式手動閉鎖装置、水圧スイッチからの信号線や外部電源線などからの各種ケーブルが筐体内の非常電源装置内の端子台に接続されるようになっている。
【0006】
図1は、非常電源装置の筐体側面に設けられた長尺状の開口部を介して各種ケーブルが挿通されている様子を示す断面図である。図示のように、非常電源装置20の筐体21内には、端子台22並びにインバータなどの電子部品及び予備電源23が内蔵されている。筐体21の側面には紙面垂直方向に長尺状となる開口部25が設けられている。この開口部25を挿通させることによって複数本の各種ケーブル24が端子台22の上側に導入され、所定の端子台22にそれぞれ接続されるようになっている。
【0007】
図1において筐体21の右側面は、構造物躯体等の壁面が位置しており、この壁面又は壁面内に設けられた電線管(図示せず)を介し、さらに筐体21の右側面の長尺状の開口部25を介して各種ケーブル24が筐体21内に導入されている。筐体21側面には各種ケーブル24個々に対応した挿通孔群でなく、長尺状の開口部25が設けてある。これは、開閉体装置を複数又は単体設けた場合にケーブルの本数が適宜変更されるので、その本数変更に柔軟に対応するためである。このような開口部25を備えた構造体からなる筐体は、非常電源装置だけではなく開閉体装置の制御盤などの筐体にも広く応用されている技術である。
【0008】
このような開口部25を備えた筐体からなる非常電源装置又は制御盤などは、気温変動によって壁面等やケーブル24自体に水分が発生する場合やウォーターミストやスプリンクラーからの水分等が壁面又は電線管を通じてケーブル24に伝わり、さらにケーブル24を介して筐体21内に侵入し、端子台22に到達して付着し、短絡や漏電等の異常を発生させる可能性があった。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、ケーブルを伝わって筐体内に侵入する水分等が端子台まで届かないように構成されたケーブル接続方法及び開閉体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開閉体装置の第1の特徴は、筐体側面に設けられた開口部を挿通して、前記開口部よりも下側の前記筐体内に設けられた端子台に電気的に接続された1又は複数のケーブルを介して開閉手段の開閉動作を制御するように構成された開閉体装置において、前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルを配線したことにある。
【0011】
開閉手段は、ビル、住宅、工場、倉庫等の建物などの構造物における、出入口や窓部、あるいは内部の通路や空間などの開口部などを電動で開閉移動するシャッターカーテンなどの開閉部材で構成される。開閉手段が、シャッターカーテンの場合には、建物などの開口部の周縁部の一つである上部に収納され、まぐさなどを通過してシャッターカーテンが下降し、開口部を電動で開閉動作する。これ以外にも開閉手段が開口部の側部に収納され横引き方式で電動で開閉移動したり、開口部の下部に収納され上昇方式で電動で開閉移動したりすることもある。また、開閉手段には、閉鎖によって開口部を全閉できるものも全閉できないものも含む。
【0012】
電動で開閉動作する開閉体装置は、停電時などの非常時に電動での動作が困難になったとしても、バッテリなどの予備電源手段を搭載した非常電源装置を用いて開閉手段を、少なくとも人が通過可能な位置まで開放している。また、非常電源装置の中には、建物外部に設けられた送水口に火災時などに消火用ホースが接続され、そこから送水が開始され、その水圧が所定範囲内の大きさになると作動する水圧スイッチからの作動信号を受けて動作し、開閉手段を開動作させるものがある。
【0013】
開閉体装置の機能に応じて、自動閉鎖装置、障害物感知装置、危害防止用連動中継器、電気式手動閉鎖装置及び水圧スイッチなどが設けられ、これら各機器からの信号線や外部電源線などの各種ケーブルがこの非常電源装置又は制御盤に接続されている。また、2連又はそれ以上の開閉手段を制御する場合には、非常電源装置や制御盤などを共通化させ、シャッターケースの外側の例えば壁面に沿った床面などに配置することがある。さらに、複数の開閉手段を制御する場合には、このケーブルの本数が適宜変更されるので、その本数変更に柔軟に対応するために、非常電源装置又は制御盤などを収納した筐体には、長尺状の開口部が設けてあり、この開口部を複数本のケーブルが通過し、端子台の所定の端子に接続されるようになっている。
【0014】
この発明では、筐体内においてケーブルを凹状又は下に凸状となるように配線しているので、気温変動によって壁面等やケーブル自体に発生した水分やウォーターミストやスプリンクラーからの水分等が壁面又は電線管を通じてケーブルに伝わって、筐体内に侵入したとしても、ケーブルの折り曲がり部分、すなわち凹状又は下に凸状にあるケーブルの最下端部でその水分が落下し、それ以上ケーブルを水分が伝わることはなくなり、端子台に対して水が付着することもなくなり、短絡や漏電等の異常の発生を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の開閉体装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、前記ケーブルが前記開口部を挿通時にその挿通箇所の高さよりも下側に向かって配線される場合は、前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルを配線し、前記ケーブルが前記開口部を挿通時にその挿通箇所の高さよりも一旦上側に向かって配線される場合は、そのまま配線することにある。
【0016】
ケーブルを凹状又は下に凸状となるように配線するということは、ケーブルが開口部を通過後に下側に向かって配線されており、その途中で一旦上側に向かうように配線されているとも言える。この発明では、ケーブルが開口部を挿通する時の高さよりも下側に向かって配線される場合は、開口部から端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるようにケーブルを配線し、ケーブルが開口部を挿通する時の高さよりも一旦上側に向かって配線される場合は、そのまま配線するようにした。なお、上側に向かって配線されている場合であってもその後のケーブルを凹状又は下に凸状となるように配線してもよい。ケーブルが開口部を挿通する時の高さよりも一旦上側に向かって配線されている場合は、水分がそのケーブルを伝わって筐体内部に進入する可能性は少ないからである。
【0017】
本発明の開閉体装置の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載の開閉体装置において、前記ケーブルが前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルの配線経路を案内する配線案内手段を前記筐体内に設けたことにある。
【0018】
端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように複数のケーブルを配線することは高度な熟練を要する作業であると共に配線後に筐体外から何らかの応力や引っ張り力が一部又は全体のケーブルに加わった場合に、凹状又は下に凸状の形状が崩れる可能性がある。そこで、この発明では、凹状又は下に凸状となるようにケーブルの配線経路を案内する配線案内部材を設け、ケーブルの配線作業を簡単化すると共に配線後の形状が容易に変形しないようにしている。
【0019】
本発明の開閉体装置の第4の特徴は、前記第3の特徴に記載の開閉体装置において、前記挿通箇所の高さよりも下側に向かって配線される前記ケーブルを一旦上側に向かうように案内し、その後で前記端子台に接続するように構成されていることにある。
【0020】
これは、配線案内手段が下側に向かう配線を一旦上側に向かうように案内することによって、ケーブルを凹状又は下に凸状とすることを明確化したものである。このような配線案内手段としては、2枚の板の間の空間を通過させるように構成されたもの、1枚の板の傾斜面を利用したものなどのように、配線を一旦上側に向かうようにすることができるように構成したものであれば、種々の形状のものを配線案内手段として利用することができる。
【0021】
本発明の開閉体装置の第5の特徴は、前記第1、第2、第3又は第4の特徴に記載の開閉体装置において、前記筐体内に非常電源装置が内蔵されていることにある。
これは、火災の発生などの非常時に高い信頼性で動作しなければならない非常電源装置が筐体内に内蔵されている場合に適用したものである。
【0022】
本発明のケーブル接続方法の第1の特徴は、筐体側面に設けられた開口部を挿通して、前記開口部よりも下側の前記筐体内に設けられた端子台に1又は複数のケーブルを電気的に接続するケーブル接続方法において、前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で前記ケーブルを凹状又は下に凸状となるように配線することにある。
これは、前記開閉体装置の第1の特徴に対応したケーブル接続方法の発明である。
【0023】
本発明のケーブル接続方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のケーブル接続方法において、前記ケーブルが前記開口部を挿通時にその挿通箇所の高さよりも下側に向かって配線される場合は、前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルを配線し、前記ケーブルが前記開口部を挿通時にその挿通箇所の高さよりも一旦上側に向かって配線される場合は、そのまま配線することにある。
これは、前記開閉体装置の第2の特徴に対応したケーブル接続方法の発明である。
【0024】
本発明のケーブル接続方法の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載のケーブル接続方法において、前記ケーブルが前記開口部から前記端子台に接続されるまでの途中で凹状又は下に凸状となるように前記ケーブルの配線経路を案内する配線案内手段を前記筐体内に設けたことにある。
これは、前記開閉体装置の第3の特徴に対応したケーブル接続方法の発明である。
【0025】
本発明のケーブル接続方法の第4の特徴は、前記第3の特徴に記載のケーブル接続方法において、前記配線案内手段は、前記挿通箇所の高さよりも下側に向かって配線される前記ケーブルを一旦上側に向かうように案内するように構成されていることにある。
これは、前記開閉体装置の第4の特徴に対応したケーブル接続方法の発明である。
【0026】
本発明のケーブル接続方法の第5の特徴は、前記第1、第2、第3又は第4の特徴に記載のケーブル接続方法において、開閉体装置用の非常電源装置を内蔵した筐体内でケーブルを前記端子台に配線したことにある。
これは、前記開閉体装置の第5の特徴に対応したケーブル接続方法の発明である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ケーブルを伝わって筐体内に侵入した水分等が端子台まで届かないようになるので、短絡や漏電等といった異常の発生を抑制し、電子部品から構成される制御盤や非常電源装置などの信頼性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】非常電源装置の筐体側面に設けられた長尺状の開口部を介して各種ケーブルが挿通されている様子を示す断面図である。
【
図2】本発明に係るシャッター装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明に係る開閉体装置を構成する制御システムの回路構成の概略を示す図である。
【
図4】本発明の
図1のケーブル接続方法によって配線された開閉体装置の非常電源装置内のケーブルの状態を示す図であり、
図1の断面図に対応している。
【
図6】
図4及び
図5の非常電源装置の内部の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下添付図面に従って本発明に係る開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では開閉手段として上下に開閉動作されるシャッター装置を例に説明する。
図2は、本発明に係るシャッター装置の概略構成の一例を示す図である。
図2において、開閉体装置10は出入口の開口部を上下に開閉するシャッター装置である。
【0030】
開閉体装置10は、建物の開口部に設けられるものであり、基本的にシャッターケース11、シャッターカーテン12、ガイドレール13,14、巻取シャフト15、チェーン16、モータ17、制御装置18、操作スイッチ19、非常電源装置20、障害物感知器185及び水圧スイッチ30などを含んで構成される。この開閉体装置10は、通常時には、操作スイッチ19の操作に応じて、開閉機であるモータ17を駆動して開閉制御するようになっている。さらに、この開閉体装置10では、シャッターカーテン12が巻取シャフト15に巻き取られている開放状態を機械的な保持機構(図示せず)によって保持しており、この開放状態で外部から火災の発生などを示す非常信号BSなどが制御装置18に入力された場合には、その保持機構による開放状態の保持が解除されて、シャッターカーテン12は、その自重で自然降下して開口部を自動閉鎖する機能を備えている。
【0031】
ガイドレール13,14は、シャッターカーテン12の両端部に接するように建物の開口部の両端側に設けられ、まぐさ部から床面まで掛け渡された断面形状がコの字型の案内溝を有する金属製部材又はこれと同等の部材で構成されている。シャッターカーテン12は、このガイドレール13,14の各案内溝に沿って上昇下降し、開口部の開閉動作を行う。
【0032】
巻取シャフト15は、シャッターケース11の両端側に回動可能に設けられ、シャッターカーテン12を巻き取ったり巻き戻したりする。チェーン16は、モータ17の回転軸に設けられた主動スプロケットと巻取シャフト15の回転軸に設けられた従動スプロケットとを連結している。従って、モータ17の回転駆動力は、チェーン16を介して巻取シャフト15側に伝達され、モータ17が回転すると、チェーン16を介して巻取シャフト15が回転し、シャッターカーテン12の開閉動作が制御されるようになっている。
【0033】
モータ17には、その回転位置すなわちシャッターカーテン12の開閉位置と開閉状態を検出するための位置検出装置(図示せず)が設けられている。この位置検出装置は、パルス発生型のロータリーエンコーダ等で構成される。モータ17の回転に応じたパルス信号が制御装置18に出力されるので、モータ17の回転位置やシャッターカーテン12の閉鎖側先端部の開口部における位置などはこのパルスの発生状況に基づいて制御装置18が演算にて求めることになる。
【0034】
制御装置18は、マイクロコンピューター構成になっており、非常電源装置20を介して電源ラインACからの電力が供給されている。制御装置18は、操作スイッチ19上の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号やモータ17に設けられた位置検出装置からの信号やプロテクタからの信号などに基づいてモータ17の回転を制御したり、非常信号BSに基づいて保持機構を解除したりする。
【0035】
操作スイッチ19は、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして、上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19B、下降(閉)ボタン19Cをそれぞれ有し、これら各ボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置18に出力する。また、操作スイッチ19は、自動閉鎖機能を作動させるための作動信号を出力する作動スイッチ、作動スイッチによる信号を解除して自動閉鎖機能を復旧させるための復旧信号を出力する復旧スイッチ、非常電源装置20から出力される移報信号を開放するための解除スイッチ等を具備している。
【0036】
非常信号BSは、火災発生などの非常時に外部の制御室などから供給される電圧24[V]の信号であり、制御装置18内の危害防止用連動中継器(
図2では図示せず)に入力される。なお、外部からの非常信号BSの入力と併せて、又は代わりにシャッターケース1の内側であって、まぐさ部の開口部近傍すなわちシャッターカーテン2が昇降する部分に温度感知器などを設けてもよい。この温度感知器としては、常時接点がオン状態にあり、接点が所定温度(摂氏100~300度の範囲の任意温度)に達した時点で接点を開きオフ状態となるB接点の自動復帰型の高温度用バイメタル式サーモスタットなどで構成され、接点が開いた場合には火災などが発生したことを示す信号を非常電源装置20に出力し、非常電源装置20から非常信号BSに相当する信号を出力するようにしてもよい。
【0037】
障害物感知器185は、送信機がシャッターカーテン2の下端部(座板)に設けられたもので、障害物感知時には、内蔵された座板スイッチの移動に対応した感知信号を制御装置18に送信し、また、その後の障害物の除去により座板スイッチの復帰移動時には、復帰信号を送信する構成となっている。障害物感知器185の送信機から制御装置18への信号の送信は、図のような有線方式に限らず、電池を電源として作動する無線方式のものでもよい。また、シャッターカーテン12の下端部に障害物の接触で移動する座板スイッチを設け、障害物接触時の座板の移動力でガイドレールの高さ方向に沿って設けられたテープスイッチを押圧する構成や、テープスイッチから制御手段に対し感知信号を有線出力する構成としてもよい。この他、開口部に光電管やLED等の投受光センサを設け、画像認識等により障害物を非接触で感知する構成としてもよい。
【0038】
水圧スイッチ30は、建物外部に設けられた送水口(図示せず)に火災時などに消火用ホースが接続され、そこから送水(注入)が開始され、その水圧(水流の勢い)が所定範囲内の大きさのときに作動するスイッチであり、その作動信号を非常電源装置20に出力する。この作動信号を入力した非常電源装置20は、移報信号を障害物感知装置制御盤184に出力する。水圧スイッチ30を作動させる水圧の範囲は、想定される消防隊の放水能力を考慮して適宜設定されている。送水口には火災時などに消火用ホースが接続されるものである。送水口から送水された水は、水圧スイッチ30を経由して図示しない排水口から排水されるようになっている。
【0039】
図3は、本発明に係る開閉体装置を構成する制御システムの回路構成の概略を示す図である。制御装置18は、マイクロコンピューターによってそれぞれ制御されるものであり、開閉機制御装置181、危害防止用連動中継器182、自動閉鎖装置183及び障害物感知装置制御盤184を備えて構成されており、操作スイッチ19、障害物感知器185、水圧スイッチ30等から入力される信号や非常電源装置20から入力される電力及び各種信号を処理して、モータ17および自動閉鎖装置183を制御する。
【0040】
開閉機制御装置181は、商用電源の入力断を示す信号を入力することによって非常電源装置20から電源ラインを介して供給される直流電圧を交流電圧に変換してモータ17に供給可能な状態とする。すなわち、通常、モータ17には、商用電源からの電力が供給されているが、停電時などの非常時において商用電源からの電力供給が停止した入力断となった場合などには、開閉機制御装置181が非常電源装置20からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ17に供給するようになっている。また、開閉機制御装置181は、モータ17に設けられた位置検出装置172からのシャッター位置情報を示す信号を受信し、それに基づいて直流電圧から交流電圧への変換動作を制御している。なお、
図3では、制御装置18以外への商用電源の接続関係については、その図示を省略してある。
【0041】
危害防止用連動中継器182は、非常信号BSまたは操作スイッチ19からの作動信号を受けた際に、自動閉鎖装置183を作動させるための電源(例えばDC24V等)を、商用電源又は非常電源装置20から出力するものである。危害防止用連動中継器182は、通常は、商用電源を使用して出力するが、停電時などには非常電源装置20からの電力によって自動閉鎖装置183へ直流24V信号を出力する。
【0042】
自動閉鎖装置183は、危害防止用連動中継器182を介して供給される直流24V信号に応じて保持機構171を解放し、巻取り状態にあるシャッターカーテン12を自重で下降させ自動的に開口部を閉鎖するように動作する。自動閉鎖装置183は、直流24V信号が供給された際に、モータの回転力により押圧作動部材を突出させるように構成してある。この押圧作動部材は、その突端部で保持機構171の操作レバーを押圧操作するように配置されている。自動閉鎖装置183は、非常時には、操作スイッチ19に設けられた非常閉鎖ボタンの操作に応じて、シャッターカーテン12を自重で降下させることもある。自動閉鎖装置183は、危害防止用連動中継器182からの直流24V信号が供給されている間、保持機構171を解放するが、障害物感知装置制御盤184の障害物感知信号がある場合には、その間保持機構171を復帰するようになっている。なお、危害防止用連動中継器182からの電力供給(直流24V信号)がなくなった場合に保持機構171を復帰するものもある。
【0043】
図4は、本発明の
図1のケーブル接続方法によって配線された開閉体装置の非常電源装置内のケーブルの状態を示す図であり、
図1の断面図に対応している。
図5は、
図4のA-A線の断面図であり、
図6は
図4及び
図5の非常電源装置の内部の概要を示す斜視図である。
図4~
図6において、
図1と同じ構成のものには同一の符号が付してあるので、その説明は省略する。
図4のケーブル接続方法が
図1のものと異なる点は、10本の各種ケーブル240~249が筐体21内で凹状又は下に凸状となるように一旦下方向に折り曲げてある点である。すなわち、長尺状の開口部25から挿入された各種ケーブル240~249は、この挿通箇所の高さから一旦下側に向かうように折り曲げられ、その折り曲がり部分の最下端部を底として、この最下端部の底から今度は逆に上に凸状となるように折り曲げられ、その折り曲がり部分の最上端部から下方向の端子台22に向かうように配線されている。
【0044】
各種ケーブル240~249は、開閉体装置を構成する各電子部品からのケーブルである。開閉体装置の構成によっては、非常電源装置20に2連又はそれ以上の開閉体装置が接続される場合がある。従って、このケーブル240~249の本数は10本に限定されるものではなく、接続される開閉体装置の数や機能などに応じて柔軟に変更されるので、この実施の形態に係る非常電源装置20では、長尺状の開口部25が設けられおり、この開口部25を介して柔軟な本数のケーブルが挿入接続されるような構成になっている。
【0045】
各種ケーブル240~249を
図4に示すような形状に配線することは高度な熟練を要する作業である。また、
図4に示すように各種ケーブル240~249を配線できたとしても、筐体21の外側から何らかの応力や引っ張り力が一部又は全体のケーブル240~249に加わった場合、
図4に示すような凹状又は下に凸状の形状が崩れるおそれがある。そこで、この実施の形態では、各種ケーブル240~249の配線経路を案内する配線案内部材26を設け、各種ケーブル240~249の配線作業を簡単化すると共に配線後にその形状が容易に変形しないようにしている。
【0046】
図7は、
図4~
図6の配線案内部材の構成を示す斜視図である。配線案内部材26は、
図4の断面形状に示すようにZ形に折り曲げられた下案内板261と、全体が横長のコの字状をした上押え板262とから構成される。下案内板261と上押え板262は、その両端部が溶接等で結合され、一体構成となっている。なお、下案内板261と上押え板262とはそれぞれ分離可能に構成してあってもよい。配線案内部材26の下案内板261と上押え板262の両端部は、筐体21の電子部品及び予備電源23の保護板の上側にネジ等で固定されている。なお、配線案内部材26は筐体21の側壁面にネジ止め固定されていてもよい。
【0047】
配線案内部材26を用いたケーブルの接続方法について説明する。配線案内部材26が一体で構成されている場合は、最初に配線案内部材26を筐体21の電子部品及び予備電源23の保護板の上側にネジ等で固定する。固定された配線案内部材26の下案内板261と上押え板262との間の空間を通過させて、端子台22に各端子に接続されるようにケーブル240~249を順次配線する。
【0048】
また、配線案内部材26が分離可能に構成されている場合は、下案内板261だけを先に筐体21の電子部品及び予備電源23の保護板の上側にネジ等で固定する。下案内板261の上側面及び傾斜面の形状を利用して、ケーブル240~249を
図4のような形状に変形させる。形状を変形した後のケーブル240~249に対して上側から上押え板262を用いて下に押しつけるようにして、上押え板262を筐体21の電子部品及び予備電源23の保護板の上側に固定することによって、ケーブル240~249を配線する。
【0049】
このように配線案内部材26を用いることによって、各種ケーブル240~249全部の形状を
図4に示すように、凹状又は下に凸状となるような同じ配線形状とすることが容易にできるようになる。また、
図4に示すようにケーブルが凹状又は下に凸状となるように配線することによって、気温変動によって壁面等やケーブル240~249自体に発生した水分やウォーターミストやスプリンクラーからの水分等が壁面又は電線管を通じてケーブル240~249に伝わって、筐体21内に侵入したとしても、ケーブル240~249の折り曲がり部分、すなわち凹状又は下に凸状にあるケーブルの最下端部で水は落下し、ケーブル240~249を水分が伝わることはなくなり、端子台22に対して水が付着することもなくなり、短絡や漏電等の異常の発生を抑制することが可能となる。
【0050】
また、下案内板261は、断面がZ形に折り曲げられており、その上側面と傾斜面によって、長尺状の開口部25から侵入する塵や埃等から端子台22に到達するのを防止する機能を有する。さらに、配線案内部材26を設けることによって、筐体21の外側からケーブル240~249の一部又は全体に対して何らかの応力や引っ張り力が加わったとしても、
図4に示すように下案内板261の上側面の左端部と上押え板262の下端部とにケーブル240~249が接触して、端子台22と下案内板261との間のケーブル240~249に応力や引っ張り力が加わることがなくなり、端子台22とケーブル240~249の接続状態を安定化することができる。
【0051】
図4では、各種ケーブル240~249は、凹状又は下に凸状となるように配線されているが、これは、各種ケーブル240~249の開口部25における挿通箇所の高さよりも下側に向かって配線され、その後一旦上側に向かうように配線されているとも言える。また、凹状又は下に凸状になっていなくても、同様の効果を奏する形状をケーブルが備えていてもよい。例えば、ケーブルの途中に鍔のような円板を設け、そこから水分が下に落下するようにしてもよい。また、各種ケーブル240~249の開口部25における挿通箇所の高さよりも上側に向かって配線されている場合には、上述のような凹状又は下に凸状とすることなく、そのまま端子台22の各端子にケーブル240~249をそのまま配線するようにしてもよいし、このような場合でも凹状又は下に凸状となるように配線してもよい。
【0052】
また、
図4では、配線案内部材26の下案内板261と上押え板262の断面形状が左側に傾斜するように構成されているが、配線案内部材26の下案内板261と上押え板262の断面形状を傾斜させることなく垂直としてもよいし、右側に傾斜させてもよい。また、ケーブル240~249は、配線案内部材26の下案内板261と上押え板262との2枚の板の間の空間を通過するように構成してあるが、下案内板261と上押え板262のいずれか一方だけを設けて、その傾斜面にケーブル240~249を脱着することができるような構成としてもよい。また、ケーブル240~249の底の部分に、落下する水分を受けて両端部に排出する雨樋のような部材を設けてもよい。下案内板261と上押え板262のように、板状の部材を用いているが、棒状又は角材状のものを2本設けて、下側に向かって配線されたケーブルを一旦上側に向かうように配線するようにしてもよい。
【0053】
上述の実施の形態では、上下昇降方式で繰り出されるシャッターカーテンを例に説明したが、シャッター状の開閉部材が横引き方式で繰り出されたり、あるいは水平方式で繰り出されたりするものであっても同様に適用することができる。また、開閉体装置としては、例えば、シャッター装置、窓シャッター装置、ブラインド装置、ロールスクリーン装置、垂れ幕装置、引戸装置、移動間仕切装置、オーニング装置、防水板装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…開閉体装置
11…シャッターケース
12…シャッターカーテン
13,14…ガイドレール
15…巻取シャフト
16…チェーン
17…モータ
171…保持機構
172…位置検出装置
18…制御装置
181…開閉機制御装置
182…危害防止用連動中継器
183…自動閉鎖装置
184…障害物感知装置制御盤
185…障害物感知器
19…操作スイッチ
19A…上昇(開)ボタン
19B…停止(停)ボタン
19C…下降(閉)ボタン
20…非常電源装置
21…筐体
22…端子台
23…電子部品及び予備電源
24,240~249…ケーブル
25…開口部
26…配線案内部材
261…下案内板
262…上押え板
30…水圧スイッチ