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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B43K3/00 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017246773
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019111722
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良昌
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-144991(JP,A)
【文献】特開2012-179912(JP,A)
【文献】特開2000-309189(JP,A)
【文献】特開2011-005823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部に開口部を備えた軸筒と、前記開口部に装着される尾栓と、を備えた筆記具であって、
前記尾栓が、後端に有底部を備えた筒状に形成されると共に、前記軸筒の後端部に当接する鍔部と、前記軸筒の内壁に設けた被係止部に係止する係止部と、を具備し、
前記係止部の後端に、軸方向に対して傾斜した方向に延びる後方当接部と、後方当接部の前端に連接し外方へ向って突設された後方壁部と、を備え、
前記被係止部の前端に、前記係止部の後方当接部と当接する被当接部と、前記尾栓が前記軸筒に対して後退した際、前記係止部の後方壁部に係合するよう該後方壁部の形状に合わせて形成された前方壁部と、を備え、
前記尾栓の後方壁部に、軸方向後方に向って突出する凸部、または、軸方向前方へ向かって凹む凹部が形成され、
前記軸筒の前方壁部に、軸方向後方へ向って凹み前記後方壁部の凸部と係合する凹状部、または、軸方向前方へ向って突出し前記後方壁部の凹部と係合する凸状部が形成されたことを特徴としたことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
後端部に開口部を備えた軸筒と、前記開口部に装着される尾栓と、を備えた筆記具であって、
前記尾栓が、後端に有底部を備えた筒状に形成されると共に、前記軸筒の後端部に当接する鍔部と、前記軸筒の内壁に設けた被係止部に係止する係止部と、外周部に外方へ向って突出すると共に軸方向に沿って延びるよう形成されたガイド部と、を具備し、
前記係止部の後端に、軸方向に対して傾斜した方向に延びる後方当接部と、後方当接部の前端に連接し外方へ向って突設された後方壁部と、を備え、
前記被係止部の前端に、前記係止部の後方当接部と当接する被当接部と、前記尾栓が前記軸筒に対して後退した際、前記係止部の後方壁部に係合するよう該後方壁部の形状に合わせて形成された前方壁部と、を備え、
前記ガイド部が、軸方向に分断されていることを特徴とする筆記具。
【請求項3】
前記尾栓の後方当接部と前記軸筒の被当接部とが当接した状態では、前記軸筒の前方壁部と前記尾栓の後方壁部との間に形成される隙間が0.04mm以上、0.20mm以下となることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒に対して尾栓を装着した筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からキャップ式の筆記具などでは軸筒後端に尾栓を装着する筆記具はよく知られており、例えば特許文献1には、軸筒の後端開口部に尾栓を圧入して嵌着することで軸筒に対して尾栓を装着している筆記具が開示されている。
この特許文献1の尾栓取り付け構造では、軸筒と尾栓との嵌合力は軸筒の内径寸法および尾栓の外径寸法に依存しているため、装着時の嵌合力にはバラツキが発生し易く、必要に応じて接着剤等を併用して固着する必要があった。
【0003】
一方、特許文献2には、軸筒の開口部にクリップを一体成形した部材(以降クリップ部材)を装着する構造が開示されている。
この特許文献2の構造では、クリップ部材が、外方へ露出する外筒部と、軸筒の開口部内に挿入される内筒部とを有し、内筒部の外周面に係合突起とガイド用突起が形成され、軸筒の開口部の内壁面に軸方向に延びるガイド溝と係合孔とが形成され、クリップ部材の内筒部のガイド用突起を軸筒のガイド溝に挿嵌しつつクリップ部材の内筒部を軸筒内に挿入し、軸筒の係合孔とクリップ部材の係合突起とを係合させることで、軸筒に対してクリップ部材を装着している。このため、クリップ部材は軸筒に対して回転方向を決められた状態で係合される。
【0004】
しかしながら、特許文献2の構造では、係合突起を係合孔に入れるために、軸筒の開口端から係合孔の距離に比べて、クリップ部材の内筒部の端部から係合突起までの距離を大きく形成する必要がある。このため、その差分が係合時における軸方向でのガタツキになることで、係合後も軸筒に対してクリップ部材が前後に動いてしまう問題があった。
【0005】
また、特許文献3には、キャップを軸筒に装着した際に該キャップと軸筒との軸方向におけるガタツキを防止する構造が開示されている。
この特許文献3の構造では、軸筒の外周面に環状の外向突起が一体に形成され、キャップを構成する外筒部の内周面には環状の内向突起が形成され、外向突起の後面が後方へ向かうに従って外径が小さくなる傾斜面状に形成されている。このため、キャップを軸筒に装着し、外向突起に内向突起が乗り越え係合された状態では、内向突起が外向突起後面により後方へ押圧された状態になり、キャップのガタツキを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公昭56-31411号公報
【文献】特開平11-180087号公報
【文献】特開2005-041201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3の構造は、キャップ装着時のガタツキを防止することができるが、外向突起の後面を傾斜面状に形成しているため、外向突起と内向突起との係合状態が外れやすく、取り外し自在なキャップと軸筒との係合などには効果を発揮するが、軸筒に対して着脱不能に尾栓を装着する場合には尾栓が外れ易くなる問題がある。
【0008】
本発明は、前記問題を鑑みてなされたものであって、軸筒に尾栓を装着する際に、ガタツキを防止した状態で装着でき、且つ、尾栓を軸筒から外れ難く構成した筆記具を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
「1.後端部に開口部を備えた軸筒と、前記開口部に装着される尾栓と、を備えた筆記具であって、
前記尾栓が、後端に有底部を備えた筒状に形成されると共に、前記軸筒の後端部に当接する鍔部と、前記軸筒の内壁に設けた被係止部に係止する係止部と、を具備し、
前記係止部の後端に、軸方向に対して傾斜した方向に延びる後方当接部と、後方当接部の前端に連接し外方へ向って突設された後方壁部と、を備え、
前記被係止部の前端に、前記係止部の後方当接部と当接する被当接部と、前記尾栓が前記軸筒に対して後退した際、前記係止部の後方壁部に係合するよう該後方壁部の形状に合わせて形成された前方壁部と、を備え、
前記尾栓の後方壁部に、軸方向後方に向って突出する凸部、または、軸方向前方へ向かって凹む凹部が形成され、
前記軸筒の前方壁部に、軸方向後方へ向って凹み前記後方壁部の凸部と係合する凹状部、または、軸方向前方へ向って突出し前記後方壁部の凹部と係合する凸状部が形成されたことを特徴としたことを特徴とする筆記具。
2.後端部に開口部を備えた軸筒と、前記開口部に装着される尾栓と、を備えた筆記具であって、
前記尾栓が、後端に有底部を備えた筒状に形成されると共に、前記軸筒の後端部に当接する鍔部と、前記軸筒の内壁に設けた被係止部に係止する係止部と、外周部に外方へ向って突出すると共に軸方向に沿って延びるよう形成されたガイド部と、を具備し、
前記係止部の後端に、軸方向に対して傾斜した方向に延びる後方当接部と、後方当接部の前端に連接し外方へ向って突設された後方壁部と、を備え、
前記被係止部の前端に、前記係止部の後方当接部と当接する被当接部と、前記尾栓が前記軸筒に対して後退した際、前記係止部の後方壁部に係合するよう該後方壁部の形状に合わせて形成された前方壁部と、を備え、
前記ガイド部が、軸方向に分断されていることを特徴とする筆記具。
3.前記尾栓の後方当接部と前記軸筒の被当接部とが当接した状態では、前記軸筒の前方壁部と前記尾栓の後方壁部との間に形成される隙間が0.04mm以上、0.20mm以下となることを特徴とする前記1項または2項に記載の筆記具。」である。

【0010】
本発明によれば、尾栓の係止部の後端に、軸方向に対して傾斜した方向に延びる後方当接部を形成し、軸筒内壁に形成した被係止部の前端に尾栓の後方当接部と当接する被当接部を形成することで、軸筒に対して尾栓が常に前方側に付勢される。このため、尾栓の鍔部が軸筒の後端に常に当接することで、尾栓が軸筒に対して軸方向にガタツクことを防止できる。また、尾栓が軸筒に対して後退した際、後方当接部の前端に連接して突設された後方壁部に係合するよう該後方壁部の形状に合わせて前方壁部を形成することで、軸筒に対して無理に尾栓を引き抜こうとしても、係止部の後方壁部と被係止部の前方壁部とが係合することで尾栓が軸筒から抜けてしまうことを防止することができる。
【0011】
また、尾栓の後方壁部に、軸方向後方に向って突出する凸部、または、軸方向前方へ向かって凹む凹部を形成し、軸筒の前方壁部に、軸方向後方へ向って凹み後方壁部の凸部と係合する凹状部、または、軸方向前方へ向って突出し後方壁部の凹部と係合する凸状部を形成することが好ましく、この場合、軸筒に対して無理に尾栓を引き抜こうとして、係止部の後方壁部と被係止部の前方壁部とが当接すると、後方壁部の凸部または凹部が、前方壁部の凹状部または凸状部と係合することで、係止部と被係止部とがより強固に係合することとなり、軸筒から尾栓が抜けることを防止する効果を高めることができる。
【0012】
更に、尾栓の後方当接部と軸筒の被当接部とが当接した状態では、軸筒の前方壁部と尾栓の後方壁部との間に形成される隙間が0.04mm以上、0.20mm以下となるよう構成することが好ましく、この場合、隙間が0.04mm以上あることで、係止部と被係止部とを余裕を持って係合させことができ、且つ、隙間が0.20mm以下とすることで、尾栓を無理に抜こうとしてもすぐに後方壁部と前方壁部とが当接することで勢いが付かず、尾栓の抜けを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、軸筒に尾栓を装着する際に、ガタツキを防止した状態で装着でき、更に、尾栓が軸筒から外れ難く構成した筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の筆記具(ボールペン)の縦断面図である。
図2図1の筆記具の要部を拡大した要部拡大縦断面図である。
図3図2におけるA-A断面図である。
図4】実施例1における尾栓の斜視図である。
図5】軸筒に尾栓を取り付ける状況を説明するための説明図である。
図6図1において、軸筒に対して尾栓が後方へ移動した状態の要部拡大断面図である。
図7図6の要部を更に拡大した要部拡大断面図である。
図8】実施例2の筆記具の要部を拡大した要部拡大縦断面図である。
図9図8において、軸筒に対して尾栓が後方へ移動した状態の要部拡大断面図である。
図10図9の要部を更に拡大した要部拡大断面図である。
【0015】
次に図面を参照しながら、本発明の筆記具をボールペンを用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、本実施例では、軸筒の長手方向において、ボールペンチップがある方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。更に、軸筒の軸径方向において、ボールペンレフィルがある方を内方と表現し、その反対側を外方と表現する。
尚、説明を分かりやすくするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。
【0016】
実施例1
本発明の筆記具1(ボールペン)は、図1から図7に示すように、筒状に形成した後軸2の前部に同じく筒状に形成した前軸3を螺合することで固定し、更に、前軸3の前部に筒状の先口4を螺合することで固定してある。また、筆記具1は、後軸2と前軸3と先口4とで軸筒5を形成してあり、先口4の前端開口部から筆記先端部7aが突出するようにボールペンレフィル7を軸筒5内に収納し、後軸2(軸筒5)の後端に尾栓6を装着してある。更に、ボールペンレフィル7と先口の内段との間に、弱い弾発力で形成したコイルスプリング11が配設してあり、コイルスプリング11によりボールペンレフィル7を後方へ弾発してある。
【0017】
ボールペンレフィル7は、図1に示すように、先端開口部にタングステンカーバイド製のボールを抱持させ、筆記先端部7aとなるボールペンチップ8を、樹脂製のインキ収容筒9の前端部に、チップホルダー10を介して装着してある。
このボールペンレフィル7で筆記すると、ボールペンチップ8のボールの回転と筆圧によって、ボールがボールペンチップ8の先端開口部の底壁側に移動して、先端開口部の内壁とボールに隙間を生じ、インキ収容筒9内に収納した筆記具用水性ゲルインキを吐出して筆記することができる。
【0018】
前軸3は、図1に示すように、筒状に形成してあり、前端内周部に先口4の雄螺子部4aと螺合するための前部雌螺子部3aを形成してあり、後部外周部には後部雄螺子部3bを形成してある。
【0019】
後軸2は、図1から図3及び図5に示すように、筒状に形成してあり、前端内周部に前軸3の後部雄螺子部3aと螺合するための雌螺子部2aを形成してあり、後部内周部2b(開口部)には、軸周方向に均等配置させた状態で形成した複数のリブ2cと、内方へ向って突出し軸周方向に延びる内突起2d(被係止部)と、を形成してある。そして、隣り合うリブ2cの間には内溝部2eが形成される。
尚、内突起2d(被係止部)の前端には、図2及び図5に示すように、軸方向に対して直交する方向に延びる前方壁部2fと、前方壁部2fの内方端には先端角部2g(被当接部)と、が形成してある。また、リブ2cの後端の内周部は拡径された内側部2hが形成してある。
【0020】
尾栓6は、図2から図5に示すように、内孔6aに有底部6bを備えた筒状に形成してあり、後軸2内(軸筒5内)に挿入される内筒部6cと後軸2の後端面2iに当接する鍔部6dを備えた後筒部6eとで構成してある。また、内筒部6cの前部は太径に形成してあり、前端にはボールペンレフィル7の後端部が当接して、ボールペンレフィル7の後退を制限してある。更に、内筒部6cの外周面には、内外を貫通し、軸方向に延びるよう楕円形状で形成した切欠部6fと、切欠部6fに対して90°回転した位置に、外方へ向って突出し、軸心を挟んで対称に2箇所形成した係止突起6g(係止部)と、当該係止突起6g(係止部)の後方に、外方へ向って突出し軸方向に延びるレール状に形成された第一ガイド部6hと、軸周方向に延びるように形成された第二ガイド部6iと、を設けてある。
【0021】
尾栓6を更に詳述すると、尾栓6の第一ガイド部6hは、軸周方向に延びるように形成され溝状に形成された第一溝部6jにより軸方向に対して前後に分断され、前部第一ガイド部6h1と後部第一ガイド部6h2が形成される。また、第二ガイド部6iは、軸周方向に延びるように形成され溝状に形成された第二溝部6kにより軸方向に対して前後に分断され、前部第二ガイド部6i1と後部第二ガイド部6i2が形成される。そして、第一溝部6jと第二溝部6kは連接するように形成され、一体の溝部として形成してある。
また、切欠部6fの後端は第二溝部6kまで達しており、前部第二ガイド部6i1は、切欠部6fにより軸周方向にも分断されるよう構成してある。また、前部第一ガイド部6h1の前端は尖形状に形成してある。
尚、具体的には、第一溝部6jの幅は1.0mmで形成し、第二溝部6kの幅を1.6mmで形成した。
【0022】
また、尾栓6の係止突起6g(係止部)の後端には、軸方向に対して傾斜した後方傾斜部6m(後方当接部)と、後方傾斜部6m(後方当接部)の前端に連接し外方へ向って突設された後方壁部6nと、が形成されており、尾栓6の後方傾斜部6m(後方当接部)と、後軸2の内突起2d(被係止部)の先端角部2g(被当接部)と、が当接した状態で係合させてある。
尚、尾栓6の後方傾斜部6m(後方当接部)と、後軸2の内突起2d(被係止部)の先端角部2g(被当接部)と、が当接した状態では、後軸2(軸筒5)の前方壁部2fと尾栓6の後方壁部6nとの間には隙間が形成され、その隙間は、0.04mm以上、0.20mm以下となるよう構成することが好ましく、隙間を0.04mm以上とすることで、係止突起6g(係止部)と内突起2d(被係止部)とを余裕を持って係合させことができ、且つ、隙間を0.20mm以下とすることで、尾栓6が後退可能な距離が制限され、尾栓6が後軸2(軸筒5)に対して抜け難くなる効果を奏する。
【0023】
ここで、尾栓6を後軸2(軸筒5)に取り付ける際の状態を説明する。
図5に示すように、尾栓6の内筒部6cを前方にした状態で、後軸2の後部内周部2bに内筒部6cを挿入すると、尾栓6の係止突起6g(係止部)が後軸2の内突起2dと当接するより先に、尾栓6の前部第一ガイド部6h1の尖形状に形成した前端が後軸2の内溝部2eに挿入され、前部第一ガイド部6h1により尾栓6の軸周方向の位置が案内される。そして、後軸2の内側部2hまで尾栓6の前部第二ガイド部6i1が進むと、内側部2hに前部第二ガイド部6i1が挿入され、後軸2に対して尾栓6の軸径方向の位置が案内される。更に、尾栓6を前方へ押し込むと、尾栓6の係止突起6g(係止部)が後軸2の内突起2dに対して乗り越え嵌合する。この際、尾栓6の第一ガイド部6hは第一溝部6jにより軸方向に対して前後に分断され、第二ガイド部6iは第二溝部6kにより軸方向に対して前後に分断されると共に、第一ガイド部6hの前部第一ガイド部6h1が、切欠部6fにより軸周方向に対して分断されていることから、乗り越え嵌合時に係止突起6g(係止部)が内突起2d(被係止部)により内方側に押圧されると、内筒部6cは内方側へ撓み易くなるよう構成してある。このため、後軸2(軸筒5)に対して尾栓6を容易に装着することができた。
【0024】
また、具体的には、尾栓6を装着する際に必要となった押圧力は19.6Nであり、第一溝部6j及び第二溝部6kの幅を0.5mm以上としていることで尾栓6の装着時の押圧力を抑えることができた。更に、第一溝部及び第二溝部の幅を2.0mm以下としていることで、後部第一ガイド部6h2及び後部第二ガイド部6i2が後軸2の内溝部2e及び内側部2hに挿入される際、尾栓6は後軸2(軸筒5)に対して傾くことはなく、スムーズに挿入された。
更に、尾栓6を後軸2に装着した際、尾栓6の係止突起6g(係止部)の後方壁部6nと後軸2(軸筒5)の内突起2d(被係止部)の前方壁部2fとの間の隙間の幅は0.10mmであり、隙間の幅が0.04mm以上あるため、尾栓6の装着時の係止突起6g(係止部)が内突起2(被係止部)に対して乗り越え嵌合する際に、内突起2(被係止部)が係止突起6g(係止部)に接触して微小に傾いても、乗り越えることができた。

【0025】
尚、本実施例では、後軸2の内溝部2eが隣り合うリブ2c同士の間に複数形成されると共に、内溝部2eの後端部は傾斜して形成することで拡口されており、同時に、尾栓6の前部第一ガイド部6h1の前端部も尖形状に形成してあるため、尾栓6を後軸2に挿入する際、軸周方向の回転位置を合わせることなく挿入しても、第一ガイド部6hが内溝部2eに案内されて軸周方向の嵌合位置が合うように構成してある。このため、後軸2(軸筒5)に対する尾栓6の装着はより容易となった。
【0026】
また、尾栓6を後軸2に取り付けた際、尾栓6の係止突起6g(係止部)の後方傾斜部6m(後方当接部)と、後軸2の内突起2d(被係止部)の先端角部2g(被当接部)と、が必ず当接するよう、尾栓6の内筒部cが軸径方向に少し撓んだ状態で当接させてある。これにより、尾栓6は内筒部6cの撓みによる弾発力を受けて後軸2(軸筒5)に対して前方へ付勢され、尾栓6の鍔部6dの前端が後軸2の後端に常に当接するよう構成することで、尾栓6が軸方向にガタツクことを防止してある。
【0027】
更に、尾栓6を後軸2(軸筒5)に対して引き抜く、または、尾栓6が当該尾栓6の前端部に当接しているボールペンレフィル6により後方(図2の矢印P方向)へ押されて移動しても、図6及び図7に示すように、尾栓6の係止突起6g(係止部)の後方壁部6nと後軸2の内突起2d(被係止部)の前方壁部2fとが面接触することで、内突起2dを係止突起6g(係止部)が乗り越え難くなるよう構成し、尾栓6が後軸2(軸筒5)から外れることを防止してある。
また、具体的には、後軸2に対して尾栓6を引き抜くのに必要な力(引抜力)は75.4Nであり、取り付け時の押圧力19.6Nと比べて高いことから、装着が容易で抜け難い筆記具となった。また、前述したように、尾栓6の係止突起6g(係止部)の後方壁部6nと後軸2(軸筒5)の内突起2d(被係止部)の前方壁部2fとの間の隙間の幅は0.1mmであり、隙間の幅が0.20mm以下であるため、尾栓6が後退できる距離が短いことから、尾栓6を後軸2(軸筒5)から無理に引き抜こうとしても、すぐに後方壁部6nと前方壁部2fとが当接することで勢いが付かず、尾栓の抜けを更に防止できた。
【0028】
尚、後方壁部6nと前方壁部2fとが接触した際に、尾栓6が後軸2に対して強く係合するように、軸径方向に延びる後方壁部6n及び前方壁部2fを、若干傾斜させて形成してもよく、後方壁部6nと前方壁部2fとの接触面の粗さを調整して係合時の摩擦係数が高くなるよう構成してもよい。
【0029】
実施例2
本発明の第二の形態としては、図8に示すように、筆記具100は、尾栓60の係止突起60g(係止部)の後方壁部60nに、軸方向前方へ向って凹状に形成した凹部60pを形成し、後軸20の内突起20d(被係止部)の前方壁部20fに、軸方向前方へ向って突出し後方壁部の凹部60pと係合可能な凸状部20j(被当接部)が形成してある。
尚、尾栓60を軸筒に取り付けた際、尾栓60の係止突起60g(係止部)の後方傾斜部60m(後方当接部)と、後軸2の内突起2d(被係止部)の凸状部20j(被当接部)と、が必ず当接するよう、尾栓60の内筒部20cが軸径方向に少し撓んだ状態で当接させてある。
【0030】
また、本実施例では、尾栓60を後軸20(軸筒50)に対して引き抜く、または、尾栓60が当該尾栓60の前端部に当接しているボールペンレフィル7により後方(図8の矢印P方向)へ押されて移動した際、図9及び図10に示すように、尾栓60の係止突起60g(係止部)の後方壁部60nと後軸20の内突起20d(被係止部)の前方壁部20fとが面接触すると共に、後方壁部60nに形成した凹部60pに前方壁部20fに形成した凹状部20jが係合することで、内突起20dを係止突起60g(係止部)が乗り越え難くなるよう構成し、尾栓60が後軸20(軸筒50)から外れることを防止してある。
尚、本実施例において、後軸20に尾栓60を装着させるのに必要な押圧力は19.6Nであり、後軸20に対して尾栓60の引き抜くのに必要な引抜力は98.2Nであった。このため、本実施例を用いることで軸筒に対して尾栓が装着し易く、更に外れにくい筆記具を提供することができた。
【0031】
尚、本発明に用いる筆記具としては、特に限定されることはなく、尾栓を備えた構造であれば、ボールペン、シャープペンシル、万年筆、マーカー、サインペン等に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…筆記具、
2…後軸、2a…雌螺子部、2b…後部内周部、2c…リブ、
2d…内突起(被係止部)、2e…内溝部、2f…前方壁部、
2g…先端角部(被当接部)、2h…内側部、2i…後端面、
3…前軸、3a…前部雄螺子部、3b…後部雌螺子部、
4…先口、4a…雄螺子部、
5…軸筒、
6…尾栓、6a…内孔、6b…有底部、6c…内筒部、6d…鍔部、6e…後筒部、
6f…切欠部、6g…係止突起(係止部)、6h…第一ガイド部、
6h1…前部第一ガイド部、6h2…後部第一ガイド部、6i…第二ガイド部、
6i1…前部第二ガイド部、6i2…後部第二ガイド部、6j…第一溝部、
6k…第二溝部、
6m…後方傾斜部(後方当接部)、6n…後方壁部、
7…ボールペンレフィル、7a…先端部、
8…ボールペンチップ、
9…インキ収容筒、
10…チップホルダー、
11…コイルスプリング、
20…後軸、20d…内突起(被係止部)、20f…前方壁部、
20j…凸状部(被当接部)、
50…軸筒、
60…尾栓、60c…内筒部、60g…係止突起(係止部)、
60m…後方傾斜部(後方当接部)、60n…後方壁部、60p…凸状部、
100…筆記具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10