IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用廃熱回収装置 図1
  • 特許-車両用廃熱回収装置 図2
  • 特許-車両用廃熱回収装置 図3
  • 特許-車両用廃熱回収装置 図4
  • 特許-車両用廃熱回収装置 図5
  • 特許-車両用廃熱回収装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】車両用廃熱回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 23/06 20060101AFI20220412BHJP
   F02G 5/00 20060101ALI20220412BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F01K23/06 P
F02G5/00 B
F01P3/20 G
F01P3/20 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017254254
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019120164
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎二
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-204204(JP,A)
【文献】特開2011-085025(JP,A)
【文献】特開2005-329843(JP,A)
【文献】特開2009-167994(JP,A)
【文献】特開2014-238007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/06
F02G 5/00
F01P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの廃熱を利用して作動流体を加熱する加熱器と、前記加熱器を経由した作動流体を膨張させて動力を発生する膨張機と、前記膨張機を経由した作動流体を凝縮させるランキン用凝縮器と、前記ランキン用凝縮器を経由した作動流体を前記加熱器へ送出する作動流体ポンプを順次配設したランキンサイクル回路を有するランキンサイクルシステムと、
前記加熱器とエンジンとを経由して冷却水がポンプを介して循環するエンジン冷却水回路を有するエンジン冷却水システムと、
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を放熱する熱交換器と、冷媒を減圧する減圧装置と、減圧された冷媒を加熱する蒸発器を順次配設した冷凍サイクル回路を有する冷凍サイクルシステムとを備え、
前記熱交換器は、前記エンジン冷却水回路を流れる冷却水と前記冷凍サイクル回路を流れる冷媒との熱交換を行う熱交換器であって、前記エンジン冷却水回路における前記加熱器と前記エンジンとの間に配設したことを特徴とする車両用廃熱回収システム。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記エンジン冷却水回路における前記加熱器の下流側に配設したことを特徴とする請求項1に記載の車両用廃熱回収システム。
【請求項3】
前記冷凍サイクルシステムは、前記圧縮機で圧縮された冷媒を外気と熱交換させる放熱器を前記熱交換器と前記減圧装置との間に配設したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用廃熱回収システム
【請求項4】
前記冷凍サイクル回路には、前記圧縮機と前記熱交換器との間と前記熱交換器と前記減圧装置との間とを接続して前記熱交換器をバイパスするバイパス路と、冷媒の流れを前記熱交換器側または前記パイパス路側に切換える切換装置とが配設されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用廃熱回収システム。
【請求項5】
前記切換装置は、前記バイパス路の接続部に設けられた切換弁である請求項4に記載の車両用廃熱回収システム。
【請求項6】
前記冷凍サイクル回路における前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が、前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度より高い場合に、前記切換装置は前記熱交換器側に冷媒を流し、
前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が、前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度以下の場合に、前記切換装置は前記バイパス路側に冷媒を流すように制御されることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の車両用廃熱回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体を循環させる冷媒ポンプと、前記冷媒ポンプによって送られてきた作動流体を車両のエンジンの廃熱によって加熱する加熱器と、前記加熱器によって加熱されて気化した作動流体を膨張させて出力を発生する膨張機と、前記膨張機によって膨張された作動流体を凝縮させるランキン用凝縮器とを有するランキンサイクルを備えた車両用廃熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に開示されエンジンの廃熱を利用してエネルギーを生成する廃熱回生システムが知られている。このエンジンの廃熱を利用する廃熱回生システムは、 冷凍サイクルの廃熱をランキンサイクルに利用するため、内燃機関が発生する熱を冷却水により冷却する内燃機関冷却システムと、冷媒を圧縮するコンプレッサと、前記コンプレッサにより圧縮された高温高圧の冷媒を凝縮させて液化する熱交換器と、前記熱交換器によって液化した冷媒を膨張させることにより気化させる膨張弁と、前記気化された冷媒により空気を冷却するエバポレータと、前記コンプレッサによって圧縮された冷媒とランキンサイクルシステムの媒体とで熱交換を行う熱交換器と、を備える冷凍サイクルシステムと、前記冷却水の熱によって媒体を気化させる蒸発器と、前記気化された媒体によりエネルギーを発生させる膨張器と、前記気化された媒体を凝縮して液化させる凝縮器と、前記液化された媒体を前記熱交換器へと送るポンプと、を備えるランキンサイクルシステムとを備えた廃熱回生システムである。
【0003】
また、特許文献2には、特許文献1と同様に、エンジンの廃熱を利用してエネルギーを生成する廃熱回生システムであって、冷凍サイクルの廃熱をランキンサイクルに利用するため、冷凍サイクルの吐出冷媒とランキンサイクルの作動流体とを熱交換させるエアコン熱交換器(第一熱交換器)と、ランキンサイクルにおける前記熱交換器の下流側の作動流体と膨張機下流熱側の作動流体とを熱交換させる内部熱交換器と、エンジンの廃熱を利用して作動流体を加熱するボイラを設けたランキンサイクルを備えた廃熱回生システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、特許文献1と同様に、エンジン廃熱を利用してエネルギーを生成する廃熱回収システムであって、冷凍サイクルの廃熱を利用するため、冷凍サイクルの吐出冷媒とランキンサイクルの作動流体とを熱交換させる熱交換器と、エンジンの廃熱を利用して作動流体を加熱するボイラを設けたランキンサイクルと、前記熱交換器の下流側にコンデンサを設けた冷凍サイクルとを備えた廃熱回収システムが開示されている。
【0005】
【文献】特開2009-204204号
【文献】特開2011-85025号
【文献】特開2005-329843号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術の対応は、エンジンの廃熱及び冷凍サイクルの廃熱を利用してエネルギーを回収するランキンシステムであるが、これらのランキンシステムの運転は、エンジンの廃熱を利用する、すなわち、エンジンから熱を回収して運転するため、冬の時期などのような外気が寒い状況においてエンジンを始動させる場合には、エンジンが暖まりにくいことからランキンシステムをすみやかに運転させることができないという問題があった。 また、同様に、冬の時期などのような外気が寒い状況において、エンジンが十分に暖気されてからランキンシステムを運転させると、ランキンシステムがエンジン冷却水を介してエンジンの熱を回収することから、車両室内空間を除湿暖房させる場合には、暖房に用いるエンジン冷却水の温度が十分に上がらず暖房能力が不足してしまうという問題もあり、従来技術のランキンシステムを備えた廃熱回収システムにおいては、冬の時期におけるエンジンの暖気、および、室内暖房について、十分に考慮されているとは言えなかった。
【0007】
本発明は、上記の従来技術の課題を解決するものであり、冬の時期などのような外気が寒い状況においても、エンジンの暖気を速やかに行うことができると共に、エンジンの暖気後にランキンシステムを運転させてランキンシステムでエンジン冷却水の熱を回収しても、冷凍サイクルからの廃熱をエンジン冷却水へ供給することにより、車両室内空間を除湿暖房させる場合に暖房能力の不足を補えることができる、車両用廃熱回収システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンジンの廃熱を利用して作動流体を加熱する加熱器と、前記加熱器を経由した作動流体を膨張させて動力を発生する膨張機と、前記膨張機を経由した作動流体を凝縮させるランキン用凝縮器と、前記ランキン用凝縮器を経由した作動流体を前記加熱器へ送出する作動流体ポンプを順次配設したランキンサイクル回路を有するランキンサイクルシステムと、前記加熱器とエンジンとを経由して冷却水がポンプを介して循環するエンジン冷却水回路を有するエンジン冷却水システムと、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を放熱する熱交換器と、冷媒を減圧する減圧装置と、減圧された冷媒を加熱する蒸発器を順次配設した冷凍サイクル回路を有する冷凍サイクルシステムとを備え、前記熱交換器は、前記エンジン冷却水回路を流れる冷却水と前記冷凍サイクル回路を流れる冷媒との熱交換を行う熱交換器であって、前記エンジン冷却水回路における前記加熱器と前記エンジンとの間に配設した車両用廃熱回収システムである。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記熱交換器は、前記エンジン冷却水回路における前記加熱器の下流側に配設した車両用廃熱回収システムである。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記冷凍サイクルシステムは、前記圧縮機で圧縮された冷媒を外気と熱交換させる放熱器を前記熱交換器と前記減圧装置との間に配設した車両用廃熱回収システムである。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、前記冷凍サイクル回路には、前記圧縮機と前記熱交換器との間と前記熱交換器と前記減圧装置との間とを接続して前記熱交換器をバイパスするバイパス路と、冷媒の流れを前記熱交換器側または前記パイパス路側に切換える切換装置とが配設されている車両用廃熱回収システムである。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の発明において、前記切換装置は、前記バイパス路の接続部に設けられた切換弁である車両用廃熱回収システムである。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項4または5のいずれかに記載の発明において、前記冷凍サイクル回路における前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が、前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度より高い場合に、前記切換装置は前記熱交換器側に冷媒を流し、前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が、前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度以下の場合に、前記切換装置は前記バイパス路側に冷媒を流すように制御される車両用廃熱回収システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を放熱する熱交換器と、前記放熱器で外気と熱交換された後の冷媒を減圧する減圧装置と、減圧された冷媒を加熱する蒸発器を順次配設した冷凍サイクル回路を有する冷凍サイクルシステムとを備え、前記熱交換器は、前記エンジン冷却水回路を流れる冷却水と前記冷凍サイクル回路を流れる冷媒との熱交換を行う熱交換器であって、前記エンジン冷却水回路における前記加熱器と前記エンジンとの間に配設したので、冷凍サイクルシステムにおける圧縮機の運転により圧縮された冷媒の熱をエンジン冷却水回路を流れる冷却水に供給することができるため、冬の時期などのような外気が寒い状況において、エンジンの暖気を速やかに行うことができる。また、エンジンの暖気後にランキンサイクルシステムを運転させてエンジン冷却水回路を流れる冷却水の熱を回収しても、冷凍サイクルシステムにおける圧縮機の運転により圧縮された冷媒の熱をエンジン冷却水回路を流れる冷却水へ供給することにより、車両室内空間を除湿暖房させる場合に暖房能力の不足を補えることができる、という利点がある。
【0015】
また、前記熱交換器は、前記エンジン冷却水回路における前記加熱器の下流側に配設したため、前記加熱器を通過することによって温度が下がったエンジン冷却水と高温の冷媒との温度差を確保して熱交換することができるので、熱交換効率が良くなるという利点がある。
【0016】
また、前記冷凍サイクルシステムは、前記圧縮機で圧縮された冷媒を外気と熱交換させる放熱器を前記熱交換器と前記減圧装置との間に配設したので、前記熱交換器で放熱しきれない冷媒の熱を放熱器で放熱できるため、冷凍回路の効率が良くなるという利点がある。
【0017】
前記冷凍サイクル回路には、前記圧縮機と前記熱交換器との間と前記熱交換器と前記減圧装置との間とを接続して前記熱交換器をバイパスするバイパス路と、冷媒の流れを前記熱交換器側または前記パイパス路側に切換える切換装置とが配設されているので、例えば、前記冷凍サイクル回路における前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度以下の場合に、前記熱交器で熱交換してしまうことによって、エンジンの暖気が妨げられたり、冷凍回路システムの効率が下がってしまうことを抑制できるという利点がある。
【0018】
また、前記切換装置は、前記バイパス路の接続部に設けられた切換弁であるため、冷凍サイクル回路に切換弁を接続するのが容易であるという利点がある。
【0019】
さらに、前記冷凍サイクル回路における前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が、前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度より高い場合に、前記切換装置は前記熱交換器側に冷媒を流し、前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が、前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度以下の場合に、前記切換装置は前記バイパス路側に冷媒を流すように制御されるため、例えば、冷凍サイクル回路における前記圧縮機の吐出側の吐出冷媒温度が、前記エンジン冷却水回路における前記熱交換器の入口側の冷却水温度以下の場合に前記熱交器で熱交換してしまうことによって、エンジンの暖気が妨げられたり、冷凍回路の効率が下がってしまうことを確実に抑制することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施例である車両用廃熱回収システムの構成図
図2】第2実施例である車両用廃熱回収システムにおいての構成図
図3】第2実施例である車両用廃熱回収システムにおける冷媒の流れ(熱交換器側)を示す構成図
図4】第2実施例である車両用廃熱回収システムにおける冷媒の流れ(バイパス路側)を示す構成図
図5】第1実施例と第2実施例である車両用廃熱回収システムの制御のフローチャート図
図6】第2実施例の切換弁のフローチャート図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図1図5に基づいて本発明の第1実施例を説明する。
図1は、本発明の実施例である車両用廃熱回収システム1の構成を示す図であり、本発明の廃熱回収システムは車両のエンジンから廃熱を回収する車両用廃熱回収システム1である。車両用廃熱回収システム1は、ランキンサイクルシステム2とエンジン冷却水システム3と冷凍サイクルシステム4とを備え、また、車両用廃熱回収システム1は制御装置5を有している。制御装置5はランキンサイクルシステム2、冷凍サイクルシステム4の各システムの制御を行っている。
【0022】
ランキンサイクルシステム2は、エンジンの廃熱を回収して、電力、または、エンジンをアシストする回転駆動力に変換するシステムであり、循環する作動流体を後述するエンジン23の冷却水を介して加熱する加熱器11と、加熱器11を経由した作動流体を膨張させて動力を発生する膨張機12と、膨張機12を経由した作動流体を凝縮させるランキン用凝縮器13と、ランキン用凝縮器13を経由した作動流体を加熱器11へ送出する作動流体ポンプ14を順次配設したランキンサイクル回路10を備えている。
【0023】
エンジン冷却水システム3は、車両に搭載された内燃機関であるエンジン23を冷却するためのシステムであり、エンジン23を冷却する冷却水が通過するエンジン23、ポンプ24、サーモスタット25、ラジエータ26を順次配設した循環路21と、循環路21の中間に配設された分岐通路22を備えたエンジン冷却水回路20を有し、分岐通路22はポンプ24とラジエータ26との間であってサーモスタット25が配設されている分岐点29で循環路21から分岐し、再び、ラジエータ26とエンジン3の間の分岐点29で循環路21に合流する。
【0024】
ポンプ24はエンジン23を通過した冷却水を圧送し、サーモスタット25はポンプ24から圧送された冷却水を冷却水の温度によりラジエータ側または分岐通路側のいずれかへ流れ込む冷却水の量を調整する。サーモスタット25を通過してラジエータ側へ流れ込んだ冷却水はラジエータ26を通過することにより、車両の走行による走行風や図示しないファンによる送風と熱交換して冷却された後にエンジン23に送られ、サーモスタット25を通過して分岐通路側へ流れ込んだ冷却水はラジエータ26を通過することなく分岐点29を介してエンジンに送られる。例えば、サーモスタット25は、冷却水の温度が所定の第1設定温度(例えば90℃)未満の場合は冷却水をラジエータ側へ流すことなく分岐通路側へ流し、冷却水の温度が所定の第1設定温度以上の場合は冷却水を分岐通路側へ流すことなくラジエータ側へ流し、冷却水の温度に応じて、ラジエータ側へ流す冷却水の量と分岐通路側流す冷却水の量を調整する。尚、ポンプ24はエンジン23によって駆動するが、電動モータなどの他の駆動手段によって駆動されても構わない。
【0025】
従って、エンジン始動当初などのエンジン23が十分に暖まっていない状態では、エンジン23を通過する冷却水も高温ではないので、冷却水はラジエータ側へ流れることなく分岐通路22を流れて再びエンジン23へ流れ込む。一方、車両が登坂中であってエンジン23が高回転で回転するような状態、夏場などでエンジン23が始動してから十分に時間が経っているような状態ではエンジン23が高温状態になっているため、冷却水も高温になっていることから、冷却水はラジエータ側へ流れてラジエータ26で冷却された後、再びエンジン23へ流れ込みエンジン23を冷却する。
【0026】
また、エンジン冷却水回路システム3は車室内空間を温めるための熱交換であるヒータコア28を有している。ヒータコア28は、エンジン23の廃熱により暖まった冷却水とヒータコア28が設置された空間の空気と熱交換することによって車室内空間の暖房を行う熱交換器であって、ヒータコア28はエンジン冷却水システム3の循環路21上であってエンジン23と分岐通路22の間に配設されている。本実施例では、ヒータコア28はエンジン冷却水システム3の循環路21上に配設されているが、循環路21から分岐して再び循環路21に合流する通路上にヒータコアを配設しても構わない。尚、その場合は、循環路21から分岐する分岐点に切換弁を設けて冷却水をヒータコア側に流したり、ヒータコア側に流さず循環路側に流す選択を行う制御を行う。
【0027】
ランキンサイクル回路10に配設されている加熱器11はエンジン冷却水回路20の分岐通路22にも配設されている加熱器11であり、ランキンサイクル回路10を循環する作動流体と、エンジン冷却水回路20を循環する冷却水との熱交換を行う加熱器11である。この加熱器11によって、ランキンサイクルシステム2は、エンジン冷却水回路20を循環する冷却水を介してエンジン廃熱を回収し、電力、または、エンジン23をアシストする回転駆動力に変換する。また、ランキンサイクル回路10に配設されている作動流体ポンプ14は加熱器11を通過する直前の冷却水の温度が所定の第2設定温度(例えば85℃)以上になると駆動し、加熱器11を通過する直前の冷却水の温度が所定の第2設定温度未満になると停止するように制御される。
【0028】
冷凍サイクルシステム4は、車両に搭載された空調システムに用いられ、エンジン23の駆動により、または、電動モータにより駆動して冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮機31で圧縮された冷媒を外気と熱交換させることにより凝縮させる凝縮器としての放熱器32と、放熱器32で外気と熱交換して凝縮した後の冷媒を減圧する減圧装置としての膨張弁33と、車室内の空気を冷却するために膨張弁33で減圧された冷媒と車室内の空気とを熱交換する蒸発器34を順次配設した冷凍サイクル回路30とを備えている。尚、本実施例では凝縮器としての放熱器32を使用しているが、例えば、冷媒が二酸化炭素の場合には二酸化炭素冷媒が凝縮しないため、凝縮器としての放熱器32ではなく二酸化炭素冷媒を放熱させる放熱器であっても構わない。
【0029】
冷凍サイクルシステム4の稼働は車両利用者が図示しない空調システムのスイッチをオンすることにより行われ、圧縮機31がエンジン23の駆動によって動作する圧縮機31の場合は、例えば、エンジン23と圧縮機31の間に配置された図示しない電磁クラッチが空調システムのスイッチのオンによってエンジン23の駆動を圧縮機31に伝え圧縮機31が駆動する。圧縮機31が電動モータによって動作する圧縮機31の場合は、空調システムのスイッチのオンによって電動モータが動作して圧縮機31が駆動する。
【0030】
さらに、車両用廃熱回収システム1は、冷凍サイクル回路30を流れる冷媒とエンジン冷却水回路20を流れる冷却水との熱交換を行う熱交換器27を有している。この熱交換器27は冷凍サイクル回路30の圧縮機31と放熱器32との間であって、かつ、エンジン冷却水回路20の分岐通路22の加熱器下流側に配設されており、圧縮機31から吐出されて高温になった冷媒の熱が熱交換器27を介して冷却水に移動する。
【0031】
尚、本実施例の冷凍サイクルシステム4においては、冷凍サイクル回路30を流れる冷媒とエンジン冷却水回路20を流れる冷却水との熱交換を行う熱交換器27と、圧縮機31で圧縮された冷媒を外気と熱交換させることにより凝縮させる凝縮器としての放熱器32とが冷凍サイクル回路30に配設されているが、熱交換器27が配設されていれば放熱器32は必ずしも配設されていなくてもよい。
【0032】
次に本実施例の動作を説明する。エンジン始動によりポンプ24が駆動し冷却水がエンジン冷却水回路20を循環する。エンジン始動当初は冷却水の温度が低く、サーモスタット25の直前を通過する冷却水の温度が第1設定温度(90℃)未満のため、冷却水はサーモスタット25によりラジエータ側ではなく分岐通路側に流入して、加熱器11と熱交換器を27通過した後、エンジン23に再度流れ込んでエンジン冷却水回路20を循環する。エンジン始動時が冬の時期などのような外気が寒い状況においては冷却水の温度が夏の時期に比べて低いことから、低い温度の冷却水によってエンジン23が暖まらずエンジン23の暖気に時間がかかることになる。また、車室内空間を温めるためのヒータコア28にも低い温度の冷却水が流れるため車室内空間を温めることができない。
【0033】
そこで、エンジン23の暖気に時間がかかるので運転者が暖気を促進したいと判断した場合に空調システムのスイッチをオンにする。空調システムのスイッチがオンにされると、圧縮機31が駆動し、圧縮機31から吐出された高温冷媒が熱交換器27に流れ込み、高温冷媒がまだ温度の低い冷却水と熱交換して冷却水の温度を上昇させ、熱交換器27により温度上昇した冷却水はエンジン23に再び流れ込みエンジン23の暖気が促進させる。また、熱交換器27により温度上昇した冷却水はヒータコア28にも流れ込み車室内空間の暖房を促進する。
【0034】
エンジン23の暖気が促進されて冷却水の温度が上昇し、加熱器11を通過する直前の冷却水の温度が第2設定温度(85℃)に達すると、作動流体ポンプ14が駆動して作動流体がランキンサイクル回路10を循環してランキンサイクルシステム2が稼働し、膨張機21が駆動して動力を発生する。ここで、ランキンサイクルシステム2が稼働すると加熱器11において冷却水の熱が作動流体に移動することから加熱器通過後の冷却水の温度は下がる。しかし、本実施例ではエンジン冷却水回路20の分岐通路22の加熱器下流側に熱交換器27が配設されているので、加熱器通過後の温度の下がった冷却水は熱交換器27で高温の吐出冷媒から熱を回収するため、ランキンサイクルシステム2が稼働する場合であってもエンジンの暖気と冬季における車室内空間の暖房を促進させることができる。
【0035】
尚、膨張機12が回収する動力(ランキン出力)が不十分である場合、例えば、膨張機12で回収した動力が電力に変換される場合はその電力が所定値に達しない場合、または、膨張機12の上流側と下流側の圧力差が所定値に達しない場合は、制御装置5はランキン出力が不十分であるとして作動流体ポンプ14の駆動を停止する。
【0036】
本発明の第2実施例を図2図5図6に基づいて説明する。第1実施例と第2実施例の相違は、第2実施例では冷凍サイクル回路30の圧縮機31と放熱器32との間に熱交換器27をバイパスするバイパス路35を設けているが、第1実施例ではバイパス路35が無い点であり、その他の構成は第1実施例と同じである。尚、第2実施例において第1実施例と同一の符号は同一の構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0037】
図2において、冷凍サイクルシステム4は、第1実施例の冷凍サイクル回路4と共通する冷凍サイクル回路30の圧縮機31と熱交換器27との間と、熱交換器27と放熱器32との間とに接続して熱交換器27をバイパスするバイパス路35と、圧縮機31から吐出された冷媒の流れを熱交換器側またはパイパス路側に切換える切換装置としての切換弁36とを有しており、切換弁36はバイパス路35の圧縮機側接続部(圧縮機と熱交換器の間の通路との接続部)に配設されている。尚、本実施例では切換弁36はバイパス路35の圧縮機側接続部に配設されているが、切換弁36はバイパス路35の放熱器側接続部(熱交換器と放熱器の間の通路との接続部)に配設されていても構わない。また、本実施例では切換装置は切換弁36であるが、切換装置は、例えば、バイパス路上と、バイパスされる熱交換器27が配設された冷凍サイクル回路上とのそれぞれに開閉弁を設けて、圧縮機31から吐出された冷媒の流れを熱交換器側またはパイパス路側に切換える形式でも構わない。
【0038】
また、尚、本実施例の冷凍サイクルシステム4においては、冷凍サイクル回路30を流れる冷媒とエンジン冷却水回路20を流れる冷却水との熱交換を行う熱交換器27と、圧縮機31で圧縮された冷媒を外気と熱交換させることにより凝縮させる凝縮器としての放熱器32とが冷凍サイクル回路30に配設されているが、熱交換器27が配設されていれば放熱器32は必ずしも配設されていなくてもよい。
【0039】
また、尚、本実施例の冷凍サイクルシステム4においては、バイパス路35は、圧縮機31と熱交換器27との間と、熱交換器27と放熱器32との間とに接続して熱交換器27をバイパスするが、バイパス路35は、圧縮機31と熱交換器27との間と、膨張弁33と放熱器32との間とに接続して、熱交換器27と放熱器32とをバイパスする熱交換器であっても構わない。すなわち、熱交換器27をバイパスするバイパス路であればよい。
【0040】
また、本実施例の冷凍サイクルシステム4において、放熱器32が配設されていない場合においても同様に、熱交換器27をバイパスするバイパス路であれば、圧縮機31と熱交換器27との間と、膨張弁33と熱交換器27との間とを接続するバイパス路でも構わない。
【0041】
切換弁36の動作は制御装置5により次のように行われる。冷凍サイクル回路30の圧縮機31と切換弁36との間に設けられた図示しない温度センサーにより吐出冷媒の温度T1と、エンジン冷却水回路20の加熱器11と熱交器27の間に設けられた図示しない温度センサーにより加熱器通過後の冷却水の温度T2が測定され、吐出冷媒の温度T1が冷却水の温度T2を超えた場合に、制御装置5は切換弁36を熱交換器側に切換えて冷媒を熱交換器27に流し、吐出冷媒の温度T1が冷却水の温度T2以下の場合に、制御装置5は切換弁36をバイパス路側に切換えて冷媒をバイパス路35に流す。
【0042】
次に本実施例の動作を説明する。エンジン始動によりポンプ24が駆動し冷却水がエンジン冷却水回路20を循環する。エンジン始動当初は冷却水の温度が低く、サーモスタット25の直前を通過する冷却水の第1設定温度(90℃)未満のため、冷却水はサーモスタット25によりラジエータ側ではなく分岐通路側に流入して、加熱器11と熱交換器27を通過した後、エンジン23に再度流れ込んでエンジン冷却水回路20を循環する。エンジン始動時が冬の時期などのような外気が寒い状況においては冷却水の温度が夏の時期に比べて低いことから、低い温度の冷却水によってエンジン23が暖まらずエンジン23の暖気に時間がかかることになる。また、車室内空間を温めるためのヒータコア28にも低い温度の冷却水が流れるため車室内空間を温めることができない。
【0043】
そこで、エンジン23の暖気に時間がかかるので運転者が暖気を促進したいと判断した場合に空調システムのスイッチをオンにする。空調システムのスイッチがオンにされると、圧縮機31が駆動し、圧縮機31から吐出された高温冷媒が冷凍サイクル回路30を循環する。エンジン始動時であるため加熱器通過後の冷却水温度T2が、吐出冷媒の温度T1より低い状態にあることから、吐出冷媒の温度T1が加熱器通過後の冷却水温度T2を超えているので切換弁36は吐出冷媒を熱交換器側に流れるように切換り、高温の吐出冷媒がまだ温度の低い冷却水と熱交換して冷却水の温度を上昇させ、熱交換器27により温度上昇した冷却水はエンジン23に再び流れ込みエンジン23の暖気が促進させる。また、熱交換器27により温度上昇した冷却水はヒータコア28にも流れ込み車室内空間の暖房を促進する。
【0044】
冬場は室内空間の温度は夏場に比べて低いので、冷凍サイクルシステム4にとっては低負荷の運転となるため、熱交換器27により冷却水の温度が上昇してエンジン23の暖気、車室内空間の暖房が促進されてくると加熱器通過後の冷却水温度T2が上昇してきて吐出冷媒の温度T1が冷却水温度T2以下になり、切換弁36は吐出冷媒がバイパス通路側に流れるように切換る。吐出冷媒がバイパス通路側に流れて熱交換器27には流れなくなるので吐出冷媒の温度が熱交換器27によって上昇してしまうことが防止できるので冷凍サイクルシステム4の効率が下がってしまうことを抑制できる効果がある。
【0045】
本発明の第1実施例、第2実施例では、エンジン冷却水回路20における熱交換器27は加熱器11の下流側に配設されているため、エンジン冷却水回路20における熱交換器27と加熱器11が逆に配設されている場合に比べて、加熱器11を通過して温度の下がった冷却水と高温の吐出冷媒との温度差が確保できるので、熱交換器27における熱交換効率が良くなるという効果を有する。
【符号の説明】
【0046】
1 車両用廃熱回収システム
2 ランキンサイクルシステム
3 エンジン冷却水システム
4 冷凍サイクルシステム
5 制御装置
10 ランキンサイクル回路
11 加熱器
12 膨張機
13 ランキン用凝縮器
14 作動流体ポンプ
20 エンジン冷却水回路
21 循環路
22 分岐通路
23 エンジン
24 ポンプ
25 サーモスタット
26 ラジエータ
27 熱交換器
28 ヒータコア
29 分岐点
30 冷凍サイクル回路
31 圧縮機
32 放熱器
33 膨張弁
34 蒸発器
35 バイパス路
36 切換弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6