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特許7057182電動プレス、ロードセル選択方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】電動プレス、ロードセル選択方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/28 20060101AFI20220412BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20220412BHJP
   B30B 1/18 20060101ALI20220412BHJP
   G01L 1/22 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B30B15/28 Q
B30B15/00 B
B30B1/18 B
G01L1/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018059540
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171393
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】野口 忠弘
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-260124(JP,A)
【文献】特開2004-148345(JP,A)
【文献】特開平03-026930(JP,A)
【文献】特開昭62-038328(JP,A)
【文献】米国特許第04491027(US,A)
【文献】特公平6-38055(JP,B2)
【文献】特公平7-69210(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/28
B30B 15/00
B30B 1/18
G01L 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、
前記ラムの作動時に前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、
前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御し、
前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御し、
前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御することを特徴とする電動プレス。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定の条件を所定回数連続して、満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の電動プレス。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの測定荷重値の変化率が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電動プレス。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の条件として、前記第2ロードセルの測定荷重値と前記第1ロードセルの測定荷重値との差分値が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電動プレス。
【請求項5】
駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、前記ラムの作動時に前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、前記駆動部を制御する制御部と、を備えた電動プレスにおいて、前記ワークに付与される荷重値を測定するロードセルを選択するロードセル選択方法であって、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第1の工程と、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第2の工程と、
前記制御部が、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第3の工程と、
を備えたことを特徴とするロードセル選択方法。
【請求項6】
駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、前記ラムの作動時に前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、前記駆動部を制御する制御部と、を備えた電動プレスにおいて、前記ワークに付与される荷重値を測定するロードセルを選択するロードセル選択方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第1の工程と、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第2の工程と、
前記制御部が、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第3の工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動プレス、ロードセル選択方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ロードセルの定格荷重値の10%~100%の範囲までは、精度よく荷重を検出することが可能である。つまり、ロードセルに付加された実際の荷重値と、ロードセルが検出した荷重値とがほぼ合致する(実際に付加した荷重値と検出した荷重値とが一対一で増加するため、双方の値をx軸、y軸としたグラフでは直線性を有する)。
【0003】
一方、0%~10%の範囲までは、その精度が低下してしまい、実際の荷重値に合致した荷重値を検出することが困難となる。つまり、0%~10%の範囲では、検出精度の低下により、実際の荷重値と検出した荷重値とは、グラフ上は直線性を有しない。このことから、1つのロードセルのみでは、低荷重から高荷重までにかけて全体的に精度よく荷重値を検出することができないという問題があった。
【0004】
これに対し、低荷重ロードセルと高荷重ロードセルとを用いて、全範囲で精度良く荷重値を検出する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、荷重値の検出に際して、同時に、同一の荷重を両方のロードセルに加え、双方ロードセルの荷重値から真値に近いと思われる値を採用して、低荷重から高荷重までの荷重値を精度よく検出することを意図したものである。
【0005】
ここで、真値に近いと思われる値の判断について、特許文献1には、双方のロードセルの荷重値のばらつき(ちらつき)を抑え、安定化したデータに基づいて、予め定められた切換点で低荷重ロードセルの検出データから高荷重ロードセルの検出データへ切換える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平6-38055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、データの切換点は事前に定められている。また、この事前に定められる切換点として、具体的に、どのポイントが好ましいかについては、一切、明示されていない。
【0008】
これについて、上記に基づき、仮に、高荷重ロードセルの定格荷重値の10%(低荷重ロードセルの100%)を、その切換点とした場合、確かに、概ねの切換点は予め想定され、その切換点で切換えを行うことにより、低荷重から高荷重までにおいて検出される荷重値は、高精度なものとなることを期待できる可能性がある。
【0009】
しかしながら、ロードセルには、個々に個体差を有するため、使用するロードセルによっては、切換点が若干ずれることが容易に想像できる。また、いずれかあるいは双方のロードセルに不具合等が生じた場合であっても、予め定められた切換点でのみしか切換えることができないことになると、真値からのずれが生じる結果となる。
【0010】
更に、真値に近いであろうという希望的な観測で、事前に想定された切換点で切換えを行っても、切換えられる前のロードセルにおいて検出された荷重値が、切換えた後のロードセルにおいて検出された荷重値よりも真値に近い場合も想定される。これは、定格荷重値とされている値を超えても、しばらく(120%程)は、精度よく荷重値を検出することが可能であるという事実に基づく。
【0011】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、個々のロードセルに、個体差や不具合等があっても、より真値に近い荷重値を検出することができる電動プレス、ロードセル選択方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、前記ラムの作動時に前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御し、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御することを特徴とする電動プレスを提案している。
【0013】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記所定の条件を所定回数連続して満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する電動プレスを提案している。
【0014】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの測定荷重値の変化率が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する電動プレスを提案している。
【0015】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する電動プレスを提案している。
【0016】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記制御部は、前記所定の条件として、前記第2ロードセルの測定荷重値と前記第1ロードセルの測定荷重値との差分値が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する電動プレスを提案している。
【0017】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、前記ラムの作動時に前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、前記駆動部を制御する制御部と、を備えた電動プレスにおいて、前記ワークに付与される荷重値を測定するロードセルを選択するロードセル選択方法であって、前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第1の工程と、前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第2の工程と、を備えたことを特徴とするロードセル選択方法を提案している。
【0018】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記制御部は、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの測定荷重値の変化率が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御するロードセル選択方法を提案している。
【0019】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御するロードセル選択方法を提案している。
【0020】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記第2ロードセルの測定荷重値と前記第1ロードセルの測定荷重値との差異が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御するロードセル選択方法を提案している。
【0021】
形態10;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、前記ラムの作動時に前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、前記駆動部を制御する制御部と、を備えた電動プレスにおいて、前記ワークに付与される荷重値を測定するロードセルを選択するロードセル選択方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第1の工程と、前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第2の工程と、をコンピュータに実行させるためのプログラムを提案している。
【0022】
形態11;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の工程において、前記制御部は、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの測定荷重値の変化率が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御するプログラムを提案している。
【0023】
形態12;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御するプログラムを提案している。
【0024】
形態13;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記第2ロードセルの測定荷重値と前記第1ロードセルの測定荷重値との差異が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御するプログラムを提案している。
【発明の効果】
【0025】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、個々のロードセルに、個体差や不具合等があっても、より真値に近い荷重値を検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動プレスの構造を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電動プレスの電気的構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る中央演算処理装置の電気的構成を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る第1ロードセルおよび第2ロードセルの特性を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る電動プレスの処理を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る電動プレスにおける判定要素の関係を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る電動プレスの電気的構成を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る中央演算処理装置の電気的構成を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る電動プレスの処理を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る電動プレスにおける判定要素の関係を示す図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る電動プレスの電気的構成を示す図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る中央演算処理装置の電気的構成を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る電動プレスの処理を示す図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る電動プレスにおける判定要素の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、図1から図6を用いて説明する。
【0028】
<電動プレスの構造>
図1を用いて、本実施形態に係る電動プレス100の構造を説明する。
【0029】
本実施形態に係る電動プレス100は、図1に示すように、昇降動作により、ワークW(加工対象)に対して所望の圧力を与えるプレス用のラム1と、該ラム1に昇降動作(直線運動)を与えるボール螺子2とからなり、これらが、プレス本体3内に設けられている。
また、駆動源となるACサーボモータ等のサーボモータ4もプレス本体3に接続されたケーシング5の頭部枠体内に収納されている。そして、サーボモータ4の駆動は、プーリ、ベルトを介してボール螺子2に伝達される。
【0030】
ラム1は、図1に示すように、筒状体に形成されている。具体的には、円筒状に形成された筒状本体1aの内部に軸方向に沿って中空状部が形成されている。そして、その中空状部の内部にボール螺子2の螺子軸2aが挿入可能となっている。
また、ラム1の筒状本体1aの軸長方向端部箇所には、ボール螺子2のナット体2bが固着されている。
【0031】
筒状本体1aの先端部には、第1ロードセル9aが装着自在となるように構成されている。実際には、第1ロードセル9aがワークWに当接して、適宜、圧力を与えるものである。
また、第1ロードセル9aは、歪ゲージで構成されている。この歪ゲージによって、ワークWに与える圧力を検出することができるようになっている。
また、第1ロードセル9aと対向して、第2ロードセル9bが設けられている。
第2ロードセル9bは、第1ロードセル9aよりも定格荷重が低いロードセルである。
第2ロードセル9bの加圧方向と反対側には、第2ロードセル9bを定格以上の高荷重から保護するためのストッパー10が設けられている。
そして、第1ロードセル9aと、第2ロードセル9bとは、ともに、ワークWに加えられる荷重値と同じ荷重値が加えられるように、構成されている。
なお、第1ロードセル9aと、第2ロードセル9bとは、ともに、図4に示すように、定格荷重の10%までは、荷重位置と荷重値との関係において非直線性の特性をもち、定格荷重の10%以上では、荷重位置と荷重値との関係において直線性の特性を有している。
【0032】
筒状本体1aの外周側面を包むようにして筒状ガイド6が設けられている。筒状ガイド6は、ケーシング5内に固定されている。そして、この筒状ガイド6に沿ってラム1が昇降移動可能に構成されている。
【0033】
<電動プレスの電気的構成>
図2に示すように、本実施形態に係る電動プレス100は、サーボモータドライバー13と、エンコーダ14と、制御プログラム記憶部21と、表示部22と、操作部23と、一時記憶部24と、回路部27と、駆動指令パルス発生部28と、エンコーダ位置カウンタ29と、CPU(中央演算処理装置)30とから構成されている。
【0034】
制御プログラム記憶部21は、CPU(中央演算処理装置)30が電動プレス100全体の動作や処理を制御するための制御プログラムを記憶する。例えば、本実施形態においては、プレス作業に関するメインプログラムはもとより、後述する第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値データに基づく、荷重位置-荷重値データ取得におけるロードセル切換処理のためのプログラムや第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値データにおける荷重値の変化率算出プログラム、表示に関するプログラム等を記憶されている。
【0035】
表示部22は、各種情報を表示する表示装置である。本実施形態では、例えば、荷重位置-荷重値データ等の情報を表示する。
【0036】
操作部23は、閾値等のロードセルの切換処理に関する判定条件等を設定するためのタッチパネル、タクトスイッチ等で構成されている。
一時記憶部24は、一時的なデータを記憶する。本実施形態では、得られた荷重位置情報および荷重値等を記憶する。
【0037】
荷重検出部としての回路部27は、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bを構成する歪みゲージの抵抗変化に対する信号を増幅し、A/D変換処理によりアナログ信号をデジタル信号に変換した後に、CPU(中央演算処理装置)30へ出力する。
【0038】
駆動指令パルス発生部28は、CPU(中央演算処理装置)30からの指令に基づいて、所望の駆動指令パルスを発生し、CPU(中央演算処理装置)30を介して、発生させた駆動指令パルス信号をサーボモータドライバー13に出力する。そして、サーボモータドライバー13の制御によりサーボモータ4を駆動することにより、ラム1が上下に摺動する。
【0039】
エンコーダ14は、サーボモータ4の回転角度を検知するためのものであり、ラム1の位置を検出するために利用される。
また、エンコーダ14の情報は、フィードバック制御を行うために、サーボモータドライバー13に位置情報を与えている。また、エンコーダ14の位置情報は、エンコーダ位置カウンタ29を介して、CPU(中央演算処理装置)30において読み取ることができ、これによってラム1の移動量を検出する。
【0040】
CPU(中央演算処理装置)30は、制御プログラム記憶部21に格納された制御プログラムに従って、電動プレス100全体の動作を制御する。本実施形態においては、特に、荷重値の判定に関する制御を主として、実施する。
【0041】
<中央演算処理装置の電気的構成>
本実施形態に係る中央演算処理装置30は、図3に示すように、変化率算出部31と、判定基準値記憶部32と、判定部33と、荷重位置-荷重値データ出力部34と、制御部35と、から構成されている。
【0042】
変化率算出部31は、プレス荷重の変化に伴う第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率を求める。以下、変化率算出部31による具体的な第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率の算出処理について、図5を参照して説明する。なお、図5は、第1ロードセル9aにおける定格荷重の10%付近の特性を拡大して示している。
【0043】
図5において、X1、X2は、荷重位置を示している。Y11は、第1ロードセル9aにおける荷重位置X1での荷重値(%)を示している。Y12は、第1ロードセル9aにおける荷重位置X2での荷重値(%)を示している。Y21は、第2ロードセル9bにおける荷重位置X1での荷重値(%)を示している。Y22は、第2ロードセル9bにおける荷重位置X2での荷重値(%)を示している。これらのデータは、荷重位置と荷重値(%)とを紐づけて、一時記憶部24に記憶されている。
【0044】
変化率算出部31は、一時記憶部24から上記のデータを読み出して、以下の数1、数2に基づいて、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率を算出する。変化率算出部31が算出した第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率は、判定部33に出力される。
【0045】
【数1】
【0046】
【数2】
【0047】
判定基準値記憶部32は、判定部33の判定処理に用いられる判定基準値を記憶する。
判定部33は、変化率算出部31から入力した第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率と、判定基準値記憶部32から読み出した判定基準値とから、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重よりも大きい場合の駆動部の制御に用いる荷重位置-荷重値データを判定する。
【0048】
判定部33は、具体的には、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値特性がともに直線性を有する領域において、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値、すなわち、2点を結んだ線分の傾きの差分値が判定基準値の範囲内である場合には、第1ロードセル9aの測定荷重値を駆動部の制御に用いる荷重位置-荷重値データとして判定する。
一方で、判定部33は、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値が判定基準値の範囲内でない場合には、第2ロードセル9bの測定荷重値を駆動部の制御に用いる荷重位置-荷重値データとして判定する。
【0049】
なお、判定基準値としては、例えば、第1ロードセル9aと、第2ロードセル9bとの定格誤差から定めるようにしてもよい。具体的には、第1ロードセル9aと第2ロードセル9bとの定格誤差の最小値あるいは最大値同士を規定長で結んだ線分の変化率(傾き)を判定基準値の最小値とし、第1ロードセル9aの定格誤差の最小値と第2ロードセル9bとの定格誤差の最大値を規定長で結んだ線分の変化率(傾き)あるいは、第1ロードセル9aの定格誤差の最大値と第2ロードセル9bとの定格誤差の最小値を規定長で結んだ線分の変化率(傾き)を判定基準値の最大値とする。
また、判定基準値として、定格誤差以外にもロードセルの取付け公差、環境条件を考慮してもよい。
判定部33は、判定結果を荷重位置-荷重値データ出力部34に出力する。
【0050】
荷重位置-荷重値データ出力部34は、判定部33の判定結果に基づく、荷重位置-荷重値データを制御部35に出力する。制御部35は、荷重位置-荷重値データ出力部34を介して判定部33から入力した荷重位置-荷重値データに基づいて、サーボモータ4等の駆動状態を制御する。
【0051】
<電動プレスの処理>
以下、図6を用いて、本実施形態に係る電動プレス100の処理について説明する。
【0052】
まず、制御部35が、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重以下の場合には、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重位置-荷重値データに基づいてサーボモータ4等の駆動状態を制御する(ステップS101)。
【0053】
これは、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重以下の領域においては、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値特性が直線性を有しないため、第2ロードセル9bにおいて測定された位置-荷重値データを採用して、サーボモータ4等の駆動状態を制御するものである。
【0054】
また、制御部35は、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重よりも大きい場合には、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値と、第1ロードセルにおいて測定された荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、第1ロードセルにおいて測定された荷重位置-荷重値データに基づいてサーボモータ4等の駆動状態を制御する(ステップS102)。
【0055】
第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重よりも大きい領域においても、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bがともに、荷重位置-荷重値特性において直線性を有する領域が存在する。この領域において、上記のように、判定部33が、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値が判定基準値の範囲内であると判定した場合には、第1ロードセル9aの測定荷重値をサーボモータ4等の制御に用いる荷重位置-荷重値データとして判定する。この荷重位置-荷重値データは、荷重位置-荷重値データ出力部34を介して、制御部35に出力される。そして、制御部35は、荷重位置-荷重値データ出力部34を介して判定部33から入力した荷重位置-荷重値データに基づいて、サーボモータ4等の駆動状態を制御する。
【0056】
以上、説明したように、本実施形態によれば、判定部33は、具体的には、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値特性がともに直線性を有する領域において、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値、すなわち、2点を結んだ線分の傾きの差分値が判定基準値の範囲内である場合には、第1ロードセル9aの測定荷重値を駆動部の制御に用いる荷重位置-荷重値データとして判定する。
【0057】
一方で、判定部33は、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値が判定基準値の範囲内でない場合には、第2ロードセル9bの測定荷重値を駆動部の制御に用いる荷重位置-荷重値データとして判定する。
【0058】
つまり、判定部33は、判定領域等に基づいて、第1ロードセル9aと第2ロードセル9bとを単純に、切り替えるのではなく、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値特性が直線性を有する領域において、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値、すなわち、2点を結んだ線分の傾きの差分値が判定基準値の範囲内にあるのか否かにより、第1ロードセル9aあるいは第2ロードセル9bのいずれの測定荷重値を制御部35の制御要素とするのかを判定する。そのため、制御部35は、第1ロードセル9a、第2ロードセル9bの個々のロードセルに、個体差や不具合等があっても、より真値に近い荷重値を検出することができる。
【0059】
また、判定部33の判定基準値として、例えば、第1ロードセル9aと第2ロードセル9bとの定格誤差の最小値あるいは最大値同士を規定長で結んだ線分の変化率(傾き)を判定基準値の最小値とし、第1ロードセル9aの定格誤差の最小値と第2ロードセル9bとの定格誤差の最大値を規定長で結んだ線分の変化率(傾き)あるいは、第1ロードセル9aの定格誤差の最大値と第2ロードセル9bとの定格誤差の最小値を規定長で結んだ線分の変化率(傾き)を判定基準値の最大値とする。そのため、制御部35の制御要素として、確度の高い測定荷重値を用いることができる。
【0060】
また、本実施形態では、判定部33の判定を第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値、すなわち、2点を結んだ線分の傾きの差分値が判定基準値の範囲内であるか否かとしたが、判定部33は、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率の変化率(線分の傾きの傾き)と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率の変化率(線分の傾きの傾き)の差分値に基づいて、判定を行ってもよい。
【0061】
なお、本実施形態においては、判定部33は、具体的には、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値特性がともに直線性を有する領域において、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値、すなわち、2点を結んだ線分の傾きの差分値が判定基準値の範囲内である場合には、第1ロードセル9aの測定荷重値を駆動部の制御に用いる荷重位置-荷重値データとして判定することを例示したが、複数のデータを用いて、第1ロードセル9aの測定荷重値の変化率と、第2ロードセル9bの測定荷重値の変化率との差分値が所定回数連続して、判定された場合に、第1ロードセルにおいて測定された荷重位置―荷重値データに基づいて駆動部の駆動状態を制御するようにしてもよい。
【0062】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について、図7から図10を用いて説明する。
【0063】
<電動プレスの電気的構成>
図7に示すように、本実施形態に係る電動プレス100Aは、サーボモータドライバー13と、エンコーダ14と、制御プログラム記憶部21Aと、表示部22と、操作部23と、一時記憶部24と、回路部27と、駆動指令パルス発生部28と、エンコーダ位置カウンタ29と、CPU(中央演算処理装置)30Aとから構成されている。なお、以下において、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0064】
CPU(中央演算処理装置)30Aは、制御プログラム記憶部21Aに格納された制御プログラムに従って、電動プレス100A全体の動作を制御する。本実施形態においては、特に、荷重値の判定に関する制御を主として、実施する。
【0065】
<中央演算処理装置の電気的構成>
本実施形態に係る中央演算処理装置30Aは、図8に示すように、近似直線誤差算出部36と、判定基準値記憶部32Aと、判定部33Aと、荷重位置-荷重値データ出力部34と、制御部35とから構成されている。
【0066】
近似直線誤差算出部36は、一時記憶部24から第1ロードセル9a読み出した荷重位置-荷重値データのうち、連続した3個以上のデータを読み出して、近似直線を求める。
また、近似直線誤差算出部36は、求めた近似直線と少なくとも一時記憶部24から読み出した1つの荷重位置-荷重値データとの誤差を算出する。具体的には、近似直線誤差算出部36は、図10に示すように、近似直線Lと荷重位置-荷重値データ(X2、Y2)との距離を誤差σとして算出する。そして、近似直線誤差算出部36は、算出した誤差σの値を判定部33Aに出力する。
【0067】
判定部33Aは、近似直線誤差算出部36が算出した誤差σの値と判定基準値記憶部32Aから読み出した判定基準値とを比較して、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データの直線性を判定する。判定部33Aは、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データが直線性を有すると判定した場合には、直近の荷重位置-荷重値データ(図10の例では、(X3、Y3))を荷重位置-荷重値データ出力部34を介して、制御部35に出力する。
【0068】
<電動プレスの処理>
以下、図9を用いて、本実施形態に係る電動プレス100Aの処理について説明する。
【0069】
まず、制御部35が、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重以下の場合には、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重位置-荷重値データに基づいてサーボモータ4等の駆動状態を制御する(ステップS201)。
【0070】
これは、第2ロードセル9bにおける定格荷重以下の領域においては、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値特性が直線性を有しないため、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重位置-荷重値データを採用して、サーボモータ4等の駆動状態を制御するものである。
【0071】
また、制御部35は、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重よりも大きく、且つプレス荷重の変化に伴う第1ロードセル9aの測定荷重値の変化量が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、第1ロードセル9aにおいて測定された荷重値に基づいてサーボモータ4等の駆動状態を制御する(ステップS202)。
【0072】
つまり、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値特性が直線性を有すれば、それ以降の荷重値の測定を第2ロードセル9bから第1ロードセル9aに切り替えることにより、広い領域で、荷重値の信頼性を担保することができる。そのため、判定部33Aが、近似直線誤差算出部36した誤差σの値と判定基準値記憶部32Aから読み出した判定基準値とを比較して、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データに直線性があると判定した場合には、直近の荷重位置-荷重値データを荷重位置-荷重値データ出力部34を介して、制御部35に出力する。そして、制御部35は、荷重位置-荷重値データ出力部34を介して判定部33Aから入力した荷重位置-荷重値データに基づいて、サーボモータ4等の駆動状態を制御する。
【0073】
以上、説明したように、本実施形態によれば、近似直線誤差算出部36は、一時記憶部24から読み出した第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データのうち、連続した3個以上のデータについて、近似直線を求める。また、近似直線誤差算出部36は、求めた近似直線と少なくとも一時記憶部24から読み出した1つの荷重位置-荷重値データとの誤差σを算出する。判定部33Aは、近似直線誤差算出部36が算出した誤差σの値と判定基準値記憶部32Aから読み出した判定基準値とを比較して、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データの直線性を判定する。
【0074】
つまり、判定部33Aは、判定領域等に基づいて、第1ロードセル9aと第2ロードセル9bとを単純に、切り替えるのではなく、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データが直線性を判定したときに、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データを制御部35の制御要素とする判定を行う。そのため、制御部35は、第1ロードセル9a、第2ロードセル9bの個々のロードセルに、個体差や不具合等があっても、より真値に近い荷重値を検出することができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、直近の荷重位置-荷重値データを含むそれ以前の3つでのデータに基づいて、判定部33Aが判定を行うことを例示したが、複数のデータを用いて、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データの直線性が所定回数連続して、判定された場合に、第1ロードセルにおいて測定された荷重位置―荷重値データに基づいて駆動部の駆動状態を制御するようにしてもよい。
【0076】
また、判定部33Aは、本実施形態における処理結果以外にも、第1の実施形態における処理を行った場合の処理結果を用いて、総合的に、第1ロードセル9aにおける荷重位置-荷重値データを制御要素として用いるのか、あるいは、第2ロードセル9bにおける荷重位置-荷重値データを制御要素として用いるのか、を判定してもよい。
【0077】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について、図11から図14を用いて説明する。
【0078】
<電動プレスの電気的構成>
図11に示すように、本実施形態に係る電動プレス100Bは、サーボモータドライバー13と、エンコーダ14と、制御プログラム記憶部21Bと、表示部22と、操作部23と、一時記憶部24と、回路部27と、駆動指令パルス発生部28と、エンコーダ位置カウンタ29と、CPU(中央演算処理装置)30Bとから構成されている。なお、以下において、第1の実施形態および第2の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0079】
CPU(中央演算処理装置)30Bは、制御プログラム記憶部21Bに格納された制御プログラムに従って、電動プレス100B全体の動作を制御する。本実施形態においては、特に、荷重値の判定に関する制御を主として、実施する。
【0080】
<中央演算処理装置の電気的構成>
本実施形態に係る中央演算処理装置30Bは、図12に示すように、差分値算出部37と、判定基準値記憶部32Bと、判定部33Bと、荷重位置-荷重値データ出力部34と、制御部35と、から構成されている。
【0081】
差分値算出部37は、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値特性が直線性を有する領域における第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値データを一時記憶部24から読み出して、第2ロードセル9bの荷重値に対する第1ロードセル9aの荷重値の差分値を求める。
【0082】
具体的には、差分値算出部37は、図14に示すように、荷重位置X1における第2ロードセル9bの荷重値Y2に対する第1ロードセル9aの荷重値Y1の差分値YY1を算出する。これは、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値特性が直線性を有する領域において、第2ロードセル9bの荷重値を基準に第1ロードセル9aの荷重値の差分値YY1を求めることを意味する。
【0083】
判定部33Bは、差分値算出部37が算出した差分値YY1と判定基準値記憶部32Bから読み出した判定基準値とを比較して、差分値算出部37が算出した差分値YY1が判定基準値記憶部32Bから読み出した判定基準値の範囲内にあるか否かを判定する。判定部33Aは、差分値算出部37が算出した差分値YY1が判定基準値記憶部32Bから読み出した判定基準値の範囲内にある判定した場合には、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データ(図14の例では、(X1、Y1))を荷重位置-荷重値データ出力部34を介して、制御部35に出力する。
【0084】
<電動プレスの処理>
以下、図13を用いて、本実施形態に係る電動プレス100Bの処理について説明する。
【0085】
まず、制御部35が、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重値が、第2ロードセル9bにおける定格荷重以下の場合には、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重位置-荷重値データに基づいてサーボモータ4等の駆動状態を制御する(ステップS301)。
【0086】
これは、第2ロードセル9bにおける定格荷重以下の領域においては、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値特性が直線性を有しないため、第2ロードセル9bにおいて測定された荷重位置-荷重値データを採用して、サーボモータ4等の駆動状態を制御するものである。
【0087】
また、制御部35は、第2ロードセル9bの測定荷重値と第1ロードセル9aの測定荷重値との差異が予め定めた範囲内になった場合に、第1ロードセル9aにおいて測定された荷重値に基づいて駆動部の駆動状態を制御する(ステップS302)。
【0088】
つまり、第2ロードセル9bの荷重値と第1ロードセル9aの荷重値との差分値が予め定めた範囲内になった場合には、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値特性が直線性を有すると考えられるため、それ以降の荷重値の測定を第2ロードセル9bから第1ロードセル9aに切り替えることにより、広い領域で、荷重値の信頼性を担保することができる。
【0089】
そのため、判定部33Bが、差分値算出部37が算出した差分値が判定基準値記憶部32Bから読み出した判定基準値の範囲内であると判定した場合には、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データを荷重位置-荷重値データ出力部34を介して、制御部35に出力する。そして、制御部35は、荷重位置-荷重値データ出力部34を介して判定部33Bから入力した荷重位置-荷重値データに基づいて、サーボモータ4等の駆動状態を制御する。
【0090】
以上、説明したように、本実施形態によれば、差分値算出部37は、第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値特性が直線性を有する領域における第1ロードセル9aおよび第2ロードセル9bの荷重位置-荷重値データを一時記憶部24から読み出して、第2ロードセル9bの荷重値に対する第1ロードセル9aの荷重値の差分値を求める。判定部33Bは、差分値算出部37が算出した差分値と判定基準値記憶部32Bから読み出した判定基準値とを比較して、差分値算出部37が算出した差分値が判定基準値記憶部32Bから読み出した判定基準値の範囲内にあるか否かを判定する。
【0091】
つまり、判定部33Bは、判定領域等に基づいて、第1ロードセル9aと第2ロードセル9bとを単純に、切り替えるのではなく、第2ロードセル9bの荷重値と第1ロードセル9aの荷重値との差分値が判定基準値の範囲内にあると判定したときに、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データを制御部35の制御要素とする判定を行う。そのため、制御部35は、第1ロードセル9a、第2ロードセル9bの個々のロードセルに、個体差や不具合等があっても、より真値に近い荷重値を検出することができる。
【0092】
なお、本実施形態においては、判定部33Bの判定基準を第2ロードセル9bの荷重値と第1ロードセル9aの荷重値との差分値が予め定めた範囲内になった場合として、他の条件を示さなかったが、複数のデータを用いて、第1ロードセル9aの荷重位置-荷重値データの差分値が所定回数連続して判定された場合に、第1ロードセル9aにおいて測定された荷重位置―荷重値データに基づいて駆動部の駆動状態を制御するようにしてもよい。
【0093】
また、判定部33Bは、本実施形態における処理結果以外にも、第1の実施形態および第2の実施形態における処理を行った場合の処理結果を用いて、総合的に、第1ロードセル9aにおける荷重位置-荷重値データを制御要素として用いるのか、あるいは、第2ロードセル9bにおける荷重位置-荷重値データを制御要素として用いるのか、を判定してもよい。
【0094】
なお、電動プレスの処理をコンピュータシステムあるいはコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを電動プレスに読み込ませ、実行することによって本発明の電動プレスを実現することができる。ここでいうコンピュータシステムあるいはコンピュータとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0095】
また、「コンピュータシステムあるいはコンピュータ」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムあるいはコンピュータから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムあるいはコンピュータに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0096】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムあるいはコンピュータにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0097】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、本実施形態においては、ロードセルの選択に関する制御を電動プレスに内蔵することを例示したが、このロードセルの選択に関する制御を行う装置を電動プレスとは別体で設けてもよい。また、このロードセルの選択に関する制御を行う装置は、クラウド上のサーバであってもよく、無線あるいは有線による通信、または、ネットワークを介した通信網を通じて、電動プレスとこのロードセルの選択に関する制御を行う装置とがデータや情報の授受を行うようにしてもよい。
【0098】
<付記項>
[付記項1]
駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、前記駆動部を制御する制御部と、を備えた電動プレスにおいて、前記ワークに付与される荷重値を測定するロードセルを選択するロードセル選択方法であって、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第1の工程と、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第2の工程と、
を備えたことを特徴とするロードセル選択方法。
[付記項2]
前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記制御部は、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの測定荷重値の変化率が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部の駆動状態を制御することを特徴とする付記項1に記載のロードセル選択方法。
[付記項3]
前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部の駆動状態を制御することを特徴とする付記項1に記載のロードセル選択方法。
[付記項4]
前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記第2ロードセルの測定荷重値と前記第1ロードセルの測定荷重値との差異が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部の駆動状態を制御することを特徴とする付記項1に記載のロードセル選択方法。
[付記項5]
駆動部により作動され、設定されたプレス荷重をワークに付与するラムと、前記ワークに付与される荷重値を測定する第1ロードセルと、前記第1ロードセルよりも定格荷重が低く設定されるとともに、前記第1ロードセルと同荷重が加えられ、前記ワークに付与される荷重値を測定する第2ロードセルと、前記駆動部を制御する制御部と、を備えた電動プレスにおいて、前記ワークに付与される荷重値を測定するロードセルを選択するロードセル選択方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重以下の場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第1の工程と、
前記制御部が、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値が、前記第2ロードセルにおける定格荷重よりも大きい場合には、前記第2ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値と、が所定の条件を満たした場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部を制御する第2の工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
[付記項6]
前記第2の工程において、前記制御部は、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの測定荷重値の変化率が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部の駆動状態を制御することを特徴とする付記項5に記載のプログラム。
[付記項7]
前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記プレス荷重の変化に伴う前記第1ロードセルの少なくとも3つ以上の測定荷重値が予め定めた許容範囲内の直線性を有する場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部の駆動状態を制御することを特徴とする付記項5に記載のプログラム。
[付記項8]
前記第2の工程において、前記制御部は、前記所定の条件として、前記第2ロードセルの測定荷重値と前記第1ロードセルの測定荷重値との差異が予め定めた範囲内になった場合に、前記第1ロードセルにおいて測定された前記荷重値に基づいて前記駆動部の駆動状態を制御することを特徴とする付記項5に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0099】
1;ラム
1a;筒状本体
2;ボール螺子
2a;螺子軸
2b;ナット体
3;プレス本体
4;電動機
5;ケーシング
6;筒状ガイド
9a;第1ロードセル
9b;第2ロードセル
13;サーボモータドライバー
14;エンコーダ
21;制御プログラム記憶部
22;表示部
23;操作部
24;一時記憶部
27;回路部
28;駆動指令パルス発生部
29;エンコーダ位置カウンタ
30、30A、30B;CPU
31;変化率算出部
32、32A、32B;判定基準値記憶部
33、33A、33B;判定部
34;荷重位置-荷重値データ出力部
35;制御部
36;近似直線誤差算出部
37;差分値算出部
100、100A、100B;電動プレス
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