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特許7057222床吹出器具用の環状熱交換器及びその環状熱交換器が装備された床吹出器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】床吹出器具用の環状熱交換器及びその環状熱交換器が装備された床吹出器具
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/068 20060101AFI20220412BHJP
   F24F 13/30 20060101ALI20220412BHJP
   F28D 7/12 20060101ALI20220412BHJP
   F28F 1/00 20060101ALI20220412BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F24F13/068 A
F24F13/30
F28D7/12
F28F1/00 E
F24F5/00 101Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018102586
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019207072
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】今井 英策
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 俊至
(72)【発明者】
【氏名】山下 周一
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-076916(JP,U)
【文献】特開平08-327138(JP,A)
【文献】特開2010-085038(JP,A)
【文献】実開昭56-136972(JP,U)
【文献】特開平06-249462(JP,A)
【文献】特開2005-214602(JP,A)
【文献】実開昭61-074031(JP,U)
【文献】国際公開第2012/017964(WO,A1)
【文献】特開昭61-011535(JP,A)
【文献】特開2010-281529(JP,A)
【文献】特開2015-007335(JP,A)
【文献】特開2016-205719(JP,A)
【文献】米国特許第05910045(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/00-13/32
F24F 1/0053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床吹出器具における吹出口部に対する背面視で前記吹出口部に向かう放射状の空気流動経路に配置される床吹出器具用の環状熱交換器であって、
環状の屈曲形状に形成された伝熱管が設けられるとともに、前記伝熱管に接続されたタッピングユニットが設けられ、
前記伝熱管は、前記吹出口部に対する背面視において前記吹出口部を囲む状態で前記放射状の空気流動経路に配置され、
前記伝熱管の熱媒入口側の端部と前記伝熱管の熱媒出口側の端部とが前記タッピングユニットに接続され、
前記タッピングユニットの外面部には、熱媒往き管が接続される入口側の管接続具と熱媒還り管が接続される出口側の管接続具とが設けられ、
前記タッピングユニットの内部には、前記伝熱管の熱媒入口と前記入口側の管接続具とを連通させる入口側連通路、及び、前記伝熱管の熱媒出口と前記出口側の管接続具とを連通させる出口側連通路が形成され
環状形状に形成された複数の板状基材が設けられ、
複数の前記板状基材は、それら板状基材の各々が前記吹出口部に対する背面視において前記吹出口部を囲む状態で、かつ、それら板状基材どうしの間が前記放射状の空気流動経路になる状態に間隔を開けて配置され、
多数の伝熱フィンが前記吹出口部に対する背面視で放射状に配置されて、前記伝熱フィンの夫々が、隣り合う前記板状基材どうしの間に亘る状態で、それら隣り合う前記板状基材の夫々に連結され、
前記伝熱管は、放射状に配置された多数の前記伝熱フィンの夫々に対する貫通状態で、前記放射状の空気流動経路に配置されている、床吹出器具用の環状熱交換器。
【請求項2】
複数の前記板状基材のうち前記吹出口部に対する直交方向において前記吹出口部から最も離れた板状基材である底部板状基材は、その底部板状基材における環状形状の中央孔部分が閉塞板により閉塞されている、請求項1に記載した床吹出器具用の環状熱交換器。
【請求項3】
前記底部板状基材と前記閉塞板とは、それら底部板状基材と閉塞板とが一体化された一枚の円板状材として形成されている、請求項2に記載した床吹出器具用の環状熱交換器。
【請求項4】
複数の前記伝熱管が、前記吹出口部に対する直交方向に分散された状態で前記空気流動経路に配置され、
前記タッピングユニットの内部には、複数の前記伝熱管を直列に連通させる渡り連通路と、
その直列連通において最も上流側に位置する前記伝熱管の前記熱媒入口と前記入口側の管接続具とを連通させる前記入口側連通路と、
前記直列連通において最も下流側に位置する前記伝熱管の前記熱媒出口と前記出口側の管接続具とを連通させる前記出口側連通路とが形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載した床吹出器具用の環状熱交換器。
【請求項5】
前記タッピングユニットは、箱状のケースと前記ケースの内部に設けられた仕切板とにより形成され、
前記渡り連通路と前記入口側連通路と前記出口側連通路とは、前記ケースの内部において前記仕切板により区画されている請求項4に記載した床吹出器具用の環状熱交換器。
【請求項6】
前記タッピングユニットは、前記板状基材の環状形状における環状方向の一部箇所において、隣り合う前記板状基材どうしの間に亘る状態で、それら隣り合う前記板状基材の夫々に連結されている請求項1~5のいずれか1項に記載した床吹出器具用の環状熱交換器。
【請求項7】
複数の前記板状基材のうち、前記吹出口部に対する直交方向において前記吹出口部から最も離れた板状基材である底部板状基材と、その下方に位置する支持体との間に介在させるジャッキ機構が設けられている請求項~6のいずれか1項に記載した床吹出器具用の環状熱交換器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載した環状熱交換器が装備された床吹出器具であって、
前記放射状の空気流動経路を通じ器具外周囲の空気を吸入して、吸入した空気を前記吹出口部に送風するファンが設けられ、
前記ファンが前記伝熱管の環状屈曲形状における内方部に配置されている床吹出器具。
【請求項9】
前記ファンにより送風された空気の一部が前記ファンと前記吹出口部との間から分流する分流路が設けられるとともに、ダクト接続部が設けられ、
前記分流路を通じて分流された空気が前記ダクト接続部を通じて、前記ダクト接続部に接続された送風ダクトに送出される請求項8に記載した床吹出器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床吹出器具用の環状熱交換器及びその環状熱交換器が装備された床吹出器具に関する。
詳しくは、床吹出器具における吹出口部に対する背面視で前記吹出口部に向かう放射状の空気流動経路に配置される床吹出器具用の環状熱交換器、及び、その環状熱交換器が装備された床吹出器具に関する。
【背景技術】
【0002】
床吹出器具は、床に設置されて、床下空間に供給された調整空気を床上空間に吹き出すことで、その設置箇所の近傍における床上空間の快適性を確保しようとするものであるが、暑さ寒さの感覚には個人差があることから、対策として、床吹出器具に風量調整ダンパが装備されて、この風量調整ダンパの開度を調整することで床吹出器具の吹出口部から床上空間に吹き出される調整空気の吹出風量が調整されるようにし、このダンパ開度調整による吹出風量の調整により、暑さ寒さの感覚の個人差に対して対応するようにした床吹出器具がある。(特許文献1)
【0003】
また、送風ファンを装備した床吹出器具では、送風ファンの出力を調整することで床吹出器具の吹出口部から床上空間に吹き出される調整空気の吹出風量が調整されるようにし、このファン出力調整による吹出風量の調整により、暑さ寒さの感覚の個人差に対して対応するようにした床吹出器具もある。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-205080号公報
【文献】特開2005-282917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、床吹出器具では、居者の足元近くに調整空気が吹き出されることから、天井吹出器具などに比べて居者が気流ドラフトを感じ易く、そのため吹出風速に制約があることで吹出風量の調整範囲が小さく制限されてしまう。
【0006】
これが原因で、床下空間の空気がそのまま床上空間に吹き出される従来の床吹出器具では、吹出風量を調整するにしても、暑さ寒さの感覚の個人差に対して十分に対応できない場合が生じ易い問題、換言すれば、個別空調の機能性が未だ低い問題があった。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、床吹出器具に対する合理的な改良により上記問題が効果的に解消されるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、床吹出器具用の環状熱交換器に係り、その特徴は、
床吹出器具における吹出口部に対する背面視で前記吹出口部に向かう放射状の空気流動経路に配置される床吹出器具用の環状熱交換器であって、
環状の屈曲形状に形成された伝熱管が設けられるとともに、前記伝熱管に接続されたタッピングユニットが設けられ、
前記伝熱管は、前記吹出口部に対する背面視において前記吹出口部を囲む状態で前記放射状の空気流動経路に配置され、
前記伝熱管の熱媒入口側の端部と前記伝熱管の熱媒出口側の端部とが前記タッピングユニットに接続され、
前記タッピングユニットの外面部には、熱媒往き管が接続される入口側の管接続具と熱媒還り管が接続される出口側の管接続具とが設けられ、
前記タッピングユニットの内部には、前記伝熱管の熱媒入口と前記入口側の管接続具とを連通させる入口側連通路、及び、前記伝熱管の熱媒出口と前記出口側の管接続具とを連通させる出口側連通路が形成され
環状形状に形成された複数の板状基材が設けられ、
複数の前記板状基材は、それら板状基材の各々が前記吹出口部に対する背面視において前記吹出口部を囲む状態で、かつ、それら板状基材どうしの間が前記放射状の空気流動経路になる状態に間隔を開けて配置され、
多数の伝熱フィンが前記吹出口部に対する背面視で放射状に配置されて、前記伝熱フィンの夫々が、隣り合う前記板状基材どうしの間に亘る状態で、それら隣り合う前記板状基材の夫々に連結され、
前記伝熱管は、放射状に配置された多数の前記伝熱フィンの夫々に対する貫通状態で、前記放射状の空気流動経路に配置されている点にある。
【0009】
この環状熱交換器では、入口側の管接続具に接続された熱媒往き管を通じて熱媒が伝熱管に供給され、熱媒往き管から供給された熱媒は、入口側の管接続具-タッピングユニット内部の入口連通路-環状屈曲形状の伝熱管-タッピングユニット内部の出口側連通路-出口側の管接続具-熱媒還り管の順に通過する。
【0010】
この為、この環状熱交換器を装備した床吹出器具では、床下空間から上記の放射状の空気流動経路を通じ吹出口部に送られて、吹出口部から床上空間に吹き出される空気が、放射状の空気流動経路を通過する過程において、その放射状の空気流動経路に配置された伝熱管の管内を流れる熱媒と熱交換することで冷却又は加熱される。
【0011】
したがって、床下空間における空気がそのまま床上空間に吹き出される従来の床吹出器具に比べて、床吹出器具の設置箇所近傍の床上空間における居者が感じる暑さや寒さを、環状熱交換器による吹出空気の加熱又は冷却により一層効果的に解消することができ、そのことから、床上空間における居者の暑さ寒さの感覚の個人差に対しても、環状熱交換器による冷却量又は加熱量を変化させることで一層効果的に対応することができ、これにより、個別空調の機能性を効果的に向上させることができる。
【0012】
また、上記第1特徴構成では、
環状形状に形成された複数の板状基材が設けられ、
複数の前記板状基材は、それら板状基材の各々が前記吹出口部に対する背面視において前記吹出口部を囲む状態で、かつ、それら板状基材どうしの間が前記放射状の空気流動経路になる状態に間隔を開けて配置され、
多数の伝熱フィンが前記吹出口部に対する背面視で放射状に配置されて、前記伝熱フィンの夫々が、隣り合う前記板状基材どうしの間に亘る状態で、それら隣り合う前記板状基材の夫々に連結され、
前記伝熱管は、放射状に配置された多数の前記伝熱フィンの夫々に対する貫通状態で、前記放射状の空気流動経路に配置されているから、次の効果も併せて得ることができる。
【0013】
つまり、この構成では、放射状の空気流動経路を通過する空気と伝熱管の管内を通過する熱媒との間の伝熱面積が多数の伝熱フィンにより大きく確保される。
【0014】
この為、放射状の空気流動経路を通過する空気と伝熱管の管内を流れる熱媒との熱交換が大きな伝熱面積を介して効率良く行われる。
【0015】
したがって、吹出口部から床上空間に吹き出される空気をさらに効率良く冷却又は加熱することができ、その分、床上空間における居者の暑さ寒さの感覚の個人差に対する対応性を一層高めることができる。
【0016】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
複数の前記板状基材のうち前記吹出口に対する直交方向において前記吹出口部から最も離れた板状基材である底部板状基材は、その底部板状基材における環状形状の中央孔部分が閉塞板により閉塞されている点にある。
【0017】
この構成によれば、底部板状基材における環状形状の中央孔部分を通じて吹出口部に向う床下空気の流れを上記閉塞板により阻止することができる。
【0018】
したがって、吹出口部から床上空間に吹き出させる空気は、そのほぼ全量について確実に放射状の空気流動経路を通過させて、伝熱管の管内を流れる熱媒と熱交換させることができ、これにより、吹出口部から床上空間に吹き出させる空気を一層効率良く冷却又は加熱することができる。
なお、本発明の第3特徴構成として、前記底部板状基材と前記閉塞板とは、それら底部板状基材と閉塞板とが一体化された一枚の円板状材として形成されていてもよい。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、第1~第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
複数の前記伝熱管が、前記吹出口部に対する直交方向に分散された状態で前記空気流動経路に配置され、
前記タッピングユニットの内部には、複数の前記伝熱管を直列に連通させる渡り連通路と、
その直列連通において最も上流側に位置する前記伝熱管の前記熱媒入口と前記入口側の管接続具とを連通させる前記入口側連通路と、
前記直列連通において最も下流側に位置する前記伝熱管の前記熱媒出口と前記出口側の管接続具とを連通させる前記出口側連通路とが形成されている点にある。
【0020】
この構成では、例えば2本の伝熱管が放射状の空気流動経路に配置されている場合、入口側の管接続具に接続された熱媒往き管を通じて供給される熱媒は、入口側の管接続具-タッピングユニット内部の入口側連通路-上流側の伝熱管-タッピングユニット内部の渡り連通路-下流側の伝熱管-タッピングユニット内部の出口側連通路-出口側の管接続具-熱媒還り管の順に通過する。
【0021】
この為、床下空間から放射状の空気流動経路を通じ吹出口部に送られて、吹出口部から床上空間に吹き出される空気は、放射状の空気流動経路を通過する過程において、複数本の伝熱管夫々の管内を流れる熱媒との熱交換により冷却又は加熱される。
【0022】
したがって、吹出口部から床上空間に吹き出される空気を複数本の伝熱管により一層効率良く冷却又は加熱することができ、その分、床上空間における居者の暑さ寒さの感覚の個人差に対する対応性を一層高めることができる。
【0023】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記タッピングユニットは、箱状のケースと前記ケースの内部に設けられた仕切板とにより形成され、
前記渡り連通路と前記入口側連通路と前記出口側連通路とは、前記ケースの内部において前記仕切板により区画されている点にある。
【0024】
この構成では、箱状ケースの内部を仕切板により区画することで、渡り連通路と入口側連通路と出口側連通路との夫々を形成するから、例えばタッピングユニットを形成するブロック状の鋼材に穿孔することで、それら連通路の夫々を形成するのに比べて、タッピングユニットの製作を容易にするとともに、タッピングユニットを軽量化することができ、これにより、環状熱交換器の製作コストを安価にすることができ、また、床吹出器具に対する環状熱交換器の装備も容易にすることができる。
【0025】
本発明の第6特徴構成は、第1~第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記タッピングユニットは、前記板状基材の環状形状における環状方向の一部箇所において、隣り合う前記板状基材どうしの間に亘る状態で、それら隣り合う前記板状基材の夫々に連結されている点にある。
【0026】
この構成によれば、タッピングユニットが板状基材どうしの間に挟まれた状態で、それら板状基材に連結されるから、環状熱交換器におけるタッピングユニットの取り付け強度を大きく確保することができ、これにより、熱媒往き管及び熱媒還り管が接続されるタッピングユニットに対する支持強度を効果的に高めることができる。
【0027】
本発明の第7特徴構成は、第1~第6特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
複数の前記板状基材のうち、前記吹出口部に対する直交方向において前記吹出口部から最も離れた板状基材である底部板状基材と、その下方に位置する支持体との間に介在させるジャッキ機構が設けられている点にある。
【0028】
この構成では、底部板状基材と下方の支持体との間の離間寸法が種々異なることに対しても、底部板状基材と支持体との間に介在させたジャッキ機構の伸長寸法を調整することで、このジャッキ機構を介して環状熱交換器を支持体により十分な支持強度で支持することができる。
【0029】
本発明の第8特徴構成は、第1~第7特徴構成のいずれかの環状熱交換器が装備された床吹出器具に係り、その特徴は、
前記放射状の空気流動経路を通じ器具外周囲の空気を吸入して、吸入した空気を前記吹出口部に送風するファンが設けられ、
前記ファンが前記伝熱管の環状屈曲形状における内方部に配置されている点にある。
【0030】
この構成によれば、器具外周囲の床下空気がファンの吸引機能により放射状の空気流動経路を通じて伝熱管の環状屈曲形状における内方側に吸入され、そして、吸入された空気がファンの送風機能により吹出口部を通じて床上空間に吹き出される。
【0031】
したがって、伝熱管の環状屈曲形状における内方部を利用してファンを装備したコンパクトな構造にしながらも、通風抵抗となる伝熱管の存在にかかわらず所要風量の空気を吹出口部から床上空間へ確実に吹き出させることができる。
【0032】
本発明の第9特徴構成は、第8特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記ファンにより送風された空気の一部が前記ファンと前記吹出口部との間から分流する分流路が設けられるとともに、ダクト接続部が設けられ、
前記分流路を通じて分流された空気が前記ダクト接続部を通じて、前記ダクト接続部に接続された送風ダクトに送出される点にある。
【0033】
この構成では、伝熱管の管内を流れる熱媒との熱交換により冷却又は加熱された空気を、床吹出器具の吹出口部から床上空間に吹き出させるのに併行して、冷却又は加熱された空気の一部(即ち、分流された空気)を、ダクト接続部に接続された送風ダクトを通じて床上空間における適当箇所に吹き出させることができる。
【0034】
したがって、床吹出器具における吹出口部からの調整空気の吹き出しだけで床上空間における調整対象域の状態を調整するのに比べ、床上空間における調整対象域の状態を一層効果的に調整することができ、また、そのことで床上空間における調整対象域の快適性も一層効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】空調システムの構成図
図2】床吹出器具の平面図
図3】床吹出器具に装備した環状熱交換器の横断面図
図4】環状熱交換器の斜視図
図5】タッピングユニットの構造図
図6】配管システムにおける冷房期の熱媒流れ状態を示す図
図7】配管システムにおける暖房期の熱媒流れ状態を示す図
図8】別実施形態を示す配管システムの構成図
図9】別実施形態を示す環状熱交換器の横断面図
図10】別実施形態を示す空調システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は空調対象室1における空調システムを示し、空調対象室1には複数の机2が設置されており、複数の人員(居者)が在室する。
【0037】
空調対象室1の天井3には、複数の天井吹出器具4が照明器具などと共に分散状態で設置されており、空調対象室1の天井裏空間5は、複数の天井吹出器具4に対する共通の給気チャンバとして利用されている。
【0038】
即ち、別置の空調機6において温湿度が調整された調整空気SAは、給気ファン7により給気ダクト8を通じて天井裏空間利用の給気チャンバ5に供給され、この給気チャンバ5に供給された調整空気SAが、各天井吹出器具4から空調対象室1の室内に吹き出される。
【0039】
なお、各天井吹出器具4に対して空調機6からの給気ダクト8が分岐ダクトを介してダクト接続される方式が採用されてもよい。
【0040】
空調対象室1の室壁9には壁吸込器具10が設置されており、この壁吸込器具10から延設された還気ダクト11が空調機6の還気口に接続されている。
【0041】
即ち、天井吹出器具4から調整空気SAが吹き出されるのに併行して、空調対象室1における室内の空気RAは壁吸込器具10に吸い込まれ、壁吸込器具10に吸い込まれた空気RAは、還気ファン12により還気ダクト11を通じて空調機6に戻される。
【0042】
また、壁吸込器具10に吸い込まれた空気RAのうちの一部は、空調対象室1に対する換気を目的として、還気ダクト11から分岐された排気ダクト13を通じ排出空気EAとして屋外に排出される。
【0043】
空調機6の還気口に戻された空気RAは、外気取入ダクト14を通じて屋外から空調機6に取り入れられた換気用の新鮮空気OA(即ち、外気)と空調機6の内部で混合され、この混合空気RA・OAの温湿度が、空調機6における冷却コイル6a,加熱コイル6b,加湿器6Cなどにより調整される。
【0044】
空調機6において温湿度が調整された混合空気RA・OAは、調整空気SAとして給気ダクト8を通じ再び給気チャンバ5に給送されて、天井吹出器具4から空調対象室1に吹き出される。
【0045】
空調対象室1の床15は、躯体スラブ16との間に間隔を空けて設置された所謂二重床構造になっており、床15と躯体スラブ16との間の床下空間17は床下チャンバとして利用されている。
【0046】
床15における通路部分15aには、複数の床吸込器具18が分散状態で設置されており、一方、床15における各机2の机下部分15bには、床吹出器具19が設置されている。
【0047】
これら床吸込器具18及び床吹出器具19の夫々は、それらの上面部が床15の上面と同一面状になる状態で床15に設置されており、各床吹出器具19には吹出ファン20が装備されている。
【0048】
即ち、各床吹出器具19における吹出ファン20の運転により、床下空間17における空気RA′が床吹出器具19を通じて各机2の机下空間に吹き出される。
【0049】
また、各床吹出器具19における吹出ファン20の運転に伴い、空調対象室1の室内空気RAが通路部分15aの各床吸込器具18を通じて床下空間17に取り入れられる。
【0050】
図2及び図3に示されるように、床吹出器具19には環状熱交換器22が装備されており、吹出ファン20の運転により床下空間17から各床吹出器具19に吸入された空気RA′は、この環状熱交換器19により冷却又は加熱されて温度が再調整され、この温度調整された空気RA′が、床吹出空気FAとして、床吹出器具19の上面吹出口部19aから床上の机下空間に吹き出される。
【0051】
床吹出器具19は籠状ケース19bを備えており、この籠状ケース19bの上面側の開口部に、多数の吹出孔aが形成された円盤状の吹出口部19aが取り付けられている。そして、吹出ファン20は、この籠状ケース19bの内部に装備されている。
【0052】
籠状ケース19bの周面部には、ケース周方向に並ぶ複数の空気取入口23が形成されており、ケース内の吹出ファン20が運転されると、床下空間17における周囲の空気RA′が、吹出ファン20の吸引機能により空気取入口23を通じて籠状ケース19b内に吸入され、この吸入空気RA′が床吹出空気FAとして吹出ファン20の送風機能により、吹出口部19における複数の吹出孔aを通じて上方の机下空間に吹き出される。
【0053】
図4は、床吹出器具19に装備される環状熱交換器22を示し、この環状熱交換器22は、床吹出器具19において籠状ケース19bの外周囲(即ち、吹出口部19aに対する背面視で吹出口部19aに向かう放射状の空気流動経路K)に配置される。
【0054】
環状熱交換器22は、2本の伝熱管24a,24b、及び、これら伝熱管24a,24bが接続されたタッピングユニット25を備えており、各伝熱管24a,24bは、吹出口部19aに対する背面視において籠状ケース19bを囲む環状の屈曲形状に形成されている。
【0055】
2本の伝熱管24a,24bは、上下方向(即ち、吹出口部19aに対する直交方向)に分散されて配置されており、これら伝熱管24a,24b夫々の熱媒入口側の端部と熱媒出口側の端部とが、タッピングユニット25の各側面部に接続されている。
【0056】
また、タッピングユニット25の正面部には、熱媒往き管26aが接続される入口側の管接続具27aと、熱媒還り管26bが接続される出口側の管接続具27bとが設けられている。
【0057】
図5に示されるように、タッピンユニット25の内部には、渡り連通路rmと入口側連通路riと出口側連通路roとが形成されており、2本の伝熱管24a,24bは渡り連通路rmにより直列に連通されている。
【0058】
また、それらの伝熱管24a,24bの直列連通において、上流側に位置する伝熱管24aの熱媒入口iは、入口側連通路riを通じて入口側の管接続具27aに連通し、下流側に位置する伝熱管27bの熱媒出口oは、出口側連通路roを通じて出口側の管接続具27bに連通する。
【0059】
タッピンユニット25は、箱状ケース25aと、この箱状ケース25aの内部に設けられた仕切板25bとにより形成されており、タッピングユニット25の内部における渡り連通路rmと入口側連通路riと出口側連通路roとは、箱状ケース25aの内部を仕切板2bにより区画することで形成されている。
【0060】
環状熱交換器22は2枚の板状基材28a,28bを備えており、これら板状基材28a,28bは、床吹出器具19の吹出口部19aに対する背面視において吹出口部19aを囲む環状形状に形成されるとともに、これら2枚の板状基材28a,28bどうしの間が籠状ケース19b外周囲の放射状の空気流動経路Kになる状態に間隔を開けて配置されている。
【0061】
2枚の板状基材28a,28bの間には、多数の伝熱フィン29が設けられており、これら伝熱フィン29は、床吹出器具19の吹出口部19aに対する背面視で放射状に配置されており、これら伝熱フィン29の夫々が、板状基材28a,28bどうしの間に亘る状態で、それら板状基材28a,28bに連結されている。
【0062】
そして、環状屈曲形状の伝熱管24a,24bの夫々は、放射状に配置された多数の伝熱フィン29の夫々に対する貫通状態で、環状熱交換器22に装備されており、タッピングユニット25は、板状基材28a,28bの環状形状における環状方向の一部箇所において、板状基材28a,28bどうしの間に亘る状態で、それら板状基材28a,28bの夫々に連結されている。
【0063】
また、板状基材28a,28bのうち床吹出器具19の吹出口部19aに対する直交方向において吹出口部19aから離れた側(即ち、下側)の板状基材である底部板状基材28bは、その底部板状基材28bにおける環状形状の中央孔部分が閉塞板28cにより閉塞されている。
【0064】
したがって、床下空間17における空気RA′が底部板状基材28bの中央孔部分を通じて籠状ケース19bの内部に吸入されることが閉塞板28cにより阻止され、これにより、籠状ケース19bの内部に吸入される床下空間17の空気RA′は、そのほぼ全量が板状基材28a,28bどうしの間の放射状の空気流動経路Kを通じて籠状ケース19bの内部に吸入される形態になる。
【0065】
なお、底部板状基材28bは、閉塞板28cとは別材として形成されるのに代えて、当初から一枚の円板状材として形成されていてもよい。
【0066】
床吹出器具19が空調対象室1の床15に設置された状態において、環状熱交換器22は、底部板状基材28と躯体スラブ16との間に介装されたジャッキ機構30を介して躯体スラブ16により支持される。
【0067】
図6は、床吹出器具19に装備された環状熱交換器22に対する配管システムを示し、空調機6には、冷却コイル6aに冷水Cを供給する冷水往き管31a、及び、冷却コイル6aから送出される戻り冷水CR(即ち、冷却コイル6aにおいて冷却対象の空気と熱交換することで昇温した冷水)を導く冷水還り管31bが接続されている。
【0068】
また同様に、空調機6には、加熱コイル6bに温水Hを供給する温水往き管32a、及び、加熱コイル6bから送出される戻り温水HR(即ち、加熱コイル6bにおいて加熱対象の空気と熱交換することで降温した温水)を導く温水還り管32bが接続されている。
【0069】
床下空間17には、複数の床吹出器具19に対する共通の中継熱交換器33が設置されており、この中継熱交換器33における一次側の熱媒入口34aには、一次側の熱媒給送管35aが接続されており、この一次側の熱媒給送管35aには、冷水往き管31aから分岐された冷水取出管36aと温水往き管32aから分岐された温水取出管36bとが接
続されている。
【0070】
また、中継熱交換器33における一次側の熱媒出口34bには、一次側の熱媒返送管35bが接続されており、この一次側の熱媒返送管35bには、冷水還り管31bから分岐された冷水戻し管37aと温水還り管32bから分岐された温水戻し管37bとが接続されている。
【0071】
一次側の熱媒返送管35bの途中からは短絡管38が分岐されており、この短絡管38は一次側の熱媒給送管35aの途中箇所に接続されている。
【0072】
冷水取出管36a,温水取出管36b,冷水戻し管37a,温水戻し管37bの夫々には、冷暖房切換用の開閉弁vkが介装されており、短絡管38と一次側の熱媒給送管35aとの接続箇所には、熱媒温度調整用の合流三方弁vtが介装され、この合流三方弁vtよりも下流側において一次側の熱媒給送管35aには、一次側の熱媒給送ポンプp1が介装されている。
【0073】
中継熱交換器33における二次側の熱媒出口39aには、往き側の熱媒主管40aが接続されており、この往き側の熱媒主管40aからは複数の熱媒往き管26aが分岐され、これら熱媒往き管26aが、複数の床吹出器具19の夫々に装備された環状熱交換器22におけるタッピングユニット25の入口側管接続部27aに対して各別に接続されている。
【0074】
同様に、中継熱交換器33における二次側の熱媒入口39bには、還り側の熱媒主管40bが接続されており、この還り側の熱媒主管40bからは複数の熱媒還り管26bが分岐され、これら熱媒還り管26bが、複数の床吹出器具19の夫々に装備された環状熱交換器22におけるタッピングユニット25の出口側管接続部27bに対して各別に接続されている。
【0075】
往き側の熱媒主管40aには、二次側の熱媒給送ポンプp2が介装されるとともに、熱媒温度センサ41が装備されている。
【0076】
この熱媒温度センサ41は、中継熱交換器33における二次側の熱媒出口39aから送出される二次側熱媒nの温度tを計測し、熱媒温度調整用の合流三方弁vtは、冷水取出管36a又は温水取出管36bを通じて取り出される冷水C又は温水Hと、短絡管38を通じて還流する戻り冷水C′又は戻り温水H′とを合流させて混合するとともに、その混合比を熱媒温度センサ41の計測温度tに応じて自動調整する。
【0077】
この配管システムでは、冷房期には、同図6に示されるように、冷水取出管36a及び冷水戻し管37aの夫々に介装された開閉弁vkが開弁されるとともに、温水取出管36b及び温水戻し管37bの夫々に介装された開閉弁vkが閉弁され、これにより、一次側の熱媒給送ポンプp1が運転されることで、冷水往き管31aにおける冷水Cが一次側の熱媒として冷水取出管36aを通じて取り出される。
【0078】
冷水取出管36aを通じて取り出された冷水Cは、短絡管38を通じて還送された戻り冷水C′と合流三方弁vtで混合され、この混合された冷水Cが一次側の熱媒給送管35aを通じて中継熱交換器33における一次側の熱媒入口34aに供給される。
【0079】
中継熱交換器33における一次側の熱媒入口34aに供給された冷水Cは、中継熱交換器33において、二次側の熱媒入口39bから中継熱交換器33に流入した二次側の熱媒n(本例では水)と熱交換し、そして、この熱交換により二次側の熱媒nを冷却するのに伴い自身は昇温した状態で、中継熱交換器33における一次側の熱媒出口34bから戻り冷水C′として一次側の熱媒返送路35bに送出される。
【0080】
また、合流三方弁vtにおいて冷水C,C′の混合比が熱媒温度センサ41の計測温度tに応じ自動調整されて、中継熱交換器33に供給される冷水Cの温度が調整されることにより、二次側の熱媒入口39bから中継熱交換器33に流入した二次側の熱媒nは、冷水Cとの熱交換において冷房期の設定熱媒温度tsまで冷却されて、往き側の熱媒主管40aに送出される。
【0081】
したがって、冷房期には、冷房期の設定熱媒温度tsまで冷却された低温の二次側熱媒nが、二次側の熱媒給送ポンプp2の運転により、各熱媒往き管26aを通じて各床吹出器具19の環状熱交換器22に供給される。
【0082】
そして、各床吹出器具19の環状熱交換器22に供給された低温の二次側熱媒nは、机下空間に吹き出される床下空気RA′との熱交換で空気RA′を冷却して自身は昇温した状態で、戻り熱媒nとして各熱媒還り管26b及び還り側の熱媒主管40bを通じて中継熱交換器33の二次側の熱媒入口39bに戻される。
【0083】
また、中継熱交換器33における一次側の熱媒出口34bから一次側の熱媒返送路35bに送出された戻り冷水C′は、その一部が短絡管38を通じ合流三方弁vtに還送され、戻り冷水C′の他部は、冷水戻し管37aを通じて冷水還り管31bに戻される。
【0084】
一方、この配管システムでは、暖房期には、図7に示されるように、温水取出管36b及び温水戻し管37bの夫々に介装された開閉弁vkが開弁されるとともに、冷水取出管36a及び冷水戻し管37aの夫々に介装された開閉弁vkが閉弁され、これにより、一次側の熱媒給送ポンプp1が運転されることで、温水往き管32aにおける温水Hが一次側の熱媒として温水取出管36bを通じて取り出される。
【0085】
温水取出管36bを通じて取り出された温水Hは、短絡管38を通じて還送された戻り温水H′と合流三方弁vtで混合され、この混合された温水Hが一次側の熱媒給送管35aを通じて中継熱交換器33における一次側の熱媒入口34aに供給される。
【0086】
中継熱交換器33における一次側の熱媒入口34aに供給された温水Hは、中継熱交換器33において、二次側の熱媒入口39bから中継熱交換器33に流入した二次側の熱媒n(水)と熱交換し、そして、この熱交換により二次側の熱媒nを加熱するのに伴い自身は降温した状態で、中継熱交換器33における一次側の熱媒出口34bから戻り温水H′として一次側の熱媒返送路35bに送出される。
【0087】
また、合流三方弁vtにおいて温水H,H′の混合比が熱媒温度センサ41の計測温度tに応じ自動調整されて、中継熱交換器33に供給される温水Hの温度が調整されることにより、二次側の熱媒入口39bから中継熱交換器33に流入した二次側の熱媒nは、温水Hとの熱交換において暖房期の設定熱媒温度tsまで加熱されて、往き側の熱媒主管40aに送出される。
【0088】
したがって、暖房期には、暖房期の設定熱媒温度tsまで加熱された高温の二次側熱媒nが、二次側の熱媒給送ポンプp2の運転により、各熱媒往き管26aを通じて各床吹出器具19の環状熱交換器22に供給される。
【0089】
そして、各床吹出器具19の環状熱交換器22に供給された高温の二次側熱媒nは、机下空間に吹き出される床下空気RA′との熱交換で空気RA′を加熱して自身は降温した状態で、戻り熱媒nとして各熱媒還り管26b及び還り側の熱媒主管40bを通じて中継熱交換器33の二次側の熱媒入口39bに戻される。
【0090】
また、中継熱交換器33における一次側の熱媒出口34bから一次側の熱媒返送路35bに送出された戻り温水H′は、その一部が短絡管38を通じ合流三方弁vtに還送され、戻り温水H′の他部は、温水戻し管37bを通じて温水還り管32bに戻される。
【0091】
空調対象室1における各机2には、空調状態に関する“暑い”又は“寒い”の申告を受け付ける申告器42が設置されており、その机2を使用している居者は、この申告器42に対して“暑い”又は“寒い”の申告を択一的に行うことができる。
【0092】
空調対象室1における全ての床吹出器具19を統括的に制御する制御器43が設けられており、この制御器43は、各机2の申告器42に対して“暑い”の申告がある毎に、対応する机下の床吹出器具19における吹出ファン20の出力を所定の調整幅だけ冷房期には上昇させ、また暖房期に低下させて、対応する床吹出器具19から机下空間に吹き出される床吹出空気FAの風量Qを所定の調整風量ΔQだけ冷房期には増大させ、また暖房期には減少させる。
【0093】
また、制御器43は、各机2の申告器42に対して“寒い”の申告がある毎に、対応する机下の床吹出器具19における吹出ファン20の出力を所定の調整幅だけ冷房期には低下させ、また暖房期には上昇させて、対応する床吹出器具19から机下空間に吹き出される床吹出空気FAの風量Qを所定の調整風量ΔQだけ冷房期には減少させ、また暖房期には増大させる。
【0094】
即ち、冷房期には、床下空間17における空気RA′を環状熱交換器22で更に冷却した空気が、床吹出空気FAとして床吹出器具19から机下空間に吹き出されることから、床下空間17における空気RA′をそのまま机下空間に吹き出すのに比べて、各机2を使用している居者の各々に対する冷房効果を効果的に高めることができる。
【0095】
そして、このように居者の各々に対する冷房効果が効果的に高められることで、居者の“暑い”又は“寒い”の自己申告による吹出風量Qの増減調整において風量Qの調整範囲が限られるとしても、床下空間17おける空気RA′をそのまま吹き出す場合で、その吹出風量を単に増減調整するのに比べて、吹出風量Qの増減に伴い、対応する環状熱交換器22での単位時間当たりの空気冷却量も追随的に増減する分、居者に対する冷房効果を効果的に調整することができる。
【0096】
同様に、暖房期には、床下空間17における空気RA′を環状熱交換器22で更に加熱した空気が、床吹出空気FAとして床吹出器具19から机下空間に吹き出されることから、床下空間17における空気RA′をそのまま机下空間に吹き出すのに比べて、各机2を使用している居者の各々に対する暖房効果を効果的に高めることができる。
【0097】
そして、このように居者の各々に対する暖房効果が効果的に高められることで、居者の“暑い”又は“寒い”の自己申告による吹出風量Qの増減調整において風量Qの調整範囲が限られるとしても、床下空間17おける空気RA′をそのまま吹き出す場合で、その吹出風量を単に増減調整するのに比べて、吹出風量Qの増減に伴い、対応する環状熱交換器22での単位時間当たりの空気加熱量も追随的に増減する分、居者に対する暖房効果を効果的に調整することができる。
【0098】
したがって、本例の空調システムによれば、暑さや寒さの感覚の個人差に対応することを目的とする個別空調の機能を効果的に向上させることができる。
【0099】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
【0100】
前述の実施形態では、環状熱交換器22に対する配管システムにおいて中継熱交換器33が設けられる例を示したが、これに代え、中継熱交換器33を省略して、図8に示されるように、合流三方弁vtで混合された冷水C又は温水Hが、熱媒rとして、熱媒給送管35aから分岐した複数の熱媒往き管26aを通じて、環状熱交換器22の各々に直接に供給されるようにしてもよい。
【0101】
また、環状熱交換器22に供給される熱媒rは、空調機6などの冷温水使用機器に供給される冷水Cや温水Hに限らず、空調機6などの冷温水使用機器から送出される戻り冷水CRや戻り温水HR、あるいは、環状熱交換器22において蒸発気化させる凝縮冷媒など、どのような熱媒であってもよい。
【0102】
図9に示されるように、ダクト接続部45aを備える環状チャンバ45を設けて、この環状チャンバ45を、床吹出器具19における吹出口部19aの周部に配置するとともに、環状熱交換器22で冷却又は加熱された空気RA′のうちの一部を環状チャンバ45の内部に対して送出させる側部吹出口47を、床吹出器具19の外周部に形成するようにしてもよい。
【0103】
このようにすれば、例えば図10に示されるように、環状チャンバ45を装備した床吹出器具19を机下空間において床15に設置するとともに、環状チャンバ45のダクト接続部45aに接続したホース状の送風ダクト48を、机2おけるパーテーション部分49に接続し、これにより、環状熱交換器22で冷却又は加熱された床下空気RA′の一部が、床吹出空気FAとして床吹出器具19における上面吹出口部19aから机下空間に吹き出されるのに伴い、環状熱交換器22で冷却又は加熱された床下空気RA′の他部が、送風ダクト48及びパーテーション部分49の内部風路49aを通じてパーテーション部分49の個別吹出口49bからも吹き出されるようにすることができる。
【0104】
前述の実施形態では、床吹出器具19から吹き出される床吹出空気FAの風量Qが調整されることに伴って、環状熱交換器22での単位時間当たりの空気加熱量が成り行き変化するようにしたが、環状熱交換器22に供給する熱媒nの流量や温度を調整して環状熱交換器22での単位時間当たりの空気加熱量を調整することで、床吹出器具19から吹き出される床吹出空気FAの温度を調整するようにしてもよい。
【0105】
また、環状熱交換器22での単位時間当たりの空気加熱量を調整することで、床吹出器具19から吹き出される床吹出空気FAの温度を調整する場合、床吹出器具19から吹き出される床吹出空気FAの風量は可変又は固定のいずれにしてもよい。
【0106】
前述の実施形態では、環状熱交換器22で冷却又は加熱された空気RA′を吹出ファン20により床吹出器具19の吹出口部19aから吹き出させるようにしたが、床下空間17に対する空気の供給圧力により、床下空間17における空気RA′を環状熱交換器22を通じて床吹出器具19の吹出口部19aから吹き出されるようにしてもよい。
【0107】
床吹出器具19を通じて床上空間に吹き出させるために床下空間17に供給する空気は、空調対象室1からの還気空気RAに限らず、外調機や空調機で湿度や温度を調整した調整外気あるいは調整空気であってもよい。
一例としては、外調機で湿度調整した空気を天井部から空調対象室に吹き出し供給するのに併行して、空調対象室から床下空間に供給される還気空気を環状熱交換器22で温度調整して床吹出器具19から床上の空調対象室に吹き出し供給してもよく、
あるいは、外調機で湿度調整した空気を床下空間に供給するのに併行して、床下空間に供給された空気を環状熱交換器22で温度調整して床吹出器具19から床上の空調対象室に吹き出し供給するようにしてもよい。
【0108】
また、床下空間17に空気を供給するのに、前述の実施形態で示したように空調対象室1のおける空気RAを床吸込口18を通じて床下空間17に供給するのに代えて、ダクトを通じて床下空間17に供給するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明による環状熱交換器及び床吹出器具は、種々の用途の居室に対する床吹出式空調に利用することができる。
【符号の説明】
【0110】
19 床吹出器具
19a 吹出口部
K 放射状の空気流動経路
22 環状熱交換器
24a,24b 伝熱管
25 タッピングユニット
i 熱媒入口
o 熱媒出口
26a 熱媒往き管
26b 熱媒還り管
27a 入口側管接続部
27b 出口側管接続部
ri 入口側連通路
ro 出口側連通路
rm 渡り連通路
25a 箱状ケース
25b 仕切板
28a,28b 板状基材
29 伝熱フィン
28c 閉塞板
16 躯体スラブ(支持体)
30 ジャッキ機構
RA′ 空気
20 吹出ファン
47 周部吹出口(分流路)
45a ダクト接続部
48 送風ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10