(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】端子接続機構
(51)【国際特許分類】
H01R 13/627 20060101AFI20220412BHJP
H01R 13/641 20060101ALI20220412BHJP
H01R 13/74 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H01R13/627
H01R13/641
H01R13/74 Z
(21)【出願番号】P 2018130368
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 光輝
(72)【発明者】
【氏名】仙波 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】高野 直人
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-157591(JP,A)
【文献】実開平05-009133(JP,U)
【文献】特開平06-051160(JP,A)
【文献】実開昭48-078391(JP,U)
【文献】特開平09-144203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/74
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のプラグと、前記プラグに取り付けられる円筒状のソケットとを有し、前記ソケットを前記プラグに対して押し込むことでロック状態となり、さらに押し込むことでロックが解除される端子接続機構であって、
前記プラグを露出させ、前記プラグからの距離が一様でない縁を有する貫通孔が形成された枠部と、
前記ソケットをプラグ取り付け部分が突出した状態で保持するソケットハウジングと、備え、
前記ソケットハウジングの前記ソケット突出側に、前記ロック状態となる押し込み位置において、前記プラグの軸に対する回転角度により、前記枠部との接触状態、非接触状態が切り替え可能な突起部が形成されていることを特徴とする端子接続機構。
【請求項2】
前記貫通孔は、円周の一部に切り欠きが少なくとも2箇所形成された縁を有し、
前記ソケットハウジングには、前記突起部が少なくとも2箇所形成されていることを特徴とする請求項1に記載の端子接続機構。
【請求項3】
前記枠部は、スライドすることで前記プラグを隠す移動枠部を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の端子接続機構。
【請求項4】
前記枠部と前記ソケットハウジングに、前記ロック状態となる押し込み位置において、前記枠部と前記突起部とが接触状体となる回転角度の目安となるマークが付されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の端子接続機構。
【請求項5】
前記枠部と前記ソケットハウジングに、前記ロック状態となる押し込み位置において、前記枠部と前記突起部とが非接触状体となる回転角度の目安となるマークが付されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の端子接続機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流計測装置等の電子機器にケーブルを接続するための端子接続機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電流計測装置等の電子機器にケーブルを接続するための端子接続機構として、
図9に示すようなバインディングポスト方式が広く用いられている。バインディングポスト端子510は、電子機器の側面500(例えば、背面に設けられた端子台部分)から水平に突出した金属製の支柱511とキャップ512とで構成される。キャップ512はねじ部を備え、支柱511にはねじ穴が形成されており、支柱511にケーブルの導体を接続した状態でキャップ512をねじ止めすることにより、ケーブルが端子に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バインディングポスト方式は、ケーブルと端子とをねじの締結により強固に接続するため、信頼性と安全性に優れるが、接続や取り外しの際に、ねじを締めたり弛めたりしなければならず、操作性が十分とはいえない。
【0005】
一方で、プラグとソケットを用いた単純なプッシュプル方式の端子接続機構とすると、ソケットの抜き差し動作で接続や取り外しを行なえるため操作性は優れるが、信頼性と安全性が十分とはいえない。
【0006】
そこで、本発明は、信頼性と安全性に優れ、操作性の高い端子接続機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の端子接続機構は、円柱状のプラグと、前記プラグに取り付けられる円筒状のソケットとを有し、前記ソケットを前記プラグに対して押し込むことでロック状態となり、さらに押し込むことでロックが解除される端子接続機構であって、前記プラグを露出させ、前記プラグからの距離が一様でない縁を有する貫通孔が形成された枠部と、前記ソケットをプラグ取り付け部分が突出した状態で保持するソケットハウジングと、備え、前記ソケットハウジングの前記ソケット突出側に、前記ロック状態となる押し込み位置において、前記プラグの軸に対する回転角度により、前記枠部との接触状態、非接触状態が切り替え可能な突起部が形成されていることを特徴とする。
前記貫通孔は、円周の一部に切り欠きが少なくとも2箇所形成された縁を有し、前記ソケットハウジングには、前記突起部が少なくとも2箇所形成されていてもよい。
前記枠部は、スライドすることで前記プラグを隠す移動枠部を含んでいてもよい。
前記枠部と前記ソケットハウジングに、前記ロック状態となる押し込み位置において、前記枠部と前記突起部とが接触状体となる回転角度の目安となるマークが付されていてもよい。
前記枠部と前記ソケットハウジングに、前記ロック状態となる押し込み位置において、前記枠部と前記突起部とが非接触状体となる回転角度の目安となるマークが付されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信頼性と安全性に優れ、操作性の高い端子接続機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の端子接続機構を構成するプラグとソケットを説明する図である。
【
図2】プラグとソケットを含んだ端子接続機構の斜視図である。
【
図3】本実施形態のプッシュプル方式を説明する図である。
【
図6】ソケットをプラグから取り外したときの図である。
【
図9】従来のバインディングポスト方式の端子接続機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の端子接続機構100を構成するプラグ110とソケット120を説明する図である。
【0011】
プラグ110は、円柱状に形成され、電子機器の側面等に固定されている。ソケット120は、円筒状に形成され、プラグ110に取り付けられる。本図の例では、プラグ110は、縦方向に2つ並べて配置されている(プラグ110a、プラグ110b)
ソケット120は、プラグ取り付け部分が突出した状態でソケットハウジング124に保持されており、ソケットハウジング124内で図示しないケーブルと接続している。ソケット120をプラグ110に取り付けることで、ケーブルと電子機器とを電気的に接続することができる。
【0012】
プラグ110の周囲には、プラグ110を外部に露出させる貫通孔132が形成された枠部130が配置されている。本実施形態において、枠部130は、プラグ110の並び方向にスライド可能な移動枠部130aとプラグ110に対して固定された固定枠部130bとを含んでいる。
【0013】
移動枠部130aは、上下にスライドさせることによりプラグ110の露出状態を切り換えることができ、シャッターとして機能するようになっている。ソケット120を取り付けていないときは、移動枠部130aは自重により下側にスライドしており、プラグ110を隠している(本図では上側にスライドさせた状態を示している)。
【0014】
プラグ110aを露出させる貫通孔132aは、移動枠部130aに形成された矩形状の孔であり、プラグ110bを露出させる貫通孔132bは、移動枠部130aの下端と固定枠部130bの上端との間に矩形状に形成される。
【0015】
いずれの貫通孔132とも、プラグ110の露出状態において、その縁とプラグとの距離が一様でないようになっている。すなわち、プラグ110からの距離が相対的に近い縁と相対的に遠い縁とを有している。本実施形態ではいずれの貫通孔132とも矩形状であるため、プラグ110の斜め方向に位置する角に位置する縁がプラグ110から最も遠くなっている。
【0016】
ソケットハウジング124のソケット120突出側には突起部125が形成されている。本実施形態では、ソケット120を挟む位置に2箇所の突起部(125a、125b)が形成されている。2箇所の突起部125が並ぶ方向を便宜的に上下方向とし、ケーブルはソケット120突出側と反対側の下方向に引き出されているものとする。操作者が自然な感覚でソケット120を抜き差しする場合、ソケット120はこの方向(縦方向)で操作される。
【0017】
図2は、プラグ110とソケット120を含んだ端子接続機構100の斜視図であり、シャッターとして機能する移動枠部130aを上方にスライドさせ、プラグ110をソケット120に取り付ける際の状態を示している。
【0018】
ソケット120とプラグ110との着脱方法は、プッシュプル方式であり、ソケット120をプラグ110に押し込んだときに自動的にロックがかかり、さらに押し込むことでロックが解除される公知のシステムを採用している。
【0019】
このようなシステムは、例えば、
図3(a)に示すような構成で実現することができる。なお、本図では、枠部130と突起部125とを省略している。
【0020】
本図に示すように、プラグ110には、根元側に所定の幅を有するくびれ部を形成し、この幅よりも狭い幅を有する環状のプラグ側ロックリング111を嵌め込んでおく。プラグ側ロックリング111の外径は、プラグ110のくびれ部以外の外径と概一致するように設計する。一方、ソケット120には、内側の入口付近に幅の狭い周状の溝を形成し、ソケット側ロックリング123を嵌め込んでおく。
【0021】
ソケット120をプラグ110に押し込むと、
図3(b)に示すように、ソケット側ロックリング123に押されることで、プラグ側ロックリング111がくびれ部の根元側に移動する。これにより生じたくびれ部先端側の溝にソケット側ロックリング123が嵌り込むことで、ソケット120がプラグ110にロックされ、引き抜くことができなくなる。このとき、ソケット120は、プラグ110の軸を中心に軸回転可能なようになっている。
【0022】
ロックを解除する場合には、ソケット120をさらに押し込むようにする。これにより、
図3(c)に示すように、ソケット側ロックリング123がプラグ側ロックリング111に乗り上がる。
【0023】
この状態でソケット120を引っ張ると、
図3(d)に示すように、ソケット側ロックリング123とともにプラグ側ロックリング111がくびれ部の先端側まで移動する。これによりソケット側ロックリング123の移動を妨げる段差がなくなるため、ソケット120をプラグ110から引き抜くことができる。
【0024】
ところで、このようなプッシュプル方式を採用した場合、ソケット120をプラグ110に押し込む動作で、ロックとロック解除とが行なわれる。このため、取り付けの際に、強い力でソケット120を押し込むと、ロックを意図しているにもかかわらず、
図3(c)に示す位置までソケット120が一気に押し込まれてロック解除状態に移行してしまうおそれがある。
【0025】
そこで、本実施形態の端子接続機構100では、プラグ110の周囲に枠部130を配置し、ソケットハウジング124に突起部125を形成している。そして、突起部125と枠部130とは、ロック状態となる押し込み位置において、ソケット120のプラグ110に対する軸方向の回転角度により、接触状態と非接触状態とが切り替え可能となっている。
【0026】
本実施形態では枠部130の貫通孔132を矩形状とし、突起部125をソケット120の上下に配置しており、ソケットハウジング124が縦方向に向いている場合には、ロック状態となる押し込み位置において突起部125と枠部が接触する。このため、ソケット120をそれ以上押し込めないようになっている。一方、ソケットハウジング124が斜めに傾いている場合には、ロック状態となる押し込み位置において突起部125と枠部は接触しない。このため、ソケット120をさらに押し込んで、ロックが解除できるようになっている。
【0027】
この位置関係を操作者に明示するため、枠部130のソケット120に対する縦方向に三角形のマーク134を付し、斜め方向に丸のマーク135を付している(
図1参照)。また、ソケットハウジング124の縦方向に三角形のマーク126を付し、横方向に丸のマーク127を付している。三角形のマーク同士が重なる方向でソケット120を押し込むことでロック状態となり、丸のマーク同士が重なる方向でソケット120を押し込むことでロック解除状態となるようになっている。
【0028】
操作者は、ソケット120をプラグ110に取り付ける場合には、
図4に示すように、ソケットハウジング124を縦にし、移動枠部130aを上にスライドさせた状態で、突起部125が枠部130に突き当たるまでソケット120をプラグ110に押し込む。これによりロック状態となる。これ以上ソケット120を押し込むことはできないため、意図しないロック解除を防止することができる。このとき、操作者はソケットハウジング124の三角形のマーク126と枠部130の三角形のマーク134とを目安にすることができる。
【0029】
ロック状態のソケット120をプラグ110から取り外す場合には、
図5(a)に示すように、ソケット120を、プラグ110を軸に斜めに回転させる。これにより、突起部125の枠部130への突き当たり状態が解除される。このとき、操作者はソケットハウジング124の側面に付された丸形のマーク127と枠部130の丸形のマーク135とを目安にすることができる。
【0030】
この状態で、
図5(b)に示すように、ソケット120をさらに押し込むことでロックが解除される。これにより、ソケット120を引き抜くことができるようになり、
図6に示すように、ソケット120をプラグ110から取り外すことができる。
【0031】
このように、本実施形態の端子接続機構100は、ソケット120をプラグ110に対して押し込むことでロック状態となり、さらに押し込むことでロックが解除されるプッシュプル方式を採用するとともに、ソケットハウジング124に、ロック状態となる押し込み位置において、プラグ110に対する回転角度により、枠部130との接触状態、非接触状態が切り替え可能な突起部125が形成されているため、操作性が高く、信頼性と安全性にも優れている。
【0032】
上述の例では、枠部130を移動枠部130aと固定枠部130bとで構成していたが、
図7に示すように、全体が固定された枠部130としてもよい。この場合もプラグ110を露出させる貫通孔132を形成し、縁がプラグ110からの距離が一様でないようにする。
【0033】
また、枠部130に形成された貫通孔132は矩形状に限られない。プラグ110からの距離が一様でない縁を有すれば足りるため、プラグ110を中心とした正円形でなければよい。例えば、
図8(a)に示すように、周の一部に切り欠きが形成された円状であってもよい。この場合、ロック解除時に突起部125を切り欠き部分に合わせるようにソケットハウジング124を傾かせる。このとき、
図8に示すように、突起部125は1つとする。貫通孔120が矩形状等の場合であっても、突起部125を1つとしてもよい。
【0034】
周の一部に形成する切り欠きは2箇所でもよい。例えば、2箇所の切り欠きは対角線上に配置する。この場合、突起部125は2つでもよい。例えば、2つの突起部125は対角線上に配置する。突起部125が1つの場合、プラグ110やケーブルが重い場合、プラグ110がお辞儀して倒れが生ずるおそれがある。突起部125が2つの場合は、下部の突起部125が枠部130に当たるため、倒れを抑制することができる。
【0035】
ソケット120はプラグ110に対して回転して位置することができるため、突起部125が2つの場合は、上下どちらの向きにソケット120を接続しても、常に下半分に突起が位置するようになり、下部の突起部125を枠部130に当てることができる。
【0036】
また、ロック位置、ロック解除位置の目安となるマークは三角形や丸形には限られない。ロック位置、ロック解除位置いずれか一方の目安となるマークであってもよいし両方省いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
100…端子接続機構
110…プラグ
111…プラグ側ロックリング
120…ソケット
123…ソケット側ロックリング
124…ソケットハウジング
125…突起部
126…三角形マーク
127…丸形マーク
130…枠部
130a…移動枠部
130b…固定枠部
132…貫通孔
134…三角形マーク
135…丸形マーク