(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】バルブ駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/53 20060101AFI20220412BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F16K31/53
F16K31/04 A
(21)【出願番号】P 2018132598
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】横江 悟
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-056734(JP,A)
【文献】特開2006-057763(JP,A)
【文献】特開2014-047835(JP,A)
【文献】特表平9-504352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/53
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を駆動させる弁体駆動機構を有するバルブ駆動装置であって、
前記弁体駆動機構は、
モータと、
前記モータにより回転駆動させられる駆動側歯車と、
前記駆動側歯車と噛合した状態において、前記駆動側歯車の回転により前記弁体を回転させる従動側歯車と、
前記駆動側歯車が前記従動側歯車と噛合して前記モータの動力を前記従動側歯車に伝達する動力伝達状態と、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除された動力非伝達状態とを切換可能な動力伝達切換部と、
を備え、
前記動力伝達切換部は、
前記駆動側歯車に形成され、当該駆動側歯車の半径方向に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、
前記従動側歯車に対して回動可能に前記従動側歯車に取り付けられ、前記凸部と係合可能な回転規制部と、
を備え、
前記回転規制部は、
前記従動側歯車に挿入されている回動軸と、
前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の一端側に設けられ、前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢されているレバー部と、
前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の他端側に設けられている足部と、
を有し、
前記足部は、前記レバー部を付勢する付勢力による前記回動軸の傾きを規制する、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ駆動装置において、前記足部は前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバルブ駆動装置において、前記足部は前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向内側に向けて延びている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載のバルブ駆動装置において、前記従動側歯車には、半径方向外側、かつ前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車の一方側の面から突出する凸状部が形成され、
前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車を貫通する孔部が形成され、
前記孔部の一部は、前記凸状部に形成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のバルブ駆動装置において、前記孔部の一部は、前記従動側歯車の歯の歯底円よりも前記従動側歯車の半径方向外側に位置している、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のバルブ駆動装置において、前記凸状部には、前記孔部に対応する位置に、前記従動側歯車の軸線方向に沿って延び、前記回動軸を支持する支持面が形成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、前記従動側歯車には、前記孔部と連通し、前記足部を挿入可能なスリット部が形成され、
前記従動側歯車の軸線方向において前記一方側の面と反対側の他方側の面には、前記スリット部に連通し、前記足部を収容するとともに、前記回転規制部の回動に伴う前記足部の回動を許容する足部収容部が形成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、前記回転規制部を前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢する付勢部材を備える、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項9】
請求項8に記載のバルブ駆動装置において、前記付勢部材は前記従動側歯車の軸部に保持されるねじりばねであり、
前記従動側歯車には、前記ねじりばねの一端を保持する保持部が設けられ、
前記ねじりばねの他端は、前記回転規制部を付勢している、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、前記回転規制部のレバー部は、前記駆動側歯車が第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部及び前記駆動側歯車が前記第1方向と反対の方向である第2方向に回転した際に前記凸部と接触する第2接触部を備え、
前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記回転規制部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、
前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記回転規制部は当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態を維持する、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項11】
請求項10に記載のバルブ駆動装置において、前記従動側歯車は、前記凸部が前記第2接触部と接触して、前記回転規制部が当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動する際、前記第2接触部が前記凸部により当該凸部の回転方向に押されて前記従動側歯車が前記駆動側歯車の回転方向に応じた回転方向に回転することを規制する連れ回り防止部を備えている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流量を調節するバルブを駆動するバルブ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫等の庫内を冷却するために、冷媒を供給する冷媒バルブ装置がある。この冷媒バルブ装置には、バルブを駆動させて庫内に供給する冷媒の供給量を調整するバルブ駆動装置を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷媒バルブ装置は、冷媒入口、冷媒出口及び弁座面を備えた基台において、前記冷媒入口及び前記冷媒出口のいずれか一方の口に偏った位置を中心に回転可能な弁体と、当該弁体を回転させる弁体駆動機構を備えている。弁体駆動機構は、ステッピングモータ(以下、モータという)と、当該モータの駆動軸と一体に回転するピニオンと、当該ピニオンと噛合し、弁体と一体に回転する出力歯車とを備えている。
【0005】
前記モータが回転すると、当該モータと一体に回転するピニオンを解して出力歯車、ひいては弁体も回転する。これにより、前記弁体は、前記冷媒入口及び前記冷媒出口のいずれか一方の口の開き具合を調整することができ、冷媒の供給量を調節することができる。
【0006】
この弁体駆動機構では、前記ピニオンを正回転方向に回転させることで、前記出力歯車及び前記弁体を第1の回転規制位置からモータを正回転方向に回転させた位置である第2の回転規制位置まで回転させることができる。
【0007】
ここで、冷媒の供給量を調整すべく前記モータを逆回転方向に回転させて第2の回転規制位置から第1の回転規制位置まで回転させると、前記出力歯車の腕部と前記ピニオンの被当接部とが当接し、ピニオンの前記逆回転方向への回転が規制された状態となる。これにより、前記逆回転方向への前記ピニオンの回転が規制された状態で前記モータが前記逆回転方向への回転を継続しようとするので、前記モータにおいて脱調が生じる。その結果、前記モータの脱調時に、前記腕部と前記被当接部とが衝突して騒音(衝突音)を発生させる場合がある。
【0008】
前記弁体駆動機構において、例えば、前記第1の回転規制位置における前記ピニオンから前記出力歯車への動力の伝達を切断することにより、前記モータの脱調を防止し、前記騒音の発生を抑制できる構成の実現を検討している。
【0009】
ところで、前記弁体駆動機構を前記第1の回転規制位置において前記ピニオンから前記出力歯車への動力の伝達を切断するように構成する場合、前記第1の回転規制位置から前記第2の回転規制位置へ前記出力歯車を回転させるために前記ピニオンと前記出力歯車とを噛合せて動力伝達が可能とする構成が望ましい。つまり、前記弁体駆動機構において動力切換手段を備えることが望ましい。この動力切換手段は、例えば、前記ピニオンを前記第1の回転規制位置において逆転方向に回転させた場合、前記ピニオンと前記出力歯車とを噛合わせず、前記ピニオンを前記正転方向に回転させた場合、前記ピニオンと前記出力歯車とが噛合するクラッチ機構等で構成することを検討している。
【0010】
ここで、上記クラッチ機構において、動力伝達状態の切換を行う構成の一つとして、例えば、前記出力歯車側に設けられ、前記ピニオンに向けて付勢されたレバー部材を回動させることでレバー部材と前記ピニオンとの接触状態と、非接触状態とを切り換えて動力伝達状態の切換を行う構成を検討している。
【0011】
この構成では、回動軸を中心に前記レバー部材を回動可能とし、前記ピニオンに向けて前記レバー部材を付勢することにより、前記レバー部材が前記ピニオンと接触した状態と、前記レバー部材を付勢する付勢力に抗して前記ピニオンから離間した状態とを切り換えることができる。このような構成では、状態を切り換えるために、前記ピニオンに向けて付勢されたレバー部材を円滑に回動させることが望ましい。
【0012】
しかしながら、前記回動軸の軸線方向において、レバー部材において前記付勢力が作用する部位と、前記回動軸の軸線方向における前記回動軸の中心とがずれた位置にあると、前記回動軸は、前記付勢力により前記軸線方向において倒れが生じ、前記軸線方向において前記回動軸に傾きが生じる場合がある。その結果、前記レバー部材の回動に抉りが生じることや前記レバー部材が回動する際における前記出力歯車との摩擦力が増大することにより、前記レバー部材の円滑な回動が妨げられることになる。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、騒音を低減するとともに回動軸の傾きを抑制することで円滑な動力伝達切換を行うことができる動力伝達切換部を備えるバルブ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するため、本発明に係るバルブ駆動装置は、弁体を駆動させる弁体駆動機構を有するバルブ駆動装置であって、前記弁体駆動機構は、モータと、前記モータにより回転駆動させられる駆動側歯車と、前記駆動側歯車と噛合した状態において、前記駆動側歯車の回転により前記弁体を回転させる従動側歯車と、前記駆動側歯車が前記従動側歯車と噛合して前記モータの動力を前記従動側歯車に伝達する動力伝達状態と、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除された動力非伝達状態とを切換可能な動力伝達切換部と、を備え、前記動力伝達切換部は、前記駆動側歯車に形成され、当該駆動側歯車の半径方向に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、前記従動側歯車に対して回動可能に前記従動側歯車に取り付けられ、前記凸部と係合可能な回転規制部と、を備え、前記回転規制部は、前記従動側歯車に挿入されている回動軸と、前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の一端側に設けられ、前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢されているレバー部と、前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の他端側に設けられている足部と、を有し、前記足部は、前記レバー部を付勢する付勢力による前記回動軸の傾きを規制する、ことを特徴とする。
【0015】
本態様における前記回転規制部は、前記従動側歯車に挿入されている回動軸と、前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の一端側に設けられ、前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢されているレバー部と、前記回動軸の軸線方向において当該回動軸の他端側に設けられている足部と、を有し、前記足部は、前記レバー部を付勢する付勢力による前記回動軸の傾きを規制するので、前記回動軸の傾きを抑制することができ、動力伝達切換部における動力伝達切換を円滑にすることができる。
【0016】
さらに、本態様では、動力伝達切換部において駆動側歯車と従動側歯車との噛合状態を切り換えることで動力伝達の状態を切り換えることができ、前記モータを脱調させる必要がないので、騒音を低減させることができる。
【0017】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記足部は前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びている、ことを特徴とする。
【0018】
尚、本態様において「前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びている」とは、付勢方向に対して180度反転した方向にのみ限定されるものではなく、付勢方向に対して反対方向に作用する力のベクトル成分を含む方向に延びているものも含んでいる。
【0019】
ここで、前記レバー部は付勢力により付勢されている。これにより前記回動軸には、前記付勢力により前記回動軸を軸線方向に対して傾けさせる回転モーメントが生じる。本態様における前記足部は前記レバー部が付勢される方向と反対の方向に延びているので、前記回転モーメントにより前記回転軸が傾こうとすると、前記足部が前記従動側歯車に押し付けられることになるので、前記回転軸が傾こうとすることを確実に規制することができる。
【0020】
本態様における前記足部は前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向内側に向けて延びている、ことを特徴とする。
【0021】
ここで、前記回転規制部は、前記レバー部を駆動側歯車の凸部と係合可能な構成とするため、前記従動側歯車において当該従動側歯車の半径方向外周側に近い位置に設ける必要がある。したがって、前記足部を前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向外側に向けて延ばす構成とすると、前記足部の長さが短くなる。
本態様によれば、前記足部が前記回動軸から前記従動側歯車の半径方向内側に向けて延びているので、前記足部を前記半径方向外側に延ばした場合に比べて前記足部の長さを長くすることができる。その結果、前記回動軸を倒れ難くすることができる。
【0022】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記従動側歯車には、半径方向外側、かつ前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車の一方側の面から突出する凸状部が形成され、前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車を貫通する孔部が形成され、前記孔部の一部は、前記凸状部に形成されている、ことを特徴とする。
【0023】
本態様における前記従動側歯車には、半径方向外側、かつ前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車の一方側の面から突出する凸状部が形成され、前記従動側歯車の軸線方向において前記従動側歯車を貫通する孔部が形成され、前記孔部の一部は、前記凸状部に形成されているので、前記回転規制部の前記回動軸を前記従動側歯車の前記半径方向外周側に近い位置に配置することができ、前記足部の長さをより長くすることができる。その結果、前記回動軸の倒れを確実に抑制することができる。
【0024】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記孔部の一部は、前記従動側歯車の歯の歯底円よりも前記従動側歯車の半径方向外側に位置している、ことを特徴とする。
本態様では、前記回転規制部の前記回動軸の一部を前記従動側歯車の歯底円の外側に配置することができ、前記足部の長さをより長くすることができる。その結果、前記回動軸の倒れを確実に抑制することができる。
【0025】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記凸状部には、前記孔部に対応する位置に、前記従動側歯車の軸線方向に沿って延び、前記回動軸を支持する支持面が形成されている、ことを特徴とする。
【0026】
本態様における前記凸状部には、前記孔部に対応する位置に、前記従動側歯車の軸線方向に沿って延び、前記回動軸を支持する支持面が形成されているので、前記足部に加えて、前記支持面も前記回動軸を支持して前記回動軸の倒れを抑制することができる。その結果、前記回転規制部の前記回動軸を中心とした回動をより円滑にすることができる。
【0027】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記従動側歯車には、前記孔部と連通し、前記足部を挿入可能なスリット部が形成され、前記従動側歯車の軸線方向において前記一方側の面と反対側の他方側の面には、前記スリット部に連通し、前記足部を収容するとともに、前記回転規制部の回動に伴う前記足部の回動を許容する足部収容部が形成されている、ことを特徴とする。
【0028】
本態様における前記従動側歯車には、前記孔部と連通し、前記足部を挿入可能なスリット部が形成され、前記従動側歯車の軸線方向において前記一方側の面と反対側の他方側の面には、前記スリット部に連通し、前記足部を収容するとともに、前記回転規制部の回動に伴う前記足部の回動を許容する足部収容部が形成されている。したがって、前記足部は、前記従動側歯車の他方側の面に設けられた足部収容部に収容されているので、前記軸線方向における前記弁体駆動機構のサイズの小型化を図ることができる。
【0029】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記回転規制部を前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢する付勢部材を備える、ことを特徴とする。
本態様によれば、上述した作用効果を得ることができる。
【0030】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記付勢部材は前記従動側歯車の軸部に保持されるねじりばねであり、前記従動側歯車には、前記ねじりばねの一端を保持する保持部が設けられ、前記ねじりばねの他端は、前記回転規制部を付勢している、ことを特徴とする。
【0031】
本態様における前記付勢部材は前記従動側歯車の軸部に保持されるねじりばねであり、前記従動側歯車には、前記ねじりばねの一端を保持する保持部が設けられ、前記ねじりばねの他端は、前記回転規制部を付勢しているので、前記従動側歯車における前記付勢部材の保持構成を簡素化することができる。
【0032】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記回転規制部のレバー部は、前記駆動側歯車が第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部及び前記駆動側歯車が前記第1方向と反対の方向である第2方向に回転した際に前記凸部と接触する第2接触部を備え、前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記回転規制部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記回転規制部は当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態を維持する、ことを特徴とする。
【0033】
本態様における前記回転規制部のレバー部は、前記駆動側歯車が第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部及び前記駆動側歯車が前記第1方向と反対の方向である第2方向に回転した際に前記凸部と接触する第2接触部を備え、前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記回転規制部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記回転規制部は当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態を維持する。したがって、前記駆動側歯車の回転方向に応じて前記凸部と接触させる部位を切り換えるだけで前記モータから前記従動側歯車への動力の伝達又は切断を行うことができるので、前記回転規制部を簡素な構成とすることができる。
【0034】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記従動側歯車は、前記凸部が前記第2接触部と接触して、前記回転規制部が当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動する際、前記第2接触部が前記凸部により当該凸部の回転方向に押されて前記従動側歯車が前記駆動側歯車の回転方向に応じた回転方向に回転することを規制する連れ回り防止部を備えている、ことを特徴とする。
【0035】
本態様では、連れ回り防止部により前記駆動側歯車による前記従動側歯車の連れ回り回転を規制することができ、前記駆動側歯車の空転状態を維持し、前記動力非伝達状態を確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、前記足部が、前記レバー部を付勢する付勢力による前記回動軸の傾きを規制するので、前記回動軸の傾きを抑制することができ、動力伝達切換部における動力伝達切換を円滑にすることができる。加えて、本発明における動力伝達切換部は駆動側歯車と従動側歯車との噛合状態を切り換えることで動力伝達の状態を切り換えることができ、前記モータを脱調させる必要がないので、騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】本実施形態に係るバルブ駆動装置の側断面図。
【
図3】バルブ駆動装置における弁体駆動機構の斜視図。
【
図4】バルブ駆動装置における弁体駆動機構の斜視図。
【
図7】弁体駆動機構における従動側部分の分解斜視図。
【
図12】回転規制部の足部と従動側歯車の足部収容部との関係を示す斜視図。
【
図13】(A)図は弁体を弁座面と反対の側から見た斜視図であり、(B)図は弁体を座面側から見た斜視図。
【
図14】各ステップにおける第1弁及び第2弁の開閉状態を示す図。
【
図15】出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図16】出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図17】出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図18】原点復帰動作における弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図19】原点復帰動作における弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図20】弁体駆動時における弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図21】弁体駆動時における弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図22】原点位置における出力側歯車と従動側歯車との関係を示す図。
【
図23】(A)図及び(B)図は駆動側歯車に対する従動側歯車の連れ回り回転を第2回転規制部で規制する状態を示す図。
【
図24】従動側歯車に対する回転規制部の回動軸の中心位置の関係を示す図。
【
図25】回転規制部に作用する付勢力と足部との関係を説明する模式図。
【
図26】(A)図及び(B)図はレバー部の第2接触部を曲面で構成することによる効果を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
【0039】
<<<実施形態>>>
<<<バルブ駆動装置の概要>>>
図1ないし
図4を参照して、本実施形態に係るバルブ駆動装置10について説明する。バルブ駆動装置10は、一例として冷蔵庫に搭載されて、庫内冷却用の冷媒(流体)の供給量を調整するものである。バルブ駆動装置10は、バルブ本体12と、バルブ本体12から延びる流入管14と、流入管14に平行に延びる第1流出管16及び第2流出管18と、バルブ本体12の上部を覆うカバー部材20とを備えている。尚、以下の説明では、便宜上、流入管14、第1流出管16及び第2流出管18の延設方向を上下方向とし、バルブ本体12を上側、流入管14、第1流出管16及び第2流出管18を下側として説明する。
【0040】
図2において、バルブ本体12は、ベース部材22と、モータ24と、密封カバー26と、基台本体28と、弁体駆動機構30とを備えている。基台本体28は、上面28aを有している。基台本体28には、流入管14、第1流出管16及び第1流出管16がそれぞれ取り付けられている。基台本体28の上部には、密封カバー26が取り付けられている。基台本体28と密封カバー26とは、バルブ室32を形成している。
【0041】
図3に示すように上面28aには、流体入口28bが形成されている。流体入口28bは、基台本体28に取りつけられた流入管14と連通している。バルブ室32内には流入管14から冷媒(流体)が供給される。
【0042】
一方で、基台本体28には、弁座構成部材34(
図2、
図3、
図7及び
図15ないし
図17参照)が取り付けられている。弁座構成部材34には、第1流出管16及び第2流出管18がそれぞれ取り付けられ、第1流出管16と連通する第1流体出口34aと、第2流出管18と連通する第2流体出口34bとが設けられている。流入管14からバルブ室32内に供給された流体は、第1流体出口34aから第1流出管16へ流出し、あるいは第2流体出口34bから第2流出管18へ流出する。
【0043】
図2に示すように、モータ24は、ステータ36と、駆動マグネット38が取り付けられたロータ40とを備えている。ステータ36は、密封カバー26を挟んでロータ40の周囲を取り囲むように配置されている。
【0044】
本実施形態において、ステータ36は、
図2に示すようにコア部材42を備えている。ステータ36のコア部材42には、駆動コイル37として巻線が巻かれている。ステータ36に巻かれた駆動コイル37(巻線)の一端は、不図示のモータ端子の一端に絡げて繋がれている。不図示のモータ端子は、不図示のコネクタ、あるいは基板等と電気的に接続されることで、ステータ36に電力を供給する。
【0045】
図2及び
図3に示すように、ロータ40は、駆動マグネット38と、駆動側歯車46と、支軸48とを備えている。支軸48には、駆動側歯車46と駆動マグネット38とが支軸48に対して回転可能に取り付けられている。駆動マグネット38は、駆動側歯車46に取り付けられている。支軸48の上端は、密封カバー26に形成された軸受部26aに支持され、支軸48の下端は、基台本体28に形成された軸受部28cに支持されている。本実施形態では、ステータ36(駆動コイル37)が励磁されると、ロータ40は駆動マグネット38により支軸48を回転中心としてバルブ室32内で回転するように構成されている。
【0046】
<<<弁体駆動機構の概要>>>
図3ないし
図12を参照して弁体駆動機構30の構成について説明する。
図3及び
図4に示すように、弁体駆動機構30は、モータ24と、駆動側歯車46と、従動側歯車50と、動力伝達切換部52とを備えている。動力伝達切換部52は後述するが、駆動側歯車46と従動側歯車50との間における動力伝達を動力を伝達する動力伝達状態と、動力を伝達しない動力非伝達状態とを切換可能に構成されている。本実施形態において動力伝達切換部52は、後述する駆動側歯車46の凸部46bと回転規制部62とを備えている。
【0047】
図5及び
図6に示すように駆動側歯車46は、下端部に歯車部46aが形成されている。
歯車部46aの上方には複数の凸部46bが形成されている。駆動側歯車46の円周方向において、凸部46bに対応する歯車部46aの歯は、ロック回避歯46cとして構成されている。
【0048】
複数の凸部46bは、駆動側歯車46の本体46dから駆動側歯車46の半径方向外側に突出している。本実施形態において、凸部46bは一例として平板状に形成されている。尚、凸部46bの形状は平板状に限定されるものではなく、後述する回転規制部62と係合可能な形状であればよい。本実施形態において、複数の凸部46bは、駆動側歯車46の円周方向において駆動マグネット38のN極、またはS極に対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0049】
本実施形態において駆動マグネット38の磁極の数は、一例として8極として構成されている。したがって、本実施形態では、凸部46bは、駆動側歯車46において4箇所設けられている。具体的には凸部46bは、駆動側歯車46において駆動側歯車46の円周方向に等間隔に設けられ、本実施形態において凸部46bは4箇所形成されているので90度ごとに設けられている(
図18ないし
図21参照)。本実施形態において凸部46bは、駆動側歯車46の歯車部46aの歯の歯厚に対応する厚みに形成されている。
【0050】
図6を参照するに、本実施形態においてロック回避歯46cの歯先円直径はd1に設定されている。一方、歯車部46aにおいてロック回避歯以外の歯の歯先円直径はd2に設定されている。本実施形態では、歯先円直径d1は歯先円直径d2よりも小さくなるように設定されている。尚、
図6における一点鎖線の円は、ロック回避歯46cの歯先円直径を図示しており、二点鎖線の円はロック回避歯46c以外の歯の歯先円直径を図示している。
【0051】
次いで、駆動側歯車46に対して従動回転する従動側歯車50の側の構成について説明する。
図2に示すように、従動側歯車50の半径方向中心には、支軸54が挿入されている。従動側歯車50は支軸54に対して回転可能に構成されている。従動側歯車50の下方には弁体56が設けられている。本実施形態において弁体56は、従動側歯車50と一体に支軸54に対して回転可能に構成されている。弁体56の下方には弁座構成部材34が設けられている。弁座構成部材34の上面は弁座面34cとして構成されている。
【0052】
また、弁座構成部材34の中心には貫通孔34dが設けられ、支軸54が挿入されている。尚、
図4において支軸54の図示を省略している。
図4において、符号R1が付された矢印は、駆動側歯車46における一方の回転方向である第1方向を示し、符号R2が付された矢印は、駆動側歯車46における他方の回転方向である第2方向を示している。
【0053】
従動側歯車50の上部には、保持部材58が取り付けられている。保持部材58には、支軸54が通されている。また、保持部材58は、上部にフランジ部58aが形成された円筒状の部材として構成され、筒状部58bに「付勢部材」としてのねじりばね60が通されて保持されている。また、従動側歯車50の上部には、レバー状の回転規制部62が取り付けられている。
【0054】
<<<従動側歯車について>>>
図4、
図7ないし
図10を参照するに、従動側歯車50には、外周部分に円周方向に沿って連続的に複数の歯が形成された噛合部50aと、歯が形成されていない非噛合部50bとが形成されている。また、従動側歯車50の外周部分において、噛合部50aの第2方向R2側の端部には、従動側歯車50の第1方向R1側への回転を規制する第1回転規制部50cが設けられ、噛合部50aの第1方向R1側の端部には、非噛合部50bが設けられている。
【0055】
さらに、非噛合部50bにおいて第1方向R1側の端部には、「連れ回り防止部」としての第2回転規制部50kが設けられている。尚、
図8及び
図9において、符号R1が付された矢印は、駆動側歯車46が第1方向に回転した際の従動側歯車50の従動回転方向を示し、符号R2が付された矢印は、駆動側歯車46が第2方向に回転した際の従動側歯車50の従動回転方向を示している。尚、
図18ないし
図21において第2回転規制部50kの符号を省略している。
【0056】
尚、本実施形態において、主に
図15のステップS0に示すように、駆動側歯車46の基準円直径と従動側歯車50の基準円直径とを比べると、従動側歯車50の基準円直径の方が大きく形成されている。さらに、駆動側歯車46の歯車部46aの歯の数は、従動側歯車50の噛合部50aに形成された歯の数よりも少なく形成されている。したがって、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとが噛合って回転する動力伝達状態において、モータ24の回転を従動側歯車50に減速させて伝達させることができるので、小さな動力源でも大きなトルクを得ることができ、後述する弁体56を確実に駆動させることができる。
【0057】
また、
図7ないし
図10に示すように、従動側歯車50の中心部には、支軸54が挿入される貫通孔50dが設けられている。さらに、従動側歯車50の上面50pにおいて貫通孔50dの周囲には、保持部材58の一部を受け入れて、保持部材58と係合する凹部50eが形成されている。凹部50eと係合した保持部材58は、支軸54とともに従動側歯車50の軸部を構成し、ねじりばね60を保持している。
【0058】
加えて、従動側歯車50の上面50pにおいて凹部50eを取り巻くように円弧状の保持部50fが設けられている。
図4に示すように保持部50fは、ねじりばね60の一端60aと係合し、一端60aを保持するように構成されている。また、従動側歯車50の上面50pには、「孔部」としての貫通孔50gと、レバー回動規制部50hと、スリット部50qが設けられている。スリット部50qは、貫通孔50gと連通し、一例として従動側歯車50の半径方向内側に向かって貫通孔50gから延びている。本実施形態において、スリット部50qは、後述する回転規制部62の足部62hを挿入可能なサイズに設定されている。
【0059】
図10において、従動側歯車50の下面50rには、足部収容部50sが形成されている。足部収容部50sは、下面50rにおいて、貫通孔50g及びスリット部50qに連通している。足部収容部50sは、スリット部50qを通された回転規制部62の足部62hを、回動軸62aを支点に回動させた際、足部62hの回動を許容するように形成されている。本実施形態において、足部収容部50sは下面50rにおいて貫通孔50gを中心として従動側歯車50の半径方向内側に延びる扇状の凹部として形成されている。本実施形態において下面50rに凹状の足部収容部50sを設けたので、足部62hが下面50rから突出することを防止でき、弁体駆動機構30の小型化を図ることができる。
【0060】
図8、
図9及び
図24において、従動側歯車50には、上面50pから上方に突出するとともに半径方向外側に向かって突出する凸状部50nが形成されている。従動側歯車50の円周方向において凸状部50nの一方側には第1回転規制部50cが形成され、他方側には第2回転規制部50kが形成されている。凸状部50nにおいて従動側歯車50の半径方向内側には、レバー回動規制部50hが形成されている。凸状部50nにおいてレバー回動規制部50hは、レバー状の回転規制部62の回動軸62aの一部及びレバー部62bの一部を受け入れるように半径方向外側に向かって凹状に形成されている。
【0061】
凸状部50nにおいて半径方向外側に向かって凹状に形成された部位には、貫通孔50gの少なくとも一部が入り込んでいる。ここで、
図24において符号50mが付された二点鎖線の円は、従動側歯車50の噛合部50aの歯の歯底円を示している。本実施形態において、貫通孔50gの一部が歯底円50mよりも半径方向外側に位置している。これにより、貫通孔50gを従動側歯車50の半径方向において外周に近い部位に配置することができ、後述する回転規制部62の足部62hの長さを長くすることができる。
【0062】
さらに、凸状部50nにおいて、レバー回動規制部50hの第1方向R1側には逃げ部50tと、逃げ部50tの第1方向R1側に支持面50uが形成されている。
図24に示すように、逃げ部50tは、凸状部50nにおいて回転規制部62の回動軸62aと接触しないように従動側歯車50の半径方向外側にレバー回動規制部50hよりも凹むように構成されている。これにより、
図24に示すように回転規制部62がレバー回動規制部50hと接触している状態において、回動軸62aと逃げ部50tとの間には隙間50vが形成される。尚、
図18ないし
図21において隙間50vの図示を省略している。
【0063】
図24に示すように、本実施形態において、隙間50vを設けることで、レバー回動規制部50hと回動軸62aとを離間した状態とし、レバー回動規制部50hと回転規制部62の第2接触部62dとの接触位置を回動軸62aから離れた位置とすることができる。
【0064】
ここで、逃げ部50tを設けない場合、回動軸62aとレバー回動規制部50hとが接触することになり、回動軸62aの製造上の寸法のバラツキにより、レバー部62bの先端位置が回動方向に対して不安定となる。その結果、駆動側歯車46の凸部46bとの接触位置が不安定となり、動力伝達切換部52における動力非伝達状態の維持を不安定にさせる。本実施形態では、逃げ部50tが回動軸62aとの間に隙間50vを形成するので、回動軸62aの製造上の寸法のバラツキの影響を低減させることができ、レバー部62bの先端位置を安定させることができる。
【0065】
支持面50uは、貫通孔50gの内周面の一部と面一の面として形成され、貫通孔50gから貫通孔50gの上部に位置する凸状部50nの上部まで延びている。したがって、回動軸62aは、軸線方向に沿って支持面50uに支持されている。
【0066】
<<<回転規制部について>>>
図11を参照するに、回転規制部62は、回動軸62aと、レバー部62bと、足部62hとを備えている。レバー部62bには、第1接触部62cと、第2接触部62dと、ばね保持部62eとが設けられている。ばね保持部62eは、「付勢部材接触部」としてのばね接触部62fと、ばね脱落防止部62gとを備えている。
【0067】
図4に示すように回転規制部62は従動側歯車50の上部に回動可能に取り付けられている。具体的には、従動側歯車50の貫通孔50g及びスリット部50q(
図8)に回転規制部62の回動軸62a及び足部62hが挿入されている。回転規制部62は従動側歯車50に対して回動軸62aを回動可能に構成されている。
【0068】
符号C1が付された点は、回転規制部62の回動軸62aの回動中心を示している。本実施形態において、回転規制部62は、回動軸62aの回動中心が従動側歯車50の歯底円50mの半径方向内側に位置するように、従動側歯車50に取り付けられている。
【0069】
図11及び
図24に示すように、本実施形態において、回動軸62aの軸線方向における一端側にレバー部62bが設けられ、他端側に足部62hが設けられている。本実施形態において、レバー部62bは回動軸62aから延びる円弧状のレバーとして形成されている。従動側歯車50に回転規制部62が取り付けられた際、レバー部62bにおいて従動側歯車50の半径方向外側には第2接触部62dが形成されている。本実施形態において第2接触部62dは、従動側歯車50の円周方向に沿って延びる曲面として構成されている。レバー部62bの先端には、第1接触部62c及びばね保持部62eが形成されている。
【0070】
図24に示すように、回転規制部62のレバー部62bのばね保持部62eのばね接触部62fには、ねじりばね60の他端60bが接触し、ねじりばね60の他端60bに押圧されている。ばね保持部62eにおいてばね脱落防止部62gは、ねじりばね60の他端60bを挟んで、ばね接触部62fの反対側に設けられている。ばね脱落防止部62gは、ばね接触部62fと接触しているねじりばね60の他端60bが回転規制部62の回動状態によりばね接触部62fから離間した際、ねじりばね60の他端60bがばね保持部62eから脱落することを防止する。したがって、簡素な構成でねじりばね60を保持できる。
【0071】
本実施形態において、ばね接触部62fはレバー部62bの先端に設けられている。ここで、ばね接触部62fを付勢するねじりばね60の付勢力は、
図24における時計回り方向の回転モーメントを回転規制部62に与える。この回転モーメントは、回動軸62aの中心C1からばね接触部62fまでの距離とねじりばね60の付勢力により大きさが決定される。本実施形態では、ばね接触部62fをレバー部62bの先端に設けることで、ねじりばね60の付勢力が小さくても大きなトルクを得ることができる。これにより、回転規制部62のレバー部62bが凸部46bと離間した際、ねじりばね60の付勢力によりレバー部62bの先端を、凸部46bと接触する前の位置である、レバー回動規制部50hに規制された位置に確実に戻すことができる。
【0072】
本実施形態において、回転規制部62は、レバー部62bの第2接触部62dが従動側歯車50のレバー回動規制部50hと接触してレバー回動規制部50hを押圧するように、ねじりばね60の付勢力を受けている。つまり、回転規制部62のレバー部62bは、ねじりばね60の付勢力により、従動側歯車50の半径方向外側に向かって付勢され、第2接触部62dとレバー回動規制部50hとが接触する位置で半径方向外側への回動を規制されている。
【0073】
これに対し、第2接触部62dをねじりばね60の付勢力に抗して従動側歯車50の半径方向内側に向かって押圧すると、回転規制部62は回動軸62aを中心として従動側歯車50の半径方向内側に向かって回動する。第2接触部62dに対する半径方向内側への押圧を解除すると、レバー部62bはねじりばね60の付勢力により第2接触部62dとレバー回動規制部50hとが接触する位置まで回動して戻る。
【0074】
図24において、符号F1が付された矢印は、ねじりばね60がばね接触部62fを付勢する方向を示している。本実施形態において、回転規制部62の足部62hは、ねじりばね60の他端60bにおける付勢方向F1に対して反対の方向に向けて回動軸62aから延びている。具体的には、足部62hは、従動側歯車50の半径方向内側方向に回動軸62aから延びている。ここで、付勢方向F1に対する反対の方向とは付勢方向F1を180度反転させた方向だけでなく、力のベクトル成分として付勢方向F1に対して反対の方向のベクトル成分を含むものも反対の方向とする。
【0075】
図25において、ねじりばね60がばね接触部62fを付勢すると、回転規制部62は、回動軸62aの軸線方向における中心C2を中心に
図25における時計回り方向に回動しようとする。しかしながら、本実施形態において、回転規制部62が時計回り方向に回動しようとすると、付勢方向F1と反対の方向に向けて延びる足部62hは、足部収容部50sに押し付けられることになり、回動軸62aの倒れを抑制し、回転規制部62の回動を規制する。さらに、支持面50uも足部62hと同様に、回転規制部62の回動を規制し、回動軸62aを支持することで回動軸62aが時計回り方向に倒れることを規制する。
【0076】
また、足部62hを従動側歯車50の半径方向内側方向に回動軸62aから延びるように構成したことにより、足部62hを従動側歯車50の半径方向外側方向に延ばした場合に比べて足部62hの長さを長くすることができる。その結果、回動軸62aを倒れ難くすることができる。
【0077】
<<<弁体について>>>
図7、
図13(A)及び
図13(B)を参照して弁体56について説明する。
図13(A)及び
図13(B)に示すように、弁体56は円盤状の部材として構成されている。弁体56の中央部には、貫通孔56aが設けられている。貫通孔56aには、支軸54が挿入される。弁体56の下面は、弁座構成部材34の弁座面34cと摺動する摺動面56bとして構成されている。弁体56において摺動面56bの一部が切り取られ、切り欠き部56cとして構成されている。
【0078】
図13(B)に示すように、切り欠き部56cは、弁体56の摺動面56bに対して上方側に凹んだ形状を成している。尚、切り欠き部56cには2箇所の貫通孔56dが設けられている。本実施形態では、一例として貫通孔56dには、従動側歯車50の下面から突出する不図示のボスが挿入され、従動側歯車50と弁体56とを一体に回転可能とするように構成されている。
【0079】
また、弁体56には、上下方向に貫通し、摺動面56bにおいて開口するオリフィス56eが設けられている。本実施形態において、オリフィス56eは、流体の経路において第1流体出口34a及び第2流体出口34bよりも幅が狭い部位を有している。尚、より好ましくは、オリフィス56eは、流体の経路において幅が最も狭い部位を有している。
【0080】
以上が、バルブ駆動装置10及び弁体駆動機構30の主要な構成であり、以下において、弁体駆動機構30による弁体56の流体の制御、及び駆動側歯車46と従動側歯車50との動力伝達状態、動力非伝達状態について順次説明する。
【0081】
<<<弁体による流体制御について>>>
図14ないし
図17を参照して、流体入口28bから第1流体出口34a及び第2流体出口34bの少なくとも一方への流体の流量制御について説明する。
図15のステップS0において、駆動側歯車46は従動側歯車50に対して原点位置に位置している。尚、原点位置における駆動側歯車46の歯と従動側歯車50の歯との関係については後述する。
【0082】
図15に示すようにステップS0(原点位置)において、弁体56の切り欠き部56cは、第1流体出口34a及び第2流体出口34bの上方に位置している。したがって、弁体56が第1流体出口34a及び第2流体出口34bを閉じていない状態であるので、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは開口した状態にある。これにより、流体入口28bからバルブ室32内に供給された流体は、第1流体出口34a及び第2流体出口34bを通して第1流出管16及び第2流出管18へ流出する(
図14の開閉モード参照)。
【0083】
次いで、モータ24を回転駆動させて、ロータ40、ひいては駆動側歯車46を第1方向R1に回転させる。この際、駆動側歯車46と噛み合う従動側歯車50も従動回転(
図15における時計周り方向)し、ステップS1(
図15の中央の図)の状態に移行する。従動側歯車50の従動回転により、弁体56は弁座構成部材34に対して、摺動面56bが弁座面34cに密着状態で
図15における時計回り方向に摺動する。ステップS1においても、切り欠き部56cが第1流体出口34a及び第2流体出口34bの上方に位置しているので、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは開口した状態、すなわち、
図14における開モードとなる。
【0084】
図15の下の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS1の状態からステップS2の状態に移行する。この状態では、第1流体出口34aの上方にオリフィス56eが位置し、切り欠き部56cは第2流体出口34bの上方に位置している。第1流体出口34aは、オリフィス56eにより第1流体出口34aから流出する流体の流量が制限された状態となる。
【0085】
つまり、ステップS0及びステップS1のように完全に開口した状態の第1流体出口34aから流出する流体の流量に比べてオリフィス56eにより制限された状態の第1流体出口34aから流出する流体の流量は少なくなる。つまり、
図14のステップS2における微小開モードとなる。第2流体出口34bは、開口した状態であるので、開モードとなる。
【0086】
次いで、
図16の上の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS2の状態からステップS3の状態に移行する。この状態では、オリフィス56eは、第1流体出口34aの上方に位置から外れている。第1流体出口34aは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じられている。したがって、第1流体出口34aは閉モード(
図14)となり、バルブ室32から第1流出管16への流体の経路が遮られる。一方、第2流体出口34bの上方には切り欠き部56cが位置している。したがって、第2流体出口34bは開口しており、開モード(
図14)となる。
【0087】
次いで、
図16の中央の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS3の状態からステップS4の状態に移行する。この状態では、第1流体出口34aは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じられている。したがって、第1流体出口34aは、ステップS3から継続して閉モード(
図14)状態を維持し、バルブ室32から第1流出管16への流体の経路が遮られた状態を維持している。
【0088】
さらに、第2流体出口34bの上方にはオリフィス56eが位置している。したがって、第2流体出口34bは、オリフィス56eにより第2流体出口34bから流出する流体の流量が制限された状態であり、
図14のステップS4における微小開モードとなる。
【0089】
次いで、
図16の下の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS4の状態からステップS5の状態に移行する。ステップS5の状態では、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じた状態となる。つまり、
図14のステップS5における閉モードとなる。この状態では、バルブ室32から第1流出管16及び第2流出管18への流体の経路が遮られた状態となる。
【0090】
次いで、
図17に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS5の状態からステップS6の状態に移行する。ステップS6の状態では、再度、切り欠き部56cが第1流体出口34aの上方に位置する。したがって、第1流体出口34aは完全に開いた状態となり、
図14における開モードとなる。一方、第2流体出口34bは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じた状態を維持するので、バルブ室32から第2流出管18への流体の経路が遮られた状態を維持する。つまり、
図14のステップS6において閉モードとなる。
【0091】
本実施形態では、モータ24により弁体56を弁座構成部材34に対して回転させることで、第1流体出口34a及び第2流体出口34bをそれぞれ開いた状態、微小に開いた状態、閉じた状態と切り換えることができ、バルブ室32から第1流出管16及び第2流出管18のそれぞれに流出する流体の流量を調整することができる。
【0092】
<<<動力伝達切換部における動力伝達状態から動力非伝達状態への切換について>>>
図18及び
図19において弁体駆動機構30の動力伝達切換部52の原点位置復帰動作について説明する。ステップS7において、駆動側歯車46は第2方向R2に回転している。ステップS7の状態では、駆動側歯車46の歯車部46aは従動側歯車50の噛合部50aと噛合っている。尚、ステップS7は、駆動側歯車46を第1方向R1側に回転させて従動側歯車50を従動回転させた後、回転方向を第2方向側に切り換えて、原点位置に戻る途中の状態である。
【0093】
さらにステップS7からステップS8に移行すると、駆動側歯車46は従動側歯車50に対して原点位置に戻る。ここで、原点位置とは、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとの噛合状態が解除され、歯車部46aが従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態である。この状態において、駆動側歯車46が第2方向に回転した場合、駆動側歯車46から従動側歯車50への動力伝達がなされない動力非伝達状態となる。
【0094】
具体的には、ステップS7ないしステップS12の図を参照するに、駆動側歯車46が第2方向R2側に回転すると、4つの凸部46bも第2方向R2に回転する。ステップS7からステップS9に進むにつれ、回転規制部62の第2接触部62dと対向している凸部46bは、第2方向R2側への回転に伴って第2接触部62dに接近し、ステップS9において第2接触部62dと接触する。
【0095】
駆動側歯車46が第2方向R2にさらに回転すると、第2接触部62dと接触した凸部46bも第2方向R2側に回転しようとする。この際、凸部46bは、ステップS10及びステップS11に示すようにねじりばね60の付勢力に抗して第2接触部62dを押圧する。その結果、回転規制部62は、回動軸62aを中心として従動側歯車50の半径方向内側に向けて回動する。
【0096】
その後、ステップS11及びステップS12に示すように、駆動側歯車46がさらに第2方向R2に回転すると、第2接触部62dを押圧していた凸部46bが、第2接触部62dから離間する。その結果、回転規制部62は、ねじりばね60の付勢力により半径方向外側に向かって回動し、第2接触部62dが従動側歯車50のレバー回動規制部50hと接触する位置まで回動する。
【0097】
本実施形態において、駆動側歯車46の歯車部46aが、従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態で、第2方向R2側に駆動側歯車46を回転させると、凸部46bが回転規制部62の第2接触部62dと間欠的に接触と離間とを繰り返す一方で、歯車部46aは非噛合部50b内で空転し続ける。したがって、動力非伝達状態における駆動側歯車46の歯と従動側歯車50の歯とが不用意に接触することを防止でき、歯同士が衝突した際の衝突音の発生を防止できる。
【0098】
歯車部46aが非噛合部50b内で空転し続けることにより、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとの噛合状態が解除された状態が継続する。その結果、駆動側歯車46から従動側歯車50へはモータ24の動力が伝達されない動力非伝達状態が維持される。したがって、モータ24において脱調が生じる虞を低減でき、脱調を起因とする騒音を抑制することができる。
【0099】
<<<第2回転規制部について>>>
図23(A)及び
図23(B)を参照して、第2回転規制部50kについて説明する。
図23(A)及び
図23(B)は、ステップS10からステップS11までの間における駆動側歯車46と従動側歯車50との関係を示している。
図23(A)において、凸部46bが回転規制部62の第2接触部62dと接触し、第2接触部62dを押圧する際、凸部46bは、第2方向R2側に回転することから、第2接触部62dを
図23(A)における反時計回り方向へ回転するように押圧する。
【0100】
ここで、凸部46bにより押圧された第2接触部62dは、従動側歯車50とともに
図23(A)及び
図23(B)における反時計回り方向に回転しようとする。本実施形態において従動側歯車50には、非噛合部50bの第1方向R1方向側に第2回転規制部50kが設けられている。従動側歯車50が第2接触部62dとともに
図23(A)における反時計回り方向に回転すると、第2回転規制部50kは非噛合部50b内に位置する駆動側歯車46の歯車部46aの歯車と接触する(
図23(A))。
【0101】
第2回転規制部50kが歯車部46aの歯と接触すると、従動側歯車50の
図23(A)及び
図23(B)における反時計回り方向への回転が規制される。さらに、この状態で駆動側歯車46が第2方向R2側への回転を継続しても、第2回転規制部50kが歯車部46aのいずれかの歯と接触した状態(
図23(B))を保つので、従動側歯車50の回転規制状態が維持される。これにより、駆動側歯車46の歯車部46aが、非噛合部50b内において空転することができ、動力非伝達状態を維持できる。
【0102】
<<<第2接触部について>>>
さらに、
図26(A)及び
図26(B)において、第2接触部62dを曲面として構成した利点について説明する。
図26(A)は、第2接触部を直線状に形成した回転規制部66を示している。回転規制部66は、回動軸66aと、レバー部66bと、第2接触部66cとを備えている。
図26(A)は、直線状のレバー部66bを有する回転規制部66の回動状態の変位を示し、
図26(B)は本実施形態に係る回転規制部62の回動状態の変位を示している。
【0103】
図26(A)において、直線状の第2接触部66cは、凸部46bと接触すると従動側歯車50の半径方向内側に回動する。第2接触部66cと接触した凸部46bは、直線状の第2接触部66cに沿って第2方向R2側に回動する。この際、直線状の第2接触部66cは凸部46bと離間する直前まで従動側歯車50の半径方向内側に押し込まれた状態となる。凸部46bが第2接触部66cと離間すると、回転規制部66は、不図示のねじりばね60の付勢力により第2接触部66cがレバー回動規制部50hと接触する位置まで回動量W1分回動する。尚、
図26(A)における二点鎖線は、レバー回動規制部50hと接触する第2接触部66cと、その状態における凸部46bの位置を模式的に示している。
【0104】
一方、
図26(B)において、曲面として構成された第2接触部62dは、凸部46bと接触すると、従動側歯車50の半径方向内側へ回動させられる。駆動側歯車46が第2方向R2側に回動すると、凸部46bは第2接触部62dと摺動しつつ移動する。この際、第2接触部62dは従動側歯車50の円周方向に沿った曲面であるので、凸部46bの第2方向R2側の回動とともに、従動側歯車50の半径方向内側に押し込まれた状態から半径方向外側へと徐々に戻る。そして、凸部46bが第2接触部62dから離間すると、第2接触部62dがレバー回動規制部50hと接触する位置まで回動量W2分戻る。尚、
図26(B)における二点鎖線は、レバー回動規制部50hと接触する第2接触部62dと、その状態における凸部46bの位置を模式的に示している。
【0105】
ここで、回転規制部62は凸部46bが第2接触部62dから離間する前の状態から半径方向外側に向かって回動を開始しているので、回転規制部66の回動量W1に比べて凸部46bが第2接触部62dと離間した際における半径方向外側への回動量W2を小さくすることができる。その結果、第2接触部62dがレバー回動規制部50hと接触する際における衝撃を和らげることができ、衝撃音(騒音)を抑制できる。
【0106】
<<<動力非伝達状態から動力伝達状態への切換について>>>
次いで、
図20及び
図21において動力非伝達状態から動力伝達状態への切換について説明する。本実施形態において、ステップS13に示すように、駆動側歯車46の歯車部46aが従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態、つまり動力非伝達状態において、駆動側歯車46を原点位置に合わせる。尚、駆動側歯車46の原点位置決めは、ステータ36を所定の励磁パターンで励磁することにより行われる。
【0107】
ステップS14において駆動側歯車46が第1方向R1側の回転を開始すると、凸部46bが回転規制部62の第1接触部62cと接触し、回転規制部62、ひいては従動側歯車50を
図20における時計回り方向に押圧する。ここで、第1接触部62cと接触する凸部46bは、第1接触部62cと交差する方向において回動軸62aの側に向けて第1接触部62cを押圧するので、回転規制部62は回動することができない。その結果、従動側歯車50は、回転規制部62の第1接触部62cを介して凸部46bに押圧されて、
図20における時計回り方向に回転する。
【0108】
これにより、ステップS15に示すように、駆動側歯車46の歯車部46aの歯が従動側歯車50の非噛合部50bから抜け出て噛合部50aの歯と噛合いを開始する。これにより動力伝達切換部52は、動力非伝達状態から動力伝達状態へと切り換わる。さらに、駆動側歯車46が第1方向R1側に回動すると、ステップS16に示すように歯車部46aの歯と噛合部50aとの歯の噛合により従動側歯車50は
図21における時計回り方向への回動を継続する。
【0109】
さらにステップS17に示すように駆動側歯車46を第1方向R1側に回転させることで、従動側歯車50を
図21における時計回り方向に回転させることができ、弁体56におけるステップS1からステップS6までの動作を実行することができる。
【0110】
次いで
図22を参照して、原点位置(
図20のステップS13の状態)における駆動側歯車46と従動側歯車50との関係について説明する。本実施形態において、駆動側歯車46が原点位置に位置すると、凸部46bは回転規制部62の第1接触部62cに対応する位置に位置する。ここで、駆動側歯車46の円周方向において凸部46bに対応する位置には、ロック回避歯46cが形成されている。
【0111】
図22において、二点鎖線で示す円弧は、駆動側歯車46の歯車部46aにおけるロック回避歯46c以外の歯の歯先円を図示している。
図22において駆動側歯車46が原点位置に位置した状態では、従動側歯車50の噛合部50aと非噛合部50bとの境目の歯50jは、ロック回避歯46c以外の歯の歯先円と干渉する位置に位置している。
【0112】
この状態において、ロック回避歯46cの位置にロック回避歯46c以外の歯が配置されている場合、駆動側歯車46が第1方向に回転しようとする際、従動側歯車50の歯50jとロック回避歯46cの位置に配置されたロック回避歯46c以外の歯とが接触して駆動側歯車46と従動側歯車50とがロック状態となる場合がある。
【0113】
本実施形態では、駆動側歯車46が原点位置に位置する際、従動側歯車50の歯50jに、駆動側歯車46のロック回避歯46cが近接するように配置している。これにより、ロック回避歯46cの歯先円はロック回避歯46c以外の歯先円よりも小さいので、従動側歯車50の歯50jと駆動側歯車46のロック回避歯46cとの間に隙間64を設けることができる。隙間64が形成されることにより、駆動側歯車46と従動側歯車50とのロック状態を回避できる。その結果、動力伝達切換部52において駆動側歯車46と従動側歯車50との動力非伝達状態から動力伝達状態への切換を円滑に行うことができ、異常動作(励磁パターンに対する駆動側歯車46の歯車部46aの位置のずれ)や動作不良の発生を抑制できる。
【0114】
上述したように、本実施形態において、動力伝達切換部52における回転規制部62は、駆動側歯車46が第1方向に回転した場合、従動側歯車50の回転を許容し、駆動側歯車46が第2方向に回転した場合、従動側歯車50の回転を規制するように構成されている。つまり、クラッチ機構として構成されている。本実施形態における回転規制部62を既知のクラッチ機構の構成を利用することで、設計時間の短縮及びコストダウンを図ることができる。
【0115】
本実施形態における回転規制部62は、駆動側歯車46が第1方向に回転した際、駆動側歯車46から従動側歯車50へ動力を伝達させ、駆動側歯車46が第2方向に回転した際、駆動側歯車46から従動側歯車50への動力伝達を切断するので、駆動側歯車46の回転方向を切り換えるだけで、動力伝達状態を切り換えることができ、回転規制部62の構成を簡素化することができる。
【0116】
<<<実施形態の変更形態>>>
(1)本実施形態において「付勢部材」の一例としてねじりばね60により回転規制部62を付勢する構成としたが、この構成に代えて、付勢部材を板ばね等により構成してもよい。
【0117】
(2)本実施形態において動力伝達切換部52において凸部46bと回転規制部62との係合状態(第1接触部62cまたは第2接触部62dとの接触)の切換により動力伝達を切り換える構成としたが、この構成に代えて、回転規制部62に既知のラチェット機構を設けて駆動側歯車46を空転させる構成としてもよい。
【0118】
(3)本実施形態において、従動側歯車50の下面50rに足部収容部50sを設けて足部62hを収容する構成としたが、この構成に代えて、下面50rに足部収容部50sを設けずに足部62hを下面50rから突出させて下面50rに接触するように回動可能に配置する構成としてもよい。
【0119】
(4)本実施形態において足部62hをねじりばね60の付勢方向と反対方向に延びる単一の足部として構成したが、この構成に代えて、複数の足部を備える構成としてもよく、例えば、ねじりばね60の付勢方向に延びる足部を備えていてもよい。
【0120】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
10 バルブ駆動装置、12 バルブ本体、14 流入管、16 第1流出管、
18 第2流出管、20 カバー部材、22 ベース部材、24 モータ、
26 密封カバー、26a、28c 軸受部、28 基台本体、28a、50p 上面
28b 流体入口、30 弁体駆動機構、32 バルブ室、34 弁座構成部材、
34a 第1流体出口、34b 第2流体出口、34c 弁座面、
34d、50d、50g、56a、56d 貫通孔、36 ステータ、37 駆動コイル、
38 駆動マグネット、40 ロータ、42 コア部材、42a 極歯、
46 駆動側歯車、46a 歯車部、46b 凸部、46c ロック回避歯、
46d 本体、48、54 支軸、50 従動側歯車、50a 噛合部、
50b 非噛合部、50c 第1回転規制部、50e 凹部、50f 保持部、
50h レバー回動規制部、50j 歯、50k 第2回転規制部、50m 歯底円、
50n 凸状部、50q スリット部、50r 下面、50s 足部収容部、
50t 逃げ部、50u 支持面、50v、64 隙間、52 動力伝達切換部、
56 弁体、56b 摺動面、56c 切り欠き部、56e オリフィス、
58 保持部材、58a フランジ部、58b 筒状部、60 ねじりばね、
60a 一端、60b 他端、62、66 回転規制部、62a、66a 回動軸、
62b、66b レバー部、62c 第1接触部、62d、66c 第2接触部、
62e ばね保持部、62f ばね接触部、62g ばね脱落防止部、62h 足部、
C1、C2 中心、F1 付勢方向、R1 第1方向、R2 第2方向、
S0、S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17 ステップ、
W1、W2 回動量、d1、d2 歯先円直径