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特許7057246フレキシブル配線基板及びバッテリーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】フレキシブル配線基板及びバッテリーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/287 20210101AFI20220412BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220412BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20220412BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220412BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20220412BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20220412BHJP
【FI】
H01M50/287
H01M50/204 101
H01M50/242
H01M50/209
H01M50/211
H01M50/213
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018142432
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020021550
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山田 周三
(72)【発明者】
【氏名】金山 知樹
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-022798(JP,A)
【文献】特開2006-093510(JP,A)
【文献】特開2008-089754(JP,A)
【文献】特開2010-161230(JP,A)
【文献】実開昭58-055378(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/204、50/284、50/519
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、
可撓性を有する基板本体部と、
前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、
前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、
前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、
一部が前記フレーム部材に固定され、他の一部が前記栓止部材に対して前記フレーム部材の側から接触する接触プレートと、
を備えるフレキシブル配線基板。
【請求項2】
少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、
可撓性を有する基板本体部と、
前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、
前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、
前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、
を備え
前記栓止部材は、第一栓止部材と、前記第一栓止部材よりも硬度が低い材料により作成されて前記第一栓止部材の少なくとも一部を覆う第二栓止部材と、を含む、フレキシブル配線基板。
【請求項3】
少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、
可撓性を有する基板本体部と、
前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、
前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、
前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、
を備え
前記栓止部材が前記基板本体部から遠ざかる方向を前進方向、当該前進方向と反対の方向を後退方向とし、
前記栓止部材は、栓本体と、前記栓本体と一体のフランジ部とを有し、前記フランジ部が前記栓本体に対して前記後退方向に設けられており、前記フランジ部は前記前進方向に突出する第一突出部を有する、フレキシブル配線基板。
【請求項4】
少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、
可撓性を有する基板本体部と、
前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、
前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、
前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、
を備え
前記栓止部材が前記基板本体部から遠ざかる方向を前進方向、当該前進方向と反対の方向を後退方向とし、
前記栓止部材は、栓本体と、前記栓本体と一体のフランジ部とを有し、前記フランジ部が前記栓本体に対して前記前進方向に設けられており、前記フランジ部は前記後退方向に突出する第二突出部を有する、フレキシブル配線基板。
【請求項5】
少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、
可撓性を有する基板本体部と、
前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、
前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、
前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、
を備え
前記栓止部材は、栓本体と、前記栓本体と一体のフランジ部とを有し、
前記栓本体は、前記基板本体部から遠ざかる前進方向と交差する方向に突出する第三突出部を有する、フレキシブル配線基板。
【請求項6】
少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、
可撓性を有する基板本体部と、
前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、
前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、
前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、
前記引出基板部上であって、かつ前記基板本体部から前記栓止部材よりも遠い位置に設けられるコネクタと、
を備えるフレキシブル配線基板。
【請求項7】
前記引出基板部と、前記基板本体部とを接続する連結固定部をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項8】
少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体と、
前記ケース体に収容される複数の電池セルと、
前記電池セルと電気的に接続されるフレキシブル配線基板と、を備え、
前記フレキシブル配線基板は、可撓性を有する基板本体部と、前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、を備える、
バッテリーモジュール。
【請求項9】
前記フレーム部材は、一部が前記フレーム部材に固定され、他の一部が前記栓止部材に対して弾性的に付勢する接触プレートをさらに有する、請求項に記載のバッテリーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板及びバッテリーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー装置を含むバッテリーモジュールには、イオン伝導性のある有機溶媒を使用するものがある。このようなバッテリーモジュールでは、有機溶媒が空気中の水分と反応して酸性のガスが発生する。バッテリーモジュールにおいては、発生したガスが装置の外部に漏れ出すことを厳密に防ぐことが望ましい。特に、バッテリーモジュールに可撓性を有するFPC(Flexible Printed Circuits)基板を組み込んでその一部をモジュールの外部に引き出す構成では、引き出されたFPC基板を通す貫通孔が必要になる。バッテリーモジュール内で発生したガスは、このような貫通孔により外部に漏れ出し得る。
バッテリーモジュールの貫通孔からガスが漏れ出すことを防ぐための公知技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載のFPC一体ガスケットは、FPC基板と一体のガスケットに漸次内側に傾斜するテーパ面を設け、ガスケットがバッテリー装置の容器壁面の貫通孔から脱落することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3127071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のFPCガスケットは、小型通信機器に適用することを想定して考案されたものである。特許文献1に記載のFPCガスケットをより強い振動が加わる車両等のバッテリー装置に用いた場合、ガスケットによる貫通孔の封止が緩み、バッテリー装置において発生するガスが貫通孔を通って外部に流出する虞がある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、振動が加わっても搭載機器内において安定し、振動が封止機能に与える影響が小さいフレキシブル配線基板及びバッテリーモジュールに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフレキシブル配線基板は、ケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、可撓性を有する基板本体部と、前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、前記引出基板部に固着される栓止部材と、前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、を備える。
【0006】
また、本発明のバッテリーモジュールは、少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体と、前記ケース体に収容される複数の電池セルと、前記電池セルと電気的に接続されるフレキシブル配線基板と、を備え、前記フレキシブル配線基板は、可撓性を有する基板本体部と、前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、振動が加わっても搭載機器内において安定し、振動が封止機能に与える影響が小さいフレキシブル配線基板及びバッテリーモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態のバッテリーモジュールを説明するための斜視図である。
図2図1に示したフレキシブル配線基板を説明するための図である。
図3】(a)はフレキシブル配線基板の上面図である。(b)は(a)に示したフレキシブル配線基板の側面図である。
図4】(a)は栓止部材の斜視図である。(b)は栓止部材の裏面図である。(c)は(b)に示した栓止部材の正面図である。
図5】(a)は、図4(a)に示した栓止部材の側面図である。(b)は(a)に示した栓止部材の断面図である。
図6図2に示したフレキシブル配線基板の分解斜視図である。
図7】第一実施形態の栓止部材が貫通孔を封止した状態を説明するための図である。
図8】第二実施形態の栓止部材が貫通孔を封止した状態を説明するための図である。
図9】第三実施形態の栓止部材を説明するための図であって、(a)は栓止部材の斜視図、(b)、(c)は(a)に示す栓止部材の側面図である。
図10】(a)は、図9(b)に示した栓止部材の断面図である。(b)は、図9(c)に示した栓止部材の断面図である。
図11】本発明の変形例の栓止部材の斜視図である。
図12】(a)は、変形例の栓止部材の側面図である。(b)は(a)に示した栓止部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態(以下、第一実施形態から第三実施形態を総称して本実施形態とも記す)を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本実施形態の図は、本発明の構成例及び機能を説明するものであって、その具体的な形状や設計が図面の内容に限定されるものではない。
さらに、本実施形態でいう上、上方、下及び下方の語句はいずれも所定の位置または部材を基準にしたものであって、重力方向と一致するものとは限らない。
【0010】
[第一実施形態]
(バッテリーモジュール)
図1は、第一実施形態のバッテリーモジュール10を説明するための斜視図である。図示したバッテリーモジュール10は、少なくとも一つの壁部材31に貫通孔32(図5等)を有するケース体3と、ケース体3に収容される複数の電池セル7と、電池セルと電気的に接続されるフレキシブル配線基板1と、を備えている。
複数の電池セル7は、図示しない電池群を構成する。フレキシブル配線基板1には、電池セル7の電極端子(図示せず)に接続されて電池セル7と主に電気信号を授受する図示しない配線や素子が搭載されている。ここで授受される電気信号としては、例えば、各電池セル7の温度や電流を監視する信号、あるいは図示しない温度センサによる計測温度を示す信号が考えられる。電池群は、複数個の電池セル7が一列に並べられて構成されており、各電池セル7が互いに直列接続されている。また、バッテリーモジュール10は、電池セル7上であってフレキシブル配線基板1の周囲に配置された複数のバスバー4を有している。
【0011】
第一実施形態の電池セル7は、例えばリチウムイオン二次電池であって、正極となるシート(以下、正極板と記す)と負極となるシート(以下、負極板と記す)との間にセパレータとなるシート(以下、絶縁板と記す)を挟んで重ねて構成されている。正極板及び負極板の間は電解液で満たされている。正極板は、例えばアルミニウム箔にコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)といったリチウム金属酸化物を塗布して形成される。負極板は、銅箔にカーボン等の炭素系材料を塗布して形成されている。絶縁板はポリエチレン系またはアラミド系の材料で形成されている。電解液には炭酸エチレンや炭酸ジェルが使用される。電解液は、空気中の水分と反応し、各種反応ガスを発生し得る。図1に示した電池セル7は主面が矩形の板形状を有する角型であるが、電池セル7は角型のものに限定されず、筒型やラミネート型のものであってもよい。
【0012】
ケース体3は、例えばアルミニウム製の板材により形成されている。図1に示したバッテリーモジュール10には更に図示しない蓋体が取り付けられて、蓋体はケース体3の開口部分を封止し、ケース体3と蓋体とで構成される空間内を高気密に保持することができる。
【0013】
(フレキシブル配線基板)
図2は、図1に示したフレキシブル配線基板1を説明するための図である。図3(a)及び図3(b)は、図2に示したフレキシブル配線基板1の一部を拡大して示した図であって、図3(a)はフレキシブル配線基板1の上面図である。図3(b)は図3(a)に示したフレキシブル配線基板1の側面図である。
フレキシブル配線基板1は、可撓性を有する基板本体部13bと、基板本体部13bに接続され、基板本体部13bよりも細幅であって可撓性を有する引出基板部13aと、を有している。基板本体部13b及び引出基板部13aは、フレキシブル配線基板1の基板部13を構成する。また、フレキシブル配線基板1は、引出基板部13aに固着されて貫通孔32(図5等)に嵌合する栓止部材17と、基板本体部13bを保持し、かつ基板本体部13bより大きい曲げ剛性を有するフレーム部材14と、を備えている。
【0014】
また、図2に示したフレキシブル配線基板1は、一部がフレーム部材14に固定され、他の一部が栓止部材17に対してフレーム部材14の側から接触する接触プレート15を有している。
なお、フレーム部材14は、ケース体3内に収容されてバッテリーモジュール10を構成する場合、他の一部が栓止部材17に対して弾性的に付勢するようになる。
さらに、フレキシブル配線基板1は、引出基板部13a上であって、かつ基板本体部13bから栓止部材17よりも遠い位置に設けられるコネクタ11を有している。
以下、上記構成を順次説明する。
【0015】
(基板部)
基板部13は、引出基板部13a及び基板本体部13bによって構成される。第一実施形態では、以降、基板部13において、引出基板部13aの側に向かう方向を「前方」と記し、前方と反対の方向を「後方」と記す。引出基板部13a及び基板本体部13bの可撓性は、基板が繰り返し曲げ、撓み可能であることを指す。この場合の「曲げ」は、基板が曲げ方向に弾性変形してその後変形前の状態に戻り得る状態をいう。基板本体部13bと引出基板部13aは、同一素材の基板を接合して構成されるものであってもよいし、一連の基板であってもよい。なお、基板本体部13b及び引出基板部13aの「幅」は、基板本体部13bに対する引出基板部13aの配置方向と直交する方向の長さをいい、細幅とは幅方向の長さが短いことをいう。
【0016】
基板本体部13bは、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルム上に印刷技術によって形成された配線とによって構成される。配線は基板本体部13bに搭載される素子間、または素子と外部の機器とを電気的に接続する。引出基板部13aは、基板本体部13bと同様にベースフィルムとベースフィルム上に印刷された配線とによって形成されている。引出基板部13aの配線は、一方で基板本体部13bに形成されている配線と電気的に接続し、他方でコネクタ11と電気的に接続されている。
ベースフィルムとしては、例えば、PET(ポリイミドやポリエステル:PolyEthylene Terephthalate)等のプラスチックが使用される。配線としては銅や銅箔が好適である。
基板本体部13bは、外縁が略矩形形状を有し、内部には幅方向と直交する方向(以下、「長さ方向」と記す)に長い長孔130が形成されている。長孔130の縁部133は波形状になっている。また、基板本体部13bの栓止部材17の側の端部131は後方に凸の凸形状になっている。さらに、基板本体部13bは、スリット132及び逃がし孔134を有している。スリット132及び逃がし孔134は、基板本体部13bの屈曲性を調整し、フレキシブル配線基板1をケース体3に組み付ける時、あるいはフレキシブル配線基板1に加わる振動に対する基板本体部13bの「遊び」として作用する。
【0017】
(フレーム部材)
フレーム部材14は、基板本体部13bを下方から保持する部材であって、第一実施形態においては基板本体部13bと同様に外縁が矩形形状であって長さ方向に縁部143(図6)が波形状の長孔140(図6)が形成されている。フレーム部材14の幅方向の縁部141は直線状であり、長さ方向の縁部142は、内向き(基板本体部13bの側)に折り曲げられていて、その端部が基板本体部13bの端部の上方に膨出している。基板本体部13bは、膨出部分の下に入り込み、フレーム部材14上において「浮く」ことがない。
フレーム部材14の曲げ剛性は基板部13の曲げ剛性より大きい。曲げ剛性は、部材の断面形状や大きさ及び材料のヤング率によって決定する指標であって、部材の面直方向への曲げ変形のし難さを示す。つまり、フレーム部材14は、基板部13の基板本体部13bを保持しながら基板本体部13bが曲げ変形することを妨げている。フレーム部材14の材料としては、例えば、PET、PC(ポリカーボネード:Poly Carbonate)、PMMA(アクリル)等が考えられる。
【0018】
このようなフレーム部材14は、バッテリーモジュール10に振動が加わった場合にも基板本体部13bがケース体3内で変形、あるいは移動することを抑え、ケース体3内でフレキシブル配線基板1を安定させることができる。一方フレーム部材14は、引出基板部13aを保持することがなく、引出基板部13aの動きを妨げることがない。このため、第一実施形態は、基板本体部13bをケース体3内で安定して保持しながら、引出基板部13aに基板本体部13bの撓みや振動を伝えることがなく、基板本体部13bを自由に撓ませながら貫通孔32の位置に合わせた状態に保持することができる。
【0019】
(接触プレート)
接触プレート15は、一部がフレーム部材14に固定され、他の一部が栓止部材17に接触している。第一実施形態の接触プレート15は、二段階に屈曲した板材として形成されていて、フレーム部材14に固定されている部分を固定部152、栓止部材17に接触する部分を接触部153とする。固定部152は板材のフレーム部材14と接触する範囲であって、接触部153は接触プレート15を構成する板材と栓止部材17とが接触する範囲である。第一実施形態の接触部153は、接触プレート15を構成する板材の断面となっている。
接触プレート15には孔151が形成されていて、フレーム部材14にはボス15aが設けられている。接触プレート15は、孔151を貫通するボス15aによってフレーム部材14にボス止めされている。
このような接触プレート15は、例えば、樹脂を材料とするものであってもよいし、金属製のものであってもよい。接触プレート15を樹脂により製造する場合、樹脂の種類としては、基板部13よりも硬度が高く、フレーム部材14よりも硬度が低い樹脂を用いることが好ましい。接触プレート15の材料は、栓止部材17に与える好ましい付勢力に応じて決定される。
【0020】
図3(a)に示すように、基板本体部13bの端部131は、後方に向かって凹むように湾曲する切欠き形状になっている。切欠き形状の両端はフレーム部材14よりも前方に延出していて、延出部分138は基板本体部13bを取り扱う際に指で把持する部分となっている。このことにより、基板部13と重なるフレーム部材14の一部が露出し、接触プレート15はフレーム部材14の露出部分に固定されている。また、第一実施形態では、接触プレート15の一部が基板本体部13b上に延出して基板本体部13bの一部がフレーム部材14と接触プレート15との間に挟み込まれている。
接触プレート15により、第一実施形態は、フレキシブル配線基板1の栓止部材17が常にケース体3の内側から押圧されて栓止部材17と貫通孔32周辺の壁部材31の面とを密着させて高い気密性を得ることができる。このため、第一実施形態は、貫通孔32を経由したガスの流通を高い精度で防ぐことができる。
【0021】
なお、第一実施形態は、接触プレートを上記の構成に限定するものではない。接触プレートは、例えば、フレーム部材14の縁部141から互いに平行な切り込みを入れ、切込みの間にあるフレーム部材14の部分を上方に曲げて栓止部材17の裏面に接触させるものであってもよい。このような場合、フレーム部材14の縁部141を延出部分138の端部近くに延長することが好ましい。そして、切込みは、基板部13の長さ方向に平行であって、かつ縁部141から端部131までの長さ程度が好ましい。
さらに、接触プレートは、一方の端部がフレーム部材14に着脱可能に固定されて他方の端部が栓止部材17に接触する弾性部材であってもよい。さらに、第三実施形態は、例えば、フレーム部材14の後端に弾性部材を取り付けて、フレキシブル配線基板1をケース体3に収容したときに弾性部材がフレーム部材14の接触プレート15を後方から栓止部材17に付勢するものであってもよい。
【0022】
(栓止部材)
図4(a)、図4(b)、図4(c)、図5(a)及び図5(b)は、栓止部材17を説明するための図である。図4(a)は栓止部材17の斜視図であり、図4(b)は栓止部材17を接触プレート15の側(裏面)図、図4(c)は、図4(b)に示した栓止部材17を裏面反対の正面から見た正面図である。図5(a)は、図4(a)に示した栓止部材17を図4(a)に示した座標軸のy方向に見た側面図である。図5(b)は、図4(b)に示した一点鎖線に沿う栓止部材17の断面を矢線Vb,Vbの方向に向かって見た断面図である。図5(b)においては、壁部材31を仮想線で示している。
【0023】
図4(a)から図5(b)に示すように、栓止部材17は、それぞれ略楕円形状を有する正面73a、裏面73bを有し、正面73aと裏面73bとを貫通するスリット71と、裏面73bに形成される凹溝72とを有している。スリット71は基板本体部13bが摺動不可に挿通される貫通溝であってもよく、このような場合、スリット71と基板本体部13bとの間には接着剤が充填されて両者の間のガスの流通を防いでいる。また、第一実施形態では、栓止部材17を基板本体部13bの周囲に一体的に成形するものであってもよい。
凹溝72は、栓止部材17の裏面73bに接触プレート15が接触する際に、接触プレート15の接触位置がずれることを防ぐ位置決め用の長溝である。凹溝72の長さは、接触部153の幅方向の長さ以上であればよく、厳密に一致する必要はない。
【0024】
また、栓止部材17では、正面73a、裏面73b間の周面の外縁の大きさ(楕円の径)が多段階に変化している。具体的には、正面73aと裏面73bとの間の周面は、周面部74、75、76、77及び周面部78を含んでいる。栓止部材17にあっては、コネクタに向かう方向、図4(a)、図5(a)中の図示しない-z方向を「前方」、-z方向と反対の方向を「後方」と記す。
具体的には、栓止部材17の周面部のうち、周面部78の外縁は一定であって、裏面73bの外縁と一致している。周面部76の外縁は一定であって、周面部78の外縁よりも小さくなっている。周面部77の外縁は凸形状部P1を有するように変化していて、凸形状部P1の頂点において最大になり、最小の外縁は周面部76の外縁よりも小さくなっている。
【0025】
周面部75の外縁は一定であり、周面部77の最小の外縁と一致している。周面部74の外縁は一定の傾きをもって後方から前方に向かって小さくなるように変化していて、最大の外縁は周面部75の外縁に一致している。周面部74の最小の外縁は、正面73aの外縁に一致している。
上記のように周面の外縁が変化する栓止部材17は、後方から前方に向かって段階的に外形が細くなる構成になる。このような栓止部材17は、ケース体3の内側から壁部材31の貫通孔32に前方から挿入されて、貫通孔32をケース体3の内側から封止するのに好適である。
【0026】
栓止部材17は、硬度の異なる少なくとも二つの部材を含んでいる。第一実施形態では、二つの部材を、第一栓止部材Bと、第一栓止部材よりも硬度が低い材料により作成される第二栓止部材Aとする。第二栓止部材Aは、第一栓止部材Bの少なくとも一部を覆っている。
図5(b)に示すように、栓止部材17にあっては、第二栓止部材Aが周面部78、周面部76及び周面部77の一部を構成している。第一栓止部材Bは、周面部78の一部、周面部75及び周面部74を構成している。
第一実施形態では、上記の凸形状部P1が第二栓止部材Aにより構成されている。このため、第一実施形態は、凸形状部P1を有する周面部77の外縁を貫通孔32の内縁よりわずかに大きく設計し、周面部77を貫通孔32に弾性変形しながら圧入してケース体3内の高い気密性を保持することができる。
【0027】
第一栓止部材Bは、例えば樹脂を材料にし、第二栓止部材Aは例えばゴムを材料にすることができる。第一栓止部材Bに適用可能な樹脂としては、上記したPET、PC、PMMAの他、PBT(ポリブチレンテレフタレート:PolyButyleneTerephthalate)やPTFE(ふっ素樹脂:(PolyTetraFluoroEthylene)がある。また、第二栓止部材Aに適用可能なゴム材料としては、例えば、ニトリルゴム、ハイパロン、アクリルゴム、ウレタンゴム及びシリコンゴム等がある。さらに、第一実施形態では、このような樹脂やゴムが栓止部材17として好ましい特性を持つように適宜加工、あるいは他の材料を添加するようにしてもよい。
【0028】
以上説明した第一実施形態の栓止部材17は、比較的高硬度の樹脂を材料にすることによってガスを透過し難いものとなる。また、栓止部材17は、壁部材31と接する個所に樹脂よりも低硬度のゴムを設けることによって壁部材31や貫通孔32との密着性を高めて貫通孔32を高精度に封止することができる。
【0029】
(コネクタ)
コネクタ11は、引出基板部13aと図示しない外部機器とを電気的に接続するものであればどのようなものであってもよい。ただし、バッテリーモジュール10の製造者がフレキシブル配線基板1の提供者からフレキシブル配線基板1の提供をうける場合、製造者は、引出基板部13aとコネクタ11とを接続する工程を行うことを望まない場合がある。このため、第一実施形態では、コネクタ11を接続した状態のフレキシブル配線基板1を提供者が製造者に提供し、製造者がコネクタ11をケース体3の内側から外側に向かって貫通孔32に通してセットする。このような場合、コネクタ11には、貫通孔に挿通可能な寸法形状であることが要求される。
【0030】
図6は、以上説明した構成によって組み立てられるフレキシブル配線基板1の分解斜視図である。第一実施形態では、先ず、引出基板部13aに栓止部材17を一体成形する、または接着剤を使って貼り合わせることによって取り付ける。一方、フレーム部材14には接触プレート15がボス止めされる。次に、栓止部材17が設けられた状態の基板部13をフレーム部材14にセットし、引出基板部13aを栓止部材17ごと貫通孔32に内側Iから外側Oに挿通し、貫通孔32を封止する。このとき、フレキシブル配線基板1では、接触プレート15の接触部153が栓止部材17の凹溝72に接触するようにフレーム部材14がセットされる。さらに、引出基板部13aの端部にコネクタ11が装着される。
以上の構成により、第一実施形態は、フレキシブル配線基板1のケース体3に対する位置決めを可能にし、その精度を高めることができる。
【0031】
図7は、栓止部材17が貫通孔32を封止した状態を説明するための図である。図7は、フレキシブル配線基板1がセットされたケース体3を基板部13の長さ方向に沿って切断した縦断面を模式的に示している。第一実施形態では、栓止部材17をケース体3の内側Iから外側Oに向かって貫通孔32に挿通させている。このため、第一実施形態では、栓止部材17の周面部78が壁部材31に内側Iから接触し、貫通孔32を封止している。
【0032】
以上説明した第一実施形態は、可撓性を有する基板本体部13bと、引出基板部13aとで基板部13を構成し、引出基板部13aに栓止部材を固着させている。一方、基板本体部13bを基板本体部13bより大きい曲げ剛性を有するフレーム部材により保持している。このようにすることにより、第一実施形態は、基板本体部13bに振動が加わってもフレーム部材14がこの振動を抑えることができる。このため、フレキシブル配線基板1はバッテリーモジュール10のケース体3内において安定し、振動によって封止部分を緩ませることがないので、振動が封止機能に与える影響を小さくすることができる。
また、第一実施形態は、フレーム部材14の規制力が引出基板部13aに及ばないため、引出基板部13aをケース体3の設計に合わせて引き回すことができる。このような第一実施形態は、基板本体部13bの振動を抑えながらフレキシブル基板を使用することの利便性を失うことがない。さらに、第一実施形態は、接触プレート15により栓止部材17に常時付勢しておくことができる。このため、第一実施形態は、栓止部材17と壁部材31との密着性を高め、ケース体3の機密性を高めることができる。
【0033】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。図8は、第二実施形態のフレキシブル配線基板を用いたバッテリーモジュール20を説明するための図であって、第二実施形態の栓止部材が貫通孔を封止した状態を説明するための図である。
第二実施形態のバッテリーモジュール20は、引出基板部13aと、基板本体部13bとを接続する連結固定部135をさらに含んでいる。
つまり、第二実施形態では、引出基板部13aと基板本体部13bとをケース体3に組み込む前に別体とし、引出基板部13aに栓止部材17及びコネクタ11が設けられる。このとき、第二実施形態では、栓止部材17の正面73a及び裏面73bが第一実施形態と反対の方向になるように栓止部材17が引出基板部13aに取り付けられる。つまり、第二実施形態では、裏面73bがコネクタ11の側に向き、正面73aが基板本体部13bの側に向くように栓止部材17が取り付けられる。なお、第二実施形態では、栓止部材17による封止を解く方に働くので接触プレート15に係る機構を設けない。引出基板部13aは、フレーム部材14に保持された状態でケース体3内にセットされる。
【0034】
バッテリーモジュール20の組み立て工程では、コネクタ11及び栓止部材17が設けられた引出基板部13aと、フレーム部材14にセットされた基板本体部13bとを別々に受け取って、フレーム部材14及び基板本体部13bをケース体3にセットした後、引出基板部13aをケース体3の外側Oから栓止部材17を貫通孔32に嵌入し、貫通孔32を封止する。そして、引出基板部13aと基板本体部13bとを例えば樹脂溶接によって接合する。樹脂溶接の手法は任意であるが、例えば熱風溶接等が考えられる。
【0035】
また、第二実施形態の引出基板部13aと基板本体部13bとの接合は、熱風溶接に限定されるものではなく、例えば、接着剤や粘着テープを使って両者を貼り合せるものであってもよいし、半田付けするものであってもよい。さらに、第二実施形態は、例えば、引出基板部13aにオスコネクタを、基板本体部13bにメスコネクタを予め形成しておいて、両者を接続して基板上の配線同士を電気的に接続するものであってもよい。
【0036】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を説明する。図9(a)、図9(b)及び図9(c)は、第三実施形態の栓止部材16を説明するための図である。図9(a)は栓止部材16の斜視図、図9(b)、図9(c)は図9(a)に示す栓止部材16を図9(a)に示す座標軸のy方向に見た側面図である。図10(a)は、図9(b)に示した栓止部材16を、スリット61を通るy-z平面で切断した断面図である。図10(b)は、図9(c)に示した栓止部材16を、スリット61を通るy-z平面で切断した断面図である。
図9(b)、図9(c)、図10(a)及び図10(b)のいずれにあっても図中に壁部材31を二点鎖線で示し、栓止部材16が壁部材31に取り付けられた状態を示している。また、図9(b)は、ケース体3の内側Iから壁部材31の貫通孔32に栓止部材16を取り付けた状態を示し、図9(c)は、ケース体3の外側Oから壁部材31の貫通孔32に栓止部材16を取り付けた状態を示している。このような第三実施形態の栓止部材16は、引出基板部13aに対する取り付け方向を表裏反転することによって壁部材31の内側、外側のいずれからも壁部材31に取り付けることが可能である。
【0037】
第三実施形態の栓止部材16は、栓本体と、栓本体と一体のフランジ部とを有している。図9(a)、図9(b)、及び図9(c)に示す栓止部材16は、正面63aと、裏面63bとを有していて、正面63aと裏面63bとを貫通するスリット61を有している。図9(a)に示す栓止部材16には、裏面63bには接触部153が接触する凹溝62(図10(a))が形成されている。栓止部材16の正面63aと裏面63bとの間の周面は、多段階にその外縁の大きさが異なっていて、それぞれ外縁の大きさが異なる複数の周面部66、68、67、69、66及び周面部65を含んでいる。このうち、第三実施形態では、壁部材31の表面(外側Oの面)または裏面(内側Iの面)に接触する周面部68を「フランジ」とする。フランジである周面部68は、周面部67を有している。第三実施形態では、周面部のうち周面部68及び周面部67を除く周面部65から周面部69を「栓本体」とする。
【0038】
フランジとなる周面部68は、貫通孔32よりも大きく設計されていて貫通孔32に入ることができない。このため、周面部68は、壁部材31の内側Iの面と接する板部材となる。周面部67は、外縁が周面部68の外縁と一致する大きさから周面部69に向かって小さくなっている。周面部67は外縁が凸形状部P2を有するように変化しており、周面部69は、凸形状部P3の頂点において外縁が最大になり、最小の外縁は周面部67の外縁よりも小さくなっている。周面部66の外縁は一定であり、周面部69の最小の外縁と一致する。周面部65の外縁は、周面部66の外縁と一致する大きさから正面63aに向かって一定の傾きを持って小さくなっている。
【0039】
図9(b)、図9(c)、図10(a)、図10(b)のように、栓止部材16は、壁部材31に対して内側Iから、または外側Oから取り付けることが可能である。栓止部材16を壁部材31に内側Iから取り付ける場合、引出基板部13aと基板本体部13bとはケース体3に組み込まれる以前に一体となって基板部13を構成している。そして、栓止部材16は引出基板部13a上において裏面63bが基板本体部13bの側に向かうように取り付けられる。
また、栓止部材16を壁部材31に外側Oから取り付ける場合、引出基板部13aと基板本体部13bはケース体3に組み込まれる以前には別体となっている。引出基板部13aは、基板本体部13bがフレーム部材14と共にケース体3内にセットされた後に基板本体部13bと接続される。このような場合、栓止部材16は、引出基板部13aと基板本体部13bの接続後に引出基板部13a上において正面63aが基板本体部13bの側に向かうように取り付けられる。
【0040】
本明細書では、以下、栓止部材16が基板本体部13bから遠ざかる方向を前進方向、この前進方向と反対の方向を後退方向として説明を行う。なお、ここで、前進方向は、図12(a)に示したz方向と反対の-z方向をいい、後退方向は、図12(a)に示したz方向を指す。
図9(b)及び図10(a)に示すように、第三実施形態では、フランジ部である周面部68を栓本体である周面部65から周面部69に対して後退方向に設けて栓止部材16を構成しており、周面部67の凸形状部P2は、前進方向に突出する第一突出部として機能する。すなわち、第三実施形態では、図10(a)に示すように、栓止部材16をケース体3の内側Iから壁部材31に取り付ける場合、周面部67の凸形状部P2が前進方向に突出する。
【0041】
また、図9(c)及び図10(b)に示すように、第三実施形態では、フランジ部である周面部68を栓本体である周面部65から周面部69に対して前進方向に設けて栓止部材16を構成しており、周面部67の凸形状部P2は、後退方向に突出する第二突出部として機能する。すなわち、第三実施形態では、図10(b)に示すように、栓止部材16をケース体3の外側Oから壁部材31に取り付ける場合、周面部67の凸形状部P2が後退方向に突出する。
【0042】
このような凸形状部P2は、栓止部材16を内側Iの側から壁部材31に取り付けている場合、ケース体3の内側Iが加圧状態になったときに壁部材31に内側から押圧されて貫通孔32をセルフシーリングすることができる。また、凸形状部P2は、栓止部材16を外側Oの側から壁部材31に取り付けている場合、ケース体3の内側Iが負圧状態になったときに壁部材31に外側から押圧されて貫通孔32をセルフシーリングすることができる。
このように、第三実施形態は、ケース体3内部の圧力が変動してもケース体3の内部を確実に密封することができる。
【0043】
また、第三実施形態では、前述したように、栓止部材16が栓本体(周面部65から周面部69)と、本体と一体のフランジ部(周面部68)とを有している。栓本体は、基板本体部13bから遠ざかる前進方向と交差する方向に突出する第三突出部である凸形状部P3を有している。このような第三実施形態によれば、ケース体3に上下方向の振動が加わった場合にも栓止部材16と貫通孔32とが外れ難くなり、栓止部材16によるケース体3内の封止の信頼性を高めることができる。
【0044】
なお、第三実施形態では、図10(a)、図10(b)に示すように、栓止部材16において凸形状部P2、P3が他の部分(以下、「本体」と記す)と別部材になっている。凸形状部P2、P3は、他の部分よりも硬度が低い弾性体により構成されている。このような構成は、本体を樹脂製とし、本体にゴム製の凸形状部P2、P3を設けるものであってもよいし、本体にOリングを設けることによって凸形状部P2、P3を構成するものであってもよい。第三実施形態では、本体が第一栓止部材Bに相当し、凸形状部P2、P3が第二栓止部材Aに相当する。さらに、第三実施形態の本体は、一体成形されるものであってもよいし、複数の部品を組み合わせるものであってもよい。
【0045】
[変形例]
図11図12(a)及び図12(b)は、変形例の栓止部材19を説明するための図である。図11は変形例の栓止部材19の斜視図であり、図12(a)は、図11に示した栓止部材19を図11に示した座標軸のy方向に見た側面図である。図12(b)は、図12(a)に示した栓止部材19のスリット91上を座標軸のx-z平面で切った断面図である。変形例についても、図11図12(a)中の図示しない-z方向を「前方」、-z方向と反対のz方向を「後方」と記す。
変形例は、第一実施形態と同様に栓止部材19をケース体3の内側Iから貫通孔32に嵌合するものであるから、栓止部材19の正面93aはコネクタ11の側に向かう面であり、裏面93bは基板本体部13bの側に向かう面である。栓止部材19は、正面93a及び裏面93bを貫通するスリット91を有している。スリット91は基板本体部13bが摺動不可に挿通される貫通溝であってもよく、また、栓止部材19は基板本体部13bの周囲に一体的に成形するものであってもよい。
裏面93bには、接触プレート15の接触部153に接触する位置決めに使用される凹溝92が形成されている。
【0046】
図12(a)、図12(b)のように、栓止部材19の周面は、外縁の大きさの異なる複数の周面部98、97、96、95、94、90及び周面部99を含んでいる。周面部98の外縁は、栓止部材19の後方から前方に向かって一定の傾きで大きくなる。周面部97の外縁は一定であり、周面部96の外縁は、後方から前方に向かって一定の傾きで小さくなる。周面部95の外縁は一定であり、周面部96の外縁より小さくなっていて、周面部94の外縁は一定であり、周面部95の外縁よりさらに小さくなっている。周面部90の外縁は一定であり、周面部95の外縁と等しく、周面部99の外縁は後方から前方に向かって一定の傾きで小さくなっている。
【0047】
本変形例では、周面部98、97、96、95、94、90及び周面部99を含む部分を全て相対的に高硬度の樹脂により作製し、周面部94の外周にゴム製のOリング5を嵌め込んでいる。このような構成の栓止部材19は、栓止部材17と同様に、硬度の異なる少なくとも二つの部材を含むものといえる。
【0048】
上記実施形態および実施例は以下の技術思想を包含するものである。
(1)ケース体にセットされて前記ケース体の外部にある外部機器と接続して用いられるフレキシブル配線基板であって、可撓性を有する基板本体部と、前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、前記引出基板部に固着される栓止部材と、前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、を備えるフレキシブル配線基板。
(2)一部が前記フレーム部材に固定され、他の一部が前記栓止部材に対して前記フレーム部材の側から接触する接触プレートをさらに有する、(1)のフレキシブル配線基板。
(3)前記引出基板部と、前記基板本体部とを接続する連結固定部をさらに含む、(1)のフレキシブル配線基板。
(4)前記栓止部材は、第一栓止部材と、前記第一栓止部材よりも硬度が低い材料により作成されて前記第一栓止部材の少なくとも一部を覆う第二栓止部材と、を含む、(1)から(3)のいずれか一つのフレキシブル配線基板。
(5)前記栓止部材が前記基板本体部から遠ざかる方向を前進方向、当該前進方向と反対の方向を後退方向とし、前記栓止部材は、栓本体と、前記栓本体と一体のフランジ部とを有し、前記フランジ部が前記栓本体に対して前記後退方向に設けられており、前記フランジ部は前記前進方向に突出する第一突出部を有する、(1)から(4)のいずれか一つのフレキシブル配線基板。
(6)前記栓止部材が前記基板本体部から遠ざかる方向を前進方向、当該前進方向と反対の方向を後退方向とし、前記栓止部材は、栓本体と、前記栓本体と一体のフランジ部とを有し、前記フランジ部が前記栓本体に対して前記前進方向に設けられており、前記フランジ部は前記後退方向に突出する第二突出部を有する、(1)から(4)のいずれか一つのフレキシブル配線基板。
(7)前記栓止部材は、栓本体と、前記本体と一体のフランジ部とを有し、前記栓本体は、前記基板本体部から遠ざかる前進方向と交差する方向に突出する第三突出部を有する、(1)から(6)のいずれか一つのフレキシブル配線基板。
(8)前記引出基板部上であって、かつ前記基板本体部から前記栓止部材よりも遠い位置に設けられるコネクタをさらに有する、(1)から(7)のいずれか一つのフレキシブル配線基板。
(9)少なくとも一つの壁面に貫通孔を有するケース体と、前記ケース体に収容される複数の電池セルと、前記電池セルと電気的に接続されるフレキシブル配線基板と、を備え、前記フレキシブル配線基板は、可撓性を有する基板本体部と、前記基板本体部に接続され、前記基板本体部よりも細幅であって可撓性を有する引出基板部と、前記引出基板部に固着されて前記貫通孔に嵌合する栓止部材と、前記基板本体部を保持し、かつ前記基板本体部より大きい曲げ剛性を有するフレーム部材と、を備える、バッテリーモジュール。
(10)前記フレーム部材は、一部が前記フレーム部材に固定され、他の一部が前記栓止部材に対して弾性的に付勢する接触プレートをさらに有する、(9)のバッテリーモジュール。
【符号の説明】
【0049】
フレキシブル配線基板...1
ケース体...3
バスバー...4
電池セル...7
バッテリーモジュール...10、20
コネクタ...11
基板部...13
引出基板部...13a
基板本体部...13b
フレーム部材...14
接触プレート...15
ボス...15a
栓止部材...16、17、19
壁部材...31
貫通孔...32
スリット...61、71、91
正面...63a、73a、93a
裏面...63b、73b、93b
周面部...65、66、67、68、69、74、75、76、77、78、90、94、95、96、97、98、99
凹溝...72
長孔...130、140、
端部...131
スリット...132
縁部...133、141、142
逃し孔...134
連結固定部...135
孔...151
固定部...152
接触部...153
第二栓止部材...A
第一栓止部材...B
内側...I
外側...O
凸形状部...P1、P2、P3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12