(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】蓄電モジュール、及び、蓄電モジュール製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/317 20210101AFI20220412BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220412BHJP
H01G 11/14 20130101ALI20220412BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220412BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20220412BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220412BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220412BHJP
H01M 50/35 20210101ALI20220412BHJP
【FI】
H01M50/317 101
H01G11/12
H01G11/14
H01G11/78
H01G11/80
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/35 101
(21)【出願番号】P 2018157581
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 賢志
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
(72)【発明者】
【氏名】森岡 怜史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060671(JP,A)
【文献】特開2015-153493(JP,A)
【文献】実開昭55-120075(JP,U)
【文献】特開2018-185904(JP,A)
【文献】特開2018-200829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/317
H01G 11/12
H01G 11/14
H01G 11/78
H01G 11/80
H01M 10/04
H01M 50/103
H01M 50/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、
前記電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、
前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、
前記枠体に設けられ、前記複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、
を備え、
前記枠体における前記圧力調整弁の側の第1面には、前記第1連通孔が開口しており、
前記圧力調整弁における前記枠体の側の第2面には、前記第2連通孔が開口しており、
前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第1面における前記第1連通孔の開口よりも鉛直上方に配置されており、
前記第1面に交差する第1方向からみて、前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第1面における前記第1連通孔の開口と重複していない、
蓄電モジュール。
【請求項2】
前記枠体は、それぞれの前記バイポーラ電極の周縁部に設けられた複数の第1部分と、前記電極積層体及び前記第1部分を取り囲むように設けられた枠状の第2部分と、を含み、
前記第1部分は、前記第1面を含み、
前記第2部分は、前記複数の第1連通孔に連通された複数の第3連通孔を有し、
前記第2部分における前記圧力調整弁の側の第3面には、前記第3連通孔が開口し、
前記第2連通孔は、前記第3連通孔を介して前記第1連通孔に連通されている、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第3面における前記第3連通孔の開口よりも鉛直上方に配置されており、
前記第1方向からみて、前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第3面における前記第3連通孔の開口と重複していない、
請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記第2面及び前記第3面のうちの一方の面には、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接合するための第1接合用突起が形成されており、
前記第1接合用突起の接合用の第1端面は、前記一方の面に対して傾斜している、
請求項2又は3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記第2面及び前記第3面のうちの他方の面には、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接合するための第2接合用突起が設けられおり、
前記第2接合用突起の接合用の第2端面は、前記他方の面に対して傾斜しており、
前記第1端面の傾斜角と前記第2端面の傾斜角とは、前記第1端面と前記第2端面とを互いに接合したときに、前記第2面と前記第3面との角度が、前記第1端面の傾斜角及び前記第2端面の傾斜角のそれぞれよりも大きくなるように設定されている、
請求項4に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、前記電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、を有するモジュール本体を用意する第1工程と、
複数の第2連通孔を有する圧力調整弁を用意する第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程の後に、前記第1連通孔のそれぞれと前記第2連通孔のそれぞれとが互いに連通するように、前記枠体に前記圧力調整弁を接合する第3工程と、
を備え、
前記枠体及び前記圧力調整弁のうちの少なくとも一方には、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接続するための接合用突起が形成されており、
前記第3工程においては、前記接合用突起の傾斜した端面を用いて、前記圧力調整弁における前記第2連通孔の開口が前記枠体における前記第1連通孔の開口よりも上方に配置され重複しないように、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接合する、
蓄電モジュール製造方法。
【請求項7】
互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、
前記電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、
前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、
前記枠体に設けられ、前記複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、
を備え、
前記枠体における前記圧力調整弁の側の第1面には、前記第1連通孔が開口しており、
前記圧力調整弁における前記枠体の側の第2面には、前記第2連通孔が開口しており、
前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第1面における前記電解液の液面の位置よりも鉛直上方に配置されており、
前記第1面に交差する第1方向からみて、前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第1面における前記電解液の液面の位置に重複していない、
蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール、及び、蓄電モジュール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているような薄型電池が知られている。特許文献1に記載の薄型電池は、正極、負極及び集電体を有するバイポーラ電極と、セパレータ及び電解液を含む電解質層と、集電体の一方の主面に正極を取り囲むように配置された第1シール部と、集電体の他方の主面に負極を取り囲むように配置された第2シール部と、第2シール部を貫通するチューブとを備えている。チューブの一端は、セパレータ、集電体及び第2シール部で画成された内部空間に臨み、チューブの他端は、第2シール部の外部空間に臨んでいる。電池内部に発生したガスは、チューブを介して電池外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、チューブは、内部空間の圧力が上昇すると、内部空間のガスを排出する弁として機能する。一方で、内部空間のガスが排出される際には、電解液が外部に排出されるおそれがある。電解液が外部に排出されると内部空間の電解液が減少して電池特性が劣化する場合があるため、電解液の排出量を低減することが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、電解液の排出量を低減可能な蓄電モジュール、及び、蓄電モジュール製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電モジュールは、互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、電極積層体を取り囲むように配置され、複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、枠体に設けられ、複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、を備え、枠体における圧力調整弁の側の第1面には、第1連通孔が開口しており、圧力調整弁における枠体の側の第2面には、第2連通孔が開口しており、第1面に交差する第1方向からみて、第2面における第2連通孔の開口は、第1面における第1連通孔の開口と重複していない。
【0007】
この蓄電モジュールにおいては、電極積層体を取り囲むように設けられた枠体が、電解液が配置された内部空間に連通する第1連通孔を有している。また、枠体に設けられた圧力調整弁が、第1連通孔に連通された第2連通孔を有している。したがって、内部空間の圧力が上昇した際には、第1連通孔及び第2連通孔を介して内部空間のガスが排出され、内部空間の圧力が調整される。特に、この蓄電モジュールにあっては、枠体の第1面に交差する方向からみて、圧力調整弁の第2面における第2連通孔の開口が、第1面における第1連通孔の開口に重複していない。換言すれば、第2連通孔の開口は、第1連通孔の開口に対してシフトしている。したがって、この蓄電モジュールを使用(設置)する際には、より外部側に位置する圧力調整弁の第2連通孔の開口を、第1連通孔の開口よりも鉛直上方に配置できる。よって、この蓄電モジュールによれば、電解液の排出量を低減可能である。
【0008】
本発明に係る蓄電モジュールにおいては、枠体は、それぞれのバイポーラ電極の周縁部に設けられた複数の第1部分と、電極積層体及び第1部分を取り囲むように設けられた枠状の第2部分と、を含み、第1部分は、第1面を含み、第2部分は、複数の第1連通孔に連通された複数の第3連通孔を有し、第2部分における圧力調整弁の側の第3面には、第3連通孔が開口し、第2連通孔は、第3連通孔を介して第1連通孔に連通されていてもよい。このように、第1部分と第2部分とを含むように枠体を構成してもよい。
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールにおいては、第1方向からみて、第2面における第2連通孔の開口は、第3面における第3連通孔の開口と重複していなくてもよい。この場合、圧力調整弁の第2連通孔の開口が、第1部分の第1連通孔の開口に加えて、より外部側に位置する第2部分の第3連通孔の開口とも重複しない。よって、電解液の排出量を確実に低減可能である。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールにおいては、第2面及び第3面のうちの一方の面には、枠体と圧力調整弁とを互いに接合するための第1接合用突起が形成されており、第1接合用突起の接合用の第1端面は、一方の面に対して傾斜していてもよい。この場合、接合用突起の傾斜した端面を用いて、枠体と圧力調整弁とが接合されることとなる。これにより、枠体と圧力調整弁とが互いに傾斜した状態となる。この結果、圧力調整弁の第2連通孔の開口が枠体の第1連通孔の開口に重複しない構成を、容易且つ確実に実現できる。
【0011】
本発明に係る蓄電モジュールにおいては、第2面及び第3面のうちの他方の面には、枠体と圧力調整弁とを互いに接合するための第2接合用突起が設けられおり、第2接合用突起の接合用の第2端面は、他方の面に対して傾斜しており、第1端面の傾斜角と第2端面の傾斜角とは、第1端面と第2端面とを互いに接合したときに、第2面と第3面との角度が、第1端面の傾斜角及び第2端面の傾斜角のそれぞれよりも大きくなるように設定されていてもよい。この場合、枠体及び圧力調整弁の両方に設けられた接合用突起の傾斜した端面を用いて、枠体と圧力調整弁とが接合されることとなる。このため、枠体と圧力調整弁との角度(第3面と第2面との角度)を、それぞれの接合用突起の端面の傾斜角に分配させることができる。したがって、枠体と圧力調整弁とに一定の角度を生じさせるに際して、それぞれの接合用突起の端面の傾斜角を相対的に小さくできる。この結果、接合用突起の突出量の増大を抑え、例えば射出成形等によって高精度に接合用突起を形成できる。
【0012】
本発明に係る蓄電モジュール製造方法は、互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、電極積層体を取り囲むように配置され、複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、を有するモジュール本体を用意する第1工程と、複数の第2連通孔を有する圧力調整弁を用意する第2工程と、第1工程及び第2工程の後に、第1連通孔のそれぞれと第2連通孔のそれぞれとが互いに連通するように、枠体に圧力調整弁を接合する第3工程と、を備え、枠体及び圧力調整弁のうちの少なくとも一方には、枠体と圧力調整弁とを互いに接続するための接合用突起が形成されており、第3工程においては、接合用突起の傾斜した端面を用いて、圧力調整弁における第2連通孔の開口が枠体における第1連通孔の開口よりも上方に配置され重複しないように、枠体と圧力調整弁とを互いに接合する。
【0013】
この製造方法によれば、上述したように、電解液の排出量を低減可能な蓄電モジュールを製造できる。特に、この製造方法においては、枠体に圧力調整弁を接合する際に、枠体及び圧力調整弁の少なくとも一方に設けられた接合用突起の傾斜した端面を用いる。したがって、圧力調整弁の第2連通孔の開口が枠体の第1連通孔の開口に重複しない構成を、容易且つ確実に実現できる。
【0014】
本発明に係る蓄電モジュールは、互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、電極積層体を取り囲むように配置され、複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、枠体に設けられ、複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、を備え、枠体における圧力調整弁の側の第1面には、第1連通孔が開口しており、圧力調整弁における枠体の側の第2面には、第2連通孔が開口しており、第1面に交差する第1方向からみて、第2面における第2連通孔の開口は、第1面における電解液の液面の位置に重複していない。
【0015】
この蓄電モジュールにおいては、電極積層体を取り囲むように設けられた枠体が、電解液が配置された内部空間に連通する第1連通孔を有している。また、枠体に設けられた圧力調整弁が、第1連通孔に連通された第2連通孔を有している。したがって、内部空間の圧力が上昇した際には、第1連通孔及び第2連通孔を介して内部空間のガスが排出され、内部空間の圧力が調整される。特に、この蓄電モジュールにあっては、枠体の第1面に交差する方向からみて、圧力調整弁の第2面における第2連通孔の開口が、第1面に電解液の液面の位置に重複していない。したがって、この蓄電モジュールを使用(設置)する際には、より外部側に位置する圧力調整弁の第2連通孔の開口を、枠体の第1面における電解液の液面よりも鉛直上方に配置できる。よって、この蓄電モジュールによれば、電解液の排出量を低減可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電解液の排出量を低減可能な蓄電モジュール、及び、蓄電モジュール製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示された蓄電モジュールの概略断面図である。
【
図3】
図1に示された蓄電モジュールの概略斜視図である。
【
図4】
図1~3に示された蓄電モジュールの一部を示す分解斜視図(一部断面を含む)である。
【
図6】一実施形態に係る蓄電モジュール製造方法の一工程を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る蓄電モジュール製造方法の一工程を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る蓄電モジュール製造方法の一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明が省略される場合がある。また、各図において、X軸、Y軸、及び、Z軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。
【0019】
図1は、一実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
図1において、蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両のバッテリとして使用される。蓄電装置1は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール2を備えている。蓄電モジュール2は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0020】
複数の蓄電モジュール2は、金属製の導電板3を介して積層されている。導電板3は、積層方向(ここではZ軸方向)の両端に位置する蓄電モジュール2の外側にも配置されている。蓄電モジュール2及び導電板3は、例えば積層方向から見て矩形状(平面視矩形状)を有している。導電板3は、隣り合う蓄電モジュール2と電気的に接続されている。これにより、複数の蓄電モジュール2が積層方向に直列接続されている。
【0021】
積層方向の一端(ここでは下端)に位置する導電板3には、正極端子4が接続されている。積層方向の他端(ここでは上端)に位置する導電板3には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に交差(直交)する方向(ここではX軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施することができる。
【0022】
導電板3は、蓄電モジュール2において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに交差(直交)する方向(ここではY軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール2からの熱を効率的に外部に放出することができる。
【0023】
また、蓄電装置1は、蓄電モジュール2及び導電板3を積層方向に拘束する拘束ユニット6を備えている。拘束ユニット6は、蓄電モジュール2及び導電板3を積層方向に挟む一対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
【0024】
拘束プレート7は、鉄等の金属で形成されている。各拘束プレート7と導電板3との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状を有している。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7に設けられた挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、蓄電モジュール2、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。
【0025】
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの概略断面図である。
図3は、
図1に示された蓄電モジュールの概略斜視図である。
図2及び
図3において、蓄電モジュール2は、複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。蓄電モジュール2は、モジュール本体11と、このモジュール本体11の一側面に取り付けられた複数(ここでは4つ)の圧力調整弁12とを備えている。
【0026】
モジュール本体11は、互いに積層された複数のバイポーラ電極(複数の電極)13を含む電極積層体15を有する。一例として、バイポーラ電極13の積層方向は、蓄電モジュール2の積層方向と一致している。バイポーラ電極13は、セパレータ14を介して積層されている。すなわち、電極積層体15は、バイポーラ電極13と交互に積層された複数のセパレータ14を含む。また、モジュール本体11は、電極積層体15を取り囲むように配置された枠体16を有している。
【0027】
バイポーラ電極13及びセパレータ14は、例えば平面視矩形状を有している。セパレータ14は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極13の間に配置されている。バイポーラ電極13は、集電体である電極板17と、この電極板17の上面17a(一方面)に形成された正極18と、電極板17の下面17b(他方面)に形成された負極19とを有している。電極板17は、金属製であり、例えばニッケル又はニッケルメッキ鋼板からなる。電極板17は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。
【0028】
バイポーラ電極13の正極18は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極13の負極19と対向している。バイポーラ電極13の負極19は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極13の正極18と対向している。
【0029】
電極積層体15の最下層には、正極側終端電極(電極)20が配置されている。正極側終端電極20は、電極板17と、この電極板17の上面17aに形成された正極18とを有している。電極積層体15の最上層には、負極側終端電極(電極)21が配置されている。負極側終端電極21は、電極板17と、この電極板17の下面17bに形成された負極19とを有している。正極側終端電極20の正極18は、セパレータ14を挟んで最下層のバイポーラ電極13の負極19と対向している。負極側終端電極21の負極19は、セパレータ14を挟んで最上層のバイポーラ電極13の正極18と対向している。正極側終端電極20及び負極側終端電極21の電極板17は、積層方向に隣り合う導電板3(
図1参照)に接続されている。
【0030】
正極18は、電極板17の一方面に正極活物質を塗工することにより形成されている。正極活物質としては、例えばコバルト(Co)酸化物コートが施された水酸化ニッケルが用いられる。負極19は、電極板17の他方面に負極活物質を塗工することにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が用いられる。電極板17の周縁部17cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。
【0031】
セパレータ14は、正極18と負極19との間に配置され、正極18と負極19とを隔離する。セパレータ14は、積層方向から見て電極板17よりも小さく且つ正極18及び負極19よりも大きい。セパレータ14は、例えばシート状に形成されている。セパレータ14は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、もしくはPE、PP、またはメチルセルロース等からなる不織布または織布等で形成されている。また、セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されていてもよい。なお、セパレータ14の形状としては、特にシート状に限られず、袋状であってもよい。
【0032】
枠体16は、電極積層体15の周囲に配置され、各電極板17の周縁部17cに設けられた複数の一次シール部(複数の第1部分)22と、電極積層体15及び一次シール部22を取り囲むように一次シール部22の周囲に設けられた二次シール部(第2部分)23と、を有している。
【0033】
各一次シール部22は、積層方向に沿って電極板17毎に配置されている。一次シール部22は、枠状に形成されている。一次シール部22は、電極板17の周縁部17cに例えば熱溶着により接合されている。
【0034】
積層方向に隣り合う電極板17間には、電極板17及び一次シール部22によって形成された内部空間Vが設けられている。したがって、電極積層体15には、複数の内部空間Vが設けられている。セパレータ14内を含む内部空間Vには、アルカリ性の電解液が配置(注入)されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。一次シール部22は、内部空間Vを封止する。蓄電モジュール2の各セルは、2つの電極板17、正極18、負極19、セパレータ14及び一次シール部22により構成され、内部空間Vを有している。
【0035】
二次シール部23は、角筒状を有している。二次シール部23は、内部空間Vを更に封止する。二次シール部23は、一次シール部22に接合されている。二次シール部23は、例えば射出成形等により形成されている。一次シール部22及び二次シール部23は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)または変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等の樹脂で形成されている。
【0036】
ここで、
図4は、蓄電モジュールの一部を示す分解斜視図(一部断面を含む)である。
図5は、
図4の断面部分の拡大図である。
図3~5に示されるように、枠体16を構成する一の壁部16aには、圧力調整弁12が取り付けられる複数(ここでは4つ)の取付領域24が設けられている。一次シール部22の取付領域24のそれぞれには、複数(ここでは6つ)の連通孔25(複数の第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔25は、取付領域24において2列及び3段(Y軸方向に2列、Z軸方向に3段)に配列されている。したがって、連通孔25は、壁部16aにおいて8列及び3段に配列されている。連通孔25は、それぞれ、異なるセルの内部空間Vのそれぞれと連通されている。
【0037】
すなわち、枠体16は、複数の内部空間Vのそれぞれに連通された複数の連通孔25を有する。連通孔25は、内部空間Vと、枠体16における圧力調整弁12側の面(第1面)22sと、に開口している。面22sは、一次シール部22における圧力調整弁12側(二次シール部23側)の面である。
【0038】
二次シール部23の取付領域24のそれぞれには、連通孔25とそれぞれ連通された複数(ここでは6つ)の連通孔26(複数の第3連通孔)が設けられている。すなわち、二次シール部23は、複数の連通孔25に連通された複数の連通孔26を有する。連通孔26は、二次シール部23における内部空間V側(一次シール部22側)の面23rと、圧力調整弁12側の面(第3面)23sと、に開口している。面23sは、枠体16の外側面である。連通孔26は、面23rから面23sに向かって徐々に幅広となるようにテーパ状に形成されている。連通孔26は、取付領域24において2列及び3段に配列されている。
【0039】
連通孔25,26は、内部空間Vに電解液を注入するための注液孔として機能する。また、連通孔25,26は、電解液が注入された後は、内部空間Vで発生したガスが流れる流路となる。
【0040】
二次シール部23の面23sには、接合用突起(第1接合用突起)27が設けられている。接合用突起27は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合するために用いられる。また、接合用突起27は、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路28を連通孔26と協働して形成する。流路28は、取付領域24のそれぞれにおいて2列及び3段に配列されている。流路28は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で矩形状を有している。一方の列の流路28は、他方の列の流路28に対して積層方向(Z軸方向)にずれている。
【0041】
接合用突起27は、一方の列の流路28を形成する枠部29と、他方の列の流路28を形成する枠部30とを有している。枠部29,30は同じ形状を有しており、Z軸方向において互いにずれている。枠部29,30間にはZ軸方向に延在する隙間が形成されている。
【0042】
圧力調整弁12は、ケース33と、複数(ここでは6つ)の弁体34と、カバー35とを有している。ケース33は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。ケース33は、底壁部36を有している。底壁部36(すなわち圧力調整弁12)には、底壁部36における枠体16側の面(第2面)36sからカバー35側に向けて貫通した複数(ここでは6つ)の連通孔37(複数の第2連通孔)が設けられている。面36sは、圧力調整弁12の外側面である。これらの連通孔37は、連通孔26を介して連通孔25のそれぞれと連通されている。連通孔37は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で円形状を有している(
図5参照)。連通孔37は、ケース33の内部(後述する収容凹部44a)、及び、面36sに開口している。
【0043】
面36sには、略枠状の接合用突起(第2接合用突起)38が設けられている。接合用突起38は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合するために用いられる。また、接合用突起38は、内部空間Vからのガスが流れる複数(ここでは6つ)の流路39を形成する。枠体16と圧力調整弁12とは、接合用突起27と接合用突起38とが接合されることによって接合される。接合用突起38は、接合用突起27に対応する形状及び寸法を有している。したがって、流路39は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で矩形状を有している。一方の列の流路39は、他方の列の流路39に対してZ軸方向にずれている。
【0044】
接合用突起38は、一方の列の流路39を形成する枠部40と、他方の列の流路39を形成する枠部41とを有している。枠部40,41は同じ形状を有しており、Z軸方向において互いにずれている。枠部40,41間にはZ軸方向に延在する隙間が形成されている。
【0045】
なお、ケース33は、弁体34を収容する複数(ここでは6つ)の収容凹部44aを形成する内壁部44を有している。内壁部44は、底壁部36と一体化されている。収容凹部44aは、X軸方向に垂直な方向に切った断面で円形状を有している。収容凹部44aは、連通孔37と連通可能となっている。
【0046】
弁体34は、連通孔37を塞ぐように収容凹部44aに収容されている。弁体34は、ゴム等の弾性体で形成された円柱状部材である。弁体34は、連通孔37を開閉させる。弁体34の外側面と内壁部44の内壁面との間には、隙間Gが設けられている(
図6参照)。
【0047】
カバー35は、ケース33の開口を塞ぐ板状部材である。カバー35は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。カバー35は、ケース33の開口端面に熱溶着により接合されている。カバー35は、複数の弁体34をケース33の底壁部36に押し付ける押圧部材としても機能する。ケース33の内壁部44とカバー35との間には、収容凹部44aと連通した収容空間Sが設けられている。また、カバー35には、複数(ここでは2つ)の排気口45が設けられている。排気口45は、収容空間Sと連通されている。
【0048】
このような圧力調整弁12において、連通孔37は、二次シール部23の連通孔26及び一次シール部22の連通孔25を通してモジュール本体11の内部空間Vと連通されている。内部空間Vの圧力が設定圧よりも低いときは、連通孔37が弁体34によって塞がれた閉弁状態に維持される。内部空間Vの圧力が上昇して設定圧以上になると、弁体34が底壁部36から離間するように弾性変形し、連通孔37の閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、内部空間Vからのガスが弁体34の外側面と内壁部44の内壁面との隙間及び収容空間Sを通って排気口45から排出されるようになる。
【0049】
ここで、上述したように、枠体16(一次シール部22)における圧力調整弁12側の面22sには、連通孔25が開口している(
図5参照)。また、圧力調整弁12(底壁部36)における枠体16側の面36sには、連通孔37が開口している。そして、面22sに交差(直交)する第1方向(ここではX軸方向)からみて、互いに連通する連通孔37及び連通孔25の開口同士が互いに重複していない。すなわち、第1方向からみて、面36sにおける連通孔37の開口37hは、面22sにおける(当該連通孔37に連通する)連通孔25の開口25hと重複していない。
【0050】
さらに、上述したように、二次シール部23における圧力調整弁12側の面23sには、連通孔26が開口している。そして、第1方向からみて、互いに連通する連通孔26及び連通孔25の開口同士が互いに重複していない。すなわち、第1方向からみて、面36sにおける連通孔37の開口37hは、面23sにおける(当該連通孔37に連通する)連通孔26の開口26hに重複していない。
【0051】
なお、ここでは、第1方向からみて開口同士が互いに重複しないとは、第1方向からみたとき、開口同士が互いにシフトしており、その外縁同士が重ならないことを意味する。ここでは、第1方向からみたとき、開口37hと開口25h(及び開口26h)とが、積層方向(Z軸方向)に互いにシフトしている(開口37hが開口25hよりも鉛直上方に位置している)。また、第1方向からみて開口同士が互いに重複しないとは、第1方向からみたとき、開口同士の間に開口とは異なる領域が介在することを意味する。
【0052】
蓄電モジュール2においては、任意の態様によって、上述した開口37hと開口25h,26hとが重複しない構成を実現することができるが、本実施形態においては、枠体16と圧力調整弁12とが傾いて接合されることにより実現されている。この点についてより具体的に説明する。蓄電モジュール2においては、上述したように、枠体16の外側面である二次シール部23の面23sに対して、接合用突起27が形成されている。そして、接合用突起27の端面(第1端面)27sは、面23sに対して傾斜角αをもって傾斜している。端面27aは、圧力調整弁12(接合用突起38)との接合用の端面である。
【0053】
また、圧力調整弁12の外側面である底壁部36の面36sに対して、接合用突起38が形成されている。そして、接合用突起38の端面(第2端面)38aは、面36sに対して傾斜角βをもって傾斜している。端面38aは、枠体16(接合用突起27)との接合用の端面である。そして、枠体16と圧力調整弁12とは、それらの傾斜した端面27a,38a用いて互いに接合されることにより、傾いて配置される。
【0054】
特に、端面27aの傾斜角αと端面38aの傾斜角βとは、端面27aと端面38aとを互いに接合したときに、面23sと面36sとの角度γが、傾斜角α及び傾斜角βのそれぞれよりも大きくなるように設定されている。ここでは、角度γは、傾斜角αの値と傾斜角βの値との合計である。これにより、枠体16と圧力調整弁12とが傾いて接合され、開口37hと開口25h,26hとが重複しない構成が実現され得る。
【0055】
ここで、枠体16と圧力調整弁12との関係については、開口と電解液の液面とによって規定されてもよい。例えば、枠体16(一次シール部22)における圧力調整弁12側の面22sに交差する第1方向からみて、圧力調整弁12(底壁部36)における枠体16側の面36sにおける連通孔37の開口37hは、面22sにおける電解液Rの液面の位置P1に重複していない。さらに、第1方向からみて、面36sにおける連通孔37の開口37hは、面23sにおける電解液Rの液面の位置P3に重複していない。このような関係についても、一例として、上述したような接合用突起27,38を利用して実現できる。
【0056】
引き続いて、蓄電モジュール2を製造するための蓄電モジュール製造方法の一例について説明する。この製造方法においては、まず、モジュール本体11を用意する第1工程、及び、圧力調整弁12を用意する第2工程を行う。第1工程と第2工程との順逆は限定されない。続いて、第1工程及び第2工程の後に、モジュール本体11側の連通孔25,26のそれぞれと、圧力調整弁12側の連通孔37のそれぞれとが互いに連通するように、枠体16に圧力調整弁12を接合する第3工程を行う。
【0057】
第3工程においては、接合用突起27,38の傾斜した端面27a,38aを用いて、圧力調整弁12における連通孔37の開口37hが、枠体16における連通孔25,26の開口25h,26hに重複しないように(或いは、連通孔37の開口37hが電解液Rの液面の位置P1,P3に重複しないように)、枠体16と圧力調整弁12とを互いに接合する。より具体的には、第3工程においては、
図6に示されるように、まず、接合用突起27,38同士が対向するようにモジュール本体11及び圧力調整弁12を配置すると共に、モジュール本体11と圧力調整弁12との間に熱板46を配置する。
【0058】
次に、
図7に示されるように、端面27a,38aを熱板46に接触させることにより端面27a,38aを溶融させる。そして、
図8に示されるように、端面27a,38aが溶融している間に、接合用突起27と接合用突起38とを押し付けることにより、接合用突起27,38同士が溶着される。これにより、接合用突起27,38同士が接合され、モジュール本体11に圧力調整弁12が設けられて蓄電モジュール2が得られる。
【0059】
以上説明したように、蓄電モジュール2においては、枠体16が、電解液が配置された内部空間Vに連通する連通孔25を有している。また、枠体16に設けられた圧力調整弁12が、連通孔25に連通された連通孔37を有している。したがって、内部空間Vの圧力が上昇した際には、連通孔25及び連通孔37を介して内部空間Vのガスが排出され、内部空間Vの圧力が調整される。特に、蓄電モジュール2にあっては、枠体16の面22sに交差する方向からみて、圧力調整弁12の面36sにおける連通孔37の開口37hが、面22sにおける連通孔25の開口25hに重複していない。換言すれば、連通孔37の開口37hは、連通孔25の開口25hに対してシフトしている。したがって、蓄電モジュール2を使用(設置)する際には、より外部側に位置する圧力調整弁12の連通孔37の開口37hを、連通孔25の開口25hよりも鉛直上方に配置できる。よって、蓄電モジュール2によれば、電解液の排出量を低減可能である。
【0060】
また、蓄電モジュール2においては、枠体16は、それぞれの電極(バイポーラ電極13等)の周縁部17cに設けられた複数の一次シール部22と、電極積層体15及び一次シール部22を取り囲むように設けられた枠状の二次シール部23と、を含む。一次シール部22は、面22sを含む。二次シール部23は、複数の連通孔25に連通された複数の連通孔26を有する。二次シール部23における圧力調整弁12の側の面23sには、連通孔26が開口している。そして、連通孔37は、連通孔26を介して連通孔25に連通されている。このように、一次シール部22と二次シール部23とを含むように枠体16を構成してもよい。
【0061】
また、蓄電モジュール2においては、第1方向からみて、面36sにおける連通孔37の開口37hは、面23sにおける連通孔26の開口26hと重複していない。このため、圧力調整弁12の連通孔37の開口37hが、一次シール部22の連通孔25の開口25hに加えて、より外部側に位置する二次シール部23の連通孔26の開口26hとも重複しない。よって、電解液の排出量を確実に低減可能である。
【0062】
また、蓄電モジュール2においては、面23sには、枠体16と圧力調整弁12とを互いに接合するための接合用突起27が形成されている。そして、接合用突起27の接合用の端面27aは、面23sに対して傾斜している。このため、接合用突起27の傾斜した端面27aを用いて、枠体16と圧力調整弁12とが接合されることとなる。これにより、枠体16と圧力調整弁12とが互いに傾斜した状態となる。この結果、圧力調整弁12の連通孔37の開口37hが枠体16の連通孔25の開口25h等に重複しない構成を、容易且つ確実に実現できる。
【0063】
さらに、蓄電モジュール2においては、面36sには、枠体16と圧力調整弁12とを互いに接合するための接合用突起38が設けられている。接合用突起38の接合用の端面38aは、面36sに対して傾斜している。そして、端面27aの傾斜角αと端面38aの傾斜角βとは、端面27aと端面38aとを互いに接合したときに、面36sと面23sとの角度γが、傾斜角α及び傾斜角βのそれぞれよりも大きくなるように設定されている。
【0064】
この場合、枠体16及び圧力調整弁12の両方に設けられた接合用突起27,38の傾斜した端面27a,38aを用いて、枠体16と圧力調整弁12とが接合されることとなる。このため、枠体16と圧力調整弁12との角度を、それぞれの接合用突起27,38の端面27a,38aの傾斜角α,βに分配させることができる。したがって、枠体16と圧力調整弁12とに一定の角度を生じさせるに際して、それぞれの傾斜角α,βを相対的に小さくできる。この結果、接合用突起27,38の突出量の増大を抑え、例えば射出成形等によって高精度に接合用突起27,38を形成できる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る蓄電モジュール製造方法によれば、上述したように、電解液の排出量を低減可能な蓄電モジュール2を製造できる。特に、この製造方法においては、枠体16に圧力調整弁12を接合する際に、枠体16及び圧力調整弁12の少なくとも一方に設けられた接合用突起の傾斜した端面を用いる。したがって、圧力調整弁12の連通孔37の開口37hが枠体16の連通孔25,26の開口25h,26hに重複しない構成を、容易且つ確実に実現できる。
【0066】
なお、蓄電モジュール2においては、枠体16が、電解液Rが配置された内部空間Vに連通する連通孔25を有している。また、枠体16に設けられた圧力調整弁12が、連通孔25に連通された連通孔37を有している。したがって、内部空間Vの圧力が上昇した際には、連通孔25及び連通孔37を介して内部空間Vのガスが排出され、内部空間Vの圧力が調整される。特に、蓄電モジュール2にあっては、枠体16の面22sに交差する方向からみて、圧力調整弁12の面36sにおける連通孔37の開口37hが、面22sにおける電解液Rの液面の位置P1に重複していない。したがって、蓄電モジュール2を使用(設置)する際には、より外部側に位置する圧力調整弁12の連通孔37の開口37hを、枠体16の面22sにおける電解液Rの液面よりも鉛直上方に配置できる。よって、蓄電モジュール2によれば、電解液Rの排出量を低減可能である。
【0067】
以上の実施形態は、本発明の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明は、上述した蓄電モジュール2、及びその製造方法に限定されず、任意に変更可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態においては、二次シール部23及び圧力調整弁12の両方に、傾斜した端面を有する接合用突起を設けた。しかしながら、二次シール部23の面23s及び圧力調整弁12の面36sのうちの一方に、傾斜した端面を有する接合用突起を設ければよい。すなわち、二次シール部23の面23s及び圧力調整弁12の面36sのうちの他方には、接合用突起を設けなくてもよいし、或いは、接合用突起を設けるものの当該接合用突起の端面を傾斜させなくてもよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、接合用突起27,38の端面27a,38aの傾斜を利用して、枠体16(すなわちモジュール本体11)と圧力調整弁12との間に傾斜をつけ、開口37hが開口25h,26hに重複しない態様について説明した。しかしながら、例えば、端面27aと端面38aとを平行にしつつ、流路39が屈曲するように接合用突起38を形成することによって、開口37hが開口25h,26hに重複しないようにしてもよい。また、他の構成によって、開口37hが開口25h,26hに重複しないようにしてもよい。
【0070】
以上の実施形態について、以下に付記する。
【0071】
[付記1]
互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、
前記電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、
前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、
前記枠体に設けられ、前記複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、
を備え、
前記枠体における前記圧力調整弁の側の第1面には、前記第1連通孔が開口しており、
前記圧力調整弁における前記枠体の側の第2面には、前記第2連通孔が開口しており、
前記第1面に交差する第1方向からみて、前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第1面における前記電解液の液面の位置に重複していない、
蓄電モジュール。
[付記2]
前記枠体は、それぞれの前記バイポーラ電極の周縁部に設けられた複数の第1部分と、前記電極積層体及び前記第1部分を取り囲むように設けられた枠状の第2部分と、を含み、
前記第1部分は、前記第1面を含み、
前記第2部分は、前記複数の第1連通孔に連通された複数の第3連通孔を有し、
前記第2部分における前記圧力調整弁の側の第3面には、前記第3連通孔が開口し、
前記第2連通孔は、前記第3連通孔を介して前記第1連通孔に連通されている、
付記1に記載の蓄電モジュール。
[付記3]
前記第1方向からみて、前記第2面における前記第2連通孔の開口は、前記第3面における前記電解液の液面の位置と重複していない、
付記2に記載の蓄電モジュール。
[付記4]
前記第2面及び前記第3面のうちの一方の面には、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接合するための第1接合用突起が形成されており、
前記第1接合用突起の接合用の第1端面は、前記一方の面に対して傾斜している、
付記2又は3に記載の蓄電モジュール。
[付記5]
前記第2面及び前記第3面のうちの他方の面には、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接合するための第2接合用突起が設けられおり、
前記第2接合用突起の接合用の第2端面は、前記他方の面に対して傾斜しており、
前記第1端面の傾斜角と前記第2端面の傾斜角とは、前記第1端面と前記第2端面とを互いに接合したときに、前記第2面と前記第3面との角度が、前記第1端面の傾斜角及び前記第2端面の傾斜角のそれぞれよりも大きくなるように設定されている、
付記4に記載の蓄電モジュール。
[付記6]
互いに積層された複数のバイポーラ電極を含む電極積層体と、前記電極積層体に設けられた複数の内部空間に配置された電解液と、前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記複数の内部空間のそれぞれに連通された複数の第1連通孔を有する枠体と、を有するモジュール本体を用意する第1工程と、
複数の第2連通孔を有する圧力調整弁を用意する第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程の後に、前記第1連通孔のそれぞれと前記第2連通孔のそれぞれとが互いに連通するように、前記枠体に前記圧力調整弁を接合する第3工程と、
を備え、
前記枠体及び前記圧力調整弁のうちの少なくとも一方には、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接続するための接合用突起が形成されており、
前記第3工程においては、前記接合用突起の傾斜した端面を用いて、前記圧力調整弁における前記第2連通孔の開口が電解液の液面の位置よりも上方に配置され重複しないように、前記枠体と前記圧力調整弁とを互いに接合する、
蓄電モジュール製造方法。
【符号の説明】
【0072】
2…蓄電モジュール、12…圧力調整弁、13…バイポーラ電極(電極)、16…枠体、22…一次シール部(第1部分)、22s…面(第1面)、23…二次シール部(第2部分)、23s…面(第3面)、25…連通孔(第1連通孔)、25h,26h,37h…開口、26…連通孔(第3連通孔)、27…接合用突起(第1接合用突起)、27a…端面(第1端面)、36s…面(第2面)、37…連通孔(第2連通孔)、38…接合用突起(第2接合用突起)、38a…端面(第2端面)、α,β…傾斜角。