(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/397 20060101AFI20220412BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220412BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220412BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61K31/397
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/32
A61K47/38
A61P25/00
A61P43/00 107
(21)【出願番号】P 2018559635
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2017047253
(87)【国際公開番号】W WO2018124283
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2016255624
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】阪田 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】辻畑 茂朝
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/125617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH
2O以下であるカルボン酸を含む固体医薬組成物であって、1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩が1mg/mLまたは8.96mg/mLとなるように10mmol/LのKCl溶液に溶解または懸濁させた時の溶液のpHが4.8以下であ
り、前記カルボン酸は、マレイン酸、L-グルタミン酸塩酸塩、フマル酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、コハク酸、アジピン酸、ソルビン酸、L-グルタミン酸、カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロースフタル酸エステル、酢酸フタル酸セルロース及びL-アルギニン酸塩酸から選ばれる、固体医薬組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸が、L-アスパラギン酸またはL-グルタミン酸から選ばれる1種以上である、請求項
1に記載の固体医薬組成物。
【請求項3】
前記pHが3.0以上4.8以下である、請求項1
または2に記載の固体医薬組成物。
【請求項4】
1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH
2O以下であるカルボン酸を含む細粒を含む組成物である、請求項1から
3の何れか一項に記載の固体医薬組成物。
【請求項5】
前記細粒が、1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と結合剤とを少なくとも含むコアと、前記コアの表面にコーティングされたポリマー層とを有する細粒である、請求項
4に記載の固体医薬組成物。
【請求項6】
細粒中におけるカルボン酸の含有量が、1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩の質量に対して10~100質量%である、請求項
4または
5に記載の固体医薬組成物。
【請求項7】
細粒剤または錠剤である、請求項1から
6の何れか一項に記載の固体医薬組成物。
【請求項8】
口腔内崩壊錠剤である、請求項1から
6の何れか一項に記載の固体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の薬物と所定のカルボン酸とを含む固体医薬組成物であって、10mmol/LのKCl溶液に所定の量を溶解または懸濁させた時の溶液のpHが4.8以下である、固体医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オール(以下、化合物Aとも言う)またはその塩は、神経保護作用、神経再生促進作用および神経突起伸展作用を有し、中枢および末梢神経の疾病の治療薬として有用な化合物である(特許文献1)。
【0003】
化合物Aまたはその塩は、経口投与されるが、経口投与用の医薬組成物としては、化合物Aまたはその塩ならびにマンニトール、ソルビトールおよびイソマルトースから選ばれる1種または2種以上を含有する固形医薬組成物が知られている(特許文献2)。
【0004】
一方、薬物の苦味を抑制する方法としては、L-アルギニン(特許文献3)、クエン酸、酒石酸(特許文献4)、または乳酸(特許文献5)を配合することが知られている。さらに苦味を抑制する物質としては、カラギーナンおよびコンドロイチン硫酸が知られている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2003/035647号パンフレット
【文献】国際公開WO2013/125617号パンフレット
【文献】特開2013-177418号公報
【文献】特開2009-263298号公報
【文献】特開2012-107060号公報
【文献】特開2009-51855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化合物Aまたはその塩を必要とする患者は主に高齢者であり、より服用性の高い製剤が望まれている。服用性の高い製剤として口腔内崩壊錠剤および顆粒剤が知られているが、化合物Aが特有の苦みを有しているという問題がある。また、化合物Aまたはその塩は、保存時に分解しやすいというもう一つの問題がある。
【0007】
特許文献3から5に記載の技術では化合物Aまたはその塩の苦味を抑制できないか、またはもう一つの問題である保存時の安定性が悪化するという問題があった。また、特許文献6の技術を化合物Aのマレイン酸塩に適用した場合、後に残る苦味(後苦味)を抑制することはできなかった。
【0008】
本発明の課題は、化合物Aまたはその塩の特有の苦味を抑制し、かつ化合物Aまたはその塩の保存安定性が良好な固体医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、化合物Aまたはその塩を含む固体医薬組成物に特定の有機酸を配合することによって、化合物Aに特有の後に残る苦味(後苦味)を軽減した医薬組成物を製造できることを見出した。さらに、本発明者らは、化合物Aまたはその塩と上記の特定の有機酸との組合せにおいて、保存中の化合物Aまたはその塩の分解が低減されることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記を提供する。
(1) 1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH2O以下であるカルボン酸を含む固体医薬組成物であって、1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩が1mg/mLまたは8.96mg/mLとなるように10mmol/LのKCl溶液に溶解または懸濁させた時の溶液のpHが4.8以下である、固体医薬組成物。
(2) 上記カルボン酸が、酸性アミノ酸または酸性高分子から選ばれる1種以上である、(1)に記載の固体医薬組成物。
(3) 上記カルボン酸が、L-アスパラギン酸またはL-グルタミン酸から選ばれる1種以上である、(1)または(2)に記載の固体医薬組成物。
(4) 上記カルボン酸が、メタクリル酸コポリマーである、(1)または(2)に記載の固体医薬組成物。
(5) 上記pHが3.0以上4.8以下である、(1)から(4)の何れか一に記載の固体医薬組成物。
(6) 1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH2O以下であるカルボン酸を含む細粒を含む組成物である、(1)から(5)の何れか一に記載の固体医薬組成物。
(7) 上記細粒が、1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩と結合剤とを少なくとも含むコアと、上記コアの表面にコーティングされたポリマー層とを有する細粒である、(6)に記載の固体医薬組成物。
(8) 細粒中におけるカルボン酸の含有量が、1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オールまたはその塩の質量に対して10~100質量%である、(6)または(7)に記載の固体医薬組成物。
(9) 細粒剤または錠剤である、(1)から(8)の何れか一に記載の固体医薬組成物。
(10) 口腔内崩壊錠剤である、(1)から(8)の何れか一に記載の固体医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、化合物Aまたはその塩の特有の苦味を抑制し、かつ化合物Aまたはその塩の保存安定性が良好な固体医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の細粒の一例の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
本明細書において「平均粒子径」とは、体積平均粒子径(Mv)をいい、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(製品名:LS 13 320、ベックマンコールター社)を用いて測定される値であるが、平均粒子径の測定方法は特に限定されない。
本明細書において「層」との語は、被覆対象物の全体を被覆している構成に加え、被覆対象物の一部を被覆している構成も、本用語に含まれる。
【0015】
[固体医薬組成物]
本発明の固体医薬組成物は、化合物Aまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH2O以下であるカルボン酸を含む固体医薬組成物であって、化合物Aまたはその塩が1mg/mLまたは8.96mg/mLとなるように10mmol/LのKCl溶液に溶解または懸濁させた時の溶液のpHが4.8以下である、固体医薬組成物である。
【0016】
本発明者らは、化合物Aまたはその塩の苦味は、口腔内に含んだときに感じる苦味(先苦味)と後に残る苦味(後苦味)からなることを見出している。本発明においては、化合物Aまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH2O以下であるカルボン酸とを、化合物Aまたはその塩が1mg/mLまたは8.96mg/mLとなるように10mmol/LのKCl溶液に溶解または懸濁させた時の溶液のpHが4.8以下となるように配合して固体医薬組成物とすることによって、後苦味を選択的に抑制できるという予想外の効果を見出された。さらに、上記した特定のカルボン酸は、化合物Aまたはその塩の保存時の安定性を維持するという予想外の効果も見出された。
【0017】
<化合物A>
本発明においては、化合物A(即ち、1-(3-(2-(1-ベンゾチオフェン-5-イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン-3-オール)またはその塩を有効成分として使用する。
【0018】
化合物Aの塩は環状のアミノ基を有するので、その塩としては、通常知られている塩基性基における塩を挙げることができる。
【0019】
塩基性基における塩としては、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硝酸および硫酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;ならびにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩が挙げられる。
【0020】
上記した塩の中で、好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられ、より好ましい塩としては、マレイン酸との塩が挙げられる。
【0021】
化合物Aまたはその塩において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、それらすべての異性体の何れでもよく、また、水和物、溶媒和物およびすべての結晶形の何れでもよい。
【0022】
化合物Aまたはその塩は、自体公知の方法またはそれらを適宜組み合わせることにより、また、特許文献1に記載の方法により製造することができる。
【0023】
固体医薬組成物における化合物Aまたはその塩の含有量は30~90質量%であり、好ましくは40~90質量%であり、より好ましくは50~90質量%である。
【0024】
<カルボン酸>
本発明において使用するカルボン酸は、25℃の水への溶解度が50g/100gH2O以下であれば、その種類は特に限定されない。使用できるカルボン酸としては、マレイン酸、L-グルタミン酸塩酸塩、フマル酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、コハク酸、アジピン酸、ソルビン酸、L-グルタミン酸、カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロースフタル酸エステル、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、L-アルギニン酸塩酸などを挙げることができるが、特に限定されない。
【0025】
カルボン酸としては、酸性アミノ酸(L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸など)または酸性高分子(カルボキシビニルポリマー、メタクリル酸コポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、メタクリル酸コポリマーなど)から選ばれる1種以上であることが好ましい。上記の中でも、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、又はメタクリル酸コポリマーがさらに好ましい。
【0026】
カルボン酸の使用量は、「化合物Aまたはその塩が1mg/mLまたは8.96mg/mLとなるように、固体医薬組成物を10mmol/LのKCl溶液に溶解または懸濁させた時の溶液のpHが4.8以下となる」という条件を満たすように設定される。
【0027】
<pH>
本発明においては、化合物Aまたはその塩が1mg/mLまたは8.96mg/mLとなるように、固体医薬組成物を10mmol/LのKCl溶液に溶解または懸濁させた時の溶液のpHが4.8以下となる。この条件を満たすことにより、化合物Aまたはその塩の特有の苦味を抑制するとともに、化合物Aまたはその塩の保存安定性が良好となる。なお、上記のpHは、使用するカルボン酸の種類と使用量によって調整することができる。
上記のpHは、好ましくは3.0以上4.8以下であり、より好ましくは、3.5以上4.5以下であり、さらに好ましくは3.8以上4.2以下である。
【0028】
<細粒>
本発明の固体医薬組成物は、好ましくは、化合物Aまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH2O以下であるカルボン酸を含む細粒を含む組成物である。
細粒は、好ましくは、化合物Aまたはその塩とカルボン酸と結合剤とを含むコアと、上記コアの表面にコーティングされたポリマー層とを有する細粒である。
【0029】
上記した細粒の一例の模式図を
図1に示す。
図1に示す細粒においては、化合物Aである原薬を含むコア5の表面にポリマー層6がコーティングされ、さらにポリマー層6の表面にオーバーコート層7がコーティングされている。ポリマー層6は、苦味マスキング層として機能する層である。
図1に示す細粒によれば、一個の細粒に含まれる原薬の含有量を高くすることができる。
【0030】
コアは、化合物Aまたはその塩と結合剤とを少なくとも含むことが好ましい。コアは、化合物Aまたはその塩と結合剤とを含む核粒子のみから構成されていることが好ましく、化合物Aまたはその塩を含まない核粒子を含まないことが好ましい。コアの調製方法は特に限定されないが、湿式攪拌法などが好ましい。コアの調製方法については後記する。
【0031】
コアの表面には、ポリマー層がコーティングされている。ポリマー層のコーティング方法は特に限定されないが、コアに対してポリマーを含むコーティング液を噴霧コーティングする方法などが好ましい。ポリマー層の形成方法については後記する。
【0032】
細粒の円形度は0.8以上であり、好ましくは0.82以上であり、より好ましくは0.83以上であり、より一層好ましくは0.84以上であり、さらに好ましくは0.86以上であり、特に好ましくは0.87以上である。なお、細粒の円形度の上限は特に限定されないが、最大で1.0である。
【0033】
円形度は、5~15個の粒子を顕微鏡観察し、ソフトウェア(ImageJ、アメリカ国立衛生研究所)を用いて、コアについて4π×(面積)/(周長の2乗)を計算して求め、その平均値で示したものである。真円の場合、円形度は1.0となる。
【0034】
<結合剤>
コアを形成するのに使用する結合剤は、化合物Aまたはその塩と混合してコアを形成できる物質であればその種類は特に限定されない。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、アラビアゴム、アルファー化デンプン、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルアルコール・ポリエチレングリコールグラフトポリマーなどを使用することができる。結合剤は、1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の中でも、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、アルファー化でんぷん、PVAが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0035】
結合剤の使用量は特に限定されないが、化合物Aまたはその塩の質量に対して、好ましくは2~30質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、より一層好ましくは3~20質量%であり、さらに好ましくは5~20質量%であり、特に好ましくは5~15質量%である。
【0036】
<コアにおける添加物>
コアは、化合物Aまたはその塩と結合剤のみから構成されていてもよいし、化合物Aまたはその塩と結合剤に加えて、賦形剤等の添加物を添加してもよい。添加物としては、結晶セルロース、乳糖一水和物、白糖およびブドウ糖などから選ばれる糖類;、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、トレハロース、キシリトールおよびイソマルなどから選ばれる糖アルコール;エチルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチナトリウムおよびアルファー化デンプンなどのデンプン誘導体;クロスポビドンなどのポリピロリドン誘導体;
α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムなどのシクロデキストリン類;トウモロコシデンプン、バレイショデンプンおよび部分アルファー化デンプンなどのでんぷん類;リン酸水素カルシウムおよび無水リン酸水素カルシウムなどのリン酸塩類;ならびに、沈降炭酸カルシウムなどの炭酸塩類などを挙げることができるが、乳糖一水和物が特に好ましい。
【0037】
コアにおける賦形剤等の添加物の含有量は特に限定されないが、化合物Aまたはその塩の質量に対して、一般的には10~100質量%である。
【0038】
<ポリマー層>
コアの表面にはポリマー層をコーティングすることができる。ポリマー層を構成するポリマーの種類は、医薬組成物において使用できるもの、即ち、薬学的に許容できるものであれば特に限定されず、例えば、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(pH非依存型徐放性コーティングである商品名オイドラギット(登録商標) RS100など)、メタクリル酸コポリマー、エチルセルロースおよびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなどを使用することができる。ポリマーとしては、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上のポリマーを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
ポリマーの使用量は、特に限定されないが、化合物Aまたはその塩の質量に対して、好ましくは5~100質量%であり、より好ましくは10~90質量%であり、さらに好ましくは20~80質量%である。
【0040】
ポリマー層は、上記ポリマーのみから構成されていてもよく、上記ポリマー以外の添加物を含んでいてもよい。
ポリマー層における添加物としては、上記した所定の溶解度を有するカルボン酸、可塑剤(例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル等)、界面活性剤(モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート80等)等を挙げることができるが、特に限定されない。
上記添加物の使用量は特に限定されないが、各々の添加物の含有量は、ポリマーの質量に対して、一般的には2~30質量%である。
【0041】
<オーバーコート層>
細粒は、ポリマー層の表面にコーティングされたオーバーコート層をさらに有していてもよい。細粒がオーバーコート層を有することにより、細粒同士の付着または凝集をより抑制することができる。
オーバーコート層を構成する成分の種類は、医薬組成物において使用できるもの、即ち、薬学的に許容できるものであれば特に限定されず、例えば、マンニトール、無水ケイ酸(軽質無水ケイ酸など)などの賦形剤を使用することができる。
オーバーコート層の含有量は、コアとポリマー層とオーバーコート層の合計の質量に対して一般的には0.5質量%~20質量%である。
【0042】
<細粒中におけるカルボン酸の含有量>
本発明の固体医薬組成物が細粒を含む場合、細粒中におけるカルボン酸の含有量は、化合物Aまたはその塩の質量に対して、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは1~50質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%であり、特に好ましくは1~5質量%である。
【0043】
<細粒の平均粒子径>
本発明における細粒の平均粒子径は、例えば、100μm~1000μmであることが好ましく、100μm~750μmであることがより好ましく、100μm~500μmであることが更に好ましい。細粒の平均粒子径を上記の範囲内とすることにより、口腔内で医薬組成物が崩壊した際、口腔内でのざらつきをより低減することができるため、不快な服用感を避けることができる。
【0044】
[固体医薬組成物の製造方法]
本発明の固体医薬組成物が、化合物Aまたはその塩と、25℃の水への溶解度が50g/100gH2O以下であるカルボン酸を含む細粒を含む組成物である場合、本発明の固体医薬組成物は、化合物Aまたはその塩と、上記所定のカルボン酸とを用いて、一般的な造粒法(例えば、湿式撹拌造粒法など)により製造することができる。
【0045】
上記細粒が、化合物Aまたはその塩と結合剤とを少なくとも含むコアと、上記コアの表面にコーティングされたポリマー層とを有する細粒である場合、本発明の固体医薬組成物は、化合物Aまたはその塩と結合剤とを用いて湿式撹拌造粒法により化合物Aまたはその塩と結合剤とを含むコアを製造する工程と、上記コアの表面にポリマー層を形成する工程とを含む製造方法により製造することができる。
【0046】
<化合物Aまたはその塩と結合剤とを含むコアの製造>
コアは、化合物Aまたはその塩と、結合剤と、所望によりカルボ酸とを用いて湿式撹拌造粒法により製造することができる。湿式撹拌造粒法とは、細かい粉体に適当な液体結合剤を添加しつつ撹拌し、粉体の凝集粒を製造する方法である。
【0047】
湿式撹拌造粒法は、撹拌造粒機を用いて行うことができる。撹拌造粒機としては、パウレック製、バーチカルグラニュレーター FM-VG-01型等を挙げることができるが、特には限定されない。
【0048】
撹拌造粒機内において化合物Aまたはその塩と結合剤と所望によりカルボン酸とを撹拌しながら結合剤の水溶液をスプレーすることができる。その後、さらに撹拌を行い、造粒物を得ることができる。
【0049】
結合剤の水溶液をスプレーする際の撹拌速度は特に限定されないが、ブレード回転数は好ましくは200rpm~400rpm、より好ましくは250rpm~300rpmとすることができ、クロススクリュー回転数は好ましくは1000rpm~4000rpm、より好ましくは2000rpm~3000rpmとすることができる。
結合剤の水溶液をスプレーした後における撹拌の撹拌速度は特に限定されないが、ブレード回転数は好ましくは600rpm~1000rpm、より好ましくは700rpm~900rpmとすることができ、クロススクリュー回転数は好ましくは1000rpm~4000rpm、より好ましくは2000rpm~3000rpmとすることができる。
【0050】
上記で得られた造粒物を乾燥することによって、化合物Aまたはその塩と結合剤と所望によりカルボン酸とを含むコアを製造することができる。乾燥は、流動層造粒機(例えば、パウレック製、FD-MP-01型など)を用いて行うことができる。
【0051】
<コアの表面にポリマー層を形成する工程>
コアの表面にポリマー層を形成する工程は、一般的なコーティング方法により行なうことができる。例えば、ポリマー層を構成する成分を溶媒に溶解したポリマー層用コーティング液を調製し、コアに噴霧すればよい。なお、ポリマー層には、上記した所定の溶解度を有するカルボン酸を含めてもよいし、含めなくてもよい。なお、カルボン酸は、コア、ポリマー層および最外層の少なくとも一方に含まれていることが好ましい。ポリマー層用コーティング液の噴霧速度、噴霧時間、液温度、乾燥条件等は、特に制限されるものではなく、ポリマー層用コーティング液の組成、粘度、粒子サイズ等に応じて、適宜設定することができる。
【0052】
<ポリマー層の表面にオーバーコート層を形成する工程>
ポリマー層の表面にオーバーコート層を形成することによって、ポリマー層の表面にコーティングされたオーバーコート層を有する細粒を製造することができる。但し、オーバーコート層は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0053】
オーバーコート層を形成する工程は、一般的なコーティング方法および粉末添加法により行なうことができる。例えば、オーバーコート層を構成する成分を溶媒に溶解したオーバーコート層用コーティング液を調製し、ポリマー層の表面に噴霧すればよい。オーバーコート層用コーティング液の噴霧速度、噴霧時間、液温度、乾燥条件等は、特に制限されるものではなく、オーバーコート層用コーティング液の組成、粘度、粒子サイズ等に応じて、適宜設定することができる。粉末添加法はオーバーコート層を構成する成分を粉末のまま添加し混合すればよい。
【0054】
[固体医薬組成物の形態]
本発明の固体医薬組成物の形態は特に限定されないが、好ましくは細粒剤、錠剤、顆粒剤などの経口用固形製剤であり、より好ましくは細粒剤または錠剤である。錠剤は、好ましくは口腔内崩壊錠剤である。
錠剤は、必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、胃溶性被覆錠、腸溶性被覆錠および水溶性フィルムコーティング錠とすることができる。
【0055】
錠剤は、好ましくは口腔内崩壊錠剤とすることができる。
口腔内崩壊錠剤は、細粒に対して外側にさらに賦形成分を含むものでもよい。ここでいう賦形成分は、細粒を含む錠剤の成形性および服用性の向上に寄与し得る成分である。賦形成分は、薬理学的に許容し得る製剤用添加物として、苦味抑制剤、臭い吸着剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、流動化剤、甘味料、香料、着色料等を、本発明の効果を阻害しない範囲において、含んでもよい。製剤用添加物は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。賦形成分の具体例としては、特開2016-141630号公報の段落番号0085~0095に記載されているものを挙げることができる。
【0056】
製剤用添加物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
細粒に対して外側に含まれる賦形成分中における製剤用添加物の含有量は、口腔内崩壊錠剤中の細粒の含有比率、細粒の平均粒子径等を考慮して、適宜設定することができる。
【0057】
[固体医薬組成物の性状]
本発明の固体医薬組成物が錠剤である場合、錠剤1錠あたり、40~1000mgの化合物Aまたはその塩が含まれていることが好ましい。
【0058】
本発明の固体医薬組成物の形状は、医薬上許容されるものであれば、特に制限されない。
本発明の固体医薬組成物が錠剤である場合、錠剤の形状は、例えば、円形錠であってもよく、変形錠であってもよく、服薬コンプライアンスを考慮して、適宜設定することができる。
本発明の固体医薬組成物が錠剤である場合、錠剤の大きさは、医薬上許容されるものであれば、特に制限されない。錠剤が嚥下困難な患者に用いられることが多いことに鑑みると、本発明の錠剤の大きさは、薬効を考慮した上で、極力小さいことが好ましい。
【0059】
本発明の固体医薬組成物は、薬物の有効性の観点から、胃での薬物の溶出を想定した日本薬局方溶出試験(パドル法:パドル回転数50rpm、溶出試験液:0.1mol/L塩酸)での60分後の溶出率が40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることがより一層好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが更に一層好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0060】
[錠剤の製造方法]
本発明の固体医薬組成物が錠剤である場合、錠剤の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。本発明の錠剤は、例えば、細粒と所望により賦形成分とを混合し、得られた混合末を打錠し、乾燥することで得ることができる。
【0061】
細粒と賦形成分とを混合する方法は、特に制限されない。細粒と賦形成分とを混合する方法としては、例えば、V型混合器(筒井理化学器械(株))、流動層造粒機(パウレック(株))等の公知の混合器を用いて混合する方法が挙げられる。
混合に要する時間等の条件は、細粒および賦形成分の種類により、適宜調整することができる。
細粒と賦形成分との混合末を打錠する方法は、特に制限されない。打錠する際の温度は、特に制限されるものではなく、適宜設定することができる。
【0062】
細粒と賦形成分との混合末を打錠する方法としては、例えば、ロータリー打錠機(製品名:HT-AP-SS、畑鉄工所(株))、高速回転式打錠剤機(製品名:AQUARIUS G、菊水製作所(株))等の打錠機を用いて打錠する方法が挙げられる。
混合末を打錠した打錠物を乾燥する方法は、特に制限されない。混合末を打錠した打錠物を乾燥する方法としては、真空乾燥、流動層乾燥等により乾燥する方法が挙げられる。
【0063】
[固体医薬組成物の投与]
本発明の固体医薬組成物の投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択できるが、通常、薬効を発揮しうる量を1日、1回から数回に分割して投与すればよく、通常成人に対して化合物Aまたはその塩として、1日、たとえば、40~1000mgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【0064】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1~19および比較例1~14
化合物Aのマレイン酸塩と添加剤をそれぞれ、表2~表6に記載の数値となるように10mmol/L KCl溶液に溶解または懸濁させた時のpHを測定した。
表2~表6に示す添加剤について、25℃の水への溶解度を測定した。表2~表6における溶解度の欄の数値の単位は、g/100gH2Oである。
表2~表6に示す組成に従い、化合物Aのマレイン酸塩と添加剤とを混合した固体医薬組成物について、以下の評価を行った。
上記の測定および評価の結果を、表2~表6に示す。
【0066】
<苦味(後苦味)の評価>
化合物Aまたはその塩の苦味は、口腔内に含んだ際に感じられる苦味(先苦味)に加え、嚥下後も持続する苦味(後苦味)を有する。即ち、化合物Aまたはその塩は、先苦味と後苦味の両方を有する化合物である。
味認識装置((株)インセント:SA402B)を用いて評価した。この味認識装置は、人工脂質膜の膜電位の変化を信号として取り出すことが可能な装置であり、後味に相当するCPA値が得られる。なお、CPA値とは次のように定義される。
CPA値:Vr’-Vr。Change of membrane Potentialcaused by Adsorption。
Vr(mV):コントロール溶液またはサンプル溶液を測定する前の基準液の測定値
Vr’(mV):コントロール溶液またはサンプル溶液を測定した後に再び測定した基準液の測定値
【0067】
測定は3回行い、コントロール溶液と各サンプル溶液の各CPA値について平均値を算出した。
【0068】
味認識装置では、基準液(30mmol/L KClと0.3mmol/L酒石酸)で安定化した後、コントロール溶液、各サンプル溶液におけるCPA値を測定した。測定に使用するセンサーは塩基性の苦味に特異的なAC0を用いた。
【0069】
別途、官能試験を行い官能の苦味スコアと、CPA値との相関性から、検量線を作成した。CPA値について検量線から内挿し、苦味スコアを算出した。
官能の苦味スコア:
1 やっと感知できる苦味
2 苦味がわかる
3 楽に感知できる苦味
4 強い苦味
5 耐えられない苦味
【0070】
試験験方法は次の通りである。
固体医薬組成物を化合物Aのマレイン酸塩の濃度が1mg/mLとなるように10mmol/L KCl溶液に加え、スターラーで30分撹拌し、サンプル溶液とした。また、コントロール溶液として、10mmol/L KCl溶液を用いた。
【0071】
苦味(後苦味)の評価基準は以下の通りである。
A:1.5以下
B:1.5より大きく2.5以下
C:2.5より大きい
【0072】
<分解物の評価>
調製した固体医薬組成物について70℃の恒温槽に7日間保管する苛酷試験を行なった。次いで、下記の方法により化合物Aの分解量からみた保存安定性の評価を行なった。
【0073】
上記の保管後の固体医薬組成物を、化合物Aのマレイン酸塩が333μg/mLとなるように水/アセトニトリル/pH3.0リン酸バッファー(450:50:1)で調整し、メンブランフィルターでろ過して料液を得た。高速液体クロマトグラフ(HPLC)により、化合物Aの分解物の定量を行った。化合物Aの分解物として、下記の測定条件において、化合物Aに対する相対保持時間0.94に検出される分解物の量を定量した。分解物の量(化合物Aの量に対する百分率)を表2~表6に示す。
【0074】
(HPLC測定条件)
検出器:UV検出器 (検出波長:230nm)
カラム:Waters Sunfire 3.0mmx150mm(3.5μm)
カラム温度:40℃
展開溶媒:
A;水/アセトニトリル/pH3.0リン酸バッファー=38:7:5
B;水/アセトニトリル/pH3.0リン酸バッファー=11:7:2
流速:0.45mL/min
サンプルクーラー温度:5℃
注入量:10μL
【0075】
【0076】
分解物の評価基準は以下の通りである。
A:0.25%未満
B:0.25%以上0.75%未満
C:0.75%以上
【0077】
<総合評価>
総合評価の評価基準は以下の通りである。
A 苦味の評価がAであり、分解物の評価がAである場合
B 苦味の評価がAであり、分解物の評価がBである場合、苦味の評価がBであり、分解物の評価がAである場合、または苦味の評価がBであり、分解物の評価がBである場合
C 苦味の評価または分解物の評価の少なくとも一方がCである場合
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
実施例20(湿式撹拌)
(コアの形成)
撹拌造粒機(パウレック製、バーチカルグラニュレーター FM-VG-01型)に、化合物Aのマレイン酸塩150.0g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L:商品名、日本曹達(株))17.3g、乳糖一水和物27.8g、およびL-アスパラギン酸99.0gを投入し、ブレード回転数270rpm、クロススクリュー回転数2500rpmで撹拌しながら10質量%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L:商品名、日本曹達(株))水溶液を60.0gスプレーした。その後、ブレード回転数800rpm、クロススクリュー回転数2500rpmで9分間撹拌した。得られた造粒物の全量を、流動層造粒機(パウレック製、FD-MP-01型)を用いて給気温度60℃で乾燥させ、コアを得た。
【0084】
(ポリマー層の形成)
得られたコアの内、粒子径が100μm~355μmのコアを篩を用いて回収し、流動層造粒機である微少量流動装置(ダルトン製)に10g投入して、給気温度を室温(30~40℃) にし、エチルセルロース(AquacoatECD:商品名、FMC)、およびトリアセリンおよび精製水を含有するコーティング液を0.2~0.3g/分の速度で微少流動装置内に供給して、噴霧コーティングし、ポリマー層を形成した。
【0085】
(オーバーコート層の形成)
ポリマー層を形成した後に、マンニトールと精製水とを含有する液(マンニトールの含有量は14%)を0.3g/分の速度で微少流動装置内に供給して、ポリマー層の表面にオーバーコート層を含む粒子を得た。得られた粒子の内、粒子径が100μm~425μmの粒子を篩を用いて回収し、各種評価に用いた。
【0086】
実施例21(湿式撹拌)
(コアの形成)
実施例1と同様に行った。
【0087】
(ポリマー層の形成)
コーティング液の組成を下記表に示す組成になるように変更した以外は、実施例20と同様にして、ポリマー層を形成した。
【0088】
実施例22(湿式撹拌)
(コアの形成)
乳糖一水和物の使用量を126.8gとし、L-アスパラギン酸を使用しないこと以外は、実施例20と同様にしてコアを得た。
【0089】
(ポリマー層の形成)
コーティング液として、メタクリル酸コポリマーLD、クエン酸トリエチル、モノステアリン酸グリセリンおよびポリソルベート80を含む化合物Aのマレイン酸塩を使用すること以外は、実施例20と同様にして、ポリマー層を形成した。
【0090】
(オーバーコート層の形成)
実施例20と同様にして、オーバーコート層を形成した。
【0091】
比較例15(湿式撹拌)
(コアの形成)
乳糖一水和物の使用量を126.8gとし、L-アスパラギン酸を使用しないこと以外は、実施例20と同様にしてコアを得た。
【0092】
(ポリマー層の形成)
実施例20と同様にして、ポリマー層を形成した。
【0093】
(オーバーコート層の形成)
実施例20と同様にして、オーバーコート層を形成した。
【0094】
実施例23(湿式撹拌)
(コアの形成)
実施例20と同様に行った。
【0095】
(ポリマー層の形成)
実施例20と同様に行った。
【0096】
(オーバーコート層の形成)
実施例20と同様にしてオーバーコート層を形成した後に、ラウリル硫酸ナトリウムと精製水とを含有する液(ラウリル硫酸ナトリウムの含有量は5%)を0.3g/分の速度で微少流動装置内に供給して得られた粒子の内、粒子径が100μm~425μmの粒子を篩を用いて回収した。得られた粒子にさらにL-アスパラギン酸を粉で添加した後、5分混合して得られた粒子を各種評価に用いた。
【0097】
実施例24(湿式撹拌)
(コアの形成)
実施例20と同様に行った。
【0098】
(ポリマー層の形成)
実施例20と同様に行った。
【0099】
(オーバーコート層の形成)
実施例20と同様にしてオーバーコート層を形成した後に、L-アスパラギン酸を粉で添加した後、5分混合して得られた粒子を各種評価に用いた。
【0100】
[評価]
実施例20~24および比較例15で製造した医薬組成物について、以下の項目を評価した。評価の結果を表7に示す。
【0101】
<pH>
化合物Aのマレイン酸塩が、8.96mg/mLとなるように10mmol/L KCl溶液に溶解または懸濁させた時のpHを測定した。
【0102】
<苦味(後苦味)の評価>
実施例1~19および比較例1~14に記載した方法と同様に評価した。
但し、測定方法は以下の通りである。医薬組成物を化合物Aのマレイン酸塩の濃度が9mg/mLとなるように日局精製水に加え、30秒間転倒混和する。ただちにポリシリケートグラスファイバーでろ過し、ろ液中のKCl濃度が10mmol/LとなるようにKClを加えたものをサンプル溶液とした。また、コントロール溶液として、10mmol/L KCl溶液を用いた。
【0103】
評価の基準は以下の通りである。
A:0.6未満
B:0.6以上1.0未満
C:1.0以上
【0104】
<分解物の評価>
実施例1~19および比較例1~14に記載した方法と同様に評価した。
【0105】
<総合評価>
総合の評価基準は、実施例1~19および比較例1~14における総合評価と同様である。
【0106】
【0107】
実施例25
(コアの形成)
L-アスパラギン酸を使用しないこと以外は、実施例23と同様にしてコアを得た。
(ポリマー層の形成)
実施例23と同様にして、ポリマー層を形成した。
(オーバーコート層の形成)
実施例24と同様にして、オーバーコート層を形成した。
表8に示す組成になるように、上記で得た細粒と賦形成分とを混合し、打錠末(混合末)を得た。3錠中に化合物Aのマレイン酸塩が448mg含まれるように得られた打錠末(混合末)を量り取り、ロータリー打錠機(製品名:HT-AP-SS、畑鉄工所(株))を用いて、12mmφ、シングルR面の杵を用い、回転数20rpm、硬度50Nとなるように圧縮成型して、口腔内崩壊錠(錠剤)を得た。
【0108】
【0109】
[口腔内崩壊錠の評価]
<苦味遮蔽の評価>
口腔内崩壊錠1錠を、被験者の口腔内に投入した。投入60分後に化合物Aに由来する苦味が残存しているかについて、下記評価基準に従って評価を行った。
評価基準:
B 投入60分後にわずかに苦味を感じる。
A 投入60分後に苦味を感じない。
【0110】
得られた実施例25の口腔内崩壊錠について、苦味遮蔽の官能評価を行った。その結果、実施例25の口腔内崩壊錠については苦味を感じず、化合物Aに由来する苦味が十分に遮蔽されていた。
【0111】
<口腔内崩壊時間>
成人男性1名の口腔内に口腔内崩壊錠1錠を投薬し、錠剤の芯を感じなくなるまでの時間を測定した。
【0112】
実施例25の口腔内崩壊錠について口腔内崩壊時間を測定した。その結果、口腔内崩壊時間は25秒であった。
【0113】
<口腔内崩壊錠のpH>
口腔内崩壊錠を化合物Aのマレイン酸塩の濃度が9mg/mLとなるように日局精製水に加え、30秒間転倒混和する。ただちにポリシリケートグラスファイバーでろ過し、ろ液中のKCl濃度が10mmol/LとなるようにKClを加えたものをサンプル溶液とした。また、コントロール溶液として、10mmol/L KCl溶液を用いた。
【0114】
実施例25の口腔内崩壊錠についてpHを測定した。その結果、pHは3.7であった。
【符号の説明】
【0115】
5 コア
6 ポリマー層
7 オーバーコート層