(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20220412BHJP
【FI】
C12G3/04
(21)【出願番号】P 2019022553
(22)【出願日】2019-02-12
(62)【分割の表示】P 2017222853の分割
【原出願日】2017-11-20
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】蝦名 史子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138582(JP,A)
【文献】特開平01-174353(JP,A)
【文献】特開2015-208253(JP,A)
【文献】特開2015-133924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G、C12C、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦味価が5未満、総ポリフェノール量が30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比が0.1超3.0以下であ
り、
アルコール度数が1v/v%以上である、ビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料にビールらしい香味を付与する技術手段については、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、0.3~5ppmのクワシンおよび/または0.5~5ppmのキニーネを含んでなる、ビールテイスト飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールらしい香味の付与に用いられる原材料として、ホップが通常用いられる。一方、ビールテイスト飲料がホップ由来の苦味成分を含む場合、飲みにくいと感じられる場合があった。
【0005】
本発明は、飲みにくさを解消しつつ、ビールらしいコク及びキレを有するビールテイスト飲料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、苦味価が5未満、総ポリフェノール量が30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比が0.1超3.0以下である、ビールテイスト飲料を提供する。本発明のビールテイスト飲料は、苦味価が5未満でありながら、総ポリフェノール量及び総ポリフェノール量に対する全窒素量の比が特定の範囲内であるため、飲みにくさが解消されつつ、ビールらしいコク及びキレを有している。
【0007】
上記ビールテイスト飲料は、原料として麦芽及びホップを含んでいなくてよい。
【0008】
上記ビールテイスト飲料において、アルコール度数が1v/v%以上であってよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飲みにくさを解消しつつ、ビールらしいコク及びキレを有するビールテイスト飲料の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、苦味価が5未満、総ポリフェノール量が30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比が0.1超3.0以下である。
【0012】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、苦味価が5未満でありながら、ビール様の香味(特に、ビールらしいコク及びキレ)を有していることから、ビール代替飲料又はビール類似飲料として好適である。
【0013】
ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満であるノンビールテイストアルコール飲料であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料としてのアルコール感を担保する観点から、アルコール度数が1v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であることが好ましい。ビールテイストアルコール飲料は、例えば、蒸留アルコールを添加したものであってもよく、発酵工程を介してアルコールを含むものとなったものであってもよい。なお、アルコール度数とは、ビールテイスト飲料に含まれるエタノールの含有量を意味する。
【0014】
ビールテイストアルコール飲料としては、これに限られるものではないが、例えば、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)上のビール、発泡酒、その他の発泡性酒類、リキュールに分類されるものが挙げられる。本実施形態に係るビールテイストアルコール飲料は、上記例示したものに限られない。
【0015】
ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の下限は、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、4v/v%以上、又は5v/v%以上であってもよい。また、ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の上限は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5v/v%以下、4v/v%以下、又は3v/v%以下であってもよい。
【0016】
ノンアルコールビールテイスト飲料は、実質的にアルコールを含有しないビールテイスト飲料である。ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.5v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。また、ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、0.1v/v%以上、0.3v/v%以上、又は0.5v/v%以上であってもよい。
【0017】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であることが好ましい。本明細書において発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)未満であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm2)程度であってもよく、0.235MPa(2.4kg/cm2)程度であってもよい。
【0018】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、5未満であればよく、飲みやすさがより改善される観点から、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下又は2.0以下であってよい。ビールテイスト飲料の苦味価は、0.5以上、1.0以上又は1.5以上であってよい。
【0019】
苦味価は、例えば改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、例えば、ビールテイスト飲料に添加するイソα酸、ホップ(乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキス等)等の苦味成分の配合量を調整することで、上記範囲で適宜設定することができる。
【0020】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は30mg/L以上であってよい。ポリフェノールとしては、例えば、カテキン、ヘスペリジン、クロロゲン酸、レスベラトロール、フラボノール、イソフラボン、タンニン、ケルセチン、アントシアニンが挙げられる。本明細書において総ポリフェノール量とは、ビールテイスト飲料に含まれるこれらポリフェノールの総量をいう。総ポリフェノール量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.19 総ポリフェノール」に記載の方法によって測定することができる。
【0021】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、ビールらしいコク及びキレがより優れたものとなるという観点から、40mg/L以上、60mg/L以上、100mg/L以上、125mg/L以上、150mg/L以上、200mg/L以上、250mg/L以上、300mg/L以上、400mg/L以上、又は500mg/L以上であってよい。総ポリフェノール量は、3000mg/L以下、2600mg/L以下、1000mg/L以下、515mg/L以下、又は260mg/L以下であってもよい。総ポリフェノール量は、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲に適宜設定することができる。また、総ポリフェノール量は、例えば、製造工程の任意の段階におけるカテキン、ヘスペリジン、赤ワインエキス等の添加、ポリビニルポリピロリドン(Polyvinylpolypyrrolidone;PVPP)を用いた処理等により調整することもできる。
【0022】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の全窒素量は50mg/L以上であってよい。全窒素量は、ビールらしいコクがより一層良好になるという観点から、60mg/L以上、100mg/L以上、110mg/L又は、120mg/L以上であってよく、ビールらしいキレがより一層良好になるという観点から、1000mg/L以下、500mg/L以下、又は480mg/L以下であってもよい。
【0023】
全窒素量は、例えば改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.9 全窒素」に記載されている「8.9.1 ケルダール法」又は「8.9.2 燃焼法(改良デュマ法)」によって測定することができる。全窒素量は、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲に適宜設定することができる。また、全窒素量は、例えば、製造工程の任意の段階で、窒素源(例えば、タンパク質(例えば大豆タンパク質、エンドウタンパク質、又はこれらの分解物)、アミノ酸等)を添加し、かつその添加量を調整することで、上記範囲に適宜設定することができる。
【0024】
総ポリフェノール量(mg/L)(以下、「TPP」ともいう。)に対する全窒素量(mg/L)(以下、「TN」ともいう。)の比(TN/TPP)は、0.1超3.0以下である。TN/TPPは、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.0以下又は0.9以下であってもよく、0.15以上、0.2以上又は0.3以上であってもよい。TN/TPPが上記範囲内であることにより、ビールらしいコク及びキレがより一層優れたものとなる。TN/TPPは、全窒素量及び/又は総ポリフェノール量を、上記記載の方法で調整することで、上記記載の範囲に適宜設定することができる。
【0025】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させることにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。麦原料は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0026】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含んでいないことが好ましく、原料として麦芽を含んでいないことがより好ましい。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ホップ及び水以外の原料に含まれる麦芽の比率(以下、「麦芽比率」ともいう。)が、ホップ及び水以外の原料全量に対して、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%であってもよい。つまり、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦芽比率が0.0質量%である、非麦芽ビールテイスト飲料であってよい。麦芽比率は、例えば、0.1質量%以上、又は0.3質量%以上であってもよい。
【0028】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料以外の植物原料を含んでもよい。言い換えれば、当該ビールテイスト飲料は、原料として、植物原料を使用したものであってよい。麦原料以外の植物原料としては、例えば、とうもろこし、米類、コウリャン等の穀類;馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類;大豆、エンドウ等の豆類等が挙げられる。麦原料以外の植物原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてスターチ、グリッツ等の澱粉原料を含んでいてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、大豆、エンドウ及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、原料として、大豆及びエンドウからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、上記植物原料に由来するタンパク質又はその分解物(例えば、エンドウタンパク分解物)を含んでいてよい。
【0029】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、苦味価が5未満でありながら、ビールらしい香味、特にビールらしいコク及びキレを有しているため、原料として、苦味料を含んでいなくてもよい。苦味料としては、例えば、ホップ、ホップ由来の苦味物質、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ペプチド類、テオブロミン、ナリンジン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、及びキナ抽出物が挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてホップを含んでいないことが好ましい。
【0030】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料及びホップを含まないことが好ましく、原料として麦芽及びホップを含まないことがより好ましい。
【0031】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)であってもよい。非発酵飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造されるものである。
【0032】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、飲料に通常配合される着色料(例えば、カラメル色素)、甘味料、香料、酸味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、塩類等の添加剤を含んでいてもよい。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0034】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、苦味価を5未満、総ポリフェノール量を30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比(TN/TPP)を0.1超3.0以下に調整することを含む。当該製造方法は、総ポリフェノール量を30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)の比を0.1超3.0以下に調整することを含む、苦味価5未満のビールテイスト飲料の製造方法と言い換えることもできる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールテイスト飲料に含まれる、苦味価、総ポリフェノール量及び総ポリフェノール量に対する全窒素の比を上記範囲内に調整すること以外は、常法に従って製造することができる。ビールテイスト飲料に含まれる、苦味価、総ポリフェノール量及び総ポリフェノール量に対する全窒素量の比の調整は、例えば、上記記載の方法によって行うことができる。
【0035】
以下、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法の一例を説明する。当該製造方法は、水と、必要に応じて蒸留アルコールと、各種添加剤(例えば、窒素源(例えば、大豆タンパク質、エンドウタンパク質等のタンパク質)、及び、ポリフェノール)とを原料タンクに配合する配合工程を含む。配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ビン、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてよい。第一及び第二の殺菌工程は、ビールテイスト飲料の香味を維持しやすいという観点から、実施しなくてもよい。
【0036】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一の殺菌工程及び第二の殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。また、発泡性の飲料とする場合は、例えば、第一の殺菌工程と充填工程の間でカーボネーションを行うとよい。
【0037】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ビールらしいコク及びキレに優れるという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、ビールテイスト飲料に含まれる、総ポリフェノール量を30mg/L以上、総ポリフェノール量(mg/L)に対する全窒素量(mg/L)を0.1超3.0以下に調整することを含む、苦味価が5未満であるビールテイスト飲料のコク及びキレを改善する方法が提供される。ビールテイスト飲料のコク及びキレを改善する方法において、総ポリフェノール量及び総ポリフェノール量に対する全窒素量は、上記記載の範囲であってよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[試験例1:全窒素量及び総ポリフェノール量による効果]
水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6、不二製油株式会社製)と、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3、太陽化学株式会社製)とを表1~4に示す含有量となるように添加して、全窒素量(TN)、総ポリフェノール量(TPP)及び総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)が表1~4に示す量になるように調整された、試験用の飲料を製造した。得られた飲料について官能評価を行った。結果を表1~4に示す。
【0040】
官能評価は、選抜された識別能力のある4名のパネルにより、飲みやすさ並びにビールらしいコク(マイルドな味の厚み)及びキレ(トップ(飲用開始直後の時点)からの落差があり、後味の渋味及び雑味を感じず爽快感があること)について行った。コク及びキレは5段階で官能評価を行い、その平均値を評価スコアとした。コク及びキレの官能評価では、評点が高いほど、より良好であることを示す。官能評価を行うに際して、パネル間で摺合せを実施し、評価基準を統一させた。具体的には、コクの官能評価では、比較例1-1の飲料の評点を1.0点、実施例1-4の飲料の評点を5.0点に設定し、キレの官能評価では、比較例1-1の飲料の評点を2.0点、実施例1-4の飲料の評点を4.0点に設定した。
【0041】
試験用の飲料はいずれも苦味価が5未満であった。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
試験用の飲料は、苦味がなく、飲みにくさが解消されたものであった。また、総ポリフェノール量が30mg/L以上、TN/TPPが0.1超3.0以下である実施例の飲料は、ビールらしいコク及びキレが良好であった。すなわち、実施例の飲料(ビールテイスト飲料)は、苦味価が5未満でありながら、ビールらしいコク及びキレを有するものであった。
【0047】
[試験例2:他の窒素源又はポリフェノールを用いた場合の効果]
水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6)又はエンドウタンパク分解物と、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3)又はヘスペリジン(林原ヘスペリジン(登録商標)S)とを表5に示す含有量となるように添加して、全窒素量(TN)、総ポリフェノール量(TPP)及び総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)が表5に示す量になるように調整された、試験用の飲料を製造した。得られた飲料について、試験例1と同様にして官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0048】
試験用の飲料は、いずれも苦味価が5未満(苦味価:約0.3)であった。
【0049】
【0050】
試験用の飲料は、苦味がなく、飲みにくさが解消されたものであった。また、窒素源としてエンドウタンパク分解物を用いた場合、又はポリフェノールとしてヘスペリジンを用いた場合であっても、総ポリフェノール量が30mg/L以上、TN/TPPが0.1超3.0以下である飲料は、ビールらしいコク及びキレが良好となった(比較例2-1~2-2との比較)。
【0051】
[試験例3:ビールテイストアルコール飲料における効果]
水に、窒素源として大豆タンパク分解物(ハイニュートDC-6)と、ポリフェノールを含む緑茶抽出物(サンフェノンBG-3)と、原料用アルコール(65.5v/v%)を表6に示す含有量となるように添加して、全窒素量(TN)、総ポリフェノール量(TPP)及び総ポリフェノール量に対する全窒素量(TN/TPP)が表6に示す量になるように調整された、試験用のビールテイストアルコール飲料を製造した。得られたビールテイストアルコール飲料について官能評価を試験例1と同様にして行った。結果を表6に示す。
【0052】
【0053】
実施例3-1のビールテイスト飲料の苦味価を測定したところ、2.6であった。表6に示すとおり、苦味価5未満のビールテイストアルコール飲料においても、総ポリフェノール量が30mg/L以上、TN/TPPが0.1超3.0以下である場合には、コク及びキレに優れることが示された。