(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】伸縮性パッドを用いた医療用貼付材
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20220412BHJP
A61F 13/06 20060101ALI20220412BHJP
A61F 13/10 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61F13/02 340
A61F13/02 310A
A61F13/02 310D
A61F13/02 310T
A61F13/02 345
A61F13/06 Z
A61F13/10 S
(21)【出願番号】P 2019029731
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-06-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-01
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 智範
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昂
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 博充
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】西村 泰英
【審判官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-117513(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106821596(CN,A)
【文献】特表2001-506150(JP,A)
【文献】特開2011-84338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の表面を覆う粘着剤層と、該粘着剤層の上に配置されたパッドとを有する
肘又は膝の関節用の医療用貼付材であって、
該支持体は、4,700~13,000mm
2の面積を有し
該パッドは、1,500~4,500mm
2の面積を有し、
該支持体と該粘着剤層と該パッドの重ね合わせ部分において、
15Nの荷重で20回伸長させた際の連続伸長回復率A(往路)が90%以上であり、連続伸長回復率B(復路)が70%以上であり、そしてこれら伸長回復率の比B/Aの値が0.5以上であることを特徴とする、
医療用貼付材。
【請求項2】
前記パッドは、ポリエステル不織布層と、伸縮ネット層の積層構成を有する、
請求項1に記載の医療用貼付材。
【請求項3】
前記パッドは、ポリエステル不織布層が50~150g/m
2の目付量を有する、請求項1又は請求項2に記載の医療用貼付材。
【請求項4】
前記支持体は、ポリウレタンフィルム又はポリウレタン不織布である、
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の医療用貼付材。
【請求項5】
前記支持体と前記パッドの面積比率が、支持体面積:パッド面積にて、3:1~2:1である、
請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の医療用貼付材。
【請求項6】
前記支持体と前記パッドの面積比率が、支持体面積:パッド面積にて、3:1~2.5:1である、
請求項5に記載の医療用貼付材。
【請求項7】
前記支持体と前記粘着剤層と前記パッドの重ね合わせ部分において、
30%引張荷重(MD)が5~50N/25mm、30%引張荷重(CD)が3~50N/25mmである、
請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の医療用貼付材。
【請求項8】
前記支持体が、略方形又は略四角形の形状を有し、且つ、略方形又は略四角形の四隅に凹部を有するものであり、
前記凹部と前記パッドの最短距離が10~25mmである、
請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の医療用貼付材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の創傷部位に適用される貼付材に関し、特に肘や膝などの屈曲部において良好な付着性と低皮膚刺激性を兼ね備えた医療用貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用貼付材、特に救急絆創膏は、外部から創傷部位を保護するとともに、皮膚の曲面や関節の動きに追随できる柔軟性や追従性、伸縮性等を有することが求められる。
救急絆創膏は一般に粘着テープとパッドで構成され、該パッドの多くは、創傷部からの滲出液を吸収できる不織布と、創傷部への固着を防止するためのネットが組み合わせられた構成を有する。
従来製品において、上記の固着防止のためのネットはポリエチレン素材からなるものが多いが、不織布とポリエチレン製ネットとを組み合わせたパッドは伸縮性が殆どないものとなっている。そのため、こうしたパッドを用いた救急絆創膏を創傷部位に適用した際、関節の動きなどによって一度パッドが伸ばされると、元の大きさに戻らずに伸ばされたままの形状を有することとなり、貼付箇所からのパッド浮きの発生や、さらには絆創膏のはがれ等の原因となり得る。また、救急絆創膏の中心部に位置するパッドが伸縮性を有しないことで、粘着テープの周縁部への皮膚刺激が増大することとなる。
【0003】
これまでにパッドの伸縮性について検討がなされた提案として、例えば特許文献1には、伸縮性基布と高巻縮綿からなる不織布と伸縮性のカバー(ニット)からなる伸縮性バンソウコウが提案されている。
特許文献2には、パッドの部分でも人体の形状への追従を図った救急絆創膏として、支持体フィルムとパッドの双方の伸長モジュラス及び伸長回復率を検討した絆創膏が提案されている。
特許文献3には、密着性と伸縮性を有し、皮膚創傷面に癒着しにくい創傷面用パッドとして、伸縮性を有する吸液層と開口部を有する樹脂層を備え、一方向における50%伸長時の強さを規定した、創傷面用パッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-154871号公報
【文献】特開2007-117513号公報
【文献】特開2012-081045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
救急絆創膏を体の屈曲部に貼付した状態にて関節の曲げ伸ばしを行う際、救急絆創膏のサイズが小さい場合には貼付部における違和感は少なく、パッドの伸縮性の影響は少ないとみられる。しかし救急絆創膏のサイズが大きい場合、パッドの伸縮性が低いと、貼付部の違和感やパッド浮きによる血液や滲出液の漏れ、皮膚刺激の増大などが懸念され、さらには絆創膏のはがれにもつながることが懸念される。
しかしこれまでにパッドの伸縮性の検討がなされた絆創膏等の提案において、肘や膝などの屈曲-伸長の動きが大きい部分に貼付した場合の付着性や皮膚刺激についての報告はなく、こうした部分を覆うことができる救急絆創膏における支持体やパッドのサイズ、そして絆創膏形状に関して詳細な検討はなされていない。
【0006】
本発明は上述の事情を鑑み、関節の曲げ伸ばしが繰り返される屈曲部に対して、適用面
が大きい場合においても動きに追従する伸縮性を有し、且つ良好な付着性を有し、皮膚刺激が少ない医療用貼付材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、貼付面積の大きな医療用貼付材において、良好な付着性と皮膚刺激の少なさの実現には、貼付材を繰り返し伸長させた後の伸長回復率の値が要因の一つとなることを見出した。
また、こうした貼付材において、粘着テープの形状や、テープとパッドの面積や配置が重要であることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は下記(1)の実施態様が提供される。
(1)支持体と、該支持体の表面を覆う粘着剤層と、該粘着剤層の上に配置されたパッドとを有する医療用貼付材であって、
該支持体は、4,700~13,000mm2の面積を有し
該パッドは、1,500~4,500mm2の面積を有し、
該支持体と該粘着剤層と該パッドの重ね合わせ部分において、
15Nの荷重で20回伸長させた際の連続伸長回復率A(往路)が90%以上であり、連続伸長回復率B(復路)が70%以上であり、そしてこれら伸長回復率の比B/Aの値が0.5以上であることを特徴とする、医療用貼付材。
【0009】
本発明によれば、更に以下の(2)乃至(9)の実施態様が提供される。
(2)前記パッドは、ポリエステル不織布層と、伸縮ネット層の積層構成を有する、前記医療用貼付材。
(3)前記パッドは、ポリエステル不織布層が50~150g/m2の目付量を有する、前記医療用貼付材。
(4)前記支持体は、ポリウレタンフィルム又はポリウレタン不織布である、前記医療用貼付材。
(5)前記支持体と前記パッドの面積比率が、支持体面積:パッド面積にて、3:1~2:1である、前記医療用貼付材。
(6)前記支持体と前記パッドの面積比率が、支持体面積:パッド面積にて、3:1~2.5:1である、前記医療用貼付材。
(7)前記支持体と前記粘着剤層と前記パッドの重ね合わせ部分において、30%引張荷重(MD)が5~50N/25mm、30%引張荷重(CD)が3~50N/25mmである、前記医療用貼付材。
(8)前記支持体が、略方形又は略四角形の形状を有し、且つ、略方形又は略四角形の四隅に凹部を有するものであり、前記凹部と前記パッドの最短距離が10~25mmである、前記医療用貼付材。
(9)関節用貼付材である、前記医療用貼付材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療用貼付材は、複数回の伸長を繰り返した後の伸長回復率が所定値を満たすことにより、面積の大きな貼付材を屈曲-伸長が繰り返される部位に貼付した場合においても良好な付着性を有し、皮膚刺激の少ない貼付材を提供できる。
なおこれまで市販品にみられた、伸縮性がない或いは伸縮性が不足するパッドを使用した貼付材(絆創膏)の場合、面積の小さな貼付材では問題とならなかったパッドと粘着テープの伸縮性の違いが、貼付材(及びパッド)の形状が大きくなるに連れて影響を及ぼし始める。貼付材の中心部から離れるほどテープ周縁部(エッジ部)に加わる応力は大きくなるが、ここでパッドと粘着テープの伸縮性が異なると、中心部から離れるほどに伸縮性の相違も相まって、生じる応力はより大きいものとなり、皮膚刺激の発生リスクが高まる。
これに対し、本発明の医療用貼付材は上記の伸縮性を有し、すなわち、支持体と粘着剤層から構成されるいわゆる粘着テープ部分だけでなく、パッド部分も伸縮性を有するため、上記の応力が緩和しやすくなる。このため、広い面積部位への適用であっても、皮膚刺激の発生リスクを低く抑える貼付材を提供することができる。
また本発明の医療用貼付材において、連続伸長回復率の高い構成を採用することにより、何度も曲げ伸ばしをした際にもテープやパッドの変形率が少なく、本発明の医療用貼付材は当初の形状を保ちやすいものとなっている。そのため、本発明の医療用貼付材は、変形によって生じ得るよれやたるみが生じにくく、貼付中のフィット感も向上することが期待され、低い粘着力でも高い付着率を維持しやすいことが期待できる。
【0011】
また、前述したように、肘や膝などの屈曲部に貼付する貼付材において、その形状が大きくなると、貼付材の中心部から離れるほど周縁部(エッジ部)に加わる応力は大きくなり、肘や膝の動きによって皮膚刺激や剥がれが発生しやすくなる。
本発明の医療用貼付材にあっては、特に略方形及び略四角形の貼付材において四隅に凹部を設け、凹部とテープ(粘着剤層)上に配置したパッドとの最短距離を所定値とすることで、周縁部(エッジ部)に加わる応力をさらに緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の医療用貼付材の一実施態様を示す図(断面図)である。
【
図2】
図2は、本発明の医療用貼付材の別の実施態様を示す図(断面図)である。
【
図3】
図3は、本発明の医療用貼付材の一実施態様を示す図(正面図)である。
【
図4】
図4は、本発明の医療用貼付材の別の実施態様を示す図(正面図)である。
【
図5】
図5は、本発明の医療用貼付材の別の実施態様を示す図(正面図)である。
【
図6】
図6は、本発明の医療用貼付材の別の実施態様を示す図(正面図)である。
【
図7】
図7は、本発明の医療用貼付材の別の実施態様を示す図(正面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[医療用貼付材]
本発明の医療用貼付材は、該支持体の表面を覆う粘着剤層と、該粘着剤層の上に配置されたパッドとを有する、所謂絆創膏の形態を有するものである。
本発明の医療用貼付材は、貼付材自体の大きさが従来製品(絆創膏)と比して比較的大きい面積を有すること、すなわち、前記支持体が4,700~13,000mm2の面積を有し、また前記パッドが1,500~4,500mm2の面積を有することを特徴とする。
さらに、本発明の医療用貼付材は、前記支持体と前記粘着剤層と前記パッドの重ね合わせ部分において、後述する伸長回復率が高いことを特徴とするものである。
【0014】
<伸長回復率>
本発明で規定する伸長回復率とは、対象を15Nの荷重で20回伸長させた際の連続伸長回復率A(往路)と連続伸長回復率B(復路)であり、これらは「JIS L 1096 織物及び編物の生地試験方法」に準拠した手順により測定される。
具体的には、まず引張試験機又はこれと同等の性能を持つ装置に試験片をセットする。
試験片に初荷重(例えば試験片の幅で1mの長さに係る重力に相当する荷重)を加え、その際、初回の初荷重を加えた時(往路)の試験片の長さ(チャック間距離)を測定する(1サイクル目の往路の初荷重変異点:L
1a’)。
次いで、15Nの荷重が加わるまで、試験片を伸長させた後、すぐに荷重を除去(荷重0N)し、初回位置まで戻す。その後、荷重付加(15N)と除去(0N)による試験片の伸縮を計20回繰り返し実施する(20サイクル)。20回目に荷重を加える際、前記の初荷重を加えた時(往路)の試験片の長さ(20サイクル目の往路の初荷重変異点:L
20a’)、15Nの荷重を加えた時の試験片の長さ(20サイクル目に規定荷重に達し
た時の上限変異点:L
20)そして、荷重除去の際に前述の初荷重に達した時(復路)の試験片の長さ(20サイクル目の復路の初荷重変異点:L
20b’)を、それぞれ測定する。
これらの測定値より、荷重を加える際(往路)の連続伸長回復率Aと、荷重を除去する際(復路)の連続伸長回復率Bを、以下の通りに定義する。
【化1】
L
20:20サイクル目に規定荷重に達した時の上限変異点(20回目に15Nの荷重加えた時のチャック間距離)
L
1a’:1サイクル目の往路の初荷重変異点(初回の初荷重を加えたときのチャック間距離)
L
20a’:20サイクル目の往路の初荷重変異点(20回目に初荷重を加えた時(荷重付加時)のチャック間距離)
L
20b’:20サイクル目の復路の初荷重変異点(20回目に初荷重に達した時(荷重除去時)のチャック間距離)
本発明にあっては、医療用貼付材の支持体と粘着剤層とパッドの重ね合わせ部分において、連続伸長回復率A(往路)が90%以上であり、連続伸長回復率B(復路)が70%以上であり、そしてこれらの伸長回復率の比B/Aが0.5以上であることを特徴とする。
なお、本発明において、上記の重ね合わせ部分における連続伸長回復率の値は、重ねあわせ部分(医療用貼付材)の長手(MD)方向及び短手(CD)方向の少なくとも一方向が、連続伸長回復率Aが90%以上、連続伸長回復率Bが70%以上、これらの比B/Aが0.5以上の値を満たしていればよい。また、MD及びCDの何れの方向も、上記の連続伸長回復率A、連続伸長回復率B及びB/Aの値を満たしていることが特に好ましい。
以下、本発明を更に説明する。
【0015】
<支持体>
本発明の医療用貼付材を構成する支持体は、後述するように医療用貼付材を構成した際に、所定の伸長回復率を実現できる伸縮性を有するものであれば、特にその材質や形態、構造は限定されない。
上記支持体は、4,700~13,000mm2の面積を有するものであり、適用箇所(創傷部位)の面積等を考慮して、適宜大きさを決定することができる。
【0016】
上記支持体(すなわち医療用貼付材)の形状は特に限定されず、方形(正方形、長方形等)、四角形(台形、菱形等)、多角形、円形、楕円形、半円形、三角形、三日月形、並びにこれらを組み合わせた形状等、貼付箇所に合わせて種々の形状を選択できる。また方形や四角形、多角形など、角を有する形状の場合には、角に丸みRを設けることで(該支持体の表面全体に粘着剤が設けられている場合に)貼付箇所からの剥がれを抑制することができる。
好ましい態様の一例として、方形又は四角形をベースとする、略方形又は略四角形の形状を有するものとすることができる。
【0017】
上記支持体としては、フィルム、発泡体、不織布、編布、織布、並びに、不織布とフィルムのラミネート複合体等のこれら2種以上の積層体といった、柔軟性を有する支持体が挙げられる。
これらの支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ナイロン、アセテートレーヨン、レーヨン、レーヨン/ポリエチレンテレフタレート複合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、セロハン等を必須成分とするものが挙げられる。
これらの中でも好適なものとして、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、アクリル樹脂等を原料とするフィルム、発泡体、不織布、織布、編布等を用いることができる。
中でも、前述の伸縮性に加え、皮膚に密着することができ、かつ、皮膚や関節の動きに追随することができる程度の柔軟な材質、そして長時間貼付後において皮膚のかぶれ等の発生を抑制できる材質が好ましく、貼付下の皮膚面の動きに対する追随性及び関節の曲げ伸ばしに追従できる伸縮性に優れる点において、ポリウレタン製のフィルム又は不織布が好ましい。
【0018】
なお貼付時に医療用貼付材が目立たないようにするために、支持体を顔料、有機顔料、天然色素などの着色剤により、肌色などの色調に着色することにより、貼付時に肌の色との相違を少なくできる。また貼付下の皮膚の色調を透けて出しやすいという点では、透明性に優れたプラスチックフィルムの形態を採用することができる。
【0019】
支持体の厚みは、伸び、引張り強さ、作業性などの物理的性質や貼付時の感触や患部の密閉性等を考慮して適宜選択可能であるが、通常5μmから1mm程度である。なお、支持体の厚みが5μm~30μm程度とごく薄い場合は、粘着剤層が設けられた支持体の一方側の面とは反対の面(以下、他方側の面という)上に、後述するキャリアフィルムを設けてもよい。
支持体が不織布等の布類である場合、その厚みは、好ましくは50μm~1mm、より好ましくは70μm~800μm、更に好ましくは100μm~700μmである。
また支持体がプラスチックフィルムである場合、その厚みは、好ましくは10μm~300μm、より好ましくは12μm~200μm、更に好ましくは15μm~150μmである。なお支持体がフィルムである場合は、粘着剤層と支持体の投錨性を向上することを目的に、支持体の一方側の面又は他方側の面、あるいはそれら両面にサンドブラスト処理、コロナ処理等の処理を行なってもよい。
上記支持体の厚みが5μmよりも小さいと、支持体自体の強度や取り扱い性が低下して、皮膚への貼付が困難になり、他の部材等との接触によって破れたり、入浴等の水との接触によって短時間で皮膚から剥離したりすることがある。また、支持体の厚みが大きすぎる(1mmより超える)と、貼付材となした際に皮膚の動きに追随しにくくなり、貼付材の辺縁部から剥がれるきっかけを形成しやすくなるため、短時間で皮膚から剥離したり、貼付中の違和感が増えたりする虞がある。
【0020】
中でも支持体として不織布を用いる場合、その目付量は、通常10g/m2乃至100g/m2であり、医療用貼付材の透湿性を向上させ、且つ皮膚に貼りやすい強度を保つ観点から、好ましくは15g/m2乃至80g/m2であり、より好ましくは20g/m2乃至70g/m2である。不織布の目付量が10g/m2未満である場合、不織布の伸縮性が大きくなりすぎて、却って医療用貼付材の取り扱い性が悪くなる虞があるほか、粘着剤が支持体(不織布)の他方側の面にまで染みだしてしまう可能性がある。また目付量が100g/m2を超える場合、不織布の伸縮性が小さすぎて取り扱い性が悪くなること、医療用貼付材の透湿性が低下して皮膚刺激性が大きくなる虞、さらには貼付時において皮膚に違和感を生じる虞がある。
【0021】
これら支持体において、JISZ0208、40℃、90%RHにおいて測定される透湿度は、1,000g/m2・24hとすることが好ましく、2,000g/m2・24h以上であることがより好ましく、3,000g/m2・24h以上であることが特に好ましい。透湿度を1,000g/m2・24h以上に設定することにより、皮膚に貼付した際のムレが少なく、皮膚刺激や貼付中の痒みが生じにくい。透湿度は高いほど好ましく、好ましい透湿度の上限は特にないが、通常30,000g/m2・24h以下である。
【0022】
また支持体の他方側の面に設けられ得る上記キャリアフィルムとしては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンなどの各種熱可塑性樹脂からなる各種フィルムを用いて形成することが好ましい。また上記各種フィルムは、紙にラミネートされた状態のものを用いてもよい。
これらの各種フィルム等から形成されるキャリアフィルムは、厚みを厚いものとするか、あるいは腰の強い材質からなるものとすることが望ましい。キャリアフィルムの厚みは、適宜設定できるが、通常、10μm以上、好ましくは20μm以上であり、その上限値は500μm程度である。
なおキャリアフィルムは、本発明の医療用貼付材を所定箇所に貼付後、支持体から剥離されるものであるため、この剥離を容易とするために、キャリアフィルムにハーフカットを施したり、支持体表面と密着していない部分(プレリフト部分)を設けたり、あるいは、これらハーフカットやプレリフト部分の近傍にキャリアフィルムを掴みやすくするための取り口テープを設けるなどの態様としてもよい。
【0023】
さらに支持体には、帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を本発明の効果を阻害しない程度に含ませることができる。帯電防止剤としては、界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤)等が挙げられる。帯電防止剤により、支持体の投錨性や工程上の不具合を解消することができる。
【0024】
<粘着剤層>
上記粘着剤層は、単一の粘着剤層からなる構成としてもよく、また複数の粘着剤層を積層した構成としてもよい。粘着剤層が複数の粘着剤層を積層して形成された構成である場合、種類の異なる粘着剤層を積層したものとすることができる。
また粘着剤層は、支持体の一方側の面の表面を覆うように、好ましくは表面全体にわたって形成されてなるものであるが、本発明の効果を損なわない限り、該一方側の面において部分的に形成されていてもよい。部分的に粘着剤層を形成する場合には、格子状、ネット状、粒状、唐草模様等の任意の形態を選択できる。このように部分的に粘着剤層を形成することにより、粘着テープ(支持体と粘着剤層の積層体)の通気性や透湿性などをより向上させることができ、また皮膚からの剥離時の刺激を調整(軽減)することができる。
【0025】
本発明において、粘着剤層を形成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する粘着剤が好ましい。これら粘着剤は一種を単独で、或いは二種以上を混合して用いてもよい。中でも、皮膚表面に対して十分な接着性を有し、皮膚に対する刺激が少なく、かつ透湿性が高い観点から、アクリル系粘着剤又はウレタン系粘着剤が好ましい。
【0026】
上記アクリル系粘着剤としては、例えばブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独共重合体又はこれらモノマーの共重合体、さらには、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルピロリドン、
(メタ)アクリルアミド、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等の、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能なその他モノマーとの共重合体を含有する粘着剤が挙げられる。
【0027】
上記ウレタン系粘着剤としては、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂からなるものが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記反応に用いるポリオールとポリイソシアネート化合物とのNCO/OHモル比は、反応におけるゲル化が抑えられ、粘着力が上昇するよう、0.70/1.00~1.00/1.00とすることが好ましい。
【0028】
ウレタン系粘着剤の製造は、例えば、溶融状態で反応させるバルク重合(固形反応)法、溶液重合法等の通常の方法を用いることができる。溶液重合法にて用いる溶剤としては、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、セロソルブ、カルビトール等のグリコールエーテル系溶剤、セロソルブアセテート等の酢酸グリコールエーテル系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤等、さらにこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0029】
ウレタン系粘着剤を製造する際には、必要に応じて触媒及び添加剤等を用いることができる。触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ステアリン酸錫等の有機金属化合物等の一般的なウレタン化触媒が挙げられる。添加剤としては、例えば、置換ベンゾトリアゾール類等の紫外線吸収剤、フェノール誘導体等の酸化防止剤、及び加水分解防止剤等が挙げられる。
【0030】
ウレタン系粘着剤の凝集力をアップし、糊残り等の問題を回避するために、前記ウレタン系粘着剤の製造に鎖延長剤を使用することができる。さらに、ウレタン系粘着剤は、ポリイソシアネート硬化剤を併用し、粘着特性を変化させることが可能である。ポリイソシアネート硬化剤の併用による凝集力のアップは、糊残り等の不具合の改善に有効である。硬化剤として用いられるポリイソシアネートとしては、前記反応に用いたポリイソシアネートも使用することができるが、これらと2官能以上のポリオールの反応で得られるイソシアネートのポリオールアダクトが好ましく、また、ポリメリックポリイソシアネート、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体も好ましい。具体的には、東ソー(株)のコロネートL、コロネートHL、コロネート3041、コロネート2030、コロネート2031、コロネートHX、ミリオネートMTL、ミリオネートMR等が挙げられる。
【0031】
上記粘着剤層は、任意成分として、粘着付与剤、架橋剤、軟化剤(可塑剤)、pH調整剤、酸化防止剤(抗酸化剤、防腐剤)、充填剤、紫外線吸収剤、着色料及び香料等の、粘着剤層に通常配合され得る添加剤を含有してもよい。
【0032】
上記粘着剤層の厚みは、通常10μm乃至200μm、好ましくは20μm乃至100μmとすることができる。
【0033】
<パッド>
本発明の医療用貼付材を構成するパッド(伸縮性パッドとも称する)は、後述するよう
に医療用貼付材を構成した際に、所定の伸長回復率を実現できる伸縮性を有するものであれば、材質や形態、構成などは特に限定されない。
上記パッドは、1,500~4,500mm2の面積を有するものであり、適用箇所(創傷部位)の面積等を考慮して、適宜大きさを決定することができる。
【0034】
該パッドとしては特殊織布、ガーゼ、ネット、不織布、並びにこれらの積層体などを使用することができるが、これらの中でも、吸液性に優れる伸縮性の不織布層に、伸縮性のネット層(適用面との接触層)を貼り合わせた積層構成を有するパッド(伸縮性パッド)の態様が好適である。前記不織布層と伸縮ネット層は、例えば(グラビアロールによる)熱融着により接着(接合)され得る。
該パッドが不織布層と伸縮ネット層からなる構成を有する場合、前記粘着剤層と不織布層が接するようにパッドが配置される。
【0035】
上記伸縮性の不織布層は、例えばポリエステル、レーヨン、ポリオレフィン等からなり、捲縮繊維を含んでいてよい。
また上記の伸縮ネット層は、例えばポリスチレンエラストマーや、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系の樹脂からなるものを挙げることができる。
【0036】
上記パッドの形状は特に限定されず、方形(正方形、長方形等)、四角形(台形、菱形等)、多角形、円形、楕円形、半円形、三角形、三日月形、並びにこれらを組み合わせた形状等、貼付箇所に合わせて種々の形状を選択できる。
また、上記パッドにおいて、不織布層の目付量(坪量)を50~150g/m2、好適には70~140g/m2、例えば80~120g/m2とすることができる。目付量を50g/m2以上とすることにより吸水性を好適なものとすることができ、150g/m2以下とすることにより、入浴・水仕事等でパッドが水分を含んだ場合においても脱落の虞を少なくできる。
なお、不織布層/伸縮ネット層の積層構成を有する伸縮パッドの態様において、その厚さを0.5~2.0mm、好適には0.7~1.5mmとすることができる。
【0037】
なお上記パッドに対して、予め殺菌剤を滲み込ませて殺菌消毒するか、あるいは完成品(医療用貼付材)とした後、滅菌処理を行うなどをしてもよい。
【0038】
<剥離ライナー>
本発明の医療用貼付材には、その使用の直前まで粘着剤層やパッドの保護を目的として、剥離ライナー(剥離層・剥離紙とも称する)を設けることができ、該剥離ライナーを備える態様も本発明の医療用貼付材に含めたものとしてよい。
上記剥離ライナーとしては、粘着テープや貼付剤の技術分野において慣用のものを使用することができる。例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリプロピレン(無延伸、延伸等)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、クラフト紙等の紙や合成紙;前記プラスチックフィルム、紙又は合成紙、合成繊維等にシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の剥離性能を有する剥離剤をコーティングした剥離加工紙;アルミ箔;これらフィルム・シートを種々積層したラミネート加工紙、及び該ラミネート加工紙に剥離剤をコーティングしたラミネート剥離加工紙などの、無色又は着色したシートを挙げることができる。なお剥離ライナーは、包材から取り出しやすいように凹凸を設けることも可能である。
これら剥離ライナーの厚さは特に限定されないが、通常10μm~1mm、例えば20μm~500μm、好ましくは40μm~200μmの範囲である。
剥離ライナーの形状は方形、矩形、円形等とすることができ、所望により角を丸くした
形状とすることができる。その大きさは、前記医療用貼付材における支持体の大きさと同形状か、やや大きめとすることができる。剥離ライナーは1枚または分割されて複数枚から構成されてもよく、その切れ目は直線、波線、ミシン線状で構成されてもよく、剥離ライナー同士の一部が重なる状態としてもよい。
【0039】
<製造方法>
本発明が対象とする医療用貼付材の製造方法は特に限定されず、従来の絆創膏や貼付材の製造方法に倣い、製造することができる。例えば、まず支持体と粘着剤層とを積層して粘着テープを作製し、該粘着テープの粘着剤層上に、パッドを配置することで、医療用貼付材を製造することができる。
具体的には、例えばシリコーン系剥離剤等を塗布した工程紙上に、粘着剤(合成樹脂)の溶液またはエマルションを塗工して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層と支持体とを積層し、粘着テープを製造する。上記工程紙とは、製造工程間に使用する紙やフィルムであって、製品には残存しないものの総称であり、ここでは前述の<剥離ライナー>で例示したフィルムや紙を用いることができる。なお所望により、粘着剤を塗工後、該粘着剤層を発泡させることによって、合成樹脂を含有する通気性を持つ、好ましくは発泡した粘着剤層を形成してもよい。
続いて、前記粘着テープの工程紙を剥離して粘着剤層を露出し、ここに、適切な大きさに裁断したパッドを所定の位置(例えば医療用貼付材としたときに該貼付材の略中央となる位置)に配置し、通常は更に剥離ライナーを粘着剤層並びにパッドを覆うように配置した後、所定の形状に裁断することで、支持体/粘着剤層/パッド/剥離ライナーの積層構成を有する医療用貼付材を得ることができる。なお、支持体の粘着剤層とは反対側の面にキャリアフィルムを設けた態様の場合、キャリアフィルム/支持体/粘着剤層/パッド/剥離ライナーの積層構成を有する貼付材を作製することができる。
通常、後の工程で室温において、紙、プラスチックフィルム、またはそれらの複合材で形成された包装紙中に医療用貼付材を封入して製品とする。この際、必要に応じて、滅菌処理を行うなどをしてもよい。
【0040】
以下、本発明の好ましい態様を示す図面を挙げて、本発明を更に説明する。
図1及び
図2は、本発明の医療用貼付材の一実施態様を示す図(断面図)である。
図1に示すように、本発明の医療用貼付材1は、支持体2と、該支持体2の表面を覆う粘着剤層3と、該粘着剤層3の上に配置されたパッド4とを備える。なお本態様において、粘着剤層3は支持体2の全面に渡って形成され、これらより粘着テープ7の態様を有してなる。
パッド4は、不織布層41と伸縮ネット層42からなる積層構成を有し、該不織布層41が粘着剤層3と接してなる。
【0041】
図2は、
図1の態様において、剥離ライナー5とキャリアフィルム6をさらに備える態様を示す図である。
図2に示すように、剥離ライナー5は、粘着剤層3とパッド4の伸縮ネット層42を覆うように配置される。
図2において、剥離ライナーは複数枚(2枚)から構成されている。
またキャリアフィルム6は、支持体2の粘着剤層3が形成された面とは他方側の面に設けられてなる。
【0042】
図3乃至
図7は、本発明の医療用貼付材1の別の実施態様を示す図である。これらは、
図1に示す医療用貼付材1の正面図に対応した図である。
図3乃至
図7に示すように、本発明の医療用貼付材1は、略四角形の支持体2(粘着剤層3とともに粘着テープ7を形成してなる)の略中央部に、四角形のパッド4が配置されてなる。
【0043】
図3に示す態様では、略四角形の支持体2の四隅に、支持体2の内側に向かって設けられた凹部21を有する。該凹部21の存在により、凹部21がないものと比べ、パッド4の四隅と支持体2の四隅との距離を短いものとすることができる。
前述したように、貼付材の中心部から離れるほど周縁部(エッジ部)に加わる応力は大きくなることから、上記凹部21の存在によって、周縁部(エッジ部)に加わる応力を緩和することができる。
ただし、凹部21の形状(大きさ)は、医療用貼付材1の付着性を損なうものであってはならず、本発明の医療用貼付材の大きさ(支持体面積:4,700~13,000mm
2、パッド面積:1,500~4,500mm
2)を考慮すると、該凹部21とパッド4の最短距離C
Lは10~25mmとなるように設けられることが好ましい。凹部21の形状は特に限定されず、但し貼付箇所からの剥がれ難さを考慮すると、丸みRを有する形状とすることが好ましい。
【0044】
また
図3に示す態様では、医療用貼付材1の周縁部(エッジ部)に加わる応力を分散する目的で、支持体2において、その長手方向の内側に向かって凹み22が設けられている。長手方向に凹み22を設けることで、貼付箇所(創傷部位)の大きさや貼付位置(貼付方向)に関わらず、安定した付着性を確保することができる。
【0045】
図5乃至
図7に示す態様では、略四角形の支持体2において、
図3に示すような凹部21はないものの、支持体の長手方向の内側に向かって凹み22が、
図5及び
図7の態様では1箇所、
図6の態様では2箇所設けられている。前述の通り、長手方向に凹み22を設けることで、貼付箇所(創傷部位)の大きさや貼付位置(貼付方向)に関わらず、安定した付着性を確保することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
なお、以下の実施例1~4の医療用貼付材に使用したパッドは、捲縮されたポリエステル系不織布層の上に、伸縮層を構成するポリスチレンエラストマーネットを熱融着にて接着させ、不織布層と伸縮ネット層の積層構成を有するもの(不織布層の目付量:90g/m2)を用いた。
【0048】
[実施例1~実施例3:医療用貼付材の作製(1)]
<アクリル系粘着剤を用いた粘着テープの作製>
アクリル系粘着剤〔アクリル酸2-エチルヘキシル/酢酸ビニル・アクリル酸(質量比87/10/3)100質量部と、エポキシ系架橋剤(テトラッドX、三菱瓦斯化学株式会社製)0.03質量部を反応させたもの〕を、乾燥膜厚が40g/m2となるように、シリコーン処理した工程紙に塗工した。通気性処理として、未乾燥の粘着剤塗布面に蒸留水を噴霧した後、130℃で加熱して、微細な孔を形成させ、通気性を有するアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を形成した。
該粘着剤層の上に、支持体としてポリウレタン弾性繊維不織布(厚さ200μm、目付量65g/m2)を貼り合わせて、粘着テープを製造した。
【0049】
<医療用貼付材の作製(1)>
前記粘着テープから工程紙を剥離して、通気性を有するアクリル系樹脂からなる粘着剤層を露出させた。所定の大きさに切断したパッドを、粘着テープの粘着剤層とパッドの不織布層が対向するように、粘着剤層上に載置した。
続いて、シリコーン処理した剥離ライナーを、粘着テープ及びパッドを覆うように貼り
合わせた。
その後、パッドが略中央に位置するように、所定の大きさ・形状にて打ち抜き、各実施例の医療用貼付材を得た。なお実施例1、実施例3及び実施例4の医療用貼付材は
図3に示す形状とし、実施例2の医療用貼付材は
図4に示す形状とした。
【0050】
[実施例4:医療用貼付材の作製(2)]
<ポリウレタン系粘着剤を用いた粘着テープの作製>
ポリウレタン系粘着剤(ポリエーテル系)100質量部と架橋剤(コロネートL、東ソー(株))2部とを均一に混合したのち脱泡し、これを、剥離処理を施したポリエステルフィルム(工程紙、厚み50μm)上に、乾燥膜厚が25μmとなるようにナイフコーターを用いて塗布し、次いで120℃で3分間硬化乾燥し、粘着剤層を形成した。
得られた粘着剤層の上に、支持体とキャリアフィルムの積層体(支持体:厚さ20μmのエーテル系ウレタン樹脂のフィルム基材(透湿度3,300g/m
2・day)、キャリアフィルム:厚さ40μmポリプロピレンフィルム)の支持体面を貼り合わせた。その後、熱風乾燥機中に50℃の雰囲気下で5日間保存し、粘着剤の架橋反応を完結させて、工程紙に貼着されてなるキャリアフィルムを備える粘着テープを作製した。
<医療用貼付材の作製(2)>
実施例1と同様の手順にて、工程紙を剥離し、粘着テープにパッド層を載置し、粘着テープ及びパッド層を覆うようにシリコーン処理した剥離ライナーを貼り合わせ、所定の大きさ・形状に打ち抜き、実施例4の医療用貼付材を得た。なお実施例4の医療用貼付材は
図3に示す形状とした。
【0051】
[比較例1]
比較例1の医療用貼付材として、製品名:FCワンタッチパッド(白十字(株)製、パッドサイズ:40×60mm、テープサイズ:60×100mm)を用いた。
【0052】
[比較例2]
比較例2の医療用貼付材として、製品名:FC防水ワンタッチパッド(白十字(株)製、パッドサイズ:45×90mm、テープサイズ:80×130mm)を用いた。
【0053】
[比較例3]
実施例1において用いたアクリル系粘着剤を用いた粘着テープに、不織布(目付量:120g/m
2、レーヨン、ポリエステル、ポリオレフィン)とポリエチレンネットの積層構成を有するパッドを貼り合わせた以外は、実施例1と同様の手順にて、比較例3の医療用貼付材を得た。なお、比較例3の医療用貼付材は
図4に示す形状とした。
【0054】
[比較例4]
実施例4において用いたポリウレタン系粘着剤を用いた粘着テープに、不織布(目付量:120g/m
2、レーヨン、ポリエステル、ポリオレフィン)とポリエチレンネットの積層構成を有するパッドを貼り合わせた以外は、実施例4と同様の手順にて比較例4の医療用貼付材を得た。なお、比較例4の医療用貼付材は
図4に示す形状とした。
【0055】
各実施例及び比較例の医療用貼付材の大きさ及び形状等について、表1に示す。表1中、実施例1~4、比較例3~4におけるW
S、L
S、C
L、W
P、及びL
Pは、
図3及び
図4に示す符号にそれぞれ対応し、すなわち、W
Sは支持体2(貼付材)の幅、L
Sは支持体2(貼付材)の長さ、C
Lは凹部21とパッド4の最短距離を示し、W
Pはパッド4の幅、L
Pはパッド4の長さをそれぞれ示す。
【0056】
【0057】
[引張試験]
実施例1~4、並びに比較例1~4の医療用貼付材に関して、JIS Z0237(2009) 粘着テープ・粘着シート試験方法に準拠して引張試験を実施し、30%引張荷重の測定を行った。なお、30%引張荷重とは、引張対象の全長を100%としたときに、130%まで引張ったときの応力を表す。
各医療用貼付材を、短手(CD)方向、長手(MD)方向それぞれについて、幅25mm、長さ50mmの短冊状に裁断し、これを試験片として用いた。なお試験片は支持体と粘着剤層とパッドの重ね合わせ部分とした(剥離ライナー、キャリアフィルムは含まず)。
前記試験片をチャック間距離30mmにてテンシロン万能試験機に取り付け、温度23℃、相対湿度50%雰囲気下、100N荷重にて、引張測定を3回実施した。3回の測定値の平均値をCD、MDそれぞれの30%引張荷重とした。
なお、医療用貼付材(支持体と粘着剤層とパッドの重ね合わせ部分)において、30%引張荷重(MD)が5~50N/25mm、30%引張荷重(CD)が3~50N/25mmであることが好適であり、より好ましい態様において、30%引張荷重(MD)が5~15N/25mm、30%引張荷重(CD)が3~10N/25mmであるものを挙げることができる。
得られた結果を表2に示す。
【0058】
[BA-SUS板粘着力]
実施例1~4、並びに比較例1~4の医療用貼付材に関する対BA-SUS板粘着力について、JIS Z0237に準拠して、180度剥離試験を行って測定した。
各医療用貼付材を長手(MD)方向について、幅12mm×長さ30~150mmの短冊状に裁断して試験片とした。なおBA-SUS板粘着力に用いた試験片は、支持体と粘着剤層の重ね合わせ部分とした(パッド、並びに剥離ライナー、キャリアフィルムは含まず)。温度23℃、50%RHの雰囲気下で、BA-SUS板に該試験片を貼付し、1kgのゴムロールを600±30mm/分の速度で2往復させて圧着した。圧着後1分以内に、剥離角度180度及び剥離速度300±20mm/分の条件で剥離力を測定し、試験片の対BA-SUS板粘着力を求めた。測定は3回行い、その平均値を貼付材の対BA-SUS板粘着力(単位:N/12mm)とした。
【0059】
[伸長回復率]
実施例1~4、並びに比較例1~4の医療用貼付材に関して、繰り返し引張測定を実施し、伸長回復率を測定した。
各医療用貼付材を、短手(CD)方向、長手(MD)方向それぞれについて、幅30mm、長さ50mmの短冊状に裁断し、これを試験片として用いた。なお試験片は支持体と粘着剤層とパッドの重ね合わせ部分とした(剥離ライナー、キャリアフィルムは含まず)。
前記試験片をチャック間距離が30mmとなるように、上下クランプにて固定し、テンシロン万能試験機に取り付けた。温度23℃、相対湿度50%雰囲気下、引張速度300±20mm/minにて試料に規定の荷重(上限点:15N)を加え、規定の荷重に達したら同様の速度で初期位置まで戻し(荷重:0N)、これを20回繰り返した(20サイクル)。
初荷重を0.0001Nとし、このときのチャック間距離(試験片の長さ)を初荷重変異点とし、初回の往路(荷重付加時)の初荷重変異点をL
1a’、20回目の往路(荷重付加時)の初荷重変異点をL
20a’、20回目の復路(荷重除去時)の初荷重変異点をL
20b’とした。
また、規定の荷重(15N)に達した時のチャック間距離(試験片の長さ)を上限変異点とし、20回目に規定の荷重に達した時の上限変異点をL
20とした。
これらの測定値より、以下の式を用いて、連続伸長回復率A(%)及び連続伸長回復率
B(%)を算出した。
なお、1つの試料につき3回測定(3つの試験片のそれぞれについて測定)を実施し、その3回の平均値として各連続伸長回復率(%)を求め、またこれらの比B/Aを算出した。
得られた結果を表2に示す。
【化2】
L
20:20サイクル目に規定荷重に達した時の上限変異点(20回目に15Nの荷重加えた時のチャック間距離)
L
1a’:1サイクル目の往路の初荷重変異点(初回の初荷重を加えたときのチャック間距離)
L
20a’:20サイクル目の往路の初荷重変異点(20回目に初荷重を加えた時(荷重付加時)のチャック間距離)
L
20b’:20サイクル目の復路の初荷重変異点(20回目に初荷重に達した時(荷重除去時)のチャック間距離)
【0060】
なお、参考値として、初回(1サイクル目)の伸長回復率A(%)及び(B)を表2に合わせて示す。本値は、上記式において、20サイクル目の往路の初荷重変異点:L20a’を、1サイクル目の往路(荷重付加時)の初荷重変異点:L1a’に読み替え、20サイクル目の復路の初荷重変異点:L20b’を、1サイクル目の復路(荷重除去時)の初荷重変異点:L1b’に読み替え、20サイクル目に規定荷重に達した時の上限変異点:L20を、初回の規定荷重(15N)に達した時の上限変異点:L1に読み替えて、それぞれ算出すればよい。
【0061】
[実用評価]
成人男女10~30名の被験者の肘部に、上記実施例1~4及び比較例1~4の医療用貼付材を貼付し、24時間貼付した。
肘部への貼付は、各被験者とも入浴後の貼付とし、翌日の入浴後までの24時間に渡って貼付した。また、肘(腕)を伸ばした状態にて、各絆創膏の長手方向が肘の折り曲げ方向(腕の長さ方向)となるように貼付した。
【0062】
24時間の貼付経過後、剥離直前の付着性を下記の評価基準(評点:1~6)にて評価し、被験者(10名~30名)全員の評点の平均値を算出した。
医療用貼付材の剥離後、剥離1時間後並びに剥離24時間後に貼付箇所を目視にて観察し、皮膚の状態を下記の評価基準(評点:1~6)にてそれぞれ評価し、被験者(10名~30名)全員の評点の平均値を算出した。
下記評点の平均値が4以上であるものを○、4未満であるものを×と評価した。
<剥離直前の付着性>
6:全面が肘部によく付着している
5:エッジ部のみはがれが生じている(医療用貼付材全体の面積のうち、5~15%程度のはがれがみられる)
4:剥がれは生じているが、パッド部に浮きはみられない(医療用貼付材全体の面積のうち、15~30%程度のはがれがみられる)
3:一部にはがれ/浮きが生じている(医療用貼付材全体の面積のうち、30~50%程度のはがれがみられる)
2:半分から半分以上にはがれ/浮きが生じている(医療用貼付材全体の面積のうち、50%以上のはがれがみられる)
1:脱落/すでにはがれている
<皮膚反応>
6:皮ふの赤みなし
5:軽く皮ふが赤くなった (僅かに赤い)
4:皮ふが赤くなった (明らかに赤い)
3:赤く腫れている
2:皮ふトラブル (発疹・小さな水ぶくれなど) がある
1:皮ふトラブル (発疹・大きな水ぶくれなど) がある
【0063】
【0064】
表1及び表2に示すように、実施例1~4の医療用貼付材は、連続伸長回復率Aが90%以上、連続伸長回復率が70%以上の要件を満たし、これらの医療用貼付材は、剥離直前の付着性に優れ、また剥離1時間後及び24時間後の皮膚反応も弱く、皮膚刺激が抑制された医療用貼付材であることが確認された。
一方、比較例1及び比較例2の貼付材は、連続伸長回復率Bが37~40%と実施例と比べて大きく劣る結果となり、これらの貼付材はいずれも付着性に欠ける結果となった。なお比較例1は比較的小さい製剤であるため、皮膚刺激は少ない結果となったものの、実施例の貼付材と同程度の大きさを有する比較例2にあっては、皮膚反応が大きく、皮膚刺激が強い貼付材となることが確認された
【符号の説明】
【0065】
1 医療用貼付材
2 支持体
21 凹部
22 凹み
3 粘着剤層
4 パッド
41 不織布層
42 伸縮ネット層
5 剥離ライナー
6 キャリアフィルム
7 粘着テープ