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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】光活性触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/029 20060101AFI20220412BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220412BHJP
   C08G 61/00 20060101ALI20220412BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220412BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220412BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
G03F7/029
G03F7/027
C08G61/00
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/30 502D
C07F15/00 A
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2019506429
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 US2017049540
(87)【国際公開番号】W WO2018045132
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】62/383,146
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】519036651
【氏名又は名称】ポリスペクトラ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】POLYSPECTRA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド エー ヴァイテカンプ
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0118188(US,A1)
【文献】特開2010-229411(JP,A)
【文献】国際公開第2015/063282(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08G 61/00
G03F 7/20
H01L 21/027
C07F 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の不飽和有機前駆体を含んでなる重合性材料マトリックス内に混合された、式(I)のルテニウムカルベンメタセシス触媒またはその幾何異性体を含んでなる感光性組成物であって、
【化1】

式中、
およびXが、独立してアニオン性リガンドであり、
Yが、O、N-R、またはSであり、
Qが、構造-CR1112-CR1314-または-CR11=CR13-、好ましくは-CR1112-CR1314-を有する2原子結合であり、R11、R12、R13、およびR14が、独立して水素、ヒドロカルビル、または置換型ヒドロカルビルであり、
およびRが、独立して水素、置換されていてもよいヒドロカルビルであるか、または互いに結合して、置換されていてもよい環式脂肪族基を形成してもよく、
およびRが、独立して、置換されていてもよいヒドロカルビルであり、
およびRが、独立して、H、C1~24アルキル、C1~24アルコキシ、C1~24フルオロアルキル、C1~24フルオロアルコキシ、C1~24アルキルヒドロキシ、C1~24アルコキシヒドロキシ、C1~24フルオロアルキルヒドロキシ(ペルフルオロアルキルヒドロキシを含む)、C1~24フルオロアルコキシヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、またはヒドロキシであり、
mおよびnが、独立して、1、2、3、または4である、感光性組成物。
【請求項2】
がHであり、RがC1~6アルキルであり、YがOである、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
Qが-CH-CH-であり、RもしくはRのいずれか、またはRおよびRの両方が、2、6位で、独立のC1~6アルキル基で置換されていてもよいフェニル基である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】
Qが-CH-CH-であり、RおよびRが独立してメシチルまたは置換されていてもよいアダマンチルである、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】
およびRが、独立して、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、トリフルオロメチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、またはニトロである、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記メタセシス触媒が、構造:
【化2】

を有する化合物を含んでなる、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項7】
およびRが、それぞれ、3,3’または4,4’または5,5’または6,6’の位置に存在する、請求項1に記載の感光性組成物。
【化3】
【請求項8】
前記不飽和有機前駆体が、モノ不飽和環式オレフィン、モノ環式ジエン、またはビ環式もしくはポリ環式オレフィンを含んでなる、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記不飽和有機前駆体がROMP前駆体である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項10】
基体にポリマー画像をパターニングする方法であって、
(a)請求項1に記載の感光性組成物の層を基体上に堆積させることと、
(b)前記感光性組成物の層の一部に250~800nmの範囲の1種以上の波長を含んでなる光を照射して、前記層の照射部分を重合させ、それによって前記層中に重合領域および非重合領域を得ることと、を含んでなる方法。
【請求項11】
(a)前記感光性組成物をスピンコーティング、ディップコーティング、もしくはスプレーコーティングによって堆積させるか、または前記感光性組成物が、ゲル状、半固体状、または固体状のフィルムであり、前記感光性組成物を前記基体上に積層することによって堆積させ、
(b)前記照射部分を、フォトマスクの使用により、直描光照射により、または干渉、ナノインプリント、もしくは回折勾配リソグラフィにより、またはステレオリソグラフィ、ホログラフィ、もしくはデジタル光プロジェクション(DLP)によりパターニングし、
(c)前記パターンの前記非重合領域を除去する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ルテニウムカルベンメタセシス触媒が、置換されていてもよい2,2’-ビピリジンと、
【化4】

のクエンチ剤と、式(IIA)、(IIB)、(IIIA)、もしくは(IIIB)もしくはそれらの幾何異性体のメタセシス触媒と、ここで、
【化5】

【化6】


式中、
およびLが、独立して中性電子供与リガンドであり、
kおよびnが、独立して0もしくは1であり、
およびRが、独立して水素、もしくは置換されていてもよいヒドロカルビルであるか、もしくは互いに結合して、置換されていてもよい置換型芳香族もしくは脂肪族環式基を形成してもよい、
を混合することによってインサイチュで得られる、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項13】
前記重合性材料マトリックスが、前記1種以上の不飽和有機前駆体とメタセシスすることができるペンダント不飽和部分を有する1以上の有機金属部分をさらに含んでなり、前記ペンダント不飽和部分が、1以上のアルケンまたは1以上のアルキン結合を含んでなり、前記有機金属部分が3族から12族の遷移金属を含んでなる、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項14】
前記3族から12族の遷移金属が、Fe、Co、Ni、Ti、Al、Cu、Zn、Ru、Rh、Ag、Ir、Pt、Au、またはHgである、請求項13に記載の感光性組成物。
【請求項15】
前記1種以上の不飽和有機前駆体が、構造:
【化7-1】

【化7-2】


を有する化合物を含んでなり、
式中、
Zが、-O-またはC(R)(R)であり、
が、独立して、H;-N(R)(R)、-O-R、-C(O)O-R、-OC(O)-(C1~6アルキル)、もしくは-OC(O)-(C6~10アリール)で末端が置換されていてもよいC1~6アルキル;または保護されていてもよい3~10のアミノ酸の配列(好ましくはR-G-Dもしくはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を含む);であり、
Wが、独立して、-N(R)(R)、-O-R、または-C(O)O-R、-P(O)(OR、-SO(OR)、またはSO であり、
およびRが、独立してHまたはC1~6アルキルであり、
6~10アリールが、1、2、3、4、または5の保護されていてもよいヒドロキシル基で置換されていてもよく、
nが、独立して、1、2、3、4、5、または6である、
請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項16】
前記メタセシス触媒が、構造:
【化8】

により表される、請求項15に記載の感光性組成物。
【請求項17】
基体にポリマー画像をパターニングする方法であって、
(a)請求項16に記載の感光性組成物の1以上の層を基体上に堆積させることと、
(b)前記感光性組成物の層の一部に250~800nmの範囲の波長を含んでなる光を照射して、前記層の照射部分を重合させ、それによって重合領域および非重合領域のパターン化層を得ることと、
(c)前記パターンの前記非重合領域を除去することと、を含んでなる方法。
【請求項18】
液槽光重合を含んでなる方法であって、請求項1に記載の感光性組成物を並進または回転させている基体上に直接硬化させ、照射をステレオリソグラフィ、ホログラフィ、またはデジタル光プロジェクション(DLP)によりパターン化する前記方法。
【請求項19】
(a)メタセシス重合または架橋反応を経ることができる1以上のアルケンまたはアルキンを有する組成物の2以上の層を堆積することであって、前記堆積が積層体を形成することと、
(b)前記積層体の隣接層の少なくとも一部を重合または架橋するのに充分な条件下で、前記積層体の少なくとも一部に光を照射して、前記積層体の2以上の層に光を透過させ、照射することと、
を含んでなる方法であって、
1以上の層が、請求項1に記載の感光性組成物を含んでなる、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の感光性組成物が、式(IA)の構造によって表される触媒を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【化9】
(IA)
【請求項21】
前記積層体の隣接層の少なくとも一部を重合または架橋するのに充分な条件下で、前記積層体の全部の層に光を透過させ、照射する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記照射を積層組成物へのパターン露光によって行い、それによって、前記積層体を通して重合領域および非重合領域の三次元パターンを得る、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記照射を、フォトマスクの使用により、直描光照射により、干渉、ナノインプリント、または回折勾配リソグラフィにより、インクジェット3Dプリンティング、ステレオリソグラフィ、ホログラフィ、またはデジタル光プロジェクション(DLP)により、パターン化する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
1以上の層中のポリマーが、樹状(くさび状)またはブラシ状(接木状、びん洗いブラシ状)ブロックコポリマーである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
2以上の順次堆積された層の隣接層が組成的に異なる、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
光重合された請求項1~9及び13~16のいずれか一項に記載の組成物を含む、重合組成物。
【請求項27】
パターン化ポリマー層である、請求項26に記載の重合組成物。
【請求項28】
請求項26に記載の重合組成物を含む、パターン化三次元ポリマー構造。
【請求項29】
請求項26又は27に記載の重合組成物を含む、組織スキャフォールド。
【請求項30】
さらに組織スキャフォールド上に接着した組織の集団又は細胞集団を含む、請求項29に記載の組織スキャフォールド。
【請求項31】
請求項26に記載の重合組成物の層を少なくとも2層を含み、重合組成物の前記少なくとも2層が互いに隣接して、且つ互いに架橋されて配置される、三次元ポリマー積層体。
【請求項32】
互いに隣接する重合組成物の前記少なくとも2層が互いに組成的に異なる、請求項31に記載の三次元ポリマー積層体。
【請求項33】
請求項31に記載の三次元ポリマー積層体を含む、フォトニック構造体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2016年9月2日に出願された米国特許出願第62,383,146号の優先権の利益を主張し、その内容は、それぞれ、あらゆる全ての目的のために、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国国立科学財団により与えられた助成第16447467号および米国エネルギー省により与えられた助成第DE-AC05-060R23100号の下で政府支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、官能化フォトリソグラフィ組成物に関する。本開示はまた、有機金属配位化合物によって、特にフィッシャー型ルテニウムカルベン触媒、特にキレート化2,2’-ビピリジンリガンドを含む触媒によって触媒されるメタセシス反応にも関する。
【背景技術】
【0004】
フォトリソグラフィは、最新の集積回路技術の中核である、微細加工の基礎をなすパターニング技術である。フォトレジストにおいて、光照射のパターンは、典型的には光開始官能基開裂または架橋によって、化学的に異なる領域のパターンに変換される。多くの最新のフォトレジストは、光生成触媒が多くの部位と反応する、「化学増幅」の概念を採用している。例えば、光酸発生剤は、ポリマーマトリックス内で開環重合を触媒するか、または一連の脱保護結合切断を開始して、照射領域に新たな溶解性を付与するために、化学増幅型レジストにおいて一般的に使用されている。原理的にはフォトリソグラフィにおいて使用され得る多くの光媒介反応があるが、実施されたものは非常に少ない。何百もの市販のフォトレジストがあるという事実にもかかわらず、これらの材料の間の機能的多様性は非常に限定されている。ほとんどの用途において、フォトレジストは犠牲マスクまたはモールドの目的をただ果たすだけであり、レジスト材料が構造要素または化学的機能性界面として組み込まれることは、極稀である。新しい種類の化学的機能性材料をフォトリソグラフィにより直接作製できることは、例えば微小電気機械システム(MEMS)、マイクロフルイディクス、パターン化生体材料、および人工光学材料において、多くの新しい用途を可能にするであろう。オレフィンメタセシスは、薬剤送達、有機エレクトロニクス、およびフォトニック結晶などの多くの用途を有する新しいポリマー材料をもたらしてきたロバストな合成方法論である。
【発明の概要】
【0005】
特定の実施形態は、感光性組成物を提供し、各組成物は、ROMPまたはクロスメタセシス前駆体を含む1種以上の不飽和有機前駆体を含んでなる重合性材料マトリックス内に混合された、式(I)のルテニウムカルベンメタセシス触媒またはその幾何異性体:
【化1】
を含んでなり、
式中、
およびXは、独立してアニオン性リガンドであり、
Yは、O、N-R、またはSであり、好ましくはOであり、
Qは、構造-CR1112-CR1314-または-CR11=CR13-、好ましくは-CR1112-CR1314-を有する2原子結合であり、R11、R12、R13、およびR14は、独立して、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、置換されていてもよいヘテロ原子含有ヒドロカルビル、または官能基であり、
およびRは、独立して、水素、置換されていてもよいヒドロカルビル、置換されていてもよいヘテロ原子含有ヒドロカルビルであるか、または互いに結合して、置換されていてもよい環式脂肪族基を形成していてもよく、
およびRは、独立して、置換されていてもよいヒドロカルビルであり、好ましくは、置換されていてもよいアダマンチルまたは置換されていてもよいフェニルであり、
およびRは、独立して、Hまたは電子求引基もしくは電子供与基、例えば、C1~24アルキル、C1~24アルコキシ、C1~24フルオロアルキル(ペルフルオロアルキルを含む)、C1~24フルオロアルコキシ(ペルフルオロアルコキシを含む)、C1~24アルキルヒドロキシ、C1~24アルコキシヒドロキシ、C1~24フルオロアルキルヒドロキシ(ペルフルオロアルキルヒドロキシを含む)、C1~24フルオロアルコキシヒドロキシ(ペルフルオロアルコキシヒドロキシを含む)ハロ(例えば、F、Cl、Br)、シアノ、ニトロ、もしくはヒドロキシル、シリル、もしくはホスホニルであり、
mおよびnは、独立して、1、2、3、または4である。
【0006】
また、RおよびRは、独立して、置換されていてもよいアリール、アルカリール、アラルキル、アリールオキシ、アルカリールオキシ、アラルコキシ、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アミド、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、またはアミノカルボニルであることができる。
【0007】
これらの組成物のいくつかにおいて、RおよびRの一方または両方は、Hである。これらの組成物のいくつかにおいて、m=n=1である。これらの組成物のいくつかにおいて、RおよびRの一方または両方は、C1~12アルキル、C1~12フルオロアルキル(ペルフルオロアルキルを含む)、C1~12フルオロアルコキシ(ペルフルオロアルコキシを含む)、C1~12アルキルヒドロキシ、C1~12アルコキシヒドロキシ、C1~12フルオロアルキルヒドロキシ(ペルフルオロアルキルヒドロキシを含む)、C1~12フルオロアルコキシヒドロキシ(ペルフルオロアルコキシヒドロキシを含む)、F、Cl、Br、またはヒドロキシである。いくつかの実施形態において、RおよびRは、それぞれ下記の、3,3’、または4,4’、または5,5’、または6,6’の位置に存在する。
【化2】
【0008】
関連実施形態において、メタセシス触媒は、IAの構造またはその幾何異性体を有する化合物を含んでなる。
【化3】
【0009】
式(I)のビピリジニルルテニウムメタセシス触媒は、記載されているように添加してもよく、またはインサイチュで生じさせてもよい。
【0010】
他の特定の実施形態では、感光性組成物のメタセシス触媒は、約250nm~約800nmの範囲の1種以上の波長の光の照射による活性化時に、1種以上の不飽和有機前駆体を架橋または重合することができる。
【0011】
他の実施形態は、基体にポリマー画像をパターニングする方法を提供し、各方法は、(a)本発明の感光性組成物のうちの1つの層を基体上に堆積させることと、(b)前記感光性組成物の層の一部に約250~約800nmの範囲またはその中のサブレンジの1種以上の波長を含んでなる光を照射して、前記層の照射部分を重合させ、それによって前記層中に重合領域および非重合または非照射領域を得ることとを含んでなる。他の実施形態では、方法は、パターンの非重合領域を除去することをさらに含んでなる。
【0012】
さらなる他の実施形態は、1種以上の不飽和有機前駆体とメタセシスすることができる1以上のアルケンまたは1以上のアルキン結合を有する有機金属部分を各々がさらに含んでなる、感光性組成物を提供する。これらの実施形態のうちのいくつかでは、有機金属部分は、3族から12族の遷移金属、好ましくはFe、Co、Ni、Ti、Al、Cu、Zn、Ru、Rh、Ag、Ir、Pt、Au、またはHgを含んでなり、これらは様々な有機反応および無機反応を触媒することが可能であり得る。
【0013】
他の実施形態は、1以上のアルケンまたは1以上のアルキン結合を各々が有する1種以上の不飽和有機前駆体を含んでなる重合性材料マトリックス内に混合または溶解された、より一般的な範囲のビピリジニルルテニウムメタセシス触媒のうちのいずれか1種以上も各々が含んでなる感光性組成物を提供し、ここで、前記1種以上の不飽和有機前駆体は、構造:
【化4-1】
【化4-2】
を有する化合物を含んでなり、
式中、
Zは、-O-またはC(R)(R)であり、
は、独立して、Hであるか、または-N(R)(R)、-O-R、-C(O)O-R、-OC(O)-(C1~6アルキル)、もしくは-OC(O)-(C6~10アリール)で遠位末端が置換されていてもよいC1~6アルキルであるか、または保護されていてもよい3~10のアミノ酸の配列(好ましくはR-G-Dもしくはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を含む)であり、
Wは、独立して、-N(R)(R)、-O-R、または-C(O)O-R、-P(O)(OR、-SO(OR)、またはSO であり、
およびRは、独立してHまたはC1~6アルキルであり、
6~10アリールは、1、2、3、4、または5個の保護されていてもよいヒドロキシル基(保護されたヒドロキシル基は好ましくはベンジル)で置換されていてもよく、
nは、独立して、1、2、3、4、5、または6である。
いくつかの実施形態では、不飽和有機前駆体は、単官能化または多官能化されていてもよい。
【0014】
これらの感光性組成物を使用する方法は、(a)感光性組成物の1以上の層を基体上に堆積させることと、(b)前記感光性組成物の層の一部に約250~約800nmの範囲またはその中のサブレンジの波長を含んでなる光を照射して、前記層の照射部分を重合させ、それによって重合領域および非重合のパターン化層を得ることとを含んでなり得る。また、当該方法は、パターンの非重合領域を除去することをさらに含んでなり得る。
【0015】
他の実施形態は、重合組成物、または本明細書に記載の方法のうちいずれか一つに従って製造された当該重合組成物を含んでなる製品を提供する。当該組成物は、パターン化層または固体物体であり得る。特定の実施形態では、当該組成物は、組織スキャフォールドであって、単独であるか、または組織もしくは細胞集団(例えば幹細胞)および当該スキャフォールドを使用する治療手段と集合化している前記組織スキャフォールドを形成するために使用することができる。
【0016】
当該組成物および方法はパターン化ポリマー層を形成するのに適しているが、同じ組成物および類似の方法を三次元構造体を作製するためにも使用することができる。そして、特定の実施形態は、(a)メタセシス重合または架橋反応を経ることができる1以上のアルケンまたはアルキンを有する組成物の2以上の層を堆積することであって、前記2以上の層のうち1以上の層が式(I)の触媒を含有し、前記堆積が積層体を形成することと、(b)前記積層体の隣接層の少なくとも一部を重合または架橋するのに充分な条件下で、前記積層体の少なくとも一部に光を照射して、前記積層体の2以上の層に光を透過させ、照射することとを含んでなり、1以上の層が、本明細書に記載のルテニウムカルベン2,2’-ビピリジン錯体を含有する方法を提供する。
【0017】
本出願は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。主題を説明する目的で、主題の例示的実施形態が図面に示されているが、本明細書に開示されている主題は、開示されている特定の方法、装置、およびシステムに限定されない。さらに、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。図面は以下である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1A及び図1Bは、本開示の好ましい触媒の構造を示す
図2】実施例で試験したいくつかのビピリジンリガンドを示す。
図3】実施例で試験したいくつかのフェナントロリンリガンドを示す。
図4A】フェナントロリンリガンドおよびビピリジンリガンドを含有する様々な潜在性ルテニウム触媒の暗所安定性を示す。
図4B】実施例1に記載されている、当該触媒の対応する反応性を示す。
図5】実施例5に記載に記載されている、ビピリジンリガンドを含有する潜在性ルテニウム触媒についての光線量の関数としてゲル化材料の硬化深度を測定するフォトポリマー「検量線」である。
図6】実施例6に記載に記載されている、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジンリガンドを含有する潜在性ルテニウム触媒についての光線量の関数としてゲル化材料の硬化深度を測定するフォトポリマー「検量線」である。
図7】実施例5および6に記載の試験プロトコルおよび結果の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例示的な実施形態の詳細な説明
本開示は、実質的に不活性であるとこれまで考えられていた触媒を使用してオレフィンをメタセシスする方法に関する。これらの方法は、新規な感光性組成物、フォトレジストとしてのそれらの使用、および基体上のポリマー層のパターニングに関する方法を提供する。さらに、組成物および方法に対する改変は、センサー、薬剤送達システム、および組織スキャフォールドの作製などにおいて有用な組成物の先例のない機能化を提供する。新規の組成物および関連する方法はまた、例えばフォトニックデバイスを含む、臨界寸法のデバイスの新たな達成手段を提供する三次元物体を作製する機会も提供する。
【0020】
2014年10月3日に出願された米国特許出願第14/505,824号は、潜在性光活性剤としてのフェナントロリン-および他の芳香族ジアミン-ベースのルテニウムメタセシス触媒の使用を記載している。本発明者は、フェナントロリンリガンドをある範囲のビピリジニルリガンドのうちのいずれか1つと置換すると、得られるメタセシス触媒の予想外に高い活性がもたらされ、添加量の低減が可能になり、より低い強度の光源の使用が可能になることを発見した。活性の増強の程度は非常に重要であり、活性の増強の程度により、対応するフェナントリン材料が作用しない条件下で、これらのルテニウム-ビピリジン触媒が作用することが可能になる。
【0021】
光活性の劇的な増加にもかかわらず、米国特許出願第14/505,824号に記載されているフェナントロリン誘導体の使用から生じる全ての用途および製品は、これらの光活性が高いビピリジン置換材料に適用可能であると予想されている。完全を期すために、824出願の記載の多くを本明細書で繰り返す。
【0022】
本開示は、添付の図面および実施例に関連してなされる以下の説明を参照することによってより容易に理解され得、以下の説明は全て本開示の一部を形成する。本開示は、本明細書に記載または図示されている特定の製品、方法、条件、またはパラメータに限定されないことと、本明細書で使用される用語は、例として具体的な実施形態を説明することをただ目的としており、請求項に係る発明を限定することを意図したものではないこととを理解されたい。同様に、特に断りがない限り、可能なメカニズムまたは作用様式または改良の理由に関する説明は、例示のみを意図しており、本明細書の開示は、このような示唆されたメカニズムまたは作用様式または改良の理由の正確性または不正確性によって制約されない。本明細書を通して、説明は組成物ならびに前記組成物を製造および使用する方法に関することを認識されたい。すなわち、本開示が組成物または組成物の製造方法もしくは使用方法に関連する特徴または実施形態を説明またはクレームする場合、このような説明またはクレームは、これらの特徴または実施形態をこれらの内容(すなわち、組成物、製造方法、および使用方法)のそれぞれにおける実施形態に拡張することが意図されていることを理解されたい。
【0023】
本開示において、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形の言及を含み、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、特定の数値への言及は、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料」への言及は、そのような材料および当業者に知られているそれらの均等物のうちの少なくとも1つへの言及である。
【0024】
値が記述子「約」の使用による近似値として表現されている場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるだろう。一般に、用語「約」の使用は、開示している主題により得ようとしている所望の特性に応じて変動し得、当該用語が使用されている具体的な文脈において、当該用語の機能に基づいて解釈されるべきである近似を示す。当業者は、これをルーチンの事柄として解釈することができるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数は、単語「約」の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合では、一連の値で使用される段階的変化を使用して、各値について用語「約」に利用可能な意図された範囲を決定し得る。全ての範囲は、存在する場合、包括的かつ組み合わせ可能である。すなわち、範囲で述べられた値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。
【0025】
明確にするために、本明細書で別々の実施形態において説明されている本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることを理解されたい。すなわち、明らかに不適合であるか、または具体的に除外されていない限り、各個々の実施形態は他の実施形態と組み合わせ可能であるとみなされ、このような組み合わせは別の実施形態であるとみなされる。逆に、簡潔にするために単一の実施形態において説明されている本開示の様々な特徴は、別々に、またはサブコンビネーションで提供することもできる。最後に、実施形態は一連のステップの一部、またはより一般的な構造の一部として説明することができるが、前記ステップの各々は、他の実施形態と組み合わせることができる、それ自体が独立した実施形態とみなすこともできる。
【0026】
移行句「含んでなる」、「から本質的になる」、および「からなる」は、特許用語でそれらの用語が通常認められている意味を含むことが意図されている。すなわち、(i)「含む」、「含有する」、または「によって特徴付けられる」と同義である「含んでなる」は、包括的または開放的であり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外するものではなく、(ii)「からなる」は、請求項に明記されていない要素、ステップ、または成分を除外し、(iii)「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、明記されている材料またはステップおよび特許請求の範囲に係る発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。句「含んでなる」(またはその相当句)の言葉で説明されている実施形態は、実施形態として、「からなる」および「から本質的になる」の言葉で独立に説明されている実施形態も提供する。「から本質的になる」という言葉で与えられている実施形態では、基本的かつ新規な特徴は、図1に例えば示されているビピリジン結合触媒を使用する光化学的活性化メタセシス系を提供するように、方法(または組成物または当該組成物から誘導されたデバイス)を実施可能にするものである。
【0027】
リストが与えられている場合、特段の断りのない限り、そのリストの各個々の要素、およびそのリストのあらゆる組み合わせは、別々の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、またはC」として示されている実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「AまたはB」、「AまたはC」、「BまたはC」、または「A、B、またはC」を含むと解釈されるべきである。
【0028】
本明細書を通して、単語は、当業者が理解する、それらの通常の意味を与えられるべきである。しかしながら、誤解を避けるために、特定の用語の意味は、明確に定義するか、または明確化することとする。
【0029】
本発明は、1種以上のルテニウムカルベンメタセシス触媒を含んでなる様々な予備重合組成物、当該組成物の重合方法、ならびに当該組成物から誘導された特定のデバイスまたは物品を含む当該組成物の重合生成物を含む。いかなる特定の実施形態にも限定されることを意図しないが、これらの新規かつ非自明の組成物は、(1)様々なポリマー組成物、構造体、および生成物に対して作用可能である、ビピリジンリガンドを含むルテニウムカルベンメタセシス触媒;(2)本明細書に記載の様々なルテニウムカルベンメタセシス触媒のうちのいずれか1種以上をそれぞれ含み得る、オレフィン前駆体および重合性マトリックス;ならびに(3)ルテニウムカルベンメタセシス触媒のうちのいずれか1種以上および1種以上の反応性ポリマーまたは重合性マトリックスを使用して作製することができる高次構造体を含むものとして説明され得る。以下でより充分にこれらの各々は説明されている。表現効率のために、本開示の様々な要素を個別に説明するが、本開示はそれらの組み合わせを企図することを認識されたい。
【0030】
一般的なメタセシスの説明
【0031】
本開示は、オレフィン系基体の選択においても、予備重合組成物および重合組成物を調製するために使用される触媒においても新規である組成物を記載する。基体と触媒とのこれらの新規な組み合わせは、これまで認識されていなかった性質またはこれらの材料の取り扱い方法を示す材料を提供する。特に、これらのビピリジン含有ルテニウム触媒は、それらのフェナントロリン類似体よりもはるかに、かつ予想外に優れた反応性を示す。これらの基体および触媒を別々に論じるが、本開示が各組み合わせを本発明の範囲内にあるとみなすことを理解されたい。
【0032】
本開示は、不飽和有機前駆体をメタセシスする組成物および方法に関する実施形態を含み、各方法は、1種以上の不飽和有機前駆体の存在下で式(I)のフィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒に1種以上の波長の光を照射して、1種以上の前駆体のマトリックス内の1以上のアルケンまたは1以上のアルキン結合をメタセシスすることを含んでなる。本開示において、いわゆる「フィッシャー型」カルベンは、非持続性カルベノイド炭素上にアルコキシ基およびアルキル化アミノ基などのパイ供与体置換基、ならびに水素およびアルキル置換基を有する非持続性カルベン含んでなるものとして定義される。カルベン炭素上のアルコキシ基およびアルキル化アミノ基は、フィッシャー型カルベン、特にルテニウムのフィッシャー型カルベンを、それらの「シュロック型」同類物に対して実質的に不活性にする。実際、置換型ビニルエーテルまたはビニルアミンの添加などは、対応するフィッシャー型誘導体を形成することによって、「シュロック型」カルベンを含有するルテニウムメタセシス触媒を実質的に不活性化することができる。これらのフィッシャー型カルベン錯体は、カルベンの電子状態に起因して不活性であると広く考えられている。事実、エチルビニルエーテルは、ROMP(開環メタセシス重合)反応をクエンチするために一般的に使用されている。ここで、以下の説明は、これらのルテニウム錯体およびそれらの「クエンチされた」誘導体が光化学的に活性化されるとさらなる化学現象を経ることを実証する。
【0033】
触媒
【0034】
特定の実施形態では、光化学的活性化メタセシス組成物に使用されるフィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒は、式(I)のメタセシス触媒であり、
【化5】
式中、
およびXは、独立してアニオン性リガンドであり、
Yは、O、N-R、またはSであり、好ましくはOであり、
Qは、構造-CR1112-CR1314-または-CR11=CR13-、好ましくは-CR1112-CR1314-を有する2原子結合であり、R11、R12、R13、およびR14は独立して水素、置換されていてもよいヒドロカルビルであり、
およびRは、独立して水素もしくは置換されていてもよいヒドロカルビルであるか、またはRおよびRは、互いに結合して置換されていてもよい環式脂肪族基を形成してもよく、
およびRは、独立して、置換されていてもよいヒドロカルビルであり、
およびRは、独立して、Hまたは電子求引基もしくは電子供与基、例えば、C1~24アルキル、C1~24アルコキシ、C1~24フルオロアルキル、C1~24フルオロアルコキシ、C1~24アルキルヒドロキシ、C1~24アルコキシヒドロキシ、C1~24フルオロアルキルヒドロキシ(ペルフルオロアルキルヒドロキシを含む)、C1~24フルオロアルコキシヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、もしくはヒドロキシであり、
mおよびnは、独立して1、2、3または4である。
【0035】
式(I)のルテニウムカルベンメタセシス触媒は、本明細書で記載されているように添加してもよく、または本明細書で記載されているようにインサイチュで生じさせてもよい。独立したXおよびXはアニオン性リガンドであり、互いに対してシスに位置すると考えられているが、化合物は示されている構造の幾何異性体としても存在し得る。
【0036】
およびXはアニオン性リガンドであり、同じである、もしくは異なっていることがあり得、または互いに結合して環式基、必ずしもそうとは限らないが典型的には、5~8員環を形成する。好ましい実施形態では、XおよびXは、それぞれ独立して、水素、ハライド、または以下の基:C~C20アルキル、C~C24アリール、C~C20アルコキシ、C~C24アリールオキシ、C~C20アルコキシカルボニル、C~C24アリールオキシカルボニル、C~C24アシル、C~C24アシルオキシ、C~C20アルキルスルホナト、C~C24アリールスルホナト、C~C20アルキルスルファニル、C~C24アリールスルファニル、C~C20アルキルスルフィニル、NO、-N=C=O、-N=C=S、もしくはC~C24アリールスルフィニルのうちの一つである。必要に応じて、XおよびXは、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、C~C24アリール、およびハライドから選択される1以上の基で置換されていてもよく、同様に、これらは、ハライドを除いて、ハライド、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、およびフェニルから選択される1以上の基でさらに置換されていてもよい。より好ましい実施形態では、XおよびXは、ハライド、ベンゾエート、C~Cアシル、C~Cアルコキシカルボニル、C~Cアルキル、フェノキシ、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルスルファニル、アリール、またはC~Cアルキルスルホニルである。さらにより好ましい実施形態では、XおよびXは、それぞれ、ハライド、CFCO、CHCO、CFHCO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、PhO、MeO、EtO、トシレート、メシレート、またはトリフルオロメタン-スルホネートである。最も好ましい実施形態では、XおよびXは、それぞれクロライドである。
【0037】
およびRは、独立して、水素、ヒドロカルビル(例えば、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C24アリール、C~C24アルカリール、C~C24アラルキルなど)、置換型ヒドロカルビル(例えば、置換型C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C24アリール、C~C24アルカリール、C~C24アラルキルなど)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、ヘテロ原子含有C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C24アリール、C~C24アルカリール、C~C24アラルキルなど)、および置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換型ヘテロ原子含有C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C24アリール、C~C24アルカリール、C~C24アラルキルなど)、ならびに官能基から選択される。また、RおよびRは、結合して環式基を形成してもよい。通常、このような環式基は、4~12個、好ましくは5、6、7、または8個の環原子を含むであろう。特定の実施形態では、Rは、水素ではない。
【0038】
いくつかの実施形態では、Rは水素であり、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、およびC~C24アリール、より好ましくはC~Cアルキル、C~Cアルケニル、およびC~C14アリールから選択される。さらにより好ましくは、Rは、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、フェニル、および本明細書で前に定義した官能基Fnから選択される1以上の基で置換されていてもよいフェニル、メチル、エチル、イソプロピル、またはt-ブチルである。最も好ましくは、Rは、メチル、エチル、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロ、ニトロ、ジメチルアミノ、メチル、メトキシ、およびフェニルから選択される1以上の基で置換されていてもよいフェニルまたはエチルである。最適には、Rは、フェニル、エチル、プロピル、またはブチルである。
【0039】
特定のこれらの実施形態では、Ru=C(R)(Y-R)部分は、置換型ビニルエーテルカルベンである。独立した実施形態では、Rは、C1~6アルキル、好ましくはエチル、プロピル、またはブチルである。他の実施形態では、RはHであり、RはC1~6アルキルであり、YはOである。
【0040】
特定の実施形態では、部分:
【化6】
は、N-複素環式カルベン(NHC)リガンドである。いくつかの実施形態では、RおよびRは、上記で定義されたとおりであり、好ましくはRおよびRの少なくとも一方、より好ましくはRおよびRの両方が、1~約5個の環の脂環式または芳香族であり、1個以上のヘテロ原子および/または置換基を含んでいてもよい。Qは、リンカー、典型的には置換型ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、および置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンリンカーを含むヒドロカルビレンリンカーであり、ここで、Q内の隣接原子上の2以上の置換基は、結合してさらなる環構造を形成していてもよく、前記さらなる環構造は、2~約5個の環式基の縮合多環式構造を与えるように同様に置換されていてもよい。Qは、必ずというわけではないが、2原子結合または3原子結合であることが多い。
【0041】
N-複素環式カルベン(NHC)リガンドおよび非環式ジアミノカルベンリガンドの例として、DIPPまたはDiPPがジイソプロピルフェニルであり、Mesが2,4,6-トリメチルフェニルである以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【化7-1】
【化7-2】
【0042】
として好適なN-複素環式カルベン(NHC)リガンドおよび非環式ジアミノカルベンリガンドの他の例として、限定はされないが、以下が挙げられ、
【化8-1】
【化8-2】
式中、RW1、RW2、RW3、RW4は、独立して、水素、非置換型ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、またはヘテロ原子含有ヒドロカルビルであり、ここでRW3およびRW4の一方または両方は、独立して、ハロゲン、ニトロ、アミド、カルボキシル、アルコキシ、アリールオキシ、スルホニル、カルボニル、チオ、またはニトロソ基から選択され得る。
【0043】
好適なN-複素環式カルベン(NHC)リガンドの他の例は、米国特許第7,378,528号;第7,652,145号;第7,294,717号;第6,787,620号;第6,635,768号;および第6,552,139号にさらに記載されており、それぞれの内容は、参照により本明細書に援用される。
【0044】
より好ましい実施形態では、Qは、構造-CR1112-CR1314-または-CR11=CR13-、好ましくは-CR1112-CR1314-を有する2原子結合であり、式中、R11、R12、R13、およびR14は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および官能基から選択される。ここでの官能基の例として、限定はされないが、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、C~C14アリール、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ホルミル、およびハライドから選択される1以上の基で置換されていてもよい、カルボキシル、C~C20アルコキシ、C~C24アリールオキシ、C~C20アルコキシカルボニル、C~C24アルコキシカルボニル、C~C24アシルオキシ、C~C20アルキルチオ、C~C24アリールチオ、C~C20アルキルスルホニル、およびC~C20アルキルスルフィニルが挙げられる。R11、R12、R13、およびR14は、好ましくは、独立して、水素、C~C12アルキル、置換型C~C12アルキル、C~C12ヘテロアルキル、置換型C~C12ヘテロアルキル、フェニル、および置換型フェニルから選択される。あるいは、R11、R12、R13、およびR14のうちのいずれか2つが互いに結合して、結合もしくは縮合脂環式基もしくは芳香族基で、または他の置換基などでそれ自体が置換されていてもよい、置換型または非置換型の、飽和または不飽和の環構造、例えば、C~C12脂環式基またはCもしくはCアリール基を形成してもよい。一つの他の態様では、R11、R12、R13、およびR14のうちのいずれか1つ以上は、1以上のリンカーを含んでなる。また、RおよびRは、非置換型フェニル、またはC~C20アルキル、置換型C~C20アルキル、C~C20ヘテロアルキル、置換型C~C20ヘテロアルキル、C~C24アリール、置換型C~C24アリール、C~C24ヘテロアリール、C~C24アラルキル、C~C24アルカリール、もしくはハライドから選択される1以上の置換基で置換されているフェニルであり得る。さらに、XおよびXは、ハロゲンであり得る。
【0045】
およびRが芳香族である場合、RおよびRは、必ずしもそうとは限らないが典型的には、置換されていてもいなくてもよい1または2個の芳香環から構成され、例えば、RおよびRは、フェニル、置換型フェニル、ビフェニル、置換型ビフェニルなどであり得る。一つの好ましい実施形態では、RおよびRは、同じであり、それぞれ、非置換型フェニル、または、C~C20アルキル、置換型C~C20アルキル、C~C20ヘテロアルキル、置換型C~C20ヘテロアルキル、C~C24アリール、置換型C~C24アリール、C~C24ヘテロアリール、C~C24アラルキル、C~C24アルカリール、もしくはハライドから選択される3個以下の置換基で置換されているフェニルである。好ましくは、存在する置換基は、水素、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、C~C14アリール、置換型C~C14アリール、またはハライドである。一例として、RおよびRは、メシチル(すなわち本明細書で定義されているMes)である。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態では、Qは、構造-CH-CH-を有するものとして定義され得、RもしくはRのいずれか、またはRとRの両方は、独立したC1~6アルキル基で2、4、6位で置換されていてもよいフェニル基であり、ここで、C3~6アルキル基は、分岐状でも直鎖状でもよく、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、フェニル基は、2,6位において、独立したC1~6アルキル基で置換されていてもよく、4位は、本明細書に記載の電子求引基または電子供与基、例えばアルキル、アルコキシ、ニトロ、またはハロで置換されていてもよい。他の実施形態では、Qは-CH-CH-であり、RおよびRは、独立して、メシチル、または置換されていてもよいアダマンチルである。
【0047】
ビピリジン置換基RおよびRは、独立して、Hまたは電子求引基もしくは電子供与基、例えば、C1~24アルキル、C1~24アルコキシ、C1~24フルオロアルキル、C1~24フルオロアルコキシ、C1~24アルキルヒドロキシ、C1~24アルコキシヒドロキシ、C1~24フルオロアルキルヒドロキシ(ペルフルオロアルキルヒドロキシを含む)、C1~24フルオロアルコキシヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、またはヒドロキシルとして記載されており、mおよびnは、独立して、1、2、3、または4として記載されている。電子求引基(EWG)または電子供与基(EDG)は、それぞれの場合で独立して、-NH、-NHR、-NR(式中、RはC1~18アルキルである)、ヒドロキシド、C1~18アルコキシド、-NHC(O)(C1~18アルキル)、C1~18アルキル、C6~10アリール、ニトロ、四級アミン、ハロ-もしくはペルハロ-C1~18アルキル、-CN、-C0~6アルキルスルホネート、-C0~6アルキルホスホネート、-C1~6アルキル-C(O)-R(式中、RはC1~18アルキルである)、または-C1~6アルコキシカルボニルをより広く含み得る。好ましい実施形態では、EWGまたはEDGは、それぞれの場合で独立して、-NH、-NHR、-NR(式中、RはC1~3アルキルである)、ヒドロキシド、C1~3アルコキシド、-NHC(O)(C1~3アルキル)、C1~6アルキル、Cアリール、ニトロ、四級アミン、CF、-CN、-C1~6アルキルスルホネート、-C0~3アルキルホスホネート、-カルボキシレート、または-C1~3アルコキシカルボニル、シリル、またはホスホニルを含む。
【0048】
好ましい実施形態では、RおよびRは、独立して、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、トリフルオロメチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、またはニトロである。
【0049】
各RおよびRは、それらの環上の1つに独立して配置されてもよいが、典型的には、各RおよびRは対応する位置に配置される。すなわち、Rのうちの1以上が、3、4、5、または6位のいずれか1つ以上に存在し得、Rは、3’、4’、5’、または6’位のいずれか1つ以上に独立して存在し得る。しかし、好ましい実施形態では、置換されていてもよい2,2’-ビピリジンは、3,3’または4,4’または5,5’または6,6’の位置、最も好ましくは4,4’または5,5’の位置で、RおよびRで置換されている。
【化9】
【0050】
式(1A)の構造を有するルテニウム触媒は、本開示の組成物および方法において特に有用であることが分かった。
【化10】
【0051】
これらのルテニウム-ビピリジン触媒を、示されているように組成物に与えてもよく、または置換されていてもよい2,2’-ビピリジン、
【化11】
のクエンチング剤、および式(IIA)、(IIB)、(IIIA)、もしくは(IIIB)のメタセシス触媒もしくはそれらの幾何異性体を混合することによりインサイチュで生じさせてもよく、
【化12】

およびLは、独立して中性電子供与リガンドであり、
kおよびnは、独立して0または1であり、
およびRは、独立して水素もしくは置換されていてもよいヒドロカルビルであるか、または結合して置換されていてもよい芳香族もしくは脂肪族環式基を形成してもよく、
ここで、Q、X、X、R、およびRは、本明細書の他の箇所に記載の通りである。
【0052】
当該構造には、以下が含まれる。
【化13-1】
【化13-2】
【0053】
本明細書を通して、単語は、当業者が理解する、それらの通常の意味を与えられるべきである。しかしながら、誤解を避けるために、特定の用語の意味は明示的に定義または明確化することとする。
【0054】
用語「アニオン性リガンド」は、通常負電荷を帯びているとみなされる程度に、金属よりも電気的に陰性である、金属中心に配位したリガンドを指す。あるいは、リガンドとして金属中心に配位していない場合、アニオン性リガンドはアニオンである。このようなリガンドとしては、例えば、塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
【0055】
所与の触媒構造が与えられている場合、当該構造は特定の実施形態とみなされる。しかしながら、触媒サイクルはその性質上、触媒サイクルの反応の過程で変換される一時的中間体または化合物を含むことが理解されるべきである。このように、触媒という用語は、所与の構造に適用される場合、与えられている構造の触媒サイクルに関連する触媒の一時的な構造も含むものともみなされるべきである。さらに、実際の構造は、実際に示されている構造の幾何異性体であり得る。幾何異性体は、同じ数および種類の原子、および結合(すなわち、原子間の結合性が同じ)を含むが、金属中心の周囲で原子の空間配置が異なる2以上の配位化合物である。同様のリガンドが互いに隣接している異性体は、シス異性体と呼ばれる。
【0056】
「置換型ヒドロカルビル」、「置換型アルキル」、「置換型アリール」などにおける「置換型」とは、上記定義のいくつかにおいて言及されているように、ヒドロカルビル、アルキル、アリール、ヘテロアリール、または他の基において、炭素(または他の)原子に結合した1以上の水素原子が1以上の非水素置換基で置換されていることを意味する。このような置換基の例としては、限定はされないが、以下が挙げられる:本明細書で「Fn」と呼ばれる官能基、例えばハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C~C24アルコキシ、C~C24アルケニルオキシ、C~C24アルキニルオキシ、C~C24アリールオキシ、C~C24アラルキルオキシ、C~C24アルカリールオキシ、アシル(C~C24アルキルカルボニル(-CO-アルキル)およびC~C24アリールカルボニル(-CO-アリール)を含む)、アシルオキシ(C~C24アルキルカルボニルオキシ(-O-CO-アルキル)およびC~C24アリールカルボニルオキシ(-O-CO-アリール)を含む-O-アシル)、C~C24アルコキシカルボニル((CO)-O-アルキル)、C~C24アリールオキシカルボニル(-(CO)-O-アリール)、ハロカルボニル((-CO)-X、式中Xはハロである)、C~C24アルキルカルボナート(-O-(CO)-O-アルキル)、C~C24アリールカルボナート(-O-(CO)-O-アリール)、カルボキシ(-COOH)、カルボキシラト(-COO-)、カルバモイル(-(CO)-NH)、モノ-(C~C24アルキル)-置換型カルバモイル(-(CO)NH(C~C24アルキル))、ジ-(C~C24アルキル)-置換型カルバモイル(-(CO)-N(C~C24アルキル))、モノ-(C~C24ハロアルキル)-置換型カルバモイル(-(CO)-NH(C~C24アルキル))、ジ-(C~C24ハロアルキル)-置換型カルバモイル(-(CO)-N(C~C24アルキル))、モノ-(C~C24アリール)-置換型カルバモイル(-(CO)-NH-アリール)、ジ-(C~C24アリール)置換型カルバモイル(-(CO)-N(C~C24アリール))、ジ-N-(C~C24アルキル)、N-(C~C24アリール)-置換型カルバモイル、チオカルバモイル(-(CS)-NH)、モノ-(C~C24アルキル)-置換型チオカルバモイル(-(CO)-NH(C~C24アルキル))、ジ-(C~C24アルキル)-置換型チオカルバモイル(-(CO)-N(C~C24アルキル))、モノ-(C~C24アリール)置換型チオカルバモイル(-(CO)-NH-アリール)、ジ-(C~C24アリール)-置換型チオカルバモイル(-(CO)-N(C~C24アリール))、ジ-N-(C~C24アルキル)、N-(C~C24アリール)-置換型チオカルバモイル、カルバミド(-NH-(CO)-NH)、シアノ(-C≡N)、シアナト(-O-C=N)、チオシアナト(-S-C=N)、ホルミル(-(CO)-H)、チオホルミル(-(CS)-H)、アミノ(-NH)、モノ-(C~C24アルキル)-置換型アミノ、ジ-(C~C24アルキル)-置換型アミノ、モノ-(C~C24アリール)置換型アミノ、ジ-(C~C24アリール)-置換型アミノ、C~C24アルキルアミド(-NH-(CO)-アルキル)、C~C24アリールアミド(-NH-(CO)-アリール)、イミノ(-CR=NH、式中R=水素、C~C24アルキル、C~C24アリール、C~C24アルカリール、C~C24アラルキルなど)、C~C20アルキルイミノ(-CR=N(アルキル)、式中R=水素、C~C24アルキル、C~C24アリール、C~C24アルカリール、C~C24アラルキルなど)、アリールイミノ(-CR=N(アリール)、式中R=水素、C~C20アルキル、C~C24アリール、C~C24アルカリール、C~C24アラルキルなど)、ニトロ(-NO)、ニトロソ(-NO)、スルホ(-SOOH)、スルホネート(SOO-)、C~C24アルキルスルファニル(-S-アルキル;「アルキルチオ」とも呼ばれる)、C~C24アリールスルファニル(-S-アリール;「アリールチオ」とも呼ばれる)、C~C24アルキルスルフィニル(-(SO)-アルキル)、C~C24アリールスルフィニル(-(SO)-アリール)、C~C24アルキルスルホニル(-SO-アルキル)、C~C24モノアルキルアミノスルホニル-SO-N(H)アルキル)、C~C24ジアルキルアミノスルホニル-SO-N(アルキル)、C~C24アリールスルホニル(-SO-アリール)、ボリル(-BH)、ボロノ(-B(OH))、ボロナト(-B(OR)、式中Rはアルキルまたは他のヒドロカルビルである)、ホスホノ(-P(O)(OH))、ホスホナト(-P(O)(O))、ホスフィナト(P(O)(O-))、ホスホ(-PO)、およびホスフィン(-PH);およびヒドロカルビル基C~C24アルキル(好ましくはC~C12アルキル、より好ましくはC~Cアルキル)、C~C24アルケニル(好ましくはC~C12アルケニル、より好ましくはC~Cアルケニル)、C~C24アルキニル(好ましくはC~C12アルキニル、より好ましくはC~Cアルキニル)、C~C24アリール(好ましくはC~C24アリール)、C~C24アルカリール(好ましくはC~C16アルカリール)、およびC~C24アラルキル(好ましくはC~C16アラルキル)。これらの置換基構造の中では、「アルキル」、「アルキレン」、「アルケニル」、「アルケニレン」、「アルキニル」、「アルキニレン」、「アルコキシ」、「芳香族」、「アリール」、「アリールオキシ」、「アルカリール」、および「アラルキル」基は、フッ素化または過フッ素化されていてもよい場合がある。さらに、アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸、ケトン、または他の同様に反応性の官能基への言及は、それらの保護類似体も含む。例えば、ヒドロキシまたはアルコールへの言及は、ヒドロキシが、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn、Bnl)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル、[ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル,MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル(トリフェニルメチル,Tr)、シリルエーテル(最も一般的なものにはトリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテルが含まれる)、エトキシエチルエーテル(EE)によって保護されている置換基も含む。アミンへの言及は、アミンが、BOCグリシン、カルボベンジルオキシ(Cbz)、p-メトキシベンジルカルボニル(MozまたはMeOZ)、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、カルバメート、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)基、またはスルホンアミド(Nosyl&Nps)基によって保護されている置換基も含む。カルボニル基を含有する置換基への言及は、カルボニルがアセタールもしくはケタール、アシラール、またはダイセン(diathane)基によって保護されている置換基も含む。カルボン酸またはカルボキシレート基を含有する置換基への言及は、カルボン酸またはカルボキシレート基が、そのメチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル、2,6-二置換型フェノールのエステル(例えば、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、シリルエステル、オルトエステル、またはオキサゾリンによって保護されている置換基も含む。
【0057】
「官能化ヒドロカルビル」、「官能化アルキル」、「官能化オレフィン」、「官能化環式オレフィン」などにおける「官能化」とは、ヒドロカルビル、アルキル、アリール、ヘテロアリール、オレフィン、環式オレフィン、または他の基において、炭素(または他の)原子に結合した1以上の水素原子が、本明細書および上記に記載されている官能基などの1以上の官能基で置換されていることを意味する。用語「官能基」は、本明細書に記載の使用に適した官能種を含むことを意味している。特に、本明細書で使用される場合、官能基は、基体表面上の対応する官能基と反応するか、または当該官能基に結合する能力を必然的に有する。
【0058】
「必要に応じた(optional)」または「もよい(optionally)」は、続いて記載されている状況が発生してもしなくてもよいことを意味し、そのため、記載には、状況が発生する場合と状況が発生しない場合とが含まれる。例えば、句「置換されていてもよい」は、所与の原子上に非水素置換基が存在してもしなくてもよいことを意味し、したがって、本記載は、非水素置換基が存在する構造と非水素置換基が存在しない構造とを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、Lは、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル(環式エーテルを含む)、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、置換型ピリジン、イミダゾール、置換型イミダゾール、ピラジン、置換型ピラジン、またはチオエーテルである。例示的なリガンドは三置換型ホスフィンである。好ましい三置換型ホスフィンは、式PRH1H2H3の三置換型ホスフィンであり、式中、RH1、RH2、およびRH3は、それぞれ独立して、置換型または非置換型アリールまたはC~C10アルキル、特に一級アルキル、二級アルキル、またはシクロアルキルである。他の実施形態では、Lは、トリメチルホスフィン(PMe)、トリエチルホスフィン(PEt)、トリ-n-ブチルホスフィン(PBu)、トリ(オルト-トリル)ホスフィン(P-o-トリル)、トリ-tert-ブチルホスフィン(P-tert-Bu)、トリシクロペンチルホスフィン(PCシクロペンチル)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、トリイソプロピルホスフィン(P-i-Pr)、トリオクチルホスフィン(POct)、トリイソブチルホスフィン(P-i-Bu)、トリフェニルホスフィン(PPh)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン(P(C)、メチルジフェニルホスフィン(PMePh)、ジメチルフェニルホスフィン(PMePh)、またはジエチルフェニルホスフィン(PEtPh)である。
【0060】
他の実施形態では、LおよびLには、窒素、硫黄、酸素、またはそれらの混合を含有する複素環が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
およびLに適した窒素含有複素環の例として、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ビピリダミン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、ピロール、2H-ピロール、3H-ピロール、ピラゾール、2H-イミダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、インドール、3H-インドール、1H-イソインドール、シクロペンタ(b)ピリジン、インダゾール、キノリン、ビスキノリン、イソキノリン、ビスイソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピラゾリジン、キヌクリジン、イミダゾリジン、ピコリルイミン、プリン、ベンズイミダゾール、ビスイミダゾール、フェナジン、アクリジン、およびカルバゾールが挙げられる。さらに、窒素含有複素環は、非配位ヘテロ原子上で非水素置換基で置換されていてもよい場合がある。
【0062】
およびLに適した硫黄含有複素環の例として、チオフェン、1,2-ジチオール、1,3-ジチオール、チエピン、ベンゾ(b)チオフェン、ベンゾ(c)チオフェン、チオナフテン、ジベンゾチオフェン、2H-チオピラン、4H-チオピラン、およびチオアントレン(thioanthrene)が挙げられる。
【0063】
およびLに適した酸素含有複素環の例として、2H-ピラン、4H-ピラン、2-ピロン、4-ピロン、1,2-ジオキシン、1,3-ジオキシン、オキセピン、フラン、2H-1-ベンゾピラン、クマリン、クマロン、クロメン、クロマン-4-オン、イソクロメン-1-オン、イソクロメン-3-オン、キサンテン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、およびジベンゾフランが挙げられる。
【0064】
およびLに適した混合複素環の例として、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3,4-オキサトリアゾール、1,2,3,5-オキサトリアゾール、3H-1,2,3-ジオキサゾール、3H-1,2-オキサチオール、1,3-オキサチオール、4H-1,2-オキサジン、2H-1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2,5-オキサチアジン、o-イソオキサジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ピラノ[3,4-b]ピロール、インドオキサジン、ベンゾオキサゾール、アントラニル、およびモルホリンが挙げられる。
好ましいLおよびLリガンドは、芳香族窒素含有および酸素含有複素環であり、特に好ましいLおよびLリガンドは、1~3、好ましくは1または2の置換基で置換されていてもよい単環式N-ヘテロアリールリガンドである。特に好ましいLおよびLリガンドの具体例は、ピリジンおよび置換型ピリジン、例えば3-ブロモピリジン、4-ブロモピリジン、3,5-ジブロモピリジン、2,4,6-トリブロモピリジン、2,6-ジブロモピリジン、3-クロロピリジン、4-クロロピリジン、3,5-ジクロロピリジン、2,4,6-トリクロロピリジン、2,6-ジクロロピリジン、4-ヨードピリジン、3,5-ジヨードピリジン、3,5-ジブロモ-4-メチルピリジン、3,5-ジクロロ-4-メチルピリジン、3,5-ジメチル-4-ブロモピリジン、3,5-ジメチルピリジン、4-メチルピリジン、3,5-ジイソプロピルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,4,6-トリイソプロピルピリジン、4-(tert-ブチル)ピリジン、4-フェニルピリジン、3,5-ジフェニルピリジン、3,5-ジクロロ-4-フェニルピリジンなどである。
【0065】
光化学条件
【0066】
本明細書で使用される場合、別段の定めがない限り、用語「活性化する」は、照射触媒が、オレフィンまたはアルキンを、照射前に同じオレフィンまたはアルキンをメタセシスするよりも10倍以上速い速度でメタセシスする(すなわち重合または架橋する)ということを指す。このことが述べられている場合、およびこのように定められている場合、独立の実施形態は、照射触媒が、オレフィンまたはアルキンを、照射前に、または照射せずに、同じオレフィンまたはアルキンをメタセシスするよりも、2倍、5倍、50倍、100倍、または1000倍以上速い速度でメタセシスすることを規定する。
【0067】
本発明のルテニウム-ビピリジン触媒は、マスクアライナに通常使用されるHgランプとは対照的に、単一波長でより低いエネルギーで照射する単純なLED光源の使用を可能にする。これらのビピリジン配位錯体は、約250~約800nm、約300~約500nmの範囲、または約340~約460nmの範囲、好ましくは約380~約420nmの範囲の1種以上の波長で反応性を示す。別の実施形態は、光が、約250~約300nm、約300~約320nm、約320~約340nm、約340~約360nm、約360~約380nm、約380~約400nm、約400~約420nm、約420~約440nm、約440~約460nm、約460~約480nm、約480~約500nm、約500~約600nm、約600~約700nm、約700~約800nm、またはそれらの組み合わせの範囲の1種以上の波長を含んでなることを規定する。これは、製造環境において約300nm~約440nmの範囲の紫外線(UV)照射に曝される場合のプリント回路工業(例えばフォトレジストおよびソルダマスク)において使用されている現在入手可能なドライポリマーフォトポリマーの機能と一致する。
【0068】
他の実施形態は、例えば集束790nmレーザーを使用して、二又は三光子エネルギー源によって組成物を活性化して、この多光子吸収を使用して描かれた三次元構造体が得られ得ることを規定する。位相マスクリソグラフィおよび近接場ナノパターニングなどの干渉リソグラフィ技術を含む、他の多光子リソグラフィ法も使用し得る。ナノインプリントリソグラフィ、基体コンフォーマルインプリントリソグラフィ、誘導放出、および空乏リソグラフィを含む他のパターニング法もまた、本発明の組成物および方法と併せて使用することができる方法である。
【0069】
特に、ナノインプリントリソグラフィは、ナノ構造層を複製するために広く使用されている技術である。当該技術は、インプリントスタンプを何度も再利用できるという利点を有する。スタンプの「マスター」を作製するという時間のかかるプロセスは、一度だけ実行すればよく、工業規模のマイクロ加工およびナノ加工に適用可能な迅速な複製が可能になる。当該方法は、本発明の方法および組成物に適用可能であることが示されており、そのため化学的に機能性のナノ構造体の迅速かつ大面積の製造が可能になる。
【0070】
同様に、これらのフィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒は、上述の範囲のうちの1つ、例えば約220~440nmの範囲の1種以上の波長の1mW/cm~10W/cm、好ましくは約10mW/cm~200mW/cmの範囲の強度を有する光を照射された後に活性化する。いくつかの系では、特定の触媒および/またはオレフィンの反応性に応じて、太陽光のエネルギーは、これらの材料を活性化するのに充分である。本明細書に記載の触媒は、これらのレベルに到達する必要がある場合は、これらのレベルで機能すると予想される。
【0071】
不飽和前駆体
【0072】
本開示の方法はまた、本明細書に記載のフィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒を、1種以上の不飽和有機前駆体の存在下で溶媒に溶解し得るか、または1種以上の不飽和有機前駆体に混合もしくは溶解することも考慮に入れる。本明細書で使用される場合、用語「1種以上の不飽和有機前駆体」は、分子またはオリゴマー単位あたり1以上のオレフィン(アルケン)または1以上のアセチレン(アルキン)結合をそれぞれ含んでなる、1以上の分子化合物もしくはオリゴマー、またはそれらの組み合わせを意味することが意図されている。これらの前駆体は、環式もしくは脂環式シス-もしくはトランス-オレフィン、もしくは環式もしくは脂環式アセチレン、または両方の種類の結合を有する構造(脂環式もしくは環式エニンを含む)を含んでなる。
【0073】
感光性重合性組成物はまた、重合性材料マトリックス内に溶解または混合されているものとしても記載され得る。当該マトリックスは、分子、オリゴマー単位、またはポリマー単位あたり1以上のオレフィン(アルケン)または1以上のアセチレン(アルキン)結合を含むという条件の下に、当該マトリックスは、ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組み合わせを含んでなるものを含む。当該組成物は、架橋ポリマーを含み得る。場合によっては、重合材料と非重合材料との混合物は、ポリマー前駆体の不完全な重合から生じ得る。他の場合において、重合材料および非重合材料は化学的に無関係であり得る。
【0074】
本発明の組成物および方法は、アルキニル前駆体も含んでなり得る。本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」(もしくは「アセチレン」)または「アルキン」は、エチニル、n-プロピニルなどの1以上の三重結合を含む直鎖状もしくは分岐状炭化水素基または2~約24の炭素原子の化合物を指す。好ましいアルキニル基は、2~約12個の炭素原子を含み、好ましくは末端アルキン結合を含む。用語「低級アルキニル」は、2~6個の炭素原子のアルキニル基を指す。用語「置換型アルキニル」は、1以上の置換基で置換されたアルキニルを指す。本明細書で使用される場合、用語「必要に応じた(optional)」または「もよい(optionally)」は、続いて記載されている状況が発生してもしなくてもよいことを意味し、そのため、記載には、状況が発生する場合と状況が発生しない場合とが含まれる。例えば、句「置換されていてもよい」は、所与の原子上に非水素置換基が存在してもしなくてもよいことを意味し、したがって、本記載は、非水素置換基が存在する構造と非水素置換基が存在しない構造とを含む。
【0075】
オレフィン前駆体は、アルキンと共に使用され、原料混合物の一部として使用されるか、または生成ポリマーの逐次処理において使用され得る。当該前駆体の好適な選択肢は、環系、特に、ROMP反応に有用である歪んだ環系である。これに関するこのような種類の化合物の1つは、シクロオクタテトラエン自体を含む、置換型または非置換型シクロオクタテトラエンである。
【0076】
上述のように、このようなオレフィンまたはアセチレン前駆体の好適な選択肢には、環系、特に、ROMP反応に有用である歪んだ環系が含まれる。このような環式オレフィンは、単環式(モノ環式)、二環式(ジ環式)、または多環式(ポリ環式)であり得る、置換されていてもよい、ヘテロ原子を含有していてもよい、モノ-不飽和である、ジ-不飽和である、またはポリ-不飽和である、C~C24炭化水素であり得る。環式オレフィンが、単独で、またはROMP環式オレフィン組成物の一部として、ROMP反応に関与することができるという条件の下で、環式オレフィンは、通常、歪んだ、または歪みのない環式オレフィンであり得る。シクロヘキセンなどの特定の歪みのない環式オレフィンは、それ自体ではROMP反応を経ないと一般に理解されているが、それでも、適当な状況下では、このような歪みのない環式オレフィンは、ROMP活性であり得る。例えば、ROMP組成物中にコモノマーとして存在する場合、歪みのない環式オレフィンはROMP活性であり得る。したがって、本明細書で使用される場合、および当業者によって理解される場合、用語「歪みのない環式オレフィン」は、環式オレフィンがROMP活性であるという条件の下で、任意の条件下で、または任意のROMP組成物で、ROMP反応を経得る歪みのない環式オレフィンを指すことが意図されている。
【0077】
一般に、環式オレフィンは式(A)の構造によって表され得、
【化14】
式中、J、RA1、およびRA2は、以下である。
【0078】
A1およびRA2は、水素、ヒドロカルビル(例えば、C~C20アルキル、C~C20アリール、C~C30アラルキル、またはC~C30アルカリール)、置換型ヒドロカルビル(例えば、置換型C~C20アルキル、C~C20アリール、C~C30アラルキル、またはC~C30アルカリール)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C~C20ヘテロアルキル、C~C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C~C30アラルキル、またはヘテロ原子含有C~C30アルカリール)、および置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C~C20ヘテロアルキル、C~C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C~C30アラルキル、またはヘテロ原子含有C~C30アルカリール)からなる群から独立に選択され、置換型ヒドロカルビルまたは置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビルである場合、置換基は、官能基(「Fn」)、例えば、アルケン、アルキン、ホスホナト、ホスホリル、ホスファニル、ホスフィノ、スルホナト、C~C20アルキルスルファニル、C~C20アリールスルファニル、C~C20アルキルスルホニル、C~C20アリールスルホニル、C~C20アルキルスルフィニル、C~C20アリールスルフィニル、スルホンアミド、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシル、C~C20アルコキシ、C~C20アリールオキシ、C~C20アルコキシカルボニル、C~C20アリールオキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシラト、メルカプト、ホルミル、C~C20チオエステル、シアノ、シアナト、チオシアナト、イソシアネート、チオイソシアネート、カルバモイル、エポキシ、スチレニル、シリル、シリルオキシ、シラニル、シロキサザニル(siloxazanyl)、ボロナト、ボリル、またはハロゲン、または金属含有もしくは半金属含有基(ここで、金属は、例えば、SnまたはGeであり得る)であり得る。RA1およびRA2自体は、Fn基が構造中に示されているオレフィンの炭素原子に直接結合するように、前述の基のうちの1つであり得る。しかしながら、後者の場合、官能基は、通常、1以上の孤立電子対を含むヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、窒素、もしくはリン原子を介して、または電子の豊富な金属もしくは半金属、例えばGe、Sn、As、Sb、Se、Teなどを介して、オレフィン炭素に直接結合はしない。このような官能基では、通常、介在する結合Zが存在し、そのため、RA1および/またはRA2は、構造-(Z-Fnを有し、式中、nは1であり、Fnは官能基であり、Zはヒドロカルビレン結合基、例えば、アルキレン、置換型アルキレン、ヘテロアルキレン、置換型ヘテロアルケン、アリーレン、置換型アリーレン、ヘテロアリーレン、または置換型ヘテロアリーレン結合である。
【0079】
Jは、飽和または不飽和ヒドロカルビレン、置換型ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、または置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン結合であり、ここで、Jが置換型ヒドロカルビレンまたは置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンである場合、置換基は1以上の-(Z-Fn基を含み得、式中、nはゼロまたは1であり、FnおよびZは上記で定義した通りである。さらに、J内の環炭素(または他の)原子に結合した2以上の置換基が結合して二環式(ビ環式)または多環式(ポリ環式)オレフィンを形成してもよい。単環式(モノ環式)オレフィンでは、Jは、通常、約5~14個の範囲の環原子、典型的には5~8個の環原子を含み、二環式および多環式オレフィンでは、各環は通常4~8個、典型的には5~7個の環原子を含む。
【0080】
構造(A)によって包含されるモノ-不飽和環式オレフィンは、構造(B)によって表され得、
【化15】
式中、bは、必ずしもそうとは限らないが通常1~10、典型的には1~5の範囲の整数である。
【0081】
A1およびRA2は、構造(A)について上記で定義した通りであり、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、およびRB6は、水素、ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および-(Z-Fnからなる群から独立して選択され、ここで、ZおよびFnは、上記で定義した通りであり、RB1~RB6基のいずれかが置換型ヒドロカルビルまたは置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビルである場合、置換基は1以上の-(Z-Fn基を含み得る。したがって、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、およびRB6は、例えば、水素、ヒドロキシル、C~C20アルキル、C~C20アリール、C~C20アルコキシ、C~C20アリールオキシ、C~C20アルコキシカルボニル、C~C20アリールオキシカルボニル、アミノ、アミド、ニトロなどであり得る。
【0082】
さらに、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、およびRB6基のいずれかを他のRB1、RB2、RB3、RB4、RB5、およびRB6基のいずれかに結合させて、4~30個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換型脂環式基、もしくは6~18個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換アリール基、またはそれらの組み合わせを得ることができ、結合は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、結合は、限定はされないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水基を含み得る。脂環式基は、単環式、二環式、または多環式であることができる。不飽和の場合、環式基はモノ不飽和またはマルチ不飽和を含むことができ、モノ不飽和環式基が好ましい。環は、置換型の場合、一置換型または多置換型を含み、ここで、置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z-Fnから独立して選択され、ここで、nはゼロまたは1であり、ZおよびFnは、上記で定義した通りであり、官能基(Fn)は、上記で与えられている。
【0083】
構造(B)が包含するモノ-不飽和単環式オレフィンの例として、限定はされないが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン、およびシクロエイコセン、およびそれらの置換型、例えば、1-メチルシクロペンテン、1-エチルシクロペンテン、1-イソプロピルシクロヘキセン、1-クロロペンテン、1-フルオロシクロペンテン、4-メチルシクロペンテン、4-メトキシ-シクロペンテン、4-エトキシ-シクロペンテン、シクロペンタ-3-エン-チオール、シクロペンタ-3-エン、4-メチルスルファニル-シクロペンテン、3-メチルシクロヘキセン、1-メチルシクロオクテン、1,5-ジメチルシクロオクテンなどが挙げられる。
【0084】
構造(A)が包含する単環式(モノ環式)ジエン反応物は、通常構造(C)によって表され得、
【化16】
式中、cおよびdは、独立して1~約8、典型的には2~4の範囲の整数であり、好ましくは(反応物がシクロオクタジエンであるように)2であり、RA1およびRA2は、構造(A)について上記で定義した通りであり、RC1、RC2、RC3、RC4、RC5、およびRC6は、RB1からRB6について定義した通りである。この場合、RC3およびRC4が非水素置換基であることが好ましく、その場合、第2のオレフィン基は四置換型である。単環式ジエン反応物の例として、限定はされないが、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、5-エチル-1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,3-シクロオクタジエン、およびそれらの置換型類似体が挙げられる。トリエン反応物は、ジエン構造(C)に類似しており、通常、オレフィンのいずれか2つのセグメント間に1以上のメチレン結合を含む。
構造(A)が包含する二環式(ビ環式)および多環式(ポリ環式)オレフィンは、通常構造(D)によって表され得、
【化17】
A1およびRA2は、構造(A)について上記で定義した通りであり、RD1、RD2、RD3、およびRD4は、RB1からRB6について定義した通りであり、eは、1~8(典型的には2~4)の範囲の整数であり、fは通常1または2であり、Tは、低級アルキレンもしくはアルケニレン(通常置換型もしくは非置換型メチルもしくはエチル)、CHRG1、C(RG12、O、S、N-RG1、P-RG1、O=P-RG1、Si(RG1、B-RG1、またはAs-RG1であり、式中、RG1は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリール、アラルキル、またはアルコキシである。さらに、RD1、RD2、RD3、およびRD4基のいずれかを他のRD1、RD2、RD3、およびRD4基のいずれかに結合させて、4~30個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換型脂環式基、もしくは6~18個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換アリール基、またはそれらの組み合わせを得ることができ、結合は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、結合は、限定はされないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水基を含み得る。環式基は、単環式、二環式、または多環式であることができる。不飽和の場合、環式基はモノ不飽和またはマルチ不飽和を含むことができ、モノ不飽和環式基が好ましい。環は、置換型の場合、一置換型または多置換型を含み、ここで、置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z*n-Fnから独立して選択され、ここで、nはゼロまたは1であり、ZおよびFnは、上記で定義した通りであり、官能基(Fn)は、上記で与えられている。
【0085】
構造(D)が包含する環式オレフィンは、ノルボルネンファミリーである。本明細書で使用される場合、ノルボルネンは、1以上のノルボルネンまたは置換型ノルボルネン基を含む化合物、例えば、限定はされないが、ノルボルネン、置換型ノルボルネン、ノルボルナジエン、置換型ノルボルナジエン、多環式ノルボルネン、および置換型多環式ノルボルネンを意味する。当該群内のノルボルネンは、通常、構造(E)によってあらわされ得、
【化18】
式中、RA1およびRA2は、構造(A)について上記で定義した通りであり、Tは構造(D)について上記で定義した通りであり、RE1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6、RE7、およびRE8は、RB1~RB6について定義した通りであり、「a」は、単結合または二重結合を表し、fは、通常、1または2であり、「g」は0~5の整数であり、「a」が二重結合の場合は、RE5、RE6の一方とRE7、RE8の一方は、存在しない。
さらに、RE5、RE6、RE7、およびRE8基のいずれかを他のRE5、RE6、RE7、およびRE8基のいずれかに結合させて、4~30個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換型脂環式基、もしくは6~18個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換アリール基、またはそれらの組み合わせを得ることができ、結合は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、結合は、限定はされないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水基を含み得る。環式基は、単環式、二環式、または多環式であることができる。環式基は、不飽和の場合、モノ不飽和またはマルチ不飽和を含むことができ、モノ不飽和環式基が好ましい。環は、置換型の場合、一置換型または多置換型を含み、ここで、置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z*n-Fnから独立して選択され、ここで、nはゼロまたは1であり、ZおよびFnは、上記で定義した通りであり、官能基(Fn)は、上記で与えられている。
【0086】
1以上のノルボルネン基を有するより好ましい環式オレフィンは、構造(F)を有し、
【化19】
式中、RF1、RF2、F3、およびRF4は、RB1~RB6について定義した通りであり、「a」は、単結合または二重結合を表し、「g」は0~5の整数であり、「a」が二重結合の場合は、RF1、RF2の一方とRF3、RF4の一方は、存在しない。
【0087】
さらに、RF1、RF2、RF3、およびRF4基のいずれかを他のRF1、RF2、RF3、およびRF4基のいずれかに結合させて、4~30個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換型脂環式基、もしくは6~18個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換アリール基、またはそれらの組み合わせを得ることができ、結合は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、結合は、限定はされないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水基を含み得る。脂環式基は、単環式、二環式、または多環式であることができる。環式基は、不飽和の場合、モノ不飽和またはマルチ不飽和を含むことができ、モノ不飽和環式基が好ましい。環は、置換型の場合、一置換型または多置換型を含み、ここで、置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z-Fnから独立して選択され、ここで、nはゼロまたは1であり、ZおよびFnは、上記で定義した通りであり、官能基(Fn)は、上記で与えられている。
【0088】
ヒドロカルビル置換型および官能基置換型ノルボルネンを調製するための1つの経路は、一般に以下の反応スキーム1に示される、シクロペンタジエンまたは置換型シクロペンタジエンを好適なジエノフィルと高温で反応させて、置換型ノルボルネン付加物を形成するディールス-アルダー付加環化反応を用いる。
スキーム1
【化20】
ここで、RF1~RF4は、構造(F)について上記で定義した通りである。
【0089】
他のノルボルネン付加物は、好適なジエノフィルの存在下でのジシクロペンタジエンの熱分解によって調製することができる。ジシクロペンタジエンのシクロペンタジエンへの最初の熱分解、それに続くシクロペンタジエンとジエノフィルとのディールス-アルダー付加環化によって反応が進行し、以下のスキーム2に示される付加物が得られる。
スキーム2
【化21】
ここで、「g」は0~5の整数であり、RF1~RF4は、構造(F)について上記で定義した通りである。
【0090】
ノルボルナジエンおよびその高級ディールス-アルダー付加物は、以下のスキーム3に示されるように、アセチレン系反応物の存在下でのシクロペンタジエンとジシクロペンタジエンとの熱反応によって同様に調製することができる。
スキーム3
【化22】
ここで、「g」は0~5の整数であり、RF1~RF4は、構造(F)について上記で定義した通りである。したがって、二環式および多環式オレフィンの例として、限定はされないが、ジシクロペンタジエン(DCPD);シクロペンタジエンの三量体および他の高次オリゴマー、例えば、限定はされないが、トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエン三量体)、シクロペンタジエン四量体、およびシクロペンタジエン五量体;エチリデンノルボルネン;ジシクロヘキサジエン;ノルボルネン;5-メチル-2-ノルボルネン;5-エチル-2-ノルボルネン;5-イソブチル-2-ノルボルネン;5,6-ジメチル-2-ノルボルネン;5-フェニルノルボルネン;5-ベンジルノルボルネン;5-アセチルノルボルネン;5-メトキシカルボニルノルボルネン;5-エトキシカルボニル(ethyoxycarbonyl)-1-ノルボルネン;5-メチル-5-メトキシ-カルボニルノルボルネン;5-シアノノルボルネン;5,5,6-トリメチル-2-ノルボルネン;シクロ-ヘキセニルノルボルネン;エンド,エキソ-5,6-ジメトキシノルボルネン;エンド,エンド-5,6-ジメトキシノルボルネン;エンド,エキソ-5,6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;エンド,エンド-5,6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;2,3-ジメトキシノルボルネン;ノルボルナジエン;トリシクロウンデセン;テトラシクロドデセン;8-メチルテトラシクロドデセン;8-エチルテトラシクロドデセン;8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン;8-メチル-8-テトラシクロドデセン;8-シアノテトラシクロドデセン;ペンタシクロペンタデセン;ペンタシクロヘキサデセン;および同種のもの、ならびにそれらの構造異性体、立体異性体、およびそれらの混合物が挙げられる。二環式および多環式オレフィンの他の例として、限定はされないが、C~C12ヒドロカルビル置換型ノルボルネン、例えば、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-オクチル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-ドデシル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、および5-ブテニル-2-ノルボルネン、ならびに同種のものが挙げられる。
【0091】
好ましい環式オレフィンには、C~C24不飽和炭化水素が含まれる。1以上(典型的には2~12)のO、N、S、またはPなどのヘテロ原子を含むC~C24環式炭化水素もまた好ましい。例えば、クラウンエーテル環式オレフィンは、環全体にわたって多数のOヘテロ原子を含み得、これらは本開示の範囲内である。また、好ましい環式オレフィンは、1以上(典型的には2または3)のオレフィンを含むC~C24炭化水素である。例えば、環式オレフィンは、モノ-、ジ-、またはトリ-不飽和であり得る。環式オレフィンの例として、シクロオクテン、シクロドデセン、および(c,t,t)-1,5,9-シクロドデカトリエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
環式オレフィンはまた、複数(典型的には2または3)の環を含んでなり得る。例えば、環式オレフィンは、モノ-、ジ-、またはトリ-環式であり得る。環式オレフィンが1を超える環を含んでなる場合、環は縮合していても、縮合していなくてもよい。複数の環を含んでなる環式オレフィンの好ましい例として、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、および5-エチリデン-2-ノルボルネンが挙げられる。
【0093】
環式オレフィンはまた、置換型、例えば、1以上(典型的には2、3、4、または5)の水素が非水素置換基で置換されているC~C24環式炭化水素であり得る。好適な非水素置換基は、上記の置換基から選択され得る。例えば、官能化環式オレフィン、すなわち、1以上(典型的には2、3、4、または5)の水素が官能基で置換されているC~C24環式炭化水素は、本開示の範囲内である。好適な官能基は、上記の官能基から選択され得る。例えば、アルコール基で官能化されている環式オレフィンを使用して、ペンダントアルコール基を含んでなるテレケリックポリマーを調製し得る。環式オレフィン上の官能基を、官能基がメタセシス触媒を妨害する場合には、保護してもよく、当該分野において一般的に使用されている保護基のいずれかを使用し得る。許容される保護基は、例えば、Greene et al., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed. (New York: Wiley, 1999)に見られ得る。保護基の非限定的なリストには、(アルコール用)アセチル、ベンゾイル、ベンジル、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル、[ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル,MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル(トリフェニルメチル,Tr)、シリルエーテル(最も一般的なものには、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)が含まれる)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテル、(アミン用)tert-ブチルオキシカルボニルグリシン、カルボベンジルオキシ(Cbz)基、p-メトキシベンジルカルボニル(MozまたはMeOZ)基、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)基、アセチル(Ac)基、ベンゾイル(Bz)基、ベンジル(Bn)、カルバメート基、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)基、トシル(Ts)基、(カルボニル用)アセタールおよびケタール、アシラール、ジチアン、(カルボン酸用)メチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル、2,6-二置換型フェノールのエステル(例えば、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、シリルエステル、オルトエステル、オキサゾリン、(ホスフェート用)2-シアノエチル、およびメチルが含まれる。アルギニン(Arg)側鎖という特定の場合において、塩基性グアニジニウム(quanidinium)基が副反応を起こす傾向があるため、保護が重要である。本明細書に記載の場合において、有効な保護基には、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン(Pmc)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン(Pbf)、および1,2-ジメチルインドール-3-スルホニル(MIS)基が含まれる。
【0094】
官能化環式オレフィンの例として、限定はされないが、2-ヒドロキシメチル-5-ノルボルネン、2-[(2-ヒドロキシエチル)カルボキシレート]-5-ノルボルネン、シデカノール(cydecanol)、5-n-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-n-ブチル-2-ノルボルネンが挙げられる。
【0095】
上記の特徴(すなわち、ヘテロ原子、置換基、複数のオレフィン、複数の環)の任意の組み合わせを組み込んだ環式オレフィンは、本明細書に開示されている方法に適している。また、上記の特徴(すなわち、ヘテロ原子、置換基、複数のオレフィン、複数の環)の任意の組み合わせを組み込んだ環式オレフィンは、本明細書に開示されている発明に適している。
【0096】
本明細書に開示されている方法に有用な環式オレフィンは、歪んでいてもよく、または歪みがなくてもよい。環歪みの量は、各環式オレフィン化合物によって異なり、環の大きさ、置換基の存在および同一性、ならびに複数の環の存在を含む多数の要因に依存することが理解されよう。環歪みは、開環オレフィンメタセシス反応に対する分子の反応性を決定する1つの要因である。特定の二環式化合物などの歪み度合の高い環式オレフィンは、オレフィンメタセシス触媒との開環反応を起こしやすい。特定の非置換型炭化水素単環式オレフィンなどの歪み度合の低い環式オレフィンは、通常、反応性が低い。場合によっては、本明細書に開示されているオレフィン化合物の存在下で行われると、比較的歪みのない(したがって比較的非反応性の)環式オレフィンの開環反応が可能になり得る。
【0097】
メタセシスポリマーを調製するために、本開示と共に複数の環式オレフィンを使用し得る。例えば、上記の環式オレフィンから選択された2つの環式オレフィンを、両方の環式オレフィンを組み込んだメタセシス生成物を形成するために、使用し得る。2以上の環式オレフィンを使用する場合、第2の環式オレフィンの一例は、環式アルケノール、すなわち、1以上の水素置換基をアルコールまたは保護されたアルコール基で置換して、官能化環式オレフィンが得られるC~C24環式炭化水素である。
【0098】
複数の環式オレフィンの使用は、特に1以上の環式オレフィンが官能化されている場合、生成物内の官能基の配置をさらに制御することを可能にする。例えば、架橋点の密度を、本明細書に開示されている方法を用いて調製されるポリマーおよびマクロモノマーにおいて制御することができる。置換基および官能基の量および密度を制御することにより、生成物の物理的性質(例えば、融点、引張強度、ガラス転移温度など)を制御することも可能になる。これらおよび他の特性に対する制御は、単一の環式オレフィンのみを使用する反応について可能であるが、複数の環式オレフィンの使用は、可能なメタセシス生成物および形成されるポリマーの範囲をさらに広げることが理解されよう。
【0099】
より好ましい環式オレフィンには、ジシクロペンタジエン;トリシクロペンタジエン;ジシクロヘキサジエン;ノルボルネン;5-メチル-2-ノルボルネン;5-エチル-2-ノルボルネン;5-イソブチル-2-ノルボルネン;5,6-ジメチル-2-ノルボルネン;5-フェニルノルボルネン;5-ベンジルノルボルネン;5-アセチルノルボルネン;5-メトキシカルボニルノルボルネン;5-エトキシカルボニル-1-ノルボルネン;5-メチル-5-メトキシ-カルボニルノルボルネン;5-シアノノルボルネン;5,5,6-トリメチル-2-ノルボルネン;シクロ-ヘキセニルノルボルネン;エンド,エキソ-5,6-ジメトキシノルボルネン;エンド,エンド-5,6-ジメトキシノルボルネン;エンド,エキソ-5-6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;エンド,エンド-5,6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;2,3-ジメトキシノルボルネン;ノルボルナジエン;トリシクロウンデセン;テトラシクロドデセン;8-メチルテトラシクロドデセン;8-エチル-テトラシクロドデセン;8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン;8-メチル-8-テトラシクロ-ドデセン;8-シアノテトラシクロドデセン;ペンタシクロペンタデセン;ペンタシクロヘキサデセン;シクロペンタジエンの高次オリゴマー、例えば、シクロペンタジエン四量体、シクロペンタジエン五量体、および同種のもの;ならびにC~C12ヒドロカルビル置換型ノルボルネン、例えば、5-ブチル-2-ノルボルネン;5-ヘキシル-2-ノルボルネン;5-オクチル-2-ノルボルネン;5-デシル-2-ノルボルネン;5-ドデシル-2-ノルボルネン;5-ビニル-2-ノルボルネン;5-エチリデン-2-ノルボルネン;5-イソプロペニル-2-ノルボルネン;5-プロペニル-2-ノルボルネン;および5-ブテニル-2-ノルボルネン、ならびに同種のものが含まれる。 さらにより好ましい環式オレフィンには、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ならびにシクロペンタジエンの高次オリゴマー、例えば、シクロペンタジエン四量体、シクロペンタジエン五量体、および同種のもの、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、ならびにC~C12ヒドロカルビル置換型ノルボルネン、例えば、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-オクチル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-ドデシル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-ブテニル-2-ノルボルネン、および同種のものが含まれる。
【0100】
特定の実施形態では、これらの構造A~Fのそれぞれは、互いに架橋することができる、または架橋剤が添加されるペンダント置換基をさらに含んでなり得る。例えば、RA1、RA2、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、RB6、RC1、RC2、RC3、RC4、RC5、RC6、RD1、RD2、RD3、RD4、RE1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6、RE7、RE8、RF1、RF2、RF3、およびRF4は、独立して、メタセシス条件下でそれら自体または他の不飽和基と架橋することができるオレフィン結合またはアセチレン結合を含むペンダントヒドロカルビル鎖を表し得る。さらに、構造A~F内で、1対以上の置換基、RB1とRB2、RB3とRB4、およびRB5とRB6、RC1とRC2、RC5とRC6、RD2とRD3、RE5とRE6、RE7とRE8、RF1とRF2、およびRF3とRF4は、共に、置換されていてもよい環外二重結合、例えば、/=CH(C1~6-Fn)を形成することができる。この概念は、実施例において具体的に例示されており、当該実施例では、構造(F)の化合物であって、aが単結合であり、gが0であり、RF1=RF2=Hであり、かつRF3とRF4が共に/=CH(エチル)を形成する前記化合物を、シクロオクタジエンのオリゴマーと反応させている。
【0101】
本発明の方法において代替のオレフィン前駆体を検討する場合、より好ましい前駆体は、ポリアセチレンポリマーまたはコポリマーに組み込まれたときに、得られるポリマーの電気的または物理的特性を改変する前駆体であり得る。このような前駆体の一つの一般的な種類は、置換型アンヌレンおよびアンヌリン(annulyne)、例えば[18]アンヌレン-1,4;7,10;13,16-トリスルフィドである。アセチレンと共重合すると、この前駆体は、以下に示すようにブロックコポリマーを形成することができる。
【化23】
【0102】
以下に記載のこれらのトリスルフィドの置換型類似体を使用して、対応する置換型ポリ(チエニルビニレン)含有ポリマーまたはコポリマーを得ることもできる。例えば、[18]アンヌレン-1,4;7,10;13,16-トリスルフィドの2,3,8,9,14,15-ヘキサオクチル誘導体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用されるHorie, et al., “Poly(thienylvinylene) prepared by ring-opening metathesis polymerization: Performance as a donor in bulk heterojunction organic photovoltaic devices,” Polymer 51 (2010) 1541-1547に記載されている。
【化24】
【0103】
特定の実施形態では、不飽和有機前駆体は、構造:
【化25】
を有する純粋な炭化水素化合物またはその混合物を含んでなり、式中、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、Hまたはアルキル(好ましくはC1~20アルキル、より好ましくはC1~10アルキル)である。
【0104】
不飽和有機前駆体は、ジシクロペンタジエン構造、例えば:
【化26】
を有する炭化水素化合物も含んでなり得、式中、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、Hまたはアルキル(好ましくはC1~20アルキル、より好ましくはC1~10アルキル)である。このような前駆体から生じるこのようなポリマーの一つは、構造:
【化27】
を有する単位を含んでなる。図3Aを参照されたい。
【0105】
これらの炭化水素前駆体は、例えば最終重合生成物またはそれから誘導された物品が攻撃的な化学的条件(aggressive chemical conditions)に付されることになっている場合に、特に魅力的である。例えば、ジシクロペンタジエン構造から製造されたパターン化生成物またはそれらから誘導された物品は、HF水溶液に耐えるのに特に有効であり、そのため、それらは、半導体または他の電子的処理におけるエッチングマスクとしての使用に特に魅力的となっている。用語「HF水溶液に耐性」は、当業者が理解している実際的な意味合いを有すると考えられる。すなわち、パターン化ポリマー層は、エッチング処理において実際に有用であるのに充分な時間にわたってHFに耐える(もしくは保護表面からのフッ化物イオンの拡散を遅くする)のに充分にロバストであるか、または当該ポリマー層は、意味がある程度には溶解しないか、または架橋ポリマーマトリックスは、HF(およびフッ化物イオン)の拡散を遅くして、これらの反応種から表面を保護することができる。また、HF水溶液自体は、その濃度によって特徴付けられ得、様々な実施形態において、濃度は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または48重量%であり得る。例えば、本開示のこのような組成物を用いる実験では、30ミクロンのポストを二酸化ケイ素(ガラス)中で1分未満で選択的にエッチングすることが可能であった。別段の定めがない限り、用語「HF水溶液に耐性」は、基体からの測定可能な剥離なしに、室温(すなわち、約20~25℃)で1時間の間、HF水溶液への暴露に耐えることができることと定義される。明記されている場合、当該用語は、より長い(例えば、2、3、4、5、6、12、24、48、または96時間)、またはより短い(例えば、1、5、10、20、30、40、または50分)暴露時間に関して、このように定義される場合もある。このような材料はまた、非常に強靭で耐久性があり、防弾チョッキおよび(例えば、風力タービンブレードに使用される)炭素繊維複合材料における用途において使用され得る。
【0106】
他の実施形態では、不飽和重合性材料マトリックスは、単官能、二官能、または多官能の環式または脂環式のアルケンまたはアルキン、すなわち、官能基を含むもの、例えば、アルコール、アミン、アミド、カルボン酸およびエステル、ホスフィン、ホスホネート、スルホネート、または同種のものを含み得る。置換されていてもよいビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3,ジカルボン酸ジエステル、7-オキサ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3,ジカルボン酸ジエステル、4-オキサ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、4,10-ジオキサ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、4-アザ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、10-オキサ-4-アザ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、または単純な二置換型アルケン、例えばビスホスフィンは、良好な結果をもたらし得る。特定の実施形態では、これらの官能化アルケンには、
【化28-1】
【化28-2】
などの構造を有するものが含まれ、
ここで、
式中、
Zは、-O-、またはC(R)(R)であり、
は、独立してHであるか、または-N(R)(R)、-O-R、-C(O)O-R、-OC(O)-(C1~6アルキル)、もしくは-OC(O)-(C6~10アリール)で末端が置換されていてもよいC1~6アルキル、または(好ましくはR-G-Dもしくはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を含む)保護されていてもよい3~10のアミノ酸の配列であり、
Wは、独立して、-N(R)(R)、-O-R、または-C(O)O-R、-P(O)(OR、-SO(OR)、またはSO であり、
およびRは、独立して、HまたはC1~6アルキルであり、
6~10アリールは、1、2、3、4、または5の保護されていてもよいヒドロキシル基(保護されたヒドロキシル基は好ましくはベンジルである)で置換されていてもよく、
nは、独立して、1、2、3、4、5、または6である。
【0107】
このような官能化材料の非限定的な例として、
【化29-1】
【化29-2】
または
【化30】
が挙げられ、式中、Bnはベンジルであり、tBuはtert-ブチルであり、Pbfは2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフランである。他の保護基も用い得る。
【0108】
このような官能基の組み込みは、予備重合組成物または重合組成物のさらなる官能化を与え、それによってこのような組成物に利用可能な用途の選択肢を大幅に拡大する。したがって、このような官能基は、例えば、天然または合成アミノ酸配列などの他の材料の付加のための連結点として使用することができる。特定の実施形態では、Rは、以下を含むようにさらに官能化されていることができる。
【化31】
【0109】
予備重合組成物から調製された重合生成物(パターン化されていてもよい二次元コーティングまたはパターン化されていてもよい三次元構造体)は、薬剤送達または組織再生のためのスキャフォールドとして有用であり得る。(好ましくはR-G-Dまたはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を含む)3~10のアミノ酸の保護されていてもよいペンダント配列を含んでなるフィルムまたは物品は、組織再生用途に有用であることが知られており、本発明の組成物および方法は、これらの材料への利便性の高い経路を提供する。
【0110】
官能化材料を感光性重合性マトリックスから誘導されたポリマーマトリックス(フィルムまたは3次元物品)に組み込むまたはペンダント化するというこの概念に基づいて、本発明者らはまた、触媒有機金属材料をこのようなマトリックスに組み込むことが可能であることを発見した。特に、本発明は、1種以上の不飽和有機前駆体および1種以上の不飽和係留有機金属前駆体、または配位して有機金属前駆体(例えば、ビニルビピリジン、ビスホスフィン、およびカルベン前駆体)を形成することができるリガンドを含んでなる重合性材料マトリックスに混合または溶解したフィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒を含んでなる感光性組成物であって、各有機および有機金属前駆体が、1以上のアルケンまたは1以上のアルキン結合を有する、前記感光性組成物を企図する。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「不飽和係留有機金属前駆体」は、重合マトリックスに組み込まれ得るペンダントアルケンまたはアルキン基を有する有機金属錯体を指すと定義される。有機金属材料、例えば触媒材料を係留するというこの概念は、化学においてよく理解されており、斯くして、このような係留の方法は、均質な触媒を固定マトリックス(例えば、シリカまたはアルミナ)上に固定するためにしばしば用いられている。「係留」または「係留基」とは、結合基、例えば、ヒドロカルビレン結合基、例えば、アルキレン、置換型アルキレン、ヘテロアルキレン、置換型ヘテロアルケン、アリーレン、置換型アリーレン、ヘテロアリーレン、または置換型ヘテロアリーレン結合、例えば、アルキレン、アリーレン、アミド、アミノ、またはカルボキシラトを指すことを当業者は理解する。結合基の具体的な性質は、結合基が重合マトリックスに組み込まれ得る反応性アルケンまたはアルキン基を含む限り、必ずしも限定的であるとは考えられない。
【0112】
いくつかの実施形態では、有機金属部分は、3族から12族の遷移金属、好ましくはFe、Co、Ni、Ti、Al、Cu、Zn、Ru、Rh、Ag、Ir、Pt、Au、またはHgを含んでなる。好ましい実施形態では、有機金属部分は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Ag、Ir、Pt、またはAuを含んでなる。有機金属部分は、単座、二座、または多座リガンドが重合マトリックスに組み込むことができるペンダントアルケンまたはアルキン基を含むという条件の下に、単座、二座、または多座リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、イミダゾリン(またはそれらのカルベン前駆体)、ホスフィン、ポリアミン、ポリカルボキシレート、窒素大環状化合物(例えばポルフィリンまたはコロール)が結合しているか、またはこれらを含有し得る。この概念の非限定的な例として、以下が挙げられる。
【化32】
【化33】
【0113】
このような有機金属が組み込まれた重合生成物の代表的な化学構造は、米国特許出願第14/505,824号に示されている。
【0114】
特定の実施形態では、有機金属部分は、酸化または還元条件下で有機基質の酸化または還元を触媒することができるように選択される。用語「酸化または還元条件」は、当分野の化学者が一般に理解しているのと同様であり、酸化剤(酸素、過酸化物など)または還元剤(水素、水素化物など)の存在を含んでなる条件を含む。このような酸化反応には、アルケンもしくはアルキンを酸化してアルコール、アルデヒド、カルボン酸もしくはエステル、エーテル、もしくはケトンを形成すること、または不飽和化合物へのハロゲン化水素もしくはシランの添加が含まれるが、これらに限定されない。このような酸化反応は、アルケンからアルカンへの還元、およびアルキンからアルケンまたはアルカンへの還元を含むが、これらに限定されない。特定のこれらの有機金属部分は、ペンダントメタセシスもしくはクロスカップリング触媒として、または水分解に使用され得る。
【0115】
メタセシス反応
【0116】
本開示が企図するメタセシス反応には、開環メタセシス重合(ROMP)、閉環メタセシス(RCM)、およびクロスメタセシス(CM)が含まれる。「オレフィンメタセシス」の言葉で説明されていることが多いが、オレフィン結合およびアセチレン結合の両方が当該反応に関与できることも理解されるべきであり、したがって本明細書で使用される場合、用語「オレフィンメタセシス」は、オレフィンまたはアセチレン結合の再分布を含むものとして解釈されるべきである。これらの種類の反応のそれぞれは、このような理解で当業者に周知である。
【0117】
(以下でさらに説明される)フォトレジストに関連して企図されている実施形態では、概して、空間的に特定の領域の架橋ポリマーを提供するための、例えばROMPまたはクロスメタセシスによる選択的重合に関して、説明が与えられている。しかし、光活性化触媒が利用可能なこの空間的および時間的選択性はまた、架橋することなく、例えば前駆体の部分的反応のみ、オレフィン前駆体とポリマーとのクロスメタセシスによって、または脱重合によって、照射領域の溶解特性を変えるためにも適用され得ることも理解されたい。
【0118】
フォトレジストを含む感光性組成物
【0119】
本明細書の説明により理解されるように、本開示のいくつかの特徴のうちの一つは、照射触媒と非照射触媒との間の活性の高いコントラストのために、驚くべき正確さで系の触媒活性を空間的および時間的に制御できることである。照射触媒の高い活性は、埋設された触媒が低濃度である場合でさえも、良好な活性を可能にする。いくつかの実施形態では、フィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒は、全組成物の重量に対して、約0.001重量%~約5重量%の範囲の濃度で存在する。この濃度範囲は、触媒および重合性材料前駆体の反応性、所望の取り扱い条件、ならびに所望の重合速度に依存する。特定の他の実施形態では、ルテニウムカルベンメタセシス触媒は、全組成物の重量に対して、約0.001重量%~約0.01重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、約0.1重量%~約1重量%、約1重量%~約2重量%、約2重量%~約3重量%、約3重量%~約4重量%、約4重量%~約5重量%、またはそれらの組み合わせの範囲の濃度で存在する。当該系はまた、より高い濃度、例えば全組成物の重量に対して最大約10または15重量%を可能にするが、ここで、コストにより、ほとんどの実用化が抑止され始める。
【0120】
上述のように、本開示の方法はまた、本明細書に記載のフィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒を、1種以上の不飽和有機前駆体の存在下で溶媒に溶解し得るか、または1種以上の不飽和有機前駆体に混合もしくは溶解することも考慮に入れる。使用者がフォトレジストとしてこれらの組成物の使用を企図する状況では、フィッシャー型触媒を有機前駆体に直接添加するか、または本明細書の他の箇所に記載のようにインサイチュで生じさせ得る。このインサイチュでの触媒の生成は、シュロック型カルベンを含有する触媒を得、続いてこれをクエンチしてフィッシャー型カルベン触媒を形成することを伴い得る。このような場合、触媒の生成は、最初に添加した有機前駆体の部分重合または架橋を伴い得、この部分重合または架橋された組成物の中間体粘度は、クエンチ前の時間によって制御し得る。感光性組成物の粘度を上げることは、粘度を上げなければ潜在的に空気の影響を受けやすい触媒の酸化安定性を改良することを含む、いくつかの利点を提供する。高められた粘度はまた、組成物を通る活性触媒種の拡散長を制御し、このことにより、リソグラフィで画定された構造体の解像度を改善することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、全組成物中での触媒のより効率的な混和が可能となるように初期粘度を低下させて維持するために、非反応性溶媒を使用するのが簡便である(塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエンなどの低沸点溶媒が好ましい場合がある)。本明細書に記載のフェナントロリン結合触媒誘導体の場合、水、アセトニトリル、およびクロロホルムを含む、より反応性の高い溶媒の使用が許容され得る。触媒が組成物中に緊密に分布したら、例えば真空下で、または加熱により、非反応性溶媒を簡便に除去し得る。場合によっては、フィッシャー型触媒を添加または調製したら、触媒をさらに希釈するために、追加の、または異なる有機前駆体を添加し得る。未露光最終生成物の粘度は、成分の種類および量によって調整し得る。例えば、いくつかの実施形態では、粘度は、組成物がスピンコーティング、ディップコーティング、またはスプレーに適するような粘度である。他の実施形態では、感光性組成物は、ゲル状、固体状、または半固体状のフィルムの形態を有することができる。様々な独立した実施形態において、企図される適用温度(好ましくは周囲室温)での組成物の粘度は、約1cSt~約10cSt、約10cSt~約50cSt、約50cSt~約100cSt、約100cSt~約250cSt、約250cSt~約500cSt、約500cSt~約1000cSt、約1000cSt~約2000cSt、約2000cSt~約5000cSt、またはそれ以上の範囲である。粘度が高いほど、ルテニウムカルベン触媒の酸化安定性が増すようである。
【0122】
オレフィンメタセシスをベースとするフォトレジストを開発する際の課題の一部は、明所と暗所での触媒の反応性の間の著しいコントラストを達成することである。さらに、周囲安定性および加工性の要件は、遷移金属系光触媒の工業的実施に対する障害を与える。本開示では、特定の実施形態は、ROMPまたはクロスメタセシス反応の標準的なクエンチ手順が、潜在性光活性触媒を生じることを規定する。この偶然の発見により、新しい種類の光硬化性材料を容易に合成できるようになる。置換型ビニルエーテルの添加は、広く使用されている、ROMPまたはクロスメタセシス反応のクエンチ方法である。例えば、ビニルエーテル錯体の位置選択的形成は、特定の条件下では極めて迅速かつ不可逆的であり、触媒開始速度を決定するためのツールとしてのビニルエーテル「捕捉」の使用をもたらす。得られるルテニウムフィッシャー型カルベンは、一般に、非反応性であると考えられている。いかなる特定の理論の正確性または非正確性にも拘束されるつもりはないが、リビングROMP反応をクエンチさせると、メチレン末端ポリマー鎖と、おそらく14電子のルテニウムビニルエーテルとが生じるようである。ルテニウムROMP触媒上に典型的に見られるホスフィンまたはピリジンリガンドは、原理的には、クエンチされた錯体に再配位することができるが、典型的なROMP反応の濃度および化学量論を考慮すると、この統計的可能性は極めて低い。また、ルテニウムビニルエーテル錯体の空気の影響の受けやすさは、アルキリデン種のほとんど即時の分解を介して、クエンチ過程を助ける。典型的なクエンチ手順は、触媒を除去するために、過剰のビニルエーテルおよびポリマーの即時沈殿を利用する。興味深いことに、ビピリジンリガンドの添加は、非常に効率的な光活性化を可能にしながら、これらの触媒の初期反応性をさらに低下させ、メタセシス反応性が光の照射によってのみ解放されるようにするようである。これにより、パターニングプロセスの一部として適度な加熱を適用することが可能になり、露光前または露光後のベーク工程を実施することが可能になる。
【0123】
フォトレジストを含む感光性組成物は、他の材料の存在が照射条件下でメタセシス反応を起こす光活性化触媒の能力を妨害しない限り、他の材料をさらに含んでなり得る。例えば、フォトレジストを含むこれらの組成物は、着色剤、界面活性剤、および安定剤、ならびに機能性粒子、例えば、ナノ構造体(例えば、カーボンナノチューブおよび無機ナノチューブ)、磁性材料(例えば、フェライト)、ならびに量子ドットを含有し得る。
【0124】
基体にポリマーをパターニングする方法
【0125】
本開示の実施形態はまた、フォトリソグラフィオレフィンメタセシス重合(PLOMP)として記載され得る、フィッシャー型カルベン光触媒を用いてパターン化ポリマー層を提供する方法も提供する。当該手順では、潜在性メタセシス触媒を光により活性化して、周囲環境でオレフィンと反応させ、光触媒を使用して、二官能性ROMPモノマー、または線状ポリマーもしくはポリマー前駆体の重合性材料マトリックス内の他の不飽和前駆体を重合、架橋、または重合と架橋の両方を行うことによって、ネガティブトーンレジストを現像することを提供する。原理的には、ポジティブトーンレジストも、光誘起二次メタセシス事象を用いて照射領域の溶解性を高めることによって現像することができる。これは、光活性種がポリマーマトリックスの架橋のための触媒であるという点で、「化学増幅型」レジストと見なすことができる。これらのルテニウム介在オレフィンメタセシス反応の多様性は、今日、PLOMPを介して様々な機能性材料をフォトパターニングするために利用することができ、光開始オレフィンメタセシスの分野を珍しい分野から大量微細加工に適用可能な材料科学へと進歩させている。
【0126】
いくつかの実施形態は、基体にポリマー画像をパターニングする方法を提供し、前記方法の各々は、
(a) 本明細書に記載の組成物のうちいずれか一つの感光性組成物の層を前記基体上に堆積させることと、
(b) 前記感光性組成物の層の一部を本明細書の他の箇所に記載の適当な波長を有する光で照射して、それによって重合領域および非重合領域のパターン化層を得ることと、を含んでなる。特定の他の実施形態は、パターンの非重合領域を除去することをさらに含んでなる。
【0127】
原理的には、基体は、金属もしくは非金属;有機もしくは無機;導電性、半導電性、もしくは非導電性の材料、またはそれらの任意の組み合わせを含んでなることができる。とは言え、これらのパターン化ポリマー層は、ケイ素、GaAs、およびInPを含んでなる半導体ウェハの用途を含む電子用途に有用性があると考えられる。多くの市販のレジストを確かに超える、これらの本発明の系の多くの利点のうちの一つは、例えばエッチングまたは表面誘導体化なしに、シリコンウエハの自然酸化物表面への表面接着を維持することができることである。対照的に、多くの市販のフォトレジストは、酸化物のHFエッチング、および/またはヘキサメチルジシラザンなどの反応性分子による表面誘導体化を必要とする。この点に関して、本明細書に記載の感光性系は、接着を調節するためにポリマー組成物を容易に調整することができるので、より安全でより用途の広い代替物を提供する。例えば、本明細書に記載の実施例では、ポリ(COD)レジストバッチは、最初にピラニアで洗浄したシリコンクーポン(silicon coupon)への優れた接着性を示した。また、PLOMPレジストは、現像するために露光後ベーキングを必要としない。現在、ルテニウム介在ROMPは、高弾性率樹脂および極めて化学的に耐性のある材料を含む多数の工業規模の用途で使用されている。PLOMPは、これらの望ましい材料特性を備えたUV硬化性でパターニング可能なコーティングを提供することができる。最後に、1日の作業日で多数のレジストのバッチを得ることができるので、将来の開発のためのラピッドプロトタイピングが可能になる。
【0128】
いくつかの実施形態において、パターン化ポリマーを処理して、単層または多層のポリマー構造を形成し得る。多層構造では、各層は他の堆積層と同じでも異なっていてもよく、本明細書に記載のように各層を個々にパターン化し得る。同様に、各層を、中間に堆積させた金属、金属酸化物、または他の材料層と交互に配置させ得る。これらの中間層を、これらの中間層の処理が堆積ポリマーのパターン化層の品質に悪影響を及ぼさないという条件の下で、例えばスパッタリング、または他の化学的堆積法もしくは蒸着法によって、堆積させ得る。
【0129】
感光性組成物を、スピンコーティング、ディップコーティング、もしくはスプレーコーティングによって堆積させ得るか、または感光性組成物の物理的形状に応じて、基体上にゲル状または固体状のフィルムを積層することによって堆積させ得る。
【0130】
感光性組成物を当分野において公知の様々な方法によって照射し得る。特定の実施形態では、フォトリソグラフィにより、ポジティブまたはネガティブ画像フォトマスクを使用して、パターニングを達成し得る。他の実施形態では、干渉リソグラフィにより(すなわち、回折格子を使用して)パターニングを達成し得る。他の実施形態では、近接場ナノパターニングによりパターニングを達成し得る。さらなる他の実施形態では、回折勾配リソグラフィによりパターニングを達成し得る。さらなる他の実施形態では、レーザー直描光照射により、例えば多光子リソグラフィによりパターニングを使用し得る。別の実施形態は、ナノインプリントリソグラフィによりパターニングを達成し得ることを規定する。さらに、インクジェット3Dプリンティング、ステレオリソグラフィ、およびステレオリソグラフィのデジタルマイクロミラーアレイ型(一般にデジタル光プロジェクション(DLP)と呼ばれる)によりパターニングを達成し得る。これらの本発明の組成物は、ステレオリソグラフィ法、例えばデジタル光プロジェクション(DLP)を用いて構造体を作製するのに特に適している(実施例参照)。いくつかの実施形態では、バルク構造体として、例えば液槽光重合を使用して、感光性組成物を処理し得、この場合、並進または回転させている基体上に直接フォトポリマーを硬化させ、照射をステレオリソグラフィ、ホログラフィ、またはデジタル光プロジェクション(DLP)によりパターン化する。「ステレオリソグラフィ」は、硬化性材料、例えばUV硬化性材料の薄層を次々に重ねて「プリント」することによって固体物体を製造するための方法および装置である。UV硬化性液体の表面または層を照らすプログラムされた移動可能なUV光のスポットビームを使用して、液体の表面に物体の固体断面を形成する。次に、物体をプログラムされた方法で1つの層の厚さだけ液体表面から離れるように移動させ、そして次の断面を形成させ、物体を規定する直前の層に接着させる。物体全体が形成されるまで、このプロセスを続ける。このような方法は、米国特許第5,571,471号に要約され記載されており、当該文献は、このような方法のその教示について、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0131】
フィッシャー型カルベンルテニウムメタセシス触媒は、約300~約500nmの範囲の1種以上の波長を有する光を用いて活性化することができる。別の実施形態は、光が、約300~約320nm、約320~約340nm、約340~約360nm、約360~約380nm、約380~約400nm、約400~約420nm、約420~約440nm、約440~約460nm、約460~約480nm、約480~約5000nm、またはそれらの組み合わせの範囲の1種以上の波長を含んでなることを規定する。他の好ましい実施形態では、この波長は、約380~約420nmの範囲にある。上述のように、この少なくとも波長の強度は、約1mW/cm~10W/cm、好ましくは約10mW/cm~200mW/cmの範囲にある。特定の実施形態では、光活性化源の強度は、約1mW/cm~約5mW/cm、約5mW/cm~約10mW/cm、約10mW/cm~約50mW/cm、約50mW/cm~約100mW/cm、約100mW/cm~約200mW/cm、約200mW/cm~約300mW/cm、約300mW/cm~約400mW/cm、約400mW/cm~約500mW/cm、約500mW/cm~約1W/cm、約1W/cm~約5W/cm、約5W/cm~約10W/cm、またはこれらの範囲の2以上の任意の組み合わせの範囲にあり得る。特定の態様では、触媒は、700~800nmの2または3光子エネルギー源を用いて、より具体的には790nmのレーザーを用いて、活性化することができる。この2光子エネルギーは395nmに相当し、3光子エネルギーは約263nmに相当する。
【0132】
重合構造体の得られるフィーチャの寸法は、部分的には、照射光の波長、照射方法、および感光性組成物の特性によって決まる。より高い粘度および必要に応じた追加の焼入剤の存在は、より良好な解像度が得られるように、組成物中の触媒の拡散を有益に最小化し得る。特定の実施形態では、重合ポリマーは、ミリメートルスケール(例えば、約1mm~約10mm、約10mm~約50mm、約50mm~約100mm、約100mm~約500mm、約500mm~約1000mm、もしくはそれらの組み合わせ)、ミクロンスケール(例えば、約1ミクロン~約10ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約100ミクロン~約500ミクロン、約500ミクロン~約1000ミクロン、もしくはそれらの組み合わせ)、またはナノメートルスケール(例えば、約1nm~約10nm、約10nm~約50nm、約50nm~約100nm、約100~約200nm、約200~約300nm、約300~約400nm、約400~約500nm、約500~約600nm、約600~約700nm、約700~約800nm、もしくはそれらの組み合わせ)の寸法を有するフィーチャ(例えば、チャネル、リッジ、ホール、またはポスト)を呈する。 干渉または回折勾配リソグラフィは、連続または不連続の厚さを有するポリマー層を提供し得る。
【0133】
方法および誘導ポリマー生成物は、通常、化学エッチングプロセス用のマスクまたはテンプレートとして機能し得る。これらのプロセスによって製造されたポリマーは、ジクロロメタン、イソプロパノール、アセトン、2.5M塩酸、および濃硫酸に対して、約24時間浸した後、定性的に安定である。
【0134】
三次元構造体
【0135】
本開示はまた、複数のポリマー層および三次元パターンを含んでなる三次元構造体を作製するのに適した組成物および方法も提供する。特別に寸法決めしたパターンを提供できるため、これらの構造体は、例えば、三次元フォトニックまたはケモクロミックデバイスにおいて特に有用である。
【0136】
特定の実施形態では、当該構造体を、
(a)メタセシス重合または架橋反応を経ることができる1以上のアルケンまたはアルキンを有する重合性材料組成物と適当な光触媒との2以上の層を堆積することであって、これらの層のうちの1以上が、このキャパシティで作用する本明細書に記載のルテニウムビピリジン錯体を含有し、前記堆積が積層体を形成することと、
(b)前記積層体の隣接層の少なくとも一部を重合または架橋するのに充分な条件下で、前記積層体の少なくとも一部に光を照射して、前記積層体の2以上の層に光を透過させ、照射することと、
を含んでなる方法によって作製する。
関連する実施形態では、積層体の反応しなかった部分を後で除去し得る。
【0137】
重合性材料のこれらの層は、必ずしもそうとは限らないが通常、主にポリマーを含んでなり、少量の重合性前駆体または架橋剤が他に存在する。すなわち、各層は、重合性材料の層の合計重量に基づく重量パーセントで、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または98重量%以上の予備成形ポリマーを含んでなり得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、重合性材料の2以上の層のうちの1以上は、その特定の層を作製するために使用された残留ルテニウムメタセシス触媒を含有し得る。すなわち、当該層は、ROMP型触媒合成からすでに誘導されたものであり、その中に残留触媒を含有し得る。あるいは、追加の、または新しいルテニウムメタセシス触媒を、(本明細書に記載の)溶媒の存在下で当該触媒を溶解することによって、または膨潤した溶媒中に当該触媒を組み込むことによって、予め作製した重合性材料の層に混合または溶解し得る。
【0139】
当該層は、元の(不完全な)重合からの残留ポリマー前駆体も含有してもよく、または残留する反応性の低いポリマー前駆体も含有してもよい。あるいは、当該層は、例えば追加の重合性または架橋性材料の存在下で層を溶解または膨潤させることによって、追加の重合性または架橋性材料が添加されていてもよい。このような残留前駆体は、本明細書に記載の前駆体と同種である。他の化学架橋剤は当該分野で公知である。
【0140】
積層体は、同様の組成の材料を有する隣接層を含んでなるように形成されていてもよい。あるいは、隣接層は組成的に異なっていてもよい。または、積層体は、組成的に同じ隣接層および異なる隣接層の組み合わせを含んでなってもよい。好ましい実施形態では、積層体の各層は、他の層の他の予備成形ポリマーとは異なる化学的性質を有する予備成形ポリマーを含んでなる。積層体の個々の層は、任意の実用的な寸法の厚さを有し得るが、特定の実施形態は、各層の厚さが、独立して、ミリメートルスケール(例えば、約1mm~約10mm、約10mm~約50mm、約50mm~約100mm、約100mm~約500mm、約500mm~約1000mm、もしくはそれらの組み合わせ)、ミクロンスケール(例えば、約1ミクロン~約10ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約100ミクロン~約500ミクロン、約500ミクロン~約1000ミクロン、もしくはそれらの組み合わせ)、またはナノメートルスケールである積層体を含む。後者の場合、層は、独立して、約50~約100nm、約100~約200nm、約200~約300nm、約300~約400nm、約400~約500nm、約500~約600nm、約600~約700nm、約700~約800nm、約800~約900nm、約900~約1000nm、またはそれらの組み合わせの範囲であり得る。隣接層の厚さおよび光学特性を選択することによって、デバイス全体の光学的性質を調整することが可能である。
【0141】
特定の場合において、重合性材料組成物の層を、互いに順次に堆積させてもよく、または異なる材料を液体中で一緒に混合して、積層体へと自己組織化させてもよい。自己組織化は、特にフォトニックデバイスまたはケモクロミックデバイスに有用なナノスケール寸法で、このような積層構造体を形成する、より本質的で有用な方法であるようにみえるが、自己組織化する能力は、様々な層の性質に実際には依存する。例えば、特定のブロックコポリマーは、自己組織化して、約5~約1500ナノメートルの範囲の寸法を有する水平方向および垂直方向のドメイン、好ましくは約75~約300nmの範囲のドメインを提供することができる。このように、ブロックコポリマーを含んでなる層は、当該方法に組み込まれるべき有用な材料である。ブラシ状(接木状)ブロック、くさび状ブロック、およびハイブリッドくさびおよびポリマーブロックコポリマー。図6を参照されたい。当該ブロックコポリマーは、同時係属中の米国特許出願公開第2014/0011958号、第2013/0296491号、および第2013/0324666号、ならびにPiunova, et al., J. Amer. Chem. Soc, 2013, 135 (41), pp 15609-15616、Miyake, G. M., et al., Angewandte Chemie International Edition 2012, 51, 11246-11248、Sveinbjoernsson, B. R., et al., PNAS 2012, 109, 14332-14336、およびMiyake, G. M., et al., J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 14249-14254に記載されており、これらはそれぞれ、ポリマーおよびコポリマーの説明について、参照により援用される。当該組成物は、当該方法に使用される特に魅力的な材料と考えられるが、当該方法は、これらの材料の選択に限定されない。
【0142】
積層体を形成したら、積層体の隣接層の少なくとも一部を重合または架橋するのに充分な条件下で、積層体の少なくとも一部を本明細書に記載の条件下で光照射に付して、積層体の2以上の層に光を透過させ、照射する。隣接層は照射前に剥離することができるが、光の照射は、組み込まれたルテニウムメタセシス触媒を活性化して、これらの隣接層をコヒーレント構造に架橋させる。他の実施形態では、積層体の全ての層の少なくとも一部を通過して照射するように光を向ける。他の実施形態では、積層体全体を架橋するための条件下で、構造全体に光を照射する。
【0143】
積層体全体を照射することができるのに対して、別の一連の実施形態は、積層体へのパターン露光によって照射を行い、それによって、積層体を介して重合領域および非重合領域の三次元パターンを得ることを規定する。組成物と同様に、平面ポリマー層のパターン照射は、例えば、直描光照射の使用により、または干渉、ナノインプリント、もしくは回折勾配リソグラフィにより、ナノ寸法およびマイクロ寸法のパターンを生じさせることができ、これと同じパターニング技術を使用して、同様の寸法のパターンを3次元で形成することもできる。選択的に重合または架橋させたら、構造体の未反応部分を除去し得る。
【0144】
想定通り、本開示の実施形態は、これらの方法を使用して作製した構造体、およびこれらの構造体を組み込んだ物品を含む。ケモクロミックセンサー、太陽電池、誘電体ミラー、および反射コーティングを含むフォトニックデバイスは、実施形態と考えられる。
【0145】
追加の実施形態
【0146】
実施形態の以下のリストは、これまでの説明を置き換える、または取り換えるのではなく、補完することが意図されている。
【0147】
実施形態1.1種以上の不飽和有機前駆体、例えばROMPまたはクロスメタセシス前駆体を含んでなる重合性材料マトリックスに混合された、式(I)のルテニウムカルベンメタセシス触媒またはその幾何異性体を含んでなる感光性組成物。
【化34】
式中、
およびXは、独立して、アニオン性リガンドであり、
Yは、O、N-R、またはS、好ましくはOであり、
Qは、構造-CR1112-CR1314-または-CR11=CR13-、好ましくは-CR1112-CR1314-を有する2原子結合であり、R11、R12、R13、およびR14は、独立して、水素、置換されていてもよいヒドロカルビルであり、
およびRは、独立して、水素、置換されていてもよいヒドロカルビルであるか、または互いに結合して、置換されていてもよい環式脂肪族基を形成してもよく、
およびRは、独立して、置換されていてもよいヒドロカルビルであり、
およびRは、独立して、H、C1~24アルキル、C1~24アルコキシ、C1~24フルオロアルキル、C1~24フルオロアルコキシ、C1~24アルキルヒドロキシ、C1~24アルコキシヒドロキシ、C1~24フルオロアルキルヒドロキシ(ペルフルオロアルキルヒドロキシを含む)、C1~24フルオロアルコキシヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、またはヒドロキシであり、
mおよびnは、独立して、1、2、3、または4である。
式(I)のルテニウムカルベンメタセシス触媒は、本明細書に記載されているように添加してもよく、または本明細書に記載されているようにインサイチュで生じさせてもよい。独立したXおよびXは、アニオン性リガンドであり、互いに対してシスに位置すると考えられているが、化合物は示されている構造の幾何異性体としても存在し得る。
【0148】
実施形態2.Ru=C(R)(Y-R)部分が置換型ビニルエーテルカルベンである、実施形態1に記載の感光性組成物。本実施形態の特定の態様では、RはC1~6アルキル、好ましくはエチル、プロピル、またはブチルであり、すなわち、RはHであり、RはC1~6アルキルであり、YはOである。
【0149】
実施形態3.Qが-CH-CH-であり、RもしくはRのいずれか、またはRおよびRの両方が、置換されていてもよいフェニル基であり、分岐状であっても、または直鎖状であってもよい独立のC1~6アルキル基、好ましくはC3~6アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルで少なくとも2、6位が置換されていてもよい、実施形態1または2に記載の感光性組成物。さらに、フェニル基は、本明細書に記載の電子求引基または電子供与基、例えばアルキル、アルコキシ、ニトロ、またはハロで4位が置換されていてもよい場合がある。
【0150】
実施形態4.Qが-CH-CH-であり、RおよびRが独立してメシチルまたは置換されていてもよいアダマンチルである、実施形態1~3のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0151】
実施形態5.RおよびRが、独立して、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、トリフルオロメチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、またはニトロである、実施形態1~4のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0152】
実施形態6.前記置換されていてもよい2,2’-ビピリジンが、3,3’または4,4’または5,5’または6,6’の位置でRおよびRで置換されている、実施形態1~5のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【化35】
本実施形態の他の態様では、1以上のRが、3、4、5、または6位のいずれか1つ以上に存在し得、Rが、独立して、3’、4’、5’、または6’位のいずれか1つ以上に存在し得る。
【0153】
実施形態7.前記メタセシス触媒が、インサイチュで生じさせた対応する構造を含む、構造:
【化36】
を有する化合物を含んでなる、実施形態1~6のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0154】
実施形態8.前記ルテニウムメタセシス触媒が、全組成物の重量に対して、約0.001重量%~約5重量%の範囲の濃度で存在する、実施形態1~7のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0155】
実施形態9.前記ルテニウムカルベン触媒が、約250nm~約800nm、好ましくは約350nm~約450nmの範囲、または約380~約420nmの範囲の1種以上の波長の光の照射による活性化時に、前記1種以上の不飽和有機前駆体を架橋または重合することができる、実施形態1~8のいずれか一つに記載の感光性組成物。本実施形態の他の態様では、前記光は、約250~約300nm、約300~約320nm、約320~約340nm、約340~約360nm、約360~約380nm、約380~約400nm、約400~約420nm、約420~約440nm、約440~約460nm、約460~約480nm、約480~約500nm、約500~約600nm、約600~約700nm、約700~約800nm、またはそれらの組み合わせの範囲の1種以上の波長を含んでなる。
【0156】
実施形態10.前記不飽和有機前駆体が、1つのアルケン基、アルキン基、またはアルケン基とアルキン基の両方を含んでなり、かつメタセシスされたときに重合することができる、実施形態1~9のいずれか一つに記載の感光性組成物。本実施形態のいくつかの態様では、前記不飽和前駆体は、モノ不飽和環式オレフィン;単環式ジエン;または二環式もしくは多環式オレフィンを含んでなる。
【0157】
実施形態11.前記不飽和有機前駆体がROMP前駆体である、実施形態1~10のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0158】
実施形態12.前記不飽和有機前駆体が以下を含んでなる、実施形態1~11のいずれか一つに記載の感光性組成物。
(a)構造(B)で表されるモノ不飽和環状オレフィンであって、
【化37】
式中、bは、必ずしもそうとは限らないが通常、1~10、典型的には1~5の範囲の整数であり、
A1およびRA2は、独立して、水素、ヒドロカルビル(例えば、C~C20アルキル、C~C20アリール、C~C30アラルキル、もしくはC~C30アルカリール)、置換型ヒドロカルビル(例えば、置換型C~C20アルキル、C~C20アリール、C~C30アラルキル、もしくはC~C30アルカリール)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C~C20ヘテロアルキル、C~C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C~C30アラルキル、もしくはヘテロ原子含有C~C30アルカリール)、および置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換型C~C20ヘテロアルキル、C~C20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C~C30アラルキル、もしくはヘテロ原子含有C~C30アルカリール)であり、置換型ヒドロカルビルもしくは置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビルの場合、置換基は、官能基(「Fn」)、例えば、アルケン、アルキン、ホスホナト、ホスホリル、ホスファニル、ホスフィノ、スルホナト、C~C20アルキルスルファニル、C~C20アリールスルファニル、C~C20アルキルスルホニル、C~C20アリールスルホニル、C~C20アルキルスルフィニル、C~C20アリールスルフィニル、スルホンアミド、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシル、C~C20アルコキシ、C~C20アリールオキシ、C~C20アルコキシカルボニル、C~C20アリールオキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシラト、メルカプト、ホルミル、C~C20チオエステル、シアノ、シアナト、チオシアナト、イソシアネート、チオイソシアネート、カルバモイル、エポキシ、スチレニル、シリル、シリルオキシ、シラニル、シロキサザニル、ボロナト、ボリル、もしくはハロゲン、もしくは金属含有もしくはメタロイド含有基(ここで、金属は、例えば、SnもしくはGeであり得る)であり、
B1、RB2、RB3、RB4、RB5、およびRB6は、水素、ヒドロカルビル、置換型ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および-(Z-Fnからなる群から独立して選択され、ここで、Zは、ヒドロカルビレン結合基、例えば、アルキレン、置換型アルキレン、ヘテロアルキレン、置換型ヘテロアルケン、アリーレン、置換型アリーレン、ヘテロアリーレン、もしくは置換型ヘテロアリーレン結合であり、
B1~RB6基のいずれかが置換型ヒドロカルビルもしくは置換型ヘテロ原子含有ヒドロカルビルである場合、置換基が1以上の-(Z-Fn基を含み得る、前記モノ不飽和環状オレフィン、もしくは
(b)構造(C)で表される単環式ジエンであって、
【化38】
式中、cおよびdは、独立して、1~約8、典型的には2~4の範囲の整数であり、好ましくは(反応物がシクロオクタジエンであるように)2であり、
C1、RC2、RC3、RC4、RC5、およびRC6は、RB1~RB6に対応すると定義される、前記単環式ジエン、もしくは
(c)構造(D)で表される二環式もしくは多環式オレフィンであって、
【化39】
式中、
D1、RD2、RD3、およびRD4は、RB1~RB6に対応すると定義され、
eは、1~8(典型的には2~4)の範囲の整数であり、
fは、通常1もしくは2であり、
Tは、低級アルキレンもしくはアルケニレン(通常置換型もしくは非置換型メチルもしくはエチル)、CHRG1、C(RG1、O、S、N-RG1、P-RG1、O=P-RG1、Si(RG1、B-RG1、もしくはAs-RG1であり、ここで、RG1は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリール、アラルキル、もしくはアルコキシであり、さらに、RD1、RD2、RD3、およびRD4基のいずれかを他のRD1、RD2、RD3、およびRD4基のいずれかに結合させて、4~30個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換型脂環式基、もしくは6~18個の環炭素原子を含む置換型もしくは非置換アリール基、もしくはそれらの組み合わせを得ることができ、前記結合は、ヘテロ原子もしくは官能基を含み得、例えば、前記結合は、限定はされないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、もしくは無水基を含み得る、前記二環式もしくは多環式オレフィン、もしくは
(d)構造(E)で表されるノルボルネンであって、
【化40】
式中、
E1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6、RE7、およびRE8は、RB1~RB6に対応すると定義され、
「a」は、単結合もしくは二重結合を表し、
fは1もしくは2であり、
gは0~5の整数であり、「a」が二重結合である場合、RE5、RE6の一方とRE7、RE8の一方は、存在しない、前記ノルボルネン、もしくは
(e)それらの混合物。
【0159】
実施形態13.前記不飽和有機前駆体が、構造:
【化41】
を有する化合物、またはそれらの混合物を含んでなり、式中、
Ra、R、R、R、R、およびRが、独立して、Hまたはアルキル(好ましくはC1~20アルキル、より好ましくはC1~10アルキル)である、実施形態1~11のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0160】
実施形態14.前記不飽和有機前駆体が、構造:
【化42】
のジシクロペンタジエンを含んでなり、
式中、
、R、R、R、R、およびRが、独立して、Hまたはアルキル(好ましくはC1~20アルキル、より好ましくはC1~10アルキル)である、実施形態1~11のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0161】
実施形態15.前記組成物がスピンコート、ディップコート、またはスプレーコートすることができる粘度を有する、例えば、企図される適用温度(好ましくは周囲室温)での前記組成物の粘度が、約1cSt~約10cSt、約10cSt~約50cSt、約50cSt~約100cSt、約100cSt~約250cSt、約250cSt~約500cSt、約500cSt~約1000cSt、約1000cSt~約2000cSt、約2000cSt~約5000cSt、またはそれ以上の範囲にある、実施形態1~14のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0162】
実施形態16.前記感光性組成物がゲル状、半固体状、または固体状のフィルムである、実施形態1~15のいずれか一つに記載の感光性組成物。
Ru-カルベン触媒を用いる、係留有機金属を含んでなる感光性組成物
【0163】
実施形態17.前記重合性材料マトリックスが、前記1種以上の不飽和有機前駆体とメタセシスすることができるペンダント不飽和部分を有する1以上の有機金属部分をさらに含んでなり、前記ペンダント不飽和部分が、1以上のアルケンまたは1以上のアルキン結合を含んでなり、前記有機金属部分が3族から12族の遷移金属を含んでなる、実施形態1~16のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0164】
実施形態18.前記3族から12族の遷移金属が、Fe、Co、Ni、Ti、Al、Cu、Zn、Ru、Rh、Ag、Ir、Pt、Au、またはHgである、実施形態17に記載の感光性組成物。
【0165】
実施形態19.前記有機金属部分が、メタセシス反応もしくはクロスカップリング反応または水分解を触媒することができる触媒を含んでなる、実施形態17または18に記載の感光性組成物。
【0166】
実施形態20.前記有機金属部分が、酸化または還元条件下で有機基質の酸化または還元を触媒することができる、実施形態17~19のいずれか一つに記載の感光性組成物。
ペンダント官能基を含んでなる感光性組成物
【0167】
実施形態21.前記不飽和有機前駆体が、1以上の単官能、二官能、または多官能の環式または脂環式のアルケンまたは1以上のアルキン結合を有し、前記1種以上の不飽和有機前駆体が、構造:
【化43】
を有する化合物を含んでなり、
式中、
Zが、-O-またはC(R)(R)であり、
が、独立して、Hであるか、または-N(R)(R)、-O-R、-C(O)O-R、-OC(O)-(C1~6アルキル)、もしくは-OC(O)-(C6~10アリール)で末端が置換されていてもよいC1~6アルキルであるか、または保護されていてもよい3~10のアミノ酸の配列(好ましくはR-G-Dもしくはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を含む)であり、
Wが、独立して、-N(R)(R)、-O-R、または-C(O)O-R、-P(O)(OR、-SO(OR)、またはSO であり、
およびRが、独立して、HまたはC1~6アルキルであり、
6~10アリールが、1、2、3、4、または5の保護されていてもよいヒドロキシル基(保護されたヒドロキシル基は好ましくはベンジル)で置換されていてもよく、
nが、独立して、1、2、3、4、5、または6である、
実施形態1~20のいずれか一つに記載の感光性組成物。
【0168】
実施形態22.前記1種以上の不飽和有機前駆体が、構造:
【化44】
または
【化45】
を有する化合物を含んでなり、
Bnがベンジルであり、tBuがtert-ブチルであり、PbFが2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフランである、実施形態21に記載の組成物。
感光性組成物の製造方法
【0169】
実施形態23.基体にポリマー画像をパターニングする方法であって、
(a)実施形態1~22のいずれか一つに記載の感光性組成物の1以上の層を基体上に堆積させることと、
(b)前記感光性組成物の層の一部に、約300~約500nmの範囲、好ましくは約350~約450nmの範囲の波長を含んでなる光を照射して、前記層の照射部分を重合させ、それによって重合領域および非重合領域のパターン化層を得ることとを含んでなる前記方法。本実施形態の他の態様では、前記光は、約300~約320nm、約320~約340nm、約340~約360nm、約360~約380nm、約380~約400nm、約400~約420nm、約420~約440nm、約440~約460nm、約460~約480nm、約480~約500nm、またはそれらの組み合わせの範囲の1種以上の波長を含んでなる。
【0170】
実施形態24.照射前に感光性組成物の複数の層を基体上に堆積させることを含んでなり、前記感光性組成物の1以上が、実施形態1~22のいずれか一つに記載の感光性組成物である、実施形態23に記載の方法。
【0171】
実施形態25.前記感光性組成物の1以上の層を、スピンコーティング、ディップコーティング、またはスプレーコーティングによって堆積させる、実施形態23または24に記載の方法。
【0172】
実施形態26.前記感光性組成物が、ゲル状、半固体状、または固体状のフィルムであり、前記感光性組成物を前記基体上に積層することによって堆積させる、実施形態23または24に記載の方法。
【0173】
実施形態27.前記照射部分を、フォトマスクの使用により、直描光照射により、干渉、ナノインプリント、または回折勾配リソグラフィにより、インクジェット3Dプリンティング、ステレオリソグラフィ、ホログラフィ、またはデジタル光プロジェクション(DLP)によりパターニングする、実施形態23~26のいずれか一つに記載の方法。本実施形態の特定の態様では、触媒を、700~800nmの2または3光子エネルギー源を用いて、より具体的には790nmのレーザーを用いて、活性化することができる。
【0174】
実施形態28.前記光が、約250~約800nm、または約220~約440nmの範囲の1種以上の波長で約1mW/cm~10W/cm、好ましくは約10mW/cm~200mW/cmの範囲の強度を有する、実施形態23~27のいずれか一つに記載の方法。
【0175】
実施形態29.前記パターン化層が、ナノメートルまたはミクロンスケールの寸法を有する1以上のフィーチャを含んでなる、実施形態23~28のいずれか一つに記載の方法。
【0176】
実施形態30.前記パターンの前記非重合領域を除去することをさらに含んでなる、実施形態23~29のいずれか一つに記載の方法。
重合組成物
【0177】
実施形態31.実施形態23~29のいずれか一つに従って製造された重合組成物、または前記重合組成物を含んでなる物品。
【0178】
実施形態32.前記組成物がパターン化層である、実施形態31に記載の重合組成物。
【0179】
実施形態33.請求項30または31に記載の重合組成物を含んでなる組織スキャフォールド。
【0180】
実施形態34.1以上の細胞集団をさらに含んでなる、実施形態33に記載の組織スキャフォールド。
Ru-カルベン触媒を用いる、積層感光性組成物の三次元構造体を形成する方法
【0181】
実施形態35.
(a)メタセシス重合または架橋反応を経ることができる1以上のアルケンまたはアルキンを有する組成物と前記組成物に混合または溶解された光活性剤との2以上の層を堆積することであって、1以上の層が実施形態1~22のいずれか一つに記載の組成物を含んでなり、前記堆積が積層体を形成することと、
(b)前記積層体の隣接層の少なくとも一部を重合または架橋するのに充分な条件下で、前記積層体の少なくとも一部に光を照射して、前記積層体の2以上の層に光を透過させ、照射することと、
を含んでなる方法。
【0182】
実施形態36.前記積層体の隣接層の少なくとも一部を重合または架橋するのに充分な条件下で、前記積層体の全部の層に光を透過させ、照射する、実施形態35に記載の方法。
【0183】
実施形態37.前記照射を前記積層組成物へのパターン露光によって行い、それによって、前記積層体を介して重合領域および非重合領域の三次元パターンを得る、実施形態35または36に記載の方法。
【0184】
実施形態38.前記照射を、フォトマスクの使用により、直描光照射により、干渉、ナノインプリント、または回折勾配リソグラフィにより、インクジェット3Dプリンティング、ステレオリソグラフィ、ホログラフィ、またはデジタル光プロジェクション(DLP)によりパターン化する、実施形態379に記載の方法。
【0185】
実施形態39.各層が、他の層の他の予備成形ポリマーと同じでも異なっていてもよい予備成形ポリマーを含んでなる、実施形態35~38のいずれか一つに記載の方法。
【0186】
実施形態40.各層の厚さが、独立して、ミリメートルスケール(例えば、約1mm~約10mm、約10mm~約50mm、約50mm~約100mm、約100mm~約500mm、約500mm~約1000mm、もしくはそれらの組み合わせ)、ミクロンスケール(例えば、約1ミクロン~約10ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約100ミクロン~約500ミクロン、約500ミクロン~約1000ミクロン、もしくはそれらの組み合わせ)、またはナノメートルスケール(例えば、約50~約100nm、約100~約200nm、約200~約300nm、約300~約400nm、約400~約500nm、約500~約600nm、約600~約700nm、約700~約800nm、約800~約900nm、約900~約1000nm、もしくはそれらの組み合わせの範囲)である、実施形態35~39のいずれか一つに記載の方法。
【0187】
実施形態41.1以上の層のポリマーがブロックコポリマーである、実施形態35~40のいずれか一つに記載の方法。
【0188】
実施形態42.前記ポリマーが、1以上の層のブロックコポリマーであり、前記ブロックコポリマーが、樹状(くさび状)またはブラシ状(接木状、びん洗いブラシ状)コポリマーである、実施形態35~41のいずれか一つに記載の方法。
【0189】
実施形態43.前記ポリマーが、約5~約1500ナノメートルの範囲、または約75~約300nmの範囲の寸法を有するドメインを呈する1以上の層のブロックコポリマーである、実施形態35~42のいずれか一つに記載の方法。
【0190】
実施形態44.前記ポリマーが、ポリマー前駆体の重合から誘導され、前記層中の未反応ポリマー前駆体が、前記組成物中の前記1以上のアルケンまたはアルキンを与える、実施形態35~43のいずれか一つに記載の方法。
【0191】
実施形態45.2以上の順次堆積された層の隣接層が組成的に異なる、実施形態35~44のいずれか一つに記載の方法。
【0192】
実施形態46.2以上の順次堆積された層の隣接層が組成的に同じである、実施形態35~45のいずれか一つに記載の方法。
【0193】
実施形態47.実施形態35~46のいずれか一つに従って製造された積層ポリマー組成物、または前記積層ポリマー組成物を含有する物品。
【0194】
実施形態48.実施形態35~46のいずれか一つに従って製造されたフォトニック構造体。
【0195】
実施形態49.液槽光重合を含んでなる方法であって、実施形態1~22のいずれか一つに記載の感光性組成物を並進または回転させている基体上に直接硬化させ、前記照射をステレオリソグラフィ、ホログラフィ、またはデジタル光プロジェクション(DLP)によりパターン化する前記方法。
【実施例
【0196】
以下の実施例は、本開示内に記載されている概念のいくつかを説明するために提供されている。各実施例は、組成物、製造方法、および使用の具体的な個々の実施形態を提供するものとみなされるが、実施例のいずれも、本明細書に記載されている、より一般的な実施形態を限定するものとみなされるべきではない。
【0197】
以下の実施例では、使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。別段の定めがない限り、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0198】
実施例1:フェナントロリンおよびビピリジンリガンドを含んでなるルテニウムメタセシス触媒を比較するスクリーニング実験
【0199】
表1に従って、触媒C627およびブチルビニルエーテル(BVE)を使用してインサイチュで生じさせた触媒を使用して、一連の感光性組成物を調製した。
【化46】
【表1】
触媒溶液を約400rpmで18時間撹拌した後、約6重量%のトリシクロペンタジエンを含有する2mLのジシクロペンタジエン溶液に20マイクロリットルの各触媒溶液を添加することにより、フォトポリマー溶液を調製した。推定される潜在性触媒は、対応するブチルビニルカルベンであった。
【0200】
調製した各LCS樹脂1mLを室温で1時間暗所に保ったところ、粘度の変化は観察されなかった(図4A)。
【0201】
1mLの調製した各LCS樹脂をバイアル中で1000mJで405nm(14.6mW、68.5秒)で照射し、対応する粘度変化を観察した(図4B)。2,2’-ビピリジン(1)で形成された潜在性触媒錯体は、他の触媒よりも著しく速い光開始を示した。明らかにゲル化した。4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン(3)で形成された潜在性触媒錯体は、これらの条件下で架橋の初期段階を示した。フェナントロリン(2)および4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン(4)で形成された潜在性触媒錯体は、これらの条件下で粘度変化の証拠を与えなかった。
【0202】
実施例2:バソフェナントロリンキレートの試験
【化47】
【0203】
実施例1に記載のように、23.25mgのバソフェナントロリン、29.22mgのGrubbsII-Hoveyda C627、15μLのブチルビニルエーテル、および0.58mLのクロロホルムを一緒に撹拌することによって、潜在性触媒溶液を調製した。室温で24時間撹拌した後、この潜在性触媒溶液8μLを、約6%のトリシクロペンタジエンを含有するジシクロペンタジエン溶液1mLに添加した。得られた溶液は、オレフィン-メタセシスベースのフォトポリマー樹脂を表した。この溶液一滴を、厚さ200ミクロンのスペーサーを含む2枚のスライドガラスの間に挟んだ。50℃でλ=405nmで990mJ/cmの露光後、フォトポリマー液体はゲル化しなかった。
【0204】
実施例3:フェナントロリンキレートの試験
【0205】
12.37mgのフェナントロリン、28.67mgのGrubbsII-Hoveyda C627、15μLのブチルビニルエーテル、および0.57mLのクロロホルムを一緒に撹拌することによって、潜在性触媒溶液を調製した。室温で24時間撹拌した後、この潜在性触媒溶液8μLを、約6%のトリシクロペンタジエンを含有するジシクロペンタジエン溶液1mLに添加した。得られた溶液は、オレフィン-メタセシスベースのフォトポリマー樹脂を表す。この溶液一滴を、厚さ200ミクロンのスペーサーを含む2枚のスライドガラスの間に挟んだ。50℃でλ=405nmで990mJ/cmの露光後、フォトポリマー液体はゲル化しなかった。
【0206】
実施例4:他のフェナントロリン誘導体キレートの試験
【化48】
【0207】
実施例3の手順を用いて、3種の他のフェナントロリン誘導体を光潜在性について試験した。これらの触媒のいずれも、試験条件下でジシクロペンタジエン系樹脂溶液を重合しなかった。
【0208】
実施例5:ビピリジンキレートの試験
【化49】
【0209】
20mgのビピリジン、76mgのGrubbsII-Hoveyda C627、38μLのブチルビニルエーテル、および1.50mLのクロロホルムを一緒に撹拌することによって、潜伏性触媒溶液を調製した。室温で24時間撹拌した後、この潜在性触媒溶液8μLを、約6%のトリシクロペンタジエンを含有するジシクロペンタジエン溶液1mLに添加した。得られた溶液は、オレフィン-メタセシスベースのフォトポリマー樹脂を表した。この溶液一滴を、厚さ200ミクロンのスペーサーを含む2枚のスライドガラスの間に挟んだ。50℃でλ=405nmで990mJ/cmの露光後、フォトポリマー液体はゲル化した。
【0210】
フォトポリマー「検量線」は、P.F. Jacobs (Fundamentals of Stereolithography 1992)の手順に従い、光線量の関数としてゲル化材料の硬化深度を測定することによって作成した。結果は図5に示されている。
【0211】
実施例6:4,4’-ジ-tertブチル-2,2’-ビピリジンキレートの試験
【化50】
【0212】
22mgの4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン、26mgのGrubbsII-Hoveyda C627、13μLのブチルビニルエーテル、および0.51mLのクロロホルムを一緒に撹拌することによって、潜在性触媒溶液を調製した。室温で24時間撹拌した後、この潜在性触媒溶液8μLを、約6%のトリシクロペンタジエンを含有するジシクロペンタジエン溶液1mLに添加した。得られた溶液は、オレフィン-メタセシスベースのフォトポリマー樹脂を表した。この溶液一滴を、厚さ200ミクロンのスペーサーを含む2枚のスライドガラスの間に挟んだ。50℃でλ=405nmで990mJ/cmの露光後、フォトポリマー液体はゲル化した。
【0213】
フォトポリマー「検量線」は、P.F. Jacobs (Fundamentals of Stereolithography 1992)の手順に従い、光線量の関数としてゲル化材料の硬化深度を測定することによって作成した。結果は図6に示されている。
【0214】
実施例7:4,4’-ジブロモ-2,2’-ビピリジンキレートの試験
【化51】
【0215】
GrubbsII-Hoveyda C627触媒(56mg)および4-4’-ジブロモ-2-2’-ビピリジン(30mg)をガラスバイアル中に量り取り、窒素パージしたグローブボックスに入れた。次いで、クロロホルム(1.12mL)および1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(28マイクロリットル)をピペットで加えた。バイアルに栓をし、周囲光から保護するためにホイルで覆い、溶液を18時間撹拌した。この溶液0.032mLを、約6%のトリシクロペンタジエンを含有するジシクロペンタジエン溶液4mLに添加した。フォトポリマー「検量線」は、上記の得られた溶液を使用して、光線量の関数としてゲル化材料の硬化深度を測定することによって作成した。以下の結果は、385nm:臨界露光量:892.720mJ/cm,透過深度=1.397mmで得られた。
【0216】
実施例8:4,4’-ジ-tertブチル-2,2’-ビピリジンキレートの試験
【化52】
【0217】
GrubbsII-Hoveyda C627触媒(56mg)および4-4’-ジメチル-2-2’-ビピリジン(17.4mg)をガラスバイアル中に量り取り、窒素パージしたグローブボックスに入れた。次いで、1.12mLのクロロホルムおよび28マイクロリットルの1,4-ブタンジオールジビニルエーテルをピペットで加えた。バイアルに栓をし、周囲光から保護するためにホイルで覆い、溶液を18時間撹拌した。この溶液0.032mLを、約6%のトリシクロペンタジエンを含有するジシクロペンタジエン溶液4mLに添加した。得られた溶液は、オレフィン-メタセシスベースのフォトポリマー樹脂を表す。フォトポリマー「検量線」は、上記の手順に従い得られた溶液を使用して、光線量の関数としてゲル化材料の硬化深度を測定することによって作成した。以下の結果は、385nm:臨界露光量:1042.445mJ/cm,透過深度=1.9694mmで得られた。
【0218】
実施例8:他のビピリジン誘導体キレートの試験
【化53】
【0219】
4種の他のビピリジン誘導体を用いて潜在性光触媒を形成する試みは、本明細書に記載の標準的条件下では驚くほどうまくいかなかった。
【0220】
4,4’-ジ-メトキシ-2,2’-ビピリジンの場合、実施例5~8に記載の条件下で、385nmで6400mJ/cmまでの露光量で、測定可能なフィルムは形成されなかった。
【0221】
1-(イソキノリン-1-イル)イソキノリンキレートを含有するフォトポリマー溶液は、他の置換型ピリジンの実施例と同様の条件下で、安定な溶液を形成しなかった。ルテニウム錯体の沈殿は、光重合のキネティクスを定量化することを困難にした。
【0222】
実施例9:ステレオリソグラフィ3Dプリンティング
【0223】
実施例3と同様にして調製したPLOMPフォトポリマーを、デジタル光プロジェクション(DLP,ダイナミックマイクロミラーアレイ(DMD)とも呼ばれる)ステレオリソグラフィ3Dプリンターで使用した。50℃の温度で750mJ/cmの385nmの光を200ミクロンの厚さの層に照射することによって、熱変形温度分析のために矩形棒をプリントした。プリントした棒を続いてオーブンで160℃に加熱して重合を確実に完了させた。これらの棒を、図♯♯ に示すように、熱変形温度について試験した。以下の値が観察された:0.445MPaでHDT=127℃,1.82MPaで121℃。
【0224】
実施例10:その全体で、または少なくともその実施例について、参照により本明細書に援用される、2014年10月3日に出願された米国特許出願第14/505,824号は、フェナントロリンを含有する潜在性フィッシャー型ルテニウム触媒の使用を記載している。ビピリジンリガンドを含むより反応性の高い潜在性ルテニウム触媒と共に利用可能な化学反応の種類の代表として、一例をここで改めて示す。
【化54】
【0225】
95%ジシクロペンタジエンおよび5%エチリデンノルボルネン(合計10mL,体積%)の溶液をシンチレーションバイアルに添加し、アルゴンで脱気した。上記の「Grubbs 2」触媒(2.1mg)を100マイクロリットルの脱気クロロホルムに溶解し、この触媒溶液をアルゴン下で撹拌しながらジシクロペンタジエン溶液に添加した。27.5分で、溶液は所望の粘度に達し、開環メタセシス重合を、0.5mLのエチルビニルエーテル中の2.5mgの1,10-フェナントロリンによってクエンチした。溶液を5分間撹拌して確実に均一にクエンチし、次いでフォトリソグラフィに使用する前に一晩暗所でアルゴン下で保存した。この「親」フォトレジストは、PLOMPパターニングプロセスを中断することなく、多種多様な分子で官能化することができる。
【0226】
当業者には理解されるように、これらの教示に照らして本開示の多数の修正および変形が可能であり、そのような全てが本明細書によって企図されている。例えば、本明細書に記載の実施形態に加えて、本開示は、本明細書に挙げられた本開示の特徴と本開示の特徴を補足する引用した先行技術文献の特徴との組み合わせから生じる発明を企図し、クレームする。同様に、記載されている材料、特徴、または物品は、他の材料、特徴、または物品と組み合わせて使用されてもよく、そのような組み合わせは、本開示の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0227】
本明細書に引用または記載されている各特許、特許出願、および刊行物の開示は、あらゆる目的のために、それぞれその全体で、ここに参照により本明細書に援用する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7