(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】シングルフィンガー分配物品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/30 20060101AFI20220412BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B65D83/30
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2019517080
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(86)【国際出願番号】 US2017056739
(87)【国際公開番号】W WO2018075382
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-17
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・アール・シュレーヤー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エス・ブラック
(72)【発明者】
【氏名】チャド・ヴィ・シュエッテ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェイ・シラー
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-285656(JP,A)
【文献】実開昭63-144866(JP,U)
【文献】特開2005-254142(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01445202(GB,A)
【文献】特開2003-159551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/30
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する頂端部(12)および底端部(14)を有し、前記頂端部から弁棒(20)が延在し、前記弁棒に分配装置(100)が取り付けられた、缶(10)を備える物品であって、
前記分配装置が、
a.中空基部(30)であって、対向する入口端部(32)および出口端部(34)を有し、前記入口端部および前記出口端部を含む前記
中空基部全体を通って延在する中空基部流路(36)を画定し、前記弁棒から前記中空基部の前記中空基部流路内への流体連通を提供するように、前記入口端部が、前記缶の前記弁棒に取り外し可能に取り付けられている、
前記中空基部と、
b.中空管(40)であって、対向する入口端部(42)および出口端部(44)を有し、前記入口端部、および前記出口端部に近接した1つ以上の孔(48)を含む、前記中空管全体を通って延在する中空管流路(46)を画定し、前記中空基部流路と中空管流路との間の流体連通を確立して、前記2つの流路が連続となるように、前記中空管の前記入口端部が前記中空基部の前記出口端部に近接するように前記中空基部に取り付けられ
ている、
前記中空管と、
c.スリーブ(50)であって、対向する下端部(52)および分配端部(54)と、前記下端部に近接したフィンガーパッド(58)とを有し、前記スリーブの前記分配
端部が前記中空管の前記出口端部に近接するように、前記中空管の少なくとも一部を覆って延在しかつ摺動可能であり、
前記スリーブは、前記分配端部に近接した分配孔(56)を画定する、
前記スリーブと、
d.前記スリーブが前記中空基部から離れるように前記中空管に沿って摺動するときに、前記スリーブを前記中空基部に向って戻すように前記中空管に沿って摺動させる復元力を提供するように、前記スリーブを前記中空基部および前記スリーブの前記下端部に近接した中空管のうちの少なくとも一方に取り付ける、弾性コネクタ(60)と、
e.前記中空管とスリーブとの間で前記中空管の外側を囲み、前記中空管の前記出口端部に近接した
1つ以上の孔(48)と前記中空管の前記入口端部との間に位置する、シーリングガスケット(70)と
を含み、
前記スリーブを前記中空管に沿って摺動させることによって、前記分配装置が開位置と閉位置との間で可逆的に移動することができ、前記閉位置は、前記スリーブが、前記中空管の前記出口端部に近接した、前記中空管の1つ以上の孔を封止することによって特徴付けられ、前記開位置は、前記中空管を通る前記1つ以上の孔を開放して、前記中空管流路からの流体の流れが前記分配端部に近接した前記スリーブから流出することを可能にするように、前記スリーブを前記閉位置から前記中空管に沿って前記中空基部から離れるように摺動させることによって達成され、
指を前記フィンガーパッドに押し付ける単一の動作で、前記スリーブを開位置に摺動させ、前記弁棒を傾斜させて、前記缶の加圧内容物を前記中空管を通して分配することができ、続いて、前記フィンガーパッドの圧力を解放する単一の指動作で、前記缶の閉位置への前記弁棒の復帰と、前記スリーブの閉位置への復帰との両方をもたらす、
前記物品。
【請求項2】
前記中空管が、共に取り付けられた複数の部品を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記中空管が、先端部に取り付けられた第1の部分を含み、前記第1の部分が、前記中空管の前記入口端部を含み、前記先端部が、前記中空管の前記出口端部、および前記中空管の前記出口端部に近接した前記1つ以上の孔を含む、請求項
1に記載の物品。
【請求項4】
前記
中空基部と前記中空管の少なくとも一部とが単一部品である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記中空管が、前記中空管の出口端部に近接して外径が狭くなり、前記スリーブが、前記下端部から前記分配端部まで前記スリーブを通って延在するスリーブチャネルを画定するように管状であり、前記スリーブチャネルが前記分配端部に近接して径が狭くなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記中空管は、その出口端部に孔を有し、前記スリーブは、その分配端部において前記スリーブ内に延在する突起(500)であって、前記分配装置が閉位置にあるときには、前記中空管の前記出口端部の前記孔を封止して、それにより前記中空管の前記出口端部の前記孔からの流体の流出を防止し、前記分配装置が開位置にあるときには、前記孔から離れており、流体が前記中空管の前記出口端部の前記孔から流出することが可能なように位置決めされている、
前記突起を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記中空管が、前記出口端部に近接して外径が狭まるテーパ付き中空管部を有し、かつ前記テーパ付き中空管部を通して孔を画定し、前記スリーブが、前記分配端部に近接して内径が狭まるテーパ付きスリーブ部を有し、前記分配装置が閉位置にあるときには、前
記スリーブが前記テーパ付き中空管部の前記孔を封止して、それにより前記孔を通る流体の流れを防止するように、前
記テーパ付き
中空管部と
前記テーパ付きスリーブ部とが嵌合し、前記分配装置が開位置にあるときには、前
記スリーブが前記テーパ付き中空管部の前記孔から外れており、それにより前記孔を通る流体の流れを可能にする、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記弾性コネクタが、1つ以上のエラストマーポリマーバンド、コイルバンド、およびばねからなる群から選択される1つ以上の要素から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記中空管が、前記弁棒に取り付けられているとき、および閉位置にあるときに、缶の弁棒に対して同一直線上に延在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶と、缶に取り付けられた分配装置とを備える物品に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者による分配のために、多数の製品が加圧缶で販売されている。そのような製品には、ホイップトッピングおよびフロスティングなどの食料品、ならびにスプレーフォームシーラントなどの建築材料が含まれる。そのような加圧缶用の分配装置は、缶の弁棒に取り付けられた単純な管または弁棒の一部から複雑なトリガー作動式デバイスまで及ぶ。現在多数の分配装置が入手可能であるにもかかわらず、望ましい特徴および/または能力の組み合わせを提供する分配装置を開発する必要がある。
【0003】
ユーザーが缶および分配器を片手で、手の前腕に対して軸方向に保持して操作することを可能にし、アクセスするために手を伸ばす必要のある場所など、到達が困難な場所へのアクセスを可能にして、分配をより快適で、ユーザーにとって疲労の少ないものにする分配装置を提供することが望ましい。同時に、分配装置がコンパクトであり、加圧缶で容易に包装されることが望ましい。さらに、分配装置が、片手で加圧缶からの分配を開始および停止する能力をユーザーに提供することが望ましく、それが、閉位置にあるときに、分配器が滴るのを自動的に封止する。分配装置が、向きに関係なく動作可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ユーザーが缶を片手で、手の前腕に対して軸方向に保持して操作することを可能にし、アクセスするために手を伸ばす必要のある場所など、到達が困難な場所へのアクセスを可能にして、分配をより快適で、ユーザーにとって疲労の少ないものにする分配装置を提供する。同時に、分配装置は、コンパクトで、加圧缶で容易に包装され、片手で加圧缶からの分配を開始および停止する能力をユーザーに提供し、およびそれが、閉鎖位置にあるときに、分配器が滴るのを自動的に封止し、向きに関係なく動作可能である。
【0005】
第1の態様では、本発明は、対向する頂端部(12)および底端部(14)を有し、頂端部から弁棒(20)が延在し、弁棒に分配装置(100)が取り付けられた、缶(10)を備える物品であって、分配装置が、(a)中空基部(30)であって、対向する入口端部(32)および出口端部(34)を有し、入口端部および出口端部を含む、基部全体を通って延在する中空基部流路(36)を画定し、弁棒から中空基部の中空基部流路内への流体連通を提供するように、入口端部が、缶の弁棒に取り外し可能に取り付けられている、中空基部と、(b)中空管(40)であって、対向する入口端部(42)および出口端部(44)を有し、入口端部、および出口端部に近接した1つ以上の孔(48)を含む、中空管全体を通って延在する中空管流路(46)を画定し中空基部流路と中空管流路との間の流体連通を確立して、この2つの流路が連続となるように、中空管の入口端部が中空基部の出口端部に近接するように中空基部に取り付けられた、中空管と、(c)スリーブ(50)であって、対向する下端部(52)および分配端部(54)と、下端部に近接したフィンガーパッド(58)とを有し、スリーブの分配が中空管の出口端部に近接するように、中空管の少なくとも一部を覆って、延在し、かつ摺動可能であり、分配端部に近接した分配孔(56)を画定する、スリーブと、(d)スリーブが中空基部から離れるように中空管に沿って摺動するときに、スリーブを中空基部に向って戻すように中空管に沿って摺動させる復元力を提供するように、スリーブを中空基部およびスリーブの下端部に近接した中空管のうちの少なくとも一方に取り付ける、弾性コネクタ(60)と、(e)中空管とスリーブとの間で中空管の外側を囲み、中空管の出口端部に近接した孔(単数または複数)(48)と中空管の入口端部との間に位置する、シーリングガスケット(70)と、を含み、スリーブを中空管に沿って摺動させることによって、分配装置が開位置と閉位置との間で可逆的に移動することができ、閉位置は、スリーブが、中空管の出口端部に近接した、中空管の1つ以上の孔を封止することによって特徴付けられ、開位置は、中空管を通る1つ以上の孔を開放して、中空管流路からの流体の流れが分配端部に近接したスリーブから流出することを可能にするように、スリーブを閉位置から中空管に沿って中空基部から離れるように摺動させることによって達成され、指をフィンガーパッドに押し付ける単一の動作で、スリーブを開位置に摺動させ、弁棒を傾斜させて、缶の加圧内容物を中空管を通して分配することができ、続いて、フィンガーパッドの圧力を解放する単一の指動作で、缶の閉位置への弁棒の復帰と、スリーブの閉位置への復帰との両方をもたらす、物品である。
【0006】
本発明は、加圧缶から内容物を分配するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】(a)側面図、(b)(a)から90度回転させた側面図、(c)(a)に示す視線Aに沿った切り取り側面図、および(d)(c)の分配端部の拡大図による分配装置の図示である。
図2の分配装置は、弾性コネクタとして機能する、基部とスリーブとの間の中空管の周りにコイル状に巻かれたばねを含み、閉位置にあるときに中空管の出口端部の孔を封止する、スリーブ上の突起を含む。
【
図3】(a)側面図、(b)(a)から90度回転させた側面図、(c)(a)に示す視線Aに沿った切り取り側面図、および(d)(c)の分配端部の拡大図による分配装置の図示である。
図3の分配装置は、弾性コネクタとして機能する一対の弾性バンドを含み、閉位置にあるときに中空管の出口端部の孔を封止する、スリーブ上の突起を含む。
【
図4】(a)側面図、(b)(a)から90度回転させた側面図、(c)(a)に示す視線Aに沿った切り取り側面図、および(d)(c)の分配端部の拡大図による分配装置の図示である。
図4の分配装置は、弾性コネクタとして機能する一対の弾性バンドを含む。中空管は、出口端部に近接した複数の孔を有する閉じた出口端部を有する。
【
図5】(a)側面図、(b)(a)から90度回転させた側面図、(c)(a)に示す視線Aに沿った切り取り側面図、および(d)(c)の分配端部の拡大図による分配装置の図示である。
図5の分配装置は、弾性コネクタとして機能するスプリングテザーを含む。中空管は、スリーブの出口端部に近接して複数の孔を画定する。
【
図6】本発明の物品の例示として、
図4の分配装置が取り付けられた
図1の缶を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「および/または」は「および、または代替的に」を意味する。特に記載がない限り、すべての範囲は端点を含む。「複数」とは1より多いことを意味する。「流体」は、固定された形状を有さず、外圧に降伏する物質を意味し、気体、液体、および気体または液体の連続製剤を含む。必ずしもそうとは限らないが、典型的には、流体は液体、および液体の連続製剤を意味する。
【0009】
「に近接した」とは「に近い」を意味し、「の上に直接位置する」を含む。対向する位置を有する位置に「近接した」と記載されている場合、位置関係は、対向する位置よりも記載された位置に近いことを意味する。例えば、対向する端部「A」および「B」を有する物品の端部「A」に近接して物体が位置する場合、最も広い意味では、物体は端部「B」より端部「A」の近くに位置し、物体は端部「A」の上に直接位置し得る。
【0010】
本発明の物品は、
図1に示す缶(10)のような缶を備える。缶は、対向する頂端部(12)および底部端部(14)を有する。一般に、缶は円筒形であり、円筒の側面が缶の長さ(L)に対応し、上端部と下端部とが、缶の長さだけ離れている。弁棒(20)が、缶の頂端部から延在している。缶は、流体材料を充填されて加圧され得、このとき、弁棒を缶内に圧入するか、または弁棒を缶に対して傾斜させて弁棒の一部を缶内に圧入させることにより、缶が開き、加圧された内容物が便棒を通って缶から出ていくことができる。
【0011】
分配装置(100)が、缶の弁棒に取り付けられている。分配装置は、缶の長さが、その、缶の内容物を分配している間の前腕に対する長手軸方向に延在するようにして、ユーザーが缶を保持することを可能にする。さらに、分配装置の設計により、ユーザーは、片手、さらには一本の指を使用して、同時に、分配装置を開き、弁棒を作動させて、所望の表面に噴霧するために、缶の加圧内容物が弁棒および分配装置を通って流れるようにすることができる。同様に、分配装置の設計により、ユーザーは、片手、さらには一本の指を使用して、同時に、分配装置を閉じて密封し、弁棒を不作動にして、缶からの内容物の流れを止めると共に、液だれを防止するために、分配装置を密封することができる。
【0012】
本発明での使用に適した分配装置の実施形態が
図2~5に示されており、分配装置の異なる要素の様々な例示的な実施形態を示している。本発明の最も広い範囲において、1つの要素の任意の実施形態は、任意の他の要素の任意の実施形態と組み合わせ可能であると予想される。
図2~5の組み合わせは、各要素のいくつかの異なる実施形態、およびそれらを組み合わせて本発明の実施形態を形成することができる方法を示す。以下の参照番号は、特定の要素の実施形態の例示のために
図2~5を参照する。図中の要素は、要素または発明の最も広い範囲を定義することを意図していない。
【0013】
分配装置は、対向する入口端部(32)と出口端部(34)とを有する中空基部(30)を備える。中空基部は、入口端部および出口端部を含む中空基部全体を通って延在する中空基部流路(36)を画定する。中空基部は、弁棒から中空基部の中空基部流路内への流体連通を提供するように、缶の弁棒に取り外し可能に取り付けられている。弁棒は中空基部の入口端部内に嵌合されており、この点で、中空基部の入口端部は弁棒に取り付けられている。中空基部は、缶の弁棒上のねじとかみ合うその入口端部に近接した中空基部流路内に延在するねじを有することができ、それにより、中空基部を弁棒にねじで取り付けることが可能になる。代替的に、弁棒は、入口端部を通って中空基部流路内に嵌合し、摩擦によって、ねじなしで、中空基部を所定の位置に保持することができる。
【0014】
分配装置は、対向する入口端部(42)および出口端部(44)を有する中空管(40)をさらに含む。中空管は、入口端部、および出口端部に近接した1つ以上の孔を含む、中空管全体を通って延在する中空管流路(46)を有する。
図2および3は、中空管の出口端部に単一の孔(48)がある、本発明の実施形態を示す。
図4および5は、中空管の出口端部に近接しているが、出口端部に直接存在しない複数の孔(48)がある、本発明の実施形態を示す。本発明はまた、中空管の出口端部に複数の孔が画定されている実施形態、ならびに中空管の出口端部に近接しているが、出口端部に直接存在しない単一の孔を有する実施形態も含む。
【0015】
中空管は、中空基部の出口端部が中空管の入口端部に近接するように、および中空基部流路と中空管流路との間に流体連通があるように、中空基部に固定される。中空基部は、
図2~5に示されるように、中空管の一部または全体と一体であり得る。すなわち、中空基部、および中空管の少なくとも一部は、単一材料片であり得る。代替的に、中空基部は、中空管に結合する中空管とは別の材料片であり得る。例えば、中空管は、中空基部の出口端部に近接した、中空基部の一部を覆って摺動することができ、凹凸嵌合システムを用いてねじ留め、スナップ留めするか、または互いに摩擦固定された状態にとどまるのに十分な程度、ただぴったり嵌合することができる。中空管および中空基部の少なくとも一部が単一材料片である場合、基部は、缶の弁棒の一部を包囲する部分であることによって、中空管と区別される。
【0016】
分配装置は、下端部(52)と、対向する分配端部(54)とを有するスリーブ(50)をさらに含む。スリーブは、中空管の少なくとも一部を覆って位置付けられ、中空管の少なくとも一部を覆って可逆的に摺動することができる。スリーブの分配端部は、中空管の出口端部に近接している。スリーブは、分配端部に近接した、好ましくは分配端部上の、スリーブを通る分配孔(56)を画定する。
【0017】
スリーブは、下端部(52)に近接したフィンガーパッド(58)を有する。フィンガーパッドは、ユーザーがフィンガーパッドに圧力を加えて、スリーブを中空管を覆って摺動させる、分配装置および弁棒を缶に対して傾斜させる、またはスリーブを中空管を覆って摺動させることと、分配装置および弁棒を缶に対して傾斜させることの両方を行えるように、スリーブの側面に配置されている。フィンガーパッドは、分配装置を操作するときに、ユーザーが指を置く対象である。フィンガーパッドは、スリーブからはみ出して延在する突起(例えば、ノブまたはボタン)であり得、この突起を指で押圧して、スリーブを上および/または下に摺動させることができる。望ましくは、フィンガーパッドは、ユーザーがフィンガーパッドを快適に押圧して分配器を作動させることができるように、指先の一般的な形状に合うよう形成される。フィンガーパッドは、スリーブと一体の単一材料片であり得る。代替的に、フィンガーパッドは、スリーブに取り付けられる別の材料片であり得る。
【0018】
分配装置は、スリーブを、スリーブの下端部に近接して(i)中空基部および(ii)中空管のうちのすくなくとも一方に取り付ける弾性コネクタ(60)を備える。弾性コネクタは、スリーブが中空管に沿って中空基部から離れる方向に摺動するときに伸びて、スリーブを中空管に沿って中空基部に向かって摺動させる方向に復元力を提供する。弾性コネクタは、上述の性能を達成する任意の材料とすることができる。適切な弾性コネクタの例には、弾性バンド、弾性ストリップおよびばねからなる群から選択される任意の1つ以上の物品が含まれる。弾性コネクタは、弾性ポリマーで作ることができる。バネの形態の弾性コネクタは、ポリマー材料および/または金属材料を含むか、またはそれらからなることができる。誤解を避けるために、「バンド」は、ストリップおよびループの両方の構成の物品を含む。
【0019】
図2および3は、スリーブの基端部に近接してスリーブに取り付けられ、中空管の下の中空基部に取り付けられたバネの形態の弾性コネクタ(60)の実施形態を示し、バネは、中空基部、および/または中空基部およびスリーブとの接続点間の中空管の周りに巻かれている。スリーブが中空管に沿って中空基部から離れる方向に摺動すると、弾性コネクタばねが伸び、それによって、スリーブを摺動させて中空基部に向かって戻す復元力が生じる。
【0020】
図4および5は、フィンガーパッド近くのスリーブと、中空基部の側面とに取り付けられた弾性バンドの形態の弾性コネクタ(60)の実施形態を示す。スリーブが中空管に沿って中空基部から離れる方向に摺動すると、弾性バンドが伸び、それによって、スリーブを摺動させて中空基部に向かって戻す復元力が生じる。弾性バンドは、例えば、フィンガーパッドまたはスリーブから延在する突起(59)の上、および中空基部の側面から延在する突起(38)の上に巻かれたゴムバンドまたは類似の弾性バンドであってもよい。
【0021】
図5は、スリーブが中空管の出口端部に向かって移動されると解けて、それにより巻き戻すための復元力が生じる、スプリングテザー形態の弾性コネクタ(60)を示す。
【0022】
分配装置は、スリーブを中空管に沿って摺動させることによって、開位置と閉位置との間で可逆的に移動することができる。分配装置が閉位置にあるときには、スリーブ(これはスリーブの一部のみを意味し得る)は、中空管の出口端部に近接した1つ以上の孔の全てを封止し、それによって、中空管の内側から(すなわち、中空管流路から)1つ以上の孔のいずれかを通って、中空管の外側に至る流体連通を防止する。分配装置が開位置にあるときには、スリーブは、中空管の出口端部に近接した1つ以上の孔を封止しないので、中空管の内側から、中空管の出口端部に近接した1つ以上の孔を通って、中空管の外側に至る流体連通が可能になる。分配装置が閉位置にあるときに、スリーブを中空管に沿って中空管の出口端部に向かって摺動させると、スリーブが、中空管の出口端部に近接した1つ以上の孔を開放にし、分配装置を開位置に移動させるのに対応した状態になる。分配装置が開位置にあるときに、スリーブを中空管に沿って中空基部に向かって摺動させると、スリーブが、中空管の出口端部に近接した1つ以上の孔を封止し、分配装置を閉位置に位置決めするのに対応した状態になる。
【0023】
スリーブの下端部に近接したフィンガーパッドを使用して、指でパッドに圧力を加えると、分配装置を開位置に移動させるように、スリーブが中空管に沿って都合よく摺動する。フィンガーパッドの圧力を解放すると、弾性コネクタが、スリーブを中空コネクタに向かって閉位置へ引き戻すことが可能になる。さらに、分配装置が缶の弁棒に取り付けられているときにフィンガーパッドに圧力を加えることにより、一本指の単一動作で、弁棒を傾斜させて缶を開き、分配装置のスリーブを開位置に摺動させることが、同時にできる。フィンガーパッドの圧力を解放すると、弁棒が閉位置に戻り、弾性コネクタが、分配装置を閉位置に位置決めするように、スリーブを方向付けることができる。したがって、分配装置が取り付けられている缶の内容物を配置するための分配装置の操作を一本の指で完了することができ、フィンガーパッドを指で押圧してスリーブを摺動させ、弁棒を傾斜させることにより、缶および分配装置の両方を開放し、続いてフィンガーパッドの圧力を開放することにより、缶を閉じて分配装置を閉位置に封止することができる。
【0024】
中空管は、均一な外径であり得るか、または好ましくは、
図4および5に示されるように、中空管の出口端部に近接して径がより小さくなる先細である。同様に、中空管の出口端部に近接して中空管を覆って延在するスリーブの部分は、内径が均一であり得る。代替的に、中空管が、中空管の出口端部に近接して外径がより小さくなる先細である場合、中空管の出口端部に近接して中空管を覆って延在するスリーブの部分も、好ましくは、分配装置が閉位置にあるときに、中空管のテーパ付き端部の外側がスリーブの内側に嵌合するように、中空管の出口端部に近接して内径がより小さくなる先細であり得る。
【0025】
中空管および/またはスリーブは、単一部品であるか、または共に取り付けられた複数の部品を含むことができる。例えば、中空管がテーパ付き端部を有する場合、テーパ付き先端部を、中空管の残り部分を含む第1の部分とは別に準備し、第1の部分が中空管の入口端部を含み、先端部が、中空管の出口端部および中空管の出口端部に近接した1つ以上の孔を含むようにすることが有利であり得る。先端部は、テーパ付き先端部が中空のテーパ付き端部を含むように、中空管の第1の部分に取り付けられる。別々の部品は、任意の方法で互いに取り付けることができる。例えば、部品は、ある部品のリング(または他の突起)が別の部品の溝(または他の窪みまたは孔)に嵌合構造ではめ込まれる、嵌合するリングおよび溝を含むことができる。
【0026】
本発明の最も広い範囲において、分配装置が任意の考えられる手段によって閉じられたとき、スリーブは、中空管の端部に近接した1つ以上の孔を封止することができる。例えば、スリーブは、分配装置が閉位置に配置されたときには、中空管の1つ以上の孔に入る、または当たるように摺動するが、分配装置が開位置に移動されたときには、1つ以上の孔から出る、または離れるように摺動する突起を画定し得る。
図2および3は、スリーブ(50)が、出口端部の開口部(48)を画定する中空管(40)に向って内側に延在する突起(500)を含む、この実施形態の一バージョンを示す。分配装置が閉じられると、開口部(48)を封止して、開口部(48)を通じた中空管の流路からの流体連通を妨げるように、突起(500)が開口部(48)に押し当てられる、または押し込まれる。分配装置が開位置にあるときには、中空管の流路から流体の流れが、開口部(48)を通って、および突起(500)の周りの1つ以上の分配孔(56)を通って流れることができるように、突起(500)は開口部(48)から離れている。
【0027】
1つ以上の孔(48)が中空管の出口端部に近接しているが、出口端部にはない場合、分配装置が閉位置にあるときに流体の流れを妨げることが可能な追加の構成がある。例えば、1つ以上の孔からの、中空管とスリーブとの間の流体の流れが、スリーブの分配端部から流出するのを妨げる、中空管の周りのシールを形成するように、中空管の閉じた出口端部をスリーブに押し当てることができる。同時に、ガスケットが、中空管とスリーブとの間の、中空管の入口端部へ向う流体の流れを妨げる。これは、中空管(40)の出口端部(44)がスリーブ(50)に対して封止し、出口端部(44)がスリーブ(50)に対して封止する位置とシーリングガスケット(70)との間に孔(48)が存在する、閉位置にある分配装置を示した
図4および5の構成の状態である。
図4および5では、スリーブの内径および中空管の外径の両方が、それぞれ分配端部および出口端部に近接して直径がより小さくなる先細になっている。開位置にあるとき、スリーブは中空管の閉じた端部から移動され、それにより、出口端部に近接した、中空管の1つ以上の孔からの流体の流れが、スリーブの分配端部から流出することができる。追加的または代替的に、スリーブは、閉じられたときに、1つ以上の孔(48)の周りの中空管に押し当てられる、および/または中空管の出口端部に近接した1つ以上の孔を直接封止するように、突起を孔(48)の中に伸ばすことができる。スリーブは次に、開位置にあるときに、1つ以上の孔に対してオフセットすることができる。これらの構成のいずれにおいても、中空管は、中空管の出口端部に近接して外径がより狭くなる先細であり、スリーブは、スリーブの分配端部に近接して内径がより狭くなる先細であることが望ましい。テーパ形状により、閉位置においては、中空管がスリーブの狭められた内径の中にあるので、分配装置の封止が容易になる一方で、開位置においては、中空管の出口端部がスリーブのより大きい内径の中にあり、それにより、中空管の出口端部の周りの、中空管の1つ以上の孔からの、およびスリーブの分配端部を通って出る、流れが容易になる。
【0028】
シーリングガスケット(70)は、ガスケットが、中空管とスリーブと間の流体の流れがガスケットを通過するのを防止するように、中空管とスリーブとの間の中空間の外側の周りに備わっている。シーリングガスケットは、中空管の周りの全域(すなわち、中空管の断面の全周)にわたって中空管とスリーブの両方に接触するのが望ましい。シーリングガスケット(70)は、存在する場合、1つ以上の孔(48)と中空管(40)の入口端部(42)との間に、好ましくは1つ以上の孔(48)に近接して、配置される。シーリングガスケットは、中空管とスリーブとの間の中空管の外側に沿ってシーリングガスケットを通過する流体の流れを防止するように、中空管の壁とスリーブとの両方に接触する。シーリングガスケットは、中空管の出口端部を出る流体が、中空管とスリーブとの間に沿ってシーリングガスケットを通過して移動するのを防止する障壁として作用し、代わりに、流体をスリーブの分配端部から排出させる。シーリングガスケットは、中空管の外側の全周を包むのが望ましい(例えば、中空管の周りの材料のリング)。シーリングガスケットは、中空管の壁の外側またはスリーブの内側のいずれかに取り付け得る、またはその一部(すなわち、成形などにより一体化する)とし得る。あるいは、シーリングガスケットは、中空管にもスリーブにも取り付けられ得ず、むしろ中空管とスリーブとの間に摩擦により保持され得る。シーリングガスケットは、硬質プラスチックのような硬質材料とし得るが、望ましくは、シーリングガスケットが中空管およびスリーブの両方に適合して、スリーブが開位置と閉位置との間で中空管に沿って摺動するときにも、流体不透性シールを形成するように、中空管およびスリーブのうちの一方または両方に接触する弾性材料である。適切な弾性シーリングガスケット材料の例には、ニトリル類およびエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのゴム材料が含まれる。
【0029】
本発明の物品は、弁棒に取り付けられたときおよび閉位置にあるときに、弁棒よび缶の長さに対して同一直線上に延在する中空管を有することが望ましい。そのような構成では、本発明の物品は、片手で手の前腕に対して軸方向に容易に操作可能である。それにより、アクセスするために手を伸ばす必要のある場所など、到達が困難な場所へのアクセスを可能にして、分配をより快適で、ユーザーにとって疲労の少ないものにすることができる。
【0030】
図6は、
図1の缶に取り付けられた、
図4の分配装置を含む本発明の物品を示す。分配装置は、弁棒が中空基部流路内に延在するように、缶の弁棒に取り付けられる。中空管は、弁棒および缶の長さに対して同一直線上に延在する。同様に、
図2~5のいずれかの分配装置を、同様の方法で、
図1の缶の弁棒に取り付けることができる。
【0031】
分配装置は、分配装置が開位置にあるのか閉位置にあるのかの視覚的表示を提供する位置インジケータを含むことができる、または含まなくてもよい。位置インジケータの一例が、中空管の一部を現す、分配端部に近接した、スリーブの側面の孔(
図4および5に示す57)であり、分配装置が閉位置にあるときに孔を通して現れる中空管の部分はある色であり、開のときには別の色である。