(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220412BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61B5/055 382
G01N24/08 510D
G01N24/08 510Y
(21)【出願番号】P 2019522646
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 SE2017051125
(87)【国際公開番号】W WO2018088954
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-06
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】509320357
【氏名又は名称】シーアール ディベロップメント アーベー
【住所又は居所原語表記】Box 2050, 220 02 LUND, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラシック、サモ
(72)【発明者】
【氏名】トップガールド、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ルンデル、ハンス・マグナス・ヘンリック
【審査官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/119569(WO,A1)
【文献】特表2017-507698(JP,A)
【文献】特表2015-518568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0130458(US,A1)
【文献】特表2015-518408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0115957(US,A1)
【文献】特表2009-524830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0238969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0231410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに複数の拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記複数の測定は、
3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と、
第3の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第3の測定と、
を含み、前記第2および前記第3の拡散エンコーディングシーケンスは異なるスペクトルコンテントを有する、方法。
【請求項2】
前記第1、第2、および第3の拡散エンコーディングシーケンスは、
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、非ゼロエンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの集合から成る試験サンプルに適用され、
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、前記非ゼロエンコー
ディング強度を有する第5の拡散エンコーディングシーケンスが、前記試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、前記非ゼロエンコーディング強度を有する第6の拡散エンコーディングシーケンスが、前記試験サンプルに適用され、
前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第5の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致し、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる前記信号減衰が、前記第6の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と異なるように構成される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記第1、第2、および第3の測定の結果生じる信号に基づいて出力を生成することをさらに備え、前記出力は、前記サンプルに関する拡散特性の周波数依存性を示す、請求項1
又は請求項2の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の測定の結果生じる前記信号の比較と、前記第1および第3の測定の結果生じる前記信号の比較とに基づいて出力を生成することをさらに備える、請求項3の方法。
【請求項5】
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの拡散エンコーディング強度は、前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの拡散エンコーディング強度、および前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの拡散エンコーディング強度に対応する、請求項1~4のいずれかの方法。
【請求項6】
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの前記テンソル表現は、3つの対応する非ゼロ固有値を有する、請求項1~5のいずれかの方法。
【請求項7】
前記第2および前記第3の拡散エンコーディング
シーケンスは、等しい数の非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有する、請求項1~6のいずれかの方法。
【請求項8】
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスおよび前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの各々は、厳密に1つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する、請求項1~7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
前記複数の測定は、
前記第1の測定と、異なる拡散エンコーディング強度を有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含み、各追加の拡散エンコーディングシーケンスが、3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現および前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有する、第1の測定セットと、
前記第2の測定と、異なる拡散エンコーディング強度および同じスペクトルコンテントを有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む、第2の測定セットと、
前記第2の測定と、異なる拡散エンコーディング強度および同じスペクトルコンテントを有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む、第3の測定セットと、
を含み、
前記第2の
測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの前記スペクトルコンテントは、前記第3の
測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの各々と異なる、請求項1~4のいずれかの方法。
【請求項10】
第1の信号減衰曲線を推定するために、前記第1の測定セットを表す第1のデータセットに第1の関数をフィッティングすることと、
第2の信号減衰曲線を推定するために、前記第2の測定セットを表す第2のデータセットに第2の関数をフィッティングすることと、
第3の信号減衰曲線を推定するために、前記第3の測定セットを表す第3のデータセットに第3の関数をフィッティングすることと、
をさらに備える、請求項9の方法。
【請求項11】
前記第1の測定セットを表す第1のデータセット、前記第2の測定セットを表す第2のデータセット、および前記第3の測定セットを表す第3のデータセットに基づいて出力を生成することをさらに備える、請求項9
又は10の方法。
【請求項12】
前記第1の関数の少なくとも1つのパラメータ、前記第2の関数の少なくとも1つのパラメータ、および前記第3の関数の少なくとも1つのパラメータに基づいて出力を生成することをさらに備える、請求項10
の方法。
【請求項13】
前記第2の
測定セットおよび前記第3の
測定セットの各々の前記拡散エンコーディングシーケンスは、等しい数の非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する、請求項9~1
2のいずれか1項の方法。
【請求項14】
前記第1の測定セットの各拡散エンコーディングシーケンスのそれぞれのテンソル表現は、3つの対応する非ゼロ固有値を有する、請求項13の方法。
【請求項15】
前記第2の
測定セットおよび前記第3の
測定セットの各々の前記拡散エンコーディングシーケンスは、厳密に1つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する、請求項9~14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記複数の測定を実行することは、前記サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、前記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を取得することを含む、請求項1~15のいずれかの方法。
【請求項17】
前記第1の測定において取得された信号減衰が前記第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標、および前記第2の測定において取得された信号減衰が前記第3の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することをさらに備える、請求項16の方法。
【請求項18】
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記複数の測定は、
3つの一致する非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
厳密に1つの非ゼロ固有値または互いに異なる少なくとも2つの固有値を有するテンソル表現を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と、
を含み、
前記第1および前記第2の拡散エンコーディングシーケンスは、
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、非ゼロエンコーディング強度を有する第3の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの組み合わせから成る試験サンプルに適用され、
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、前記非ゼロエンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、前記試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致する
ように構成される、方法。
【請求項19】
前記複数の測定を実行することは、前記サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、前記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を取得することを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記第1の測定において取得された信号減衰が前記第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することをさらに備える、請求項19の方法。
【請求項21】
前記第2及び第3の拡散エンコーディングシーケンスは、
【数1】
によって与えられるそれぞれの拡散強調テンソル表現を持ち、
【数2】
は、周波数を示し、
【数3】
は、それぞれの拡散エンコーディングシーケンスの時間依存ディフェージングベクトル
【数4】
のディフェージングスペクトルを表し、
【数5】
であり、
【数6】
は、
【数7】
の振幅であり、
【数8】
は、正規化されたディフェージングベクトル波形であり、
前記第2及び第3の拡散エンコーディングシーケンスは、異なる
【数9】
を持つ意味で異なるスペクトルコンテントを持ち、
【数10】
は、それぞれの拡散エンコーディングシーケンスに対してテンソル
【数11】
の固定値を示し、
【数12】
である、
請求項1~17のいずれかの方法。
【請求項22】
前記第2の及び第3の拡散エンコーディングシーケンスは、n=2に対して異なる
【数13】
を持つ、請求項21の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明概念は、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴(MR)または磁気共鳴撮像(MRI)実験において、粒子の運動または拡散に関する情報は、運動または拡散エンコーディング磁場勾配を適用することによってエンコードされ得る。
【0003】
運動または拡散エンコード信号は、スピン担持粒子の拡散に関する制限/制約を表し得る、構成コンパートメントの組織微細構造、異方性、形状、およびサイズに関する情報を推測するために用いられ得る。これらは、非コヒーレント流または乱流の特性を調査するためにも用いられ得る。拡散テンソル撮像(DTI)によって得られる異方性度(FA)は、コンパートメントの巨視的配向分散によって混乱する。FAにおいて密接に関連し合う、制限を表し得る拡散テンソルの異方性から、配向分散の影響を分離するために、指向性拡散エンコーディング(1D)は、単一方向を超えて(2Dまたは3Dまで)展開するエンコーディングスキームと併用またはこれに代替される必要がある。これらのスキームは、複数の非ゼロ固有値を有する拡散エンコーディング/強調テンソル(1)によって説明することができ、様々な程度まで、混乱させる配向分散の影響を緩和または排除し、コンパートメント(拡散テンソル)異方性に特化した感度を提供することができる。
【0004】
コンパートメント(拡散テンソル)異方性の影響と配向分散の影響との分離を最大化する、Lasic他によるアプローチ(2)は、微視的異方性度(μFA)を定量化するために指向性(1D)および等方性(3D)エンコーディングを併用する。等方性エンコーディングはたとえば、qベクトルのマジック角スピニング(q-MAS)によって実現することができ(3)、一方、指向性エンコーディングに関する拡散強調は、拡散時間tdおよびb値に関してq-MASの拡散強調と一致する。拡散エンコーディングの異方性をさらに制御することによって、扁円および扁長コンパートメント形状が区別され得る。Eriksson他(4)は、拡散エンコーディングテンソルをサイズおよび形状に関してパラメータ化することによって、粉体平均信号に関する単純な式が得られ、コンパートメント形状を定量化することが可能であることを示している。拡散エンコーディング形状を変化させることは、等方性拡散率の非ゼロ分散を有するシステムのために必要である(2)。3Dエンコーディングシーケンスの使用により、異方性および等方性拡散寄与の畳み込みを解くことが可能である(5)。
【0005】
不均質かつ異方性物質の特徴付けにおける上述した進歩にもかかわらず、サンプルの拡散特性および微視的構造に関する更なる情報の抽出が可能になることが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明概念の目的は、サンプルの拡散またはインコヒーレント流特性および微視的構造に関する更なる情報の抽出を可能にする方法を提供することである。追加または代替の目的は、下記により理解され得る。
【0007】
本発明概念の態様によると、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法が提供され、方法は、
サンプルに複数の拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
複数の測定は、少なくとも、
3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する拡散強調テンソル表現を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と、
第3の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第3の測定と、
を含み、
第2および第3の拡散エンコーディングシーケンスは、異なるスペクトルコンテントを有する。
【0008】
本発明概念に係る方法は、上記第1、第2、および第3の測定の結果生じる信号減衰(すなわち、減衰エコー信号)からサンプルに関する情報を抽出することを可能にし、この情報は、サンプルに関する拡散特性の周波数依存性を含む。
【0009】
本発明概念は、異なるスペクトルコンテントを有する拡散エンコーディングシーケンスを用いる拡散強調核磁気共鳴測定を実行する見識に基づくものであり、拡散エンコーディングシーケンスの少なくとも1つ(すなわち、第1)は、3つの非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有し、サンプルの拡散またはインコヒーレント流特性の周波数依存性に関する情報の抽出を可能にする。
【0010】
下記から理解され得るように、上述した方法の態様において言及される拡散エンコーディングシーケンスは、有効勾配シーケンス、すなわち、磁場勾配シーケンスと無線周波数(RF)シーケンスとの組み合わせに起因してサンプル内のスピン担持粒子が感じる有効磁場勾配を指してよい。したがって、特に記載されない限り、拡散エンコーディングシーケンスという用語は、拡散またはインコヒーレント流エンコーディング/強調をもたらすために適合された(すなわち信号減衰の)磁場勾配シーケンスおよびRFシーケンスを含むエンコーディングシーケンスを指す。
【0011】
方法は、第1、第2、および第3の測定の各々において生じる測定信号を取得することを含んでよい。
【0012】
方法はさらに、上記第1、第2、および第3の測定の結果生じる信号に基づいて出力を生成することを備えてよい。その結果、サンプルに関する拡散特性の周波数依存性を示す出力が生成され得る。出力は、上記第1、第2、および第3の測定の結果生じる測定信号の信号レベルを示してよい。出力は、処理デバイスによって生成され得る。少なくとも第2および第3の測定は、異なるスペクトルコンテントを有する拡散エンコーディングパルスシーケンスを用いて実行されているので、取得された測定信号は、拡散特性の周波数依存性に関する情報を付与する。すなわち、取得された信号は、有効勾配シーケンスのスペクトルコンテントがどのように拡散特性に影響を及ぼすかに関する情報を付与する。
【0013】
本明細書で用いられる「拡散」は、本明細書において、サンプル内の粒子の運動のランダムまたは確率過程を意味する。拡散は、熱エネルギ、化学エネルギ、および/または濃度差によって生じるランダム分子運動を含んでよい。そのような拡散は、自己拡散としても知られている。拡散は、サンプル内でランダムに配向する微細構造内部の分子の分散流またはインコヒーレント流または乱流(すなわち、速度分散を有する流動)を含んでよい。そのような拡散は、「偽拡散」としても知られている。よって、サンプル内のインコヒーレント流の影響は、本方法において用いられる拡散エンコーディング磁場勾配シーケンスに起因する信号減衰も生じさせ得る。
【0014】
拡散過程は、周波数領域において、拡散スペクトラム、すなわち移動する粒子の速度の相関のスペクトラムによって説明され得る。異なるスペクトルコンテントを有する拡散エンコーディングシーケンスは、制限拡散および拡散異方性の影響を様々に密接に関連させ得る。異なるスペクトルコンテントを有する拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号測定の比較により、拡散スペクトラム、すなわちサンプルの拡散特性の周波数依存性を調査することが可能である。1または複数の拡散特性の周波数依存性を抽出することにより、サンプルにおける拡散過程に関する物理的制限の推定が可能である。
【0015】
本方法は、磁気共鳴測定用の従来のハードウェアを用いて検出され得る周波数範囲内(一般に1ギガヘルツ未満)の拡散スペクトラムの調査を可能にする。
【0016】
「時間依存拡散」または「周波数依存拡散」という用語は、周波数依存拡散スペクトラムの類義語として相互置換的に用いられ得る。
【0017】
サンプルの拡散特性(すなわち、等方性拡散の程度、異方性拡散の程度および/または配向など)は一般に、サンプル内の様々なコンパートメントの幾何学的形状および配向に依存する。サンプルのボクセル(すなわち、測定の空間分解能に対応する次元を有するサンプルの部分体積)からの測定信号は、ボクセル内の異なるコンパートメント内部の拡散粒子による信号寄与を含む。
【0018】
従来技術において、コンパートメント異方性結果の分析および解釈は、分散がガウシアンまたはマルチガウシアンであるものとする。この仮定は、拡散過程が非時間依存性または非周波数依存性であるという仮定に等しい。しかし、発明者によって解明されたように、拡散過程は周波数依存性を提示し得る。たとえば、コンパートメント壁部などの制限の存在により、拡散粒子の運動は制限される。従来技術による拡散テンソルは、物理的細孔の形態を大まかに表すのみであり得るが、エンコーディング波形の時間的特性を変化させることによって、形態のより正確な検出が実現され、時間依存性非ガウシアン拡散を調査することができる。
【0019】
たとえば、より小さな体積の球状コンパートメントに閉じ込められた粒子は、より大きな体積の球状コンパートメントに閉じ込められた同等の粒子よりも、拡散による信号減衰への寄与が少なくなり得る。本方法は、拡散特性の周波数依存性の抽出を可能にすることによって、この影響の検出を可能にする。
【0020】
組織サンプルにおいて、コンパートメントは、組織内の細胞によって形成され得る。よって、組織サンプル内のボクセルは、細胞内での拡散による信号寄与(すなわち、細胞内拡散成分)および細胞外での拡散による信号寄与(すなわち、細胞外拡散成分)を含んでよい。拡散スピン担持粒子は、細胞内外の水分子によって形成され得る。コンパートメント壁部は、細胞膜によって形成され得る。
【0021】
本方法によると、複数の拡散強調磁気共鳴測定が実行される。複数の測定は、少なくとも3つの(すなわち、「第1」、「第2」、および「第3」の)測定のセットを含み、各測定は、サンプルに拡散エンコーディングシーケンスを受けさせることを含む。
【0022】
本明細書で用いられる場合、測定/エンコーディングシーケンスの「第1」、「第2」、および「第3」というラベルは、測定がその特定の順序で実行されることを暗示するものではなく、測定は任意の順序で実行されてよい。
【0023】
拡散エンコーディングは、サンプルにエンコーディング磁場勾配波形およびRFパルスのシーケンスを受けさせることによって実現され得る。磁場勾配波形およびRFパルスの複合影響により、「有効勾配」を受けたサンプル(内のスピン担持粒子)が生じる。有効勾配の波形は、有効勾配波形g(t)と称され得る。
【0024】
有効勾配は、時間依存性または時間ディフェージングベクトルF(t)によって表されてよく、これは、
【数1】
によって求められ、式中、γは(サンプル内のスピン担持粒子の)核ジャイロ磁気比である。
【0025】
ディフェージングスペクトラム、すなわちディフェージングベクトルのスペクトルコンテントは、
【数2】
によって求められ、式中、ωは周波数を表し、τは拡散エンコーディング時間、すなわち有効勾配または拡散エンコーディングシーケンスの持続期間を示す。
【0026】
ディフェージングスペクトラムF(ω)に基づいて、測定テンソルMが定義され得る。測定テンソルMのn次またはn番目のモーメントのテンソル要素i,jは、
【数3】
によって求められる。
【0027】
0番目のモーメントM(0)が、拡散強調テンソルBをもたらす。
【0028】
したがって、拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散強調テンソル表現Bは、
【数4】
と求められる。
【0029】
またディフェージングベクトルF(t)は、ディフェージングベクトルの振幅qと正規化ディフェージングベクトルF
~(t)とのアダマール積、
【数5】
として表されてもよい。
【0030】
したがってディフェージングスペクトラムは、
【数6】
と表されてもよく、式中、F
~(t)は、正規化ディフェージングスペクトラム、すなわち正規化ディフェージングベクトルのスペクトルコンテントとみなされ得る。
【0031】
式(6)における正規化スペクトラムF
~(t)に関して、測定テンソルM
(n)の要素M
ij
(n)は、
【数7】
によって求められる。正規化パワースペクトラムのn番目のモーメントは、テンソルまたはマトリックス形式m
(n)で表されてよく、ここでスペクトルモーメントm
ij
(n)は、
【数7-1】
によって求められる。
【0032】
マトリックス形式で表すと、
【数7-2】
である。
【0033】
拡散スペクトラムD(ω)は、速度相関テンソル
【数7-3】
のスペクトラムとして定義され得る。
【0034】
コンパートメント主軸系において、D(ω)は対角線であり、マトリックスλ(ω)の対角線に沿った拡散スペクトラムλ
i(ω)によって求められる。要素λ
i(ω=0)は、拡散テンソル固有値とみなされ得る。よって見かけ上の拡散率は、
【数8】
によって求められる。
【0035】
上記から理解され得るように、(有効)拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスのスペクトルコンテント、または同等にディフェージングベクトル波形は、ディフェージングスペクトラムF(ω)またはその正規化部分F~(ω)によって求められる。
【0036】
拡散エンコーディング測定テンソルM
(0)の0番目のモーメントと正規化ディフェージングスペクトラムF
~(ω)との関係に基づいて、正規化エンコーディングパワースペクトラムテンソルは、
【数9】
として定義され得る。
【0037】
異なる拡散エンコーディング磁気勾配波形またはそれらのテンソル表現のスペクトルの一致またはスペクトル同調は、異なるエンコーディング波形またはテンソルに関して、同様のSij(ω)またはm(n)テンソルの同様のトレースを有することを指してよく、nは好適には2である。逆に、異なる波形またはエンコーディングテンソルは、それらのスペクトルコンテントが一致しない、すなわちSij(ω)が異なるエンコーディング波形またはテンソルに関して異なる場合、離調しているとみなされ得る。
【0038】
一致するスペクトルコンテントは、同じ
【数9-1】
を有する2つの拡散エンコーディングシーケンスとして表されてもよく、式中、μ
i
(n)は、それぞれの拡散エンコーディングシーケンスに関するm
(n)の固有値を示す。逆に、異なるスペクトルコンテントは、異なる
【数9-2】
を有する2つの拡散エンコーディングシーケンスとして表され得る。
【0039】
よって、測定テンソルM
(n)のテンソル要素は、
【数10】
によって求められ得る。
【0040】
したがって、拡散強調テンソルBの要素は、
【数11】
によって求められ得る。
【0041】
「一致するスペクトルコンテント」の概念は、拡散エンコーディングシーケンス「A」を用いる「試験サンプル」における測定「I」、拡散エンコーディングシーケンス「B」を用いる試験サンプルにおける他の測定「II」、および拡散エンコーディングシーケンス「C」を用いる試験サンプルにおけるまた他の測定「III」を考慮することによっても理解され得る。試験サンプルは、直径5μmの球状コンパートメントの組み合わせから成るサンプルである。
【0042】
シーケンス「A」およびシーケンス「B」は、シーケンス「A」および「B」のテンソル表現BA、BBのトレースが互いに等しく(すなわち、それらが同じ拡散エンコーディング強度をもたらし)、かつテンソル表現BA、BBが異なる固有値および/または同等の異なる数の固有値を有し得るようなものである。一方、シーケンス「B」および「C」は、それらのテンソル表現BB、BCが同一固有値を有するようなものである。制限は球状であるため、制限の主軸系は縮退する。したがってシーケンス「A」、「B」、および「C」のテンソル表現BA、BB、BCは、サンプルに対して任意の配向を有する3次元デカルト座標系(x,y,x)に関して与えられ得る。
【0043】
シーケンス「A」およびシーケンス「B」が試験サンプルに適用されると同じレベルの信号減衰をもたらす場合、シーケンスは、「分光的に一致」または「これらが同調」しており、すなわち、これらは一致するスペクトルコンテントを有する。
【0044】
シーケンス「B」およびシーケンス「C」が試験サンプルに適用されると異なるレベルの信号減衰をもたらす場合、シーケンスは、「分光的に離調」しており、すなわち、これらは異なるスペクトルコンテントを有する。
【0045】
上記の観点から、1つの実施形態によると、
第1、第2、および第3の拡散エンコーディングシーケンスは、
第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、非ゼロエンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの集合から成る試験サンプルに適用され、
第2の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、上記非ゼロエンコーティング強度を有する第5の拡散エンコーディングシーケンスが、上記試験サンプルに適用され、
第3の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、上記非ゼロエンコーディング強度を有する第6の拡散エンコーディングシーケンスが、上記試験サンプルに適用され、
第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、第5の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致し、第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる上記信号減衰が、第6の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と異なるように構成される。
【0046】
「第4/第5/第6の拡散エンコーディングシーケンスが…試験サンプルに適用されるように構成される」という表現は、特許請求の範囲に記載の方法において積極的に実行されることが必ず必要なステップのシーケンスとして解釈されてはならない。むしろこの表現は、第1~第3の拡散エンコーディングシーケンスの特性の機能的定義として理解されるべきである。よって、第4~第6の拡散エンコーディングシーケンスが試験サンプルに適用された場合/条件において、上述の信号減衰を伴う。この機能的定義は、当業者が、3つの拡散エンコーディングシーケンスのセットが進歩性のある特性を有するかを決定するための明瞭かつ明確なテストケースとして理解され得る。実際、特性を試験するために現実の「試験サンプル」に実際の測定を実行することは必要ではない。むしろテストケースは、第1~第3の拡散エンコーディングシーケンスのそれぞれのRFシーケンスおよび磁場勾配シーケンスを測定することによって、および第1~第3の拡散エンコーディングシーケンスのテンソル表現および正規化ディフェージングベクトル表現を計算する測定から評価されてよく、その後、(上述したエンコーティング強度および正規化ディフェージングベクトル表現を有する)第4~第6の拡散エンコーディングシーケンスが試験物体に適用された場合、その結果生じる信号減衰を(数値計算またはモンテカルロシミュレーションによって)シミュレートする。
【0047】
上記複数の拡散強調磁気共鳴測定の各々は一般に、エンコーディングブロックおよび後続する検出ブロックを含んでよい。エンコーディングブロックにおいて、サンプルは、拡散エンコーディングシーケンスを受ける。検出ブロックにおいて、拡散エンコーディングによって減衰した信号が検出および取得され得る。検出された信号または測定信号は、減衰エコー信号であってよい。
【0048】
エンコーディングブロックはさらに、サンプル内の磁化を促すために適合された無線周波数(RF)パルスシーケンスを含んでよい。RFパルスシーケンスは、縦方向緩和のみ、横方向緩和のみ、または縦方向緩和および横方向緩和の両方に起因する減衰をエンコードしてよい。よって、検出ブロックにおいて検出された信号の減衰は、拡散エンコーディング磁気勾配パルスシーケンスおよびRFパルスシーケンスの両方に起因する減衰、すなわち、有効勾配シーケンスg(t)または対応するディフェージングベクトルF(t)に起因する減衰の結果である。
【0049】
好適には、上記複数の測定は、同一のタイミングを有するRFパルスシーケンスを用いて実行される。すなわち、核緩和に起因する同じレベルの信号減衰が、各測定においてエンコードされる。これによって、測定に影響を及ぼす変化するパラメータの数が低減され得るので、データ分析が単純化され得る。
【0050】
減衰信号を取得するために、各拡散エンコーディングシーケンスは、当該技術において周知であるように、1または複数のイメージング磁気勾配および任意選択的に磁気勾配補正勾配によって補足され得る。イメージング磁気勾配シーケンスおよび補正磁気勾配シーケンスは、エンコーディングブロック中にサンプルに適用され得る。場合によっては、これらのシーケンスは、拡散エンコーディング磁気勾配パルスシーケンスと少なくとも部分的に重なってよい。ただしそのような場合、複合勾配パルスシーケンスの少なくとも一部は、上述したように説明または特徴付けされ得る拡散エンコーディングシーケンスを含む。
【0051】
方法は、上記第1、第2、および第3の測定の結果生じる信号に基づいて出力を生成することを備えてよい。上記出力を生成することは、上記第1および第2の測定の結果生じる信号の比較および上記第1および第3の測定の結果生じる信号の比較に基づいて出力を生成することを含んでよい。上記第1および第2の測定の結果生じる信号の比較は、上記第1および第2の測定の結果生じる信号の差または比を決定することを含んでよい。上記第1および第3の測定の結果生じる信号の比較は、上記第1および第3の測定の結果生じる減衰の差または比を決定することを含んでよい。
【0052】
出力は、比較の結果を示すものであってよい。たとえば出力は、比較された信号に差があるか、および/または差の大きさを示してよい。
【0053】
1つの実施形態によると、上記第1の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散エンコーディング強度は、上記第2の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散エンコーディング強度および上記第3の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散エンコーディング強度に対応する。
【0054】
テンソル特性に関して、この拡散エンコーディング強度の関係は、また/あるいは、上記第2の拡散エンコーディングシーケンスの拡散強調テンソル表現のトレースに対応し、上記第3の拡散エンコーディングシーケンスの拡散強調テンソル表現のトレースにも対応する上記第1の拡散エンコーディングシーケンスの拡散強調テンソル表現のトレースとして定義され得る。
【0055】
本実施形態は、サンプルに関する情報を抽出するための迅速かつ比較的単純なプロトコルを提供するものである。対応する拡散エンコーディング強度(すなわちb値)が3つの測定の各々において用いられるため、拡散エンコーディングの形状を変化させることおよび拡散エンコーディング磁気勾配シーケンス間でスペクトルコンテントを変化させることによって生じる信号減衰レベルへの影響は、b値の減衰への影響から独立して分析され得る。
【0056】
拡散エンコーディング強度、トレース、または固有値が対応することは、上記数量が等しい、または少なくとも実質的に等しいものとして理解され得る。すなわち、数量は厳密に等しい必要はないが、変化する形状およびスペクトルコンテントの影響が識別可能である程度の量しか異なるべきではない。言い換えると、数量は、好適には少なくとも互いに一致すべきである。数量は、好適には20%未満、より好適には10%未満、さらに好適には5%未満、さらに好適には1%未満だけ異なるべきである。理解され得るように、同等性の実現可能な最大レベルは、実際には、とりわけ機器の性能に依存する。
【0057】
本方法によると、第1の拡散エンコーディングシーケンスは、3つの非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有する。そのような拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、多次元または3次元(3D)拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスと称され得る。
【0058】
第1の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、3つの対応する非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有してよい。これによって、サンプルにおける3D等方性拡散強調が可能である。これによって、参照測定フレームに対するサンプル内の微視的構造の配向の影響が除去され得るので、測定および測定結果の分析が単純化され得る。
【0059】
あるいは第1の拡散エンコーディングシーケンスは、少なくとも1つが他の固有値と異なっている3つの非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有してもよい。そのようなシーケンスは、3D異方性拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスと称され得る。
【0060】
本方法によると、第2および第3のエンコーディングシーケンスは、異なるスペクトルコンテントを有する。
【0061】
第2および第3の拡散エンコーディングシーケンスは、等しい数の非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有してよい。これによって、第2および第3の拡散エンコーディングシーケンスが同じ数の空間次元における拡散強調をもたらし得るので、測定および測定結果の分析が単純化され得る。
【0062】
第2の拡散エンコーディングシーケンスおよび第3の拡散エンコーディングシーケンスは、各々が厳密に1つ(すなわち、唯一)の非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有してよい。
【0063】
したがって上記第2および第3の拡散エンコーディングシーケンスの各々は、単一(唯一の)方向における拡散減衰、すなわち1D拡散強調をエンコードしてよい。
【0064】
これによって、特に第1の測定が3D等方性拡散強調を含む場合、第1の測定と第2の測定および第1の測定と第3の測定との間の信号減衰の差を最大化することが可能である。
【0065】
厳密に1つの非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有する拡散エンコーディングシーケンスは、1次元(1D)拡散強調、または「スティック測定」と称され得る。
【0066】
「スティック測定」は、従来の市販の測定ハードウェアにおける実装が比較的簡単であり得る。また、データ分析は、たとえば3D拡散エンコーディングを用いて得られた結果と比べて容易であり得る。
【0067】
方法は、複数の異なる方向に沿ってサンプルに第2の拡散エンコーディングシーケンスを適用することによって第2の測定を反復すること、および複数の方向の各々に関する結果信号を測定することを備えてよい。反復された第2の測定の測定結果は、複数の結果信号の平均として決定され得る。これによって、(「粉体平均化」とも称される)方向性平均化信号減衰の決定が可能である。
【0068】
対応して、方法は、複数の異なる方向に沿ってサンプルに第3の拡散エンコーディングシーケンスを適用することによって第3の測定を反復すること、および複数の方向の各々に関する結果信号を測定することを備えてよい。反復された第3の測定の測定結果は、複数の結果信号の和または算術平均として決定され得る。これらの「粉体平均化」された第2および第3の信号は、上述および後述するように、出力を生成する時の基礎を形成してよい。
【0069】
1つの実施形態によると、第1の拡散エンコーディングシーケンスの上記テンソル表現は、3つの対応する非ゼロ固有値を有し、第2の拡散エンコーディング勾配シーケンスおよび第3の拡散エンコーディング勾配シーケンスの各々は、厳密に1つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有し、上記第1の拡散エンコーディングシーケンスのテンソル表現のトレースは、上記第2の拡散エンコーディングシーケンスの拡散強調テンソル表現のトレースに対応し、上記第3の拡散エンコーディングシーケンスの拡散強調テンソル表現のトレースにも対応する。
【0070】
よって、第1の測定は、3D等方性拡散強調を含んでよく、第2および第3の測定は、1D拡散強調を含んでよい。これによって、第1の測定と第2の測定および第1の測定と第3の測定との間の信号減衰の差を最大化することが可能である。対応する拡散エンコーディング強度(すなわちb値)が3つの測定の各々において用いられるので、拡散エンコーディングの形状を変化させることおよび拡散エンコーディングシーケンス間でスペクトルコンテントを変化させることによって生じる信号減衰レベルへの影響は、b値の減衰への影響から独立して分析され得る。
【0071】
あるいは第2および第3の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、各々が厳密に2つの非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有してもよい。
【0072】
したがって上記第2および第3の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの各々は、平面における拡散減衰、すなわち2D拡散強調をエンコードしてよい。
【0073】
第2の拡散エンコーディングシーケンスのテンソル表現の第1の固有値と第2の固有値との比は、第3の拡散エンコーディングシーケンスのテンソル表現の第1の固有値と第2の固有値との比に対応してよい。よって、同じ「形状」を有する拡散強調が、第2および第3の測定においてサンプルに適用され得る。
【0074】
1つの実施形態によると、上記複数の拡散強調磁気共鳴測定は、
上記第1の測定と、異なる拡散エンコーディング強度を有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定とを含む第1の測定セットであって、各追加の拡散エンコーディングシーケンスが、3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現および第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有する、第1の測定セットと、
上記第2の測定と、異なる拡散エンコーディング強度および同じスペクトルコンテントを有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定とを含む第2の測定セットと、
上記第2の測定と、異なる拡散エンコーディング強度および同じスペクトルコンテントを有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定とを含む第3の測定セットとを含み、
第2のセットの拡散エンコーディングシーケンスのスペクトルコンテントは、第3のセットの拡散エンコーディングシーケンスの各々と異なる。
【0075】
本実施形態は、(少なくとも)3つの信号減衰曲線の推定を可能にするデータの取得を提供する。よって、信号減衰の拡散エンコーディング強度(すなわちb値)への依存性は、1つが3Dタイプの拡散エンコーディング(異方性または等方性)を有し、2つが異なるスペクトルコンテントを有する、3つの異なるタイプまたはクラスの拡散エンコーディングに関して分析及び比較され得る。
【0076】
方法はさらに、
第1の信号減衰曲線を推定するために、上記第1の測定セットを表す第1のデータセットに第1の関数をフィッティングすることと、
第2の信号減衰曲線を推定するために、上記第2の測定セットを表す第2のデータセットに第2の関数をフィッティングすることと、
第3の信号減衰曲線を推定するために、上記第3の測定セットを表す第3のデータセットに第3の関数をフィッティングすることと
をさらに備えてよい。
【0077】
第1、第2、および第3の測定セットの各々に対応するそれぞれの信号減衰曲線を推定することによって、それらの拡散特性および周波数依存性の更なる分析が可能である。同じフィッティング関数が、第1、第2、および第3のデータセットに関して用いられ得る。
【0078】
方法はさらに、上記第1の測定セットを表す第1のデータセット、上記第2の測定セットを表す第2のデータセット、および上記第3の測定セットを表す第3のデータセットに基づいて出力を生成することを備えてよい。
【0079】
方法はさらに、第1の関数の少なくとも1つのパラメータ、第2の関数の少なくとも1つのパラメータ、および第3の関数の少なくとも1つのパラメータに基づいて出力を生成することを備えてよい。
【0080】
上記第1の測定セットの各々の拡散エンコーディングシーケンスは、3つの対応する非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有してよい。したがって、第1のセットの測定は全て、3D等方性拡散強調を含んでよい。これによって、参照測定フレームに対するサンプル内の微視的構造の配向の影響が除去され得るため、測定および測定結果の分析が単純化され得る。
【0081】
あるいは上記第1の測定セットの各々の拡散エンコーディングシーケンスは、少なくとも1つが他の固有値と異なっている3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有してよい。そのようなシーケンスは、3D異方性拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスと称され得る。
【0082】
第2のセットおよび第3のセットの各々の拡散エンコーディングシーケンスは、等しい数の非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有してよい。これによって、第2および第3の測定セットが同じ数の次元における拡散強調を含み得るので、測定および測定結果の分析が単純化され得る。
【0083】
第2のセットおよび第3のセットの各々の拡散エンコーディングシーケンスは、同じ方向または同じ方向セットにおける拡散強調をエンコードしてよい。
【0084】
これによって、第2および第3の拡散エンコーディング勾配シーケンスが、同じ形状および同じエンコーディング強度の両方を提示し得るので、測定および測定結果の分析が単純化され得る。
【0085】
第2のセットおよび第3のセットの各々の拡散エンコーディング磁場勾配シーケンスは、厳密に1つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有してよい。
【0086】
したがって、上記第2および第3の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの各々は、単一(唯一の)方向における拡散減衰、すなわち1D拡散強調をエンコードしてよい。
【0087】
これによって、特に第1の測定セットが3D等方性拡散強調を含む場合、第1の測定セットと第2の測定セットおよび第1の測定セットと第3の測定セットとの間の信号減衰曲線の(すなわちb値の関数としての)曲率差を最大化することが可能である。
【0088】
1つの実施形態によると、第1の測定セットの各拡散エンコーディング磁場勾配シーケンスのテンソル表現は、3つの対応する非ゼロ固有値を有し、第2の測定セットの各拡散エンコーディング磁場勾配シーケンスのテンソル表現は、厳密に1つの非ゼロ固有値を有し、第3の測定セットの各拡散エンコーディング磁場勾配シーケンスのテンソル表現は、厳密に1つの非ゼロ固有値を有する。
【0089】
よって、第1の測定セットは、3D等方性拡散強調を含んでよく、第2および第3の測定セットは、1D拡散強調を含んでよい。これによって、第1の測定と第2の測定および第1の測定と第3の測定との間の信号減衰の差および信号減衰曲線の曲率差を最大化することが可能である。
【0090】
1つの実施形態によると、上記複数の測定を実行することは、サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、上記測定の各々の結果生じるそれぞれの測定信号(すなわち信号減衰)を測定することを含む。
【0091】
方法はさらに、第1の測定において取得された信号減衰が第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標、および第2の測定において取得された信号減衰が第3の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することを備えてよい。
【0092】
第2の態様によると、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法が提供され、方法は、
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
上記複数の測定は、
3つの一致する非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
厳密に1つの非ゼロ固有値または互いに異なる少なくとも2つの固有値を有するテンソル表現を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と、
を含み、
第1および前記第2の拡散エンコーディングシーケンスは、同じスペクトルコンテントを有する。
【0093】
これによって、時間依存拡散の影響によって混乱しない、異方性拡散を有するコンパートメントの存在の検出が可能である。
【0094】
さらに具体的には、第1および第2の拡散エンコーディングシーケンスは、
第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、非ゼロエンコーディング強度を有する第3の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの組み合わせから成る試験サンプルに適用され、
第2の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、上記非ゼロエンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、上記試験サンプルに適用され、
第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致するように構成され得る。
【0095】
1つの実施形態によると、上記複数の測定を実行することは、サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、上記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を取得することを含む。
【0096】
方法はさらに、第1の測定において取得された信号減衰が第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標、および第2の測定において取得された信号減衰が第3の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することを備えてよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
本発明概念の上記ならびに追加の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照して、以下に示す本発明概念の好適な実施形態の例示的かつ非限定的な詳細な説明によってより良く理解される。図面において、特に記載されない限り、同様の要素に関して同様の参照番号が用いられる。
【0098】
【
図1A】
図1Aは、(2)において用いられる等方性3Dおよび指向性1Dエンコーディングに関する正規化ディフェージング波形(A)を示す。
【
図1B】
図1Bは、(2)において用いられる等方性3Dおよび指向性1Dエンコーディングに関する正規化ディフェージング波形(A)の正規化パワースペクトラム(B)を示す。
【0099】
等方性エンコーディングは、(A)における一点鎖線、点線、および破線として示される、x、y、およびz方向に沿ったディフェージングをもたらす滑らかに変化する勾配を有するq-MAS(11)によって実現される。(A)における実線として示されるディフェージングのq-MASの大きさは、指向性エンコーディングスキームにおいて単一方向に沿って用いられる。(A)によるディフェージング波形の対応する正規化パワースペクトラム、および制限拡散スペクトラムは、(B)に示される。(A)におけるx軸は、波形持続期間τで割り算された時間tである。(B)におけるx軸は、波形持続期間τによって乗算された周波数fである。異なる波形に関するエンコーディングスペクトラムの不一致は、時間依存拡散の場合におけるμFAバイアスをもたらし得る。
【0100】
【
図2A】
図2Aは、特徴となる様々な拡散距離√(D
0τ)/Rにおける半径Rの球状制限に関する数値計算を示す。
【
図2B】
図2Bは、特徴となる様々な拡散距離√(D
0τ)/Rにおける半径Rの球状制限に関する数値計算を示す。
【0101】
A)
図1Aに示すq-MASディフェージング波形、x、y、zチャネル(破線、点線、および一点鎖線)に関する二乗平均平方根変位√(Dτ)/Rおよびそれらの平均、すなわち、q-MASディフェージング波形の大きさを有する3Dエンコーディング(実線)、指向性1Dエンコーディング(十字付きの実線)からのトレース。参照のために、短勾配パルス(SGP)指向性エンコーディングの結果が示される(円付きの実線)。B)q-MASディフェージングの大きさを用いる等方性(トレース)および指向性(1D)に関する見かけ上の拡散率(平均拡散率)の比。ただし、平均拡散率の差は、
図5および
図6に示す信号対b曲線の初期傾斜として実験的に観測され得る。
【0102】
【
図3】
図3は、q-MAS等方性および指向性波形(
図1を参照)を用いて様々な特徴的な拡散距離√(D
0τ)/Rで実行された、非制限拡散および半径Rの球状細孔内に制限された拡散を有する2つのコンパートメントの混合物に関する微視的異方性の数値計算を示す。
【0103】
非制限コンパートメントからの信号断片は、範囲f=0.2~0.8内で変動する(凡例を参照)。微視的異方性度μFAは、(2)に示すように計算される。μFAが(2)に従って計算される場合、1Dおよび3Dエンコーディングシーケンスに関するエンコーディング/ディフェージングパワースペクトラムの差は、バイアスされたμFA値をもたらす。バイアスは、特徴となる拡散距離√(D0τ)/Rおよび信号比によって求められる拡散分散、すなわち重みfに依存する。
【0104】
【
図4A】
図4Aは、特徴となる様々な拡散距離√(D
0τ)/Rにおける、半径Rのランダムに配向された円筒に関する数値計算を示す。
【
図4B】
図4Bは、特徴となる様々な拡散距離√(D
0τ)/Rにおける、半径Rのランダムに配向された円筒に関する数値計算を示す。
【
図4C】
図4Cは、特徴となる様々な拡散距離√(D
0τ)/Rにおける、半径Rのランダムに配向された円筒に関する数値計算を示す。
【0105】
計算において、
図1に示すようなq-MAS等方性(3D)および指向性(1D)波形(q-MASディフェージングの大きさ)が用いられた。加えて、平均q-MASパワースペクトラムに対応する分光的同調指向性(1D)波形、およびq-MASのxまたはyチャネルによって付与される略分光的同調指向性(1D)波形が用いられた(図のラベルを参照)。(A)等方性エンコーディング(実線)、q-MASディフェージングの大きさの波形を有する指向性エンコーディング(破線)、分光的同調波形を有する指向性エンコーディング(重複する実線)、および略分光的同調波形を有する指向性エンコーディング(点線)に関する正規化平均拡散率(MD)。(B)等方性エンコーディング(実線)、q-MASディフェージングの大きさの波形を有する指向性エンコーディング(破線)、分光的同調波形を有する指向性エンコーディング(値が低い方の破線)、および略分光的同調(xまたはyのq-MASチャネル)波形を有する指向性エンコーディング(点線)に関する正規化拡散分散。(C)q-MASディフェージングの大きさの波形(実線)、分光的一致波形(値が低い方の実線)、および略分光的同調(xまたはyのq-MASチャネル)波形(点線)に関する、(2)における等方性および指向性エンコーディングによる分散および平均拡散率で計算された微視的異方性度。同調または離調指向性1Dパルスに関する拡散分散または第2のモーメントμ
2の差は、
図5および
図6に示すように、実験的に観測され得る。この差は、時間依存拡散効果を示す。また、等方性3Dおよび同調指向性1Dエンコーディングに関するμ
2の差は、微視的異方性を定量化するために用いられる。
【0106】
【0107】
ファントムは、非時間依存(HEXおよびPEG)および時間依存拡散(酵母および繊維)、ならびに等方性(PEGおよび酵母)および異方性(HEXおよび繊維)の成分を反映する。異なるファントムからのROIにおける信号減衰が、異方性および時間依存拡散の増加によって順序付けられる(右)。同調指向性1D(ラベル2)と等方性3D(ラベル3)エンコーディングとの分離、および同調および離調指向性1D(ラベル1)エンコーディング間の分離は、時間依存性(制限サイズ)を反映する。
【0108】
【
図6A】
図6Aは、質的に異なる微細構造を有する4つの領域からのROIを有するサルの脳のT2W画像を示す(左)。
【
図6B】
図6Bは、質的に異なる微細構造を有する4つの領域からのROIを有するサルの脳のT2W画像を示す(左)。
【0109】
図5に示すように、ROIにおける信号減衰は、異方性および時間依存性の増加によって順序付けられる(右)。
【0110】
【
図7】
図7は、サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法のフローチャートを示す。
【0111】
【詳細な説明】
【0112】
本発明概念の理解を容易にするために、以下、いくつかの理論的概念の説明が提供される。
【0113】
理論
拡散エンコーディング時間τにおける任意の有効な勾配波形g(t)を考えると、信号は、アンサンブル平均
【数11-1】
によって求められ、式中、γは核ジャイロ磁気比であり、Δr(t)は変位である。複数のコンパートメントシステムが考慮される場合、アンサンブル平均は、異なる拡散特性、たとえば孔径、形状、および配向を有するコンパートメントであるサブアンサンブルにわたって行われる。低い拡散エンコーディング勾配の極限において、信号減衰は、ガウシアン位相近似(GPA)に対応して、二次キュムラント展開(6)によって近似され得る。
【0114】
拡散エンコーディング中の変位相関性が無視できる、見かけ上の拡散テンソルDを特徴とするガウシアン拡散過程を有する単一コンパートメントまたはサブアンサンブルの場合、正規化信号は、
【数12】
によって求められ、式中、F(t)は、時間ディフェージングベクトル
【数13】
である。
【0115】
拡散テンソルDは、コンパートメント異方性に関する情報を伝達する。ディフェージングベクトルF(t)は、振幅qと正規化波形F
~(t)とのアダマール積、
【数14】
として表され得る。
【0116】
非ガウシアン分布の場合、コンパートメントの主軸系(PASC)における変位伝搬関数を考慮することによって、GPAに時間依存拡散も計上され得る(7)。信号減衰は、E=exp(-β)と表される。
【0117】
短勾配パルス(SGP)近似の例として、見かけ上の平均二乗変位(MSD)(9)は、
【数15】
によって求められる。
【0118】
信号減衰の周波数領域GPA分析は、3D拡散エンコーディングに一般化され得る。減衰は、速度相関テンソル
【数15-1】
のスペクトラムである、拡散スペクトラムD(ω)に関して表され得る。周波数領域分析は、任意の勾配波形に容易に適用され得る。最も重要な点として、これによって、3D拡散エンコーディングにおける制限拡散効果の直感的な理解が可能であり、異なるエンコーディング波形の設計が容易になり得る。
【0119】
周波数領域において、式(12)の指数は、
【数16】
と書き換えることができ、ここで、
【数17】
であり、
【数17-1】
である。ただし、対角行列λ(ω)の拡散スペクトラムλ
i(ω)はPASCで書かれるが、ディフェージングスペクトラムF
i(ω)のデカルト成分は実験室系にある。要素R
ijを有する回転行列は、コンパートメントPASCまたは実験室系のいずれかに適用される。ディフェージングスペクトラムもまた、
【数18】
として求められる。
【0120】
表記を簡略化するために、積分演算子
【数18-1】
を
【数19】
と定義し、ここで、i,j,k∈1,2,3であり、上付き記号*は複素共役化を示す。ただし、
【数19-1】
である。アインシュタインの縮約記法を取り入れ、表記(19)を用いることにより、式(16)は、
【数20】
となる。減衰(20)は、見かけ上の拡散率
【数21】
に関して表され得る。i=jである場合、上記式は、
【数22】
のように単純化することができ、拡散強調は、
【数23】
によって求められる。
【0121】
λ
i(ω)に関する異なるモデルが適用され得る。信号減衰は、ゼロ周波数の周囲のテイラー級数において展開され得る。λ
i(ω)の低周波数展開は、たとえば、
【数24】
によって求められ、λ
i
(n)(0)は、ゼロ周波数におけるn番目の導関数を示す。ただし、異なる展開が適用されてよい。制限を特徴付けるために、λ
i
(n)(0)は、特徴となる制限サイズに関して表され得る。
【0122】
展開(24)を(20)に挿入し、|ω|
nを導入すると、
【数25】
となり、ここで、
【数26】
である。
【0123】
M
ij
(n)は、測定テンソルのモーメントである。0番目のモーメントM
(0)は、拡散強調テンソルM
(0)=Bに対応する。式(6)における正規化スペクトラムF
~(ω)に関して、測定テンソルは、
【数27】
によって求められる。よってスペクトルモーメントは、
【数27-1】
によって求められる。平均スペクトルコンテントは、テンソルm
ij
(n)のトレースによって提供され、ここでnは好適には2である。スペクトルの一致は、平均スペクトルコンテント、すなわちnが好適には2であるm
ij
(n)のトレースを一致させることによって実現され得る。
【0124】
一般化拡散時間(式(32))は、m
ij
(0)に対応する。マトリックス形式において、
【数27-2】
である。
【0125】
拡散スペクトラム展開係数は、
【数28】
、またはマトリックス形式において、
【数29】
である。
【0126】
n=0の場合、ガウシアン拡散テンソルを用いる。内積に関して、
【数30】
である。
【0127】
周波数領域における制限拡散の場合、
【数31】
である。この場合、展開(25)は、制限サイズ(7)に関して表される等しいパワーのωおよびλ
i
(n)(0)に関して書くことができる。
【0128】
ディフェージングの0番目のモーメント、合計ディフェージングパワーは、ディフェージング振幅qと有効拡散時間
【数32】
との積によって求められる、典型的な拡散強調係数b=q
2t
dに対応する。
【0129】
式(32)における最後の等式は、パーセバルの定理の結果である。ただし、拡散時間(32)は、実験室系における異なる軸に関して異なるとしてもよい。
【0130】
スペクトルコンテントは、ディフェージングスペクトラム(2)またはその正規化部分(6)に関して特徴付けられ得る。正規化パワースペクトラムの成分は、
【数33】
によって求められる。
【0131】
巨視的オーダと関連し合わない微視的拡散異方性に関する情報は、方向性平均化、すなわち粉体平均信号(1,2,4)の特徴的減衰から取得され得る。方向性平均化信号に関して、単一指数減衰からの偏差は、見かけ上の拡散率の広がりに起因してよく、等方性拡散率(トレース)およびコンパートメント異方性(固有値)(5)の多分散性の原因となる。(1)、(10)、(2)、(4)に提示する方法は、拡散強調テンソルの異方性を変化させることによって、等方性および異方性拡散寄与の影響を分離することを可能にする。
【0132】
平均信号減衰は、
【数34】
によって求められ、ここで、
【数35】
である。
【0133】
式(34)における第1の指数項は、
【数36】
によって求められる。
【0134】
式(34)における第2の指数項は、
【数37】
、またはマトリックス形式において
【数38】
によって求められる。
【0135】
i=0および2である項のみを考えると、
【数39】
である。
【0136】
ただし、
【数39-1】
は、ガウシアン項に対応する。(10)における式3および6を参照。
【0137】
等方性拡散がない場合、拡散分布のモーメントに関連する信号キュムラント展開係数は、微視的拡散異方性を反映する。
【0138】
式(2)によって定義されるディフェージングベクトル
【数39-2】
およびPASCにおける拡散スペクトラム
【数40】
を有する軸対称拡散エンコーディングの場合、式(20)は、
【数41】
を導き、ここで、P
2(x)=(3x
2-1)/2は、第2のルジャンドル多項式であり、
【数41-1】
は、拡散テンソルおよび拡散エンコーディングの対称主軸間の角度である。ガウシアン拡散の場合、ディフェージングスペクトラムのクロス積を含む、(41)における最後の項は、
【数41-2】
である場合、ゼロになる。プランシュレルの公式によると、上記条件は、
【数41-3】
に変換され、これは、ベクトルq(t)が直円錐面に常に平行であり、q軌跡が少なくとも3回対称を有する場合(3)、または単純に常に積
【数41-4】
である場合、満たされる。低いコンパートメント異方性に関して(41)における最後の項はゼロになることは明らかであるが、q-MAS波形(2、11)を用いる本発明の数値計算は、たとえば円筒から成る大部分が異方性のコンパートメントに関して、この項が小さくなり得ることを示す。
【0139】
クロス積項がない場合、式(41)は、
【数42】
と書き換えることができ、ここで、
【数43】
かつ
【数44】
である。ここで、表記
【数45】
が用いられ、式中、
【数45-1】
である。Λ
ijは、拡散エンコーディング波形iに起因するPASCにおける軸jに沿った見かけ上の拡散係数である。
【0140】
ボクセル内の全てのコンパートメントが同一であるものとすると、方向性平均
【数45-2】
は、
【数46】
によって求められ、ここで、
【数46-1】
である。平均拡散率(MD)は、
【数46-2】
によって求められる。ただし、2つの波形が等しいスペクトルコンテントを有する場合、
【数46-3】
であり、ここで、
【数46-4】
である。よって、Δbによって拡散エンコーディングの形状を変化させることにより、コンパートメント異方性を定量化することができる(2)。コンパートメント異方性は、周波数依存拡散効果によっても影響を及ぼされる、見かけ上の拡散係数の分散をもたらす。第2の中心モーメント、すなわち拡散分布の分散は、信号の第2のキュムラントμ
2に等しく(2,4)、平均尖度
【数47】
に関連する。
【数47-1】
を有する等方性エンコーディングの場合、
【数47-2】
であり、
【数47-3】
を有する指向性エンコーディングの場合、
【数47-4】
である。ただし、異方性制限/コンパートメントに関してのみ、μ
2>0である。球体の場合、
【数47-5】
である。
【0141】
式(24)における制限拡散スペクトラムの第2の展開係数は、
【数48】
によって求められ(7)、式中、C
iは幾何学的因子であり、γ
iは主軸iに沿った制限のサイズである。式(7)における定義を考慮すると、式(25)は、
【数49】
、またはマトリックス形式において、
【数50】
となり、ここで、R
4
ij=R
kiR
kjC
kr
k
4である。λ
k
(0)(0)が方向と無関係かつD
0に等しいものとすると、上記第1項は、trace(M
(0))D
0によって求められる。
【0142】
有効勾配波形を変化させることによって、m(2)を変化させ、制限R4のサイズを調査することが可能である。
【0143】
複数コンパートメントの場合、式(42)におけるβ
+によって求められる平均拡散率は、全てのコンパートメントにわたり平均化される必要があり、β
+=Σ
ip
iβ
+iであり、式中、p
iは正規化重み(異なるコンパートメントからの信号)であり、Σ
ip
i=1である。第2の中心モーメント、すなわち式(47)における拡散分散μ
2は、
【数50-1】
によって求められる等方性拡散率の分散からの追加の寄与を有する。
【0144】
一方が、重みfおよび拡散率D
1を有するガウシアン拡散を有し、他方が、重み1-fおよび指向性エンコーディングに関して
【数50-2】
および等方性エンコーディングに関して
【数50-3】
の球状制限を有する2つの等方性コンパートメントの場合を考える。この場合、それぞれ指向性エンコーディングおよび等方性エンコーディングに関して、平均拡散率は
【数51】
であり、拡散分散は
【数52】
である。ただし、観測される拡散係数およびμ
2は、ディフェージング波形のスペクトルコンテントに依存する。微視的拡散異方性が、(2)における式14に従って、差
【数52-1】
から推定される場合、制限拡散効果に起因して生じるμFA>0である。
【0145】
実験例
上記から理解され得るように、多次元拡散エンコーディングは、従来の拡散エンコーディングとは対照的に、マルチコンパートメントシステムにおける等方性拡散分散と異方性拡散分散との間で曖昧性を解消することができる。これは、エンコーディングテンソルの形状を変化させること、すなわち、拡散テンソルの1つの投影の測定から拡散テンソルのトレースの測定まで及ぶことによってなされ得る。たとえば細胞のサイズなど追加の形態学的特徴は、拡散スペクトラムにおいて反映され、拡散エンコーディング波形のスペクトルコンテントを変化させることによって調査することができる。本開示によると、様々な形状のエンコーディングテンソルを用いる実験および異なるスペクトルコンテントを有する波形が組み合わせられ得る。後述するように、この拡張プロトコルは、ファントム、および固定サル脳の白質、大脳皮質、および小脳皮質における異なるレベルの微視的異方性度(μFA)および時間依存拡散を弁別的に論証する。
【0146】
多次元勾配エンコーディングスキームは、従来のFA測定とは異なり、分散の影響を受けない微視的異方性度(μFA)の測定の実現性をもたらす。これによって、下にある組織のより多くの特徴を反映する測定が可能であり、モデル仮定を用いずMRIからより明確な微細構造情報の抽出が可能である。1つのアプローチは、従来の指向性1Dエンコーディングと、qベクトルのマジック角スピニング(q-MAS)法によって実行される等方性3Dエンコーディングとを併用する。初期アプローチは、測定された拡散スペクトラムが一定であり、それによって時間依存拡散を示すシステムにおけるμFAバイアスが招かれ得ることを想定する。このバイアスを補正し、同時に、下にある微細構造の長さスケールを反映する拡散の時間依存性を調査するために、発明者は、異なる時間スケールを感知する分光的変調スキームの組み合わせを提案する。以下、周知の微細構造を有するファントムおよび検死ニューロン組織において、方法が実験的に論証される。
【0147】
拡散エンコーディングは、拡散スペクトラムに関する感度フィルタを表し、時間依存拡散に関して非一定である(
図1)。提示される等方性3Dエンコーディングの例(
図1)は、個々の軸において十分な程度同様のスペクトルコンテントを有する。同調指向性1Dエンコーディング、すなわち同様のスペクトルコンテントを有する指向性1Dエンコーディングは、3D軸の1つの投影として実現され得る。低い周波数ほど高いエンコーディングパワーを有する離調指向性1Dは、等方性3Dエンコーディング勾配軌道の大きさから得られる(
図1における実線および破線を比較する)。
【0148】
図1Bに示す異なるエンコーディング/ディフェージングパワースペクトラムは、
図2Aに示すような等方性および指向性エンコーディングにおける異なる勾配チャネルに関する異なるMSDをもたらす。半径Rの球体内での制限拡散の場合、
図1に示すq-MASの大きさおよびx、y、z波形によって実現される指向性(1D)および等方性(3D)は、異なる見かけ上の拡散率D
1DおよびD
3Dをもたらす。それらの比であるD
3D/D
3Dが
図2Bに示される。パルスシーケンスは、連続的な反復の間に様々な分離時間を有して1回または数回、3D勾配波形を反復することを伴ってよく、分離時間中、RFパルスは適用され、または適用されなくてよい。勾配の極性は、波形の連続的な実行において変化してよい。エンコーディング勾配の連続的な反復の間の時間ならびにそれらの極性を調整することは、ディフェージングパワースペクトラムを変更し、それによって時間依存拡散に対する異なる感度を得るために用いられ得る。
【0149】
4つの拡散ファントム、i)等方性マルチコンパートメントガウシアン拡散は、水と混合されたPEG(ポリエチレングリコール)を用いて構成され、(ii)酵母細胞懸濁液による等方性および制限拡散を有する2コンパートメントシステム、iii)直径7nmの水チャネルの六角形アレイ(HEX)を形成する液晶を用いて、非時間依存微視的異方性かつ全配向分散を有するシステム、およびiv)13.4μmの平均径を有する中空電界紡糸ファイバを用いて時間依存異方性拡散を有するシステムが、特定の拡散特性をもたらすために設計された。3歳半の尾長ザルから切除した脳が、生体外撮像のために作製された。生体動物は、地方自治体の倫理的ガイドラインに従って扱われた。実験は、直交コイルを有する前臨床4.7Tアジレント製MRIスキャナで実行された。q-MAS 3Dパルスを用いる最適化等方性3Dエンコーディング、√3によりスケーリングされた3Dエンコーディングのx投影による同調指向性1Dエンコーディング、および3Dエンコーディングの大きさからの離調1Dエンコーディングという、3つの異なる勾配波形が用いられた。500mT/mの最大勾配振幅を用いて、15の均一に分散した方向および200~4800s/mm2の12のb値で、長さ23msのq-MASパルスが適用された。画像分解能は、ファントム実験に関して0.375×0.375×2mm3であり、サル実験に関して0.25×0.25×2mm3であった。TE/TR:68/2500msである2Dスピンエコーシーケンスが両方の実験に用いられた。ROIにわたる粉体平均化信号は、bにおいて3次キュムラント展開にフィッティングされ、μFAは、同調1Dおよび3D符号化データに基づいて計算された。
【0150】
4つファントム全てが、質的に異なる粉体平均化信号減衰を示し、異方性媒体において等方性3Dエンコーディングと比べて指向性1Dエンコーディングの場合に分散が高く、時間依存領域において同調1Dエンコーディングと離調1Dエンコーディングとの間に差異がある(
図5)。同調パルスを用いた場合、μFA値は予想と一致する。サルの脳内のROIからの信号もまた、脳梁および小脳皮質において異なる程度の異方性および時間依存性を示し(
図6)、中空電界紡糸ファイバによる調査結果と質的に一致する(
図5)。大脳皮質は、おそらく細いデンドライトからの主なμFA寄与に起因して、無視できる程度の時間依存性を伴う異方性であり、HEXファントムと質的に同様である。
【0151】
上記観点から、1つの実験的に実行可能なイメージングフレームワークにおいてμFAおよび時間依存拡散を調査するために、分光的同調および離調された、等方性3D拡散強調および指向性1D拡散強調の組み合わせを用いることが提案される。固定サル脳による結果はさらに、この方法が、モデル仮定がなくともデータから直接、ニューロン組織からの特定のパラメータを微細構造的に抽出可能であることを示す。これにより、改善された組織の特徴付けおよびモデルパラメータの検証に関する新たな機会が与えられる。
【0152】
実施形態の説明
図7は、サンプルに関する情報を抽出する方法の一般的なフローチャートを示す。サンプルはたとえば、脳組織または任意の器官細胞の(懸濁液の)生検標本といった、水を含む生体サンプルであってよい。より一般には、サンプルは、核磁気共鳴技術によって測定され得る特性を有する核スピン系を含む。
【0153】
方法の理解を容易にするために、以下において、単一ボクセル、すなわち(MRI法の場合)単一空間チャネルまたは(NMR法の場合)単一周波数チャネルからのエコー信号が参照される。当該技術において周知であるように、この分解能は、エンコーディングシーケンス中にサンプルに更なる磁気勾配(たとえば、MRI法の場合、イメージング勾配)を適用することによって実現され得る。ボクセルに対応するサンプルの部分体積からエコー信号成分を識別/隔離するために、サンプルからの測定信号は、当該技術において周知であるように高速フーリエ変換を受けてよく、それによって、各エコー信号のスペクトル成分は、サンプルからサンプルの複数の空間または周波数領域に変換される。
【0154】
当該技術において周知であるように、NMRスペクトロメータまたはMRIデバイスの空間分解能は、とりわけ磁界強度、サンプルに適用される勾配パルスシーケンスの大きさ、およびスルーレートによって制限される。したがって、ボクセルに関するエコー信号は一般に、ボクセルに対応するサンプルの部分体積内の複数の微視的コンパートメントからの寄与を含む。
【0155】
方法は、最先端のNMRスペクトロメータまたはMRIデバイスを用いて実行され得る。当該技術において周知であるように、そのようなデバイスは、デバイスの動作、とりわけ磁気勾配パルスシーケンスの生成、信号の取得ならびに取得した信号(すなわち測定信号)を表すデータを形成するための測定信号のサンプリングおよびデジタル化を制御するためのコントローラを含んでよい。コントローラは、MRIデバイスの1または複数のプロセッサに実装されてよく、緩和エンコーディングシーケンスおよび磁気勾配パルスシーケンスの生成は、コンピュータ可読媒体(たとえば非一時的コンピュータ可読記憶媒体)に格納されデバイスの1または複数のプロセッサによって実行され得るソフトウェア命令を用いて実装され得る。ソフトウェア命令はたとえば、デバイスの1または複数のプロセッサがアクセス権を有する、デバイスのメモリのプログラム/制御部に格納され得る。ただし、ソフトウェア命令を用いる代わりに、コントローラ方法は、たとえば数例を挙げると1または複数の集積回路、1または複数の特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など、デバイス/コンピュータの専用回路の形式で実装されてもよい。
【0156】
測定値を表す収集データは、デバイスの、またはデバイスに接続され得るコンピュータなどのデータメモリに格納され得る。
【0157】
方法のデータ処理形成部分は、処理デバイスによって実行され得る。動作は、非一時的コンピュータ可読媒体において格納または具体化され処理デバイスによって実行され得るソフトウェア命令のセットに実装され得る。たとえばソフトウェア命令は、NMRスペクトロメータ/MRIデバイスのメモリのプログラム/制御部に格納され、スペクトロメータ/デバイスの1または複数のプロセッサユニットによって実行され得る。ただし、NMRスペクトロメータまたはMRIデバイスから独立したデバイス、たとえばコンピュータ上で計算を実行することも同様に可能である。デバイスおよびコンピュータはたとえば、LAN/WLANなどの通信ネットワークを介して、または他の何らかの直列または並列通信インタフェースを介して通信するように構成され得る。さらに留意すべき点として、ソフトウェア命令を用いる代わりに、データ処理は、たとえば数例を挙げると1または複数の集積回路、1または複数のASICまたはFPGAなど、デバイス/コンピュータの専用回路の形式で処理デバイスに実装されてもよい。
【0158】
図7を参照すると、方法は、サンプルに複数の拡散強調磁気共鳴測定を実行すること(ステップ702-1~702-n)を備える。
【0159】
各測定は、エンコーディングブロック、および後続の検出ブロックを含んでよい。エンコーディングブロックは、RFシーケンスおよび拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを含んでよい。当該技術において周知であるように、エコー信号を取得するために、各拡散エンコーディング磁気勾配パルスシーケンスは、1または複数のイメージング磁気勾配および任意選択的に磁気勾配補正勾配によって補足され得る。
【0160】
信号検出のブロックに先行して緩和および拡散エンコーディングのブロックを備えるパルスシーケンスの例が
図8aに示され、特定の実装が
図8bに示される。したがって、
図8aは、緩和速度および拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの値に従ってエコー信号を変調するエンコーディングブロック、およびエコー信号が(たとえばスペクトラムまたは画像として)読み出される検出ブロックを示す。
図8bは、90°および180°のRFパルス(細い縦線および太い縦線)を有するパルスシーケンス、3つの直交する方向(実線、破線、および点線)における変調勾配、および検出信号(太線)を示す。信号は、縦方向の復元、横方向の緩和、および拡散によって変調される。
【0161】
ゼロに等しい複合横方向磁化mxyを有する初期状態から開始し、第1の90°RFパルスは、縦方向磁化mzを横断面にフリップする。持続期間τ1を有する時間遅延の間、縦方向磁化は、縦方向緩和速度R1で熱平衡値m0に向かって復元する。第2の90°パルスは、復元磁化を横断面にフリップし、ここで、検出されるまでの期間τ2の間、横方向緩和速度R1でゼロに向かって衰退する。期間τ2中、時間依存磁場勾配が適用される。
【0162】
一般に、スピンエコーエンコーディングおよび励起エコーエンコーディングの両方が用いられ得る。いずれの場合も、RF信号シーケンスは、縦方向緩和のみ、横方向緩和のみ、または縦方向緩和および横方向緩和の両方に起因する減衰を符号化してよい。シーケンスの一例は、単一90°パルスおよび単一180°パルスを含んでよい。180°パルスに関する勾配パルスシーケンスのタイミングは変化してよい。たとえば、勾配パルスシーケンスは、180°パルスに先行または後続して実行され得る。そのようないくつかのシーケンスは、取得/検出まで反復され得る。励起エコーシーケンスの例は、第1の90°パルス、第2の90°パルス、および第3の90°パルスを含んでよい。勾配パルスシーケンスは、第1および第2の90°パルスの間に、および/または第3の90°パルスに続いて(すなわち、検出ブロックより前に)実行され得る。ただし、これらのシーケンス例は典型例として提供されたものにすぎず、他のシーケンスも可能である。好適には、同じRF信号シーケンスが、複数の測定の全て、すなわち第1、第2、および第3のセットの全ての測定において用いられる。
【0163】
複数の測定は、第1の測定セットを含んでよい。第1の測定セットの各々の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、互いに等しい3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有してよい。第1の測定セットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、異なる拡散エンコーディング強度(すなわち、b値/拡散強調テンソル表現の異なるトレース)を有してよい。第1の測定セットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、同じスペクトルコンテントを有してよい(すなわち、有効勾配シーケンス、または対応してディフェージングベクトルが互いに分光的に同調または一致してよい)。
【0164】
各測定の検出ブロックは、エンコーディングブロックに後続してエコー信号を検出することを含んでよい。複数の測定の結果生じる信号は、データとして記録され得る。エコー信号は、データを形成するためにサンプリングおよびデジタル化され得る。
【0165】
データは、更なるデータ処理のために格納され得る。データは例えば、デバイスの、またはデバイスに接続され得るコンピュータなどのデータメモリに格納され得る。
【0166】
複数の測定はさらに、第2および第3の測定セットを含む。第2および第3の測定セットの各々の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、厳密に1つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有してよい。第2の測定セットは、異なる拡散エンコーディング強度(すなわち、b値/拡散強調テンソル表現の異なるトレース)を有する拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを含む。第3の測定セットは、異なる拡散エンコーディング強度(すなわち、b値/拡散強調テンソル表現の異なるトレース)を有する拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを含む。
【0167】
第2の測定セットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、同じスペクトルコンテントを有してよい(すなわち、有効勾配シーケンス、または対応して、ディフェージングベクトルが互いに分光的に同調または一致してよい)。
【0168】
第2の測定セットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスはさらに、第1の測定セットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスと分光的に一致してよい。
【0169】
一致するスペクトルコンテントまたは多次元拡散エンコーディングスキームおよび指向性エンコーディングスキームの「同調」は、数値的に行われ得る。多次元エンコーディング勾配波形が、何らかの先行する最適化に基づいて得られた場合、以下の手順が有用である。1.入力波形の(たとえばx、y、z軸に沿った)回転の範囲に関して、積p=m11
(n)m22
(n)m33
(n)を計算する。ここでnの選択は、「同調」、すなわち一致するスペクトルパワーにおいて優先することが選択され得る周波数範囲に依存するものとし、いくつかのモーメントが計算され得る。2.上記ステップにおいて計算されたpの最大値、およびpの最大値を生じる回転Rを求める。3.回転Rを用いて入力波形を変換する。4.変換された波形の各々について、モーメントm(n)を計算し、モーメントm(n)が平均モーメントに最も近くなる波形を選択する(2つまたは3つの波形および対応するモーメントを考慮する)。5.ステップ4において選択された波形の形状を指向性エンコーディングのために用いる。
【0170】
方法に戻ると、第3の測定セットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスはさらに、第2の測定セットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスから分光的に離調され得る。
【0171】
所与のb値を有する第2のセットの各測定は、異なる方向、好適には複数の方向の数だけ反復され得る。これによって、(「粉体平均化」としても知られる)指向性平均化信号減衰を決定することが可能である。
【0172】
また、所与のb値を有する第3のセットの各測定は、異なる方向、好適には複数の方向の数だけ反復され得る。第2のセットおよび第3のセットの測定は、複数の方向の同じセットに関して反復され得る。
【0173】
後述されるデータフィッティングの精度を高めるために、第1、第2、および第3の測定セットは、好適には各々が複数の異なる拡散エンコーディング強度に関する測定を含む。ただし、方法は原則として、任意の特定の数の測定に限定されるものではない。
【0174】
方法によると、第2のセットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスのスペクトルコンテントは、第3のセットの拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの各々と異なる。
【0175】
図5の「等方性3D」測定、「同調指向性1D」測定、および「離調指向性1D」測定(それぞれ1、2、および3と付記)を参照して説明された測定は、そのような第1、第2、および第3の測定セットを表す。
【0176】
方法のステップ704において、処理デバイスは、複数の磁気共鳴測定702-1、…、702-nの結果生じる信号に基づいて出力を生成する。処理デバイスは、第1の信号減衰曲線を推定するために上記第1の測定セットを表す第1のデータセットに第1の関数をフィッティングし、第2の信号減衰曲線を推定するために上記第2の測定セットを表す第2のデータセットに第2の関数をフィッティングし、第3の信号減衰曲線を推定するために上記第3の測定セットを表す第3のデータセットに第3の関数をフィッティングしてよい。
【0177】
処理デバイスは、第1、第2、および第3の測定セットにおいて測定された(正規化され得る)信号レベルを含む出力を生成してよい。処理デバイスは、第1、第2、および第3の測定セットからのデータにフィッティングされた信号減衰曲線を含む出力を生成してよい。処理デバイスは、フィッティング関数のフィッティングパラメータのいずれかの値を含む出力を生成してよい。
【0178】
所与のb値を有する第2のセットおよび第3のセットの測定が複数の異なる方向について反復される場合、第2および第3の測定セットの各b値に関する単一の「粉体平均化」エコー信号を取得するために、各b値に関する測定結果は、異なる方向にわたり平均化され得る。第2および第3の信号減衰曲線は、粉体平均化エコー信号に基づいて推定され得る。
【0179】
図5は、第1、第2、および第3のデータセットに関数をフィッティングすることによって得られた第1、第2、および第3の信号減衰曲線の一例を表す。
【0180】
測定セットを表すデータセットにフィッティングされ得るフィッティング関数の第1の例(式(34)~(38)を参照)は、
【数53】
であり、式中、S
0は、拡散強調を有さない信号であり、
【数54】
かつ
【数55】
である。フィッティング関数の他の例(式(43)~(46)を参照)は、
【数56】
である。
【0181】
【数56-1】
がフィッティングパラメータとして用いられ得る。ただし、指向性エンコーディング(すなわち、第2および第3の測定セット)の場合、2つのパラメータ、たとえば
【数56-2】
のみが必要である。
【0182】
フィッティング関数の他の例は、次のキュムラント展開
【数57】
に基づく。
【0183】
信号位相を付与する虚数項が無視される場合、上記展開は、
【数58】
と書き換えることができ、式中、S
0は拡散強調を有さない信号であり、bは拡散強調テンソルのトレースによって求められる拡散強調であり、<D>は平均拡散係数であり、μ
nは拡散分布中心モーメントである。任意の数のキュムラント展開項が、フィッティングにおいて用いられ得る。
【0184】
フィッティング関数の他の例は、
【数59】
であり、式中、S
0は拡散強調を有さない信号であり、bは拡散強調テンソルのトレースによって求められる拡散強調であり、<D>は平均拡散係数であり、μ
2は拡散分布の第2の中心モーメントである。
【0185】
フィッティング関数の他の例は、
【数60】
を用いる。
【0186】
フィッティング関数は、拡散テンソルDの要素および制限のサイズまたは次元が処理デバイスによって推定されることを可能にする。
【0187】
信号は、式(53)~(59)の例に限定されず、フィッティング関数S
nの任意の組み合わせによってフィッティングされてもよく、
【数61】
として求められ、式中、P
nは異なる重みである。
【0188】
上記において、本発明概念は、限られた数の例を参照して主に説明された。ただし、当業者には容易に理解されるように、上述したもの以外の例が、添付のクレームによって定義されるような本発明概念の範囲内で等しく可能である。
【0189】
たとえば、上記において、第1のセットの各測定は3D等方性拡散強調を含むものとされたが、少なくとも1つが他の固有値と異なっている3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の測定セットの各々の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを用いることも可能である。
【0190】
また、第1、第2、および第3の測定セットを実行する代わりに、代替の方法は、3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを有する第1の測定、第2の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを有する第2の測定、および第3の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスを有する第3の測定を実行することを含んでよく、第2および第3の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、異なるスペクトルコンテントを有する。さらに、第1の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散エンコーディング強度は、上記第2の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散エンコーディング強度、および上記拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスの拡散エンコーディング強度と等しい。したがって、第1、第2、および第3の測定は、同じb値に関して実行され得る。具体的には、第1の測定は、3D等方性拡散強調に関するエンコーディングを含んでよく、第2および第3の測定は、1D拡散エンコーディングに関するエンコーディングを含んでよい。第2および第3の測定は、異なる方向、好適には複数の方向の数だけ反復されてよく、第2および第3の測定に関して方向性平均化エコー信号が推定され得る。この測定プロトコルは、3つの異なる信号減衰曲線、たとえば
図5の第1、第2、および第3の曲線1、2、および3について、同じb値に関するエコー信号を測定することに対応する。
【0191】
したがって処理デバイスは、磁気共鳴測定の結果生じる測定された第1(任意選択的に粉体平均化)、第2(任意選択的に粉体平均化)信号減衰に基づいて出力を生成する。出力はたとえば、第1の信号減衰と第2の信号減衰との差または第1の信号減衰と第2の信号減衰との比、および第1または第2の信号減衰と第3の信号減衰との差または第1または第2の信号減衰と第3の信号減衰との比を示してよい。
【0192】
処理デバイスは、サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々に関して測定された信号減衰に基づいて対応する出力を生成してよい。処理デバイスは、第1の測定において取得された信号減衰が第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含むデジタル画像の形式で出力を生成してよい。デジタル画像はさらに、第2の測定において取得された信号減衰が第3の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含んでよい。ボクセルは、輝度の増加、色の逸脱、境界ボックス、および/または他の何らかのグラフィック要素を用いた強調によって示され得る。
【0193】
拡散強調磁気共鳴測定を実行するさらに追加の変化例によると、方法は、3つの一致する非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定、厳密に1つの非ゼロ固有値または互いに異なる少なくとも2つの固有値を有するテンソル表現を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定を備えてよく、第1および第2の拡散エンコーティングシーケンスは、上述したように分光的に同調される。その結果、3D等方性測定および(任意選択的に粉体平均化され得る)1D「スティック」測定を併用する測定プロトコルが提供される。したがって処理デバイスは、磁気共鳴測定の結果生じる測定された第1および第2の(任意選択的に粉体平均化)信号減衰の差を示す出力を生成してよい。エンコーディングシーケンスのスペクトルの一致に起因して、差動出力における時間依存拡散の影響は抑制される。上述したものと同様、これによって、処理デバイスは、第1の測定において取得された信号減衰が第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含むデジタル画像の形式で出力を生成することが可能である。したがって示されたボクセルは、時間依存拡散の影響による誤った指標を伴わず、異方性拡散を示すサンプルの部分体積に対応する。
【参考文献リスト】
【0194】
上記開示において、丸括弧または鍵括弧内の1または複数の数字は、以下の参照文献リストにおける、対応した番号の参照文献を参照するものである。
1. Westin C-F, Szczepankiewicz F, Pasternak O, 他: Measurement Tensors in Diffusion MRI: Generalizing the Concept of Diffusion Encoding. Med Image Comput Comput Assist Interv 2014; 17:209-216.
2. Lasic S, Szczepankiewicz F, Eriksson S, Nilsson M, Topgaard D: Microanisotropy imaging: quantification of microscopic diffusion anisotropy and orientational order parameter by diffusion MRI with magic-angle spinning of the q-vector. Front Phys 2014; 2:1-14.
3. Eriksson S, Lasic S, Topgaard D: Isotropic diffusion weighting in PGSE NMR by magic-angle spinning of the q-vector. J Magn Reson 2013; 226:13-8.
4. Eriksson S, Lasic S, Nilsson M, Westin C-F, Topgaard D: NMR diffusion-encoding with axial symmetry and variable anisotropy: Distinguishing between prolate and oblate microscopic diffusion tensors with unknown orientation distribution. J Chem Phys 2015; 142:104201.
5. Szczepankiewicz F, Lasic S, van Westen D,他: Quantification of microscopic diffusion anisotropy disentangles effects of orientation dispersion from microstructure: applications in healthy volunteers and in brain tumors. Neuroimage 2015; 104:241-52.
6. Stepisnik J: Validity limits of Gaussian approximation in cumulant expansion for diffusion attenuation of spin echo. Phys B 1999; 270:110-117.
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8. Lasic S, Aslund I, Topgaard D: Spectral characterization of diffusion with chemical shift resolution: highly concentrated water-in-oil emulsion. J Magn Reson 2009; 199:166-172.
9. Tanner JE, Stejskal EO: Restricted Self-Diffusion of Protons in Colloidal Systems by the Pulsed-Gradient, Spin-Echo Method. J Chem Phys 1968; 49:1768-1777.
10. Westin C, Knutsson H, Pasternak O,他: Q-space trajectory imaging for multidimensional diffusion MRI of the human brain. Neuroimage 2016;135 : 345-62.
11. Topgaard D: Isotropic diffusion weighting in PGSE NMR: Numerical optimization of the q-MAS PGSE sequence. Microporous Mesoporous Mater 2013; 178:60-63.
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに複数の拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記複数の測定は、
3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と、
第3の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第3の測定と、
を含み、前記第2および前記第3の拡散エンコーディングシーケンスは異なるスペクトルコンテントを有する、方法。
[2]
前記第1、第2、および第3の拡散エンコーディングシーケンスは、
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、非ゼロエンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの集合から成る試験サンプルに適用され、
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、前記非ゼロエンコーディング強度を有する第5の拡散エンコーディングシーケンスが、前記試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、前記非ゼロエンコーディング強度を有する第6の拡散エンコーディングシーケンスが、前記試験サンプルに適用され、
前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第5の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致し、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる前記信号減衰が、前記第6の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と異なるように構成される、[1]の方法。
[3]
前記第1、第2、および第3の測定の結果生じる信号に基づいて出力を生成することをさらに備え、前記出力は、前記サンプルに関する拡散特性の周波数依存性を示す、[1]~[2]のいずれかの方法。
[4]
前記第1および第2の測定の結果生じる前記信号の比較と、前記第1および第3の測定の結果生じる前記信号の比較とに基づいて出力を生成することをさらに備える、[3]の方法。
[5]
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの拡散エンコーディング強度は、前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの拡散エンコーディング強度、および前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの拡散エンコーディング強度に対応する、[1]~[4]のいずれかの方法。
[6]
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの前記テンソル表現は、3つの対応する非ゼロ固有値を有する、[1]~[5]のいずれかの方法。
[7]
前記第2および前記第3の拡散エンコーディング磁気勾配シーケンスは、等しい数の非ゼロ固有値を有する拡散強調テンソル表現を有する、[1]~[6]のいずれかの方法。
[8]
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスおよび前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの各々は、厳密に1つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する、[1]~[7]のいずれか1項の方法。
[9]
前記複数の測定は、
前記第1の測定と、異なる拡散エンコーディング強度を有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含み、各追加の拡散エンコーディングシーケンスが、3つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現および前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有する、第1の測定セットと、
前記第2の測定と、異なる拡散エンコーディング強度および同じスペクトルコンテントを有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む、第2の測定セットと、
前記第2の測定と、異なる拡散エンコーディング強度および同じスペクトルコンテントを有する追加の拡散エンコーディングシーケンスを用いて実行される複数の追加の測定と、を含む、第3の測定セットと、
を含み、
前記第2の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの前記スペクトルコンテントは、前記第3の測定セットの前記拡散エンコーディングシーケンスの各々と異なる、[1]~[4]のいずれかの方法。
[10]
第1の信号減衰曲線を推定するために、前記第1の測定セットを表す第1のデータセットに第1の関数をフィッティングすることと、
第2の信号減衰曲線を推定するために、前記第2の測定セットを表す第2のデータセットに第2の関数をフィッティングすることと、
第3の信号減衰曲線を推定するために、前記第3の測定セットを表す第3のデータセットに第3の関数をフィッティングすることと、
をさらに備える、[9]の方法。
[11]
前記第1の測定セットを表す第1のデータセット、前記第2の測定セットを表す第2のデータセット、および前記第3の測定セットを表す第3のデータセットに基づいて出力を生成することをさらに備える、[9]~[10]のいずれか1項の方法。
[12]
前記第1の関数の少なくとも1つのパラメータ、前記第2の関数の少なくとも1つのパラメータ、および前記第3の関数の少なくとも1つのパラメータに基づいて出力を生成することをさらに備える、[10]のいずれか1項の方法。
[13]
前記第2の測定セットおよび前記第3の測定セットの各々の前記拡散エンコーディングシーケンスは、等しい数の非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する、[9]~[13]のいずれか1項の方法。
[14]
前記第1の測定セットの各拡散エンコーディングシーケンスのそれぞれのテンソル表現は、3つの対応する非ゼロ固有値を有する、[13]の方法。
[15]
前記第2の測定セットおよび前記第3の測定セットの各々の前記拡散エンコーディングシーケンスは、厳密に1つの非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する、[9]~[14]のいずれか1項の方法。
[16]
前記複数の測定を実行することは、前記サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、前記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を取得することを含む、[1]~[15]のいずれかの方法。
[17]
前記第1の測定において取得された信号減衰が前記第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標、および前記第2の測定において取得された信号減衰が前記第3の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することをさらに備える、[16]の方法。
[18]
サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行する方法であって、
前記サンプルに拡散強調磁気共鳴測定を実行することを備え、
前記複数の測定は、
3つの一致する非ゼロ固有値を有するテンソル表現を有する第1の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第1の測定と、
厳密に1つの非ゼロ固有値または互いに異なる少なくとも2つの固有値を有するテンソル表現を有する第2の拡散エンコーディングシーケンスを用いる第2の測定と、
を含み、
前記第1および前記第2の拡散エンコーディングシーケンスは、
前記第1の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、非ゼロエンコーディング強度を有する第3の拡散エンコーディングシーケンスが、直径5μmの球状コンパートメントの組み合わせから成る試験サンプルに適用され、
前記第2の拡散エンコーディングシーケンスの正規化ディフェージングベクトル表現と一致する正規化ディフェージングベクトル表現を有し、前記非ゼロエンコーディング強度を有する第4の拡散エンコーディングシーケンスが、前記試験サンプルに適用され、
前記第3の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰が、前記第4の拡散エンコーディングシーケンスの結果生じる信号減衰と一致する
ように構成される、方法。
[19]
前記複数の測定を実行することは、前記サンプルの関心領域内の複数のボクセルの各々から、前記測定の各々の結果生じるそれぞれの信号減衰を取得することを含む、[18]の方法。
[20]
前記第1の測定において取得された信号減衰が前記第2の測定において取得された信号減衰と異なるボクセルの指標を含む出力を生成することをさらに備える、[19]の方法。