(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】予め充填された医薬インジェクタ用プランジャサブアセンブリ、予め充填された医薬インジェクタ、および予め充填された医療インジェクタを組み立てるための方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20220412BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M5/24 540
A61M5/24 500
(21)【出願番号】P 2019534875
(86)(22)【出願日】2017-12-29
(86)【国際出願番号】 EP2017084856
(87)【国際公開番号】W WO2018122394
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-07
(32)【優先日】2016-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エイランド, ヤコプ
(72)【発明者】
【氏名】ホルデン-ティングレフ, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ビェアロム, ピーダ
(72)【発明者】
【氏名】モルケベア トーリー-スミス, ヨーナス
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-509709(JP,A)
【文献】特表平04-502877(JP,A)
【文献】特表平08-507239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある用量の薬剤を排出するため予め充填された医薬インジェクタ用のプランジャサブアセンブリ(40、60、7
0)であって、
- 薬剤を保持する容器(60)であって、前記容器
(60)が医薬排出遠位端と近位端との間の中心軸に沿って延在する円筒形容器本体(61)を備え、軸方向に摺動可能なピストン(63)が前記容器本体(61)内に配置されて、
該ピストン(63)が前記容器
を密封し、前記容器本体(61)の前記近位端
がリム表面(64)を含む、容器(60)と、
- 前記軸に沿って配置され、前
記リム表面(64)に対して遠位に前記ピストン(63)を駆動するように構成されたプランジャ(40)であって、前記プランジャ(40)が、前記プランジャ(40)が前
記リム表面(64)と協働しない開始位置から前記プランジャ(40)が前
記リム表面(64)と協働する前記容器(60)に対する端部位置まで遠位に移動可能であり、それにより、前記プランジャ(40)がさらに遠位に移動することを防止し、前記プランジャ(40)が前記端部位置
をとるとき、前記ピストン(63)
がリム表面(64)に対して投与位置の端部
にある、プランジャと、
- 前記端部位置における前記プランジャ(40)の軸方向遮断手段を提供する前記プランジャ(40)および前記容器(60)と関連付けられた調節可能な遮断手段と、を備え、
前記調節可能な遮断手段が、前記プランジャ(40)と協働し、前
記リム表面(64
)と協働するように構成された許容差補正要素(7
0)を備え、前記許容差補正要素(7
0)が前記プランジャ(40)に対して回転可能で、前
記リム表面(64)に対して投与位置
のピストン端を調
節し、
前記プランジャ(40)が前記端部位置
をとるとき、
前記プランジャ(40)が前記ピストン(63)と直接係合し、一方で前記許容差補正要素(70)は、前記プランジャ(40)および前
記リム表面(64)の両方と直接的に係合するように構成さ
れている、
プランジャサブアセンブリにおいて、
前記プランジャ(40)および前記許容差補正要素(70)のうちの一方が、互いに対して軸方向にオフセットされた複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)を備える輪郭システムを備え、前記プランジャ(40)および前記許容差補正要素(70)のうちの他方が前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)の選択的な一つと軸方向に係合するように配置されたカウンタ停止面(46)を備え、
初期組立構成にある時、前記許容差補正要素(70)および前記プランジャ(40)が前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちの選択的な一つと前記カウンタ停止面(46)を回転整列するよう互いに対して選択的に配置可能であるか、または配置されていることにより、前記容器(60)に対して前記プランジャ(40)の前記端部位置を調整可能に制御し、前記カウンタ停止面(46)を前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちの選択された一つに軸方向に当接させることが可能である、ことを特徴とする、プランジャサブアセンブリ(40、60、7
0)。
【請求項2】
前記プランジャ(40)が前記端部位置
をとるとき、前記プランジャ(40)の遠位に面する幾何学的形状(41)が前記ピストン(63)と直接係合するが、前記許容差補正要素(70)が前記プランジャ(40)および前
記リム表面(64)の両方と直接係合し、前記許容差補正要素(70)が前記プランジャ(40)に対して周方向に配置されたカラーとして形成され、遠位環状表面(74)を有し、前記遠位環状表面(74)が前
記リム表面(64)と係合するように構成された、請求項1に記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項3】
前記輪郭システムの前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)が、周方向に配置され、互いに対して軸方向にオフセットされる複数のステップを画定する、請求項
1または2に記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項4】
最終組立構成において、前記許容差補正要素(70)および前記プランジャ(40)が
、前記カウンタ停止面(46)と前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちの前記選択された一つと
の間に回転整列を提供するように相互に対し
て位置付けられ、前記カウンタ停止面(46)を前記複数の周方向に配置された停止面(76.1,76.2,76.7,76.7,76.13)のうちの
前記選択された一つに軸方向に当接させて、それにより、前記容器本体(61)に対して前記プランジャ(40)の前記端部位置を制御する、請求項
1から3のいずれかに記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項5】
前記プランジャ(40)および前記許容差補正要素(70)が、さねはぎシステム(43、73)によって互いに係合し、前記さねはぎシステムが、少なくとも一つの突起(43)および同軸の構成で配置された複数の軸方向延伸溝(73)を画定し、前記突起(43)は、前記複数の軸方向延伸溝(73)のうちの選択的な一つに配置可能または位置付けられて、前記カウンタ停止面(46)を前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちの
前記選択された一つと回転整列させて、前記プランジャ(40)および前記許容差補正要素(70)の互いに対する軸方向の摺動を可能にすると同時に、両者の間の相対回動を防止する、請求項
1から4のいずれかに記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項6】
前記インジェクタが、前記容器本体(61)に対して軸方向に固定されて取り付けられ、前記プランジャ(40)を部分的または完全に取り囲む基部構成要素(21)を画定し、前記プランジャ(40)および前記基部構成要素(21)が、互いに対して回転不可能に取り付けられ、前記基部構成要素(21)および前記許容差補正要素(70)が、さねはぎシステム(25、75)によって互いに係合し、前記さねはぎシステムが、同軸構成で配置される、少なくとも一つの突起(75)および複数の軸方向延伸溝(25)を画定し、前記突起(75)が、前記複数の軸方向延伸溝(25)のうちの選択的な一つに配置可能または位置付けられて、前記カウンタ停止面(46)を前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちの選択された
前記一つと回転整列させて、前記基部構成要素(21)と前記許容差補正要素(70)との間の相対回転を防止する、請求項
1から4のいずれかに記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項7】
前記カウンタ停止面(46)および追加的な対応するカウンタ停止面(46)が、前記中心軸の周りに規則正しく分布される複数の周方向に配置されたカウンタ停止面(46)として設けられ、前記複数の周方向に配置されたカウンタ停止面(46)のそれぞれが、前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちのそれぞれの一つと同時に軸方向に係合するように構成されている、請求項
1から6のいずれかに記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項8】
前記溝(73、25)および突起(43、75)が、前記許容差補正要素(70)および前記プランジャ(40)が、10度~30度の間が好ましい、5~180度の間のステップサイズを持つ増分角度ステップで互いに対して選択的に回転して配置可能であるように構成される係合面を備える、請求項
5または6に記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項9】
ある用量の薬剤を排出するため予め充填された医薬インジェクタ用のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)であって、
- 薬剤を保持する容器(60)であって、前記容器が医薬排出遠位端と近位端との間の中心軸に沿って延在する円筒形容器本体(61)を備え、軸方向に摺動可能なピストン(63)が前記容器本体(61)内に配置されて、該ピストン(63)が前記容器を密封し、前記容器本体(61)の前記近位端がリム表面(64)を含む、容器(60)と、
- 前記軸に沿って配置され、前記リム表面(64)に対して遠位に前記ピストン(63)を駆動するように構成されたプランジャ(40)であって、前記プランジャ(40)が、前記プランジャ(40)が前記リム表面(64)と協働しない開始位置から前記プランジャ(40)が前記リム表面(64)と協働する前記容器(60)に対する端部位置まで遠位に移動可能であり、それにより、前記プランジャ(40)がさらに遠位に移動することを防止し、前記プランジャ(40)が前記端部位置をとるとき、前記ピストン(63)がリム表面(64)に対して投与位置の端部にある、プランジャと、
- 前記端部位置における前記プランジャ(40)の軸方向遮断手段を提供するために前記プランジャ(40)および前記容器(60)と関連付けられた調節可能な遮断手段と、を備え、
前記調節可能な遮断手段が、前記プランジャ(40)と協働し、前記リム表面(64)と協働するように構成された許容差補正要素(70)を備え、前記許容差補正要素(70)が前記プランジャ(40)に対して回転可能で、前記リム表面(64)に対して投与位置のピストン端を調節し、
前記許容差補正要素(70)が、前記プランジャ(40)が前記端部位置をとるとき、
前記プランジャ(40)が前記ピストン(63)と直接係合し、一方で前記許容差補正要素(70)は、前記プランジャ(40)および前記リム表面(64)の両方と直接的に係合するように構成されている、
プランジャサブアセンブリにおいて、
最終組立構成において、前記プランジャ(40)および前記許容差補正要素(70)が、回転ロック(43、73、25、75)によって相互に対して回転することが防止される、
ことを特徴とするプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項10】
ある用量の薬剤を排出するための予め充填された医薬インジェクタであって、
- 第一および第二のハウジング構成要素を含むハウジングと、
- 請求項1
から9のいずれかに記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、7
0)と、
- 作動時に、前記用量の薬剤を排出するため前記プランジャ(40)上に遠位に向けられた力を加えるように構成されたアクチュエータを備える排出機構と、を備え、
前記プランジャサブアセンブリ(40、60、7
0)および前記排出機構が、前記第一および第二のハウジング構成要素に対して取り外し不可能に収容される、医薬インジェクタ。
【請求項11】
ある用量の薬剤を排出するための予め充填された医薬インジェクタであって、
- 第一および第二のハウジング構成要素を含むハウジングと、
- 請求項1から8のいずれかに記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)と、
- 作動時に、前記用量の薬剤を排出するため前記プランジャ(40)上に遠位に向けられた力を加えるように構成されたアクチュエータを備える排出機構と、を備え、
前記プランジャサブアセンブリ(40、60、70)および前記排出機構が、前記第一および第二のハウジング構成要素に対して取り外し不可能に収容され、
前記許容差補正要素(70)および前記プランジャ(40)が、前記カウンタ停止面(46)と前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちの選択された一つとの間に永久回転
整列を提供するよう互いに対して位置付けられ、前記カウンタ停止面(46)を前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)のうちの前記選択された一つと軸方向に当接させ、前記容器(60)に対して前記プランジャ(40)の前記端部位置を制御することを可能にする
、医薬インジェクタ。
【請求項12】
請求項
11に記載
の医薬インジェクタを組み立てる方法であって、
a) 前記容器(60)を提供する工程と、
b) 前
記リム表面(64)に対して前記ピストン(63)の近位面の軸方向位置(X
1)を決定する工程と、
c) 前記ピストン(63)に対する所定の標的軸方向ストローク(X
S)を取得するため前
記リム表面(64)に対する前記ピストン(63)の前記近位面の投与位置(X
2)の標的軸方向端を確立する工程と、
d) 前記プランジャ(40)および前記許容差補正要素(70)を提供する工程と、
e) 前記ピストン(63)の前記近位面の投与位置(X
2)の前記標的軸方向端に基づいて、前記プランジャ(40)
の遠位端面の標的軸方向端位置を決定する工程と、
f) 前記プランジャ(40)の前記遠位端面に対する前記標的軸方向端位置に基づき
、標的停止面が前記カウンタ停止面(46)と軸方向に当接する時、前記プランジャ(40)の前記遠位端面の
前記標的軸方向端位置が前記ピストン(63)の前記近位面の投与位置(X
2)
の前記標的軸
方向端に実質的に対応するように、前記複数の周方向に配置された停止面(76.1、76.2、76.7、76.13)から選択される標的停止面を決定する工程と、
g)
前記標的停止面に基づき、前記標的停止面が前記カウンタ停止面(46)と回転整列するように互いに対して前記プランジャ(40)および前記許容差補正要素(70)を位置付ける工程と、
h) プランジャサブアセンブリ(40、60、70)を形成する工程と、
i) 前記排出機構および前記第一および第二のハウジング構成要素を提供する工程と、
j) 前記第一および第二のハウジング構成要素を相互に永久的に取り付けて、ハウジングを形成し、それによって前記プランジャサブアセンブリ(40、60、70)および前記排出機構が前記ハウジングに対して取り外し不能に収容される工程と、を含む方法。
【請求項13】
前記回転ロック(43、73、25、75)が幾何学的構成によって形成される、請求項9に記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項14】
前記回転ロック(43、73、25、75)が 回転戻り止め機構によって形成される、請求項9に記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【請求項15】
前記プランジャサブアセンブリの前記容器(60)は、前記容器本体(61)の排出遠位端を密封する隔壁を含むカートリッジを画定し、該隔壁は針カニューレによって貫通され、前記容器の内部との流体連通が確立される、請求項1から9、13及び14のいずれか一項に記載のプランジャサブアセンブリ(40、60、70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジからの薬剤の正確な投与を可能にする医薬インジェクタの構成要素の組み立てに関する。詳細には、本発明は、予め充填された医薬インジェクタのためのプランジャサブアセンブリおよびかかる予め充填された医薬インジェクタを組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの疾患患者に関しては、毎週、毎日、または毎日複数回、定期的に医薬を注入する必要がある。患者が針の恐怖を克服するのを助けるために、できるだけ簡単に注射装置を使用することを目的として、完全自動注射装置が開発されてきた。自動インジェクタは通常、ハウジング内に収容されるカートリッジまたはシリンジの形態の容器を含む。単回使用が意図されている予め充填された自動インジェクタは、特に単純でユーザーにやさしい装置を提供するために開発されてきた。このような自動インジェクタの例は、WO2016/075254A1号に開示されている。
【0003】
WO2011/121061号は、それぞれの用量設定および排出操作による要求される用量の複数投与を可能にする薬物送達装置用のピストンロッド組立品を開示している。許容差の除去の目的で、ピストンロッド組立品は、ピストンとピストンロッドの間に配置された調整部材を備える。調整部材は、ピストンロッドと調整部材を相互に対して軸方向に移動させるために、ピストンロッドと螺合されて、ピストンとピストンロッドとの間の相互の当接を確実にする。
【0004】
US5,695,472号は、さらにモジュール式流体薬物注入組立品を開示している。装置を分解することにより、ユーザーは、第一の用量の排出のために装置を準備することができ、またはその後の用量の排出のために装置を準備することができる。装置に対する異なる種類の薬剤の使用を可能にするために、ユーザーは、装置のシリンジの長さの変更を手動で調節することができる。複数の構成要素が用量設定の変更を可能にするために使用され、手動調整は許容差の変更に適していない。
【0005】
隔壁を装備したカートリッジなどの薬剤容器の充填は、容器の製造によって影響を受ける。例えば、ガラスカートリッジでは、充填技術と組み合わされたカートリッジの寸法は一般に、カートリッジによって収容される総容量の軽微な不正確性をもたらす。明確に定義された容量の薬剤を送達することは、多くの治療薬(例えば、糖尿病の治療)に必須である。
【0006】
一部の医療用途では、予め充填された自動インジェクタなどの単回使用投与を意図する予め充填された医薬インジェクタは、投薬量精度に関してその要件を満たしていない。したがって、特定の治療区域では、改善された予め充填された医薬インジェクタが必要である。
【発明の概要】
【0007】
改善された投薬量精度を特徴とする医薬インジェクタを提供することが、本発明の目的である。このような医薬インジェクタを製造する簡略化され頑丈な方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。最後に、医薬インジェクタで使用される改善されたプランジャ組立品を提供することが本発明の目的である。
【0008】
本発明の開示では、上記の物体のうちの一つ以上に対処するか、または以下の開示ならびに例示的な実施形態の説明から明らかな物体に対処する実施形態および態様が記載される。
【0009】
第一の態様では、本発明は、ある用量の薬剤を排出するため予め充填された医薬インジェクタ用のプランジャサブアセンブリに関し、
- 薬剤を保持する容器であって、薬剤排出遠位端と薬剤排出近位端との間の中心軸に沿って延在する円筒形容器本体を備え、軸方向に摺動可能なピストンが容器本体内に配置されて近位に容器を密封し、容器本体の近位端が近位に面するリム表面を含む、容器と、
- 軸に沿って配置され、近位に面するリム表面に対して遠位にピストンを駆動するように構成されているプランジャであって、プランジャは、近位に面するリム表面と協働していない開始位置から、プランジャが近位に面するリム表面と協働して、プランジャがさらに遠位に移動することを防ぐ容器に対する端部位置まで遠位に移動可能であり、プランジャが端部位置とみなすとき、ピストンは近位に面するリム表面に対して投与位置の端とみなす、プランジャと、
- 端部位置でプランジャに軸方向遮断手段を提供するプランジャおよび容器と関連付けられた調節可能な遮断手段と、を含み、
調節可能な遮断手段は、プランジャと協働し、近位に面するリム表面またはピストンのいずれかと協働するように構成された許容差補正要素を備え、許容差補正要素は、プランジャに対して回転可能で、近位に面するリム表面に対して投与位置のピストン端を調節し、
プランジャが端部位置とみなすとき、許容差補正要素は、
a) プランジャがピストンと直接係合する一方で、許容差補正要素は、プランジャおよび近位に面するリム表面の両方と直接係合する、または、
b) プランジャが、近位に面するリム表面と直接係合する一方で、許容差補正要素は、プランジャおよびピストンの両方と直接係合するよう構成される。
【0010】
プランジャサブアセンブリが、プランジャと許容差補正要素の軸方向長さの補正を許容差補正要素とプランジャとの間の相対回動または回転アラインメントの実施によって実施する機構を含むことにより、およびプランジャ組立品が、容器本体の近位に面するリム表面と協働する停止面を含むことにより、許容差補正を取得する特定の単純な方法が行われる。それによって、一連の予め充填された医薬インジェクタの異なるサンプルにわたる排出された投薬量の精度が得られる。
【0011】
本発明によれば、大規模な製造では、単純な測定値および単純な許容差補正調整の基礎に基づいて、許容差補正を実施することができ、これはすべて自動化手段によって実行されうる。
【0012】
容器が排出前の状態である場合、ピストンの近位面は、容器本体の近位に面するリム表面に対して軸方向の開始位置とみなす。軸方向開始位置は簡単に決定または推定でき、また医薬インジェクタに組み込まれた時に、排出機構がプランジャを遠位に移動させて、高精度の排出ストロークで容器のピストンを移動する排出運動を実施するように、プランジャサブアセンブリが調整される。
【0013】
実施形態によっては、プランジャサブアセンブリは、少なくともプランジャが端部位置とみなすとき、プランジャの遠位に面する幾何学的形状がピストンと直接係合する一方で、許容差補正要素はプランジャおよび近位に面するリム表面の両方と直接係合するように構成される。
【0014】
許容差補正要素は、実施形態によっては、プランジャに対して円周方向に配置されたカラーとして形成され、容器本体の近位に面するリム表面と係合するように構成された遠位環状表面を有する場合がある。カラーは、プランジャを部分的かまたは完全かいずれかに囲むように形成されうる。
【0015】
さらなる実施形態では、プランジャおよび許容差補正要素のうちの一方は、互いに対して軸方向にオフセットされた複数の周方向に配置された停止面を含む輪郭システムを含み、プランジャおよび許容差補正要素のうちの他方は、複数の周方向の停止面のうちの選択的な一つと軸方向に係合するように配置されたカウンタ停止面を含む。初期組立構成にある時、許容差補正要素およびプランジャは、複数の周方向に配置された停止面のうちの選択的な一つとカウンタ停止面を回転整列するよう互いに対して選択的に配置可能であるか、または位置付けて、それにより容器に対してプランジャの端部位置を調整可能に制御し、カウンタ停止表面を複数の周方向に配置された停止面のうちの選択された一つに軸方向に当接可能である。
【0016】
輪郭システムの複数の周方向に配置された停止面は、互いに対して周方向に配置され、軸方向にオフセットされる複数の工程を画定するように形成されうる。
【0017】
実施形態によっては、段付き構成を形成する代わりに、輪郭システムの複数の周方向に配置された停止面は、中心軸の周りをらせん状に伸びる少なくとも一つの連続リブを共に形成する近接して形成された停止面として設けられる。
【0018】
医薬インジェクタのハウジングへのプランジャ組立品の挿入前、または顧客に送達される前などのプランジャサブアセンブリの最終組立構成において、許容差補正構成およびプランジャは、複数の周方向に配置された停止面のうちの選択された一つとカウンタ停止面の回転アラインメントで相互に回転止めされて位置付けられる。従って、プランジャ組立品のプランジャが容器バレルに対して完全に遠位に移動された時、例えば、医薬インジェクタが意図された用量を排出した時、カウンタ停止面は、複数の周方向に配置された停止面のうちの選択された一つと軸方向に当接して、それによって容器本体に対するプランジャの端部位置を制御する。
【0019】
実施形態によっては、プランジャおよび許容差補正要素は、さねはぎシステムによって相互に係合する。さねはぎシステムは、少なくとも一つの突起および同軸の構成で配置された複数の軸方向延伸溝を画定するように形成されてもよい。すなわち、そこでは、少なくとも一つの突起がプランジャおよび許容差補正要素のうちの一方の上に配置され、複数の軸方向延伸溝がプランジャおよび許容差補正要素のうちの他方に配置されている。突起は、複数の軸方向延伸溝のうちの選択的な一つに配置可能または位置付けられて、カウンタ停止面を複数の周方向に配置された停止面のうちの選択された一つと回転整列させて、プランジャおよび許容差補正要素の相互の軸方向の摺動を可能にすると同時に、プランジャサブアセンブリが最終組み立て状態とみなすときに、その間の相対回動を防止する。
【0020】
その他の実施形態では、プランジャサブアセンブリは、容器本体に対して軸方向に固定されて取り付けられた基部構成要素を備えてもよく、基部構成要素は部分的または完全にプランジャを取り囲み、プランジャおよび基部構成要素は互いに対して回転不可能に取り付けられる。こうした組立品では、基部構成要素および許容差補正要素は、さねはぎシステムによって相互に係合するように形成され、さねはぎシステムは、少なくとも一つの突起および同軸の構成で配置された複数の軸方向延伸溝を画定する。すなわち、そこでは、少なくとも一つの突起が、基部構成要素および許容差補正要素のうちの一方の上に配置され、複数の軸方向延伸溝が基部構成要素および許容差補正要素のうちの他方の上に配置される。突起は、複数の軸方向延伸溝のうちの選択的な一つに配置可能または位置付けられて、カウンタ停止面を複数の周方向に配置された停止面のうちの選択された一つと回転整列させて、基部構成要素と許容差補正要素との間の相対回転を防止する。
【0021】
実施形態によっては、カウンタ停止面および追加的な対応するカウンタ停止面は、複数の周方向に配置されたカウンタ停止面として設けられる。これらは、中心軸の周りに規則正しく分布しうる。複数の周方向に配置されたカウンタ停止面のそれぞれは、複数の周方向に配置された停止面のそれぞれ一つと同時に軸方向に係合するように構成される。
【0022】
協働する溝および突起のシステムは、許容差補正要素およびプランジャ、または基部構成要素が、10度~30度の間が好ましい、5~180度の間のステップサイズを持つ増分角度ステップで互いに対して選択的に回転して配置可能であるように構成される係合面を備えるように形成されてもよい。
【0023】
実施形態によっては、溝面および突起面は、許容差補正要素およびプランジャが、180度のステップサイズを持つ増分角度ステップで相互に選択的に回転して配置可能であるように構成される。
【0024】
プランジャおよび許容差補正要素は、最終組立構成を想定するとき、回転ロックによって相互に対して回転が阻止される。ロックは、剛直な幾何学的形状または回転戻り止め機構によって形成されうる。
【0025】
実施形態によっては、溝面および突起面は、許容差補正要素とプランジャとの間の相対的回転に対して作用する所定の大きさを超えるトルクをかけることによって、許容差補正要素とプランジャ、または基部構成要素との間で回動を可能にするだけの少なくとも一つの弾性的に付勢された突起面を含む。
【0026】
他の代替的な実施形態では、プランジャサブアセンブリは、許容差補正要素が容器のプランジャとピストンとの間に軸方向に配置されるように構成される。許容差補正要素は、ピストンと直接係合するように構成された遠位に面する面を含む。プランジャが端部位置とみなす時、プランジャは、近位に面するリム表面と直接係合するように構成された固定された停止面を画定する。許容差補正要素は、プランジャ上のねじ山と螺合しているねじ山を含み、螺合は、プランジャによってかけられた軸方向の力がピストンに作用して遠位にピストンを駆動するとき、許容差補正要素と固定停止面との間の軸方向の距離の調整を可能にするよう構成され、プランジャと許容差補正要素との間の回動を抑制するように構成されている。螺合は、自己ロック型ねじ係合として構成されうる。別の方法として、回転戻り止め機構が螺合とともに提供される。
【0027】
実施形態によっては、プランジャサブアセンブリの容器は、容器本体の排出遠位端を密封する隔壁を含むカートリッジを画定し、隔壁は針カニューレによって貫通されて、容器の内部と流体連通を確立する。代替的な実施形態では、容器は容器本体に取り付けられた針を持つシリンジを形成する。特定の実施形態では、容器本体は管状のガラスバレルとして提供される。
【0028】
第二の態様では、本発明は、ある用量の薬剤を排出するため予め充填された医薬インジェクタに関し、
- 第一および第二のハウジング構成要素を含むハウジングと、
- 前記第一の態様に従って画定されるプランジャサブアセンブリと、
- 作動時に、用量の薬剤を排出するためプランジャ上に遠位に向けられた力を加えるように構成されたアクチュエータを備える排出機構と、を含み、
プランジャサブアセンブリおよび排出機構は、第一および第二のハウジング構成要素に対して取り外し不可能に収容される。
【0029】
実施形態によっては、許容差補正要素およびプランジャは、カウンタ停止面と周方向に配置された停止面のうちの選択された一つとの間の永久回転アラインメントを提供する相互に対して位置付けられ、カウンタ停止面を周方向に配置された停止面のうちの選択された一つと軸方向に当接し、それにより容器に対してプランジャの端部位置を制御することを可能にする。
【0030】
実施形態によっては、許容差補正要素は、プランジャが遠位に移動して用量を排出するとき、近位に面するリム表面と当接したままであるように構成されている。
【0031】
代替的な実施形態では、許容差補正要素は、プランジャがピストンを遠位に駆動するときにプランジャが遠位に移動すると、プランジャと共に移動するように構成される。
【0032】
実施形態によっては、プランジャは、装置のハウジングに対して回転することが防止される。
【0033】
実施形態によっては、排出機構は、例えば、排出機構の作動時に、プランジャに対して遠位に向けられた力を提供するように構成された予め応力を持たせたばねなどのエネルギー源を備えうる。
【0034】
特定の実施形態では、予め充填された医薬インジェクタは、排出機構が容器から単回用量の薬剤を排出するための単一の起動を可能にするだけであるように構成される。容器を交換できないように、容器がインジェクタのハウジング内に交換不能に収容されて、そのため予め充填された薬剤インジェクタは、単回投与の後に廃棄されるようになる。
【0035】
第三の態様では、本発明は、上述の第二の態様による予め充填された医薬インジェクタを組み立てる方法に関する。
【0036】
プランジャサブアセンブリが上述のように複数の周方向に配置された停止面を含む実施形態では、その方法は、
a) 容器を提供する工程と、
b) 近位に面するリム表面に対してピストンの近位面の軸方向の位置(X1)を決定する工程と、
c) ピストンに対する所定の標的軸方向ストローク(XS)を取得するため、近位に面するリム表面に対するピストンの近位面の投与位置(X2)の標的軸方向端を確立する工程と、
d) プランジャおよび許容差補正要素を提供する工程と、
e) ピストンの近位面の投与位置(X2)の標的軸方向端に基づいて、プランジャの遠位端面に対する標的軸方向端位置を決定する工程と、
f) プランジャの遠位端面に対する標的軸方向端位置に基づき、標的停止面がカウンタ停止面に軸方向に当接する時、プランジャの遠位端面の軸端位置がピストンの近位面の投与位置(X)2)の目標軸端に実質的に対応するように、複数の周方向に配置された停止面から選択される標的停止面を決定する工程と、
g) 標的停止面に基づき、標的停止面がカウンタ停止面と回転整列するようにプランジャおよび許容差補正要素を互いに対して位置付ける工程と、
h) プランジャサブアセンブリを形成する工程と、
i) 排出機構ならびに第一および第二のハウジング構成要素を提供する工程と、
j) 第一および第二のハウジング構成要素を相互に永久的に取り付けてハウジングを形成する工程と、を含み、それによってプランジャサブアセンブリおよび排出機構がハウジングに対して取り外し不能に収容される。
【0037】
プランジャサブアセンブリがプランジャと上述の許容差補正要素との間の螺合を含む実施形態では、その方法は、
a) 容器を提供する工程と、
b) 近位に面するリム表面に対するピストンの近位面の初期軸方向位置(X1)を決定する工程と、
c)ピストンに対する所定の標的軸方向ストローク(XS)を取得するため、近位に面するリム表面に対するピストンの近位面の投与位置(X2)の標的軸方向端を確立する工程と、
d) プランジャおよび許容差補正要素を提供する工程と、
e) ピストンの近位面の投与位置(X2)の標的軸方向端に基づいて、許容差補正要素の遠位端面とプランジャの固定停止面との間の標的軸方向距離を決定する工程と、
f) 許容差補正要素の遠位端面がプランジャの固定停止面から標的軸方向距離に位置するように、プランジャと許容差補正要素との間の回転位置を調整する工程と、
g) プランジャサブアセンブリを形成する工程と、
h) 排出機構ならびに第一および第二のハウジング構成要素を提供する工程と、
i) 第一および第二のハウジング構成要素を相互に永久的に取り付けてハウジングを形成する工程と、を含み、それによってプランジャサブアセンブリおよび排出機構がハウジングに対して取り外し不能に収容される。
【0038】
最後に、第四の態様では、本発明は、ある用量の薬剤を排出するため予め充填された医薬インジェクタに関し、
- ハウジングと、
- 医薬を保持し、ハウジング内に配置された容器であって、医薬排出遠位端と近位端との間の中心軸に沿って延在する円筒形容器本体を備え、近位端が近位に面するリム表面を画定し、軸方向に摺動可能なピストンが容器本体内に配置されて容器を近位に密封し、排出前の状態で、ピストンの近位に面する表面が近位に面するリム表面に対して軸方向の開始位置とみなされる、容器と、
- 軸に沿って配置され近位端から遠位端に延在するプランジャであって、遠位端が、近位に面するリム表面に対してピストンを遠位に駆動するためピストンの近位に面する表面と協働するように構成され、プランジャがプランジャの遠位端と近位端との間に配置された固定された停止面を備え、固定された停止面が、容器の近位に面するリム表面と協働して近位に面するリム表面に対してプランジャの遠位移動に対する停止制限を画定するよう配置される、プランジャと、
- 作動時に、用量の薬剤を排出するためプランジャ上に遠位に向けられた力を加えるように構成されたアクチュエータを備える排出機構と、を含み、
容器、プランジャおよび排出機構が、ハウジングに対して取り外し不可能に収容され、
一つ以上の許容差補正要素が、
a)容器の近位に面するリム表面とプランジャの遠位に面する停止面との間の軸方向に、かつ/または、
b)プランジャの遠位端とピストンの近位に面する表面との間の軸方向に配置され、
一つ以上の許容差補正要素が、一群の許容差補正要素から選択され、近位に面するリム表面に対してピストンの近位に面する表面の軸方向開始位置上の許容差の変化を補正するように配置される。
【0039】
一実施形態では、許容差補正要素の群は、異なるそれぞれの軸方向サイズを持ち、それぞれが容器の近位に面するリム表面とプランジャの遠位に面する停止面との間に軸方向に配置されるように構成された複数の許容差補正要素から成る第一の群を定義する。
【0040】
さらなる実施形態では、許容差補正要素の群は、異なるそれぞれの軸方向サイズを持ち、それぞれがプランジャの遠位端とピストンの近位に面する面との間に軸方向に配置されるように構成された第二の群を定義する。
【0041】
さらなる実施形態では、許容差補正要素の群は、前述の第一の群および第二の群の許容差補正要素を含む。
【0042】
なおさらなる実施形態では、許容差補正要素の群は、
- 所定の軸方向サイズの、容器の近位に面するリム表面とプランジャの遠位に面する停止面との間に軸方向に配置されるように構成された、許容差補正要素の少なくとも一つと、
- 所定の軸方向サイズの、プランジャの遠位端とピストンの近位面との間に軸方向に配置されるように構成された、許容差補正要素の少なくとも一つと、を定義する。
【0043】
本発明の上記の態様および実施形態すべてによれば、許容差補正要素または許容差補正要素の群は、約±0.5mm、またはさらなる実施形態では約±1.0mmのカートリッジの近位に面するリム表面に対するピストンの近位に面する表面の軸方向の開始位置での許容差の変化を補正するように構成されうる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「医薬の」という用語は、液体、溶液、ゲルまたは微細懸濁液などの制御された様式でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することができる任意の薬物含有流動性医薬品を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
以下において、本発明を、図面を参照しながらさらに説明する。
【
図1】
図1aは、本発明に関連して使用するために適用可能な例示的な注射装置の断面側面図を示し、ここで装置はトリガ前の状態である。
図1bは、
図1aの注射装置の断面側面図を示しているが、トリガに続く状態で、装置が投与状態の終了とみなすものである。
【
図2】
図2は、プランジャが開始位置とみなす本発明によるプランジャ組立品の第一の実施形態の断面側面図を示す。
【
図3】
図3は、
図2に示すプランジャアセンブリの許容差補正要素の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図2に示すプランジャ組立品の許容差補正要素を通る遠位方向の断面軸方向図を示す。
【
図5】
図5は、カートリッジからの薬剤の排出量に関連する追加情報を有する
図2の図に類似の図を示す。
【
図6】
図6は、プランジャが開始位置にある
図2に示すプランジャ組立品の斜視図を示す。
【
図7】
図7は、プランジャが端部位置とみなす本発明によるプランジャ組立品の第二の実施形態の断面側面図を示す。
【
図8】
図8は、
図7に示すプランジャアセンブリの許容差補正要素の斜視図を示す。
【
図9】
図9は、
図7に示すプランジャ組立品の許容差補正要素を通る遠位方向の断面軸方向図を示す。
【
図10】
図10は、プランジャが端部位置にある
図7に示すプランジャ組立品の斜視図を示す。
【
図12】
図12は、プランジャが開始位置とみなす本発明によるプランジャ組立品の第三の実施形態の断面側面図を示す。
【0046】
対応する参照文字は、いくつかの図全体を通して対応する部品を示す。図面は本発明の実施形態を表すが、本発明をより良く図示し説明するために、図面は必ずしも縮尺に従っておらず、一部の図面で誇張または省略がなされてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1aおよび1bは、本発明に関連して使用するのに適した例示的な注射装置の二つの動作状態を図示する。注射装置は、注射装置が用量排出のために作動された時に排出される量に関連する機能を説明するために、二つの異なる動作状態で示されている。図示の装置は、本文書の
図1c、2c、3c、4a、4b、および5cに関連してWO2016/075254A1号に開示された装置と全体的に類似している。本開示の
図1aおよび1bは、それぞれWO文書の
図1cおよび4bに対応する。開示された装置の詳細な説明に対して、WO文書を参照する。
【0048】
図示の注射装置は、適切であるが非限定的な例を形成し、投与量の調整に関する本発明の原理を、他のタイプの注射装置と共に使用することができることに留意されたい。図示の注射装置の詳細すべては、これらの詳細がすでに上記のWO文書に記載されているため、本明細書に詳細に記載しない。
【0049】
図1aおよび1bは、ハウジング200、210、220に交換不能に収容されたカートリッジ600を含む薬剤を備える単回使用の予め充填された自動インジェクタの形態の注射装置100を示す。注射装置100は、近位針端520および遠位針端510、針シールド350ならびに主として駆動ラム310の形態のアクチュエータおよびラムスペーサ部材400の形態でプランジャに作用する突出力を与える圧縮ばね330からなる排出組立品または排出機構を持つ注射針組立品500をさらに含む。排出組立品は、ハウジングに対する針シールド350を押し込んで排出作用を開始する排出組立品を誘導するように、針シールド350によって作動可能である。
【0050】
図示の実施形態では、
図1aに示す初期遮蔽状態では、注射装置は、排出組立品をトリガする前の状態とみなされる。図示の実施形態では、容器600は、カートリッジ内部との流体連通を確立するために針によって穿孔されるよう適合されたカートリッジ隔壁によって覆われた遠位に配置された出口を持つ円筒形の本体を有するカートリッジを形成する。カートリッジの本体は、摺動可能に配置されたピストン630を収容する。針がカートリッジ隔壁を穿孔する状態では、ピストン630は、カートリッジ600から薬剤を分注するために、出口に向かって駆動可能である。
【0051】
ラムスペーサ部材400は、ラムスペーサ部材400の遠位端から所定の距離に位置付けられた停止面401と形成され、カートリッジ600の本体の後端部611と協働してカートリッジ600内部のピストン630のストローク位置の正確な端を定義する。カートリッジ600の充填中、ピストン630は、カートリッジの望ましい充填レベルに従ってカートリッジ600の後端部611に対して位置付けることができるので、排出用量の正確な容積は、排出動作の完了時にカートリッジ600の後端部611を打つ停止面401を利用して制御できる。図示の実施形態では、ラムスペーサ部材400は、180度離れて位置する二つの長軸方向に延在するリブを含む。各々の長軸方向に延在するリブは、停止面401を形成する遠位端表面を有する。図示の実施形態では、ラムスペーサ部材400は、注射装置100のハウジング内に回転式に固定されている。
【0052】
図1bに示すように、トリガおよび注入の後に、注射装置100は、投与状態の終了とみなされるが、注射部位から装置を取り除く前にみなされる。排出組立品はカートリッジのピストン630を遠位に押し、それによってカートリッジ内の意図された用量の薬剤を針を通して注射部位に排出する。ラムスペーサ部材400の停止面401は、カートリッジ600の後端部611と係合し、それによって、カートリッジ600に対するラムスペーサ部材400の端部位置を制御する。従って、ピストン630の近位表面の軸方向位置は、ラムスペーサ部材400の遠位面の軸方向位置に対応する。
【0053】
薬剤が注入された後、針シールド350は再びハウジングに対して押され、針の遠位端を遮蔽する。図示の実施形態では、これは、ユーザーが注射部位に対して注射装置のハウジングを手動で引き込む結果として発生する。図示の実施形態では、針シールド350は、針シールドばねによって遠位方向に付勢され、針シールドは遮蔽状態に自動的に移動し、そこで針シールドは永久的にロックされる。その後、装置は廃棄する準備が整う。
【0054】
図1aおよび1bに関する上記の説明は、本発明で使用するために適用可能な例示的な注射装置の使用に関する背景情報を提供している。しかし、説明した注射装置は、本発明による原理と共に利用できる多くの異なる市販の注射装置の一つである。
【0055】
特定の種類の薬剤での処置に関連するなど特定の用途に対して、大規模な製造では、上述の一つのような注射装置から排出された用量の精度は、典型的な所定の許容差レベルを満たすことはできない。具体的には、カートリッジ本体の裏面に対するピストンの初期軸方向位置は、約±0.5mmなど、または±1.0mmであっても変化しうる。以下では、そのような許容差の変化を補正するために使用できる原則に関連する異なる実施形態を説明する。これらの原理を利用して、カートリッジから単回用量の排出の精度を上げることができ、それによって改善された注射装置を提供することができる。
【0056】
図2は、本発明によるプランジャ組立品10.1の第一の実施形態を示す。プランジャ組立品10.1は、カートリッジ60、プランジャ40および許容差補正要素70を含む。プランジャ組立品10.1は、上述の注射装置100でラムスペーサ部材400およびカートリッジ600を置き換えることを意図する。
【0057】
カートリッジ60は、上述のカートリッジ600と類似している。カートリッジ600は、円筒形本体61を備え、その中に摺動可能なピストン63が本体61の近位に面するリム表面64に対して特定の初期軸方向位置に配置される。
【0058】
プランジャ40は、上述のラムスペーサ部材400と同じ機能を実施する。プランジャ40は、カートリッジの本体内に軸方向に部分的に挿入されるように構成された細長いほぼ管状の要素を形成する。図示の実施形態では、プランジャ400は、半径方向に向かい合った二つの長軸方向に延在するリブ45で形成される。長軸方向に延在するリブ45はそれぞれ、遠位に面する停止面46内に終わり、本開示ではまた「カウンタ停止面」と呼ばれる。遠位に面する停止面46は、カートリッジ60の近位に面するリム表面64とともに、許容差補正要素70を介して協働するために、プランジャ40の遠位端面41から所定の軸方向距離に位置付けられる。
【0059】
許容差補正要素70は
図3でより良く見られる。第一の実施形態では、許容差補正要素70は、プランジャ40に対して周方向に配置され、カートリッジ60の近位に面する表面64と係合し、かつそれに対して同一平面上にあるように寸法設定された遠位の環状面74を備えるカラーとして形成される。許容差補正要素70の近位に面する表面76は、互いに対して軸方向にオフセットされている複数の周方向に配置された停止面76.1~76.13を含む輪郭システムで形成される。図示の実施形態では、輪郭システムは、互いに対して周方向に配置および軸方向にオフセットされる複数の工程で形成される。図示の実施形態では、二組の輪郭システムは相互に対向して配置される。各輪郭システム13では、180度の角度を覆う一連の工程76.1~76.13に個々のステップが形成される。従って、13個の個々のステップは周囲で二回繰り返されるので、特定の軸方向位置の各ステップは片方が180度だけ離れているが、同一の軸方向レベルに配置される。
【0060】
許容差補正要素70の径方向内側に面する表面において、一連の軸方向延伸溝73は、周方向に配置されて、プランジャ40から径方向外側に突出するように形成された一つ以上の軸方向に延在する突起43と協働する。初期の組立構成では、プランジャ40を許容差補正要素70に対して組み立てる前に、二つの構成要素間の特定の回転方向を選択してもよく、プランジャ40が許容差補正要素70に挿入されると、二つの構成要素は互いに対して回転固定される。さねはぎシステム43/73は、二つの構成要素が互いに回転固定された時でも、プランジャ40が許容差補正要素70に対して自由に軸方向に摺動可能であるように形成される。図示の回転ロッキング係合の代替として、組立作業中の回転の調整を可能にする働きをするだけでなく、二つの構成要素を互いにロックして最終組立後の意図的でない回転動作を防止する働きをする回転戻り止め機構を形成する回転のスナップ係合が提供されうる。
【0061】
最終組立構成では、
図2および6に示す通り、プランジャ40に対する許容差補正要素70の特定の選択された回転位置により、カウンタ停止面46および周方向に配置された径方向ステップ76.1~76.13の選択されたステップは、互いに対して回転整列され、カウンタ停止面を周方向に配置されたステップのそれぞれの選択されたステップと軸方向に当接可能にして、容器60の近位に面するリム表面64に対してプランジャ40の端部位置を制御する。図示の例では、カウンタ停止面46のそれぞれは、許容差補正要素70上の停止面76.7と整列される。
【0062】
図5を参照すると、特定のプランジャ組立品10.1の組立作業中、カートリッジ本体61の近位に面するリム表面64に対するピストン63の初期軸位置(X
1)は、測定プローブによって、光学測定によって、または代替的な適切な測定方法によって決定され得る。測定された情報に従って、特定の回転方向が、プランジャ40と許容差補正要素70との間で選択されうる。選択は、好ましくは自動化された製造設定で、その後の排出手順の間にプランジャ40によって遠位に駆動される、カートリッジ本体61に対するピストン63の軸方向ストロークが確実に標的軸方向ストローク(X)
s)内にあるように実施される。望ましい量が排出された時、すなわち、ピストン63が投与位置の終了とみなすと、ピストンはカートリッジ本体61の近位に面するリム表面64に対する位置(X
2)に位置する。一般的に、カートリッジ本体61の近位に面するリム表面64を参照する時、距離X
2は、X
1+X
sに等しい。一般に、プランジャサブアセンブリが形成される時、例えば、医薬インジェクタが組み立てられた時に、プランジャは一般に、プランジャとピストンとの間の全面的な係合が得られる位置を目算しない。しかし、排出中に、プランジャの初期移動後、プランジャは、ピストンと係合する軸方向位置に達し、プランジャX
sの最終的なストロークは、一般的には、ピストンの標的軸方向ストロークX
sに対応する。
【0063】
プランジャ組立品は、許容範囲の補正要素が適切に調整されたその最終組立構成において、注射装置の残りの構成要素で組み立てることができる。プランジャと許容差補正要素の間で不可能なさらなる調整をするように、プランジャ組立品は、互いに対して永久的に取り付けられるハウジング構成要素内に受けられることが好ましい。説明した方法では、装置の個々の構成要素の許容差の変化および、デバイスからの排出された薬剤の投与量の大きさの正確性の許容差に誘発された変化が効果的に除去されうる。
【0064】
その他の代替的実施形態では、カウンタ停止面の数は、2より低いかまたは2より高いことに留意されたい。同様に、輪郭システムを二回繰り返す一連のステップとして形成する代わりに、単一または三連続以上のみが、許容範囲補正要素上に形成されうる。それぞれの輪郭システムのステップ数は、対応する固有の軸位置の数で2、3、4またはそれ以上とするなど、限られた数の軸方向位置のみを組み込むように、変えることも可能である。許容差補正要素が一つ以上の輪郭システムを含むさらにその他の実施形態では、複数のカウンタ停止面は、許容差補正要素の輪郭システムと協働するために、個別の輪郭システムとしてプランジャ上に設計されうる。図示の輪郭システムがプランジャ上のらせん状の経路に沿って配置されるステップを含むが、輪郭システムはらせん状の経路に沿って配置される必要はなく、異なるように形成された経路に沿って形成されうることに留意されたい。
【0065】
また、他の代替的実施形態では、輪郭システムは代替的にプランジャ上に形成されてもよいが、カウンタ停止表面は許容範囲の補正要素上に提供されうることにも留意されたい。さらに、容器の近位に面するリム表面と常に係合するように配置された許容差補正要素の代わりに、許容差補正要素は、プランジャがカートリッジに対して軸方向に移動するときにプランジャと共に移動するように配置されうる。こうしたシステムでは、プランジャの端部位置は、許容差補正要素の遠位面74が近位に面するリム表面64にヒットするときに想定される。
【0066】
図7~11は、第一の実施形態のプランジャ組立品10.1とほぼ対応するように形成されるプランジャ組立品10.2の第二の実施形態を示す。しかし、プランジャと許容差補正要素70との間の回転するさねはぎシステムを形成する代わりに、調整可能な方法の許容差補正要素は、ハウジング構成要素21に対して回転式に整列され、その後ロックされる。こうしたハウジング構成要素は、
図1aおよび1bに示す注射装置100のハウジング構成要素210にほぼ類似して形成されうる。明瞭化を改善するために、ハウジング構成要素21は
図9~11の図から省略される。一部の実施形態では、予め充填された医薬インジェクタの製造中の特定の組立品状態では、ハウジング構成要素21は、プランジャ組立品10.2の一部を形成しうる。
【0067】
図8、9および10に示すように、二つの突起75は、許容差補正要素70の外部表面から径方向外側に突出するように形成される。各突起73は、ハウジング構成要素21内の径方向内向き面上に周方向に形成された複数の軸方向延伸溝23の選択された一つと協働するように配置される。最初の75組立品構成では、ハウジング構成要素21に対する許容差補正要素70の組み立て前に、二つの構成要素間の特定の回転配向が選択されうる。以下、許容差補正要素70がハウジング構成要素21に挿入されると、二つの構成要素が互いに対して回転固定される。
【0068】
プランジャ組立品10.2は、その最終組立構成において、その後に注射装置の残りの構成要素と組み立てて、優れた投与量精度を持つ予め充填された注射装置を形成することができる。
【0069】
最後に、
図12を参照すると、本発明によるプランジャ組立品10.3の第三の実施形態が示されている。プランジャ組立品10.3は、カートリッジ本体61の近位に面するリム表面64と直接係合するように構成された二つの遠位に面するカウンタ停止面46を形成するプランジャを含む。この実施形態では、プランジャは、プランジャ40の遠位端に結合された許容差補正要素80を介して、カートリッジのピストン63に結合される。許容差補正要素80は、ピストン63の遠位表面と直接係合するように構成された遠位に面する面81を備える。許容差補正要素80は、スレッド88を備える近位に面する穴をさらに備える。プランジャ40の遠位端は、許容差補正要素80のスレッド88と係合する対応する外部スレッド48で形成される。
【0070】
許容差補正要素80およびプランジャ40を互いに対して回転させることによって、許容差補正要素80の遠位に面する面81とカウンタ停止面46との間の有効な軸方向距離は、カートリッジ本体61の近位に面するリム表面64に対するピストン63の測定された軸方向の位置に従って選択されうる。測定は、プランジャ組立品10.1に関連して上述したものと同じ手段および方法を使用することによって実施されうる。螺合88/48は、自己ロックねじ接続として形成されることが好ましく、これは、プランジャ40がピストン63の近位面上に許容差補正要素80を介して軸方向力をかけるときに、螺合が自己誘導される回転を阻害するように構成されていることを意味する。スレッド88と48の間の摩擦は、適切なツールがプランジャ40と許容差補正要素80の間にトルクをかける時だけに回転が実施されるような大きさで設計されることが好ましい。
【0071】
プランジャ組立品10.3は、その最終組立構成において、上述のプランジャ組立品10.1および10.2と同様に、その後注射装置の残りの構成要素と組み立てることができる。プランジャ組立品10.3は、プランジャと許容差補正要素の間で不可能なさらなる調整をするように相互に永久的に取り付けられるハウジング構成要素内に受けられることが好ましい。説明した方法では、装置の個々の構成要素の許容差の変化および、デバイスからの排出された薬剤の投与量の大きさの正確性の許容差に誘発された変化が効果的に除去されうる。
【0072】
一部の好ましい実施形態が前述に示されているが、本発明はこれらに限定されることなく、以下の特許請求の範囲内および残りの開示内に定義された主題内のその他の方法で具体化されうることを強調する。