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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】目詰まりの無い分注デバイス
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20220412BHJP
   A61M 5/19 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B05C5/00 101
A61M5/19
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019552592
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018028109
(87)【国際公開番号】W WO2018195161
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】62/487,261
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】カーソン, ダスティン クリストファー
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-351030(JP,A)
【文献】特開2011-224471(JP,A)
【文献】特表2009-528095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0134186(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101394937(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
A61M 5/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分流体を混合し分注する為のアセンブリにおいて、
第1流体チャンバ及び第2流体チャンバ、近位端部及び遠位端部を有するシースであって、前記遠位端部で制限部材、前記近位端部でハンドグリップを有する、前記シースと、
第1流路および第2流路を形成するチャンバ用カプラと、
可変混合容積および出口で混合チャンバを形成する可撓性先端部であって、前記シースの前記遠位端部の近くで前記チャンバ用カプラに結合される、前記可撓性先端部と、
を備え、
作動力がある場合、前記可撓性先端部は、前記シースから押し出され、最大混合容積で分注状態に置かれ、
作動力がない場合、前記制限部材は、前記可撓性先端部が、前記シース内部に収容され、最小混合容積で非分注状態に置かれ、前記出口が実質的に閉じられるように、前記可撓性先端部を超えて伸び、前記可撓性先端部を変形させる、アセンブリ。
【請求項2】
前記可変混合容積は、前記可撓性先端部の側壁の膨張および圧縮を介して活性状態から非活性状態に変化する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記最大混合容積および最小混合容積の間の移行によって、前記可撓性先端部の前記混合チャンバを洗浄し、好ましくは、前記シースが、前記可撓性先端部を変形させ、前記可撓性先端部の側壁を互いに向かって押し込み、それによって、前記出口が閉じる前に前記可撓性先端部から残っている前記多成分流体を除去する為に洗浄力を与える、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記可撓性先端部は、前記分注状態から前記非分注状態に複数回移行するように構成され、前記多成分流体は、前記出口を通って分注され、前記可撓性先端部から洗浄され、再び、前記出口を通って分注される、請求項1~3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記可撓性先端部は、前記可撓性先端部が前記シース内に収容されるとき、前記可変混合容積を実質的に占有するように構成され、寸法が定められる、請求項1~4のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記可撓性先端部は、前記可撓性先端部が前記非分注状態から前記分注状態に変化するように、径方向および/または遠位に拡大するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記可撓性先端部は、屈曲および/または拡大を許容する材料、好ましくは、シリコーンを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
第1プランジャ、第2プランジャ、チャンバ用カプラに接続されたグリップを有する作動ロッドを更に備え、
前記第1流路は、前記第1流体チャンバから前記混合チャンバに伸び、
前記第2流路は、前記第2流体チャンバから前記混合チャンバまで伸び、
前記作動ロッドに力を、反対の力を前記シースに適用する際、前記可撓性先端部は、前記シースから押し出され、分注状態に置かれ、力および反対の力の適用を除去することによって、前記可撓性先端部を超えて前記シースを伸ばし、前記可撓性先端部を変形させ、非分注状態では、前記混合容積が減少され、前記出口が実質的に閉じられる、請求項1~7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記シースの前記遠位端部と前記チャンバ用カプラとの間に位置するバネを更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記バネは、コイルバネ、板バネ、弾性材の一つである、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記アセンブリは、前記可撓性先端部が、前記分注状態から前記非分注状態に移行すると、前記混合容積と、前記第1流路及び第2流路の第2端部の前記横断面積とを最小化するように構成される、請求項8~10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記混合チャンバの前記容積を最小化することによって、前記可撓性先端部の前記混合チャンバを洗浄し、好ましくは、前記シースが、前記可撓性先端部を変形させ、前記可撓性先端部の側壁を互いに向かって押し込み、それによって、前記出口が閉じる前に前記可撓性先端部から残っている前記多成分流体を除去する洗浄力を与える、請求項8~11のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記第1流路及び前記第2流路は、前記混合チャンバへの流体の流れを防止する為に実質的に閉じることができる、壁を有する弾性的に可撓性経路を備える、請求項8~12のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記可撓性先端部は、前記シースが前記可撓性先端部を超えて伸びるとき、前記混合容積を実質的に占めるように構成され、寸法が定められる、請求項1~13のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記可撓性先端部は、前記可撓性先端部が前記分注状態から前記非分注状態に移行すると、前記混合チャンバ内に残っている前記多成分流体の成分の実質的に全てが前記出口を通って押し出すように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項16】
多成分流体を混合及び分注する為の自己洗浄式アプリケータにおいて、
第1流体チャンバ及び第2流体チャンバと、
前記第1流体チャンバ及び第2流体チャンバを取り囲むシースであって、遠位端部に制限部材、近位端部にハンドグリップを有する、前記シースと、
第1流路及び第2流路を形成するチャンバ用カプラと、
混合容積及び出口を有する混合チャンバを形成する可撓性先端部であって、前記シースの前記遠位端部近くで、前記チャンバ用カプラに結合された前記可撓性先端部と、
前記シースの前記遠位端部および前記チャンバ用カプラの間に位置するバネと、
第1プランジャ及び第2プランジャに接続されたグリップであって、
前記第1流路は、前記第1流体チャンバから前記混合チャンバまで伸び、
前記第2流路は、前記第2流体チャンバから前記混合チャンバまで伸び、
力を前記グリップに適用し、反対の力を前記ハンドグリップに適用する際、前記可撓性先端部は、前記制限部材から押し出され、分注状態に置かれ、それによって、前記混合容積を増加させ、前記多成分流体を前記出口から出すことを可能にし、前記力および反対の力の適用を除去することによって、前記可撓性先端部を超えて前記制限部材を伸ばし、前記可撓性先端部を変形させ、前記混合容積が減少され、前記出口が非分注状態で実質的に閉じられる、前記グリップと、
を備える、アプリケータ。
【請求項17】
前記混合チャンバの前記容積を最小限にすることによって、前記可撓性先端部の前記混合チャンバを洗浄し、好ましくは、前記制限部材は、前記可撓性先端部を変形させ、前記可撓性先端部の側壁を互いに向かって押し込み、それによって、前記出口の閉鎖前に、前記可撓性先端部から残留多成分流体を除去する為の洗浄力を与える、請求項16に記載のアプリケータ。
【請求項18】
前記可撓性先端部は、前記分注状態から前記非分注状態に複数回移行するように構成され、前記多成分流体は、前記出口から分注され、前記可撓性先端部から洗浄され、再び、前記出口を通って分注される、請求項16または17に記載のアプリケータ。
【請求項19】
前記可撓性先端部は、前記制限部材が前記可撓性先端部を超えて伸びるとき、前記混合容積を実質的に占有するように構成され、寸法が定められる、請求項16~18のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項20】
前記バネは、コイルバネ、板バネ、弾性材の一つである、請求項16~19のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項21】
前記チャンバ用カプラおよび可撓性先端部は、前記バネの圧縮の際、第1位置から第2位置まで摺動するように構成される、請求項16~20のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【請求項22】
前記チャンバ用カプラおよび可撓性先端部は、前記バネの圧縮の際、第1位置から第2位置まで摺動するように構成される、請求項16~21のいずれか一項に記載のアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
[0001]多成分分注デバイスは、分注前に別個に保たれなければならないシーラントのような多成分流体を混合および分注する為に使用される。たとえば、幾つかの流体成分を一緒に混合して、生物学的シーラントまたは接着剤を形成してもよい。シーラントおよび接着剤は、各々の流体成分を一緒に混合することによって作成され、これらは、互いに反応し、それらが混合した後、硬化または固まる。多くの場合、2つの流体成分は迅速に反応し、シーラントまたは生体組織接着剤のような接着剤に硬化する。成分の接触後の急速な反応性のため、流体成分の混合は、多成分流体を分注して適用する準備ができたときにのみ生じる。
【0002】
[0002]シーラントまたは接着剤が適切に形成するため、各流体成分は、多成分流体を適用する前に十分に混合されるべきである。残念ながら、多成分の生物学的シーラントを分注する為の既存の方法は、しばしば不十分である。たとえば、部分的に混合される流体成分は、十分に硬化しないシーラントになる場合がある。多成分流体が先端部で硬化する場合、先端部が目詰まりし、流れを妨げ、通常は、先端部の交換を必要とする。さらに、硬化した成分または閉塞物を排出することにより、患者に危険が及ぶ可能性がある。たとえば、排出された閉塞物が組織または器官に外傷を引き起こす可能性があり、血管内で塞栓症を引き起こす可能性もある。
【0003】
[0003]多成分生物学的シーラント分注の為の多くの現在のシステムおよび方法は、目詰まりを防止する為に、可撓性ダイヤフラムの弾性特性のみに依存しているが、これらの材料特性は、制御が難しく、経年劣化する。さらに、高圧下では、ダイヤフラムが破裂したり断裂する可能性があり、臨床上の危険や性能の更なる低下を引き起こす。
【0004】
【概要】
【0005】
[0004]本開示内容は、改善された、目詰まりのない自己洗浄式の分注アプリケータ、システム、方法を提供する。一つの例示的実施形態において、多成分流体を混合および分注する為の自己洗浄式アプリケータは、第1流体チャンバ、第2流体チャンバ、シース、チャンバ用カプラ、可撓性先端部、バネ、グリップを含んでいる。シースは、第1流体チャンバおよび第2流体チャンバを取り囲み、シースは、その遠位端部で制限部材、その近位端部でハンドグリップを有する。チャンバ用カプラは、第1流路および第2流路を形成し、可撓性先端部は、混合容積および出口を有する混合チャンバを形成している。さらに、可撓性先端部は、シースの遠位端部近くで、チャンバ用カプラに結合されている。バネは、シースの遠位端部およびチャンバ用カプラの間に位置する。グリップは、第1プランジャおよび第2プランジャに接続されている。第1流路および第2流路は、それぞれ、第1流体チャンバおよび第2流体チャンバから混合チャンバまで伸びている。力をグリップに、反対の力をハンドグリップに適用する際、可撓性先端部は、制限部材から押し出され、分注状態に置かれ、それによって、混合容積を増加し、多成分流体が出口から出ることを可能にする。さらに、力および反対の力を除去することによって、可撓性先端部を超えて制限部材を伸ばし、可撓性先端部を変形させるので、混合容積は減少され、出口は、非分注状態で実質的に閉じられる。
【0006】
[0005]他の例示的実施形態において、混合容積は、可変であり、混合容積は、可撓性先端部の側壁の拡大および圧縮を介して、作動状態から非作動状態に変化する。
【0007】
[0006]一実施形態において、混合容積および第1流路及び第2流路の第2端部の横断面領域は、アプリケータが多成分流体を分注していないとき、最小限にされる。
【0008】
[0007]更なる実施形態において、混合チャンバの容積は、可撓性先端部の混合チャンバを洗浄する。好ましくは、制限部材は、可撓性先端部を変形させ、可撓性先端部の側壁を互いに向かって押し込み、それによって、出口が閉じる前に、可撓性先端部から残留多成分流体を除去する為の洗浄力を与える。
【0009】
[0008]他の例示的実施形態において、可撓性先端部は、分注状態から非分注状態に、複数回、移行するように構成され、多成分流体は、出口を通って分注され、可撓性先端部から洗浄され、再び、出口を通って分注される。
【0010】
[0009]更なる実施形態において、第1流路および第2流路は、弾性的に可撓性のある通路を含み、この通路は、混合チャンバへの流体の流れを防止する為に実質的に閉じることができる壁を有する。
【0011】
[0010]更なる実施形態において、可撓性先端部は、制限部材が可撓性先端部を超えて伸びるとき、混合容積を実質的に占有するように構成され、寸法が定められる。
【0012】
[0011]例示的実施形態において、可撓性先端部が閉じて、混合チャンバ内に残っている多成分流体の成分の実質的に全てが出口を通って外に出される。
【0013】
[0012]他の例示的実施形態において、可撓性先端部は、可撓性先端部が非分注状態から分注状態まで変化するように、径方向および/または遠位に拡大するように構成されている。
【0014】
[0013]更なる実施形態において、可撓性先端部は、屈曲および/または拡大を許容する材料を有する。
【0015】
[0014]他の例示的実施形態において、可撓性先端部の少なくとも一部分は、シリコーンを有する。
【0016】
[0015]一実施形態において、バネは、コイルバネ、板バネ、または、弾性材である。
【0017】
[0016]例示的実施形態において、チャンバ用カプラおよび可撓性先端部は、バネの圧縮の際に第1位置から第2位置に摺動するように構成されている。
【0018】
[0017]例示的な第2実施形態において、多成分流体を混合および分注する為のアセンブリは、第1流体チャンバ及び第2流体チャンバを有するシース、チャンバ用カプラ、可撓性先端部を含む。チャンバ用カプラは、第1流路及び第2流路を形成する。さらに、可撓性先端部は、可変混合容積及び出口を有する混合チャンバを形成する。可撓性先端部は、シースの遠位端部近くでチャンバ用カプラに結合されている。作動力の存在下で、可撓性先端部はシースから押し出され、最大混合容積で分注状態に置かれる。作動力が無いと、可撓性先端部は、シース内に収容され、出口が実質的に閉じられるように最小の混合容積で非分注状態に置かれる。
【0019】
[0018]一実施形態において、可変混合容積は、可撓性先端部の側壁の拡大および圧縮を介して、作動状態から非作動状態に変化する。
【0020】
[0019]他の実施形態において、最大混合容積および最小混合容積の間の移行によって、可撓性先端部の混合チャンバを洗浄する。好ましくは、シースは可撓性先端部を変形させ、可撓性先端部の側壁を互いに向かって押し込み、それが、出口が閉じる前に可撓性先端部から残留多成分流体を除去する為の洗浄力を与える。
【0021】
[0020]例示の実施形態において、多成分流体が、出口を通って分注され、可撓性先端部から洗浄され、再び、出口を通って分注されるように、可撓性先端部は、複数回、分注状態から非分注状態に移行するように構成されている。
【0022】
[0021]更なる実施形態において、可撓性先端部は、可撓性先端部がシース内に収容されるとき、可変混合容積を実質的に占有するように構成され、寸法が定められる。
【0023】
[0022]更に他の実施形態において、可撓性先端部は、可撓性先端部が非分注状態から分注状態に変化するように、径方向および/または遠位に拡大するように構成されている。
【0024】
[0023]更なる実施形態において、可撓性先端部は、屈曲および/または拡大を許容する材料、好ましくは、シリコーンを有する。
【0025】
[0024]したがって、流体送達デバイスにおいて、目詰まりの無い分注先端部を提供することは、本開示内容の利点である。
【0026】
[0025]本開示内容の他の利点は、自己洗浄効果を提供することである。
【0027】
[0026]本開示内容の更なる利点は、使用者からの更なる入力を有することなく、自動的に自己洗浄する複数の分注サイクルの為に使用可能な分注デバイスを提供することである。
【0028】
[0027]開示された溶接装置およびシールダイの更なる特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面に記載されており、それらから明らかになる。本書に説明された特徴および利点は、包括的なものではなく、特に、多くの追加の特徴および利点は、図面および説明を考慮して当業者に明らかになる。また、特定の実施形態が、本書に列挙された利点の全てを有する必要はない。さらに、明細書で使用される言語は、主に読み易さと説明の目的の為に選択されたものであり、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1Aは、本開示内容の例示的実施形態による非分注状態の自己洗浄式アプリケータの概略図である。
図1B図1Bは、本開示内容の例示的実施形態による分注状態の自己洗浄式アプリケータの概略図である。
図2A図2Aは、本開示内容の例示的実施形態による非分注状態の自己洗浄式アプリケータの図1AのII-II線に沿った横断面図である。
図2B図2Bは、図2Aの自己洗浄式アプリケータの拡大詳細図である。
図3A図3Aは、本開示内容の例示的実施形態による分注状態の自己洗浄式アプリケータの図1BのIII-III線に沿った横断面図である。
図3B図3Bは、図3Aの自己洗浄式アプリケータの拡大詳細図である。
【例示的実施形態の詳細な説明】
【0030】
[0034]前述したように、多成分分注アプリケータ、システム、方法は、改善された分注デバイスを提供するが、これは、目詰まりを防止し、使用と使用の間に自動的に自己洗浄する。先端部内の硬くなった残留接着材のような目詰まりや障害物は、それらが排出されるときに患者を傷つける場合があり、詰まったデバイスは動作不要になったり、新しい分注先端部が必要になるため、分注アプリケータに関連する費用が増加する場合があるので、問題がある。さらに、障害物を排出すると、組織や臓器への外傷や血管内の塞栓症などの損傷を引き起こす場合がある。本書で検討された多成分分注アプリケータは、目詰まりを防止し、使用間に自己洗浄操作を行うことによって、多成分流体分注を改善する。
【0031】
[0035]図面、特に、図1A及び図1Bを参照すると、一実施形態において、本開示内容の自己洗浄式アプリケータ100は、多成分流体を混合して分注する為に提供される。一実施形態において、自己洗浄式アプリケータ100は、第1流体チャンバ110,第2流体チャンバ120,シース130又は本体、チャンバ用カプラ140,可撓性先端部190,一つ又は複数のバネ150を含む。シース130は、第1流体チャンバ110,第2流体チャンバ120を取り囲む。さらに、シース130は、遠位端部132に制限部材170、近位端部134にハンドグリップ180を含んでもよい。一実施例において、シース130は、チャンバ用カプラ140および/または流体チャンバ110,120(例えば、注射器)に結合されたガイドレールを含んでもよい。更に後述するように、シース130は、ハンドグリップ180に力が適用されるとき、軸方向に移動するように適合されている。シース130,制限部材170、ハンドグリップ180は、一緒に組み立てることができる構成要素の部品(component parts)であってもよいことが理解されよう。さらに、シース130は、制限部材170,ハンドグリップ180を含む単体として成形されてもよい。さらに、成分は、化学的締結具を介して一緒に固着されてもよい。化学的締結具は、たとえば、成分を固定するのに適した接着剤、化学的結合、溶接的結合、成形を含んでもよい。
【0032】
[0036]さらに、自己洗浄式アプリケータは、グリップ162と作動ロッド160とを含んでもよい。たとえば、作動ロッド160は、グリップ162の為に安定性を与えてもよい。以下に詳細に述べるように、注射器用プランジャの親指用フランジ127A-Bがグリップ162として機能してもよい。さらに、グリップ162は、注射器用プランジャに付けられてもよい。グリップ表面を与えることに加えて、グリップ162は、注射器用プランジャ128A-Bを一緒にリンクし、それらが直列に移動すること、第1流体チャンバ110,第2流体チャンバ120から適切な割合の流体を分注することを確実にしてもよい。
【0033】
[0037]各流体チャンバ(例えば、第1流体チャンバ110および第2流体チャンバ120)には、反応性流体が含まれてもよい。たとえば、第1流体チャンバ110は、第1流体50A,第2流体チャンバ120は、第2流体50Bを含んでもよい。流体50A-Bは、生体組織シーラントのようなシーラントまたは接着剤を生じさせてもよい。流体50A-Bの反応のため、それらは、流体チャンバ110,120内で別々に貯蔵される。特に、反応性多成分流体は、分注デバイス又はアプリケータ100の流路内部に凝塊を形成する傾向がある。たとえば、生体組織シーラントのような反応性溶液にとって、凝塊を形成するための滞留時間は短く、多くの場合、わずか数秒である。そのため、使用間に、ノズルまたは可撓性先端部190、(後述する)流路142,144から過剰な反応性(即ち、混合)溶液を一掃することが有利である。
【0034】
[0038]図1Aに図示されるように、アプリケータ100は、非分注状態にある。逆に、図1Bに図示されるように、アプリケータ100は、分注状態にある。アプリケータ100は、分注状態(図1B)と非分注状態(図1A)との間で移行するので、可撓性先端部190は、有利にかつ自動的に残留物質が除去され、アプリケータ100は、分注サイクル間で目詰まりしない。たとえば、アプリケータ100が分注状態から非分注状態に移行する度に、物質が可撓性先端部190の出口から排出される。可撓性先端部190は、制限部材170によって引き込まれて変形されるので、可撓性先端部190は、出口が閉じられるまで変形し続けるが、これが、都合よく、目詰まりを防止し、アプリケータ100の反復した使用を可能にする。
【0035】
[0039]図1A及び図1Bに図示されるように、第1流体チャンバ110および第2流体チャンバ120は、注射器(例えば、皮下注射用注射器)のように除去可能な構成要素であってもよい。第1流体チャンバ110,第2流体チャンバ120は、(より詳細に後述するように)自己洗浄式アプリケータ100の一体部分であってもよい。たとえば、第1流体チャンバ110は、開口部114及び開口端部116を備えた分注端部112を含んでもよい。同様に、第2流体チャンバ120は、開口部124及び開口端部126を備えた分注端部122を含んでもよい。分注端部112,122は、コネクタを含んでもよく、このコネクタは、(詳細に後述するように)チャンバ用カプラ140内の流路142,144の各々に結合するように適合されている。コネクタは、ネジ付きコネクタ、圧力嵌入式コネクタ、流体チャンバ110,120および流路142,144の間の密封された接続を生み出す他の任意の適したコネクタでもよい。たとえば、自己洗浄式アプリケータ100は、標準のルアーコネクタ(ネジ付き又はネジ無し)を受容してもよい。さらに、コネクタは、間違った大きさ又は型式の注射器の設置を防止することによって、更なる安全性を提供してもよい。たとえば、流体チャンバ110,120の分注端部112,122は、取り外せるようにチャンバ用カプラ140にロックされてもよい。さらに、自己洗浄式アプリケータは、プランジャ128A-Bを含んでもよいが、これらのプランジャ128A-Bは、各流体チャンバ(例えば、第1流体チャンバ110,第2流体チャンバ120)に流体を押し通すように適合されている。プランジャ128A-Bは、各流体チャンバ110,120に沿って伸びてもよく、各プランジャは、プランジャヘッドを含み、プランジャヘッドは、それぞれの流体チャンバ110,120の側壁とピッタリと係合する。また、各プランジャ128A-Bは、流体チャンバ110,120の開口端部116,126を超えて伸びる一端部で、親指用フランジ127A-B(以下、親指用フランジ127)を含んでもよい。
【0036】
[0040]親指用フランジ127は、作動ロッド160及び/又はグリップ162に結合されてもよい。たとえば、作動ロッド160及び/又はグリップ162は、スロットまたは凹部164を含んでもよく、これらは、作動ロッド160及び/又はグリップ162内部に形成され、プランジャ128A-B(以下、プランジャ128)の親指用フランジ127を受けるように構成されている。プランジャ128は、プランジャ128が作動ロッド160と共に同調して移動するように、作動ロッド160及び/又はグリップ162に結合されてもよい。さらに、プランジャ128は、作動ロッド160及び/又はグリップ162と一体的に形成されてもよい。たとえば、プランジャ128及び作動ロッド160は、単体でもよい。さらに、プランジャ128及びグリップ162は、単体でもよい。同様に、取外し可能な注射器が流体チャンバ110,120として使用される場合、各注射器の指型フランジ125A-Bは、その注射器をシース130にロックするのをアシストしてもよい。実施例において、プランジャ128および作動ロッド160及び/又はグリップ162は、一緒に組み立てられる構成要素の部分でもよい。作動ロッド160およびプランジャ128は、(例えば、グリップ162に係合し力を適用するユーザによって)流体チャンバ110,120を通って前進するにつれて、流体は、開口部122,124を通って分注端部112,122に向かって流体チャンバ110,120を押し通され、開口部122,124を通って外に出る。
【0037】
[0041]前述したように、シース130は、第1流体チャンバ110,第2流体チャンバ120を取り囲んでもよい。図1A及び図1Bに図示されるように、シース130は、部分的に第1流体チャンバ110,第2流体チャンバ120(例えば、取外し可能な注射器)を取り囲んでもよい。たとえば、流体チャンバ110,120は、シース130内に押し込められ(例えば、クリップされ)てもよい。たとえば、シース130は、開口部又はキャビティを含んでもよく、開口部又はキャビティは、注射器を受け入れるように適合され、同時に、シース130が、流体チャンバ(例えば注射器)とは無関係に移動することを依然として可能にする。さらに、流体チャンバ110,120は、シース130の近位端部134からシース130に滑り込ませてもよい。他の実施例において、シース130は、二部構成要素でもよい。たとえば、シース130は、ハンドグリップ180および制限部材180に付けられた摺動構成要素と、流体チャンバ110,120を形成する、従って、そのようなチャンバを完全に取り囲む2つの容器を含む静止構成要素とを含んでもよい。さらに、静止構成要素は、開口部を備えた壁を含んでもよく、壁は、チャンバ用カプラ140および流路開口部114,124の間の境界面を提供する。たとえば、前述したように、注射器のような流体チャンバ110,120は、シース130の静止構成要素にクリップされてもよい。図1A及び図1Bに図示されるように、シース130も近位端部でハンドグリップを含んでもよい。他の実施例において、シース130は、流体チャンバ110,120として使用される取外し可能な注射器の親指用フランジ127は、ハンドグリップ180として使用可能である。詳細に後述されるように、ハンドグリップ180は、反対方向の力がグリップ162に適用されるとき、シース130に力を適用する為に使用されてもよい。
【0038】
[0042]さらに、チャンバ用カプラ140は、第1流路142,第2流路144を形成してもよい。たとえば、チャンバ用カプラ140は、第1流路142あるいは、可撓性先端部190内部で第1流体チャンバ110から(詳細に後述される)混合チャンバ192まで伸びる流体通路を含んでもよい。さらに、チャンバ用カプラ140は、可撓性先端部190内部で、第2流体チャンバ120から混合チャンバ192まで伸びる第2流路144または流体通路を含んでもよい。流路142,144は、(図2A及び図2Bに図示されるように)「Y」構成または(図1A及び図1Bに図示されるように)「T」構成を形成してもよく、この構成は、流路110,120の流路開口部114,124から混合チャンバ192まで伸びている。さらに、流路142,144は任意の他の適した配置を有してもよく、この配置は、流体チャンバ110,120および混合チャンバ192の間の流体連通を可能にする。第1流路142,第2流路144は、第1チャンバ110,120および混合チャンバ192の間の流体連通を与える。たとえば、流路142,144は、チャンバ用カプラ140を通る、流体チャンバ110,120から混合チャンバ192までの連続した流体通路を与える。2つの流体源を受ける自己洗浄アプリケータ100およびチャンバ用カプラ140が示されているが、アプリケータ100およびチャンバ用カプラ140は、3つ以上の流体源を受けるように構成されてもよい。たとえば、アプリケータ100は、3つ以上の成分流体から作られる生体シーラントのようなシーラントまたは接着剤を混合または分注するように構成されてもよい。自己洗浄式アプリケータ100は、追加の流体チャンバを含んでもよいことが分かる。たとえば、図1A及び図1Bに図示されたアプリケータ100は、2つの流体チャンバ110,120を示すが、3つ以上の流体チャンバが使用されてもよい。たとえば、一部の多成分流体は、シーラント又は接着剤を形成するように混合される3つ以上の流体を含んでもよい。
【0039】
[0043]たとえば、チャンバ用カプラ140は、プラスチック、ゴム、ポリマー、任意の他の適した剛性または半剛性材料から作成されてもよい。たとえば、チャンバ用カプラ140は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(abs)、これらの組合せ等から作成されてもよい。チャンバ用カプラ140は、可撓性先端部190に結合されてもよい。たとえば、可撓性先端部190は、チャンバ用カプラ140の端部に適合した形態でもよい。さらに、可撓性先端部190は、熱シールによってチャンバ用カプラ140に付けられてもよい。他の実施例において、可撓性先端部190は、可撓性先端部190がチャンバ用カプラ140と組み合わせて移動するように、ネジ付き嵌合、スナップ式嵌合、接着剤、他の任意の適した留め具を介してチャンバ用カプラ140に付けられてもよい。さらに、可撓性先端部190は、チャンバ用カプラ140に取外し可能に又は不変に付けられてもよい。たとえば、特定された寿命(例えば、2か月)または特定数の使用の(例えば、50回の使用)後、可撓性先端部190が交換されてもよい。
【0040】
[0044]図2Aは、図1AのII-II線に沿って切断された横断面図であり、図1BのIII-III線に沿って切断された横断面図である図2Bに更に図示されている。図3A及び図3Bに図示されるように、これらは、図2A及び図2Bの拡大詳細図であり、可撓性先端部190は、その分注面194及び側壁198の間に混合チャンバ192を画成する。混合チャンバ192は、流体成分が最初に接触し、多成分流体として分注される前に混合し始める場所である。実施例において、可撓性先端部190は、チャンバ用カプラ140に接続された開口端部と、シース130から離れる方向を指す分注面194とを備えた円筒形でもよい。たとえば、可撓性先端部190は、ポリイソプレン、ブチルゴムなどの適切な弾性体特性を有するシリコーンまたは他の生体適合性の材料で作られてもよい。さらに、可撓性先端部190は、その分注面194に、混合された流体成分を排出するように構成された出口196を有する。出口196は、分配面194の中心に置かれるのが好ましく、それは、第1流路142および第2流路142の間の混合チャンバ192の中心に整列される。出口196は、実質的に円形でもよい。他の実施形態において、出口196は、分割隔壁のようなスリットでもよい。様々な他の出口の構成およびジオメトリが使用されてもよい。以下に詳細に後述するように、分注状態(図3A及び図3B)では、可撓性先端部190が、圧力下で屈曲または拡大してもよく、それによって、混合された流体は出口196から排出される。さらに、可撓性先端部190は、それが非分注状態(図2A及び図2B)で内側に崩れるように十分な可撓性を有してもよい。たとえば、可撓性先端部190は、それが、シース130に入り、シース130から出るときに屈曲(例えば、拡大または収縮)し得るように、シリコン、ゴム等で作られてもよい。
【0041】
[0045]図1B及び図3Aに図示されるように、可撓性先端部190は、可撓性先端部190は、制限部材170内でしっかりと適合することを確実にする為に、分注面194の近くに追加の厚さの材料又は隆起部を有してもよい。さらに、図1B及び図3Aに描かれるような形状を有することによって、アプリケータ100は、流体の分注を開始するため、名目以上の力を必要とし、それによって、シーラントの偶発的な適用または過剰な適用を減らす。たとえば、分注面194近くの隆起部は、シース130の制限部材170内の摩擦嵌合を強化してもよい。さらに、隆起部は、アプリケータ100が非分注状態に移行する際、混合容積192が実質的にゼロに減少し、第1流路142及び第2流路144が実質的に閉じられることを確実にするように成形されてもよい。
【0042】
[0046]図2A及び図2Bに図示されるように、非分注状態において、可撓性先端部190は、制限部材170内で圧縮される。非分注状態では、ハンドグリップ180又はグリップ162に適用される力が不十分であり、バネ150によって適用される反対の力に打ち勝っている。前述したように、グリップ162は、注射器用プランジャ128に結合されてもよい。他の実施例において、グリップ162は、追加された安定性の為に作動ロッド160を含んでもよい。たとえば、非分注状態において、バネ150は、部分的に圧縮されているので、シース130に力(FSS)を適用し、シース130を可撓性先端部190の上方に押す。さらに、非分注状態において、バネ150は、チャンバ用カプラ140に力(FSC)を適用するが、バネ150は、可撓性先端部190に結合されてもよい。非分注状態において、バネ150は、部分的に圧縮された状態にあり、それによって、チャンバ用カプラ140に可撓性先端部190を制限部材170内に保持させる。これは、バネ力(FSS)及び(FSC)が、シースを一方向に付勢し、結合された構成要素(例えば、可撓性先端部190及びチャンバ用カプラ140)を反対方向に付勢するからである。非分注状態において、制限部材は、可撓性先端部190を変形させ、混合チャンバ192の混合容積を減少させる。たとえば、制限部材170は、可撓性先端部190の側壁198が内向きに圧縮して崩れ、混合容積をゼロへと実質的に減少させるように成形される。
【0043】
[0047]図2Bに示されるように、混合容積が減少されるとき、流路114,124の流体出口端部210,220も閉じられる。たとえば、第1流路114及び第2流路124の出口端部210,220の横断面領域は、アプリケータ100が非分注状態にあるとき、実質的に最小である。流路114,124は、チャンバ用カプラ140に使用される材料の圧縮性によって閉じてもよい。他の実施形態において、可撓性先端部は、第1流路114及び第2流路124の第2端部を遮断するように変形してもよく、それらは、実質的に遮断され、第1チャンバ110,120と混合チャンバ192の間の流体連通が遮られる。
【0044】
[0048]図3A及び図3Bに図示されたように、分注状態において、使用者はハンドグリップ180に力250を適用してもよく、これは、作動ロッド160を含み得るグリップ162に反対の力270を同時に適用する。力250,270には、ハンドグリップ180が作動ロッド160上のグリップ162に向かって引っ張られる(例えばハンドグリップ180及びグリップ162が互いに近づく)ように、反対方向の分力のみが必要であることを理解されたい。力250,270の適用は、アプリケータ100を分注状態に移行するため、バネ力(FSS)及び(FSC)、制限部材170内の可撓性先端部190によって作用される摩擦力(FFRIC)、流体力(FFLUID)に打ち勝つのに十分でなければならない。たとえば、力250,270がバネ150を更に圧縮するのに十分である場合、シース130は、(例えば、バネがLSを圧縮する長さによって)ハンドグリップ180に適用される力のため、チャンバ用カプラ140の反対方向に引っ張られる。
【0045】
[0049]バネ150が力250,270により更に圧縮されると、チャンバ用カプラ140は、シース130がチャンバ用カプラ140及び可撓性先端部190に対して移動するにつれて、シース130の遠位端部132に向かって伸びる。たとえば、ハンドグリップ180に適用される力250は、バネ150の底端部(例えば、シース130の遠位端部132に最も近いバネの表面)と係合するシース130を介して伝達される。シース130の静止構成要素の壁138は、力がバネ150の最上端部(例えば、シース130の近位端部134に最も近いバネの表面)に適用されるようにシース130に対してチャンバ用カプラ140を静止させて保持する逆転防止装置(backstop)を提供する。さらに、グリップ162および任意の作動ロッド160に適用される力270は、流体チャンバ110,120内の流体成分および注射器用プランジャ128にグリップ162を介して伝達される。シース130が後退する間、可撓性先端部190はシース130を過ぎて伸び、その自然の、非圧縮状態まで戻る。たとえば、バネ150が長さ(L)だけ圧縮すると、可撓性先端部190は、長さ(L)だけ制限部材170から伸びる。
【0046】
[0050]可撓性先端部190が非圧縮状態にあるとき、混合チャンバ192の混合容積は増加し、それによって、成分流体を流路142,144を通って流し、混合チャンバ192内で混合することを可能にする。グリップ162、それによるプランジャ128に力270を更に適用すると、流体は、流体チャンバ110,120および流路142,144を通って押され、混合チャンバ192で混合する。より多くの流体が混合チャンバ192に入ると、混合された流体は、可撓性先端部190の出口を通って混合チャンバ192から押される。前述したように、先端部190の可撓性は、シース130を出る際に可撓性先端部190が非圧縮状態まで拡大することを可能にする。たとえば、シース130を出る際、可撓性先端部190は、径方向外側に屈曲および/または拡大してもよい。そのような拡大により、出口196は大きさ及び/又は開口部を増加させてもよい。たとえば、出口196の直径は拡大してもよく、あるいは、分割隔壁が僅かに開いてもよい。
【0047】
[0051]可撓性先端部190がその自然の非圧縮状態に戻ると、流体チャンバ110,120および混合チャンバ192の間の流体連通は復元される。たとえば、可撓性先端部190が拡大すると、チャンバ用カプラ140はその当初の形状に戻ってもよく、流路142,144は、流体成分が混合チャンバ192に入ることを可能にしてもよい。実施例において、アプリケータ100は、十分な力が作動ロッド160及びハンドグリップ180に適用される限り、分注状態のままであってもよい。使用者からの十分な力が無い場合、アプリケータ100は、実質的に液体成分が混合チャンバ192に液体成分が実質的に存在しない非分注状態に戻り得る。
【0048】
[0052]前述した自己洗浄の機能は、いったん使用者がアプリケータ100に力を適用することを停止すると、各分注サイクルの後、都合良く自動的に生じる。たとえば、力250,270が減少、あるいは、最早、適用されず、バネ150によりシース130及びチャンバ用カプラ140に適用されるバネ力(FSS)及び(FSC)に打ち勝つのに不十分であるとき、バネ150は、当該システムが平衡になるまで拡大する。バネ150が拡大すると、バネ力は、シース130を可撓性先端部190上方に付勢する。シース130が可撓性先端部190の上方に拡大すると、バネ力は、制限部材170の壁と相互作用する可撓性先端部190によって生じる摩擦力に打ち勝つのに十分に強い必要があることが理解されよう。そのため、バネ150は、アプリケータ100を分注状態から非分注状態に自動的に移行させる、適したバネ定数を持たなければならない。各分注サイクル後の自己洗浄によって、アプリケータ100は、混合チャンバ192内の残留流体を除去し、出口196および流路142,144を密封することによって、目詰まりを都合良く防止し、それによって、当該デバイスが再び分注の準備が整うまで、流体チャンバ110,120からの追加の流体が混合チャンバ192に入ることを防止する。たとえば、可撓性先端部190は、シース制限部材170に引っ張られると変形をし始めるので、流路142,144が閉じられ、混合容積が減少するにつれて、残りの混合流体が分注される。混合容積は減少し続け、混合流体は、混合容積が実質的にゼロになり、混合流体の全てが分注されるまで、可撓性先端部190の出口196から分注される。シース130が完全に可撓性先端部190を超えて伸び、可撓性先端部190が完全に圧縮および/または変形されるとき、出口196も閉じ、混合チャンバ192への外部汚染を防止することができる。
【0049】
[0053]本書で説明された主題の態様は、本書で説明された単独または一つ又は複数の他の態様と組み合わせて使用されてもよい。本開示内容の例示的な第1態様では、多成分流体を混合及び分注する為の自己洗浄式アプリケータがシース及び可撓性先端部を含む。シースは、近位端部および遠位端部を有する。さらに、シースは、少なくとも2つの流体チャンバを部分的に取り囲んでいる。可撓性先端部は、少なくとも2つのチャンバと流体連通した混合チャンバを形成する。
【0050】
[0054]本開示内容の例示的な第2態様によると、それは、先の態様(例えば、第1態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、シースは、遠位端部で制限部材、近位端部でハンドグリップを含む。
【0051】
[0055]本開示内容の例示的な第3態様によると、それは、先の態様(例えば、第1態様、第2態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、アプリケータは、第1流路及び第2流路を形成するチャンバ用カプラを更に含む。
【0052】
[0056]本開示内容の例示的な第4態様によると、それは、先の態様(例えば、第3態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、混合容積及び出口を有する混合チャンバを形成し、可撓性先端部は、シースの遠位端部近くでチャンバ用カプラに結合されている。
【0053】
[0057]本開示内容の例示的な第5態様によると、それは、先の態様(例えば、第4態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、アプリケータは、作動ロッドを更に含み、作動ロッドは、第1プランジャ、第2プランジャ、チャンバ用カプラに接続されたグリップを有する。第1流路は、第1流体チャンバから混合チャンバまで伸び、第2流路は、第2流体チャンバから混合チャンバまで伸びている。力を作動ロッドに適用し、反対の力をシースに適用する際、可撓性先端部はシースから押し出され、分注状態に置かれるので、混合容積が増加し、多成分流体を出口から出すことが可能になる。力および反対の力を除去することによって、シースは、可撓性先端部を超えて伸び、可撓性先端部を変形させるので、非分注状態において、混合容積が減少し、出口が実質的に閉じられる。
【0054】
[0058]本開示内容の例示的な第6態様によると、それは、先の態様(例えば、第3態様から第5態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、アプリケータは、シースの遠位端部およびチャンバ用カプラの間に位置するバネを更に含む。
【0055】
[0059]本開示内容の例示的な第7態様によると、それは、先の態様(例えば、第6態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、バネは、コイルバネ、板バネ、または弾性材である。
【0056】
[0060]本開示内容の例示的な第8態様によると、それは、先の態様(例えば、第5態様から第7態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、混合容積は可変であり、混合容積は、可撓性先端部の側壁の拡大および圧縮を介して、作動状態から非作動状態に変わる。
【0057】
[0061]本開示内容の例示的な第9態様によると、それは、先の態様(例えば、第8態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、混合容積および第1流路及び第2流路の第2端部の横断領域は、アプリケータが多成分流体を分注しないとき、最小限である。
【0058】
[0062]本開示内容の例示的な第10態様によると、それは、先の態様(例えば、第5態様~第9態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、混合チャンバの容積を最小限に抑えることによって、可撓性先端部の混合チャンバを洗浄する。好ましくは、シースが、可撓性先端部を変形させ、可撓性先端部の側壁を互いに対して押し込み、それによって、出口が閉じる前に、可撓性先端部から残留多成分流体を除去する洗浄力を提供する。
【0059】
[0063]本開示内容の例示的な第11態様によると、それは、先の態様(例えば、第5態様~第10態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、多成分流体が、出口を通って分注され、可撓性先端部から洗浄され、再び、出口を通って分注されるように、複数回、分注状態から非分注状態に移行するように構成されている。
【0060】
[0064]本開示内容の例示的な第12態様によると、それは、先の態様(例えば、第5態様~第11態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、第1流路及び第2流路は、弾力性のある可撓性の通路を備え、この通路は、混合チャンバに対する流体の流れを防止する為に実質的に閉じることができる壁を有する。
【0061】
[0065]本開示内容の例示的な第13態様によると、それは、先の態様(例えば、第5態様~第11態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、シースが可撓性先端部を超えて伸びるとき、混合容積を実質的に占有するように構成され、寸法が定められる。
【0062】
[0066]本開示内容の例示的な第14態様によると、それは、先の態様(例えば、第5態様~第11態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部が閉じると、混合チャンバ内に残っている多成分流体成分は出口を通って外に出される。
【0063】
[0067]本開示内容の例示的な第15態様によると、それは、先の態様(例えば、第1態様~第14態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、可撓性先端部が非分注状態から分注状態まで変わるように径方向および/または遠位に拡大するように構成されている。
【0064】
[0068]本開示内容の例示的な第16態様によると、それは、先の態様(例えば、第1態様~第15態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、屈曲および/または拡大を許容する材料を有する。
【0065】
[0069]本開示内容の例示的な第16態様によると、それは、先の態様(例えば、第16態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部の少なくとも一部分はシリコーンを有する。
【0066】
[0070]本書に説明された主題の態様は、単独で、または、本書で説明された一つ又は複数の他の態様と組み合わせて使用されてもよい。本開示内容の例示的な第18態様において、多成分流体を混合及び分注する為のアセンブリは、シース、チャンバ用カプラ、可撓性先端部を含む。シースは、第1流体チャンバ及び第2流体チャンバを有する。チャンバ用カプラは、第1流路及び第2流路を形成する。可撓性先端部は、可変混合容積及び出口を有する混合チャンバを形成する。可撓性先端部は、シースの遠位端部近くでチャンバ用カプラに結合される。作動力の存在下で、可撓性先端部は、シースから押し出され、最大混合容積で分注状態に置かれる。作動力が存在しない場合、可撓性先端部はシース内に収容され、出口が実質的に閉じられるように最小限の混合容積で非分注状態に置かれる。
【0067】
[0071]本開示内容の例示的な第19態様によると、それは、先の態様(例えば、第18態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可変混合容積は、可撓性先端部の側壁の拡大及び圧縮を介して、作動状態から非作動状態に変化する。
【0068】
[0072]本開示内容の例示的な第20態様によると、それは、先の態様(例えば、第18態様または第19態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、最大の混合容積および最小の混合容積の間の移行により、可撓性先端部の混合チャンバが洗浄される。好ましくは、シースは、可撓性先端部を変形させ、可撓性先端部の側壁を互いに向かって押し込み、これが、出口閉鎖の前に可撓性先端部から残留多成分流体を除去する為の洗浄力を与える。
【0069】
[0073]本開示内容の例示的な第21態様によると、それは、先の態様(例えば、第18態様~第20態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、複数回、分注状態から非分注状態に移行するように構成され、多成分流体は出口を通って分注され、可撓性先端部から洗浄され、再び、出口を通って分注される。
【0070】
[0074]本開示内容の例示的な第22態様によると、それは、先の態様(例えば、第18態様~第21態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、可撓性先端部がシース内に収容されるとき、可変混合容積を実質的に占有するように構成され、寸法が定められる。
【0071】
[0075]本開示内容の例示的な第23態様によると、それは、先の態様(例えば、第18態様~第22態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、非分注状態から分注状態に変化するように径方向および/または遠位に拡大するように構成される。
【0072】
[0076]本開示内容の例示的な第24態様によると、それは、先の態様(例えば、第18態様~第23態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、屈曲および/または拡大を許容する材料、好ましくは、シリコーンを有する。
【0073】
[0077]本書で説明された主題の態様は、単独または本書で説明された一つ又は複数の他の態様と組み合わされて使用されてもよい。本開示内容の例示的な第25態様において、多成分流体を混合及び分注する為の自己洗浄式アプリケータは、第1流体チャンバ、第2流体チャンバ、シース、チャンバ用カプラ、可撓性先端部、バネ、グリップを含む。シースは、第1流体チャンバおよび第2流体チャンバを取り囲む。さらに、シースは、制限部材を遠位端部、ハンドグリップを近位端部に有する。チャンバ用カプラは、第1流路および第2流路を形成する。可撓性先端部は、混合容積および出口を有する混合チャンバを形成する。さらに、可撓性先端部は、シースの遠位端部近くでチャンバ用カプラに結合される。バネは、チャンバ用カプラおよびシースの遠位端部の間に位置する。グリップは、第1プランジャおよび第2プランジャに接続される。第1流路は、第1流体チャンバから混合チャンバまで伸び、第2流路は、第2流体チャンバから混合チャンバまで伸びる。力をグリップ、反対の力をハンドグリップに適用する際、可撓性先端部は、制限部材から押し出され、分注状態に置かれ、それによって、混合容積を増加させ、多成分流体を出口から出すことを可能にする。力および反対の力の適用を除去することにより、制限部材は、可撓性先端部を超えて伸び、可撓性先端部を変形させるので、混合容積は、減少され、出口は非分注状態で実質的に閉じられる。
【0074】
[0078]本開示内容の例示的な第26態様によると、それは、先の態様(例えば、第25態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、混合チャンバの容積を最小限にすることによって、可撓性先端部の混合チャンバを洗浄する。好ましくは、制限部材は、可撓性先端部を変形させ、可撓性先端部の側壁を互いに対して押し込み、それによって、出口閉鎖の前に、可撓性先端部から残留多成分流体を除去する為の洗浄力を与える。
【0075】
[0079]本開示内容の例示的な第27態様によると、それは、先の態様(例えば、第25態様または第26態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、分注状態から非分注状態に複数回移行するように構成されるので、多成分流体は出口を通って分注され、可撓性先端部から洗浄され、再び、出口を通って分注される。
【0076】
[0080]本開示内容の例示的な第28態様によると、それは、先の態様(例えば、第25態様~第27態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、可撓性先端部は、制限部材が可撓性先端部を超えて伸びるとき、混合容積を実質的に占有するように構成され、寸法が定められる。
【0077】
[0081]本開示内容の例示的な第29態様によると、それは、先の態様(例えば、第25態様~第28態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、バネはコイルバネ、板バネまたは弾性材である。
【0078】
[0082]本開示内容の例示的な第30態様によると、それは、先の態様(例えば、第25態様~第29態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、チャンバ用カプラおよび可撓性先端部は、バネの圧縮の際、第1位置から第2位置に摺動するように構成される。
【0079】
[0083]本開示内容の例示的な第31態様によると、それは、先の態様(例えば、第25態様~第30態様)の一つ又は複数の任意の組合せで使用可能であるが、チャンバ用カプラおよび可撓性先端部は、バネの圧縮の際、第1位置から第2位置に摺動するように構成される。
【0080】
[0084]これらの任意の態様が相互に排他的である限り、そのような相互排他性は、そのような態様が明示的に列挙されているか否かに拘わらず、そのような態様と他の任意の態様との組合せを、どのような方法でも限定するものではないことを理解されたい。これらの任意の態様は、システム、方法、装置、デバイス、媒体などとして、限定されることなく、請求することができる。
【0081】
[0085]本開示内容の多くの特徴および利点は、書かれた説明から明らかであり、添付された請求項は、その開示内容の、そのような特徴および利点の全てをカバーすることが意図されている。さらに、当業者にとって、多くの変形および変更は容易に生じることから、本開示内容は、図示および説明された通りの厳密な構成および動作に限定されるものではない。したがって、説明された実施形態は、例示的であり、限定されないものであり、その開示内容は、本書で与えられた詳細に限定されるものではなく、現在または将来において、予測可能または予測不可能であるに拘わらず、以下の請求項と、それらの完全な範囲の均等物とによって規定されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B