(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】冷却剤の偏向を有する切削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/28 20060101AFI20220412BHJP
B23C 5/04 20060101ALI20220412BHJP
B23B 29/03 20060101ALI20220412BHJP
B23D 75/00 20060101ALI20220412BHJP
B23B 47/00 20060101ALI20220412BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20220412BHJP
B23B 41/12 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
B23C5/28
B23C5/04 A
B23B29/03 Z
B23D75/00
B23B47/00 B
B23C5/06 A
B23B41/12
(21)【出願番号】P 2019559305
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2018061225
(87)【国際公開番号】W WO2018202726
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-01-20
(31)【優先権主張番号】102017109369.9
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512178927
【氏名又は名称】コメット ドイチェラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイツェ、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ、シグルド
(72)【発明者】
【氏名】トリンクナー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル、ビクター
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030888(JP,A)
【文献】特開2004-276136(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02298483(EP,A1)
【文献】特表2003-522038(JP,A)
【文献】特開2006-281378(JP,A)
【文献】国際公開第2014/091748(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/186812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/28
B23C 5/04
B23B 29/03
B23D 75/00
B23B 47/00
B23C 5/06
B23B 41/12
B23Q 11/00
B23Q 11/02
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具であって、
中心軸(12)周りに回転可能であり、前側の端面(24)および周面(16)を備えたツールヘッド(14)と、
周方向に分布するように前記周面(16)に配置された、複数の切削要素(18)および関連する溝(20)と、
前記ツールヘッド(14)を通って延び、前記切削要素(18)に冷却剤を供給する、チャネルシステム(22)と
を備え、
前記ツールヘッド(14)の前記端面(24)は冷却剤グルーブ(26)を備え、前記冷却剤グルーブ(26)のそれぞれは、前記チャネルシステム(22)の出口(42)から溝(20)の口(44)へと導かれ、前記冷却剤グルーブ(26)の長手開口(49)が、ツールヘッド(14)の端面に固定されたバッフルディスク(28)によって覆われており、
前記バッフルディスク(28)が歯付きリングによって形成され、前記歯付きリングの径方向に突出した歯
状突出セグメント(48)が前記冷却剤グルーブ(26)を覆って
おり、
前記バッフルディスク(28)は、前記冷却剤グルーブ(26)の長手開口(49)に重なる、径方向に突出した前記歯状突出セグメント(48)を有し、前記切削要素(18)は歯の間の空間(50)の領域に配置されている、
切削工具。
【請求項2】
前記冷却剤グルーブ(26)は、前記出口(42)から前記口(44)へ向かって、前記ツールヘッド(14)の回転方向(34)の逆方向に延びている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記冷却剤グルーブ(26)は、径方向から逸れるように、斜めにまたは湾曲してまたは接線方向に延びている、請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記口(44)は、前記溝(20)の壁に形成され、切削要素(18)の切削エッジ(36)に向かって方向付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項5】
前記切削要素(18)は、前記端面(24)から離れて後方に導かれるチップ除去表面(60)を画定する、請求項1~4のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項6】
前記チップ除去表面(60)は、後方へ向かって前記中心軸(12)に対して傾斜している、請求項5に記載の切削工具。
【請求項7】
前記チップ除去表面(60)の径方向の断面が、前記中心軸(12)に対して、V字状または凹状の断面輪郭を有する、請求項5または6に記載の切削工具。
【請求項8】
前記チップ除去表面(60)の径方向の断面は、後方に向かって平らになっている断面輪郭を有している、請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記切削要素(18)および/または特定の前記溝が、後方へ向かって広がるチップ除去漏斗(62)を画定する、請求項1~8のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項10】
前記バッフルディスク(28)は、一片の平坦な材料から切り出されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項11】
前記チャネルシステム(22)は、それぞれが出口(42)まで延びる、前記ツールヘッド(14)に形成された複数の供給孔(40)を備えている、請求項1~10のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項12】
前記供給孔(40)は、前記ツールヘッド(14)を軸方向に貫通する中央チャネル(38)から枝分かれし、前記中心軸(12)から斜め外側に離れるように延びている、請求項11に記載の切削工具。
【請求項13】
前記切削要素(18)は、前記ツールヘッド(14)の特定の円周プレートシート(58)に取り付けられた切削プレート(54)によって形成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項14】
周方向に均一に分布するように、前記ツールヘッド(14)に、4~50個の切削要素(18)が配置されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項15】
前記冷却剤グルーブ(26)が1~10mmの範囲の長さを有している、請求項1~14のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項16】
前記冷却剤グルーブ(26)の全体が、前記端面(24)のエッジ領域に位置し、前記エッジ領域は、前記端面の半径の0.6~1.0倍に等しい量で径方向に延びている、請求項1~15のいずれか1項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸周りに回転可能であり、前側の端面および周面を備えたツールヘッドと、周面に周方向に分布された、複数の切削要素および関連する溝と、ツールヘッドを通って延び、切削要素へ冷却剤を供給するチャネルシステムとを備えた、切削工具、特にフライス、ボーリング工具またはリーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製のエンジンブロックなどの複雑なコンポーネント構造を正面フライス加工する場合、発生したチップが加工物へと飛び、コンポーネントの凹部に残ることがしばしば問題となる。従来のフライスにおいて、冷却剤のジェットはツールヘッドから切削エッジに向かって直接的に案内される。加工物が機械加工される表面に穴または埋め込まれたチャネルを含む場合、チップもキャビティに流れ込む。チップの除去は難しいため、大量のクリーニング作業が伴い、プロセスの信頼性が通常低くなる。完成したコンポーネントは、残留したチップをチェックする複雑なプロセスを経る必要があり、いくつかのケースでは、製造が複雑な加工物が拒絶される可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
このようなことから、本発明の目的は、上記欠点を回避するために、当技術分野で公知の切削工具をさらに改善し、高い製造品質を達成するために加工物からチップを除去することを補助することである。
【0004】
この問題を解決するために、請求項1に記載された特徴の組み合わせが提案される。本発明の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明の概念は、簡単な手段を使用して、加工物にチップが残らないようにするために、工具の端面において冷却剤を偏向させることである。したがって、本発明は、ツールヘッドの端面に、それぞれがチャネルシステムの出口から溝の口へと導かれる冷却剤グルーブを設けること、および、ツールヘッドの端面に固定されたバッフルディスクによって冷却剤グルーブの長手開口を覆うことを提案する。前方に開口した冷却剤グルーブは、したがって、ツールヘッドの端面において容易に形成され、一方、開口を覆うバッフルディスクによって、冷却剤ジェットは容易に自由に逃げないが、後方部分を押すことによってエッジに向かって偏向する。その結果、衝突する冷却剤または切削液は前方に移動することはできず、チップを伴って、引っ張りチャネルへと後方に向かって向きを変える。
【0006】
特に好ましい実施形態は、冷却剤グルーブが出口から口へ向かって、ツールヘッドの回転方向の逆方向に延びている。これにより、冷却剤およびチップが径方向に逃げることが防止され、代わりに切削体に向かって押される。
【0007】
この点で、本発明は、冷却剤グルーブが径方向から逸れるように、斜めにまたは湾曲してまたは接線方向に延びることによって、および、口が溝の壁に形成され、切削要素の切削エッジに向かって方向付けられていることによって、さらに改善され得る。
【0008】
切削要素は、有利には、端面から離れて後方に導かれるチップ除去表面を画定し、チップの流れを加工物から遠ざける。
【0009】
これに関連して、好適には、チップ除去表面は、後方に向かって積極的に中心軸に対して傾斜し、チップ除去表面の径方向の断面は、中心軸に対して、好ましくは後方に向かって平らになる、V字状または凹状の断面輪郭を有している。
【0010】
吸引効果またはタービン効果による、後方へのチップ除去の方向付けを支援するために、切削要素および/または特定の溝が、後方へ向かって広がるチップ除去漏斗を画定することが有利である。
【0011】
もう1つの設計の単純化が、バッフルディスクが歯付きリングによって形成され、歯付きリングの径方向に突出した歯付きセグメントが冷却剤グルーブを覆うことによって達成される。
【0012】
また、製造の観点から、特に、ウォータージェット切断またはレーザー切断などの板金加工によって、バッフルディスクが一片の平坦な材料から切り出されていることが有利である。
【0013】
チャネルシステムは、有利には、それぞれが出口まで延びる、ツールヘッドに形成された複数の供給孔を備えている。
【0014】
供給孔が、ツールヘッドを軸方向に貫通する中央チャネルから枝分かれし、中心軸から斜め外側に離れるように延びていることも有利である。
【0015】
本発明による手段は、切削要素が、ツールヘッドの特定の円周プレートシートに取り付けられた切削プレートによって形成された切削工具において特に有利に実施することができ、好ましくは周方向に均一に分布するように、ツールヘッドに4~50個の切削要素が配置され得る。
【0016】
流体を案内するために、冷却剤グルーブは、1~10mmの範囲の長さを有していることも有利である。
【0017】
特に好適な方法において、切削要素の近傍に冷却剤を供給するために、冷却剤グルーブの全体が端面のエッジ領域に位置し、エッジ領域は、端面の半径の、0.6~1.0倍、好ましくは0.7~1.0倍に等しい量で径方向に延びていることが有利である。
【0018】
本発明は、図面に概略的に示される実施形態に基づいて、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】冷却剤の向きを変えるための、分解されて示された端面バッフルディスクを備えた正面フライスの斜視図である。
【
図2】
図1による分解されたツールの軸方向断面斜視図である。
【
図3】
図1によるツールの切り取られた拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面に示されている正面フライス10は、その中心軸12を中心に回転可能なツールヘッド14を備え、その周面16には、複数の切削要素18および関連する溝20が形成され、その内部には、冷却剤および切削液を切削要素18に供給するために、チャネルシステム22が形成されている。この場合、ツールヘッド14の端面24に形成された冷却剤グルーブ26と、冷却剤グルーブ26を覆い、約半分のみが
図1に示された端面バッフルディスク28とによって、冷却剤が溝20に向けられることが確保される。
【0021】
ツールヘッド14はシャフト部30に保持され、シャフト部30の後端には、機械スピンドルに連結するための接合部32が配置されている。加工物を正面フライス加工するとき、正面フライス10は中心軸12に対して垂直に移動され、矢印34の方向に回転し、それにより、切削要素18は、端面および周面において突出するエッジ36によって材料を機械加工し、以下でより詳細に説明するように、チップは、後方に向けられた冷却剤によって、狙って溝20を介して処理される。図示された実施形態では、切削要素18のそれぞれに溝20が割り当てられているが、例えば、溝1つ当たり互いに向かって移動する2つの切削要素を有する他の構成も考えられる。
【0022】
図2は、ツールヘッド14のチャネルシステム22によって供給される冷却剤を示す。冷却剤は、機械側において接合部32から軸方向に延びる中央チャネル38を介して供給される。複数の供給孔40は、中央チャネルの前端において枝分かれし、各孔は、斜め外側に中心軸12から離れて延び、ツールヘッド14の端面24の領域において関連する溝20の近傍の出口42で開放する。
【0023】
図3から最も明確に分かるように、出口42はそれぞれ、溝20の壁46の領域の口44で終端する冷却剤グルーブ26の底に配置されている。この場合、口44は、対向する切削要素18のエッジ36に向かって向いている。冷却剤グルーブ26は、したがって、径方向から逸れて、ツールヘッド14の回転方向34とは逆方向となるように出口から口44へと延び、それにより、冷却剤の流れが、中心軸12に対して半径方向に、エッジ36の端面においてバッフルディスク28の下に直接生じる。
【0024】
バッフルディスク28は、環状に閉じられた歯付きリングによって好適には形成され、その径方向に突出した歯状突出セグメント48は、冷却剤グルーブ26の長手開口49と重なり、一方、切削要素18は、歯の間の空間50の領域に配置される(
図1)。この場合、バッフルディスク28は、特にウォータージェット切断によって金属シートブランクから形成することができ、接続手段52によってツールヘッド14の端面24に取り外し可能に保持することができる。
【0025】
図3からも分かるように、切削要素18は切削プレート54として形成され、これらはそれぞれねじ56によってツールヘッド14の円周プレートシート58に取り付けられている。この場合、これらは端面24から離れるように後方へ導かれるチップ除去表面60を定め、
図1からわかるように、後方に向かって積極的に中心軸12に対して傾斜している。
【0026】
加工物から離れるチップの後方除去を最適化するために、チップ除去表面60の径方向断面は、中心軸に対して、後方に向かって平らになる、V字状または凹状の断面輪郭を有する。これは、後方に向かって広くなるチップ除去漏斗62を形成し、高速において、一種のタービン効果を生み出し、発生した流体の流れによってツール冷却効果も改善する。