(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】貯水槽及び住宅
(51)【国際特許分類】
E03B 11/02 20060101AFI20220412BHJP
E03C 1/02 20060101ALI20220412BHJP
B65D 88/12 20060101ALN20220412BHJP
B65D 90/00 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
E03B11/02 Z
E03C1/02
B65D88/12 T
B65D90/00 K
(21)【出願番号】P 2020037954
(22)【出願日】2020-03-05
(62)【分割の表示】P 2015157758の分割
【原出願日】2015-08-07
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2015030425
(32)【優先日】2015-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 平成27年7月28日(火)~平成27年7月30日(木) 展示会名 第47回管工機材・設備総合展
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良輔
(72)【発明者】
【氏名】三賀森 雅和
(72)【発明者】
【氏名】近本 博章
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046904(JP,A)
【文献】特開平05-287792(JP,A)
【文献】特開平08-338061(JP,A)
【文献】特開2001-115506(JP,A)
【文献】特開2013-170401(JP,A)
【文献】実開昭58-103253(JP,U)
【文献】特開平08-226147(JP,A)
【文献】特開平10-219765(JP,A)
【文献】特開2012-086900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 11/02
E03C 1/02
B65D 88/12
B65D 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下に設置される給水装置から供給される水道水を
非常時に取水可能な給水栓より上流側で貯水する貯水装置に用いられる貯水槽であって、
円筒状に形成された、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の管体と、
前記管体の軸線方向の両端部の開口部を塞ぐように形成された、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の2つの蓋部と、
を備え、
前記2つの蓋部の各々と前記管体の端部とは融着により接合され、
前記貯水槽が所定の設置姿勢で設置された状態において一方の前記蓋部の内周面の下端に第1流出口が設けられ、一方の前記蓋部の内周面の上端に第2流出口が設けられ、
前記管体の内部の水が前記第1流出口から流出可能であり、
前記第2流出口から前記管体の内部に空気が流入可能であり、
前記蓋部は、天壁と、管状の側壁とが一体で形成された有頂筒状であり、
前記蓋部の側壁の内径は前記管体の外径と同径であり、
前記側壁の内表面に電熱線を備え、前記電熱線へ電力を供給するための端子を前記側壁の外表面に備える、
貯水槽。
【請求項2】
床下に設置される給水装置から供給される水道水を
非常時に取水可能な給水栓より上流側で貯水する貯水装置に用いられる貯水槽であって、
円筒状に形成された、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の管体と、
前記管体の軸線方向の両端部の開口部を塞ぐように形成された、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の2つの蓋部と、
を備え、
前記2つの蓋部の各々と前記管体の端部とは融着により接合され、
前記貯水槽が所定の設置姿勢で設置された状態において一方の前記蓋部の内周面の下端に第1流出口が設けられ、一方の前記蓋部の内周面の上端に第2流出口が設けられ、
前記管体の内部の水が前記第1流出口から流出可能であり、
前記第2流出口から前記管体の内部に空気が流入可能であり、
前記蓋部は、閉塞板と、
前記管体と同径である管状の側壁とが一体で形成された有頂筒状であり、
前記2つの蓋部の各々の管状の側壁と前記管体の端部とはバット融着によって接合され、
前記2つの蓋部の各々と前記管体との間に前記バット融着による突起が形成されている、
貯水槽。
【請求項3】
前記貯水槽が所定の設置姿勢で設置された状態において、
前記蓋部の閉塞板の側部には、前記第1流出口及び前記第2流出口の各々に接続された接続継手が前記貯水槽の設置面に接触しないように形成された脚部が設けられている、
請求項
1または2に記載の貯水槽。
【請求項4】
前記貯水槽を所定の設置姿勢で設置された状態において、
前記蓋部の閉塞板の側部には、台部が設けられている、
請求項1から
3の何れか一項に記載の貯水槽。
【請求項5】
前記蓋部には、前記貯水槽の設置方向を示す方向指示部が設けられている、
請求項1から
4の何れか一項に記載の貯水槽。
【請求項6】
床下に設置される給水装置から供給される水道水を
非常時に取水可能な給水栓より上流側で貯水する貯水装置に用いられる貯水槽であって、
円筒状に形成された樹脂製の管体と、
前記管体の軸線方向の両端部の開口部を塞ぐように形成された2つの蓋部と、
を備え、
前記2つの蓋部の各々と前記管体の端部とは融着又は接着により接合され、
前記貯水槽が所定の設置姿勢で設置された状態において一方の前記蓋部の内周面の下端に第1流出口が設けられ、一方の前記蓋部の内周面の上端に第2流出口が設けられ、一方の前記蓋部の内周面の中央部に流入口が設けられ、他方の前記蓋部には流出口や流入口が設けられておらず、
前記管体の内部の水が前記第1流出口から流出可能であり、
前記第2流出口から前記管体の内部に空気が流入可能であり、
前記流入口から前記管体の内部を他方の前記蓋部に向かって給水管が延び、
前記給水栓は、前記貯水槽が設置される位置よりも高い位置に配置され、
前記第2流出口と前記給水栓
との間に三方弁が設けられ、
前記第2流出口を介して、前記三方弁から前記管体には高圧の空気が供給可能である、
貯水槽。
【請求項7】
請求項1から
6の何れか一項に記載の貯水槽を備えた、住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水槽及び住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、給水装置から水道本管を介して供給される水道水を貯水し、貯水した水道水を断水等の非常時に利用するための貯水槽及び該貯水槽を備えた給水システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、住宅内の給水系管路に適用される給水システムが開示されている。この給水システムは、住宅内に供給される水道水の逆流を防止する第1逆止弁と、第1逆止弁よりも下流側の水道水を第1給水栓に供給する第1配水管と、第1逆止弁よりも下流側の水道水を第2給水栓に供給する第2配水管と、第1配水管及び第2配水管の少なくとも何れか一方に設けられる貯水手段と、第2給水栓の少なくとも1つに形成され、貯水手段を加圧する加圧装置を接続するための接続口と、を備えている。第1給水栓は、給水圧が作用しない非常時において非常取水栓としても使用される。
【0004】
ところが、特許文献1に記載の給水システムでは、貯水手段としての貯水槽を水道本管の途中に埋設する必要がある。また、貯水槽に加圧空気を供給する空気供給管、及び貯水槽内の空気を外部に放出する空気抜き管を接続する必要がある。従って、設置場所が制限され易く、コストがかさむという課題があった。
【0005】
上記課題を解決する給水装置として、例えば
図21に示す構成を備えた給水装置101が挙げられる。
図21に示すように、給水装置101は、貯水槽102と、貯水槽102に設けられた流入口121に順次接続されている給水管103,111と、給水管103と給水管111との間に設けられた逆止弁104と、貯水槽102に設けられた流出口122に順次接続されている給水管112,113,117と、貯水槽102に設けられた流出口123に順次接続されている給水管114,115,116と、給水管115と給水管116の間に設けられた切り替え弁107と、を備えている。給水管113,116,117は管継手108により接続されている。
【0006】
給水装置101において、水道水の水圧が所定値以上を維持している場合は常時取水工程が実行される。常時取水工程では、水道水を給水栓110から取水するにあたって給水管115,116を連通状態としたまま、給水栓110を開く。水道水は、給水装置(図示略)から給水管103、逆止弁104及び給水管111を通じて一定の水圧にて供給され、流入口121から貯水槽102に導入される。その後、貯水槽102内に充填された水道水が給水管112,113,114,115,116,117を通じて、給水栓110まで至り、給水栓110から取水される。
【0007】
一方、断水時等の水道水の水圧が低下し、安定して水道水の供給を得ることができなくなった場合は非常時取水工程が実行される。非常時取水工程では、切り替え弁107を操作して給水管112,113で構成される第1流路と給水管114,115,116で構成される第2流路との連通を遮断し、給水管115を開放する。次いで、切り替え弁107における口部119cにエアコンプレッサーや手動ポンプ等の空気導入機構(図示略)を接続し、給水管114,115を通じて空気を貯水槽102内に供給する。そして、貯水槽102の内圧が上がった状態で給水栓110を開けば、貯水槽102の内圧に押し出された水道水が給水管112,113,117を通じて送り出され、給水栓110から取水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図21に示す給水装置101では、貯水槽102をより容易に製造可能とする要望がある。また、貯水槽102の内部における水道水や空気の滞留を防ぐために貯水槽102を傾斜させる対策が考えられるが、そのように対策をしても貯水槽102の両端部に水道水が滞留し易く、貯水槽102の上端部に空気が滞留し易いという問題があった。さらに、貯水槽102が傾斜し、且つ給水管111,112,114が貯水槽102の側部に接続されていることで、床下等に設置した際に貯留槽の収まりが悪いという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、容易に製造可能であり、且つ内部での水道水や空気の滞留を確実に防止することができる貯水槽及び該貯水槽を備えた住宅の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る貯水槽は、床下に設置される給水装置から供給される水道水を給水栓より上流側で貯水する貯水装置に用いられる貯水槽であって、円筒状に形成された、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の管体と、前記管体の軸線方向の両端部の開口部を塞ぐように形成された、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の2つの蓋部と、を備え、前記2つの蓋部の各々と前記管体の端部とは融着により接合され、前記貯水槽が所定の設置姿勢で設置された状態において一方の前記蓋部の内周面の下端に第1流出口が設けられ、一方の前記蓋部の内周面の上端に第2流出口が設けられ、前記管体の内部の水が前記第1流出口から流出可能であり、前記第2流出口から前記管体の内部に空気が流入可能である。
【0012】
上記の貯水槽では、前記2つの蓋部の各々と前記管体の端部とはヒートフュージョン融着又はエレクトロフュージョン融着の何れかによって接合されてもよい。
【0013】
上記の貯水槽では、前記2つの蓋部の各々と前記管体の端部とはバット融着によって接合され、前記2つの蓋部の各々と前記管体との間に前記バット融着による突起が形成されてもよい。
【0014】
上記の貯水槽では、前記貯水槽が所定の設置姿勢で設置された状態において前記管体及び前記蓋部の少なくとも一方の上部及び下部には、前記第1流出口及び前記第2流出口の各々に接続された接続継手が前記貯水槽の設置面に接触しないように形成された脚部が設けられてもよい。
【0015】
上記の貯水槽では、前記貯水槽を所定の設置姿勢で設置された状態において前記蓋部の側部には、台部が設けられてもよい。
【0016】
上記の貯水槽では、前記蓋部には、前記貯水槽の設置方向を示す方向指示部が設けられてもよい。
【0017】
本発明に係る貯水槽は、床下に設置される給水装置から供給される水道水を給水栓より上流側で貯水する貯水装置に用いられる貯水槽であって、円筒状に形成された樹脂製の管体と、前記管体の軸線方向の両端部の開口部を塞ぐように形成された2つの蓋部と、を備え、前記2つの蓋部の各々と前記管体の端部とは融着又は接着により接合され、前記貯水槽が所定の設置姿勢で設置された状態において一方の前記蓋部の内周面の下端に第1流出口が設けられ、一方の前記蓋部の内周面の上端に第2流出口が設けられ、一方の前記蓋部の内周面の中央部に流入口が設けられ、前記管体の内部の水が前記第1流出口から流出可能であり、前記第2流出口から前記管体の内部に空気が流入可能であり、前記流入口から前記管体の内部を前記他方の蓋部に向かって給水管が延びている。
【0018】
上記の貯水槽では、前記他方の蓋部には流出口や流入口が設けられなくてもよい。
【0019】
上記の貯水槽では、前記第2流出口と給水栓とを接続する給水管に三方弁が設けられてもよい。
【0020】
本発明に係る住宅は、上記貯水槽を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容易に製造可能であり、且つ内部での水や空気の滞留を確実に防止することができる貯水槽及び住宅が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態である貯水槽を示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態である貯水槽を示す側面図であり、貯水槽を一方の蓋部側から見た場合に対応する図である。
【
図3】本発明の第1実施形態である貯水槽を示す断面図であり、
図2に示すA-A線で矢視した場合に対応する図である。
【
図4】本発明の第1実施形態である貯水槽を示す側面図であり、貯水槽を他方の蓋部側から見た場合に対応する図である。
【
図5】本発明の第1実施形態である貯水槽を示す断面図であり、
図4に示すB-B線で矢視した場合に対応する図である。
【
図6】本発明の第1実施形態である住宅の一部及び給水装置を示す概略図であり、給水装置における常時取水工程を説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態である住宅の一部及び給水装置を示す概略図であり、給水装置における非常時取水工程を説明するための図である。
【
図8】本発明の第2実施形態である貯水槽を示す正面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態である貯水槽を示す側面図であり、貯水槽を一方の蓋部側から見た場合に対応する図である。
【
図10】本発明の第2実施形態である貯水槽を示す断面図であり、
図9に示すC-C線で矢視した場合に対応する図である。
【
図11】本発明の第2実施形態である貯水槽を示す側面図であり、貯水槽を他方の蓋部側から見た場合に対応する図である。
【
図12】本発明の第2実施形態である貯水槽を示す断面図であり、
図11に示すD-D線で矢視した場合に対応する図である。
【
図13】本発明の第2実施形態である住宅の一部及び給水装置を示す概略図であり、給水装置における常時取水工程を説明するための図である。
【
図14】本発明の第3実施形態である貯水槽を示す側面図及び断面図であり、貯水槽を一方の蓋部側から見た場合に対応する図である。
【
図15】本発明の第3実施形態である貯水槽の一部を示す正面図及び断面図であり、該断面図に示すE-E線で矢視した場合に対応する図である。
【
図16】本発明の第3実施形態である貯水槽を示す側面図及び断面図であり、貯水槽を他方の蓋部側から見た場合に対応する図である。
【
図17】本発明の第3実施形態である貯水槽の一部を示す正面図であり、
図16に示すF方向から見た場合に対応する図である。
【
図18】本発明の第3実施形態である貯水槽の一部を示す正面図であり、
図16に示すG方向から見た場合に対応する図である。
【
図19】本発明の第3実施形態である貯水槽の変形例を示す側面図及び断面図であり、貯水槽を他方の蓋部側から見た場合に対応する図である。
【
図20】本発明の第2実施形態及び第3実施形態である貯水槽の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した実施形態である貯水槽及び住宅について、図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
先ず、本発明を適用した第1実施形態(以下、「第1実施形態」と記載する)について説明する。
図1は第1実施形態の貯水槽2を示す正面図である。
図1に示すように、第1実施形態の貯水槽2は、管体6と、管体6の両端部の開口面6H,6Hを塞ぐ閉塞板7Cを有する蓋部(一方の蓋部)7及び蓋部(他方の蓋部)8から構成されている。
【0025】
管体6は、例えば長尺な樹脂管から所定の長さで切り出すことで得られる樹脂製の部材である。管体6を構成する樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。管体6の製造方法としては、長尺な樹脂管を安定して製造できる押出し成形が好ましいが、これに限るものではなく、ブロー成形等を用いてもよい。
【0026】
図1に示すように、蓋部7,8は管体6の端部にそれぞれ外嵌されている。第1実施形態では、蓋部7,8は有頂筒状に形成されており、閉塞板7C,8Cをなす天壁と、側壁7S,8Sとをそれぞれ備えている。
閉塞板7C,8Cは、蓋部7,8の外周端から中心に向けて凸形状に湾曲して形成されている。
側壁7S,8Sは、管体6の両端部に重ねて配置されるとともに融着又は接着により、管体6に接合されている。
【0027】
蓋部7,8を構成する素材としては、例えばPP、PE、PVC,合成ゴムが挙げられ、射出成型により製造される。管体6及び蓋部7,8をPEで形成した場合、蓋部7,8の側壁7S,8Sは例えばバット融着又はEF融着によって管体6の両端部に融着して接合される。
図1はバット融着で接合した場合の貯水槽2を示し、この場合には蓋部7,8の側壁7S,8Sは管体6と同径とされ、管体6と蓋部7,8の端部間に融着によるビードと呼ばれる突起が貯水槽2の表面及び内面に形成される。一方、EF融着で接合する場合には、蓋部7,8の側壁7S,8Sの内径は管体6の外径と同径とし、管体6と熱融着するための電熱線を側壁7S,8S内表面に備え、電熱線へ電力を供給するための端子を側壁7S,8S外表面に備える構造とされる。
また、管体6及び蓋部7,8をPVCで形成した場合、蓋部7,8の側壁7S,8Sは適切な接着材によって管体6の両端部に接合されている。
【0028】
図2は貯水槽2を示す側面図であり、貯水槽2を蓋部7側から見た場合に対応する図である。
図3は貯水槽2を示す断面図であり、
図2に示すA-A線で矢視した場合に対応する図である。
図2及び
図3に示すように、蓋部7の閉塞板7Cには、給水装置(図示略)から供給される水道水を貯水槽2内に流入させる流入口21が設けられている。流入口21には、給水管11と、給水管11及び他の給水管を連結するための連結具11Nが接続されている。
【0029】
図4は貯水槽2を示す側面図であり、貯水槽2を蓋部8側から見た場合に対応する図である。
図5は貯水槽2を示す断面図であり、
図4に示すB-B線で矢視した場合に対応する図である。
図4及び
図5に示すように、蓋部8の閉塞板8Cには、貯水槽2内に貯留された水道水を貯水槽2外に流出させる流出口25が設けられている。第1実施形態では、流出口25は第1流出口22と第2流出口23から構成されている。閉塞板8Cには、下部から第1流出口22と第2流出口23がこの順に設けられている。
第1流出口22には、給水管12と、給水管12及び他の給水管を連結するための連結具12Nが接続されている。
第2流出口23には、給水管14と、給水管14及び他の給水管を連結するための連結具14Nが接続されている。
【0030】
図6及び
図7は、上記説明した貯水槽2を備えた第1実施形態の給水装置1Aを示す概略図である。
図6は、給水装置1Aにおける常時取水工程を説明するための図である。
【0031】
先ず、給水装置1Aの構成について説明する。
図6に示すように、給水装置1Aにおいて、蓋部7が蓋部8よりも低く配置されるように貯水槽2が傾斜して設置されている。また、給水管11には第1給水管3が接続されている。第1給水管3には管内を流れる水道水の逆流を防止する逆止弁4が設けられている。この構成により、給水ヘッダー等の給水装置(図示略)から供給された水道水が給水管3,11を介して流入口21から貯水槽2に導入可能とされている。
【0032】
一方、給水管12には第2給水管13が接続されている。また、給水管14には第3給水管15,16が接続されている。
第3給水管15と第3給水管16との間には、切り替え弁9が設けられている。第1実施形態では、切り替え弁9として口部9a,9b,9cを有する三方弁が用いられている。口部9aには第3給水管16が接続され、口部9bには第3給水管15が接続されている。口部9cは大気中に開放されている。切り替え弁9では、弁の操作によって、第3給水管15と第3給水管16が連通し、且つ給水装置1Aの外部とは遮断されている第1状態と、第3給水管15と第3給水管16が連通せず、給水装置1Aの外部と第3給水管15が連通している第2状態が切り替え可能とされている。
【0033】
第2給水管13及び第3給水管16はT型の管継手(所謂、チーズ継手)によって合流し、同管継手を介して第2給水管17に接続されている。第2給水管17の下流側には、例えばシンク等に設けられる給水栓10が接続されている。
上記構成により、切り替え弁9が第1状態とされれば、貯水槽2内の水道水が第1流出口22から第2給水管13,17に順次導出される。また、第2流出口23から第3給水管15,16、第2給水管17に順次導出され、給水栓10から取り出し可能となる。これに対し、切り替え弁9が第2状態とされれば、大気中に開放された口部9cから第3給水管15に空気を供給可能となる。供給された空気は、貯水槽2内の水道水は第1流出口22から第2給水管13,17内に導出され、給水栓10から取り出し可能となる。
【0034】
次いで、給水装置1Aにおける常時取水工程及び非常時取水工程について説明する。
常時取水工程は、給水装置1Aに供給される水道水の水圧が所定値以上を維持している通常の場合に実行される。
一方、断水時等のように水道水の水圧が低下し、安定して水道水の供給を得ることができなくなった場合は非常時取水工程が実行される。
【0035】
第1実施形態では、給水装置1Aにおいて常時取水工程又は非常時取水工程を実行するに先出貯水工程が実行される。
【0036】
(貯水工程)
先ず、切り替え弁9を第2状態とし、貯水槽2内に水道水を導入する。この際、貯水槽2内に存在していた空気は、水道水の導入に伴って、第3給水管15を通じて切り替え弁9まで送り出され、口部9cを介して大気中に排出される。この際、給水栓10を大気中に開放すれば、給水栓10からも空気が排出される。その結果、貯水槽2内に存在していた空気がより迅速となり、常時取水工程或いは非常時取水工程に要する時間が短くなる。
その後、口部9cから水道水が漏出してきた時点で、貯水槽2が満水になったものとみなし、切り替え弁9を第1状態とする。
【0037】
上記説明した貯水工程を実行した後、貯水槽2に供給される水道水の圧力等に応じて、次に説明する常時取水工程、又は非常時取水工程の何れかを選択して実行する。
【0038】
(常時取水工程)
本工程では、切り替え弁9を第1状態としたまま、給水栓10を開く。この際、一定の水圧で供給される水道水は、第1給水管3、逆止弁4及び給水管11を介して貯水槽2に導入される。そして、貯水槽2に一旦貯留された水道水は、給水管12,14、第2給水管13及び第3給水管15を通じて第2給水管17に導出され、給水栓10まで至り、給水栓10から取水される。この際、水道水は
図6に示す白矢印に沿って流動する。
【0039】
(非常時取水工程)
図7は、給水装置1Aにおける非常時取水工程を説明するための図である。
本工程では先ず、切り替え弁9を第2状態とする。その後、
図7に示すように切り替え弁9における口部9cにエアコンプレッサーや手動ポンプ等の空気導入手段(図示略)を接続し、第3給水管15及び給水管14を通じて空気を貯水槽2内に供給する。
このように空気を貯水槽2内に供給することで、貯水槽2内の圧力がより高まり、水道水に対して貯水槽2を出て給水栓10に向かう水圧が付与される。
そして、貯水槽2内の圧力が上がった状態で給水栓10を開けば、貯水槽2内の圧力に押し出されて、第2給水管13を通って送り出された水道水が給水栓10から取水される。本工程では、空気は
図7に示す黒矢印に沿って流動し、水道水は
図7に示す白矢印に沿って流動する。
【0040】
その後、水道水の供給が安定すれば、貯水工程を再度行うことによって、貯水槽2内に水道水を貯水する。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態の貯水槽2は、樹脂製の管体6と、管体6の両端部を塞ぐ閉塞板7C,8Cを有し、閉塞板7C,8Cを天壁として有頂筒状に形成された二つの蓋部7,8と、を備えている。また、蓋部7の閉塞板7Cには給水装置からの水道水を管体6内に流入させる流入口21が設けられ、蓋部8の閉塞板8Cには管体6内に貯留された水道水を給水栓10に向けて流出させる第1流出口22及び第2流出口23が設けられている。二つの蓋部7,8の各々と管体6の端部とは融着又は接着により接合されている。
【0042】
上記構成によれば、樹脂管から任意の長さに切り出して得られる管体6の開口面6Hを閉塞板7C,8Cで塞ぐように、管体6に蓋部7,8を接合することで、容易に製造される。
また、蓋部7,8の天壁が閉塞板7C,8Cを構成すると共に、閉塞板7C,8Cによって管体6の開口面6Hが塞がれる。また、蓋部7,8の側壁7S,8Sを管体6の両側端部に重ねて管体6と蓋部7,8とを接合可能となる。従って、簡便な製造方法によって管体6と蓋部7,8とを強固に接合することができる。
さらに、流入口21及び流出口25が蓋部7,8の閉塞板7C,8Cに設けられているため、管体6の一端から他端に向けてこの方向に確実に水道水及び空気が流れ、貯水槽2内での水道水や空気の滞留が極めて発生し難くなる。
即ち、貯水槽2を容易に製造することができ、且つ貯水槽2内での水道水や空気の滞留を確実に防止することができる。
【0043】
また、第1実施形態の貯水槽2では、閉塞板7C,8Cが蓋部7,8の外周端から中心に向けて凸形状に湾曲して形成されている。
上記構成によれば、管体6の両端部の水道水及び空気が閉塞板7C,8Cに沿って円滑に対流し、任意の箇所に滞留し難くなる。従って、貯水槽2内における水道水や空気の滞留をより確実に防止することができる。
【0044】
また、第1実施形態の貯水槽2では、流入口21は蓋部7の閉塞板7Cの下部に設けられ、流出口25は蓋部8の閉塞板8Cの下部に設けられている。
上記構成によれば、水道水が蓋部7側の貯水槽2の下端部から貯水槽2内に流入すると共に、蓋部8側の貯水槽2の下端部から流出する。従って、貯水槽2内における水道水の滞留をより確実に防止することができる。
【0045】
また、第1実施形態の貯水槽2では、流出口25は第1流出口22と第2流出口23から構成され、蓋部8の閉塞板8Cには下部から第1流出口22と第2流出口23がこの順に設けられている。
上記構成によれば、例えば流入口21より水道水が所定値以上の水圧で供給されている場合(常時)には、貯水槽2内の水が第1流出口22から流出し、貯水量が増えれば第2流出口23からも流出する。一方、水道水の水圧が低下した場合(非常時)には、第2流出口から貯水槽2内に空気を供給して貯水槽2内の圧力を高めることで、貯水槽2内の水道水が第1流出口22から流出可能となる。従って、供給される水道水の水圧に関わらず、貯水槽2内の水道水を貯水槽2外に円滑に取り出し可能となる。このように、貯水槽2を常時だけではなく非常時でも使用可能とすることができる。
【0046】
次いで、第1実施形態の給水装置1Aは上記貯水槽を備えている。
上記構成によれば、貯水槽2を備えることで、給水装置1Aをより容易に製造し、且つ貯水槽2内における水道水の滞留をより確実に防止することができる。
【0047】
また、第1実施形態の給水装置1Aでは、貯水槽2と、流入口21に接続され、且つ前記給水装置から供給される水道水を貯水槽2内に導入する第1給水管3と、第1給水管3に設けられて水道水の逆流を防止する逆止弁4と、第1流出口22に接続され、且つ貯水槽2内に導入された水道水を給水栓10まで導く第2給水管13,17と、第2流出口23に接続され、且つ第2給水管13に連結されている第3給水管15,16と、第2給水管13と第3給水管16との接続位置、又は前記第3給水管15,16に設けられ、且つ第2給水管13と第3給水管15とが連通している第1状態と第2給水管13と第3給水管15とが連通せずに第3給水管15のみが開放された第2状態とを切り替え可能な切り替え弁9と、を備えている。
上記構成によれば、例えば第1給水管3及び逆止弁4を介して流入口21より水道水が所定値以上の水圧で供給されている場合は、貯水槽2内の水道水が第1流出口22から給水管12を介して第2給水管13に流出し、貯水槽2内の貯水量が増えれば第2流出口23から給水管14を介して第3給水管15,16にも流出する。ここで、切り替え弁9により第3給水管15と第2給水管13に接続されている第3給水管16とが連通状態とされていれば、給水栓10を開けることで水道水を取水することができる。
一方、水道水が所定値未満の水圧が供給されている場合であっても、切り替え弁9により第2給水管13と第3給水管15とを非連通状態とし、例えば第2流出口23から貯水槽2の内部に高圧の空気を供給することで、貯水槽2の内部の水が第1流出口22から第2給水管13,17に流出可能となり、給水栓10を開けることで水道水を取水可能となる。
従って、供給される水道水の水圧に関わらず、水道水を貯水槽2内に貯留すると共に、給水栓10から円滑に取水することができる。即ち、給水装置1Aを常時取水工程及び非常時取水工程の両方で稼働させることができる。
【0048】
また、第1実施形態の給水装置1Aでは、常時取水工程又は非常時取水工程の前後に貯水工程を実行する。これにより、貯水槽2内に存在する空気を基本的に全て排出することができる。
【0049】
また、第1実施形態の給水装置1Aでは、蓋部7が蓋部8よりも低く配置されるように貯水槽2が傾斜して設置されている。
上記構成によれば、流出口25が流入口21よりも高く配置され、且つ管体6が傾斜していることで、水道水が蓋部7側の貯水槽2の下端部から貯水槽2内に流入すると共に、管体6内を円滑に移動し、蓋部8側の貯水槽2から流出する。また、貯水槽2内に存在する空気が管体6の傾斜に沿って移動し、流出口25に向けてより円滑に導かれる。従って、貯水槽2内での水道水及び空気の滞留をより一層確実に防止することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次いで、本発明を適用した第2実施形態(以下、「第2実施形態」と記載する)について説明する。
図8は第2実施形態の貯水槽32を示す正面図である。
図9は貯水槽32を示す側面図であり、貯水槽32を蓋部7側から見た場合に対応する図である。
図10は貯水槽32を示す断面図であり、
図9に示すC-C線で矢視した場合に対応する図である。
図11は貯水槽32を示す側面図であり、貯水槽32を蓋部8側から見た場合に対応する図である。
図12は貯水槽32を示す断面図であり、
図11に示すD-D線で矢視した場合に対応する図である。なお、
図8から
図12に示す貯水槽32の構成要素において、
図1から
図5に示す貯水槽2の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、第2実施形態の貯水槽32は、第1実施形態の貯水槽2と同様の構成要素を備え、流入口21及び流出口25の設置位置を変更したものである。即ち、第2実施形態では、
図9及び
図10に示すように、流入口21が蓋部7の底部の側壁7Sと閉塞板7Cとの間に形成されている。側壁7Sと流入口21とは概ね面一となっている。給水管11は流入口21に接続されるとともに、閉塞板7Cの中央付近から管体6の軸線方向に対して略鉛直な方向且つ下方に向いて配設されている(
図8参照)。また、
図11及び
図12に示すように、第1流出口22が蓋部8の頂部の側壁8Sと閉塞板8Cとの間に形成され、第2流出口23が蓋部8の底部の側壁8Sと閉塞板8Cとの間に形成されている。側壁8Sと流出口25とは概ね面一となっている。給水管12は第1流出口22に接続されるとともに、閉塞板8Cの中央付近から管体6の軸線方向に対して略鉛直な方向且つ下方に向いて配設されている。給水管14は第2流出口23に接続されるとともに、管体6の軸線方向に対して略鉛直な方向且つ下方に向いて配設されている(
図8参照)。このような構成配置により、給水管11,12,14が管体6の軸線方向に対して略鉛直な方向に大きく突出することがなく、住宅の床下等に設置した際に貯水槽32の姿勢が安定する。
【0052】
図13は、上記説明した貯水槽32を備えた第2実施形態の給水装置1Bを示す概略図である。給水装置1Bの構成は、給水装置1Aの構成のうち貯水槽2を貯水槽32に替えたものである。従って、
図13に示す給水装置1Bの構成要素において、
図6及び
図7に示す給水装置1Aの構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付す。また、給水装置1Bの構成要素の説明は省略する。
給水装置1Bにおける貯水工程、常時取水工程及び非常時取水工程は、給水装置1Aにおける貯水工程、常時取水工程及び非常時取水工程と同様である。なお、給水装置1Bにおける非常時取水工程を説明するための図は省略するが、
図6から
図7への変更点を
図13に適用すればよい。
【0053】
以上説明した第2実施形態の貯水槽32及び給水装置1Bによれば、第1実施形態の貯水槽2及び給水装置1Aと同様の作用効果が得られる。例えば、管体6の開口面6Hを閉塞板7C,8Cで塞ぐように、管体6に蓋部7,8を接合することで、貯水槽32を容易に製造することができる。また、このような貯水槽32を備えることで、給水装置1Bを容易に製造し、且つ貯水槽32内における水道水の滞留をより確実に防止することができる。
【0054】
(第3実施形態)
次いで、本発明を適用した第3実施形態(以下、「第3実施形態」と記載する)について説明する。
図14は貯水槽42を示す側面図及び断面図であり、貯水槽42を蓋部7側から見た場合に対応する図である。
図15は貯水槽42の一部を示す正面図及び断面図であり、該断面図は
図14に示すE-E線で矢視した場合に対応している。
図16は貯水槽42を示す側面図及び断面図であり、貯水槽42を蓋部8側から見た場合に対応する図である。
図17は貯水槽42の端部を示す正面図であり、
図16に示すF方向から見た場合に対応する図である。
図18は貯水槽42の端部を示す正面図であり、
図16に示すG方向から見た場合に対応する図である。なお、
図14から
図18に示す貯水槽42の構成要素において、
図1から
図5に示す貯水槽2の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図14及び
図15に示すように、第3実施形態の貯水槽42は、第1実施形態の貯水槽2と同様の構成要素を備え、流入口21及び流出口25の設置位置をさらに変更したものである。
第3実施形態では、流入口21が周方向の蓋部7の内周面(管内周面)7p(即ち、側壁7Sの内周面)に形成されている。流入口21には、管体6の軸線方向(管軸方向)D6に直交する面方向に沿う接続継手51が設けられている。接続継手51は、軸線方向D6から見て内周面7pの下端から蓋部7の側方(紙面右側)に向けて、且つ水平方向に対して所定の角度で下方に傾斜して延出するように配設されている。接続継手51には、
図14で不図示の給水管11が接続されている。
なお、接続継手51は、水平方向に対して所定の角度で上方に傾斜して延出するように配設されていても構わない。
【0056】
また、蓋部7の内周面7pと接続継手51との連設部61は、軸線方向D6から見て内周面7pから離れるに従い、漸次曲率半径が増大する湾曲面を形成している。即ち、
図14に示すように、周方向において、中空部6Wの曲率半径R6から連設部61の曲率半径R61にかけては漸次増大している。
【0057】
図16から
図18に示すように、流出口25が周方向の蓋部8の内周面(管内周面)8p(即ち、側壁8Sの内周面)に形成されている。貯水槽42を所定の設置姿勢で置いたとき、第1流出口22は内周面8pの底端に配置され、第2流出口23は内周面8pの上端に配置されている。第1流出口22には、管体6の軸線方向D6に直交する面方向に沿う接続継手52が設けられている。接続継手52は、軸線方向D6から見て内周面8pの下端から蓋部8の側方(紙面右側)に向けて、且つ所定の角度で下方に傾斜して延出するように配設されている。接続継手52には、
図16で不図示の給水管12が接続されている。同様に、第2流出口23には、管体6の軸線方向D6に直交する面方向に沿う接続継手54が設けられている。接続継手54は、軸線方向D6から見て内周面8pの上端から蓋部8の側方(紙面右側)に向けて、且つ所定の角度で上方に傾斜して延出するように配設されている。接続継手54には、
図16で不図示の給水管12が接続されている。
【0058】
蓋部8の内周面8pと接続継手52,54との連設部62,64は、軸線方向D6から見て内周面8pから離れるに従い、漸次曲率半径が増大する湾曲面を形成している。即ち、
図16に示すように、周方向において、中空部6Wの曲率半径R6から連設部62の曲率半径R62にかけては漸次増大し、中空部6Wの曲率半径R6から連設部64の曲率半径R64にかけては漸次増大している。
【0059】
設置場所への貯水槽42の搬送時や、床下に貯水槽42を設置する際に接続継手51,52,54を床面に衝突させないようにするために、管体6及び蓋部7の少なくとも一方の上部及び下部には、脚部28,28が設けられている。軸線方向D6から見て水平方向に対する接続継手51,52,54の軸線の傾斜角度は、特に限定されないが、例えば接続継手51,52の軸線の傾斜角度については-0°以上-10°以下であることが好ましく、-5°以上-10°以下であることがより好ましい。また、例えば接続継手54の軸線の傾斜角度については0°以上10°以下であることが好ましく、5°以上10°以下であることがより好ましい。前記傾斜角度については、
図14及び
図16における水平方向に対して上方を正とし、下方を負としている。このように水平方向に対する接続継手51,52,54の軸線の傾斜角度を設定することで、接続継手51,52,54に接続された連結具11N,12N,14Nの先端部が脚部28よりも上方又は下方に突出せず、貯水槽42の製造誤差に多少の許容範囲が確保される。また、貯水槽42の設置面から離れた側の接続継手54の中空部54Wが水平方向に対して下向きになる(即ち、連設部64を始点位置として接続継手54の軸線が水平方向に対して下方に傾く)と、貯水槽42内に空気が残る可能性があるので、空気の残留を防ぐために水平方向に対する接続継手52,54の軸線の傾斜角度を付けることは効果的である。また非常時には、接続継手54よりも設置面に近い接続継手52から水を取り出すので、中空部52W(即ち、接続継手52の軸線)が水平方向に対して上向きになると、貯水槽42内に利用可能な水が残る可能性がある。このように水が残る可能性を減らすために、接続継手52,54の軸線の傾斜角度を付けることは効果的である。
【0060】
また、蓋部7,8の閉塞板7C,8Cには、貯水槽42の設置方向で接続継手51,52,54の軸線が水平方向に対して所定の角度をなしているか否かを作業者に示し、接続継手51,52,54の軸線方向を容易に視認可能とする目的で、方向指示部34が設けられている。そのため、方向指示部34は水平方向に対して垂直又は平行となるように設けられていることが好ましい。
図14及び
図16には、作業者に視認し易くするために、所定の設置方向に対して閉塞板7C,8Cの上端から中心まで延在する方向指示部34を例示しているが、前記目的を達成できれば、その形状及び素材等は特に制限されない。また、方向指示部34は、例えば凸部であってもよく、凹部であってもよく、塗料や蓄光材料等で形成・印刷・貼付されていてもよい。
【0061】
なお、床下等に施工前の貯水槽42は、接続継手51,52,54への施工前保管場所の床面・壁面の衝突及びそれによる接続継手51,52,54の損傷を防ぐために、接続継手51,52,54を上方に向けた姿勢で置かれる。このような姿勢を保持し易くするために、管体6及び蓋部7の側部には、台部30が設けられている。
【0062】
図19は貯水槽42の変形例である貯水槽44を示す側面図及び断面図であり、貯水槽44を蓋部8側から見た場合に対応する図である。
図19に示すように、貯水槽44においては、接続継手52は第1流出口22に接続されるとともに、管体6の軸線方向D6から見て内周面8pの下端から管体6の軸線に対して接続継手54とは反対方向の管体6の側方(紙面左側)に向けて、且つ水平方向に対して所定の角度で下方に傾斜して延出するように配設されている。
【0063】
図示していないが、上記説明した貯水槽42又は貯水槽44を備えた第3実施形態の給水装置の構成は、給水装置1Aの構成のうち貯水槽2を貯水槽42又は貯水槽44に替えたものである。
第3実施形態の給水装置における貯水工程、常時取水工程及び非常時取水工程は、給水装置1Aにおける貯水工程、常時取水工程及び非常時取水工程と同様である。
【0064】
以上説明した第3実施形態の貯水槽42,44及び給水装置によれば、第1実施形態の貯水槽2及び給水装置1Aと同様の作用効果が得られる。例えば、管体6の開口面6Hを閉塞板7C,8Cで塞ぐように、管体6に蓋部7,8を融着又は接着により接合することで、貯水槽42,44を容易に製造することができる。また、このような貯水槽42,44を備えることで、第3実施形態の給水装置を容易に製造し、且つ貯水槽42,44内における水道水の滞留をより確実に防止することができる。
特に、第3実施形態の貯水槽42,44では、連設部61,62,64が軸線方向D6から見て内周面7p,8pから離れるに従い、漸次曲率半径が増大する湾曲面を形成していることで、蓋部7,8の周方向と該周方向の接線方向がより滑らかに接続され、段差等が生じ難い。これにより、接続継手51,52,54を介して貯水槽42に流入する水及び貯水槽42から流出する水を滞らせることなく、より円滑に流動させることができる。詳細には、貯水槽42に水が流入する際及び貯水槽42から水が流出する際には、水が給水管11,流出管(給水管)12,14、及び接続継手51,52,54の中空部51W,52W,54Wから
図14及び
図16に例示するように蓋部7,8の内周面7p,8pに沿って矢印方向に流入及び流出し、蓋部7,8の中空部及び管体6の中空部6Wで螺旋状に流動する。そのため、貯水槽42,44の貯水効率を高め、貯水時間及び取水時間の短縮を図ることができる。また、管体6や接続継手51,52,54における多少の製造誤差も許容され、貯水槽42,44の製造容易性を高めることもできる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0066】
例えば、
図20に示す変形例による貯水槽2Aのように、管体6の両端に設けられる蓋部7、8のうち、一方の蓋部7のみに流入口と流出口が設けられる構成であってもよい。すなわち、一方の蓋部7は、閉塞板7Cの中央部を貫通させた給水管11が流入口21に接続されるとともに、上述した
図16及び
図17と同様に蓋部7の内周面7pに流出管12,14に接続継手52、54を介して接続される第1流出口22及び第2流出口23が配置された構成となっている。閉塞板7Cを貫通した給水管11は、管体6の中空部6W内において他方の蓋部8側まで導かれ、中空部6W内に水を流入させる。他方の蓋部8は、側壁8S及び閉塞板8Cに流入口や流出口を有さない全閉の蓋体となっている。
即ち、本変形例による貯水槽2Aは、一方の蓋部7の給水管11から流入した水が、中空部W内を通過して同じ一方の蓋部7の第1流出口22及び第2流出口23を介して流出管12,14から流出する構成となっている。
【0067】
また、本発明の貯水槽2を寒冷地で用いる場合には、冬季に貯水槽2内の水が凍結するのを防止するために管体6の周囲を覆うように管状又はシート状の保温材を設けてもよい。また、本発明の貯水槽2を天井内に設置する場合には、夏季に貯水槽2の周囲に結露が発生するのを防止するために管体6の周囲を覆うように管状又はシート状の保温材を設けてもよい。本発明においては給水管が貯水槽2の側部に接続されていないため、このような保温材を貯水部分である管体6に隙間なく巻きまわしやすい。
【0068】
また、例えば上記説明した給水装置において、複数の貯水槽を直列及び/又は並列に接続して使用してもよい。このような構成によれば、長さ寸法の大きな貯水槽を製造しなくても、給水装置における貯水量を増やすことができる。
【符号の説明】
【0069】
1A,1B…給水装置、2,2A,32,42,44,72…貯水槽、3…第1給水管、4…逆止弁、6…管体、6H…開口面、7…蓋部(一方の蓋部)、7C,8C…閉塞板、8…蓋部(他方の蓋部)、9…切り替え弁、10…給水栓、13,17…第2給水管、15,16…第3給水管、21…流入口、22…第1流出口、23…第2流出口、25…流出口、51,52,54…接続継手、61,62,64…連設部