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特許7057428符号化正弦波形を使用する高スペクトル効率データ通信システムの受信器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】符号化正弦波形を使用する高スペクトル効率データ通信システムの受信器
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/20 20060101AFI20220412BHJP
   H04L 27/22 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H04L27/20 Z
H04L27/22 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020543259
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018058055
(87)【国際公開番号】W WO2019084565
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】62/578,332
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/689,764
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520137981
【氏名又は名称】テラウェーブ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,トルステン
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509269(JP,A)
【文献】特表2008-507157(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101552750(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102098073(CN,A)
【文献】Chunyi Song et al.,Evaluations of Elliptical Modulation Scheme,2004 IEEE Wireless Communications and Networking Conference (IEEE Cat. No.04TH8733),2004年03月25日,pp.1176-1181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/20
H04L 27/22
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デジタルデータを受信することと;
複数のシンボル波形を使用して前記入力デジタルデータを符号化することであって、前記複数のシンボル波形のそれぞれは、合成符号化波形の一周期を占有し、前記入力デジタルデータのビットを表し、前記複数のシンボル波形の各シンボル波形は第1の楕円弧及び前記第1の楕円弧の極性に対して反対極性の第2の楕円弧を有し、各シンボル波形は、(i)前記第1の楕円弧から前記第2の楕円弧への零交差が前記複数のシンボル波形の波形毎に異なり、(ii)前記シンボル波形の前記第1の楕円弧のエネルギーが前記シンボル波形の前記第2の楕円弧のエネルギーにほぼ等しくなるように定義される、符号化することと;
前記合成符号化波形の表現から符号化アナログ波形を生成することと、を含むデータ通信方法。
【請求項2】
前記複数のシンボル波形のデジタル表現をメモリ内に格納することと;
前記入力デジタルデータを受信すると前記メモリから前記デジタル表現のうちの1つを読み出すことと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の楕円弧は正楕円弧であり、前記第2の楕円弧は負楕円弧である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各シンボル波形の前記正楕円弧のエネルギーは異なる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各シンボル波形の前記負楕円弧のエネルギーは異なる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各シンボル波形の周期は等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記入力デジタルデータは、少なくとも4ビットの複数のデータワードを含み、前記複数のシンボル波形はそれぞれ前記複数のデータワードに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数のシンボル波形により符号化された入力デジタルデータを回復する方法であって、前記複数のシンボル波形のそれぞれは、符号化された合成波形の一周期を占有し、ほぼ等しいエネルギーの第1の楕円弧と第2の楕円弧とを含む、方法において、
前記複数のシンボル波形を使用して生成された符号化アナログ波形を受信することと;
前記複数のシンボル波形を表すデジタルシンボルサンプルを生成することと;
第1の極性から第2の極性への前記デジタルシンボルサンプルの極性の遷移に対応する前記デジタルシンボルサンプルの第1のサンプルを識別することと;
前記第2の極性のデジタルシンボルサンプルの他のものから前記第1の極性の前記デジタルシンボルサンプルの他のものへの遷移に対応する前記デジタルシンボルサンプルの第2のサンプルを判断することであって、前記デジタルシンボルサンプルの前記第2のサンプルは、前記複数のシンボル波形のうちの1つのシンボル波形の前記第1の楕円弧から前記複数のシンボル波形のうちの前記1つのシンボル波形の前記第2の楕円弧への遷移を定義する、判断することと;
前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルに基づき入力デジタルデータを推定することと、を含む方法。
【請求項9】
前記推定することは、前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルに基づき零交差値を判断することを含み、前記零交差値は複数の零交差値に含まれ、前記複数の零交差値のそれぞれは、前記入力デジタルデータ内に含まれる複数のデジタルデータワードのうちの異なるデジタルデータワードに対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記推定することは前記第1のサンプルと前記第2のサンプルとの間のサンプルの数を判断することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
入力デジタルデータを格納するように構成された入力バッファと;
複数のシンボル波形を使用して前記入力デジタルデータを符号化するための時間領域変調器であって、前記複数のシンボル波形のそれぞれは、合成符号化波形の一周期を占有し、前記入力デジタルデータのビットを表し、前記複数のシンボル波形の各シンボル波形は正楕円弧及び負楕円弧を有し、前記時間領域変調器は、(i)前記シンボル波形の前記正楕円弧から前記負楕円弧への零交差が前記複数のシンボル波形の波形毎に異なり、(ii)前記シンボル波形の前記正楕円弧のエネルギーが前記シンボル波形の前記負楕円弧のエネルギーにほぼ等しくなるように、各シンボル波形を定義する、時間領域変調器と;
前記合成符号化波形のデジタル表現から符号化アナログ波形を生成するための1つ又は複数のデジタル/アナログ変換器と、を含むシステム。
【請求項12】
前記複数のシンボル波形のデジタル表現を格納するためのメモリをさらに含む請求項11に記載のシステムであって、前記時間領域変調器は、前記入力バッファ内に格納された前記入力デジタルデータに対応するビットを受信すると前記メモリから前記デジタル表現のうちの1つを読み出すように構成される、システム。
【請求項13】
前記複数のシンボル波形のうちのいくつかのシンボル波形の前記正楕円弧及び前記負楕円弧は形状が楕円である、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
各シンボル波形の前記正楕円弧の前記エネルギーは異なる、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
各シンボル波形の前記負楕円弧の前記エネルギーは異なる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
各シンボル波形の周期は等しい、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記入力デジタルデータは少なくとも4ビットの複数のデータワードを含み、前記複数のシンボル波形はそれぞれ前記複数のデータワードに対応する、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
入力デジタルデータを受信することと;
複数のシンボル波形を使用して前記入力デジタルデータを符号化することであって、前記複数のシンボル波形のそれぞれは、合成符号化波形の一周期を占有し、前記入力デジタルデータのビットを表し、前記複数のシンボル波形の各シンボル波形は正楕円弧及び負楕円弧を有し、各シンボル波形は、(i)前記シンボル波形の前記正楕円弧から前記負楕円弧への零交差が前記複数のシンボル波形の波形毎に異なり、(ii)前記シンボル波形の前記正楕円弧のエネルギーが前記シンボル波形の前記負楕円弧のエネルギーにほぼ等しくなるように定義される、符号化することと;
デジタル/アナログ変換器を使用して前記合成符号化波形のデジタル表現から符号化アナログ波形を生成することと、を含むデータ通信方法。
【請求項19】
複数のシンボル波形により符号化された入力デジタルデータを回復する方法であって、前記複数のシンボル波形のそれぞれは、符号化された合成波形の一周期を占有し、ほぼ等しいエネルギーの正楕円弧と負楕円弧とを含む、方法において、
前記複数のシンボル波形を使用して生成された符号化アナログ波形を受信することと;
前記複数のシンボル波形を表すデジタルシンボルサンプルを生成することと;
負値を有するデジタルシンボルサンプルのいくつかから正値を有する前記デジタルシンボルサンプルのいくつかへの遷移に対応する前記デジタルシンボルサンプルの第1のサンプルを識別することと;
正値を有する前記デジタルシンボルサンプルの他のいくつかから負値を有する前記デジタルシンボルサンプルの他のいくつかへの遷移に対応する前記デジタルシンボルサンプルの第2のサンプルを判断することであって、前記デジタルシンボルサンプルの前記第2のサンプルは、前記複数のシンボル波形のうちの1つのシンボル波形の前記正楕円弧から前記複数のシンボル波形のうちの前記1つのシンボル波形の前記負楕円弧への遷移を定義する、判断することと;
前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルに基づき入力デジタルデータを推定することと、を含む方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[1001] 本出願は、その全体を参照により本明細書に援用する2017年10月27日出願の米国仮特許出願第62/578,332号、題名“DATA COMMUNICATIONS SYSTEM WITH HIGH SPECTRAL EFFICIENCY”と2018年6月25日出願の米国仮特許出願第62/689,764号、題名“HIGH SPECTRAL EFFICIENCY DATA COMMUNICATIONS SYSTEM USING PERIODIC WAVEFORM MODULATION”からの優先権を合衆国法典第35巻第119条(e)に基づき主張する。
【0002】
分野
[1002] 本開示は、一般的にはデータ通信システムに関し、具体的には正弦波変調に基づくデータ通信のため方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[1003] データ又は情報を伝送するために使用される様々な伝送チャネルが存在する。銅線からなる電話回線は音声とデータとの両方を伝送するために100年を越える期間にわたって使用された。無線信号の無線伝送はほぼ100年間存続してきた。無線局は無線受信機により受信される無線信号を電波で送出する。知られているように、無線局は、音楽、ニュース又はプログラムを含み得る番組を有する。衛星は別の伝送チャネルの例である。ここでは、第1の位置に位置する衛星放送アンテナが、ビーム照射される衛星へ信号を送信するために、又は第1の位置から離れた位置に位置する第2の衛星放送アンテナへ信号を衛星から送信するために使用される。最近、セルラ電話間で通信するためにセルラ通信システムが使用されている。膨大な量のデータがセルラ通信システムを使用して送信されている。現時点では、使用される任意の伝送チャネル上のデータスループットを増加することができることが必須である。信号の伝送中の信号劣化の問題に対処することも重要である。伝送チャネル上で信号を伝送する際に遭遇されるいくつかの問題は伝送路遅延、干渉及び非線形性を含む。
【0004】
[1004] 伝送チャネル上のデータスループットを増加する努力において開発及び使用されてきたいくつかの伝送技術又は方式は、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)、周波数変調(FM:FrequencyModulation)、位相変調、QAM(直交振幅変調:Quadrature Amplitude Modulation)、QPSK(直交位相シフトキーイング:Quadrature Phase Shift Keying)、PSK(位相シフトキーイング:Phase Shift Keying)及びAPSK(振幅及び位相シフトキーイング:Amplitudeand Phase Shift Keying)である。
【0005】
[1005] 振幅変調は無線搬送波を用いて情報を伝送するために使用される変調技術である。正弦搬送波は、送信前に音響波形により変調されるその振幅を有する。音響波形は正弦搬送波の振幅を修正する。振幅変調信号の使用に伴ういくつかの不利益は、振幅変調信号が、そのパワー使用の観点で効率的でないということであり、その帯域の使用の観点で効率的でなく、最高音響周波数の2倍に等しい帯域を必要とし、そして高レベルの雑音に脆弱であるということである。
【0006】
[1006] 周波数変調は、波の周波数を変更することにより情報を搬送波内で符号化する変調技術である。周波数変調は振幅変調を越えるいくつかの利点を有するが、いくつかの不利益は、周波数変調が複雑な復調器を必要するということ、すなわちいくつかの他の変調技術より劣悪なスペクトル効率を有するということを含む。
【0007】
[1007] QAMは、ソース信号を可変振幅及び位相を有する出力波形へ変調するマルチレベル振幅及び位相変調の形式のものである。QAMを採用するシステムはソース信号を可変振幅及び位相を有する出力波形へ変調する。送信されるメッセージは、2次元四象限信号空間へ、又はそれぞれが可能な伝送レベルを表す信号点又はフェーザを有するコンステレーションへマッピングされる。コンステレーション内の各信号点はシンボルと呼ばれる。QAMコンステレーションはI軸すなわち同相軸とQ軸すなわち直交軸とにより(すなわちIQ面により)定義される座標系を有する。シンボルはI成分とQ成分との両方により表され得る。QAMの使用の不利益の1つは、より高いデータ速度ではピーク対平均パワー比が高いということである。例えば、16QAMの典型的コンステレーション図では、4つの可能なパワーレベルが存在するということが分かる。変調の次数が増加すると、必要とされるパワーレベルの数は増加する。この結果のすべては、さらに高いピーク対平均パワー比が経験されるということである。
【0008】
[1008] QPSKは、チャネル上で送信される前に搬送周波数上へ変調される同期データストリームを有する。搬送波は45°、135°、225°又は315°などの4状態を有し得る。QPSKはまた、信号点がIQ面などの2つの直交座標軸を使用して記述され得る直交変調を採用する。従来のQPSKでは、複素平面内の2つの対角送信シンボル点間の遷移が零点を通過するという問題がある。これらの対角送信シンボル間の遷移では、振幅(所謂包絡線)のほとんど零までの低下が発生し得る。受信器側では、従来のQPSKは、必要な同期を複雑にするが、伝送経路、信号歪及び望ましくない相互変調における非線形性には有利に働く。
【0009】
[1009] PSKは、搬送波の位相を変調することによりメッセージを送信する別のデジタル変調処理である。PSKを使用する1つの不利益は、高次PSKコンステレーションが使用されると誤り率があまりにも高くなるということである。
【0010】
[1010] 名称APSKが示すように、この形式の変調は振幅及び位相シフトキーイングを使用する。この変調方式では、信号は搬送波の振幅と位相との両方を変調することにより運ばれる。振幅及び周波数シフトキーイングは、所与の変調次数の情報を送信するために必要とされるパワーレベルの数を低減することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
[1011] 一態様では、本開示は周期的波形変調の方法に関する。本方法は、入力デジタルデータを受信することと、変調正弦波を生成するために未変調正弦波の選択された位相角θ、θ、θ、θにおいて入力デジタルデータを符号化することとを含む。符号化処理は、変調正弦波内の第1、第2、第3、及び第4のデータノッチをそれぞれ定義するように、選択された位相角θ、θ、θ、θのいくつかにおいて未変調正弦波のパワーを入力デジタルデータのビット値に従って選択的に低減することを含む。次に、符号化アナログ波形は、デジタル/アナログ変換器を使用して変調正弦波のデジタル表現から生成される。データノッチは、第1のデータノッチにより範囲を定められた第1の位相角範囲にわたる変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第1の累積パワー差に対応する第1のエネルギーが、第3のデータノッチにより範囲を定められた第3の位相角範囲にわたる変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第3の累積パワー差に対応する第3のエネルギーにほぼ等しくなるように形成される。データノッチはまた、第2のデータノッチにより範囲を定められた第2の位相角範囲にわたる変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第2の累積パワー差に対応する第2のエネルギーが、第4のデータノッチにより範囲を定められた第4の位相角範囲にわたる変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第4の累積パワー差に対応する第4のエネルギーにほぼ等しくなるように形成される。
【0012】
[1012] 一実施形態では、位相角θは位相角θと180°との合計に等しく、位相角θは位相角θと180°との合計に等しい。別の実施形態では、位相角θは44.5°~45.5°であり、位相角θは134.5°~135.5°であり、位相角θは224.5°~225.5°であり、位相角θは314.5°~315.5°である。
【0013】
[1013] 一実施形態では、第1のデータノッチは当該ビット値のうちの第1のビット値を表し、第2のデータノッチは当該ビット値のうちの第2のビット値を表す。一実装形態では、第1のデータノッチの最小振幅は、位相角θにおける未変調正弦波の振幅の第1の百分率であり、第2のデータノッチの最小振幅は、位相角θにおける未変調正弦波の振幅の第2の百分率であり、第1の百分率は第2の百分率とは異なる。第1のデータノッチが第1の複数のビット値を表す場合、第1のデータノッチは、それぞれが第1の複数のビット値を表す第1の複数の遷移特徴を含み得る。この場合、第3のデータノッチは、第2の複数のビット値を表し得、それぞれが第2の複数のビット値を表す第2の複数の遷移特徴を含み得る。
【0014】
[1014] 搬送波スタック(carrier-stacked)実装形態では、未変調正弦波は第1の周波数のものであり、追加入力デジタルデータは、追加変調正弦波を生成するために第2の周波数の追加未変調正弦波の選択された位相角θ、θ、θ、θのうちのいくつかにおいて符号化される。符号化処理は、追加変調正弦波の追加第1、第2、第3、及び第4のデータノッチをそれぞれ定義するために、選択された位相角θ、θ、θ、θのいくつかにおいて追加未変調正弦波のパワーを入力デジタルデータのビット値に従って選択的に低減することを含む。符号化アナログ波形は、デジタル/アナログ変換器を使用して追加変調正弦波のデジタル表現から生成される。この場合、追加の第1のデータノッチにより範囲を定められた追加の第1の位相角範囲にわたる追加変調正弦波のパワーと追加未変調正弦波のパワーとの間の追加の第1の累積パワー差は、追加の第3のデータノッチにより範囲を定められた追加の第3の位相角範囲にわたる追加変調正弦波のパワーと追加未変調正弦波のパワーとの間の追加の第3の累積パワー差にほぼ等しい。同様に、追加の第2のデータノッチにより範囲を定められた追加の第2の位相角範囲にわたる追加変調正弦波のパワーと追加未変調正弦波のパワーとの間の追加の第2の累積パワー差は、追加の第4のデータノッチにより範囲を定められた追加の第4の位相角範囲にわたる追加変調正弦波のパワーと追加未変調正弦波のパワーとの間の追加の第4の累積パワー差にほぼ等しい。
【0015】
[1015] 一実施形態では、未変調正弦波のパワーは位相角θ及びθにおいてだけ入力デジタルデータのビット値に従って低減される。この場合、未変調正弦波のパワーは、入力デジタルデータと無関係な位相角θ及びθにおけるエネルギーバランスの目的のために低減され得る。
【0016】
[1016] 本開示はまた、搬送波スタックを使用する変調方式であって、入力デジタルデータを受信すること、及び複数の変調正弦波を生成するように複数の正弦波の選択された位相角において入力デジタルデータを符号化することに関与する変調方式に関する。本方法はさらに、複数の変調正弦波の複数のデジタル表現に対応する複数の符号化アナログ通信信号を含む出力アナログ波形を生成することを含む。この場合、隣接変調正弦波同士は15Hz未満の周波数だけ分離され、出力アナログ波形内に含まれるいかなる側波帯も、側波帯に関連する符号化アナログ通信信号のパワーより少なくとも50dB低いパワーのものである。
【0017】
[1017] 符号化処理は、位相角θ、θ、θ、θのいくつかにおいて未変調正弦波のパワーを入力デジタルデータのビット値に従って選択的に低減することにより第1の変調正弦波を生成し、これにより第1の変調正弦波内の第1、第2、第3、及び第4のデータノッチをそれぞれ定義するために未変調正弦波の位相角θ、θ、θ、θにおいて入力デジタルデータを符号化することを含み得る。この場合、第1のデータノッチにより範囲を定められた第1の位相角範囲にわたる第1の変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第1の累積パワー差は、第3のデータノッチにより範囲を定められた第3の位相角範囲にわたる第1の変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第3の累積パワー差にほぼ等しい。加えて、第2のデータノッチにより範囲を定められた第2の位相角範囲にわたる第1の変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第2の累積パワー差は、第4のデータノッチにより範囲を定められた第4の位相角範囲にわたる第1の変調正弦波のパワーと未変調正弦波のパワーとの間の第4の累積パワー差にほぼ等しい。
【0018】
[1018] 減算処理は、変調正弦波を表すデジタル値の零交差を検出することを含み得る。一実施形態では、本方法は、受信デジタルデータ系列内のプリアンブルを検出することを含む。
【0019】
[1019] 本開示はさらにデータ通信方法に向けられる。本方法は、入力デジタルデータを受信することと、複数のシンボル波形を使用して入力デジタルデータを符号化することとを含む。複数のシンボル波形のそれぞれは、合成符号化波形の一周期を占有し、入力デジタルデータの1つ又は複数のビットを表す。複数のシンボル波形の各シンボル波形は正楕円弧及び負楕円弧を有する。加えて、各シンボル波形は、(i)シンボル波形の正楕円弧から負楕円弧への零交差が複数のシンボル波形の波形毎に異なり、(ii)シンボル波形の正楕円弧のエネルギーがシンボル波形の負楕円弧のエネルギーにほぼ等しくなるように定義される。本方法はさらに、デジタル/アナログ変換器を使用して合成符号化波形のデジタル表現から符号化アナログ波形を生成することを含む。
【0020】
[1020] さらに別の態様では、本開示は複数のシンボル波形により符号化された情報を回復する方法に関し、ここでは、シンボル波形のそれぞれは、符号化された合成波形の一周期を占有し、ほぼ等しいエネルギーの正楕円弧と負楕円弧とを含む。本方法は、シンボル波形を使用して生成された符号化アナログ波形を受信することと、シンボル波形を表すデジタルシンボルサンプルを生成することと、を含む。本方法はさらに、負値を有するデジタル信号サンプルのいくつかから正値を有するデジタル信号サンプルのいくつかへの遷移に対応するデジタルシンボルサンプルの第1のサンプルを識別することを含む。本方法はまた、正値を有するデジタル信号サンプルの他のいくつかから負値を有するデジタル信号サンプルの他のいくつかへの遷移に対応するデジタル信号サンプルの第2のサンプルを判断することを含む。デジタルサンプルの第2のデジタルサンプルは、複数のシンボル波形のうちの1つのシンボル波形の正楕円弧から負楕円弧への遷移を定義する。次に、入力デジタルデータは少なくとも第1のサンプルと第2のサンプルとに基づき推定される。
【0021】
[1021] 本開示はまた、入力デジタルデータを格納するように構成された入力バッファと、複数のシンボル波形を使用して入力デジタルデータを符号化するための時間領域変調器とを含むシステムに関する。時間領域変調器は、複数のシンボル波形のそれぞれが合成符号化波形の一周期を占有するとともに入力デジタルデータの1つ又は複数のビットを表すように符号化を実現するように構成される。複数のシンボル波形の各シンボル波形は正楕円弧及び負楕円弧を有する。時間領域変調器はさらに、(i)シンボル波形の正楕円弧から負楕円弧への零交差が複数のシンボル波形の波形毎に異なり、(ii)シンボル波形の正楕円弧のエネルギーがシンボル波形の負楕円弧のエネルギーにほぼ等しくなるように各シンボル波形を定義するように構成される。本システムはまた、合成符号化波形のデジタル表現から符号化アナログ波形を生成するための1つ又は複数のデジタル/アナログ変換器を含む。
【0022】
[1022] 別の態様では、本開示は、入力デジタルデータを受信することと、入力デジタルデータを波形内で符号化することであって入力デジタルデータの1つ又は複数のビット値が波形の各周期内に符号化される、符号化することとに関与する方法に関する。本方法は、デジタル/アナログ変換器を使用して周期的波形のデジタル表現から周波数f及びパワーPの符号化アナログ波形を生成することを含む。本方法はさらに、符号化から生じる周波数f’の任意の信号がパワーPより少なくとも50dB低いパワーP’のものであるということを特徴とする。ここで、f’はfから25Hz超だけオフセットされる。
【0023】
[1023] 符号化演算は、正弦波の一周期内の選択された位相角において正弦波を変調することを含み得る。加えて、上記変調は、選択された位相角のいくつかのものにおける正弦波のパワーを入力デジタルデータの1つ又は複数のビット値に従って選択的に低減することを含み得る。上記変調はさらに、選択された位相角のうちの第1の位相角及び選択された位相角のうちの第2の位相角における正弦波のパワーを入力デジタルデータの1つ又は複数のビット値に従って選択的に低減することを含み得、第1の位相角と第2の位相角とは約180度だけ分離される。
【0024】
[1024] 本開示はさらに、入力デジタルデータを格納するための入力バッファと、入力デジタルデータを波形内で符号化するための準周期的変調器とを含むシステムに向けられる。準周期的変調器は、波形の各周期内の入力デジタルデータの1つ又は複数のビット値を符号化するように動作する。本システムはさらに、周期的波形のデジタル表現から周波数f及びパワーPの符号化アナログ波形を生成するための1つ又は複数のデジタル/アナログ変換器を含む。変調器は、符号化から生じる周波数f’の任意の信号がパワーPより少なくとも50dB低いパワーP’となるように符号化を実現するように構成される。ここで、f’はfから25Hz超だけオフセットされる。
【0025】
[1025] さらに別の態様では、本開示は、入力デジタルデータを受信することと、正弦波内で入力デジタルデータを符号化することとを含む方法に関する。符号化することは、正弦波の一周期内の選択された位相角において正弦波を変調し、これにより変調正弦波を生成することにより行われる。本方法はさらに、デジタル/アナログ変換器を使用して変調正弦波のデジタル表現から符号化アナログ波形を生成することを含む。変調することは、選択された位相角のうちの第1の位相角において第1のデータノッチを形成することを含み、第1のデータノッチは、第1の複数の遷移特徴を含み、第1の位相角を中心とする第1の位相角範囲を定め、第1の複数の遷移特徴は、入力デジタルデータ内に含まれる第1の複数のビット値を表す。
【0026】
[1026] 本開示はさらに、入力デジタルデータを格納するための入力バッファと、入力デジタルデータを正弦波内で符号化するための準周期的変調器とを含むシステムに向けられる。準周期的変調器は、正弦波の一周期内の選択された位相角において正弦波を変調することにより符号化を行い、これにより変調正弦波を生成するように構成される。本システムはまた、変調正弦波のデジタル表現から符号化アナログ波形を生成するための1つ又は複数のデジタル/アナログ変換器を含む。準周期的変調器は、選択された位相角のうちの第1の位相角において第1のデータノッチを形成するように構成され、第1のデータノッチは、第1の複数の遷移特徴を含み、第1の位相角を中心とする第1の位相角範囲を定め、第1の複数の遷移特徴は、入力デジタルデータ内に含まれる第1の複数のビット値を表す。
【0027】
[1027] 本開示の別の形式では、シンボルを受信するためのそしてシンボルを表す変調正弦波を生成するための送信器、変調正弦波を送信するための回路系、変調正弦波を受信するための受信器、及び変調正弦波をシンボルへ変換するための回路系を含むデータ通信システムが開示される。
【0028】
[1028] 本開示のさらに別の形式では、シンボルを受信するためのそしてシンボルを表す変調正弦波を生成するための送信器であって、変調正弦波は変調の第1の層及び変調の第2の層を有する、送信器、変調正弦波を送信するための回路系、変調正弦波を受信するための受信器、及び変調正弦波をシンボルへ変換するための回路系を含むデータ通信システムが開示される。
【0029】
[1029] 本開示のさらに別の形式では、データを受信するためのそしてデータを表す変調正弦波を生成するための送信器であって、変調正弦波はある振幅を有し、変調正弦波は第1の周波数において第1の変調を有し、第1の変調は第1の周波数における変調正弦波のパワーの低減である、送信器と;変調正弦波を送信するために回路系と;変調正弦波を受信するための受信器と;変調正弦波をシンボルへ変換するための回路系とを含むデータ通信システムが開示される。
【0030】
[1030] 本開示はさらに、変調正弦波を提供することによりチャネル上で大量のデータを送信することができる高スペクトル効率を有するデータ通信システムを提供する。
【0031】
[1031] 本開示はまた、周期当たり20ビットなどの2、4、又はそれ以上のシンボルを運ぶことができる各正弦波により準周期的情報を搬送する正弦波を提供するデータ通信システムへ向けられる。
【0032】
[1032] 本開示はさらに、運ばれる情報の量が搬送周波数と周期内の変調点(使用されるスペクトルではない)との関数であるデータ通信システムを提供する。
【0033】
[1033] 本開示はまた、単一又は複数層の振幅低減がスループットを増加するために使用され得るデータ通信システムへ向けられる。
【0034】
[1034] 本開示は大量の情報を有する変調正弦波が生成されるデータ通信システムに関する。
【0035】
[1035] 本開示はまた、信号を表す変調正弦波が生成され受信器へ送信されるデータ通信システムへ向けられる。ここでは、受信器は変調正弦波から信号を再構築することができる。
【0036】
[1036] 本開示のこれら及び他の利点は、添付図面と併せて以下の詳細説明を考察した後に明らかになる。
【0037】
図面の簡単な説明
[1037] 当業者は、添付図面が主として例示目的のためのものであってここで説明する本発明の主題の範囲を制限するように意図されていないということを理解することになる。添付図面は必ずしも原寸に比例しなく、場合によっては、本明細書で開示される本発明の主題の様々な態様は、様々な特徴の理解を容易にするために添付図面において誇張又は拡大されて示されることがある。また、商業的に実現可能な実施形態において有用又は必要である一般的であるが十分に理解された要素は、本発明のこれらの様々な実施形態の視点が余り妨げられないようにするためにしばしば描写されない。添付図面では、同様な参照符号は通常、同様な特徴(例えば、機能的に同様及び/又は構造的に同様な要素)を指す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】[1038]本開示に従って構築された送信器及び受信器を有する通信システムのブロック図である。
図2】[1039]図1に示す送信器の実施形態のブロック図である。
図3】[1040]図1に示す受信器の実施形態のブロック図である。
図4】[1041]図1に示す通信システムを用いて採用された変調正弦波の波形図である。
図5】[1042]図4に示す変調正弦波のノッチ角度及び振幅の表である。
図6】[1043]それぞれ複数のデータビットを符号化するための複数のステップ遷移を定義する例示的変調摂動を示す。
図7】[1043]それぞれ複数のデータビットを符号化するための複数のステップ遷移を定義する例示的変調摂動を示す。
図8】[1043]それぞれ複数のデータビットを符号化するための複数のステップ遷移を定義する例示的変調摂動を示す。
図9】[1043]それぞれ複数のデータビットを符号化するための複数のステップ遷移を定義する例示的変調摂動を示す。
図10】[1044]文字Hを表す変調正弦波の波形図である。
図11】[1045]単語HELLOを表す変調正弦波の波形図である。
図12A】[1046]各変調摂動が単一データビットを表すケースへの独創的エネルギーバランス原理の適用を示す。
図12B】[1046]各変調摂動が単一データビットを表すケースへの独創的エネルギーバランス原理の適用を示す。
図13】[1047]各変調摂動が5つのデータビットを表すエネルギーバランス変調正弦波のIQ図である。
図14】[1048]本開示によるエネルギーバランス符号器/変調器のブロック図である。
図15】[1049]図15の符号器/変調器により生成される変調正弦波を復調及び復号するように構成された受信器のブロック図である。
図16】[1050]フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)を使用した実装形態に好適なエネルギーバランス送信器の実施形態の機能ブロック図である。
図17】[1051]一実施形態によるエネルギーバランス送信器により行われる符号化及び他の演算の例示的シーケンスを表すフローチャートである。
図18】[1052]本開示による好適なエネルギーバランス送信器の別の実施形態の機能ブロック図である。
図19】[1053]一実施形態によるエネルギーバランス送信器により行われる符号化及び他の演算の例示的シーケンスを表すフローチャートである。
図20】[1054]一実施形態によるマルチキャリアエネルギーバランス送信器のブロック図表示である。
図21】[1055]本開示に従って構成されたエネルギーバランス送信器により送信された符号化正弦波を受信及び復調するように構成された受信器の機能ブロック図である。
図22】[1056]選択された位相角においてマルチビット特徴により変調された正弦波を生成及び送信するように構成されたエネルギーバランス送信器の実施形態の機能ブロック図である。
図23】[1057]選択された位相角においてマルチビット特徴により変調された正弦波を生成及び送信するように構成されたエネルギーバランス送信器の別の実施形態の機能ブロック図である。
図24】[1058]未変調正弦波及びマルチビットデータノッチにより境界をつけられた領域を示す。
図25】[1059]45°、135°、225°及び315°においてデータノッチにより変調された符号化正弦波を提供された場合のスペクトラムアナライザにより生成されたスクリーンショットである。
図26A】[1060]本開示による様々な代替データ符号化方式を示す。
図26B】[1060]本開示による様々な代替データ符号化方式を示す。
図26C】[1060]本開示による様々な代替データ符号化方式を示す。
図27A】[1061]代替形状のデータノッチを使用することによりエネルギーバランス様式で符号化された正弦波を示す。
図27B】[1061]代替形状のデータノッチを使用することによりエネルギーバランス様式で符号化された正弦波を示す。
図28】[1062]本開示によるエネルギーバランス様式で符号化された楕円波形を示す。
図29】[1063]図28に示すタイプの零交差位相変調(zero-crossing-phase-modulated)楕円波形を生成及び送信するように構成されたエネルギーバランス送信器の実施形態の機能ブロック図である。
図30】[1064]零交差位相変調楕円波形を受信及び復調するように構成された受信器の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
[1065] 次に、同様な数字が同様なアイテムを指す添付図面を参照すると、数字10は本開示に従って構築された通信システムを識別する。ここで図1を参照すると、データ送信又は通信システム10は、シンボル14を受信するためのそしてシンボル14を表す変調正弦波16を生成するための送信器12と、変調正弦波16を通信チャネル20上で送信するための回路系18とを含むように示される。システム10はまた、変調正弦波16を受信するための受信器22と、変調正弦波をシンボル14へ変換するための回路系24とを含む。通信チャネル20は、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、銅線などの電話線又は電話会社(通信会社)線、無線周波数などによる野外又は宇宙空間又は衛星などの媒体により提供され得る。チャネル20は1つ又は多くのメッセージを搬送し得る。システム10は、シンボル14などの入力データを有し、送信器12内で入力データのある形式の処理を行い、次に、処理されたデータを信号16として通信チャネル20上で送信することになる。受信器22は、信号16を受信することができ、次に、入力データ又はシンボル14をある他のデバイス(単に一例としてモニタ、コンピュータ、音響部品、又はスピーカなど)へ出力するために、入力データ又はシンボル14を回復するための逆演算又は処理を行うことができる。
【0040】
[1066] ここで図2を参照すると、送信器12のブロック図が描写される。送信器12は、シンボル14、又は音楽、映像、テキストなどの他の入力データ、又はそれらの組み合せを受信するためのUSB入力32を有するマイクロコントローラ30を有する。シンボル14は結線34上でUSB入力32からマイクロコントローラ30へ提供される。マイクロコントローラ30はまた、16MBメモリなどのメモリ36、8MHz入力38、及びデジタル/アナログ変換器(DAC)出力40を含み得る。マイクロコントローラ30は、正弦波又は他の波形と、正弦波表とを生成し、シンボル14を読み込み、シンボル14を分解し、そしてシンボル14を表す変調正弦波16を生成するために、変調摂動又はノッチを正弦波内へ挿入し得る。正弦波は、45°、135°、225°及び315°の位相角において挿入される変調摂動を有し得る。本明細書においてさらに十分に説明されるように、挿入される変調摂動は情報のビットを表し得る。マイクロコントローラ30は信号16をDAC出力40へ提供する。DAC出力40は信号16を送信し得る他の回路系(図示せず)へ接続され得る。マイクロコントローラ30の例は、マイクロコントローラのSTM32F756ファミリーとして知られたSTMicroelectronics(登録商標)により製造されるデバイスであり、又は他の同様なマイクロコントローラが使用され得る。
【0041】
[1067] 図3は本開示に従って構築された受信器22のブロック図を示す。受信器22は、送信器12により送信される信号16を受信するためのアナログ/デジタル変換器(ADC)入力44を有するマイクロコントローラ42を含む。入力44からの信号16は結線46上でマイクロコントローラ30へ提供される。マイクロコントローラ42はまた、16MBメモリなどのメモリ48、8MHz入力50、及びRS232又はUSB出力52を含み得る。出力52はスピーカなどの別のデバイス(図示せず)へ提供される。マイクロコントローラ42は正弦波及び正弦波表を生成することができる。マイクロコントローラ42はまた、ADC入力44から信号16を読み込み、シンボル14を再組み当てし、他のデバイス(図示せず)による使用のためにシンボルを出力52へ送信する。再び、マイクロコントローラ30の例はマイクロコントローラのSTM32F756ファミリーとして知られたSTMicroelectronicsにより製造されたデバイスであり、又は他の同様なマイクロコントローラが使用され得る。
【0042】
[1068] 変調は一般的に、搬送波の振幅、周波数又は位相の変動であると理解される。以下では、システム10により使用される新形式の変調を開示する。この新形式の変調は、波の各周期中の複数の位相角において正弦波などの波内に擾乱、摂動又はノッチを挿入する。挿入されるノッチは、波周波数の倍数である周波数を有する。この形式の変調は周期的正弦波変調(periodic sine wave modulation)と称され得る。同じタイプの変調摂動が各波周期中の同じ位相角において使用される実施形態では、変調は準周期的又は周期内正弦波変調(sub-periodic or intra-periodic sine wave modulation)と呼ばれ得る。
【0043】
[1069] 図4は、ノッチの形式の一組の4つの変調摂動を有する変調正弦波100の一周期の例を示す。示されるように、変調正弦波100は、正弦波周波数の倍数である周波数において(例えば正弦波周期当たり4回)擾乱される正弦波に対応する。この特別のケースでは、正弦波は、一組の4変調摂動を生成するために45°、135°、225°及び315°の位相角において4回擾乱される。図4から理解され得るように、正弦波100は各正弦波周期内の複数の位相角において情報を搬送し、これにより2、4、又はそれを越えるシンボルが各周期中に送信されることを可能にする。各周期中に運ばれる情報の量は、搬送周波数と一周期内の変調点(使用されるスペクトルではない)との関数である。この意味で、データ転送速度は、例えばヘルツ当たりのビットの観点よりむしろ正弦波周期当たりのビットの観点で特徴付けられ得る。
【0044】
[1070] 一実施形態では、変調正弦波100のデジタル表現は、ソフトウェア無線(SDR:software-defined radio)を使用することにより一連の電圧点として直接生成される。次に、この一連の電圧点は、変調正弦波100の対応アナログ版の生成のためにデジタル/アナログ変換器へ提供され得る。側波帯の生成を最小化するために変調正弦波は同じ周波数の未変調正弦波のトレース又は境界を越えるべきでないということが分かった。すなわち、変調正弦波は理想的には、未変調正弦波と同じ周波数及び位相のものであるべきであり、そしてすべての位相角において未変調正弦波のものより小さい振幅を有すべきである。別の言い方をすると、変調正弦波は、いくつか又はすべての正弦波周期中に一組の変調摂動を生成するように45°、135°、225°、315°の位相角において又はその近傍において低減されたその出力を有する未変調正弦波を生成することにより、生成され得る。変調摂動を生成することに伴うパワーの低減は理想的には、位相偏位が引き起こされるであろう点を越えるべきでない。側波帯の生成は(i)45°における変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーが、225°における変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーと整合する場合、及び(ii)135°における変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーが、315°における変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーと整合する場合に、最も好都合に最小化されるということがさらに分かった。以下に論述されるように、単一層又は複数層のパワー低減がスループットを増加するために使用され得る。
【0045】
[1071] ここで図5を参照すると、図4に示す変調正弦波100上のノッチの位置を示す表112が提示される。表112の精査から、ノッチは多値化され得るということに注意すべきである。特に、45°に存在するノッチ104のパワーは正弦波パワーより30%小さく、1の値を有する。135°に存在するノッチ106のパワーは正弦波パワーより15%小さく、0の値を有する。225°に存在するノッチ108のパワーは正弦波パワーより15%小さく、0の値を有する。最後に、315°に存在するノッチ110のパワーは正弦波パワーのより30%小さく、1の値を有する。ノッチの数は変わり得るが、図4の実施形態では、使用されるノッチの数は4である。図4及び図5から理解され得るように、変調正弦波100は波当たり少なくとも4つのデータビットを提供することができる。これらの4つのノッチは4つのデータビットを表し得、例えば400MHzの波周波数が1.6ギガビットデータストリームを提供するようになる。
【0046】
[1072] 図6は45°位相角近傍のデータを符号化するために利用され得る変調摂動120の別の形式を示す。示されるように、変調摂動120は複数の遷移をステップ126、128、130及び132の形式で定義する。図6の例では、これらの複数の遷移126、128、130及び132は変調摂動120の一部分として送信され得る1111の値を提示する。
【0047】
[1073] ここで図7を参照すると、例えば135°の位相角近傍のデータを符号化するために利用され得る別の例示的変調摂動140が示される。示されるように、変調摂動140は、変調摂動140が送信される場合に運ばれる1010の値を提示するために複数の遷移をステップ146、148、150及び152の形式で定義する。
【0048】
[1074] 図8は例えば225°の位相角近傍のデータを符号化するために利用され得る例示的変調摂動160を描写する。示されるように、変調摂動160は複数の遷移をステップ166、168、170及び172の形式で定義する。一実施形態では、これらの遷移166、168、170及び172は変調摂動160が送信される場合に運ばれる1111の値を表す。
【0049】
[1075] ここで図9に移ると、例えば315°の位相角近傍のデータを符号化するために利用され得る例示的変調摂動180の図が提供される。変調摂動180は複数の遷移をステップ186、188、190及び192の形式で定義する。一実施形態では、これらの遷移186、188、190及び192は1011の値を表す。
【0050】
[1076] 理解され得るように、正弦波周期当たり比較的多くのデータビットが、正弦波の振幅を変調するために複数の遷移を有する変調摂動を使用することにより、システム10により送信され得る。上に論述したように、変調摂動120、140、160及び180のそれぞれは単一ビットのデータよりむしろ複数ビットのデータを表し得る。
【0051】
[1077] 図6~9の実施形態では、側波帯の生成は(i)45°における複数ビット変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーが、225°における複数ビット変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーと整合する場合、及び(ii)135°における複数ビット変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーが、315°における複数ビット変調摂動上で発生する累積パワー低減に対応するエネルギーと整合する場合に、最も好都合に最小化されるということが分かった。この意味で、パワー低減は、未変調正弦波のパワーが、所与の位相角における変調摂動を定義するために当該位相角において低減される程度を指す。変調摂動全体(例えば45°における変調摂動の44.5°~45.5°)にわたる累積パワー低減は、変調摂動により範囲を定められた位相角におけるパワー低減の時間積分に対応する。
【0052】
[1078] 次に図10を特に参照すると、文字Hがシステム10による送信のために変調正弦波200へ符号化されて示されている、変調正弦波200の例が示される。単に一例として、文字Hは以下のやり方で送信され得る。ASCII(情報交換標準コード:American Standard Code for Information Interchange)コードにおける文字Hは01001000と定義される。理解され得るように、ASCIIコードでは、文字毎に8ビットが存在するので、単一ビット変調摂動(図4図5)が利用される場合に文字Hを送信するために文字毎に2つの正弦波周期(正弦波周期毎に4ビット)を必要とするだろう。変調正弦波200は、第1の波又は周期204を有する正弦波202で構成される。正弦波202は、45°の第1の角度206において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、正弦波202のパワーが15%だけ低減される。図10の実施形態では、未変調正弦波に対するこのパワー低減の程度は、零すなわち0ビットを表す。正弦波202はまた、135°の第2の角度208において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、正弦波202のパワーが30%だけ低減される。図10の実施形態では、未変調正弦波に対するこのパワー低減の程度は、1ビットを表す。次に、第1の周期204中、正弦波202は、225°の第3の角度210において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、正弦波202のパワーが0ビットを表すために15%だけ低減される。正弦波202は、315°の第4の角度212において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、正弦波202のパワーが0ビットを表すために15%だけ低減される。15%及び30%のパワー低減は単に例示的であり、他の実施形態ではパワー低減の他の組み合わせが利用され得る。
【0053】
[1079] 図10に示すように、正弦波202は第2の波周期214を有する。第2の波周期214において、正弦波202は、45°の第1の角度216において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、正弦波202のパワーが30%だけ低減される。再び、この変調摂動が1ビットを表す。正弦波202は、135°の第2の角度218において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、正弦波202のパワーが0ビットに対応するために15%だけ低減される。次に、第2の周期214中、正弦波202は、225°の第3の角度220において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、変調摂動が未変調正弦波に対し15%だけ波202のパワーを低減することにより生成される。これは0ビットが送信されることの象徴である。最後に、正弦波202は、315°の第4の角度222において擾乱される又はノッチが付けられ、そこでは、正弦波202のパワーが未変調正弦波に対し15%だけ低減される。図10の実施形態では、ASCIIコードの文字Hを送信するために2つの波又は周期204及び214(波又は周期毎に4ビット)が使用された。
【0054】
[1080] 図11は、単語HELLOがシステム10による送信のために変調正弦波250へ符号化されて示されている、変調正弦波250の例を示す。単語HELLOは以下のやり方で送信され得る。ASCIIコードを用いて、文字Hは01001000として定義され、文字Eは01100101として定義され、文字Lは01101100として定義され、文字Oは01101111として定義される。単語HELLOを送信するために、単一ビット変調摂動を使用する場合、10個の波又は正弦波周期だけが必要とされるだろう(図4図5)。マルチビット変調摂動(図6~9)を利用する実施形態では、単語HELLOを送信するためにさらに少ない正弦波周期が必要とされるだろう。
【0055】
[1081] 理解され得るように、ASCIIコードでは文字当たり8ビットが存在するので、単一ビット変調摂動を使用して変調された正弦波を用いて単語HELLOを送信するためには、文字当たり2つの正弦波周期(周期当たり4ビット)を必要とするだろう。図11に現れる単語HELLOがシステム10により送信されるべきビットパターンは、次のように提示される:0100100001100101011011000110110001101111。理解され得るように、変調正弦波250は、10回の周期252、254、256、258、260、262、264、266、268及び270で構成される。第1の周期252及び第2の周期254において、文字Hが提示される。周期252及び254は、図10に示す周期204及び214に対応する。周期256及び258は文字Eを表す。周期260及び262は第1の文字Lを表し、周期264及び266は第2の文字Lを表す。最後に、周期268及び270は文字Oを表す。単に一例として、周期268及び270では、ビットパターン01101111が送信されている。特に、周期268は、正弦波250のパワーが15%だけ低減される45°の角度における第1のノッチ272、正弦波250のパワーが30%だけ低減される135°の角度における第2のノッチ274、正弦波250のパワーが30%だけ低減される225°の角度における第3のノッチ276、及び正弦波250のパワーが15%だけ低減される315°の角度における第4のノッチ278を有する。周期270は、正弦波250のパワーが30%だけ低減される45°の角度における第1のノッチ280、正弦波250のパワーが30%だけ低減される135°の角度における第2のノッチ282、正弦波250のパワーが30%だけ低減される225°の角度における第3のノッチ284、及び正弦波250のパワーが30%だけ低減される315°の角度における第4のノッチ286を有する。波250は、パリティービット又はエラー検出符号が波250内へ取り込まれる別の周期288を有し得る。
【0056】
[1082] 図10図11の実施形態では、データは、各正弦波周期中に45°、135°、225°及び315°の位相角においてノッチの形式で変調摂動により符号化されるが、対向IQ象限内のノッチに関連するエネルギーがバランスされたままであるという条件で他のノッチ順列が可能である。例えば、いくつかの正弦波周期中、ノッチは存在しないかもしれない。他の周期中、ノッチは、例えば45°と225°の位相角においてだけ存在し得る。代替的に、ノッチは135°と315°の位相角においてだけ存在し得る。さらに、「0」のデータ値と「1」のデータ値を表すノッチに対応するパワー低減がそれぞれ15%と30%だけである必要はない。他の実施形態では、パワー低減の他の組み合わせが「0」と「1」の値のデータを表すノッチを生成するために利用され得る。
【0057】
[1083] 本明細書において説明される変調正弦波は、高調波及び側波帯の生成を実質的に回避するようなやり方でデジタル的に生成され得るということが分かった。これは、正弦波の従来の変調が高調波及び側波帯の生成を誘起する従来技術からの著しい脱却であると考えられる。このような従来技術は通常、正弦搬送波又は側波帯のいずれかが抑制されるか又はそうでなければ濾過されることを必要とする。
【0058】
[1084] 対照的に、本明細書において説明されるエネルギーバランス原理に準じて生成された変調正弦波により占有される帯域は、無視できるぐらい小さくなり、使用される機器の精度(例えばこのような機器の位相ノイズ及びジッタ)だけに依存し得る。すなわち、開示された周期的変調技術は、結果として生じる変調正弦波の帯域が適用エネルギーバランス変調とは本質的に無関係となるように実施され得るということが分かった。別の言い方をすると、理想条件下では、エネルギーバランス変調は、結果として生じる変調正弦波の帯域に寄与するようには思われない。結果として、隣接する変調正弦波同士が極めて近接し得る(例えば、10Hz~15Hzの間隔で、又はさらに密に)ので、スペクトルの非常に効率的な使用が実現され得る。
【0059】
[1085] この極狭帯域信号の使用はまた、この狭帯域内にほとんど雑音は存在しなく且つ周期当たり(360のうちの)4つの位相角位置だけが復調のために重要であるので、極めて高い感度を可能にする。したがって、感度の改善は、極めて狭いチャネルと時間領域における信号の限定的使用との両方により引き起こされる。一般的に、受信器の感度は、A/D変換器のサンプリング率に比例しているということが分かっている。
【0060】
[1086] 上に指摘したように、準周期的正弦波変調を実施する場合に側波帯及び高調波の生成を実質的に回避するために、I/Q図において互いに対向する変調点における出力パワーの低減の積分はほぼ等しいということが要求されるということが分かった。
【0061】
[1087] 図12A及び12Bは、各変調摂動が単一データビットを表す(正弦波周期毎4つのデータビットが符号化される)ケースに対してこのエネルギーバランス原理が適用されるやり方を示す。これは、30%低減(第1のデータ値、例えば「1」を表す)の出力パワーの時間(又は角度)を、15%パワー低減(第2のデータ値、例えば「0」を表す)の時間(又は角度)の約1/2へ低減することにより実現される。純粋な発振器正弦波がパワー低減変調点に入る端と変調点後に入る端とは、理想的には互いに滑らかにされるべきである。
【0062】
[1088] 図12A及び12Bの実施形態では、0、0、0及び1のデータ値は、位相角45°、135°、225°及び315°において生成される変調摂動によりそれぞれ符号化される。この実施形態では、45°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分は、225°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。同様に、135°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分は、315°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。
【0063】
[1089] 図12Aでは、第1の変調摂動(1)は、45°の位相角θにおけるものであり、44.5°と45.5°(原寸に比例して示されない)との間の約1°の角度Δθの範囲を定める。第2の変調摂動(2)は、315°の位相角θにおけるものであり、315.5°と314.5°との間の約0.5°の角度Δθの範囲を定める。第3の変調摂動(3)は、225°の位相角θにおけるものであり、224.5°と225.5°との間の約1°の角度Δθの範囲を定める。第4の変調摂動(4)は、135°の位相角θにおけるものであり、134.5°と135.5°との間の約1°の角度Δθの範囲を定める。45°と225°における変調摂動に関連するエネルギーのエネルギーバランス、及び135°と315°における変調摂動に関連するエネルギーのエネルギーバランスを実現するために、変調摂動への及びそれからの遷移を定義する変調正弦波の値は修正され得る。その代わりに又はそれに加えて、変調摂動により範囲を定められる角度はこのようなエネルギーバランスを実現するために修正され得る。
【0064】
[1090] いくつかの実施形態では、データは、図12において特定された4つの位相角のそれぞれにおいて(すなわち45°、135°、225°及び315°において)符号化されなくてもよい。しかし、エネルギーバランスを保持するために、エネルギーバランスパワー低減は、変調摂動がデータを符号化するために使用される位相角に対向するIQ図内の各位相角において発生させられる。例えば、変調摂動が、45°の位相角近傍で1つ又は複数のデータ値を符号化するために使用されれば、45°における変調摂動に関連するエネルギーに等価なエネルギー低減は、225°の位相角近傍でエネルギーバランス摂動により正弦波を擾乱することにより発生させられる。一実施形態では、このエネルギーバランスは、225°における同一エネルギーバランス摂動により、45°において使用される変調摂動を単純に複製することにより実現される。
【0065】
[1091] 次に、各変調摂動が5つのデータビット(正弦波周期毎に20個のデータビット)を表すエネルギーバランス変調正弦波のIQ図である図13へ注意を向ける。図13の実施形態では、各変調摂動は5ビットの入力データストリームを表すが、他の実施形態では、各変調摂動は、より多くの又は少ない数のデータビットを表すためにより多くの又は少ない数の遷移をそれぞれ含み得る。図13の実施形態では、各変調摂動により生成されるノッチ内の最小パワーレベルは、変調摂動が無い場合に同じ位相角において存在するだろう未変調正弦波のパワーより30%小さい。2つの所定値間(例えば15%と30%との間)のパワーレベルの低減を変更することによりデータビットを符号化するのではなく、図13の実施形態では、データは、各変調摂動により定義される急峻度及び/又は遷移の数に基づき符号化される。
【0066】
[1092] 図13の変調正弦波内のエネルギーバランスを保持するために、IQ図において180度離れた変調摂動が、このような変調摂動によりそれぞれ定義されたノッチの対向する側のステップ遷移を定義するように構築される。例えば、図13における位相角「1」において、30%(他のパーセントが可能である)の急峻なパワー低減がノッチの初期部分(ノッチの左側)により定義され、入力データビットを符号化するステップ遷移は、元の100%パワー点への戻り経路上(ノッチの右側)に定義される。エネルギーバランスを維持するために、この処理は位相角「3」において逆にされる。この位相角において、入力データビットを符号化するステップ遷移が最初に(位相角「3」における変調摂動により定義されるノッチの左側で)行われ、100%パワーへの急峻且つほぼ線形な戻りはその後に(ノッチの右側で)行われる。同じ処理は位相角「2」、「4」における対の変調摂動に対しそれぞれ適用される。
【0067】
[1093] 図13に示す各変調摂動は約1°の位相角の範囲を定めるが、他の実施形態では及び/又はエネルギーバランスを実現するためには、各変調摂動は1°以上の位相角の範囲を定め得る。図13では、第1の変調摂動(1)は、45°の位相角θにおけるものであり、44.5°と45.5°間の約1°の角度Δθの範囲を定める(原寸に比例して示されない)。第2の変調摂動(2)は315°の位相角θにおけるものであり、315.5°と314.5°との間の約1°の角度Δθの範囲を定める。第3の変調摂動(3)は225°の位相角θにおけるものであり、224.5°と225.5°との間の約1°の角度Δθの範囲を定める。第4の変調摂動(4)は135°の位相角θにおけるものであり、134.5°と135.5°との間の約1°の角度Δθの範囲を定める。45°と225°における変調摂動に関連するエネルギーのエネルギーバランス及び135°と315°における変調摂動に関連するエネルギーのエネルギーバランスを実現するために、変調摂動への及びそれからの遷移を定義する変調正弦波の値は修正され得る。その代わりに又はそれに加えて、変調摂動により範囲を定められる角度はこのようなエネルギーバランスを実現するために修正され得る。
【0068】
[1094] 図13の実施形態では、第1の変調摂動(1)により範囲を定められる1°の位相角にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分は、第3の変調摂動(3)により範囲を定められる1°の位相角にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。同様に、第2の変調摂動(2)により範囲を定められる1°の位相角にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分は、第4の変調摂動(4)により範囲を定められる1°の位相角にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。
【0069】
[1095] 一実施形態では、第1の変調摂動(1)により範囲を定められる各0.1°にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分は、第3の変調摂動(3)により範囲を定められるそれぞれの対応する0.1°にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。同様に、この実施形態では、第2の変調摂動(2)により範囲を定められる各0.1°にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分は、第4の変調摂動(4)により範囲を定められるそれぞれの対応する0.1°にわたる変調正弦波の出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。
【0070】
[1096] 図13は特定数のステップ遷移を有する変調摂動を描写するが、他の実施形態では、様々な数又は形状の遷移又は他の漸次的変化を有する変調摂動が、エネルギーバランスが本明細書の教示に従ってこのような摂動間で維持されるという条件のもとで利用され得る。例えば、図13の実施形態において、IQ図の対向象限内の変調摂動はそれぞれ、整合する数の遷移を含むが、このような遷移は、摂動により定義されるノッチの対向する側に配置される。他の実施形態では、IQ図の対向象限内の変調摂動は異なる数の遷移を含み得る。さらに、図13では、変調摂動はそれぞれのノッチの昇りスロープ又は下りスロープのいずれかのスロープの上に遷移を含むが、他の実施形態では、遷移又は他の漸次的変化は、1つ又は複数のノッチの昇りスロープと下りスロープの両方のスロープの上に含まれ得る。
【0071】
[1097] 図4及び図10~13への参照により理解され得るように、各変調正弦波の比較的小さい部分だけが、情報を実際に符号化するために使用される。具体的には、変調摂動を定義する各変調正弦波の一部分だけが、データを表す又は符号化することに関与する。したがって、各変調正弦波の残りは、この冗長正弦波部分自体がデータを符号化する又は表すように機能しないので、冗長であり且つあまり重要でないと考えられ得る。
【0072】
[1098] 変調摂動の外側の各変調正弦波の一部分の冗長性質は、スペクトル効率を増加するために活用され得るということが認識された。例えば、各変調正弦波の小部分だけがデータを表すために使用されるので、複数の変調正弦波は、それぞれの変調摂動が重ならないように位相が適切に分離されれば、同じ周波数を占有し得るということが分かった。
【0073】
[1099] 次に、本開示によるエネルギーバランス送信器1400のブロック図である図14に注意が向けられる。示されるように、送信器1400は、データ最適化及び順方向誤り訂正(FEC:forward error correction)モジュール1410、エネルギーバランス符号器1420、準周期的時間領域変調器1430、及びデジタル/アナログ変換器1440を含む。データ最適化及びFECモジュール1410は、例えば入力データが提供されるBCH符号化ユニット1416とAES128モジュール1414とを含み得る。BCHブロック1416は、データ内の「1」値の数をデータ内の「0」値の数にほぼ等しくさせるように入力データを前処理することにより、受信器における検出を容易にする。AES128のユニット1414はまた、一連の同じデータ値のラン長を制限するようにBCH符号化入力データを処理することにより、受信器における検出を支援する。
【0074】
[1100] AES128プロトコルに従って、BCH符号化ユニット1416からの16ビットのBCH符号化データは、AES128モジュール1414へ提供され、暗号鍵に従って複数ラウンドにわたって処理される。AES128モジュール1414はデータを暗号化するように意図されていないが、暗号化のために使用され得る。次に、AES128モジュール1414により生成された暗号出力がエネルギーバランス符号器1420へ提供される。
【0075】
[1101] 送信器1400の動作中、入力データバッファはAES128モジュール1414へ転送され、既知のキー(例えば0x47)に従って処理される。再び、一実施形態では、AES128モジュール1414の主タスクは、一連の0ビットが互いに追随するのを防止するために、ビットの一様分布を実現することである。この時点で、AES128モジュール1414により生成されたデータはエネルギーバランス符号器1420へ転送される。
【0076】
[1102] 本明細書において論述されたように、エネルギーバランス符号器1420は、ほぼ等しいエネルギーが、送信器1400により生成された変調正弦波を表すIQ図の対向する象限内の変調摂動に関連付けられるように、選択された正弦波位相角において変調摂動を生成、計算又は定義する。再び、このようなエネルギーバランスは、送信器1400により行われる正弦波変調に関連した形成を本質的に禁止するということが分かった。結果として、変調正弦波同士は、従来の変調方式を使用することにより可能なものよりさらに近接することが可能となり、これにより、劇的に高いスペクトル効率が実現されることを可能にする。
【0077】
[1103] エネルギーバランス符号器1420は各行と各列に同数のもの(行及び列重み付け)を含む制御行列1424を含む;すなわち、制御行列1424は正則行列である。行重み付けは、列重み付けの大きさに対応する必要はない。
【0078】
[1104] 一実施形態では、エネルギーバランス符号器1420は、位相角45°、135°、225°及び315°それぞれにおいて変調摂動を生成することにより、データ最適化及びFECモジュール1410により提供される一連のデータを符号化するように構成される。この実施形態では、45°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分は、225°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。同様に、135°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分は、315°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。
【0079】
[1105] 次に注意は、例えば送信器1400により生成される変調正弦波を復調及び復号するように構成された受信器1500のブロック図である図15に向けられる。示されるように、受信器1500は、受信された変調正弦波信号のマルチビット表現を生成するように動作するアナログ/デジタル変換器(ADC)1510を含む。受信信号のデジタルサンプルが零交差検出器1520の入力バッファ1518へ提供される。入力バッファ1518内に格納されたサンプル内の零交差を検出すると、零交差検出器1520は、零交差検出信号1524を生成する。零交差検出信号1524に応答して、正弦波減算回路(sine wave subtraction circuit)1530が正弦波減算処理を開始し、これに準じて、受信された変調正弦波信号と位相が合わされた未変調正弦波のデジタル表現が、変調正弦波信号のデジタルサンプルから減算される。次にこの減算処理から生じる一連のデジタル値は、送信器1400へ提供される入力データストリーム内に挿入されるプリアンブルを検出するように構成されたプリアンブル検出器1542を取り込むリングバッファ1540内に格納される。プリアンブルが検出されると、受信されたデータストリームは、AESモジュール1414及びBCH符号化モジュール1416により行われる動作の逆を行うように構成された復号器1550へ提供される。次に、周期的時間領域復調器1560が、復号器1550により生成されるデータストリーム内に存在する変調摂動を識別し、送信器1400へ提供される入力データの推定値に対応する回復されたデータストリームを生成する。
【0080】
[1106] 次に、注意は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用する実装形態に好適なエネルギーバランス送信器1600の実施形態の機能ブロック図である図16に向けられる。示されるように、送信器1600は、デジタル入力データ1608を格納するための入力バッファ1604、AES暗号化モジュール1610の形式のデータ最適化ユニット、LDPC符号器1620、及びシリアル・ツー・フレーム・データ変換器1630を含む。
【0081】
[1107] 準周期的時間領域変調器1640は、正弦波をエネルギーバランス様式で摂動することにより、データ変換器1630により提供されたデータフレームを符号化する。示されるように、準周期的時間領域変調器1640は、パターンマッチングユニット1644、正弦波参照表1648、時間生成器1652及び波形バッファ1656を含む。変調器1640により生成される擾乱及びエネルギーバランス波形は、波形バッファ1656内に格納され、デジタル/アナログ変換器1664によりアナログ信号へ変換される前にフィルタ1660により任意選択的に予め歪ませられる又は濾過される。その結果の符号化アナログ信号は、例えば伝送線又はアンテナを使用して送信される。
【0082】
[1108] 図17は、一実施形態によるエネルギーバランス送信器1600により行われる符号化及び他の演算の例示的シーケンスを表すフローチャート1700である。入力バッファ1604内に格納されると(段階1710)、入力データはAES暗号化モジュール1610へ提供される。一実施形態では、AES暗号化モジュール1610は、一連の同じ論理値のラン長を制限するために入力データを処理することにより、受信器におけるデータの検出を支援する(段階1712)。AES暗号化モジュール1610により生成されたその結果の出力はLDPC符号器1620へ提供され、LDPC符号器1620は、低密度パリティチェック(LDPC:low-density parity-check)誤り訂正符号化演算を行う(段階1716)。次に、LDPC符号器1620により生成されたシリアルデータストリームは、シリアル・ツー・フレーム・データ変換器1630により一連の4ビットデータフレームへ変換される(段階1720)。
【0083】
[1109] 変換器1630により生成された4ビットデータフレームは、パターンマッチングユニット1644へ提供される。エネルギーバランス送信器1600の動作中、パターンマッチングユニット1644は、パターンマッチングユニット内に現在登録されている4ビットデータフレームに対応する正弦波参照表1648内に格納された16個のノッチ正弦波(notched sine wave)のうちの1つを識別する(段階1724)。一実施形態では、正弦波参照表1648は、パターンマッチングユニット1644へ提供される4ビットデータフレームの16個の可能な値のそれぞれに対応するノッチパターンを有する16個のノッチ正弦波のそれぞれの単一周期に対応するデータ値(例えば3600個のデータ値)を格納する。次に、各逐次的ノッチ正弦波を定義するデータ値が正弦波参照表1648から読み出され(段階1728)、そして波形バッファ1656内に格納される(段階1732)。
【0084】
[1110] 一実施形態では、正弦波参照表1648内に格納された16個のノッチ正弦波のそれぞれは、ほぼ等しいエネルギーがIQ図の対向する象限内の変調摂動に関連付けられるように、選択された正弦波位相角における変調摂動を定義する。再び、このようなエネルギーバランスは、送信器1600により行われる正弦波変調に関連した側波帯の形成を本質的に禁止するということが分かった。結果として、変調正弦波同士は従来の変調方式を使用することにより可能なものよりさらに近接することが可能となり、これにより、劇的に高いスペクトル効率が実現されることを可能にする。
【0085】
[1111] 一実施形態では、正弦波参照表1648内に格納されたノッチ正弦波のそれぞれにより定義される変調摂動は、それぞれ位相角45°、135°、225°及び315°におけるものである。この実施形態では、45°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分は、225°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。同様に、135°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分は、315°における変調摂動に起因する未変調正弦波に対する出力パワーの低減の積分にほぼ等しい。一実施形態では、論理0に対応する変調摂動は、選択された位相角を中心とする約1度の角度の範囲を定め、未変調正弦波と比較して約15%の振幅低減を定義する。この実施形態では、論理1に対応する変調摂動は、選択された位相角を中心とする約0.5度の角度の範囲を定め、未変調正弦波と比較して約30%の振幅低減を定義する。
【0086】
[1112] 時間生成器1652は、フィルタ1660内への比較的一定なデータ速度が維持されるように、クロック信号を波形バッファ1656へ提供する。入力バッファ1604へ提供される入力データのデータ速度はいくぶん突発性又は不規則性であり得るので、時間生成器1652は、正弦波参照表1648により生成されたデータストリームから生じたジッタがフィルタ1660へ提供される前に、それを実質的に除去するように機能する。
【0087】
[1113] 一実施形態では、送信器1600は、準周期的時間領域変調器1640内へのデータ速度を制御するように動作する周波数監視/流れ制御モジュール1670を含む。具体的には、流れ制御モジュール1670が、パターンマッチングユニット1644及び波形バッファ1656内へのデータ速度を監視する。パターンマッチングユニット1644内へのデータ速度が波形バッファ1656内へのデータ速度を越え始めると、流れ制御モジュール1670は、これらのデータ速度が等化されるまで、4ビットフレームをパターンマッチングユニット1644又はシリアル・ツー・フレーム・データ変換器1630から入力バッファ1604へ返送する(段階1736)。
【0088】
[1114] 波形バッファ1656内に格納されたノッチ及びエネルギーバランス(notched and energy-balanced)正弦波のデジタル表現は、デジタル/アナログ変換器1664により導入される量子化誤差を補償するために、フィルタ1660により任意選択的に予め歪ませられる又は濾過される(段階1740)。一実施形態では、この濾過は、このような量子化誤差(180度だけ位相シフトされた)により誘起されると予測されるパワースペクトラムに等価な周波数領域内のパワースペクトラムを有する事前歪(pre-distortion)を導入することを含み得る。次に、フィルタ1660により生成される濾過されたデジタル信号は、DAC1664により符号化アナログ信号へ変換され、そして有線通信媒体又は無線通信媒体のいずれかを介し送信される(段階1744)。
【0089】
[1115] 次に、注意は、例えばFPGAにおける実装形態に好適なエネルギーバランス送信器1800の別の実施形態の機能ブロック図である図18に向けられる。以下に述べられること以外は、送信器1800の構造及び機能は、図16のエネルギーバランス送信器1600の構造及び機能と実質的に同一である。したがって、同様な参照符号が、実質的に同一な送信器部品を識別するために図16図18において使用される。図16図18に関して理解され得るように、送信器1800の構造は、時間領域変調器1640がノッチ正弦波生成器1810及びモードスイッチ1820を追加的に含むという点で、送信器1600のものとは異なる。これらの追加要素は、送信器1800が比較的より高いデータ速度において動作することを可能にするように意図されており、以下に論述される。
【0090】
[1116] ここで図19を参照すると、一実施形態によるエネルギーバランス送信器1800により行われる符号化及び他の演算の例示的シーケンスを表すフローチャート1900が提供される。送信器1800と図16の送信器1600との構造及び機能の類似性を所与として、実質的に同一な演算を識別するために、図17図19のフローチャートにおいて同様な参照符号が使用される。
【0091】
[1117] 送信器1800の動作中、準周期的時間領域変調器1640’は、パターンマッチングユニット1644へ提供される4ビットフレームのデータ速度が所定データ速度を越えるかどうかを判断する(段階1910)。比較的低いデータ速度で、すなわち変調器1640’において既知の所定データ速度より低いデータ速度で、パターンマッチングユニット1644内に登録された4ビットフレームに対応するノッチ正弦波を定義するデータ点が正弦波参照表1648から読み出され、そしてモードスイッチ1820を介し波形バッファ1656へ提供される(段階1728)。一実施形態では、所定データ速度は、ノッチ正弦波を定義する格納されたデータが正弦波表1648から読み出され得るデータ速度へ設定される。一実施形態では、比較的多く(例えば3600)の点がそれぞれのノッチ正弦波を定義するために使用されるので、より高いデータ速度では、いくつかのメモリ実装形態のI/O能力は所望入力データ速度を支援するのに不十分であり得る。したがって、一実施形態では、パターンマッチングユニット1644内に順次登録された4ビットフレームに対応するノッチ正弦波を定義するデータ点は、正弦波表1648から読み出されるのではなく、ノッチ正弦波生成器1810により「オンザフライで」生成される。
【0092】
[1118] この実施形態では、ノッチ正弦波生成器1810は、一組の位相角において(例えば360度の各角度において)正弦波の式を解く処理ループを単純に実行することにより、未変調正弦波の一組のデータ点(例えば360個のデータ点)を生成するように構成され得る。この例では、データノッチが生成される各位相角(すなわち45°、135°、225°及び315°)を中心とする未変調正弦波の輪郭を定義する10個程度のデータ点は、パターンマッチングユニット1644により登録された4ビットデータフレームに対応するノッチパターン(例えば1,0,1,1)を定義する等しい数のデータ点により置換される(段階1920)。次に、得られた一組のデータ点(例えば360個のデータ点)は、モードスイッチ1820により波形バッファ1656へ提供される(段階1732)。この手法は、多数(例えば3600)のデータ点が各ノッチ正弦波の正弦波表1648内に予め格納される高分解能手法に比べて、各ノッチ正弦波のデータノッチパターンを定義する際に低分解能を呈するが、より高い入力データ速度で処理されることを可能にする。次に、データ流れ制御、濾過、及びデジタル/アナログ変換処理は、各ノッチ正弦波を定義するデータ点が波形バッファ1656内に置かれると、図16図17を参照して上に述べたやり方で行われる。
【0093】
[1119] 代替的に、ノッチ正弦波生成器1810は、興味ある4つの位相角(すなわち45°、135°、225°及び315°)のそれぞれにおいて論理「0」を定義するデータノッチを有する変調正弦波を生成する処理ループを実行することにより、一組のデータ点(例えば360個のデータ点)を生成するように構成され得る。この例では、当該各位相角を中心とする10個程度のデータ点が、パターンマッチングユニット1644により登録された4ビットデータフレームが当該位相角において論理「1」を求めた場合に限り、置換されることになる。例えば、[1,0,0,1]の40ビットフレームは、45°と315°の各角度を中心とする10個のデータ点が、論理「0」ではなく論理「1」を定義するデータ点の組により置換されるということを必要とする可能性がある。
【0094】
[1120] 変調摂動は、実質的パワー(material power)の側波帯(例えば、その搬送周波数における正弦波のパワーより50dB以上小さい)を生成することなく、選択位相において正弦波に課され得るということが、本明細書において説明されるエネルギーバランス技術の特徴である。これは、本開示に従って生成された変調正弦波同士が互いに実質的に干渉することなく非常に近接することを許容する。例えば、このような変調正弦波は15Hz未満の周波数だけ離間され得るということが分かった。これは、所与の帯域のスペクトルが、従来の変調技術を使用して可能なものより効率的に利用されることを可能にする。
【0095】
[1121] 一実施形態では、マルチキャリアシステム内の各変調正弦搬送波は、同様なタイプの変調摂動を使用して変調される。例えば、一実装形態では、変調搬送波のそれぞれは、多くのステップ遷移を含む変調摂動を使用して変調される(図13を参照)。他の実施形態では、変調搬送波のそれぞれは、1データビットを表すノッチで構成された変調摂動を使用して変調される(図10を参照)。いくつかの実施形態では、隣接周波数スロット(例えば15Hz以下だけ分離された周波数)を占有する変調正弦波は、様々なタイプの変調摂動を使用して生成されるが、同じタイプの変調摂動が隣接変調正弦波を生成する際に使用される場合に性能が改善されるということが分かった。
【0096】
[1122] 次に、注意は、一実施形態によるマルチキャリアエネルギーバランス送信器2000のブロック図表示である図20に向けられる。示されるように、送信器2000は、外部ソースからの入力データが格納される入力バッファ2010を含む。入力バッファ2010内の格納されたデータは、複数(N個)の変調されたエネルギーバランス正弦搬送波にコントローラ2020により割り振られる。具体的には、コントローラ2020は、入力データのストリームを一組のN個のエネルギーバランス送信器2030へ導く。N個の送信器2030のそれぞれは、変調されたエネルギーバランス正弦波を生成するように、正弦搬送波を入力バッファ2010からの入力データのそのストリームに従って変調する。一実施形態では、N個の送信器2030のそれぞれは、例えばエネルギーバランス送信器1600又はエネルギーバランス送信器1800と実質的に同一であり得、PGAの別個のセルとして実現され得る。
【0097】
[1123] 一実施形態では、コントローラ2020は、入力データ速度が第1の送信器2030の最大データ速度を越えるまで、データを入力バッファ2410から送信器2030の第1番目のものへルーティングする。この時点で、コントローラは、データを第1の送信器2030と、残りのN-1個の送信器2030のうちの1つ又は複数の送信器との両方へ提供し得る。他のデータ割り振り戦略が可能である。例えば、各送信器2030がR/Nのデータ速度で動作するように、入力バッファ2410からの固定量のデータがN個の送信器2030のそれぞれへ提供され得る。ここで、Rは入力バッファ2410内へのデータ速度である。例えば、入力バッファにより受信された第1の4個のデータビットが送信器2030へルーティングされる可能性があり、入力バッファにより受信された第2の4個のビットは送信器2030へルーティングされる可能性がある、などである。ある時点において、入力バッファ2010内へのデータ速度がN個の送信器2030の集計データ速度を越える場合、N個の送信器2030のうちの1つ又は複数は、入力バッファ2010内へバッファするために提供される4ビットデータフレームのうちの少なくともいくつかを返送する可能性がある。
【0098】
[1124] 次に、注意は、本開示に従って構成されたエネルギーバランス送信器により送信された符号化正弦波を受信し復調するように構成された受信器2100の機能ブロック図である図21に向けられる。例えば、受信器2100は、エネルギーバランス送信器1600又はエネルギーバランス送信器1800により送信された符号化正弦波を受信し復調することができる。示されるように、1つ又は複数のエネルギーバランス符号化正弦波は、受信器2100のフィルタ2110により受信され、そしてアナログ/デジタル変換器(ADC)2120へ提供される。
【0099】
[1125] 時間生成器2124は、ADC2120の出力データ速度を計時する又は制御する。ADC2120により生成された各受信されたエネルギーバランス符号化正弦波の振幅値は、波形バッファ2128へ提供される。受信器2100が、受信されたエネルギーバランス符号化正弦波との時間同期を実現すると(例えば受信された符号化正弦波の零交差を検出することにより)、ADC2120は、受信された符号化正弦波のデータノッチを中心とするサンプル値だけを生成するように「オン」され得る。例えば、ADC2120は、45°、135°、225°及び315°の位相角において、約1度の位相と等価な期間中にだけオンされ得る。したがって、一実施形態では、ADC2120を極狭帯域にわたってだけサンプリングするようにそしてさらに360°の正弦波周期ごとに約4°の期間中にだけサンプリングするように構成することにより、感度が強化される。複数の搬送周波数のエネルギーバランス符号化正弦波が受信されると、ADC2120は、各符号化正弦波の45°、135°、225°及び315°位相角中にだけサンプリングするようにオン/オフされ得る。代替的に、符号化正弦波の45°、135°、225°及び315°位相角を中心とする狭い窓において各符号化正弦波をサンプリングするために別個のADCが使用される可能性がある。ADC2120により生成された信号サンプルは波形バッファ2128へ提供される。
【0100】
[1126] 波形バッファ2128のコンテンツは、受信器2100により受信された符号化正弦波のデータノッチにより符号化されたビット値を表す一連の論理値を生成するデシリアライザ・ツー・バイト・ユニット(deserializer-to-byte unit)2134へ連続的に提供される。次に、デシリアライザ・ツー・バイト・ユニット2134により生成された論理値は、符号化正弦波が送信されるエネルギーバランス送信器(例えば送信器1600又は送信器1800)により適用されたLDPC符号化を除去するように構成されたLDPC復号器2140へ提供される。同様に、AES暗号解読ユニット2146は、エネルギーバランス送信器内の対応するAES暗号化ユニットにより適用された暗号化を元に戻す。次に、AES暗号解読ユニット2146の出力は、出力バッファ2150へ提供され得る。一実施形態では、受信器2100は、パケットの開始を意味するプリアンブルデータビット列(例えば0x47列)を求めて出力バッファ2150内のビットシーケンスを探索する。例示的実装形態では、受信器2100により受信される符号化正弦波は、1500ビットのフレームを搬送する。各フレームは、所定ビット列(例えば0x47)で始まり、続いてデータが伝達される。プリアンブルが出力バッファ2150内で識別されると、伝達されるデータの推定値がネットワークインターフェース2154を介しローカルエリアネットワーク(LAN)などへ提供され得る。代替的に、出力バッファ2150のコンテンツ全体は、各フレームのプリアンブルを識別するようにそしてフレームにより運ばれるデータを回復するように構成された外部システムへ提供され得る。
【0101】
[1127] 次に、注意は、選択された位相角においてマルチビット特徴により変調された正弦波を生成及び送信するように構成されたエネルギーバランス送信器2200の実施形態の機能ブロック図である図22に向けられる。一実施形態では、これらのマルチビット特徴は、例えば図6~9に示されたタイプの4ビット階段ステップパターンを有するノッチを含む。他の実施形態では、これらの特徴は、各選択された位相角において8個以上のビットを符号化するために利用され得る。各位相角において符号化されることができるビットの最大数は、送信器2200及び対応する受信器それぞれの中のデジタル/アナログ及びアナログ/デジタル変換器の分解能により主として又はそれのみにより制限されると考えられる。
【0102】
[1128] 示されるように、送信器1600は、デジタル入力データ2208を格納するための入力バッファ2204、AES暗号化モジュール2210の形式のデータ最適化ユニット、LDPC符号器2220、周期的冗長検査(CRC:cyclic redundancy check)モジュール2224、及び32・ツー・8ビットスプリッタ2230を含む。
【0103】
[1129] 準周期的時間領域変調器2240は、正弦波をエネルギーバランス様式で摂動することにより、ビットスプリッタ2230により提供されるデータフレームを符号化する。示されるように、準周期的時間領域変調器2240は、第1及び第2のパターンマッチングユニット2244及び2245、正弦波参照表2248、時間生成器2252、並びに波形バッファ2256を含む。変調器2240はさらに、45°、135°、225°及び315°位相角のそれぞれについてマルチビットデータノッチを定義するデータ点の組を格納するためのメモリを含む。特に、変調器2240は、45°位相角のマルチビットデータノッチを定義するデータ点の組を格納するための45°ストレージユニット2280、135°位相角のマルチビットデータノッチを定義するデータ点の組を格納するための135°ストレージユニット2282、225°位相角のマルチビットデータノッチを定義するデータ点の組を格納するための225°ストレージユニット2284、及び315°位相角のマルチビットデータノッチを定義するデータ点の組を格納するための315°ストレージユニット2286を含む。変調器2240により生成されたマルチビットデータノッチを有するエネルギーバランス波形は、波形バッファ2256内に格納され、デジタル/アナログ変換器(DAC)2264によりアナログ信号へ変換される前に、フィルタ2260により任意選択的に予め歪ませられる又は濾過される。その結果の符号化アナログ信号は例えば伝送線又はアンテナを使用して送信される。
【0104】
[1130] エネルギーバランス送信器2200の動作中、入力バッファ2204内に格納された入力データ2208は、AES暗号化モジュール2210へ提供される。一実施形態では、AES暗号化モジュール2210は、一連の同じ論理値のラン長を制限するために入力データを処理することにより、受信器におけるデータの検出を支援する。AES暗号化モジュール2210により生成された結果の出力はLDPC符号器2220へ提供され、LDPC符号器2220は、低密度パリティチェック(LDPC)誤り訂正符号化演算を行う。次に、LDPC符号器2220により生成されたシリアルデータストリームは、CRCモジュール2224及びビットスプリッタ2230へ提供される。正弦波の選択された位相角のそれぞれにおいて定義されたマルチビットデータノッチが8ビットを含む(32ビットが正弦波の各周期当たり符号化される)一実施形態では、ビットスプリッタ2230は、各フレームの32ビットを4組の8ビットへ分割する。この実施形態では、ビットスプリッタ2230は、所与のフレームの4組の8ビットそれぞれについて、ストレージユニット2280、2282、2284及び2286のうちの異なる1つをアドレス指定させる。それに応じて、ストレージユニット2280、2282、2284及び2286のそれぞれは、そのメモリから、アドレス指定するために使用された8ビットパターンに対応する予め計算された8ビット階段ステップノッチパターンを取り出し、かかるノッチパターンを定義するデータ点を波形バッファ2256へ提供する。この実施形態では、ストレージユニット2280、2282、2284及び2286のそれぞれにより格納された8ビット階段ステップノッチパターンのそれぞれは、等積のものである、すなわち各格納された8ビット階段ステップパターンはすべての他の格納されたパターンとエネルギーバランスされる。
【0105】
[1131] 別の実施形態では、波形バッファ2256内に格納された符号化正弦波は、32ビットデータフレーム(4つの位相角のそれぞれの位相角において8ビット)を符号化するだけでなく、CRCモジュール2224により生成されたCRC値も符号化する。この実施形態では、CRC値(例えば4ビット値)が正弦波参照表2248へ提供される。この実施形態では、正弦波参照表2248は、一組の16ノッチ正弦波を定義し、4つの選択された位相角のそれぞれにおける各データノッチの深さは、CRC値の4ビットのうち1つにより定義される。例えば、CRC値における論理0は、選択された位相角を中心とする約1度の角度の範囲を定めるデータノッチに対応し、未変調正弦波に比べて約15%の振幅低減を定義する。CRC値における論理1は、選択された位相角を中心とする約0.5度の角度の範囲を定めるデータノッチに対応し、未変調正弦波に比べて約30%の振幅低減を定義する。したがって、図16を参照して上に述べたのとほぼ同じやり方で、4ビットCRC値は、選択された位相角(すなわち45°、135°、225°及び315°)におけるデータノッチのスパン及び深さを定義する。加えて、ビットスプリッタ2230へ提供される32ビットデータフレーム内の4つの8ビット組のデータのそれぞれは、4つの選択された位相角のそれぞれにおけるノッチに課せられる階段ステップパターンを定義する。エネルギーバランスが発生するためには、45°と225°におけるノッチ(課せられた階段ステップパターンを有する)の面積が等しくなければならなく、そして135°と315°におけるノッチの面積は等しくなければならないので、このようなエネルギーバランスを実現するために必要とされるデータフレームの所与の8ビット部分の階段ステップパターンは、CRC値に依存して異なり得る。したがって、正弦波表2248は、CRCモジュール2224からのCRC値と、LDPC符号器2220により生成された32ビットデータフレーム値とに応答して、ストレージユニット2280、2282、2284及び2286からのエネルギーバランス階段ステップパターンを適切に定義するデータ点を選択する。一実施形態では、32ビットデータフレームの一部分は、パターンマッチングユニット2244及び2245内にロードされ得る。
【0106】
[1132] 時間生成器2252は、フィルタ2260内への比較的一定なデータ速度が維持されるように、クロック信号を波形バッファ2256へ提供する。入力バッファ2204へ提供される入力データのデータ速度はいくぶん突発性又は不規則性であり得るので、時間生成器2252は、正弦波参照表2248により生成されたデータストリームから生じたジッタがフィルタ2260へ提供される前に、それを実質的に除去するように機能する。
【0107】
[1133] 一実施形態では、送信器2200は、準周期的時間領域変調器2240内へのデータ速度を制御するように動作する周波数監視/流れ制御モジュール2270を含む。具体的には、流れ制御モジュール2270は、変調器2240及び波形バッファ2256内へのデータ速度を監視する。変調器2240内へのデータ速度が波形バッファ2256内へのデータ速度を越え始めると、流れ制御モジュール2270は、これらのデータ速度が等化されるまで、データをパターンマッチングユニット2244、2245又はビットスプリッタ2230から入力バッファ2204へ返送する。
【0108】
[1134] 波形バッファ2256内に格納されたノッチ及びエネルギーバランス正弦波のデジタル表現は、デジタル/アナログ変換器2264により導入される量子化誤差を補償するために、フィルタ2260により任意選択的に予め歪ませられる又は濾過される。一実施形態では、この濾過は、このような量子化誤差(180度だけ位相シフトされた)により誘起されると予測されるパワースペクトラムに等価な周波数領域内のパワースペクトラムを有する事前歪を導入すること含み得る。次に、フィルタ2260により生成された濾過済みデジタル信号は、DAC2264により符号化アナログ信号に変換され、有線通信媒体又は無線通信媒体のいずれかを介し送信される。
【0109】
[1135] 次に、注意は、選択された位相角においてマルチビット特徴により変調された正弦波を生成及び送信するように構成されたエネルギーバランス送信器2300の別の実施形態の機能ブロック図である図23に向けられる。送信器2300の構造及び機能の態様は、図22のエネルギーバランス送信器2200のものと実質的に同一である。したがって、実質的に同一な送信器構成要素を識別するために同様な参照符号が図22図23において使用される。以下に論述されるように、送信器2300は、送信器2300が送信器2200より比較的高いデータ速度において選択的に動作することを可能にするように構成されたエネルギーバランス符号化正弦波生成器2310を含む。
【0110】
[1136] 送信器2300の動作中、エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、LDPC符号器2220からのデータ速度が所定データ速度を越えるかどうかを判断する。所定データ速度未満のデータ速度では、エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、選択された位相角におけるマルチビットノッチ特徴により符号化された正弦波を生成するように、準周期的時間領域変調器2240(図22)とほぼ同様に動作する。すなわち、エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、エネルギーバランスデータノッチを定義する予め格納された組のデータ点に依存しており、符号化される入力データに従って、これらの予め計算され予め格納されたデータ点を呼び出す。一実施形態では、比較的多くの数(例えば3600)の点が、変調器2240により生成される各符号化正弦波を定義するために使用されるので、より高いデータ速度では、いくつかのメモリ実装形態のI/O能力は所望入力データ速度を支援するのに不十分かもしれない。したがって、図23の実施形態では、選択された位相角においてマルチビットノッチ特徴を有する符号化正弦波を定義するデータ点は、予めデータが埋められたデータテーブルから取り出されるのではなくエネルギーバランス符号化正弦波生成器2310により「オンザフライで」生成される。
【0111】
[1137] 入力データ速度が所定データ速度を越えたということを判断すると、一実施形態では、エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、45°、135°、225°及び315°の位相角においてマルチビットノッチ特徴を有するエネルギーバランス符号化正弦波を生成するために、以下の一連の演算を行う。最初に、エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、45°における第1のマルチビットデータノッチに対応するデータをLDPC符号器2220から読み込む。次に、生成器2310は、45°を中心とするデータノッチにおいて定義されるNビット階段パターンのステップ幅を判断する。例えば、パターン内の比較的狭いステップは入力データにおける「1」を表し得、より広いステップは入力データにおける「0」を表し得る。他のステップ状特徴が、本開示の範囲内の2進値を表すために使用され得る。例えば図6~9を参照。45°におけるデータノッチのNビット階段パターンを定義した後、このデータノッチに関連する信号エネルギーもまた計算される又は近似される。再び、45°におけるデータノッチのエネルギーは、データノッチにより範囲を定められる角度にわたる未変調正弦波と、データノッチとのパワーの累積差に対応する。例えば未変調正弦波2420及びマルチビットデータノッチ2430により境界を定められる領域2410を示す図24を参照。領域2410は、この累積パワー差に関係しており、第1の主領域と呼ばれ得る。
【0112】
[1138] 次に、エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、135°における第2のマルチビットデータノッチに対応するデータをLDPC符号器2220から読み込む。次に、生成器2310は、135°を中心とするデータノッチにおいて定義される第2のNビット階段パターンのステップ幅をこのデータに基づき判断し、その面積を計算する。次に、生成器2310は、(i)第1の主領域に整合するように135°における第2のノッチの領域を調節し得る(例えばノッチ幅の端におけるビット値を調整することにより)か、又は(ii)第2のNビット階段パターンを定義した後に135°における第2のマルチビットデータノッチの領域を計算し得るかのいずれかであり、この領域を第2の主領域と呼び得る。
【0113】
[1139] エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、225°における第3のマルチビットデータノッチに対応するデータをLDPC符号器2220から読み込む。次に、生成器2310は、225°を中心とするデータノッチにおいて定義される第3のNビット階段パターンのステップ幅をこのデータに基づき判断し、その面積を計算する。次に、生成器2310は、第1の主領域に整合するように225°における第3のマルチビットデータノッチの領域を調節する(例えば第3のマルチビットデータノッチの端におけるビット値を調整することにより)。
【0114】
[1140] エネルギーバランス符号化正弦波生成器2310は、315°における第4のマルチビットデータノッチに対応するデータをLDPC符号器2220から読み込む。次に、生成器2310は、このデータに基づき、315°を中心とする第4のマルチビットデータノッチにおいて定義される第4のNビット階段パターンのステップ幅を判断し、その面積を計算する。次に、生成器2310は、第2の主領域に整合するように315°における第4のマルチビットデータノッチの領域を調節する(例えば第4のマルチビットデータノッチの端におけるビット値を調整することにより)。
【0115】
[1141] 生成器2310が第2及び第4のマルチビットデータノッチ(すなわち135°及び315°を中心とするマルチビットデータノッチ)の領域を強いることに失敗する場合及び/又は第1及び第3のマルチビットデータノッチの領域を整合させることに失敗する場合、生成器2310は、第2及び第4のマルチビットデータノッチ内のビットの相対位置を変更し得る。これらのビット位置を変更した後、生成器2310は再び、それぞれの領域同士を整合させるために第2及び第4のマルチビットデータノッチの端を定義する値を調節することを試みることになる。第1及び第3のマルチビットデータノッチの領域同士間の整合を実現することに生成器2310が当初失敗する限り、例えばこれらのノッチの端を定義する値を修正することにより、本質的に、同じビット再構成手順が続き得る。マルチビットデータノッチのうちの任意ものを定義する際に任意のデータビットが再順序付けされる限り、CRC情報も含む変更された位置は、別個のデータチャネル内の受信器へ伝達され得る。
【0116】
[1142] 上に論述したように、本明細書において説明される符号化正弦波は、高調波又は側波帯の生成を実質的に回避するようなやり方でデジタル的に生成され得る。開示された変調技術のいくつかの実施形態はまた、変調された信号エネルギーを含むチャネル帯域幅が10Hz以下となることを可能にする。すなわち、本発明者は、変調された信号の搬送周波数から数Hzを越える周波数領域内の変調された信号のスペクトルのいかなる感知可能な分散も、従来のスペクトラムアナライザを使用して見分けることができなかった。これは最先端技術における著しい進歩を表すと考えられる。なぜなら、従来の変調技術は、通常、側波帯を生成するか又は大量の周波数スペクトルを利用し、正弦搬送波自体又は変調から生じる側波帯が抑制されること又は濾過されることのいずれかを必要とするからである。開示された変調技術のこれらの特性は、変調正弦波同士が互いに実質的に干渉することなく非常に近接することを許容し、これによりスペクトルが従来の変調技術を使用して可能なものより効率的に利用されることを可能にする。
【0117】
[1143] 図25は、45°、135°、225°及び315°においてデータノッチにより変調された符号化正弦波が提供された場合のスペクトラムアナライザにより生成されたスクリーンショットである。各データノッチは、未変調正弦波に対して15%(1の値)又は30%(0の値)だけパワーが低減されることにより、1ビットのデータを符号化し、これにより4ビットのデータが各正弦波周期中に符号化されるようにする。示されるように、符号化正弦波は、451.75kHzの周波数であり、ノイズフロアの上位レベル2510より60dB超大きい-16.17dBmの測定パワーを有する。図25から理解され得るように、符号化正弦波は、点線箱2520により表される極めて狭い周波数スペクトルを占有する。実際、符号化正弦波により占有されたチャネル帯域幅は10Hz以下であり、図25においてそれとは反対のことを示すいかなるものも、当該スペクトラムアナライザの能力の制限から生じると思われる。
【0118】
[1144] 図25から理解され得るように、本発明者は、周波数f及びパワーPの符号化アナログ波形が、本明細書において説明されるエネルギーバランス変調技術を使用して、選択された位相角において符号化された正弦波のデジタル表現から生成される場合、符号化から生じる周波数f’の任意の信号がパワーPより少なくとも50dB低いパワーP’であるということを発見した。ここで、f’はfから25Hz超だけオフセットされる。再び、これは開示された符号化方式の利点の控えめな特徴付けであり、当該スペクトラムアナライザの能力及び即時測定セッティングにより制限されると考えられる。
【0119】
[1145] 次に図26A~26Cへ移ると、本開示による様々な代替データ符号化方式が示される。一実施形態では、正弦波は、単一ビットのデータを表すために180°だけ離された一対の選択された位相角において符号化され得る。例えば、図26A~26Bの実施形態では、符号化正弦波2602は0の値を表し得、符号化正弦波2604は1の値を表し得る。示されるように、符号化正弦波2602は第1のデータノッチ2612及び第2のデータノッチ2614を含む。第1のデータノッチは、135°を中心としており、約1°の角度の範囲を定め、第2のデータノッチ2614は315°を中心としており、また約1°の角度の範囲を定める。図26A~26Bの実施形態では、第1と第2のデータノッチ2612と2614の領域は実質的に同一であり、データノッチ2612と2614はエネルギーバランスされる。
【0120】
[1146] 同様に、符号化正弦波2604は、第1のデータノッチ2622と第2のデータノッチ2624を含む。第1のデータノッチは45°を中心としており、約1°の角度の範囲を定め、第2のデータノッチ2624は225°を中心としており、また約1°の角度の範囲を定める。図26A~26Bの実施形態では、第1と第2のデータノッチ2622と2624の領域は実質的に同一であり、データノッチ2622と2624はエネルギーバランスされる。
【0121】
[1147] 図26Cは、選択された位相角において符号化された正弦波が2進データを表すために使用され得る別のやり方を示す。示されるように、図26Cは、符号化正弦波2640の2周期(すなわち第1の周期Tと第2の周期T)を描写する。図26の実施形態において、正弦波2640の第1の周期Tは1のデータ値を表し、第2の周期Tは0のデータ値を表す。すなわち、図26Cの実施形態では、第1の周期T中の45°、135°、225°及び315°の位相角におけるデータノッチ2652、2654、2656及び2658の存在が1のデータ値を表し、これらの位相角におけるデータノッチの不在は0のデータ値を表す。実施形態では、データノッチ2652に関連するエネルギーはデータノッチ2656に関連するエネルギーと同じであり、データノッチ2654に関連するエネルギーはデータノッチ2658に関連するエネルギーと同じである。
【0122】
[1148] 図27A及び27Bは、代替形状のデータノッチを使用することによりエネルギーバランス様式で符号化された正弦波を示す。示されるように、図27Aは45°、135°、225°及び315°の位相角におけるいくぶんU字状のデータノッチ2712、2714、2716及び2718を有する第1の符号化正弦波2710を描写し、図27Bは45°、135°、225°及び315°の位相角におけるいくぶんV字状のデータノッチ2742、2744、2746及び2748を有する第2の符号化正弦波2740を描写する。所与の正弦波周期内で180°だけ離されたデータノッチがエネルギーバランスされると仮定すると、図27A及び27Bに示されるデータノッチ形状と他の代替形状は、正弦波の周波数からわずか5Hzだけオフセットされた周波数において測定可能エネルギーを生成することなく、正弦波の選択された位相角における情報の符号化を可能にするということが分かった。
【0123】
[1149] 次に、注意は、本開示に従ってエネルギーバランス様式で符号化された楕円波形を示す図28に向けられる。図28の実施形態では、各楕円波形は、周期Tのものであり、16個の可能な零交差位相のうちの1つにおいて零交差する。一実施形態では、様々な零交差位相と同一周期Tとを有する一組の16個の波形が変調シンボルとして採用される。特に、各シンボル波形は、波形の零交差位相に対応する4ビットデータワードを一意的に表し得る。例えば、173°の零交差位相を有する16個の楕円波形のうちの第1の楕円波形2810はデータワード[1001]を表す可能性がある。例えば、180°の零交差位相を有する第2の楕円波形2820はデータワード[0000]を表す可能性があり、187°の零交差位相を有する第3の楕円波形2830はデータワード[0111]を表す可能性がある。
【0124】
[1150] 非常に狭いチャネル帯域幅(すなわち搬送周波数fを中心とする10Hz以下の周波数帯域、ここでf=1/T)の外の側波帯又は他の信号エネルギーの生成を最小化する又は無くすために、各楕円波形はエネルギーバランスされるべきであるということが分かった。すなわち、波形の正の半サイクルに関連するエネルギーは、波形の負の半サイクルに関連するエネルギーと等しくあるべきである。図28の実施形態では、第1の楕円波形2810の正の半サイクル2850のエネルギーは、所望の狭チャネル帯域幅の外側の側波帯又は他の信号エネルギーが生成されることを禁止又は防止するために、楕円波形2810の負の半サイクル2860のエネルギーに等しくあるべきである。図28に示すように、楕円波形のそれぞれは、各楕円波形の様々な零交差点と、各波形の正及び負の半サイクルのエネルギーのバランスとの結果として、異なる最大及び最小振幅(A)のものである。
【0125】
[1151] 次に、注意は、図28に示すタイプの零交差位相変調楕円波形を生成及び送信するように構成されたエネルギーバランス送信器2900の実施形態の機能ブロック図である図29に向けられる。示されるように、送信器2900は、デジタル入力データ2908を格納するための入力バッファ2904、AES暗号化モジュール2910の形式のデータ最適化ユニット、LDPC符号器2920、及びシリアル・ツー・4ビットデータワード変換器2930を含む。一実施形態では、送信器2900は、例えばFPGAを使用して実現され得る。
【0126】
[1152] 送信器2900の動作中、入力バッファ2904内に格納された入力データは、AES暗号化モジュール2910へ提供される。一実施形態では、AES暗号化モジュール2910は、一連の同じ論理値のラン長を制限するために入力データを処理することにより、受信器におけるデータの検出を支援する。AES暗号化モジュール2910により生成された結果の出力は、LDPC符号器2920へ提供され、LDPC符号器2920は、LDPC誤り訂正符号化演算を行う。次に、LDPC符号器2920により生成されたシリアルデータストリームは、シリアル・ツー・4ビットデータワード変換器2930により一連の4ビットデータフレームへ変換される。
【0127】
[1153] スケール不変特徴変換表2940は、シリアル・ツー・4ビットデータワード変換器2930により提供される各4ビットデータワードを受信し、4ビットデータワードに対応する、その中に格納された16個の零交差位相変調楕円波形のうちの1つを識別する。一実施形態では、表2940は、データワード変換器2930により提供される4ビットデータワードの16個の可能な値のそれぞれに対応する16個の零交差位相変調楕円波形の各零交差位相変調楕円波形の単一期間に対応するデータ値(例えば3600個のデータ値)を格納する。データワード変換器2930により提供される一連の4ビットデータワードに応答して、各逐次的零交差位相変調楕円波形を定義するデータ値が表2940から読み出され、波形バッファ2956内に格納される。例えば、4ビットデジタルワード[1001]を受信することに応答して、表2940は、173°の零交差位相を有する第1の楕円波形2810を定義する一組のデジタル値を生成し、これを波形バッファ2956内に格納するように構成され得る。
【0128】
[1154] 時間生成器2953は、フィルタ2960内への比較的一定なデータ速度が維持されるように、クロック信号を波形バッファ2956へ提供する。入力バッファ2904へ提供される入力データのデータ速度はいくぶん突発性又は不規則性であり得るので、時間生成器2953は、スケール不変特徴変換表2940により生成されたデータストリームから生じたジッタがフィルタ2960へ提供される前に、それを実質的に除去するように機能する。
【0129】
[1155] 波形バッファ2956内に格納されたエネルギーバランス楕円波形は、デジタル/アナログ変換器2964によりアナログ信号へ変換される前に、フィルタ2960により任意選択的に予め歪ませられる又は濾過される。その結果の符号化アナログ信号は、有線通信媒体又は無線通信媒体のいずれかを介し送信される。
【0130】
[1156] 一実施形態では、送信器2900は、スケール不変特徴変換表2940内へのデータ速度を制御するように動作する周波数監視/流れ制御モジュール2970を含む。具体的には、流れ制御モジュール2970は、データ変換器2930からのそして波形バッファ2956内へのデータ速度を監視する。データ速度変換器2930からのデータ速度が波形バッファ2956内へのデータ速度を越え始めると、流れ制御モジュール2970は、これらのデータ速度が等化されるまで、4ビットフレームを変換器2930から入力バッファ2904へ返送する。
【0131】
[1157] 次に、注意は、このような零交差位相変調楕円波形を生成及び送信するように構成された送信器により送信された零交差位相変調楕円波形を受信及び復調するように構成された受信器3000の機能ブロック図である図30に向けられる。例えば、受信器3000は、送信器2900により送信された零交差位相変調楕円波形を受信及び復調することができる。示されるように、受信器は、このような波形を受信し、不要なチャネル雑音を濾過し、濾過された結果をアナログ/デジタル変換器(ADC)3020へ提供するフィルタ3010を含む。
【0132】
[1158] 時間生成器3024は、ADC3020の出力データ速度を計時する又は制御する。各受信された波形のデジタル振幅値は、ADC3020により生成され、波形バッファ3028へ提供される。受信器3000が、受信された楕円波形との時間同期を実現すると(例えば受信された波形の負-正零交差を検出することにより)、ADC3020は、受信された楕円波形のサンプルを時間生成器3024の出力に基づき一定速度で生成する。ADC3020により生成された信号サンプルは、波形バッファ3028へ提供される。
【0133】
[1159] 受信された波形との時間同期が実現されると、差測定モジュール3030は、波形バッファ3028内の一周期の波形のサンプルと、時間生成器3024により提供される同じ周期の正弦波のサンプルとの差を判断する。高分解能実施形態では、このような差は0から360°まで0.1°毎に判断される(波形の周期当たり3600個のサンプル差)。低分解能実施形態では、このような差は0から360°まで1°毎に判断される(波形の周期当たり360個のサンプル差)。差測定モジュール3030は、所定期間のこれらのサンプル差を集計し、この集計差値(aggregate difference value)を、各集計差に対応するデータワードを格納する表3032内への指標として使用する。例えば、受信された楕円波形の各周期が16個の異なる正-負零交差位相のうちの1つを有し得る場合、表3032は、これらの零交差位相のそれぞれに対応する一組の16個の4ビットデータワードを含む。すなわち、集計差値のそれぞれは、表3032により、4ビットデータワードのうちの1つへマッピングされる。例えば、表3032により示されるように、集計差値のうちの1つは、0001のデータワードへマッピングされる「+1」集計差に対応する可能性がある。集計差値のうちの別のものは、1101のデータワードへマッピングされる「-3」集計差等に対応する可能性がある。
【0134】
[1160] 一実施形態では、受信された楕円波形のいくつかの位相範囲中にだけ動作するようにADC3020を構成することにより、感度が強化され得る。この実施形態では、受信器3000が、受信されたエネルギーバランス符号化正弦波との時間同期を実現すると、ADC3020は、各周期の180°点近くの零交差の近傍内のサンプル値だけを生成するように「オン」され得る。例えば、ADC3020は、興味ある潜在的零交差位相に跨る位相(例えば173°~187°又はそれより若干広い角度)に対応する期間だけオンされ得る。したがって、一実施形態では、ADC3020を各周期の比較的小さい部分にわたってサンプリングするように構成することにより、感度が強化される。
【0135】
[1161] 測定モジュール3030により生成されたデータワードは、デシリアライザ・ツー・バイト・ユニット3034へ提供され、デシリアライザ・ツー・バイト・ユニット3034は、受信された楕円波形の周期の零交差位相により符号化されたビット値を表す一連の論理値を生成する。次に、デシリアライザ・ツー・バイト・ユニット3034により生成された論理値は、受信された楕円波形が送信された適用可能送信器(例えば送信器2900)により適用されたLDPC符号化を除去するように構成されたLDPC復号器3040へ提供される。同様に、AES暗号解読ユニット3046は、適用可能送信器内の対応AES暗号化ユニットにより適用された暗号化を元に戻す。次に、AES暗号解読ユニット3046の出力は、出力バッファ3050へ提供され得る。一実施形態では、受信器3000は、パケットの開始を意味するプリアンブルデータビット列(例えば0x47列)を求めて出力バッファ3050内のビットシーケンスを探索する。例示的実装形態では、受信器3000により受信される符号化正弦波は、1500ビットのフレームを搬送する。各フレームは、所定ビット列(例えば0x47)で始まり、続いてデータが伝達される。プリアンブルが出力バッファ3050内で識別されると、伝達されるデータの推定値がネットワークインターフェース3054を介しローカルエリアネットワーク(LAN)などへ提供され得る。代替的に、出力バッファ3050のコンテンツ全体は、各フレームのプリアンブルを識別するようにそしてフレームにより運ばれるデータを回復するように構成された外部システムへ提供され得る。
【0136】
[1162] 本明細書で論述される開示は、高スペクトル効率を有するデータ通信のシステムのいくつかの実施形態の例を提供し説明する。設計、図面及び説明は本開示の選択された実施形態の非限定的例である。例えば、開示デバイスの他の実施形態は本明細書において説明される特徴を含んでも含まなくてもよい。さらに、開示された利点及び恩恵は、本開示のいくつかの実施形態だけに当てはまり得、様々な開示を制限するためには使用されるべきでない。
【0137】
[1163] 本明細書で使用されるように、結合手段は当業者に知られた好適な手段により直接的に又は間接的に接続される。結合アイテムは介在特徴を含み得る、例えばAはBを介しCへ結合される。別途明記しない限り、結合のタイプは、それが電気的、機械的、流体、光学的、放射線、又は他のものであるかにかかわらず、その用語が使用される文脈により指示される。
【0138】
[1164] 本明細書で使用されるように、モジュールは、例えば特殊機能を行うことに関連する任意のアセンブリ及び/又は一組の動作可能に結合された電気部品であり得、例えばメモリ、プロセッサ、電気的トレース、光コネクタ、ソフトウェア(メモリ内に格納される及び/又はハードウェアで実行する)及び/又は同様なものを含み得る。
【0139】
[1165] 本明細書で使用されるように、冠詞及び不定冠詞の単数形は文脈が特に指示しない限り複数の参照物を含む。したがって、例えば、用語「アクチュエータ」は単一アクチュエータ又はアクチュエータの組み合わせを意味するように意図されている。
【0140】
[1166] 本発明の様々な実施形態について上に説明したが、これらはほんの一例として提示したのであって制限のためではないということを理解すべきである。同様に、様々な図は、本発明に含まれ得る特徴及び機能を理解することを支援するために行われる本発明のアーキテクチャ例又は他の構成を描写し得る。本発明は、図示された例示的アーキテクチャ又は構成に制約されないが、多様な代替アーキテクチャ及び構成を使用して実現され得る。加えて、本発明は様々な実施形態及び実装の観点で上に説明されたが、次のことを理解すべきである:1つ又は複数の個々の実施形態において上に説明された様々な特徴及び機能は、それらと共に説明された特定実施形態に対するそれらの適用可能性において制限されないが、その代りに、このような実施形態が説明されたか否か及びこのような特徴が説明された実施形態の一部分であるとして提示されたか否かにかかわらず本発明の1つ又は複数の他の実施形態へ単独で又はいくつかの組み合わせで適用され得る。したがって、本発明の広さ及び範囲は上述の実施形態のいかなるものによっても制限されるべきではない。
【0141】
[1167] 本明細書において説明されたいくつかの実施形態は、様々なコンピュータ実施動作を行うための命令又はコンピュータコードを有する非一時的コンピュータ可読媒体(非一時的プロセッサ可読媒体とも呼ばれ得る)を有するコンピュータストレージ製品に関係する。コンピュータ可読媒体(又はプロセッサ可読媒体)は過渡的伝播信号(例えば宇宙空間又はケーブルなどの伝送媒体上で情報を搬送する伝播電磁波)自体を含まないという意味で非一時的である。媒体及びコンピュータコード(コードとも呼ばれ得る)は特定目的又は特定目的群のために設計され構築されたものであり得る。KCMが常駐し得る非一時的コンピュータ可読媒体の例は限定しないがワンタイムプログラム可能(OTP:one time programmable)メモリ、保護されたランダムアクセスメモリ(RAM:Random-Access Memory)及びフラッシュメモリを含む。
【0142】
[1168] コンピュータコードの例は限定しないが、マイクロコード又はマイクロ命令、コンパイラにより生成されるようなマシン命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード、及びインタープリタを使用してコンピュータにより実行されるハイレベル命令を含むファイルを含む。例えば、実施形態は、命令型プログラミング言語(例えばC、Fortranなど)、関数型言語(Haskell、Erlangなど)、論理プログラミング言語(例えばProlog)、オブジェクト指向プログラミング言語(例えばJava、C++など)又は他の好適なプログラミング言語、及び/又は開発ツールを使用して実現され得る。コンピュータコードの追加例は限定しないが、制御信号、暗号化コード及び圧縮コードを含む。
【0143】
[1169] 様々な実施形態について上に説明したが、これらはほんの一例として提示したのであって制限するためではないということを理解すべきである。上述の方法はある順序で発生するいくつかの事象を示すが、いくつかの事象の順序は修正され得る。加えて、事象のいくつかは、可能であれば並列処理で同時に行われ得るだけでなく、上述のように順次行われ得る。様々なデバイス内の様々なモジュールは、デバイスのプロセッサ内に配置されて示されたが、デバイス(例えばソフトウェアモジュール)のメモリ内にも配置/格納され得、プロセッサによりアクセス及び実行され得る。したがって、本明細書は添付された請求項の精神と範囲に入る本開示実施形態のすべてのこのような修正及び変更を包含するように意図されている。
【0144】
[1170] また、様々な発明概念は、その例が提供された1つ又は複数の方法として具現化され得る。方法の一部分として行われる動作は任意の好適なやり方で順序付けられ得る。したがって、例示的実施形態において連続動作として示されたとしても、示されたものとは異なる順序で動作が行われる実施形態であって、いくつかの動作を同時に行うことを含み得る実施形態が構築され得る。
【0145】
[1171] 本明細書で規定及び使用されたすべての定義は辞書定義、参照により援用された文献における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配するものと理解されるべきである。
【0146】
[1172] 本明細書及び特許請求の範囲において使用される不定冠詞は特に明記しない限り「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0147】
[1173] 本明細書と特許請求の範囲において使用される語句「及び/又は」は、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」(すなわち、いくつかのケースでは結合された状態で存在し他の場合では分離された状態で存在する要素)を意味するものと理解されるべきである。「及び/又は」で列挙された複数の要素は同様に(すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つ又は複数」を意味するものと)解釈されるべきである。語句「及び/又は」により特に識別された要素以外の他の要素は、特に識別された当該要素に関係しても関係しなくても任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への参照は「含む」などの開放言語と共に使用されると一実施形態ではAだけ(任意選択的にB以外の要素を含む)を参照し得る;別の実施形態ではBだけ(任意選択的にA以外の要素を含む)を参照し得る;さらに別の実施形態ではAとB両方(任意選択的に他の要素を含む)を参照し得る;等々。
【0148】
[1174] 本明細書と特許請求の範囲において使用されるように、「又は」は上に定義された「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リスト内のアイテム同士を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は包括的である(すなわち、多くの要素又はそのリスト、及び任意選択的に追加の未列挙アイテムのうちの少なくとも1つの包含であるが2つ以上も含む)と解釈されるものとする。それと反対に、「のうちのただ1つだけ」又は「のうちの正確に1つ」などの明示された用語、又は特許請求の範囲で使用される場合の「からなる」は、多くの要素又はそのリストのうちの正確に1つの要素の包含を指すことになる。概して、本明細書で使用される用語「又は」は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つだけ」、又は「のうちの正確に1つ」などの排他的用語により先行されると、排他的代替物(すなわち、「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すとだけ解釈されるものとする。「から本質的になる」は特許請求の範囲において使用されると、特許法の分野で使用されるようにその通常の意味を有するものとする。
【0149】
[1175] 本明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、1つ又は複数の要素のリストを参照した語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つ、又は複数から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に特に列記されたありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まなく、そして要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しないものと理解されるべきである。この定義はまた、要素のリスト内に特に識別された要素(語句「少なくとも1つ」が参照する)以外の要素が特に識別された当該要素に関係しても関係しなくても任意選択的に存在し得るということを許容する。したがって、非限定的例として、「AとBの少なくとも1つ」(又は、等価的に「A又はBの少なくとも1つ」、又は等価的に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bの存在無しに(そして、B以外の要素を任意選択的に含む)少なくとも1つのA(任意選択的に2以上を含む)を指し得、別の実施形態では、Bの存在無しに(そして、任意選択的にA以外の要素を含む)少なくとも1つのB(任意選択的に2以上を含む)を指し、さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA(任意選択的に2以上のAを含む)と少なくとも1つのB(任意選択的に2以上のBを含む、そして任意選択的に他の要素を含む)を指す、等々。
【0150】
[1176] 上記明細書だけでなく特許請求の範囲において、「含む」、「含む」、「搬送する」、「有する」、「含む」、「関与する」、「保持する」、「から構成される」などのすべての移行句は、開放的である、すなわち含むが限定しないことを意味するものと理解される。移行句「からなる」と「から本質的に構成される」だけは、米国特許局の特許審査官手順マニュアル(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)セクション2111.03に記載されるようにそれぞれ閉鎖移行句又は準閉鎖移行句であるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12A
図12B
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図26A
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図26C
図27A
図27B
図28
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