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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】電子機器組立装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20220413BHJP
   H01R 43/26 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
H01R43/26
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021128822
(22)【出願日】2021-08-05
【審査請求日】2021-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠
(72)【発明者】
【氏名】沢戸 瑛昌
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188560(JP,A)
【文献】特開2020-146812(JP,A)
【文献】特開2014-146434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00
H01R 43/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦かつ柔軟性があるケーブルの先端を把持する把持装置と、
前記ケーブルの先端の接続先である回路基板に対して前記把持装置を相対的に移動させるロボットアームと、
前記把持装置及び前記ロボットアームを動作制御するロボット制御装置と、
を備え、
前記把持装置は、前記ケーブルを把持した状態で、該ケーブルの一面における面内方向において、円弧状に揺動自在または前記ケーブルの幅方向に移動自在であり、
前記把持装置は、
前記ケーブルの前記一面を吸引して保持する吸引部と、
前記ケーブルを前記幅方向に挟持して保持する把持爪と、の少なくともどちらか一方を備え、
前記吸引部と前記把持爪との少なくともどちらか一方を有する第1プレートと、
前記第1プレートを前記ケーブルの前記面内方向において、円弧状に揺動自在に支持する第2プレートと、
前記第2プレートを前記ケーブルの幅方向に移動自在に支持するベース部と、
を備えることを特徴とする電子機器組立装置。
【請求項2】
前記把持装置は、
前記第2プレートに取り付けられ前記第1プレートを初期位置に付勢する第1バネと、
前記ベース部に取り付けられ前記第2プレートを初期位置に付勢する第2バネと、
をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の電子機器組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いるケーブルを把持する電子機器組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器組立装置は、例えば工場などの生産現場で用いられる装置であり、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)などの平坦かつ柔軟性(可撓性)のあるケーブルの先端を、接続先の回路基板のコネクタ(基板側コネクタ)などに接続する接続作業を行う。この電子機器組立装置は、カメラなどの視覚装置と、ロボットアームと、視覚装置やロボットアームを制御する制御装置とを備える。
【0003】
ケーブルは、可撓性を有し長尺状の柔軟物であるため、曲げたり押したりすると不測の変形をする。このため、ケーブルの特に先端の位置や姿勢には、ばらつきがある。このような位置や姿勢にばらつきのあるケーブルの先端を、電子機器組立装置の視覚装置によって認識したり、ロボットアームによって把持したり基板側コネクタに挿入したりすることは困難である。
【0004】
また、電子機器組立装置では、ケーブルの先端と基板側コネクタとの位置合わせを行って、ケーブルの先端を基板側コネクタに挿入する際、ケーブルの先端のわずかな位置や姿勢(微細位置)のずれにより、ケーブルの先端が基板側コネクタに突き当たるなどして挿入が困難となるような事態があり得る。
【0005】
このため電子機器組立装置では、ケーブルの先端を基板側コネクタに接続する接続作業を行う場合、ケーブルの先端が基板側コネクタに突き当たるなどして挿入が困難であれば、ケーブルの微細位置のずれを補正して、ケーブルの先端を基板側コネクタに確実に挿入することが求められている。
【0006】
特許文献1には、ロボットと、制御装置と、接続治具とを備えた組立システムが記載されている。制御装置は、ロボットアームを制御する。接続治具は、ロボットアームの先端に固定されていて、保持部と、位置補正部と、検知部とを備える。保持部は、接続対象物であるケーブルを保持し、ケーブルをコネクタに接続するために前後方向に移動可能である。位置補正部は、保持部を左右方向に移動させ、さらに保持部をケーブルの上下方向に沿った軸を中心にした回転方向に回転させる。
【0007】
この接続治具の検知部は、トルクセンサを有し、ケーブルをコネクタに接続する接続作業において、ケーブルとコネクタとが接触したときの左右方向および回転方向のトルクを検知する。そして検知部は、ケーブルをコネクタに接続するために、位置補正部による保持部の左右方向や回転方向の移動量が不足していることを検知し、その検出結果を制御装置に出力する。
【0008】
制御装置は、検知部からの検出結果に基づいてロボットアームを制御して、位置補正部による保持部の移動量を補正することで、保持部によってケーブルをコネクタに接続する。これにより、特許文献1の組立システムでは、ケーブルとコネクタとの位置合わせの誤差を精度よく補正することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-188560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし特許文献1の技術では、ケーブルをコネクタに接続する接続作業をおいて、ケーブルとコネクタとが接触したときのトルクを検出し、検出したトルクに基づいて保持部の移動量を補正するというフィードバック制御を、ケーブルがコネクタに接続されるまで繰り返すことになる。
【0011】
このため、特許文献1の技術では、ケーブルとコネクタとを接触させた後に、フィードバック制御によりロボットアームを制御して位置合わせを行うため、接続作業に時間を要する。またロボットアームの構造上の問題として、ケーブルを保持する保持部と、エンドエフェクタを左右に移動させるための関節との位置が離れているため、ロボットアームを制御しても、ケーブルの微細位置のずれを正確に補正することは困難となる場合もある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑み、ケーブルの微細位置のずれを短時間で補正し、ケーブルの接続作業を確実に行うことができる電子機器組立装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電子機器組立装置の代表的な構成は、平坦かつ柔軟性があるケーブルの先端を把持する把持装置と、ケーブルの先端の接続先である回路基板に対して把持装置を相対的に移動させるロボットアームと、把持装置及びロボットアームを動作制御するロボット制御装置と、を備え、把持装置は、ケーブルを把持した状態で、ケーブルの一面における面内方向において、円弧状に揺動自在またはケーブルの幅方向に移動自在であることを特徴とする。
【0014】
ここで把持装置によってケーブルを把持して、ケーブルの先端を接続先である回路基板のコネクタに挿入する際、ケーブルの先端のわずかな位置や姿勢(微細位置)のずれにより、ケーブルの先端がコネクタに突き当たって片当たりする場合がある。なおケーブルの先端がコネクタに片当たりするとは、一例として、ケーブルの先端の角がコネクタの孔の横壁に接触した状態をいう。
【0015】
これに対して上記構成では、把持装置は、ケーブルを把持した状態で、ケーブルの一面における面内方向において、円弧状に揺動自在またはケーブルの幅方向に移動自在である。このため、把持装置は、ケーブルの先端がコネクタに片当たりすると、ケーブルの先端がコネクタから受けた力によって、ケーブルを把持した状態で受動的に揺動または移動するという倣い動作を行うことができる。この倣い動作により、把持装置は、ケーブルの先端がコネクタの孔に入り込んで挿入されるように動く。このため上記構成によれば、ケーブルの先端の微細位置のずれを受動的に短時間で補正し、ケーブルの接続作業を確実に行うことができる。
【0016】
上記の把持装置は、ケーブルの一面を吸引して保持する吸引部と、ケーブルを幅方向に挟持して保持する把持爪と、の少なくともどちらか一方を備え、吸引部と把持爪との少なくともどちらか一方を有する第1プレートと、第1プレートをケーブルの面内方向において、円弧状に揺動自在に支持する第2プレートと、第2プレートをケーブルの幅方向に移動自在に支持するベース部と、を備えるとよい。
【0017】
これにより、ケーブルの先端を回路基板のコネクタに挿入する際、ケーブルの先端がコネクタに片当たりすると、第1プレートは、吸引部と把持爪の少なくともどちらか一方によってケーブルを保持しているため、ケーブルを介してコネクタから力を受ける。このため、第1プレートは、第2プレートに対してケーブルの一面における面内方向において、円弧状に受動的に揺動して傾く。第1プレートが揺動して傾くと、ケーブルの幅方向の分力が発生するため、第2プレートは、ベース部に対してケーブルの幅方向に受動的に移動する。このようにして、把持装置は、第1プレートが受動的に揺動し、さらに第2プレートが受動的に移動するという倣い動作を行うことにより、ケーブルの先端の微細位置のずれを補正して、ケーブルの先端をコネクタに挿入することができる。
【0018】
上記の把持装置は、第2プレートに取り付けられ第1プレートを初期位置に付勢する第1バネと、ベース部に取り付けられ第2プレートを初期位置に付勢する第2バネと、をさらに備えるとよい。
【0019】
これにより、把持装置では、ケーブルの先端がコネクタに片当たりするまでは、第1プレートが、第2プレートに対してケーブルの一面における面内方向において、円弧状に揺動せず、第1バネによって初期位置に維持され、第2プレートが、ベース部に対してケーブルの幅方向に移動せず、第2バネによって初期位置に維持される。このため上記構成では、ロボットアームが把持装置を移動させて、ケーブルの先端をコネクタに対して正確に位置決めしたときは、ケーブルの先端がコネクタに片当たりせず、ケーブルの先端の微細位置を補正することなく、ケーブルの先端をコネクタに確実に挿入することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケーブルの微細位置のずれを短時間で補正し、ケーブルの接続作業を確実に行うことができる電子機器組立装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態における電子機器組立装置が適用されるロボットシステムの全体構成図である。
図2図1の電子機器組立装置の一部を示す図である。
図3図1のロボットシステムの機能を示すブロック図である。
図4図2の電子機器組立装置の把持装置を拡大して示す図である。
図5図4の把持装置を斜め後方から見た状態を示す図である。
図6図5の把持装置によってケーブルの接続作業を行う様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態における電子機器組立装置100が適用されるロボットシステム102の全体構成図である。図2は、図1の電子機器組立装置100の一部を示す図である。なお以下の各図において、必要に応じて、前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0024】
電子機器組立装置100は、例えば工場などの生産現場で用いられる装置であり、図2に示すケーブル104の先端106を、接続先となる回路基板108のコネクタ110に接続(挿入)する接続作業を自動的に行う。ケーブル104としては、電子機器に用いるFPCやFFCなどの平坦かつ柔軟性がある長尺状のものであり、非常に撓みやすくなっていて、さらに先端106が自由端となっているものが対象となる。
【0025】
生産現場での実際の製造工程では、ケーブル104の接続作業において、ケーブル104の先端106を回路基板108のコネクタ110に挿入する際、ケーブル104の先端106のわずかな位置や姿勢(微細位置)のずれにより、ケーブル104の先端106がコネクタ110に突き当たるなどして挿入が困難となるような事態があり得る。
【0026】
そこで電子機器組立装置100では、ケーブル104の先端106の微細位置のずれを短時間で補正して、ケーブル104の先端106を、接続先の回路基板108のコネクタ110に確実に挿入して接続作業を行うことが可能な構成を採用した。
【0027】
すなわち電子機器組立装置100は、図1に示すロボット本体112と、ロボット本体112に接続されたロボット制御装置114とを備える。ロボットシステム102は、電子機器組立装置100に加え、ロボット制御装置114に接続された上位制御システム116と、入力装置118と、状態通知装置120とを備える。入力装置118は、ロボット制御装置114にコマンドやパラメータなどを入力する装置である。状態通知装置120は、ロボット制御装置114から送信されるロボット本体112の動作状態や接続作業の状態を受信し表示する装置である。
【0028】
ロボット本体112は、図1に示す基部122と、基部122に接続されたロボットアーム124と、把持装置126と、視覚装置128とを備える。把持装置126は、図2に示すようにロボットアーム124の先端130に取り付けられ、ケーブル104を把持する装置である。
【0029】
また図2に示すように、視覚装置128は、ケーブル104などを撮像する撮像装置であって、ロボットアーム124の先端130に向かって下向き姿勢で取り付けられていて、視覚センサであるカメラ132と、回路基板108やケーブル104を照明する照明装置134とを有する。
【0030】
図3は、図1のロボットシステム102の機能を示すブロック図である。ロボットアーム124は、6軸垂直多関節型であり、その各関節に設けられたアクチュエータである電動モータ136と、各関節の位置を検出するエンコーダ138とを有する。エンコーダ138は、各関節の位置検出結果を示す位置信号をロボット制御装置114に出力する。ロボット制御装置114は、エンコーダ138からの位置信号に基づいて電動モータ136を駆動する駆動信号を生成する。そして電動モータ136は、ロボット制御装置114から出力される駆動信号によって駆動され、接続作業の際、ロボットアーム124の目標とする動作を実現する。
【0031】
このようにしてロボットアーム124は、その先端130に取り付けられた図2に示す把持装置126を所定の位置に移動させることができる。なおロボットアーム124は、6軸垂直多関節型としたがこれに限定されず、6軸以外の垂直多関節型ロボットや水平多関節型ロボットなどであってもよい。
【0032】
図4は、図2の電子機器組立装置100の把持装置126を拡大して示す図である。図5は、図4の把持装置126を斜め後方から見た状態を示す図である。ただし図5では、図4に示すロボットアーム124の先端130を省略している。
【0033】
把持装置126は、第1プレート140と、第2プレート142と、ベース部144とを備える。第1プレート140は、複数の吸着ノズル146を含む吸引部148と、一対の把持爪150、152と、衝突検知スイッチ154とを有する。把持爪150、152は、第1プレート140の下面156に配置され、アクチュエータ158の駆動に伴って互いに接近または離間するように開閉動作することにより、ケーブル104を幅方向に挟持して保持(チャック)したり、あるいはケーブル104を開放したりする。
【0034】
吸引部148は、第1プレート140の下面156に設けられていて、吸着ノズル146に連通する不図示の吸着孔によってケーブル104の一面(上面)を吸引して保持する。吸着孔は、吸着ノズル146を介して例えばエジェクタなどの真空圧発生源と連通していて、図3に示す電磁弁160の動作によりエジェクタに圧縮空気を送り込むことで真空を発生させる。電磁弁160は複数の開閉弁を備え、吸着するケーブル104の幅に応じて、使用する吸着ノズル146の位置、数を変更することが可能となる。これにより、幅の異なる複数種類のケーブル104を同じ吸着部で吸着することができる。なお、使用する吸着ノズル146の配置は、教示の際にロボット側に教え込む、アクチュエータ158のエンコーダ(図示せず)から算出した位置情報などから設定が可能となる。
【0035】
また吸着ノズル146に連通する吸着孔を制御する電磁弁160は、図3に示すようにロボット本体112内に設置され、ロボット制御装置114からの駆動信号を受けて動作する。ただし電磁弁160は、ロボット本体112に限らず、ロボットシステム102内のいずれかの要素内に設置してもよい。
【0036】
衝突検知スイッチ154は、図4に示すように第1プレート140の前面162に配置されている。衝突検知スイッチ154は、ケーブル104の接続作業において、ケーブル104の先端106が、回路基板108のコネクタ110の孔164(図6(a)参照)に突き当たったりするなど異常が発生したことを検知し、検知信号をロボット制御装置114に出力する。ロボット制御装置114は、図3に示す衝突検知スイッチ154からの検知信号に基づいて、ケーブル104の接続作業に異常が発生したことを判定することができる。
【0037】
第2プレート142は、第1プレート140の下側に配置され、第1プレート140を上下方向に沿った軸165を中心にして、ケーブル104の一面における面内方向において、円弧状に揺動自在に支持する(図中、矢印A参照)。また、第2プレート142は、図5に示すように後方延長部166を有する。後方延長部166は、第2プレート142が第1プレート140の下側に配置された状態で、第1プレート140の後面168よりも後方に延長された部位である。また、第1プレート140の後面168の両端には、後方に突出した突出部170a、170bが形成されている。
【0038】
第2プレート142の後方延長部166の上面には、第1バネ172が取り付けられている。第1バネ172は、板バネであって、後方延長部166の上面に取り付けられる底部174と、壁部176とを有する。壁部176は、図5に示すように底部174から上方に屈曲して、さらにケーブル104の幅方向に延びる部位であり、その両端部178a、178bが、第1プレート140の後面168の突出部170a、170bに当接する。
【0039】
第1バネ172は、壁部174の両端部178a、178bが、第1プレート140の突出部170a、170bに当接することにより、第1プレート140を初期位置に付勢して、ケーブル104の先端106が、ケーブル104の一面における面内方向において、円弧状に揺動して微細位置のずれを生じないように、第1プレート140の位置を維持する。
【0040】
ベース部144は、図5に示すように第2プレート142の下側に配置され、第2プレート142をケーブル104の幅方向に移動自在に支持する(図中、矢印B参照)。また、ベース部144の上面180には、第2バネ182が取り付けられている。
【0041】
第2バネ182は、板バネであって、ベース部144の上面180に取り付けられる底部184と、一対の腕部186a、186bとを有する。腕部186a、186bは、その後端部188a、188bが底部184から上方に屈曲し、片持ち状態で第2プレート142の後方延長部166に向かって前方に延びている。そして、腕部186a、186bの先端部190a、190bは、第2プレート142の後方延長部166の側壁192a、192bに幅方向外側から当接している。
【0042】
これにより、第2バネ182は、第2プレート142を初期位置に付勢して、ケーブル104の先端106が幅方向の移動による微細位置のずれを生じないように、第2プレート142の位置を維持する。
【0043】
図5に示すように、ベース部144の後面194には、ロボット制御装置114からの駆動信号(図3参照)によって駆動する直動電動プランジャ196が取り付けられている。また直動電動プランジャ196は、図4のロボットアーム124の先端130に固定されている。これにより、直動電動プランジャ196は、ロボット制御装置114からの駆動信号によって、ロボットアーム124の先端130に対して、ベース部144を前後方向に移動させることができる(図中、矢印C参照)。そして、ベース部144が前後方向に移動することで、把持装置126全体が前後方向に移動することになる。このため、把持装置126は、直動電動プランジャ196の駆動により、第1プレート140の把持爪150、152に保持されたケーブル104の先端106を、回路基板108のコネクタ110に対して接近または離間させることができる。
【0044】
ここで図3に示す各要素について詳述する。まず、視覚装置128のカメラ132および照明装置134は、ロボットアーム124の先端130(図1参照)に取り付けられているが、これに限らず、接続作業の作業領域を俯瞰可能であれば、ロボット本体112とは別の位置に配置されていてもよい。またカメラ132は少なくとも1台以上必要だが、2台以上であるとさらに撮像精度が向上するため好ましい。さらにカメラ132は、カラー画像またはモノクロ画像を取得するものであってもよい。
【0045】
カメラ132が単眼の場合、公知のSLAM(simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて3次元撮像情報を推定することができる。ただしこの場合には、カメラ132を動かしながら撮像する必要がある。なおカメラ132は、原理的に距離の相対値しか得られないが、カメラ132の位置情報をロボット制御装置114から取得できればロボット座標系における位置情報を取得することが可能である。
【0046】
カメラ132がステレオカメラの場合、公知のステレオマッチングによる視差情報から位置情報を取得することができる。カメラ132が多眼の場合、ステレオカメラと原理は同じであり、色々な方向からの視差画像が得られるため、オクルージョンが生じにくい。またカメラ132がTOF(Time of Flight)カメラの場合、光を被写体に照射し、その光が被写体に反射して受信するまでの時間から位置情報を取得することができる。さらにカメラ132が照射光を利用する場合、公知のパターン投影(縞模様やランダムドットパターン)を行い、位置情報を取得することができる。
【0047】
照明装置134は、一例として画像を撮像するカメラ132のレンズ周辺に配置され、把持装置126で把持するケーブル104や、接続先の回路基板108のコネクタ110などを照明するが、これに限られず、距離計測を行う場合はパターン光を照射することもできる。
【0048】
ロボット制御装置114は、図3に示すようにCPU198と、信号の入出力を行う入出力部200と、RAM202およびROM204を有するメモリ206とを備える。これらCPU198、入出力部200およびメモリ206は、バス208を介して相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0049】
CPU198は、演算処理装置として機能し、メモリ206にアクセスしてRAM202またはROM204、さらに外部記憶装置等に格納された各種プログラムを読み出して実行する。RAM202またはROM204は、ロボット本体112の制御を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体である。ROM204は、CPU198が使用するプログラムや装置定数等を記憶する。RAM202は、CPU198が使用するプログラムやプログラム実行中に逐次変化する変数等を一次記憶する。このようにロボット制御装置114は、各種プログラムを実行することによって、ロボット本体112および把持装置126を制御し、各種機能をロボット本体112および把持装置126に実行させることができる。
【0050】
ロボット制御装置114の入出力部200は、通信装置、D/A変換器、モータ駆動回路、A/D変換器などを備えていて、インターフェイスを介して外部機器、電動モータ136およびアクチュエータ158、さらにはエンコーダ138などの各種センサとロボット制御装置114とを接続する。通信装置における具体的な通信手法としては、例えば、RS232C/485などのシリアル通信規格や、USB規格に対応したデータ通信であったり、一般的なネットワークプロトコルであるEtherNET(登録商標)や、産業用ネットワークプロトコルとして用いられるEtherCAT(登録商標)やEtherNet/IP(登録商標)等であったりしてもよい。
【0051】
ロボット制御装置114は、入出力部200を介してデータ格納用装置であるストレージ装置や記録媒体用リーダライタであるドライブ装置と接続した構成であってもよい。またロボット制御装置114は、専用のハードウェアを組み込んだ制御装置に限らず、各種プログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0052】
なおロボット制御装置114は、ロボットアーム124、把持装置126および視覚装置128をすべて制御しているが、これに限定されない。一例としてロボット制御装置114は、ロボットアーム124、把持装置126および視覚装置128をそれぞれ個別に制御する複数の制御装置の集合体として構成してもよく、複数の制御装置を互いに有線または無線で接続してもよい。さらに電子機器組立装置100では、ロボット制御装置114をロボット本体112の外部に設けているが、これに限らず、ロボット本体112の内部に設けてもよい。
【0053】
入力装置118は、キーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、スイッチ、レバー、ペダル、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段、もしくはこれらを備えたパーソナルコンピュータ、ティーチングペンダントなどのユーザが操作する操作手段を備える。また、接続作業を行うユーザによる入力や設定が入力装置118を用いて行われる。なおロボット本体112に各種の機能を実行させるプログラムを入力装置118で作成してもよい。プログラムは機械語などの低級言語、ロボット言語などの高級言語で記述されていてもよい。
【0054】
状態通知装置120は、ロボット制御装置114からロボット本体112の動作状態や、ケーブル104の先端106を、接続先の回路基板108のコネクタ110に挿入した状態の情報を受信し表示することにより、これらの情報をユーザに視覚的かつ直観的に認識させる。また状態通知装置120は、液晶パネルやティーチングペンダント、点灯ランプなどの表示装置でもよいし、警告音や音声などによって情報を通知する通知装置であってもよい。一例として、状態通知装置120は、ケーブル104の先端106をコネクタ110に挿入する接続作業が失敗した場合、警告を発するように設定することができる。また、パーソナルコンピュータやティーチングペンダントの画面などが状態通知装置120を兼ねていてもよい。さらに状態通知装置120は、入力や状態通知を行うアプリケーションを備えていてもよい。
【0055】
上位制御システム116は、例えばシーケンサ(PLC)や監視制御システム(SCADA)、プロセスコンピュータ(プロコン)、パーソナルコンピュータ、各種サーバもしくはこれらの組み合わせからなり、ロボット制御装置114と有線または無線で接続されている。そして上位制御システム116は、ロボット制御装置114を含む生産ラインを構成する各装置の動作状況に基づいて指示を出力して生産ラインを統括的に管理する。
【0056】
また、上位制御システム116は、接続作業が完了するまでの時間や、接続作業の完了後の状態などをロボット制御装置114から受信して収集することにより、不良率やサイクルタイムの監視、製品検査に用いることもできる。さらに上位制御システム116は、ロボット本体112の把持装置126によるケーブル104の把持状態の情報などをロボット制御装置114から取得することにより、ロボットアーム124をホームポジションに戻したり各装置を停止させたりするなどの動作を行わせてもよい。
【0057】
つぎに、電子機器組立装置100の動作を説明する。図6は、図5の把持装置126によってケーブル104の接続作業を行う様子を示す図である。なお図中では、便宜上、ケーブル104の幅を大きく示し、さらにケーブル104の先端106を挿入するコネクタ110も同様に大きく示している。
【0058】
ここで電子機器組立装置100は、CPU198がロボットアーム124に駆動信号を出力して動作させることにより、把持装置126を移動させて、ケーブル104の先端106をコネクタ110に対して位置決めした状態としている。そこでCPU198は、直動電動プランジャ196に駆動信号を出力して動作させることにより、図6(a)の矢印Dに示すようにベース部144を前方に押して、第1プレート140の把持爪150、152(図4参照)に保持されたケーブル104の先端106を、コネクタ110に接近させる。
【0059】
しかし図6(a)に示すように、ケーブル104の先端106の微細位置のずれにより、ケーブル104の先端106の角210が、コネクタ110の孔164の横壁212に接触した片当たりの状態となっている。
【0060】
このような事態を想定して、把持装置126は、ケーブル104を把持した状態で、ケーブル104の一面における面内方向において、円弧状に揺動自在およびケーブル104の幅方向に移動自在に構成されている。すなわち把持装置126の第1プレート140は、吸引部148および把持爪150、152によってケーブルを保持している。このため第1プレート140は、ケーブル104の先端106の角210を介してコネクタ110の孔164の横壁212から力を受ける。
【0061】
これにより、第1プレート140は、図6(a)の矢印Eに示すように第2プレート142に対してケーブル104の一面における面内方向において、円弧状に受動的に揺動して傾く。そして第1プレート140が揺動して傾くと、ケーブル104の幅方向の分力が発生する。
【0062】
つぎに、第2プレート142は、ケーブル104の幅方向の分力を受けて、図6(a)の矢印Fに示すようにベース部180に対してケーブル104の幅方向に受動的に移動する。
【0063】
このため、ケーブル104の先端106の角210が、図6(b)に示すようにコネクタ110の孔164の横壁212から離れる。そして、第1プレート140は、第1バネ172の付勢力により、図6(b)の矢印Gに示すように揺動して初期位置に維持される。一方、第2プレート142は、ケーブル104の幅方向の移動が維持される。これにより、ケーブル104の先端106は、微細位置のずれが補正されて、コネクタ110の孔164に入り込む。
【0064】
さらに、ベース部180が直動電動プランジャ196によって、例えば等速で前方に押し続けられているため、微細位置のずれが補正されたケーブル104の先端106は、図6(b)の矢印Hに示すように、コネクタ110の孔164に確実に挿入される。
【0065】
このようにして、電子機器組立装置100が適用されるロボットシステム102によれば、ケーブル104の先端106がコネクタ110に片当たりすると、把持装置126の第1プレート140が受動的に揺動し、さらに第2プレート142が受動的に移動するという倣い動作を行う。これにより電子機器組立装置100では、把持装置126が、ケーブル104の先端106がコネクタ110の孔164に入り込んで挿入されるように動くため、ケーブル104の先端106の微細位置のずれを受動的に短時間で補正して、ケーブル104の先端106をコネクタ110に挿入し、ケーブル104の接続作業を確実に行うことができる。
【0066】
また把持装置126では、ケーブル104の先端106がコネクタ110に片当たりするまでは、第1プレート140が、第2プレート142に対してケーブル104の一面における面内方向において、円弧状に揺動せず、第1バネ172によって初期位置に維持される。また第2プレート142は、ケーブル104の先端106がコネクタ110に片当たりするまでは、ベース部144に対してケーブル104の幅方向に移動せず、第2バネ182によって初期位置に維持される。
【0067】
このため電子機器組立装置100では、ロボットアーム124が把持装置126を移動させて、ケーブル104の先端106をコネクタ110に対して正確に位置決めしたときは、ケーブル104の先端106がコネクタ110に片当たりせず、ケーブル104の先端106の微細位置を補正することなく、ケーブル104の先端106をコネクタ110に確実に挿入することができる。
【0068】
さらに把持装置126は、ケーブル104を把持した状態で、ケーブル104の一面における面内方向において、円弧状に揺動自在およびケーブル104の幅方向に移動自在となる機構を、ケーブル104の先端106から近い位置に設定しているため、ケーブル104の微細位置のずれを補正する精度を管理し易くなる。
【0069】
なお把持装置126は、ケーブル104の接続作業において、ケーブル104を確実に保持できるのであれば、吸着部148および把持爪150、152を備える構成に限定されず、吸着部148と把持爪150、152との少なくともどちらか一方を備える構成としてもよい。
【0070】
なおケーブル104の先端106が、回路基板108のコネクタ110の孔164(図6(a)参照)に入り込んで挿入されたことを検知するために、以下の構成を採用してもよい。すなわち一例として、把持装置126において、直動電動プランジャ196とベース部144の間にバネ成分を仕込み、バネ成分の変位を測定するリニアエンコーダ(距離センサ)を取り付けて、動作後に位置を見て規定量位置が変位しているかを確認する構成を採用してもよい。また他の例として、把持装置126において、直動電動プランジャ196の推力を制限して、一定以上の力がかからないようにして、直動電動プランジャ196にリニアエンコーダ(距離センサ)を取り付けて、動作後に位置を見て規定量位置が変位しているかを確認する構成を採用してもよい。電子機器組立装置100では、これらの構成を採用することにより、ケーブル104の接続作業が完了したか否かを検出することができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、電子機器に用いるケーブルを把持する電子機器組立装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100…電子機器組立装置、102…ロボットシステム、104…ケーブル、106…ケーブルの先端、108…回路基板、110…コネクタ、112…ロボット本体、114…ロボット制御装置、116…上位制御システム、118…入力装置、120…状態通知装置、122…基部、124…ロボットアーム、126…把持装置、128…視覚装置、130…ロボットアームの先端、132…カメラ、134…照明装置、136…電動モータ、138…エンコーダ、140…第1プレート、142…第2プレート、144…ベース部、146…吸着ノズル、148…吸引部、150、152…把持爪、154…衝突検知スイッチ、156…第1プレートの下面、158…アクチュエータ、160…電磁弁、162…第1プレートの前面、164…コネクタの孔、166…後方延長部、168…第1プレートの後面、170a、170b…突出部、172…第1バネ、174…第1バネの底部、176…第1バネの壁部、178a、178b…壁部の両端部、180…ベース部の上面、182…第2バネ、184…第2バネの底部、186a、186b…腕部、188a、188b…腕部の後端部、190a、190b…腕部の先端部、192a、192b…後方延長部の側壁、194…ベース部の後面、196…直動電動プランジャ、198…CPU、200…入出力部、202…RAM、204…ROM、206…メモリ、208…バス、210…ケーブルの先端の角、212…コネクタの孔の横壁
【要約】
【課題】ケーブルの微細位置のずれを短時間で補正し、ケーブルの接続作業を確実に行うことができる電子機器組立装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる電子機器組立装置100は、平坦かつ柔軟性があるケーブル104の先端106を把持する把持装置126と、ケーブルの先端の接続先である回路基板108に対して把持装置を相対的に移動させるロボットアーム124と、把持装置及びロボットアームを動作制御するロボット制御装置114と、を備え、把持装置は、ケーブルを把持した状態で、ケーブルの一面における面内方向において、円弧状に揺動自在またはケーブルの幅方向に移動自在であることを特徴とする。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6