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特許7057548内部衝撃吸収ステアリングコラム組立体のためのエネルギー吸収デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】内部衝撃吸収ステアリングコラム組立体のためのエネルギー吸収デバイス
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20220413BHJP
   B62D 1/187 20060101ALI20220413BHJP
   B62D 1/181 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
B62D1/19
B62D1/187
B62D1/181
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019538095
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017053583
(87)【国際公開番号】W WO2018064088
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/400,254
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス ヴィクター コロナ
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン デイヴィッド レイ
(72)【発明者】
【氏名】リード シモン
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-257400(JP,A)
【文献】特開平09-011915(JP,A)
【文献】特開平09-193812(JP,A)
【文献】特開平11-165643(JP,A)
【文献】特開平06-211138(JP,A)
【文献】特表2015-509467(JP,A)
【文献】特開2002-067980(JP,A)
【文献】特開2006-044641(JP,A)
【文献】特開2005-053349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/19
B62D 1/187
B62D 1/181
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングコラム組立体であって、
a.コラムチューブと、
b.少なくとも一部が前記コラムチューブによって回転するように支持され、長手方向軸を有するステアリング軸と、
c.ほぼ前記長手方向軸に沿って前後方向に、前記ステアリング軸、前記コラムチューブ、又は両方を選択的に駆動するようになっているテレスコピックモータ部分組立体と、
d.エネルギー吸収ストリップと、
を備え、
前記エネルギー吸収ストリップは、
i.細長い本体部分と、
ii.第1の端部と、
iii.前記第1の端部と前記細長い本体部分との間で所定の角度を成し、前記第1の端部と前記細長い本体部分とを連結する湾曲部分と、
を備え、
前記エネルギー吸収ストリップは、ステアリングコラム組立体の中に保持され、
前記エネルギー吸収ストリップは、折り返されておらず
前記エネルギー吸収ストリップの前記第1の端部は、前記コラムチューブのノッチと係合し、引き抜きに抵抗して前記エネルギー吸収ストリップの前記第1の端部を前記コラムチューブ内に保持するような形状を有し、
前記エネルギー吸収ストリップは、閾値荷重を超える衝突時に前記コラムチューブの平行移動の結果としてU字形に変形するようになっており、前記テレスコピックモータ部分組立体は、前記衝突時に固定されたままである、
ステアリングコラム組立体。
【請求項2】
前記第1の端部と前記細長い本体部分との間の前記角度は、80度以上、かつ、100度以下である、
請求項1に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項3】
前記エネルギー吸収ストリップは、前記衝突時の前記コラムチューブの平行移動中にそれ自体が折り重なるようになっている、
請求項1又は2に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項4】
前記エネルギー吸収ストリップは金属ストリップである、
請求項1~3の何れか1項に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項5】
前記ステアリング軸、前記コラムチューブ、又は両方を選択的に上昇又は下降させるようになっているチルト部分組立体をさらに有している、
請求項1~4の何れか1項に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項6】
前記エネルギー吸収ストリップの前記第1の端部は、前記コラムチューブの前記ノッチの中に収容される幅狭部を有する、
請求項1~5の何れか1項に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項7】
引き抜きに抵抗する前記エネルギー吸収ストリップの前記第1の端部の形状は、T字形である、
請求項1~6の何れか1項に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項8】
前記エネルギー吸収ストリップは、前記衝突時に案内構造体によって案内され、U字形に変形する、
請求項1~7の何れか1項に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項9】
前記案内構造体は、一定の摩擦係数をもたらす材料で及び/又は前記エネルギー吸収ストリップを案内する際に破損しない十分な圧縮強度を有する材料で形成される、
請求項8に記載のステアリングコラム組立体。
【請求項10】
前記エネルギー吸収ストリップは、案内構造体によって所定の位置に保持される、
請求項1~の何れか1項に記載のステアリングコラム組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本教示は、改良された衝撃吸収(collapsible)ステアリングコラム組立体及びそれに関連する方法(例えば、二次衝突などにおいてエネルギー吸収を提供する方法)に関する。より詳細には、各態様は外部衝撃吸収コラム組立体に適応可能であるが、本教示は、主として内部衝撃吸収チルト及び電動式テレスコピック調節可能なステアリングコラムシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野では、チルト及びテレスコピック機能を含むステアリングコラム組立体を使用することが一般的となっており、このような組立体は、「傾斜及び伸縮」ステアリングコラム組立体としても公知である。モータを使用して車両運転者に対してハンドルを平行移動させることも増えてきている。
【0003】
車両の衝突時、通常2種類の衝突が存在する。一次衝突では、車両は別の物体に衝突する。二次衝突では、車両乗員は車両の構成要素に衝突する。例えば、車両運転者は、慣性によりハンドルに衝突する場合がある。このような二次衝突から運転者を保護するのを助けるために、衝撃吸収タイプ(impact-absorbing type)のステアリングコラムを使用することが一般的な手法になっている。
【0004】
衝撃吸収タイプのステアリングコラム装置は、運転者が二次衝撃を受けると、衝突エネルギーが車両の前方向にステアリングコラムに作用するような構造である。ステアリングコラムは、車体との1又は2以上の固定点から分離して、前方に移動することができ(例えば、圧潰ストロークで)、衝突エネルギーは、圧潰ストロークの過程で吸収される。外部衝撃吸収コラム組立体は、コラム全体がその固定点に対して平行移動するシステムの例である。内部衝撃吸収コラム組立体は、典型的には、車両内の組立体の各端部のうちの一方に近接する1又は2以上の固定点に固定されることになる。二次衝突からの圧潰ストローク時に、組立体の構成要素は、長手方向に圧潰することになるが(例えば、概して通常作動時に車両内で占有する容積内で、すなわち概して車両内の「占有領域」内で)、一般に、所定の固定点に対して一定の距離を越えて圧潰することはない。従って、内部圧潰システムは所定のストロークを有するが、1又は2以上の固定点で車両に固定したままとなる。
【0005】
多くの用途に対して、ステアリングコラム組立体は、チルト及びテレスコピック機能の両方を含む。このために、モータを使用して各機能を実現することが一般的である。例えば、1つのモータは、ステアリングコラム組立体をほぼ上向き又は下向きの垂直方向に動作させてハンドルの高さを車両の運転者に対して調節するように作動してチルト機能を実現するようになっている。別のモータは、ステアリングコラム組立体を動作させてハンドルの前/後位置を調節するように作動することができる。後者は、典型的には、ハンドルに関連する少なくとも1つの管体がステアリング軸に対して平行移動するテレスコピック管体構成の平行移動によって調節を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
典型的な既存のシステムと比べて、既存の衝撃吸収ステアリングコラム組立体(特に内部衝撃吸収システム)の改良のために、許容可能な解決策が、軽量化、構成要素数の低減、「占有面積」の低減、少なくとも約70mm(例えば、約80~100mm又はそれ以上)の圧潰ストローク、又は調整可能性及び/又は可動性をもたらして共通部品の使用を可能にして異なる車両の様々な性能仕様を満たすことを可能にするがそうでなければ最小限のハードウェア置換を必要とする構造プラットホームなどの、既存の組立体に対する一部又は全ての利点を含むことが望ましい。
【0007】
米国特許第5,547,221号、米国特許第5,690,362号、米国特許第5,961,146号、米国特許第6,264,239号、米国特許第6,224,104号、米国特許第5,477,744号、米国特許第7,322,610号、米国特許第7,350,816号、米国特許第6,685,225号、米国特許第7,410,190号、及び米国特許第7,258,365号、並びに米国公開第2013/0233117号は本発明に関連しており、これらの開示内容全体は、全ての目的のために引用により本明細書に組込まれる。また、欧州公開第EP1555188A1号は、本発明に関する教示を含み、引用により本明細書に組込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本教示は、特に二次衝突中に良好なエネルギー吸収特性を示す調節可能なステアリングコラム組立体(特に、内部衝撃吸収組立体)を得るために比較的少ない構成要素を使用することができる、簡単かつ洗練された構成手法を利用する。
【0009】
一般に、本教示は、自動車の構造体(例えば、クロス車両ビーム、計器パネル、又はその両方)に取り付けるのに適したハウジング(典型的には、鋳造することができるアルミニウムなどの金属で作られた)を含むステアリングコラム構成を利用する。変位可能な内側管体は、ステアリング軸を収容するように構成される。電気モータなどのテレスコピックアクチュエータデバイス(これは、テレスコピックモータ組立体の一部とすることができる)は、車両運転者が内側管体を前後方向に選択的に作動させることを可能にするように1又は2以上の駆動部材(例えば、ロッド)によってハウジング及び内側管体に作動可能に取り付けられる。また、組立体は、1又は2以上のエネルギー吸収デバイス要素を用いてコラムチューブが制御された方式でハウジングの中に前方に向かって平行移動することを可能にし、各要素は特定の車両用途に基づいて選択することができかつ所望の応答性(例えば、圧潰ストローク中の分離及び/又は塑性変形のタイミング)の変更及び調整を目的として設計することができる。従って、二次衝突事象中に、車両運転者による衝撃力は、ステアリング軸によってコラムチューブに伝達される。衝撃からの追加エネルギーは、テレスコピックモータ組立体及びコラムチューブ、又はハウジング、又はその両方に対して(例えば、これらの間で作動可能に)置かれた1又は2以上のエネルギー吸収要素によって吸収される。1又は2以上のエネルギー吸収デバイス要素は、塑性変形して衝撃エネルギーを吸収するように構成され(例えば、塑性変形可能な概して薄いストリップとして)、そのように材料が選択される(例えば、普通炭素鋼、1又は2以上の他の金属と鋼合金、又は何らかの他の鋼又は金属)。このような塑性変形は、伸びることなく変形することができるので、ストリップは、コラムチューブによってそれ自体が折り重なり、構造体(例えば、案内構造体)の縁部の周りで引っ張られるか又は前方に押しやられるかのいずれかであるようにされる状態になることが可能であり、変形が起こる。1又は2以上のエネルギー吸収デバイス要素のエネルギー吸収は、荷重からのエネルギーがエネルギー吸収デバイス要素の変形(塑性変形を含む)によって主として吸収される際に生じる。
【0010】
以下によって限定されることは意図していないが、1つの態様では、本明細書の教示は、特有のエネルギー吸収ストリップとステアリングコラム組立体を定める構成要素の組み合わせとを利用する。本教示は、エネルギー吸収ストリップを想定する。エネルギー吸収ストリップは、概して細長い本体部分を含むことができる。エネルギー吸収ストリップは、第1の端部を含むことができる。概して細長い本体部分は、第1の端部と概して細長い本体部分との間で所定の角度を成し、第1の端部と概して細長い本体部分との間の湾曲部分を含むことができる。エネルギー吸収ストリップは、ステアリングコラム組立体の中の保持されるよう構成することができ、閾値荷重を超える衝突時のコラムチューブの平行移動中に(例えば、圧潰ストローク中に)塑性変形によってエネルギーを吸収することができる。エネルギー吸収デバイスは、第1の端部においてコラムチューブ又はステアリングコラム組立体のプレート止め具(例えば、コラムチューブのノッチ又は開口部)と係合するように構成することができT字形部を含むことができる。エネルギー吸収ストリップは、概して折り返されていない状態にすることができる(例えば、U字形を形成しない)。第1の端部と概して細長い第1の部分との間の角度は、約90度±約10度とすることができる。エネルギー吸収ストリップは、衝突時のコラムチューブの平行移動中にそれ自体が折り重なるように構成することができる。エネルギー吸収ストリップは金属ストリップとすることができる。
【0011】
また、本教示は、調節可能なステアリングコラム組立体を想定する。調節可能なステアリングコラム組立体は、コラムチューブと、少なくとも一部がコラムチューブによって回転するように支持され、長手方向軸を有するステアリング軸とを含むことができる。ステアリングコラム組立体は、ほぼ長手方向軸に沿って前後方向に、ステアリング軸、コラムチューブ、又はその両方を選択的に駆動するようになっているテレスコピックモータ部分組立体をさらに含むことができる。また、ステアリングコラム組立体は、本明細書に記載のエネルギー吸収ストリップを含むことができる。エネルギー吸収ストリップは、閾値荷重を超える衝突時にコラムチューブの平行移動(例えば、前方方向)の結果として変形することができる。テレスコピックモータ部分組立体は、衝突時にほぼ固定されたままとすることができる。例えば、衝突及び/又は圧潰ストローク中に、コラムチューブ及び/又はステアリング軸、及びエネルギー吸収デバイスだけが移動ができる。ステアリングコラム組立体は、ステアリング軸、コラムチューブ、又はその両方を選択的に上昇又は下降させるように構成することができるチルト部分組立体をさらに含むことができる。エネルギー吸収ストリップの第1の端部は、コラムチューブの中に収容することができる。エネルギー吸収ストリップの第1の端部のT字形部は、コラムチューブのノッチと係合してコラムチューブの中にエネルギー吸収ストリップの第1の端部を保持することができる。エネルギー吸収ストリップの変形は、エネルギー吸収ストリップが衝突時に周りに折り返される案内構造体によって案内することができる。案内構造体は、一定の摩擦係数をもたらす材料で、及び/又はエネルギー吸収ストリップが案内構造体に折り返される際に破損しない(しかし曲がり得る)十分な圧縮強度を有する材料で形成することができる。エネルギー吸収ストリップの細長い本体部分は、コラムチューブの中に配置することができる。第1の端部は、コラムチューブから外側に延びることができ、組立体の中のプレート止め具に固定することができる。プレート止め具は、コラムチューブに取り付けることができる。衝突時に、プレート止め具は、コラムチューブから切り落とす(shear off)ことができる。エネルギー吸収ストリップの第1の端部は、プレート止め具に固定されたままであり、これにより細長い本体部分は変形することができる。
【0012】
本明細書の教示から分かるように、結果的、二次衝突の車両衝突時にステアリングコラム組立体がエネルギーを吸収することを可能にする特有の組立体(及び関連する方法)を実現することができ、コラムの内部衝撃吸収は、非常に小さな包囲範囲(packaging envelope)の中にあるが、調節可能な駆動位置を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本教示によるステアリングコラム組立体の側面図を示す。
図2】本教示によるステアリングコラム組立体内のエネルギー吸収デバイスを示す図である。
図3】本教示によるエネルギー吸収デバイス及びコラムチューブ体の拡大図を示す。
図4】ステアリングコラム組立体内のエネルギー吸収デバイスの組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
必要に応じ、本教示の詳細な実施形態が本明細書で開示されるが、開示された実施形態は、種々の代替の形態で具現化することができる教示の単なる例証であることを理解されたい。各図は、必ずしも正確な縮尺ではなく、一部の特徴部は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張されるか又は最小化されるか又は省略される場合がある。従って、本明細書に開示された具体的な構造及び機能の詳細は、限定的と解釈すべきでなく、当業者に本発明を様々に使用するために教示するための単に代表的な基礎と解釈すべきである。
【0015】
一般に、本明細書の教示は、衝撃吸収ステアリングコラム組立体、より詳細には、電動の伸縮機能を有する車両のための内部衝撃吸収ステアリングコラム組立体のための構成要素の固有の組合せに向けられる。本教示の使用によって、約70mm又はそれ以上、約80mm又はそれ以上、又は約100mm又はそれ以上の完全圧潰ストロークを得ることが可能である。組立体はまた、設計の相対的簡素化の観点で多くの他のシステムと比較して軽量化システムを可能にする。例えば、本明細書の教示は、単一構成要素を有するコラムハウジングの車両及び対応するチルト内に装着する一体化機能を企図し、これにより構成要素の数を減らし、また全体で「占有面積」を減少させる。本明細書の教示はまた、共通の部品の使用が様々な車両に対して様々な性能仕様を満たすことを可能にするが、そうでなければ最小ハードウェア置換を必要とする構造プラットホームを提供する。すなわち、同様の組立体は、一連の車両にわたって使用することができ、(例えば、特定の車両の固有の要件を満たす適切なエネルギー吸収デバイスの選択によって)個々に調整することができる。
【0016】
本明細書の組立体の詳細にさらに注目すると、これらは、例えば、ステアリングシャフトによってハンドルと作動可能に結合された管体を含むことになる。本明細書でコラムチューブと呼ばれる1つの当該管体は、典型的には、管体の長さの(全体とはいかないまでも)少なくとも一部に沿って中空空洞を有することになり、回転可能軸、つまりステアリングシャフト及び場合によって1又は2以上の軸受を収容して支持するような大きさで構成することができる。軸及び管体の両方は、長手方向軸を有することになる。車両に組み込まれる際に、軸及び管体の各々の長手方向軸は、ほぼ同軸に整列することができ、車両の長手方向軸又は各々とほぼ平行に整列される。軸及びコラムチューブは、典型的には、鋼又はアルミニウムなどの適切な金属で作ることができる。
【0017】
ブラケット構造体は、ステアリング軸の少なくとも一部を受け取るため及び自動車内にステアリングコラム組立体を取り付けるために使用することができる。ブラケット構造体は、単一の一体構造体を含むこと、又はブラケット構造体を形成するために一緒に1つの組立体に組み立てられた複数の構成要素を含むことができる。ブラケットは、鋳造構造体(例えば、鋳造によって作られた構造体)、鍛造構造体(例えば、金属塊を鍛造するによって作られた構造体)、機械加工構造体、圧密構造体(例えば、粉末金属塊を焼結及び/又はプレスするステップによって作られた構造体)又はこれらのいずれかの組合せとすることができる。例えば、1つの手法は、ブラケット構造体を鋳造してアルミニウム合金鋳造品を形成することである。ブラケット構造体は、車両内に取り付ける機能と、車両運転者に対する組立体のチルト機能を適合させる機能とを統合するように構成することができる。
【0018】
ブラケット構造体は、複数のリブを含むことができる。ブラケット構造体は、該ブラケットを車両に取り付けるために締結具が貫通することができる1又は2以上の開口部を含むことができる。ブラケット構造体は、例えば車両に取り付けるための1又は2以上の突出部を含むことができる。ブラケット構造体は、上面を含むことができ、その少なくとも一部は、自動車構造体に当接してこれに取り付けられるようなっている。例えば、上部ブラケットより上に配置されるほぼ平坦なクロス車両ビーム、計器パネル、又はその両方に取り付けるために、ブラケット構造体は、ほぼ平面の上面を含むことができる。勿論、図面から分かるように、ほぼ平面の上面は、示されているリブによって少なくとも部分的に定められた1又は2以上の窪みを含むことができる。また、ブラケット構造体は、ブラケットの下面から離れるように突出するカラー部分を含むことができる。カラー部分は、コラムチューブが当接することができる完全に閉じた又は少なくとも部分的に囲まれた構造を含むように定めることができる。ブラケット構造体は、1又は2以上の(例えば、1対の)枢動結合アームを含むことができる。例えば、少なくとも1対のアームは、上部ブラケットの前方端に向かって配置することができる。アームは、上面の前方端を越えて延びる部分を含むことができる。アームは、アームを貫通してコラムハウジングの中に入る締結具を受け入れるための1又は2以上の開口部を含むことができる。また、ブラケット構造体は、電動チルト部分組立体を収容するためのハウジング構造体、フランジ構造体、又はその両方、テレスコピックモータ部分組立体、エネルギー吸収デバイス、又はこれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。カラー部分は、本明細書では大文字「D」に似せて描かれている非対称的構造を有することができ、その内部に電動チルト部分組立体の1又は2以上の構成要素(例えば、ロッドなどの駆動部材)を収容する。これは「u」字形にすること又はそのように構成することができる。
【0019】
本教示は、ステアリング軸の長手方向軸にほぼ沿って前後方向にステアリング軸を選択的に駆動する(ロッド又は他の駆動部材によって)ようになった少なくとも1つのテレスコピックモータ部分組立体を使用することを想定する。テレスコピックモータ組立体は、駆動部材(例えば、ねじを付きロッド又はその長さの少なくとも一部上に歯車を有するロッド)を作動可能に駆動するモータ軸を有する電気モータを含むことができる。軸は、1又は2以上の歯車を用いて駆動部材を駆動することができる。軸は、ねじ付きナットを経由して駆動部材を駆動することができる。モータ軸は、長手方向軸を有し、この軸はステアリング軸及び/又はコラムチューブの長手方向軸に対してほぼ平行に配向される。モータ軸は、長手方向軸を有することができ、この軸はステアリング軸及び/又はコラムチューブの長手方向軸に対して横断方向に配向される。テレスコピックモータ部分組立体は、モータが少なくとも部分的に配置されるハウジングを含むことができる。ハウジングは、1又は2以上の平面を含むことができ、この平面は、他の表面(例えば、ブラケット、コラムハウジングのフランジ、又は何らかの他の取り付け構造)に摺動可能に当接するようになっている、他の表面は、コラムハウジングの一部とすること又はこれと作動可能に結合することができる。このような平面は、テレスコピックモータ部分組立体を組立体全体に固定するための取り付け構造の一部とすることができる。
【0020】
本教示は、ステアリング軸を選択的に上昇又は下降させるようになった少なくとも1つの部分組立体の使用をさらに想定する。随意的なチルト部分組立体は、手動で作動させる、電動式とする、又はその両方とすることができる。これは、ブラケット構造体に取り付けることができる(例えば、その長さに沿った第1の取り付け位置で)。チルト部分組立体は、少なくとも部分的にコラムハウジング内に組み込むことができる。
【0021】
図示のように、コラムハウジングは、上部ブラケットと枢動可能に連結され(例えば、上部ブラケット及びコラムハウジングの両方の前方端において)、ステアリング軸の調節を可能にするようになっている(例えば、チルト部分組立体、テレスコピックモータ部分組立体、又は両方によるチルト調節、テレスコピック調節、又はその両方)。コラムハウジングは、鋳造構造体(例えば、鋳物鋳造によって作られた構造体)、鍛造構造体(例えば、金属塊を鍛造することによって作られた構造体)、機械加工構造体、圧密構造体(粉末金属塊を焼結及び/又はプレスするステップによって作られた構造体)、又はこれらのいずれかの組み合わせとすることができる。1つの手法は、アルミニウム合金鋳造品を形成するためにコラムハウジングを鋳造する。コラムハウジングは、1又は2以上のリブを含むことができる。コラムハウジングは、構造体を含むことができ(ハウジングの長手方向軸に対してほぼ半径方向外向きに突出するようにハウジングの側面に沿って)、この構造体の上に本明細書に記載のエネルギー吸収デバイスを固定すること又はその中に本明細書の記載のエネルギー吸収デバイスを配置することができる。コラムハウジングは、実質的に円筒構成を有することができる。コラムハウジングは、コラムハウジング長さの少なくとも一部の上に横方向に突出するフランジを有する下側部分を有することができる。フランジは、コラムハウジングの両側から突出することができる。フランジは、これが突出する壁の最外範囲を越えて延びる位置に横方向外向きに突出することができる。コラムハウジングは、下側部分にコラムチューブを露出させるための1又は2以上の開口部、例えばスロットを有することができ、コラムチューブは、テレスコピックモータ部分組立体に関連する駆動部材と連結してこれと一緒に(例えば、適切なブラケットを介して)長手方向に平行移動することができるようになっている。コラムコラムハウジングは、ブラケット構造体に枢動可能に連結されるので(例えば、組立体の前方端において)、二次衝突の場合に、コラムハウジングは、その通常作動位置にほぼ固定されたままとなる。
【0022】
本教示は、通常作動中にコラムハウジング、テレスコピックモータ部分組立体、及び内側コラムチューブに連結される、テレスコピックモータ部分組立体取り付け構造体のさらなる使用を想定する。テレスコピックモータ部分組立体取り付け構造体は、その一部を形成するモータ用ハウジングと少なくとも部分的に一体化することができる。テレスコピックモータ部分組立体取り付け構造体は、コラムハウジングの底面に対向する1又は2以上の平面を有する上側部分を含むことができる。例えば、テレスコピックモータ部分組立体取り付け構造体は、少なくとも部分的にテレスコピックモータ部分組立体と一体化することができる(例えば、モータハウジングの一部として)。
【0023】
例示的に、テレスコピックモータ部分組立体取り付け構造体は、コラムハウジングに対してテレスコピックモータ部分組立体を固定するための1又は2以上のボルトと共に使用することができる。
【0024】
テレスコピックモータ部分組立体は、ハンドルを車両運転者に対して前後方向に平行移動させるように作動する。テレスコピックモータ部分組立体は、ロッドなどの適切な駆動部材を使用することができ、駆動部材は、コラムチューブと結合することによって作動可能にステアリング軸に結合することができる。例えば、適切なブラケット又はプレート止め具は、駆動部材(又はその上にあるねじ付きナット)をコラムチューブに結合することができる。コラムハウジングは、ブラケットを受け入れる1又は2以上のスロット又は他の切欠き部を有することができる(例えば、コラムハウジングの底部の長手方向スロットは、コラムチューブを露出させることができる)。駆動部材は細長くすることができる。例えば、駆動部材は、ロッドとすることができる。駆動部材は、ねじを有することができる。駆動部材は、歯を有することができる。駆動部材は、テレスコピックモータ部分組立体のモータに関連する歯車又は他の駆動機構と噛み合い係合するための何らかの他の構造を有することができる。駆動部材は、長手方向の移動量を制限するための適切な機構を含むことができる。例えば、調節可能な止め具を提供して部材の直線移動を制限する、駆動部材(例えば、駆動ロッド)のねじ部にねじ式で調節可能に取り付けられる内ねじ付きナットを含むことができる。
【0025】
本教示の組立体全体の中に組み込む場合、テレスコピックモータ部分組立体は、エネルギー吸収デバイスに取り付けるための適切な構造体、エネルギー吸収デバイスのためのブラケット、コラムハウジング、又はこれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0026】
また、本教示は、ステアリングコラム組立体内に配置され(例えば、コラムチューブの近くに取り付けられるか又は固定される)、通常動作時にステアリングコラム組立体を動作位置に維持するためにコラムハウジングに対して所定位置に固定されるようになった、少なくとも1つの塑性変形可能なエネルギー吸収デバイス要素(例えば、ストリップ又はベンドプレート)の使用を想定する。エネルギー吸収デバイスは自由端を有することができる。自由端は、概して幅狭の部分及び/又はT字形部を有することができる。例えば、幅狭部分の自由端は、コラムチューブのノッチ内に収容することができ、T字形部は、コラムチューブの中まで延びる(例えば、コラムチューブとステアリング軸との間で)。エネルギー吸収デバイスは、細長い金属部材とすることができる。エネルギー吸収デバイスは、少なくとも1つの比較的平坦な面(例えば、細長い本体部分)を有することができる。エネルギー吸収デバイスは、細長い本体部分及び自由端(例えば、T字形部を有する端部)を連結する湾曲部分を有することができる。湾曲部分は、自由端と細長い本体部分との間である角度を成すことができる。角度は、約70度又はそれ以上、約80度又はそれ以上、又は約85度又はそれ以上とすることができる。角度は、約110度又はそれ以下、約100度又はそれ以下、又は約95度又はそれ以下とすることができる。例えば、自由端及び細長い本体部分は、約90度の角度を成すことができる。エネルギー吸収デバイスは金属ストリップとすることができる。随意的に、ストリップは、その長さの少なくとも一部に沿って細長いスロットを有することができる。例えば、スロットは、組立体内にストリップを固定するための締結具、タング、又は何らかの他の構造を受け入れるために用いることができる。エネルギー吸収ストリップは、変形前にほぼ折り返されていない状態とすることができる(例えば、ストリップには、U字形の何らかの互いに平行な部分がない)。第1の端部は、細長い本体部分の長さの約20パーセント又はそれ以下だけ折り返されることができる。製造中にストリップをほぼ折り返されていない又は最小限に折り返される状態にすることが好都合であり、例えば、金属ストリップにループを形成することは難しく追加の資源又は機械装置を必要とする場合があり、又はエネルギー吸収ストリップが弱くなる場合がある。
【0027】
エネルギー吸収デバイスは、断面において丈又は厚さよりも幅が広い寸法とすることができる(例えば、幅と厚さの比率が少なくとも約1.5:1、約3:1、約5:1、約10:1、約20:1、約30:1、又はこれ以上とすることができる)。エネルギー吸収デバイス要素は、その長さに沿って概して連続した形状、厚さ、及び/又は断面外形を有することができる。エネルギー吸収デバイス要素は、その長さに沿って異なる形状、厚さ、及び/又は断面外形を有することができる。エネルギー吸収デバイス要素は、球根状の自由端を有することができる(例えば、T字形部の代わりに又はこれに加えて)。エネルギー吸収デバイス要素は、閾値荷重を超える衝突中に(例えば、圧潰ストローク中に)動かないようにコラムチューブ内又はプレート止め具に固定することができる何らかの形状を有する自由端を含むことができる。エネルギー吸収デバイス要素は、その長さの主要部分(例えば、約50%又はそれ以上、約65%又はそれ以上、又は約80%又はそれ以上)に沿ってほぼ連続した形状及び/又は断面外形を有する自由端を含むこと又はそれに隣接する部分を含むことができる。エネルギー吸収デバイスは、ほぼ連続した形状及び/又は断面外形部分とは異なる形状の取り付け端部部分を含むことができる。エネルギー吸収デバイス要素は、約0.2mm又はそれ以上、約0.5mm又はそれ以上、又は約0.8mm又はそれ以上の厚さを有することができる。エネルギー吸収デバイス要素は、約5mm又はそれ以下、約4mm又はそれ以下、又は約3mm又はそれ以下の厚さを有することができる。エネルギー吸収デバイスは、鋼(例えば、普通炭素鋼(SAE1008、1010など)、鉄に加えて金属を含む鋼合金など)で作ることができる。
【0028】
1つの態様では、エネルギー吸収デバイス要素は、エネルギー吸収デバイスの第1の端部(例えば、T字形、ほぼ球根状の形状、又は引き抜きに耐える他の形状を有することができる)がコラムチューブの少なくとも一部の中に配置されるか又はコラムチューブに保持されるようなものとすることができる。コラムチューブは、エネルギー吸収デバイスの一部(例えば、第1の端部の一部)を受け入れるためのノッチ又は他の開口部を含むことができる。例えば、ノッチは、衝突中(例えば、二次衝突中)のラムチューブの平行移動により、第1の端部の先頭のエネルギー吸収ストリップそれ自体が折り重なる(例えば、ほぼU字形を形成する)ようにすることができる。変形は、コラムチューブ及び第1の端部が連結する領域に又はその近くに配置された案内構造体によって制御することができる。案内構造体は、エネルギー吸収ストリップの少なくとも一部を受け入れることができ(例えば、第1の端部は、案内構造体及びコラムチューブの両方を貫通して挿入することができ)、圧潰ストローク時に、エネルギー吸収ストリップは、案内構造体の周りで引っ張ることができる。従って、案内構造体は、エネルギー吸収ストリップの変形のために制御された半径をもたらすことができる。案内構造体は、十分な圧縮強度を有する材料で作ることができる(例えば、エネルギー吸収ストリップが構造体に折り返される際に破損しないように)。例えば、案内構造体は、デルリン(Delrin)で形成することができ、デルリンは、曲がることはできるが破損することはない及び/又は一定の摩擦係数をもたらすことができる。案内構造体は、例えば鋼製のプレート止め具によって裏打ちすること及び/又は支持することができる。
【0029】
別の態様では、エネルギー吸収デバイス要素(例えば、エネルギー吸収ストリップ)の細長い本体部分は、コラムチューブの中に配置することができ、エネルギー吸収ストリップの第1の端部は、コラムチューブから外側に延びてプレート止め具に結合することができる。プレート止め具は、概して前後方向のコラムチューブの調節を可能にするために、コラムチューブに固定されること(例えば、リベットなどの1又は2以上の締結具によって)及びテレスコピック部分組立体のねじ付きナットに連結することができる。圧潰ストローク中に、プレート止め具は、コラムチューブから切り落とすことができる。エネルギー吸収ストリップは、第1の端部がプレート止め具に連結したままとすることができ、エネルギー吸収ストリップの細長い本体は、コラムチューブがストリップを押し進める際に変形し、これによりエネルギー吸収ストリップは、コラムチューブの縁部の周りで折り返される折り返されていない、又は変形する。
【0030】
上記の構成のいずれでも、テレスコピックモータハウジングは固定されたままであり、これによりコラムチューブ及びエネルギー吸収ストリップだけが圧潰ストローク中に移動するので、小さな包囲範囲でのコラムの内部圧潰が可能になる。
【0031】
二次衝突中に、所定の荷重に達すると、エネルギー吸収デバイス要素は、最初に平行移動し、弾性変形し、所定の荷重に達した後に塑性変形し始めることになる(例えば、圧縮力又は引張力を受けて)。このような塑性変形は、二次衝突からのエネルギーの吸収に実質的に寄与することが想定される。エネルギー吸収デバイス要素は、その長さに沿った1又は2以上の位置において、組立体を有する別の構造体(例えば、コラムチューブ、コラムハウジング、テレスコピックモータ部分組立体など)に締結することができる。
【0032】
また、本明細書の教示は、記載された組立体を作る方法及び/又は取り付ける方法を想定する。従って、記載された各要素は、記載された組立体を得る方法で組み立てることができる。本教示は、自動車の中に取り付けるための本明細書に記載された組立体を提供することを想定する。例えば、本教示は、クロス車両ビーム、計器パネル、又はその両方へのブラケット構造体の取り付けを含む。このような取り付けは、クロス車両ビーム及び/又は計器パネルの上又は下に、記載されたブラケット構造体を配置するためのものとすることができる。本教示は、本教示による組立体を自動車の中に取り付けるために(例えば、クロス車両ビーム、計器パネル、又はその両方に取り付けることによって)提供することを想定する。
【0033】
また、本教示は、記載された組立体の作動で生じる方法を想定する。例えば、本教示は、少なくとも部分的にコラムチューブの中に収容されるように構成される塑性変形可能なエネルギー吸収デバイスを含む組立体を提供することを想定する。所定の衝撃荷重を超えるステアリング軸への衝撃荷重の場合に、エネルギー吸収デバイスは、テレスコピックモータがコラムハウジングと実質的に連結した状態で塑性的に曲がって衝撃荷重に起因するエネルギーを吸収することができる。
【0034】
ここで図を参照すると、図1~4は、本教示による車両用の電気的傾斜及び伸縮ステアリングコラム組立体の構造及び作動の実施例を示す。組立体は、チルト調節特徴部及びテレスコピック調節特徴部を有する。この各特徴部に関しては、関連のモータが存在する。しかしながら、モータのうちの1つは省略することができる(例えば、チルト調節は、モータを用いることなく手動で行うことができる)。
【0035】
図1は、前方端12及び後方端14を有する例示的なステアリングコラム組立体10を示す。ステアリングコラム組立体10は、コラムチューブ20及びステアリング軸24を支持するコラムハウジング16を含む。ステアリング軸24は、ハンドル(図示せず)を支持するようになっており、ハンドルが回転すると回転することができる。コラムチューブ20は、コラムハウジング16の中で直線テレスコピック移動できるように取り付けられる。テレスコピック移動は、テレスコピック部分組立体30によって行われる。ブラケット構造体22は、車両内にステアリングコラム組立体10を取り付けるのを助ける。また、ブラケット構造体22は、少なくとも部分的にチルト調節部分組立体を支持することができ、ステアリング軸24、コラムチューブ20、コラムハウジング16、又はこれらを組み合わせたもののチルト調節を可能にする。
【0036】
図2は、本教示によるエネルギー吸収ストリップ40及びテレスコピック部分組立体30を示す。エネルギー吸収ストリップが見えるようにコラムハウジングは省略されている。ステアリングコラム組立体は、ねじ付きロッドとして示した駆動部材34を含むテレスコピック部分組立体30を含む。駆動部材34は、コラムハウジング又はコラムハウジングに取り付けられた別の構造内に収容することができる電気モータなどのアクチュエータデバイス32によって駆動される。ねじ付きナット36は、駆動部材34に沿ってほぼ直線様式で移動することができる。プレート止め具38又は他の構造体(明瞭化のために省略されているが図4を参照)は、ねじ付きナット及びコラムチューブ20に連結することができ、ナット36が駆動部材34に沿って平行移動する際に、コラムチューブ20は同様に前後方向に平行移動し、これによりステアリングコラム組立体のテレスコピック調節が可能になる。エネルギー吸収ストリップ40は、随意的な案内構造体48を介してコラムハウジング20に固定され、コラムチューブ20が二次衝突などにより圧潰ストローク中に前方に平行移動する際に変形することでエネルギーを吸収するようになっている。
【0037】
図3は、エネルギー吸収ストリップ40の拡大図を示す。エネルギー吸収ストリップ40は、幅狭部分及びT字形部を有する第1の端部42を含む。エネルギー吸収ストリップは、エネルギー吸収ストリップ40の細長い本体46を第1の端部42と連結する湾曲部分44を含む。エネルギー吸収ストリップ40の第1の端部42は、コラムチューブ20のノッチ18に収容され、T字形部は、コラムチューブの中に延びる。エネルギー吸収ストリップ40の何らかの変形の前に、第1の端部42と細長い本体46との間に形成された角度は、約90度±約10度である。閾値荷重に達することによりコラムチューブが前方に平行移動する圧潰ストローク中に、コラムチューブは、エネルギー吸収ストリップを前方に押しやり、それ自体が曲がる又は折り重なるようにして略U字形を形成する。案内構造体48は、コラムチューブのノッチ18に又はその近くに配置することができ、圧潰ストローク中にエネルギー吸収ストリップ40の変形を案内する役割を果たすことができる。案内構造体48は、エネルギー吸収ストリップ40の一部を受け入れる開口部を含むことができ、エネルギー吸収ストリップは、エネルギーを吸収する際のエネルギー吸収ストリップの変形中に、概して案内構造体の中を移動して(例えば、乗り越えて)案内構造体上で折り重ねることができる。本組立体の利点は、テレスコピック部分組立体が圧潰ストローク中でも組立体の内部に固定されたままにすることができる点である。
【0038】
図4は、ステアリングコラム組立体10内のエネルギー吸収ストリップ40の別の構成を示す。組立体10は、前方端12及び後方端14を有する。テレスコピック部分組立体30は、電気モータなどのアクチュエータデバイス32によって駆動される駆動部材34を含み、これは駆動部材34の長さに沿ってねじ付きナット36を平行移動させる。プレート止め具38は、ねじ付きナット36をコラムチューブ20に連結し、これによりコラムチューブ20は、テレスコピック部分組立体30によるテレスコピック調節中に前後に平行移動することができる。プレート止め具38は、リベット50によってコラムチューブ20に取り付けられるが、他の取り付け方法も可能である。エネルギー吸収ストリップ40は、コラムチューブ20の内部(例えば、コラムチューブとステアリング軸24との間)に配置される。エネルギー吸収ストリップ40は、コラムチューブ20から外側に延びる第1の端部42を有し(例えば、約90度±約10度の角度を成す)、第1の端部は、プレート止め具38に取り付けられ又はこれと係合して所定位置に保持される。圧潰ストローク中に、リベット50は剪断され、コラムチューブ20は、ステアリングコラム組立体の前方端12に向かって前方に平行移動する。テレスコピック部分組立体30、特に電気モータなどのテレスコピックアクチュエータデバイスは、固定されたままとすることができるが、エネルギー吸収ストリップ40は、コラムチューブ20によって押されるので変形せざるを得ない。エネルギー吸収ストリップ40の第1の端部42は、プレート止め具38によって保持されたままであり、エネルギー吸収ストリップ40は、コラムチューブ20がエネルギー吸収ストリップを押してこれが折り重なるようにするので、変形せざるを得ない。
【0039】
上記から分かるように、ステアリングコラム組立体の圧潰は、エネルギー吸収の一次モードとしての摩擦に依存することなく可能である。むしろ、本明細書の教示は、二次衝突からのエネルギーを吸収するために、主として塑性変形に依存する。従って、摩擦への依存は、塑性変形への依存と比較して、せいぜい付随して起こり得る可能性がある。エネルギー吸収は、本質的に摩擦へ依存しないことが可能である。ステアリングコラム組立体の圧潰は、エネルギー吸収デバイスの形態としてのワイヤに依存することなく行うことができる。エネルギー吸収デバイスは、ワイヤ以外の構造とすることができる。さらに、エネルギー吸収は、本明細書で説明するエネルギー吸収デバイスの塑性変形の結果であるが、このような塑性変形は、エネルギー吸収デバイスの何ら恒久的な伸長なしで起こる変形とすることができる。
【0040】
上記では例示的な実施形態が記載されているが、これらの実施形態は、本発明の全ての可能性のある形態を説明することを意図していない。むしろ、本明細書で用いる用語は、非限定的な説明のための用語であり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことができることを理解されたい。加えて、種々の実行する実施形態の特徴を組合せて、本発明のさらなる実施形態を形作ることができる。
【0041】
本明細書に列挙する何らかの数値は、何らかの小さな値と何らかの大きな値との間の少なくとも2つの単位数の区別が存在する場合は1つの単位数の増分でより小さい値からより大きな値までの全ての値を含む。一例として、構成要素の数量又はプロセス変数の値、例えば、温度、圧力、時間など値は、例えば、1から90、好ましくは20から80、より好ましくは30から70であると記載される場合、15から85、22から68、43から51、30から32などの値は、本明細書では明示的に列挙されることが意図される。1未満の値に対して、1つの単位数は、必要に応じて0.0001、0,001、0.01又は0.1であると想定される。これらは、具体的に意図された例であり、列挙されたより小さい値と最も大きい値との間の数値の全ての可能性のある組み合わせは、同様の方式で本明細書に明示的に述べられていると考えるべきである。
【0042】
別途指定しない限り、全ての範囲は、両終点及び各終点の間の全ての数を含む。範囲に関連して「約」又は「ほぼ」の使用は、範囲の両端に適用される。従って、「約20から30」は、少なくとも特定の終点を含めて「約20から約30」を包含することが意図される。
【0043】
特許出願並びに特許公報を含む全ての論文及び参考文献の開示は、全ての目的のために引用により組み込まれる。組合せを説明する用語「本質的に~から成る」は、特定された要素、成分、構成要素、又はステップを含み、さらに組み合わせのベース及び新規の特徴部に物質的に影響を与えない他の要素、成分、構成要素、又はステップを含むことになる。また、本明細書で要素、成分、構成要素、又はステップの組み合わせを説明する用語「構成する」又は「含む」の使用は、要素、成分、構成要素、又はステップから実質的に成る又はまさに成る実施形態を想定する。
【0044】
複数の要素、成分、構成要素、又はステップは、単一の一体的な要素、成分、構成要素、又はステップによって提供することができる。これに代えて、単一の一体的な要素、成分、構成要素、又はステップは、別個の複数の要素、成分、構成要素、又はステップに分けることができる。要素、成分、構成要素、又はステップを説明する「a」又は「one」の開示は、追加の要素、成分、構成要素、又はステップを除外することを意図するものではない。
【0045】
図示の要素の相対的な位置関係は、たとえ逐語的に記載されていなくても本明細書の教示の一部である。
図1
図2
図3
図4