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特許7057552触媒及びこの触媒を使用してバイオディ-ゼルを製造する方法
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  • 特許-触媒及びこの触媒を使用してバイオディ-ゼルを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】触媒及びこの触媒を使用してバイオディ-ゼルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 25/04 20060101AFI20220413BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220413BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220413BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
B01J25/04 Z
B01J37/08
B01J37/04
B01J38/00 301P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020193060
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】202011125874.1
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517024560
【氏名又は名称】華北理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 一同
(72)【発明者】
【氏名】曽 亜南
(72)【発明者】
【氏名】李 俊国
(72)【発明者】
【氏名】王 亜軍
(72)【発明者】
【氏名】劉 宝
(72)【発明者】
【氏名】張 喜
(72)【発明者】
【氏名】李 涛
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/133189(WO,A1)
【文献】特開2012-161733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 37/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオディーゼル製造に用いられる鉛含有触媒の製造方法であって、
(1)鉛含有高炉ダストの前処理工程:
(ア)鉛含有高炉ダストをボ-ルミルで研磨し、200-400メッシュの篩を通過し、上記鉛含有高炉ダストの組成成分は、C:32.4~35.2質量%、Pb:29.4~32.1質量%、Zn:1.7~2.9質量%、Ca:3.0~5.0質量%、S:8.0~10.0質量%、を含むステップ、
(イ)篩を通過された鉛含有高炉ダストをオ-ブンに入れ、75~105℃の条件で燥し、前処理された鉛含有高炉ダストを得るステップ、
(2)鉛含有高炉ダストにより固体触媒を活性化して製造する工程:
(ウ)前処理された鉛含有高炉ダストを高温管状反応炉に入れ、不活性気体で200~1000℃の条件で1~5h焼成し、ガス流量を10~40mL/minに設定し、焼成したサンプルを75~400メッシュの篩を通過し、鉛含有高炉ダスト触媒を得るステップ、
を含むことを特徴とするバイオディーゼル製造に用いられる鉛含有触媒の製造方法。
【請求項2】
(1)反応容器内で大豆油又は高酸価のジャトロファ油とメタノ-ルをnオイル:nアルコ-ル= 1:(15~25)のモル比に応じて混合し、次に大豆油又は高酸値のジャトロファ油に対する3~10 wt%の鉛含有高炉ダスト触媒を添加する工程と、
(2)反応容器を密閉し、120~180℃で3~5h反応する工程と、
(3)反応終了後、静置して触媒と液体生成物が自動的に分離し、液体生成物を移し出し、触媒を再利用するために反応容器に残す工程と、
を含むバイオディ-ゼルの製造方法であって、
前記鉛含有高炉ダスト触媒は、
(ア)鉛含有高炉ダストをボ-ルミルで研磨し、200-400メッシュの篩を通過し、前記鉛含有高炉ダストの組成成分は、C:32.4~35.2質量%、Pb:29.4~32.1質量%、Zn:1.7~2.9質量%、Ca:3.0~5.0質量%、S:8.0~10.0質量%、を含むステップ、
(イ)篩を通過された鉛含有高炉ダストをオ-ブンに入れ、75~105℃の条件で燥し、前処理された鉛含有高炉ダストを得るステップ、
(ウ)前処理された鉛含有高炉ダストを高温管状反応炉に入れ、不活性気体で200~1000℃の条件で1~5h焼成し、ガス流量を10~40mL/minに設定し、焼成したサンプルを75~400メッシュの篩を通過し、鉛含有高炉ダスト触媒を得るステップ、
前記(ア)、(イ)、(ウ)ステップにより得られた産物である
ことを特徴とするバイオディ-ゼルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオディ-ゼル用触媒およびバイオディ-ゼルの製造方法に関し、特に鉛含有高炉ダストを使用して製造される触媒、及びその触媒を使用してバイオディ-ゼルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、人間社会にはエネルギ-を得るために化石燃料に大きく依存している。化石燃料の燃焼は生態環境を破壊し、霞や温室効果や環境汚染などの問題は人々の生活や健康に深刻な影響を及ぼしている。化石燃料の日々枯渇のゆえに、人々は、クリ-ンで環境にやさしい再生可能エネルギ-の開発が非常に重要な意味を持つことが、ますます意識している。
【0003】
バイオディ-ゼルは、植物油、動物油、飲食廃棄油、低価アルコ-ルを酸性・塩基性触媒の作用で、エステル交換反応により得られた再生可能燃料として、近年大きな注目を集めている。バイオディ-ゼルの物理化学的性質は石油化学ディ-ゼルとよく似ているので、エンジンを改造することなく、直接にエンジンに加えて使用することができる。
【0004】
バイオディ-ゼルの燃焼プロセスにおいては、煤煙や重合体粒子などの不燃物の含有量が少なく、ガス中の硫化物や芳香族炭化水素の含有量が少なく、二酸化炭素の排出がほとんどないという利点があるので、バイオディ-ゼルが最適な石油化学ディ-ゼル代替物の一つとなる。
【0005】
中国国情の規制のゆえに、バイオディ-ゼルの原料油は主に非可食用油であり、これらの油脂には比較的酸価が高いものが多いので、塩基性触媒によるエステル交換反応前に酸価低減の前処理を行う必要がある。
【0006】
適切な触媒は、工業化減酸前処理やバイオディ-ゼル製造の鍵となる。従来の前処理方法は、液体酸を触媒として遊離脂肪酸のエステル化を行っていたが、液体酸を再利用できず、液体酸と生成物の分離精製が複雑であり、また、環境に対する腐食や排出の危険性などの問題もあるため、液体酸に代えて酸性固体触媒が広く注目されている。
【0007】
例えば、特許CN106179496A、CN106191327A及びCN106222314Aには、いくつかの炭素系固体酸触媒の製造方法及びバイオディ-ゼルの合成においての応用を開示している。しかし、これらの炭素系固体酸は一般的表面酸度が低く、エステル化反応の温度が高くなり、時間がかなりかかり、触媒の回収が困難で、それに従ってコストも増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許公開第CN106179496A号
【文献】中国特許公開第CN106191327A号
【文献】中国特許公開第CN106222314A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、触媒活性及び反復利用率が高い触媒を製造することにより、バイオディ-ゼルの高転化率を実現する。
特に断りのない限り、本開発で使用されるパーセンテージは質量パーセンテージである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的の1つは、以下の工程を含む鉛含有触媒の製造方法を提供することである。
(1)鉛含有高炉ダストの前処理工程:
(ア)鉛含有高炉ダストをボ-ルミルで研磨し、200-400メッシュの篩を通過すること、
(イ)篩を通過された鉛含有高炉ダストをオ-ブンに入れ、75~105℃の条件で5h以上乾燥し、前処理された鉛含有高炉ダストを得ること、
(2)鉛含有高炉ダストにより固体触媒を活性化して製造する工程:
【0011】
(ウ)前処理された鉛含有高炉ダストを高温管状反応炉に入れ、不活性気体で200~1000℃の条件で1~5h焼成し、ガス流量を10~40mL/minに設定し、焼成されたサンプルを75~400メッシュの篩に通過し、必要な鉛含有高炉ダスト触媒を得ること。
さらに、固体触媒を製造する工程において、焼成温度は600-1000℃である。
【0012】
さらに、元素で計算すると、上記高炉ダストの組成成分は、C: 32.4~35.2%、Pb:29.4~32.1%、Zn:1.7~2.9%、Ca:3.0~5.0%、S:8.0~10.0%、を含む。
さらに、上記不活性気体は窒素ガスを含む。
本発明のもう1つの目的は、上記方法によって製造される鉛含有触媒を提供することである。
本発明のもう1つの目的は、バイオディ-ゼルの製造においての上記鉛含有高炉ダスト触媒の応用を提供することである。
本発明のもう1つの目的は、以下の工程を含むバイオディ-ゼルの製造方法を提供することである。
【0013】
(1)反応容器内でnオイル:nアルコ-ル= 1:(15-25)molのモル比に応じてオイルと低級アルコ-ルを混合し、次にオイルに対する3~10%の上記触媒を添加する工程。
(2)反応容器を密封し、120~180℃で3~5h反応する工程。
【0014】
(3)反応終了後、上層はアルコ-ルと副生成物であり、中層はバイオディ-ゼルであり、触媒が下層に位置し、静止後、触媒と液体生成物が自動的に分離し、液体生成物を移し出し、触媒を再利用するために反応容器に残す工程。
【0015】
さらに、上記オイルは、市販又は工業的に生産された、可食用(大豆油を含むが、これに限定されない)又は非可食用植物油(高酸価のジャトロファ油を含むが、これに限定されない)である。
【発明の効果】
【0016】
上記低級アルコ-ルには、メタノ-ルが含まれるが、これに限定されない。従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
【0017】
1. 本特許は高炉ダストを原料として使用し、不活性気体の条件下で高温焼成し、関連結晶相転換を促進するように焼成関連のプロセスパラメ-タをコントロ-ルするだけで、高い触媒活性を有する触媒を得ることができる。同時に、高炉ダストに含まれるZn及びPbを高温焼成することにより酸化亜鉛、酸化鉛、塩基性硫酸鉛、鉛及び硫化鉛などの物質を生成し、酸性と塩基性を同時に有する触媒が得られる。
2. 本特許に合成された鉛含有高炉ダスト触媒は、反応終了後に液体生成物と自動的に分離することができ、触媒回収率が90%以上である。
【0018】
3. 本特許に合成された鉛含有高炉ダスト触媒は、バイオディ-ゼルの製造において非常に優れた触媒活性及び適用価値を有し、バイオディ-ゼルの収率は90%以上である。また、ジャトロファ油などの工業で提供されている非可食用高酸価油の反応に直接使用することができ、前述と同じの触媒効果も得られる。
【0019】
4. この特許に合成された鉛含有高炉ダスト触媒は、循環利用能力が比較的優れ、5回反応後のバイオディ-ゼルの収率が依然として80%以上に達することができる。
5. 本特許は高炉ダストを回収して利用することで、資源の回収や再利用を実現しながら、環境汚染を効果的に減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】は、実施例1及び2の鉛含有高炉ダスト触媒の透過電子顕微鏡像図であり、ここで、A、B及びCはそれぞれ600℃及び700℃で焼成して得られた鉛含有高炉ダスト触媒である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明及び図面は、本質的に例示に過ぎず、本発明の技術案を制限することを意図するものではない。
実施例1-7
【0022】
C: 32.4%、Pb:29.4%、Zn:1.7%、Ca:3.0%、S:8.0%、を含む鉛含有高炉ダストをボ-ルミルで研磨し、研磨されたダストを200メッシュの篩を通過し、篩を通過されたダストをオ-ブンに入れ、105℃の条件で1h乾燥し、粒子が均一になる乾燥された鉛含有高炉ダスト原料を得た。粒子が均一になる乾燥された鉛含有高炉ダスト原料を高温管状反応炉に入れ、窒素ガスで焼成し、適切なガス流量を設定し、焼成されたサンプルを200メッシュの篩を通過して鉛含有高炉ダスト触媒を得た。ここで、実施例1-7のパラメ-タ及び効果を表1に示す。

【0023】
【0024】
図1(A)に示すように、鉛含有高炉ダスト原料の微粒子金属塩の粒径は約200nmである。図1(B)に示すように、実施例1に得られた触媒微粒子金属塩の粒径は約400nmである。図1(C)に示すように、実施例2で得られた触媒微粒子金属塩の粒径は約400nmである。
実施例8
【0025】
実施例1を繰り返すが、以下の相違点がある。鉛含有高炉ダストの組成成分は、C:35.2%、Pb:32.1%、Zn:2.9%、Ca:5.0%、S:10.0%である。得られた触媒微粒子金属塩の粒径は約300 nmであり、測定した結果、触媒の酸度は0.23 mmol/gであり、アルカリ度は0.10 mmol/gである。
実施例9
【0026】
実施例1を繰り返すが、以下の相違点がある。鉛含有高炉ダストの組成成分は、C:34.6%、Pb:30.8%、Zn:2.3%、Ca:4.2%、S:8.8%である。得られた触媒微粒子金属塩の粒径は約300 nmであり、測定した結果、触媒の酸度は0.20 mmol/gであり、アルカリ度は0.08 mmol/gである。
実施例10-25
【0027】
実施例1-9で製造された鉛含有高炉ダスト触媒を使用することで高酸値のジャトロファ油を触媒してバイオディ-ゼルを製造する方法は、以下の工程を含む。アルコ-ル/オイル比率に従って高圧密閉反応釜へジャトロファ油、メタノ-ル、及び鉛含有高炉ダスト触媒を加え、反応を行い、バイオディ-ゼルとメタノ-ルの混合生成物を得た。鉛含有高炉ダスト触媒は、静置分離により回収することができる。関連プロセスパラメ-タ及び効果を表2に示す。
【0028】
【0029】
実施例26-41
実施例1-9で製造された鉛含有高炉ダスト触媒を使用することで高酸値の大豆油を触媒してバイオディ-ゼルを製造する方法は、以下の工程を含む。アルコ-ル/オイル比率に従って高圧密閉反応釜へ大豆油、メタノ-ル、及び鉛含有高炉ダスト触媒を加え、反応を行い、バイオディ-ゼルとメタノ-ルの混合生成物を得た。鉛含有高炉ダスト触媒は、静置分離により回収することができる。関連プロセスパラメ-タ及び効果を表3に示す。
【0030】
【0031】
実施例42-45
実施例10の方法工程及びパラメ-タを繰り返すが、相違点としては、表4に示すような触媒を使用することである。測定した結果、バイオディ-ゼルの収率を表4に示す。
【0032】
【0033】
実施例46-49
実施例26の方法工程及びパラメ-タを繰り返すが、相違点としては、表5に示すような触媒を使用することである。測定した結果、バイオディ-ゼルの収率を表5に示す。
【0034】
【0035】
比較例1
実施例1の製造過程で得られた鉛含有高炉ダスト原料を用いて、高酸価のジャトロファ油からバイオディ-ゼルを製造する反応を触媒した。ステップは次の通りである。アルコ-ル/オイルのモル比20/1に従い、0.01 molのジャトロファ油(8.80 g)、0.2 molのメタノ-ル(6.4 g)、及び5 wt%の鉛含有高炉ダスト原料を50mLの高圧気密反応釜に加えた。160 ℃で3h反応し、バイオディ-ゼルとメタノ-ルの混合生成物を得た。反応されたバイオディ-ゼルの収率は3.4%である。鉛含有高炉ダスト原料は、静置分離により回収率が90.7%に達した。
比較例2
【0036】
実施例1の製造過程で得られた鉛含有高炉ダスト原料を用いて、大豆油からバイオディ-ゼルを製造する反応を触媒した。ステップは次の通りである。アルコ-ル/オイルのモル比20/1に従い、0.01 molの大豆油(7.10 g)、0.2 molのメタノ-ル(6.4 g)、及び5 wt%の鉛含有高炉ダスト原料を50mLの高圧気密反応釜に加えた。160 ℃で3h反応し、バイオディ-ゼルとメタノ-ルの混合生成物を得た。反応されたバイオディ-ゼルの収率は2.9%である。鉛含有高炉ダスト原料は、静置分離により回収率が88.5%に達した。
【要約】      (修正有)
【課題】鉛含有触媒の製造方法、前記鉛含有触媒、及び前記触媒を用いたバイオディーゼルの製造方法を提供する。
【解決手段】鉛含有高炉ダストをボールミルによって研磨し、75~400メッシュの篩を通過させる。篩を通過した鉛含有高炉ダストをオーブンに入れ、75-105℃の条件で5~48h乾燥し、前処理された鉛含有高炉ダストを得る。前記鉛含有高炉ダストを取り出して高温管状反応炉へ投入し、不活性気体で200~1000℃の条件で1~5h焼成し、ガス流量を1~40mL/minに設定し、焼成されたサンプルを80メッシュの篩を通過させ、鉛含有高炉ダスト触媒を得る。
【効果】当該触媒は同時に酸性及び塩基性を有し、静置により液体産物から自動的に分離することができる。高酸価油の反応に直接使用でき、触媒効果が非常に優れ、バイオディーゼルの収率が95%を超え、触媒の回収率が90%を超える。
【選択図】図1
図1