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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】化粧板、化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/12 20060101AFI20220413BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220413BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220413BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220413BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
E04F13/12 C
E04F13/08 E
B32B3/30
B32B15/08 H
B32B27/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018007160
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019124094
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399081718
【氏名又は名称】ダイト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】奥野 修平
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105187(JP,A)
【文献】特開2002-336770(JP,A)
【文献】特開2018-172897(JP,A)
【文献】特開2006-009434(JP,A)
【文献】特開2012-241466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/12
E04F 13/08
B32B 3/30
B32B 15/08
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材と、前記基材に積層した印刷層と、を備え、凹凸形状が形成されている化粧板であって、
前記凹凸形状は、前記基材を折り曲げて形成され、
前記凹凸形状の凹部の底を形成する底面部と、前記凹凸形状の凸部の上面を形成する表面部と、前記凸部の側面を形成する側壁部と、を備え、
前記底面部に積層した印刷層である底面部側印刷層の明度は、前記表面部に積層した印刷層である表面部側印刷層の明度及び前記側壁部に積層した印刷層である側壁部側印刷層の明度よりも低く、
前記側壁部側印刷層のうち前記底面部側印刷層と連続する部分の予め設定した範囲の明度は、前記底面部側印刷層の明度と等しく、
前記表面部側印刷層の明度は、前記側壁部側印刷層のうち前記予め設定した範囲を除く部分の明度と等しいことを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記基材は、金属板を用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載した化粧板。
【請求項3】
前記予め設定した範囲の前記側壁部の厚さ方向から見た幅は、前記側壁部の厚さ方向から見て、前記底面部から前記表面部までの長さの1/3以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧板。
【請求項4】
前記底面部側印刷層は、前記表面部側印刷層及び前記側壁部側印刷層のうち前記予め設定した範囲を除く部分よりも明度が低い色で着色されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した化粧板。
【請求項5】
板状の基材と、前記基材に積層した印刷層と、を備え、凹凸形状が形成されている化粧板の製造方法であって、
前記基材のうち、前記凹凸形状の凹部の底を形成する底面部に対応する領域である底面部形成領域と、前記凹凸形状の凸部の上面を形成する表面部に対応する領域である表面部形成領域と、前記凸部の側面を形成する側壁部に対応する領域である側壁部形成領域と、に着色して前記印刷層を積層する印刷工程と、
前記印刷層を積層した前記基材を折り曲げて前記凹凸形状が形成された形状に加工する凹凸加工工程と、を含み、
前記印刷工程では、前記底面部形成領域に積層した前記印刷層である底面部側印刷層の明度を前記表面部形成領域に積層した前記印刷層である表面部側印刷層の明度及び前記側壁部に積層した印刷層である側壁部側印刷層の明度よりも低く、前記側壁部側印刷層のうち前記底面部側印刷層と連続する部分の予め設定した範囲の明度を前記底面部側印刷層の明度と等しく、前記表面部側印刷層の明度を前記側壁部側印刷層のうち前記予め設定した範囲を除く部分の明度と等しくすることを特徴とする化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物の外装や内装として用いられる化粧板と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外装や内装として用いられる化粧板の技術としては、例えば、特許文献1に記載されているように、模様を印刷した金属板に凹凸のエンボス加工を施すことで、凹凸形状の立体感を強調して、意匠性を向上させる技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-229269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、化粧板を視認する角度や、化粧板への光の当たり具合によって、凹部の底と他の部分との明るさに関し、両者の関係が変化する。このため、凹部の底を他の部分よりも暗い色とした外観を得たい場合等、明るさを異ならせた外観を常に保持することが困難であるという問題点がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、凹凸形状が形成され、凹部の底と他の部分との明るさを異ならせた外観を常に保持することが可能な、化粧板、化粧板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、基材に積層した印刷層と、を備え、凹凸形状が形成されている化粧板であり、凹凸形状の凹部の底を形成する底面部と、凹凸形状の凸部の上面を形成する表面部と、凸部の側面を形成する側壁部を備える。そして、底面部に積層した印刷層である底面部側印刷層の明度は、表面部に積層した印刷層である表面部側印刷層の明度よりも低い。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、基材に積層した印刷層と、を備え、凹凸形状が形成されている化粧板の製造方法であって、印刷工程と、凹凸加工工程を含む。印刷工程は、基材のうち、底面部形成領域と、表面部形成領域と、側壁部形成領域に着色して印刷層を積層する工程である。凹凸加工工程は、印刷層を積層した基材を凹凸形状が形成された形状に加工する工程である。底面部形成領域は、凹凸形状の凹部の底を形成する底面部に対応する領域である。表面部形成領域は、凹凸形状の凸部の上面を形成する表面部に対応する領域である。側壁部形成領域は、凸部の側面を形成する側壁部に対応する領域である。また、印刷工程では、底面部形成領域に積層した印刷層である底面部側印刷層の明度を、表面部形成領域に積層した印刷層である表面部側印刷層の明度よりも低くする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、平面視で底面部と表面部が交互に配置され、底面部が、表面部よりも明度が低い色に着色されているとともに、表面部が、底面部よりも明度が高い色で着色される。
このため、化粧板を視認した者は、化粧板を視認する角度や、化粧板への光の当たり具合に関わらず、常に、底面部と、表面部との明るさの関係が保持された外観を視認することとなる。これにより、凹凸形状が形成され、凹部の底と他の部分との明るさを異ならせた外観を常に保持することが可能な、化粧板、化粧板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態における化粧板を表す図である。
図2図1のII‐II線断面図である。
図3図2中に円IIIで囲んだ範囲を含む拡大図である。
図4】基材を表す図である。
図5】印刷工程を表す図である。
図6】本発明の変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の第一実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
さらに、以下に示す第一実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図3を参照して、化粧板1の構成について説明する。
図1中に表す化粧板1は、例えば、外壁の装飾や、室内の内装に用いる建材である。第一実施形態では、一例として、化粧板1を、天井面の装飾に用いる建材として用いた場合について説明する。
また、第一実施形態では、一例として、複数(図1中では、二枚)の化粧板1(図1中では、化粧板1a及び化粧板1bと示す)を連結して用いた場合について説明する。
なお、図中には、二枚の化粧板1a及び化粧板1bのうち、化粧板1aの全体と、化粧板1bの一部を示すが、以降の説明では、化粧板1aと化粧板1bに対して、共に「化粧板1」と記載する場合がある。
【0012】
化粧板1は、印刷により印刷層を形成し、さらに、トップコート層(図示せず)を形成した基材を、凹凸形状に加工して形成されている。また、印刷層を形成する印刷工程の最後に、トップコート層を印刷層の全面にコーティングする。このトップコート層は、一般的に、印刷によって設けられる着色されていない層であり、基材や印刷層の保護及び各種物性(耐候性等)を、安定して長期に渡り付与するための層である。
基材としては、例えば、金属板等、板状(長方形)の部材を用いる。
以上により、第一実施形態の化粧板1は、基材と、基材に積層された印刷層と、印刷層に積層されたトップコート層を備えている。
【0013】
化粧板1を形成する金属板(基材)としては、例えば、鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、アルミニウム板等を用いることが可能である。
なお、アルミニウム板は、絵柄や彩色等、印刷用インキとの密着性が良好であり、またガルバリウム鋼板に比べても耐食性が優れている。そのため、亜鉛めっき鋼板では必要とされているクロム酸処理等が不要となり、環境に与える負荷が少なく、安全性が高い。これに加え、アルミニウム板は、鋼板やガルバリウム鋼板と比較して軽量であるため、施工時の作業性が良好である。さらに、アルミニウム板は、鋼板やガルバリウム鋼板と比較して、耐候性や強度に要求されるレベルが低い屋内用として適切である。
【0014】
なお、化粧板1の用途や、金属板上に形成する印刷インキの種類等によって必要であれば、クロメートフリー処理等の、環境に与える負荷が少ない表面処理を施してよいことはもちろんである。
したがって、第一実施形態では、化粧板1を形成する金属板として、アルミニウム板を用いた場合について説明する。
また、化粧板1を形成する金属板の厚さは、例えば、0.4[mm]以上1.2[mm]以下の範囲内とすることが可能である。第一実施形態では、一例として、化粧板1を形成する金属板の厚さを、0.6[mm]とした場合について説明する。
また、化粧板1は、複数の底面部2a~2cと、複数の突出部4a~4cと、一つの差し込み部6と、一つの受け部8を備えている。
【0015】
第一実施形態では、一例として、化粧板1が、三つの底面部2a~2cを備える場合について説明する。また、第一実施形態では、一例として、化粧板1が、三つの突出部4a~4cを備える場合について説明する。
突出部4aは、平面視で、隣り合う二つの底面部2aと底面部2bとの間に配置されている。突出部4bは、平面視で、隣り合う二つの底面部2bと底面部2cとの間に配置されている。突出部4bは、平面視で、底面部2cの隣に配置されている。なお、「平面視」とは、化粧板1を、底面部2及び突出部4の厚さ方向(図1中では紙面の方向、図2中では上下方向)から見た視点である。
【0016】
したがって、底面部2aは、化粧板1の一方の端部を形成している。同様に、突出部4cは、化粧板1の他方の端部を形成している。
また、平面視で、化粧板1aが備える突出部4aから、化粧板1aが備える底面部2b、突出部4b、底面部2c及び突出部4cまでの長さと、化粧板1bが備える底面部2aの長さとの合計値である働き幅W1は、例えば、148[mm]に設定する。
【0017】
(底面部2)
複数の底面部2は、それぞれ、化粧板1の凹凸形状のうち、凹部の底を形成する。
底面部2は、平板状に形成されている。
底面部2の幅(図2中では、左右方向の長さ)は、例えば、10[mm]以上200[mm]以下の範囲内とすることが可能である。第一実施形態では、一例として、底面部2の幅を、24.8[mm]とした場合について説明する。
また、底面部2は着色されている。なお、図中では、底面部2が着色されている状態を、網掛けによって表している。
【0018】
第一実施形態では、一例として、底面部2を、黒色に着色した場合について説明する。
したがって、底面部2に着色した塗料は、底面部2に積層した印刷層である底面部側印刷層20を形成する。
また、図3中に示すように、底面部側印刷層20と底面部2(図3中では、底面部2b)との間には、底面下地印刷層42が形成されている。
底面下地印刷層42は、後述する側壁部側印刷層40と同時に形成される印刷層である。
【0019】
(突出部4)
複数の突出部4は、それぞれ、化粧板1の凹凸形状のうち、凸部の上面及び側面を形成する。
また、突出部4は、三つの面(一つの表面部10、二つの側壁部12)で形成されている。なお、図中では、突出部4aを形成する表面部10を「表面部10a」と示す。同様に、突出部4aを形成する二つの側壁部12のうち図中で左側に配置した側壁部12を「側壁部12La」と示し、突出部4aを形成する二つの側壁部12のうち図中で右側に配置した側壁部12を「側壁部12Ra」と示す。これは、突出部4b及び突出部4cについても、同様である。
【0020】
表面部10は、凸部の上面を形成する部分であり、隣り合う二つの側壁部12の間に配置されている。
また、表面部10は、平板状に形成されており、底面部2と平行に配置されている。すなわち、表面部10の厚さ方向は、底面部2の厚さ方向と平行である。
表面部10の幅(図2中では、左右方向の長さ)は、例えば、10[mm]以上1000[mm]以下の範囲内とすることが可能である。第一実施形態では、一例として、表面部10の幅を、底面部2の幅と同じ、24.8[mm]とした場合について説明する。
また、表面部10は、底面部2よりも明度が高い色で着色されている。なお、図中では、説明のために、表面部10に着色されている状態を、底面部2よりも濃度が低い網掛けによって表している。
【0021】
第一実施形態では、一例として、表面部10を、茶色に着色した場合について説明する。これに加え、第一実施形態では、一例として、表面部10に、茶色の木目柄を印刷した場合について説明する。なお、表面部10に印刷する木目柄には、導管模様等の柄を加えてもよい。
したがって、表面部10に着色した塗料は、表面部10に積層した印刷層である表面部側印刷層30を形成する。また、底面部側印刷層20の明度は、表面部側印刷層30の明度よりも低い。
【0022】
側壁部12は、凸部の側面を形成する部分であり、表面部10及び底面部2のうち少なくとも一方と連続している。側壁部12の厚さ方向は、表面部10及び底面部2の厚さ方向と直交している。
したがって、突出部4は、三つの面を組み合わせて、断面(図2中に表す断面)がコの字型となるように形成されている。また、底面部2は、平面視で全面が視認可能となっている。
側壁部12の幅(図2中では、上下方向の長さ)は、例えば、5[mm]以上100[mm]以下の範囲内とすることが可能である。第一実施形態では、一例として、側壁部12の幅を、16[mm]とした場合について説明する。したがって、第一実施形態では、化粧板1の凹凸形状が、16[mm]の高さに形成された凸部を有する形状となる。
また、側壁部12は、表面部10と同様、底面部2よりも明度が高い色で着色されている。なお、図中では、説明のために、側壁部12に着色されている状態を省略して表している。
【0023】
したがって、側壁部12に着色した塗料は、図3中に示すように、側壁部12に積層した印刷層である側壁部側印刷層40を形成する。また、底面部側印刷層20の明度は、側壁部側印刷層40の明度よりも低い。
さらに、側壁部12と共に底面部2に着色した塗料は、底面部側印刷層20と底面部2との間に配置される底面下地印刷層42を形成する。底面下地印刷層42は、側壁部側印刷層40と同じ塗料で形成されるため、底面下地印刷層42の明度は、側壁部側印刷層40の明度と等しい。
なお、図3中では、構成を明確に示すために、表面部側印刷層30と、側壁部側印刷層40と、底面下地印刷層42を、異なる濃度で図示している。
【0024】
第一実施形態では、一例として、側壁部12を、表面部10と同様、茶色に着色した場合について説明する。これに加え、第一実施形態では、一例として、側壁部12に、表面部10と同様、茶色の木目柄を印刷した場合について説明する。なお、表面部10と同様、側壁部12に印刷する木目柄には、導管模様等の柄を加えてもよい。すなわち、第一実施形態では、表面部10及び側壁部12を、同じ柄に印刷する。
また、側壁部12のうち、底面部2と連続する部分の予め設定した範囲は、底面部2と同様、黒色に着色する。
【0025】
すなわち、図3中に示すように、側壁部側印刷層40のうち底面部側印刷層20と連続する部分(底面部側印刷層20が積層される部分)の予め設定した範囲の明度は、底面部側印刷層20の明度と等しい。
側壁部12のうち、底面部2と同じ色に着色する部分の幅W2は、例えば、1.0[mm]以上1.5[mm]以下の範囲内とすることが可能である。第一実施形態では、一例として、側壁部12のうち、底面部2と同じ色に着色する部分の幅W2を、1.1[mm]とした場合について説明する。
以上により、表面部10及び側壁部12に着色した塗料は、底面部2に着色した塗料と共に、基材である金属板(アルミニウム板)に積層した印刷層を形成する。
【0026】
(差し込み部6)
差し込み部6は、三つの底面部2a~2cのうち、化粧板1の端部を形成する一つの底面部2(底面部2a)と連続して形成されている。
また、差し込み部6は、底面部2aと同じ色(黒色)に着色されている。なお、差し込み部6を着色しない構成としてもよい。
【0027】
(受け部8)
受け部8は、三つの突出部4a~4cのうち、化粧板1の端部を形成する一つの突出部4(突出部4c)と連続して形成されている。
また、受け部8は、突出部4cと同様(茶色の木目柄)に着色されている。なお、受け部8を着色しない構成としてもよい。
また、受け部8は、第一平板部8aと、第二平板部8bと、連結部8cを備えている。
第一平板部8aは、突出部4cの突出部4bから遠い側の側壁部12と連続するとともに、突出部4cを構成する表面部10と平行に配置された平板状の部材である。
第二平板部8bは、第一平板部8aと表面部10の厚さ方向で離間するとともに、第一平板部8aと平行に配置された平板状の部材である。
【0028】
連結部8cは、第一平板部8aと第二平板部8bを連結しており、断面が円弧状に形成された板状の部材である。
連結部8cの形状は、表面部10の厚さ方向に沿った第一平板部8aと第二平板部8bとの距離(間隔)が、差し込み部6を配置することが可能な距離となる形状に形成する。
以上により、受け部8は、突出部4cを構成する二つの側壁部12のうち、突出部4bから遠い側の側壁部12と連続しており、差し込み部6を挿入することが可能な形状に形成されている。
【0029】
(化粧板1の製造方法)
図1から図3を参照しつつ、図4及び図5を用いて、化粧板1の製造方法を説明する。
化粧板1の製造方法は、図4中に示す基材50に、印刷と、トップコート層の形成を行い、さらに、凹凸形状に加工して、化粧板1を製造する方法であり、印刷工程と、トップコート層形成工程と、凹凸加工工程を含む。
なお、凹凸加工工程は、広幅の基材50(コイルから繰り出した金属板(アルミニウム板))に対し、印刷工程と、トップコート層形成工程を行った後に、所定の幅にスリット(基材50を幅方向で分割)し、さらに、所定の長さに切断し、その後に行う。
【0030】
上述した「広幅」とは、例えば、500[mm]以上2000[mm]以下の範囲内で任意に設定した幅である。また、所定の幅とは、基材50を分割する幅であり、例えば、基材50の幅が900[mm]である場合には、所定の幅にスリットすることで、印刷工程とトップコート層形成工程が行われた、幅が300[mm]である3枚の金属板が形成される。
また、所定の長さとは、各種の加工が可能な最小の長さ以上の長さであり、後述する成形機の構造に応じて、例えば、少なくとも50[cm]に設定する。なお、所定の長さは、例えば、各種の加工を行う建屋の長さや、輸送・施工が可能な長さに応じて設定する。また、スリットで形成された金属板を所定の長さに切断する際には、例えば、スリットで形成された金属板を巻き取り、巻き取られた金属板を改めて繰り出して、切断する。
【0031】
したがって、例えば、上述したように、幅が900[mm]の基材50をスリットして、幅が300[mm]である3枚の金属板を形成した場合には、所定の長さを1800[mm]とすると、幅が300[mm]であり長さが1800[mm]の金属板に対し、凹凸加工工程を行うこととなる。
また、基材50には、予め、基材50のうち底面部2に対応する領域である底面部形成領域52と、基材50のうち表面部10に対応する領域である表面部形成領域54と、基材50のうち側壁部12に対応する領域である側壁部形成領域56を設定する。
【0032】
なお、図4中には、底面部形成領域52と、表面部形成領域54及び側壁部形成領域56に加え、基材50のうち差し込み部6に対応する領域である差し込み部形成領域58と、基材50のうち受け部8に対応する領域である受け部形成領域60を示す。
印刷工程は、化粧板1へ所望の柄を付与するために、基材50に着色することで、基材50に印刷層を積層する工程である。
印刷工程では、底面部形成領域52に、例えば、インキ転写ゴム版(ブランケット)を用いて、黒色に着色することで、図5中に示すように、底面部側印刷層20を積層する。
【0033】
これに加え、印刷工程では、表面部形成領域54に、例えば、グラビアオフセット印刷機を用いて、底面部側印刷層20よりも明度が高い色に着色することで、図5中に示すように、表面部側印刷層30を積層する。さらに、印刷工程では、側壁部形成領域56に、例えば、グラビアオフセット印刷機を用いて、底面部側印刷層20よりも明度が高い色に着色することで、図5中に示すように、側壁部側印刷層40を積層する。また、底面部形成領域52に、例えば、グラビアオフセット印刷機を用いて、底面部側印刷層20よりも明度が高い色に着色することで、図3中に示すように、底面下地印刷層42を積層する。
第一実施形態では、一例として、印刷工程で、底面部形成領域52と、表面部形成領域54及び側壁部形成領域56に対して、底面部側印刷層20よりも明度が高い色を着色する。その後、底面部形成領域52に対して、着色する場合について説明する。すなわち、底面部側印刷層20は、底面下地印刷層42の上に積層される。
【0034】
以上により、印刷工程では、底面部側印刷層20の明度を、表面部側印刷層30及び側壁部側印刷層40の明度よりも低くする。
そして、印刷工程では、側壁部側印刷層40のうち、底面部側印刷層20が積層される部分の予め設定した範囲の明度が、底面部側印刷層20の明度と等しくなるように、予め設定した範囲を着色する。
なお、印刷工程では、差し込み部形成領域58に対して、底面部形成領域52と同様に着色することで、差し込み部側印刷層62を積層する。さらに、受け部形成領域60に対して、表面部側印刷層30と同様に着色することで、受け部側印刷層64を積層する。
【0035】
トップコート層形成工程は、印刷工程の後工程であり、化粧板1の表面を保護するために、基材50に積層した印刷層へ、例えば、硬質な樹脂をコーティングすることで、透明なシート状の層であるトップコート層(図示せず)を形成する工程である。
トップコート層形成工程では、トップコート層に用いる硬質な樹脂として、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂を用いることが可能である。
また、これらの樹脂には、必要に応じて、公知の紫外線吸収剤や、光安定剤等の添加剤を添加することが可能である。
【0036】
凹凸加工工程は、トップコート層形成工程の後工程であり、印刷層(底面部側印刷層20、表面部側印刷層30、側壁部側印刷層40)及びトップコート層(図示せず)を積層した基材50を、凹凸形状が形成された形状に加工する工程である。
凹凸加工工程では、例えば、ロールフォーミング装置(成形機)を用い、複数のロールで基材50を段階的に成形し(折り曲げ)、最終形状として凹凸形状に加工する方法(ロールフォーミング成形)を用いることが可能である。
ここで、凹凸加工工程では、底面部形成領域52が、凹凸形状のうち凹部の底となるように、基材50を加工する。これに加え、凹凸加工工程では、表面部形成領域54及び側壁部形成領域56が、凹凸形状のうち凸部の上面及び側面となるように、基材50を加工する。
【0037】
(作用)
図1から図5を参照して、第一実施形態の作用を説明する。
第一実施形態では、複数の化粧板1を連結し、天井面の装飾に用いる。
複数の化粧板1を連結する際には、一つの化粧板1が備える差し込み部6を、他の化粧板1が備える受け部8に差し込む。
そして、第一実施形態の化粧板1は、平面視で、底面部2と表面部10が交互に配置されている。これに加え、第一実施形態の化粧板1は、底面部2が、表面部10及び側壁部12よりも明度が低い色(黒色)に着色されているとともに、表面部10及び側壁部12が、底面部2よりも明度が高い色(茶色の木目柄)で着色されている。
【0038】
このため、化粧板1を天井面に取り付けて天井面を装飾すると、天井面を視認した者は、天井面を視認する角度や、天井面への光の当たり具合に関わらず、常に、底面部2と、表面部10及び側壁部12との明るさの関係が保持された外観を視認する。
以上説明したように、第一実施形態の化粧板1であれば、天井面を視認する角度や、天井面への光の当たり具合が変化しても、凹部の底を形成する底面部2と、表面部10及び側壁部12との明るさを異ならせた外観を、常に保持することが可能となる。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0039】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧板1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)化粧板1に形成されている凹凸形状の凹部の底を形成する底面部2と、凹凸形状の凸部の上面を形成する表面部10と、凸部の側面を形成する側壁部12を備え、底面部側印刷層20の明度が、表面部側印刷層30の明度よりも低い。
このため、化粧板1を視認した者は、化粧板1を視認する角度や、化粧板1への光の当たり具合に関わらず、常に、底面部2と、表面部10との明るさの関係が保持された外観を視認することとなる。
【0040】
その結果、凹凸形状が形成され、凹部の底と他の部分との明るさを異ならせた外観を常に保持することが可能な、化粧板1を提供することが可能となる。
また、従来では、施工後の外装材に対して陰影を強調するために、現場において、凹部の底面にラミネートフィルムを貼付ける作業や塗装作業を行う必要があるが、いずれの作業も、作業方法が困難であり、時間及びコストに問題があった。また、外装材との性能の違いがあるため、長期に亘る耐候性を確保することが困難である等の問題点があった。
これに対し、本発明の構成であれば、困難な作業の必要が無いため、作業に必要な時間を短縮することが可能であるとともに、コストの増加を抑制することが可能な、化粧板1を提供することが可能となる。これに加え、長期に亘る耐候性を確保することが可能な、化粧板1を提供することが可能となる。
【0041】
(2)側壁部側印刷層40のうち底面部側印刷層20と連続する部分の予め設定した範囲の明度が、底面部側印刷層20の明度と等しい。
その結果、側壁部側印刷層40の全ての明度が底面部側印刷層20の明度よりも高い場合と比較して、化粧板1を視認した者に対し、凹部の底を明確に視認させることが可能となる。
(3)基材50が、金属板を用いて形成されている。
その結果、化粧板1の強度を保持することが可能となる。
【0042】
(4)基材50を形成する金属板が、アルミニウム板である。
その結果、亜鉛めっき鋼板では必要とされているクロム酸処理等が不要となり、環境に与える負荷が少なく、安全性が高く、施工時の作業性が良好であり、要求される強度のレベルが低い屋内用として適切な金属板を用いて、化粧板1を形成することが可能となる。
また、第一実施形態の化粧板1の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0043】
(5)基材50のうち、底面部形成領域52と、表面部形成領域54と、側壁部形成領域56に着色して印刷層を積層する印刷工程と、印刷層を積層した基材50を凹凸形状が形成された形状に加工する凹凸加工工程を含む。これに加え、印刷工程では、底面部形成領域52に積層した印刷層である底面部側印刷層20の明度を、表面部形成領域54に積層した印刷層である表面部側印刷層30の明度よりも低くする。
このため、化粧板1を視認した者は、化粧板1を視認する角度や、化粧板1への光の当たり具合に関わらず、常に、底面部2と、表面部10との明るさの関係が保持された外観を視認することとなる。
その結果、凹凸形状が形成され、凹部の底と他の部分との明るさを異ならせた外観を常に保持することが可能な、化粧板1の製造方法を提供することが可能となる。
【0044】
(6)印刷工程では、側壁部側印刷層40のうち底面部側印刷層20と連続する部分の予め設定した範囲の明度が、底面部側印刷層20の明度と等しくなるように、予め設定した範囲を着色する。
その結果、側壁部側印刷層40の全ての明度が底面部側印刷層20の明度よりも高い場合と比較して、化粧板1を視認した者に対し、凹部の底を明確に視認させることが可能となる。
【0045】
(変形例)
(1)第一実施形態では、側壁部側印刷層40のうち底面部側印刷層20と連続する部分の予め設定した範囲の明度を、底面部側印刷層20の明度と等しくしたが、これに限定するものではない。
すなわち、底面部側印刷層20の明度が、側壁部側印刷層40の全ての明度よりも低くしてもよい。
この場合、化粧板1を視認した者は、化粧板1を視認する角度や、化粧板1への光の当たり具合に関わらず、常に、底面部2と、側壁部12との明るさの関係が保持された外観を視認することとなる。
これにより、凹凸形状が形成され、凹部の底と他の部分との明るさを異ならせた外観を常に保持することが可能な、化粧板1を提供することが可能となる。
【0046】
(2)第一実施形態では、印刷工程において、側壁部側印刷層40のうち、底面部側印刷層20と連続する部分の予め設定した範囲の明度が、底面部側印刷層20の明度と等しくなるように、予め設定した範囲を着色したが、これに限定するものではない。
すなわち、印刷工程において、底面部側印刷層20の明度を、側壁部側印刷層40の全ての明度よりも低くしてもよい。
この場合、化粧板1を視認した者は、化粧板1を視認する角度や、化粧板1への光の当たり具合に関わらず、常に、底面部2と、側壁部12との明るさの関係が保持された外観を視認することとなる。
これにより、凹凸形状が形成され、凹部の底と他の部分との明るさを異ならせた外観を常に保持することが可能な、化粧板1の製造方法を提供することが可能となる。
【0047】
(3)第一実施形態では、基材50として金属板であるアルミニウム板を用いたが、これに限定するものではなく、基材50を、金属以外の板材としてもよい。
(4)第一実施形態では、化粧板1を、外壁の装飾や室内の内装の一例として、天井面の装飾に用いる建材として用いたが、これに限定するものではなく、化粧板1を、例えば、ドアの飾り枠等、外壁の装飾や室内の内装以外に用いてもよい。
(5)第一実施形態では、底面部2及び表面部10を、共に、平面視で長方形に形成することにより、底面部2及び表面部10によりストライプ模様を形成したが、これに限定するものではなく、例えば、底面部2及び表面部10により波型の模様を形成してもよい。
【0048】
(6)第一実施形態では、表面部10と側壁部12を、同じ色及び柄で着色したが、これに限定するものではなく、表面部10と側壁部12とを、異なる色や柄で着色してもよい。この場合、表面部10に着色する色や柄と、側壁部12に着色する色や柄とを、異ならせることで、化粧板1を視認する方向や、化粧板1を視認する角度により、色合いが変わる構成としてもよい。また、化粧板1を視認する方向や、化粧板1を視認する角度により、文字や絵柄等を視認することが可能な構成としてもよい。
(7)第一実施形態では、側壁部12の厚さ方向を、表面部10及び底面部2の厚さ方向と直交させることで、突出部4を、断面がコの字型となるように形成したが、これに限定するものでない。すなわち、例えば、側壁部12の厚さ方向を、表面部10及び底面部2の厚さ方向に対して傾斜させることで、突出部4を、断面が台形や平行四辺形、各辺の長さが異なる四辺形等となるように形成してもよい。
【0049】
(8)第一実施形態では、表面部10を平板状に形成したが、これに限定するものでなく、表面部10を、湾曲した板状に形成してもよい。また、表面部10の全体を、ドーム状に形成してもよい。さらに、表面部10に対して、エンボス加工等を施すことで、局部的に、溝状または筋状の凹凸部分を形成してもよい。
(9)第一実施形態では、底面部2の幅と表面部10の幅を、同じ幅(24.8[mm])としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図6中に示すように、凸部の数を一つとし、さらに、表面部10の幅を、底面部2の幅よりも大きい幅(例えば、底面部2の10倍以上)とした構成としてもよい。なお、図6中に示す第一実施形態の変形例では、化粧版1aの差し込み部6と、化粧版1aの側面部12Laと、化粧版1aに連結される化粧版1bの側面部12Raとにより、凹部が形成される。
【符号の説明】
【0050】
1…化粧板、2…底面部、4…突出部、6…差し込み部、8…受け部、8a…第一平板部、8b…第二平板部、8c…連結部、10…表面部、12…側壁部、20…底面部側印刷層、30…表面部側印刷層、40…側壁部側印刷層、42…底面下地印刷層、50…基材、52…底面部形成領域、54…表面部形成領域、56…側壁部形成領域、58…差し込み部形成領域、60…受け部形成領域、62…差し込み部側印刷層、64…受け部側印刷層、W1…働き幅、W2…側壁部12のうち、底面部2と同じ色に着色する部分の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6