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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】弁ロッドに対する弁板の取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/314 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
F16K3/314 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018002203
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019120380
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋己
(72)【発明者】
【氏名】長尾 格
(72)【発明者】
【氏名】越智 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩司
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0238154(US,A1)
【文献】実開昭58-196483(JP,U)
【文献】米国特許第5158264(US,A)
【文献】特開2005-291221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00-3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ロッドの先端に取り付けた弁板を弁箱内に収容し、該弁箱の側壁に形成された開口を前記弁板で開閉するように構成されたゲートバルブにおいて、前記弁ロッドの先端に前記弁板を該弁ロッドの軸線方向に取り外し可能なるように取り付けるための取付構造であって、
前記弁板は、シール部材が取り付けられた弁前面と、該弁前面の反対側の弁背面と、弁上面及び弁下面と、該弁下面に形成された取付孔とを有し、
前記取付孔は、弁板の左右方向に細長い長孔状をしていて、前記弁前面側に位置する孔前壁と、前記弁背面側に位置する孔後壁と、左右の孔側壁と、該取付孔の深さ方向の端部である孔端壁とを有しており、
前記弁ロッドは、前記取付孔に挿入される取付部を有し、該取付部は、前記取付孔の孔前壁に対向するロッド前壁と、前記取付孔の孔後壁に対向するロッド後壁と、左右のロッド側壁と、前記取付孔の孔端壁に対向するロッド先端壁とを有し、
前記弁板の弁上面及び弁ロッドのロッド先端壁には、該弁板を弁ロッドに固定する弁板固定螺子を取り付けるための螺子挿通孔及び螺子孔が該弁ロッドの軸線上に形成され、
前記取付部を前記取付孔内に挿入して弁板を弁ロッドに弁板固定螺子で固定したとき、前記ロッド後壁の一部が前記孔後壁の一部に当接し、前記ロッド後壁の残りの部分と前記孔後壁の残りの部分とは互いに非接触となり、前記ロッド前壁と前記孔前壁との相対する面同士が密接する、
ことを特徴とする弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項2】
前記孔後壁の一部は、前記取付孔の入り口側の部分であり、前記ロッド後壁の一部は、前記取付部の基端部寄りの部分であることを特徴とする請求項1に記載の弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項3】
前記取付孔の孔後壁の一部及び前記取付部のロッド後壁の一部は、相互に当接し合う傾斜部であり、
前記取付孔の孔後壁に形成された第1傾斜部は、該取付孔の深さ方向の途中位置から該取付孔の入口までの部分に形成されていて、該入口に近づくに従って前記孔後壁と孔前壁との間隔が次第に広がる方向に傾斜しており、
前記取付部のロッド後壁に形成された第2傾斜部は、該取付部の軸線方向の途中位置から該取付部の基端部までの部分に形成されていて、該基端部に近づくに従って前記ロッド後壁とロッド前壁との間隔が次第に広がる方向に傾斜している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項4】
前記取付孔の孔後壁は、孔端壁と前記第1傾斜部との間に、前記孔前壁と平行な平行部を有し、前記取付部のロッド後壁は、ロッド先端壁と前記第2傾斜部との間に、前記ロッド前壁と平行な平行部を有することを特徴とする請求項3に記載の弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項5】
前記弁ロッドの取付部には、前記螺子孔内部の空気を外部に逃がすための空気孔が、該取付部と前記取付孔との間の隙間に連通するように形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【請求項6】
前記弁板の弁上面には、前記弁ロッドのロッド先端壁に対応する位置と、該ロッド先端壁から横方向に外れた位置とに、前記弁板を持ち上げて前記弁ロッドから取り外すための工具を取り付ける工具取付孔がそれぞれ形成され、
前記ロッド先端壁に対応する位置に形成された第1の工具取付孔の深さは、前記弁上面から取付孔まで達する深さであり、前記ロッド先端壁から外れた位置に形成された第2の工具取付孔の深さは、前記弁板の上下幅より小さい、
ことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の弁ロッドに対する弁板の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートバルブの弁板を弁ロッドの先端に取り付けるための取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体処理装置においては、真空チャンバに通じる開口の開閉にゲートバルブが使用される。このゲートバルブは、弁ロッドの先端に取り付けた弁板を弁箱内に収容し、この弁箱を真空チャンバに取り付けて、該弁箱の側壁に形成された前記開口を前記弁板で開閉するように構成されている。その際、前記開口の閉鎖は、前記弁板に取り付けられたシール部材を前記開口の周囲の弁シートに押し付けることにより行われる。
【0003】
前記ゲートバルブにおいては、その使用と共に前記シール部材が次第に劣化していくため、劣化した段階で新たなシール部材と交換する必要がある。その場合、従来では、前記ゲートバルブを真空チャンバから取り外したあと、前記弁板を弁ロッドから取り外して前記弁箱から取り出し、それから前記シール部材の交換を行わなければならなかったため、交換に多くの手間と時間とを要していた。このため、シール部材の交換を簡単且つ迅速に行うことができるゲートバルブの出現が望まれている。
また、近年においては、半導体の線幅がますます狭くなって来ているため、処理工程時に発生するパーティクルの低減(ゼロパーティクルが目標)が課題となっており、それを実現するために、ゲートバルブにおいては、作動時に各部品間で擦れが発生するのを如何に無くすかということが重要な課題になっている。
【0004】
一方、特許文献1には、ゲートバルブを真空チャンバに取り付けたまま、弁板を弁ロッドから取り外して弁箱から取り出すことができるゲートバルブが開示されている。この改良型のゲートバルブは、前記弁板を弁ロッドの上端に螺子で固定することにより、該弁板を弁ロッドの軸線方向に取り外し可能としたもので、弁箱の上面の蓋を取り外して前記螺子を緩めることにより、前記弁板を前記弁ロッドから取り外して弁箱の上面から外部に取り出すことができる。このため、この改良型のゲートバルブは、シール部材の交換を行う際に、ゲートバルブを真空チャンバから取り外す必要がなく、前記弁板だけを弁箱から簡単且つ迅速に取り出すことができる。
【0005】
しかし、前記特許文献1に開示されたゲートバルブは、前記弁板が弁ロッドに回転可能に取り付けられていて、該弁板が弁シート部に押し付けられるとき、該弁板が前記弁シートに倣って回転するため、前記弁板と弁シートとの間で擦れが発生し、その擦れによってパーティクルが発生し易いという欠点を有する。前記パーティクルが発生しないようにするには、前記弁板を、前記弁ロッドに対し、相対的に回転することのないように精度良く且つ確実に固定することが必要不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-291221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的課題は、弁板と弁ロッドとを、該弁板の弁箱からの取り出しを簡単且つ迅速に行うことができるように連結すると同時に、前記弁板と弁ロッドとを強固に固定することにより、ゲートバルブ作動時のパーティクルの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明によれば、弁ロッドの先端に取り付けた弁板を弁箱内に収容し、該弁箱の側壁に形成された開口を前記弁板で開閉するように構成されたゲートバルブにおいて、前記弁ロッドの先端に前記弁板を該弁ロッドの軸線方向に取り外し可能なるように取り付けるための取付構造が提供される。この取付構造において、前記弁板は、シール部材が取り付けられた弁前面と、該弁前面の反対側の弁背面と、弁上面及び弁下面と、該弁下面に形成された取付孔とを有し、前記取付孔は、弁板の左右方向に細長い長孔状をしていて、前記弁前面側に位置する孔前壁と、前記弁背面側に位置する孔後壁と、左右の孔側壁と、該取付孔の深さ方向の端部である孔端壁とを有しており、前記弁ロッドは、前記取付孔に挿入される取付部を有し、該取付部は、前記取付孔の孔前壁に対向するロッド前壁と、前記取付孔の孔後壁に対向するロッド後壁と、左右のロッド側壁と、前記取付孔の孔端壁に対向するロッド先端壁とを有し、前記弁板の弁上面及び弁ロッドのロッド先端壁には、該弁板を弁ロッドに固定する弁板固定螺子を取り付けるための螺子挿通孔及び螺子孔が該弁ロッドの軸線上に形成され、前記取付部を前記取付孔内に挿入して弁板を弁ロッドに弁板固定螺子で固定したとき、前記ロッド後壁の一部が前記孔後壁の一部に当接し、前記ロッド後壁の残りの部分と前記孔後壁の残りの部分とは互いに非接触となり、前記ロッド前壁と前記孔前壁との相対する面同士が密接する。
【0009】
本発明において、前記孔後壁の一部は、前記取付孔の入り口側の部分であり、前記ロッド後壁の一部は、前記取付部の基端部寄りの部分である。
また、前記取付孔の孔後壁の一部及び前記取付部のロッド後壁の一部は、相互に当接し合う傾斜部であり、前記取付孔の孔後壁に形成された第1傾斜部は、該取付孔の深さ方向の途中位置から該取付孔の入口までの部分に形成されていて、該入口に近づくに従って前記孔後壁と孔前壁との間隔が次第に広がる方向に傾斜しており、
前記取付部のロッド後壁に形成された第2傾斜部は、該取付部の軸線方向の途中位置から該取付部の基端部までの部分に形成されていて、該基端部に近づくに従って前記ロッド後壁とロッド前壁との間隔が次第に広がる方向に傾斜している。
この場合、前記取付孔の孔後壁は、孔端壁と前記第1傾斜部との間に、前記孔前壁と平行な平行部を有し、前記取付部のロッド後壁は、ロッド先端壁と前記第2傾斜部との間に、前記ロッド前壁と平行な平行部を有することが好ましい。
【0010】
本発明において好ましくは、前記弁ロッドの取付部には、前記螺子孔内部の空気を外部に逃がすための空気孔が、該取付部と前記取付孔との間の隙間に連通するように形成されていることである。
【0011】
より好ましくは、前記弁板の弁上面に、前記弁ロッドのロッド先端壁に対応する位置と、該ロッド先端壁から横方向に外れた位置とに、前記弁板を持ち上げて前記弁ロッドから取り外すための工具を取り付ける工具取付孔がそれぞれ形成され、前記ロッド先端壁に対応する位置に形成された第1の工具取付孔の深さは、前記弁上面から取付孔まで達する深さであり、前記ロッド先端壁から外れた位置に形成された第2の工具取付孔の深さは、前記弁板の上下幅より小さいことである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弁ロッドに対して弁板を、該弁ロッドの軸線方向に取り外し可能なるように連結したことにより、該弁板の弁箱からの取り出しを簡単且つ迅速に行うことができ、また、前記弁板を前記弁ロッドに、相対的な回転を生じないように精度良く且つ強固に固定したことにより、前記弁板と弁ロッドとの擦れによるパーティクルの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用したゲートバルブの正面図である。
図2図1のII-II線に沿った部分拡大断面図である。
図3図2のIII-III線に沿った部分拡大断面図であって、図の向きを90度変えた図である。
図4】弁板と弁ロッドと弁板固定螺子とを分離して示す断面図である。
図5】弁板を弁ロッドに固定した状態を正面側から見た斜視図である。
図6図5の弁板及び弁ロッドを背面側から見た斜視図である。
図7】弁板を取り出す前のゲートバルブの斜視図である。
図8】弁箱上面の蓋を取り外した状態のゲートバルブの斜視図である。
図9】弁板と弁ロッドとを固定している弁板固定螺子を緩めているときのゲートバルブの斜視図である。
図10図9の要部拡大断面図である。
図11】第1の工具で弁板を弁ロッドから浮き上がらせている途中のゲートバルブの斜視図である。
図12図11の要部拡大断面図である。
図13】第2の工具を弁板に取り付けた状態のゲートバルブの斜視図である。
図14】弁板を弁箱から取り出した状態のゲートバルブの斜視図である。
図15】弁板から前記工具を取り外した状態のゲートバルブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2には、弁板と弁ロッドとの取り付けに本発明の取付構造を適用したゲートバルブが示されている。このゲートバルブは、不図示の真空チャンバに取り付けて使用するもので、該真空チャンバに通じる開口2を備えた弁箱1と、該弁箱1の内部に収容されて前記開口2を開閉する前記弁板3と、該弁板3に固定された開閉操作用の前記弁ロッド4と、該弁ロッド4を駆動する弁駆動部5とを有し、該弁駆動部5で前記弁ロッド4を駆動することにより、前記弁板3を、前記開口2を閉鎖するための位置である実線の閉鎖位置と、前記開口2を開放する鎖線の待避位置とに昇降させるものである。前記弁駆動部5には、エアシリンダ等の駆動機構6が設けられているが、該弁駆動部5及び駆動機構6の構成及び作用は公知であるので、ここでの説明は省略するものとする。
【0015】
前記弁箱1は、横に細長い矩形の箱形をしていて、該弁箱1の前後の側壁1a,1cのうち真空チャンバに接続される前方の側壁1aに、横に細長い矩形の前記開口2と、該開口2を取り囲む平面状の弁シート1bとが形成され、前記閉鎖位置において、前記弁板3の前面に取り付けられたシール部材7を該弁シート1bに押し付けることにより、前記開口2が閉鎖されるように構成されている。
【0016】
前記弁箱1の上面には、図7及び図8からも明らかなように、蓋10が複数の蓋取付螺子11によって着脱自在に取り付けられ、該蓋10を取り外すことによって該弁箱1の上面が開放可能となっており、開放した上面の窓孔12から、前記弁板3を前記弁ロッド4から取り外して軸線Lに沿って外部に取り出すことができるようになっている。
なお、前記弁箱1には、後方の側壁1cにも開口1dが形成されているが、この開口1dは前記弁板3によって開閉されない。
【0017】
前記弁板3は、図2図6から明らかなように、横に細長い矩形の板状をしていて、前記シール部材7が取り付けられた弁前面3aと、該弁前面3aの反対側の弁背面3bと、弁上面3c及び弁下面3dと、該弁下面3dに形成された取付孔13とを有している。前記弁前面3a及び弁背面3bと弁上面3cと弁下面3dとは、何れも平坦面である。
【0018】
前記取付孔13は、前記弁ロッド4の先端(上端)の取付部14を挿入して固定するための孔であり、該取付孔13の横断面形状は、前記弁板3の長手方向即ち左右方向に細長い長孔状をしている。また、該取付孔13は、前記弁前面3a側に位置する孔前壁13aと、前記弁背面3b側に位置する孔後壁13bと、左右の孔側壁13c,13cと、該取付孔13の深さ方向の端部である孔端壁13dとを有しており、前記孔前壁13a及び孔後壁13bと孔端壁13dとは、何れも平坦面であり、前記孔側壁13c,13cは、半円状をした凹曲面である。また、前記孔端壁13dと孔前壁13aとは直角に連なっており、前記孔端壁13dと孔後壁13bの平行部13b2も直角に連なっている。
【0019】
前記弁ロッド4は、円柱状をした本体部4aの先端に、前記取付孔13に挿入するための前記取付部14を有している。該取付部14は、円柱の直径方向の側面を、軸線Lを挟んで平行な2つの平面に沿って切除したような形をしていて、前記取付孔13の孔前壁13aに対向するロッド前壁14aと、前記取付孔13の孔後壁13bに対向するロッド後壁14bと、前記取付孔13の左右の孔側壁13c,13cに対向する左右のロッド側壁14c,14cと、前記取付孔13の孔端壁13dに対向するロッド先端壁14dとを有している。
【0020】
前記ロッド前壁14a及びロッド後壁14bとロッド先端壁14dとは、何れも平坦面であり、前記ロッド側壁14c,14cは、円弧状をした凸曲面である。また、前記ロッド先端壁14dとロッド前壁14aとは直角に連なっており、前記ロッド先端壁14dとロッド後壁14bの平行部14b2も直角に連なっている。
更に、前記取付孔13の長軸方向幅を前記弁ロッド4の直径より大きく形成することにより、前記取付孔13の孔側壁13c,13cと取付部14のロッド側壁14c,14cとの間には、隙間G2が形成されている。
【0021】
前記弁板3は、前記弁ロッド4の先端に、弁板固定螺子17によって該弁ロッド4の軸線L方向に取り外し可能なるように取り付けられている。この取り付けのため、前記弁板3の弁上面3cには、前記弁板固定螺子17を挿通するための螺子挿通孔18が前記軸線L上に形成され、弁ロッド4のロッド先端壁14dには、前記弁板固定螺子17をねじ込むための螺子孔19が前記軸線L上に形成されている。
【0022】
前記弁板固定螺子17は、六角穴付きの螺子頭17aと、外周に螺子山が形成されていない軸部17bと、外周に螺子山が形成された螺子部17cとを有するもので、該螺子部17cの外径は前記軸部17bの外径より大きい。
【0023】
前記弁板3の螺子挿通孔18は、前記弁板固定螺子17の螺子頭17aが収容される大径部18aと、前記弁板固定螺子17の螺子部17c及び軸部17bが挿通される小径部18bと、シール部材7の交換時に前記弁板固定螺子17を緩めた時に、該弁板固定螺子17の螺子部17cが係止することによって該弁板固定螺子17が弁板3から抜け落ちるのを防止する抜止部18cとを有している。
【0024】
前記大径部18aの内径及び深さは、前記弁板固定螺子17の螺子頭17aがワッシャ20と共に完全に納まるような大きさであり、前記小径部18bの内径は、前記大径部18aの内径より小さいが、前記弁板固定螺子17の螺子部17cの外径よりは大きく、前記抜止部18cの内径は、前記弁板固定螺子17の軸部17bの外径より大きいが、螺子部17cの外径よりは小さい。また、前記抜止部18cの内周には螺子孔が形成されており、前記弁板固定螺子17を前記弁板3に取り付けるときは、該弁板固定螺子17の螺子部17cを前記抜止部18cの螺子孔にねじ込んで、該抜止部18cを通過する位置まで前進させ、図4に示すように前記弁板固定螺子17を前記弁板3から完全に取り外すときは、その逆の操作を行う。
【0025】
この構成により、前記弁ロッド4の先端に前記弁板3を固定するときは、図2に示すように、該弁板3の取付孔13内に弁ロッド4の取付部14を挿入し、前記弁板固定螺子17を取付部14の上端の前記螺子孔19内にねじ込んで、前記取付部14のロッド先端壁14dが前記取付孔13の孔端壁13dに当接する位置まで該弁板固定螺子17を締め込むことにより、前記弁板3を弁ロッド4の先端に固定する。
また、前記弁板3を取り外すときは、図10に示すように、前記弁板固定螺子17を緩めて螺子部17cを前記螺子孔19から取り外すことにより、該弁板3を前記弁ロッド4から軸線L方向に取り外す。
【0026】
ここで、前記弁板3を弁ロッド4に固定するとき、前記取付孔13の孔前壁13aと前記取付部14のロッド前壁14aとを全面的に強く密接させて、該弁板3と弁ロッド4とを軸線Lを中心とする回転方向の相対的な変位を生じないように強固に固定するため、図2及び図4から明らかなように、前記取付孔13の孔後壁13bの一部と前記取付部14のロッド後壁14bの一部とに、互いに当接し合うことによって楔効果を生じる傾斜部13b1,14b1がそれぞれ形成されている。
【0027】
このうち、前記取付孔13の孔後壁13bに形成された第1傾斜部13b1は、該取付孔13の深さ方向の途中位置から該取付孔13の入口13eまでの部分に形成されていて、該入口13eに近づくに従って前記孔後壁13bと孔前壁13aとの間隔W1が次第に広がる方向に傾斜している。前記孔後壁13bの残りの部分、即ち、前記孔端壁13dから前記第1傾斜部13b1に至るまでの部分は、前記孔前壁13aと平行する前記平行部13b2となっている。前記第1傾斜部13b1の上下方向幅(取付孔13の深さ方向幅)M1は、前記平行部13b2の上下方向幅(取付孔13の深さ方向幅)M2より小さい。
【0028】
また、前記取付部14のロッド後壁14bに形成された第2傾斜部14b1は、該取付部14の軸線L方向の途中位置から該取付部14の基端部14eまでの部分に形成されていて、該基端部14eに近づくに従って前記ロッド後壁14bとロッド前壁14aとの間隔W2が次第に広がる方向に傾斜している。前記ロッド後壁14bの残りの部分、即ち、前記ロッド先端壁14dから前記第2傾斜部14b1に至るまでの部分は、前記ロッド前壁14aと平行する前記平行部14b2となっている。前記第2傾斜部14b1の上下方向幅(軸線L方向幅)N1は、前記平行部14b2の上下方向幅(軸線L方向幅)N2より小さい。
【0029】
前記孔後壁13bにおける前記第1傾斜部13b1の前記平行部13b2に対する傾斜角度α、及び、前記取付部14における前記第2傾斜部14b1の前記平行部14b2に対する傾斜角度βは、互いに同一角度であって、2-4度程度であることが好ましく、より好ましくは3度である。
【0030】
前記傾斜部13b1,14b1を形成したことにより、前述したように弁板固定螺子17を締め込んで前記弁板3を前記弁ロッド4に固定すると、前記取付孔13の第1傾斜部13b1と取付部14の第2傾斜部14b1とが相互に当接し合うことによって楔効果が働き、その楔効果で前記取付部14が取付孔13の孔前壁13a側に押されるため、前記取付部14のロッド前壁14aが前記取付孔13の孔前壁13aに全面的に強く押し付けられて密着し、それによって前記弁板3と弁ロッド4とは、軸線Lを中心とする相対的な回転を生じないように強固に固定されることになる。
このとき、前記取付孔13の平行部13b2と取付部14の平行部14b2との間には僅かな隙間G1が形成され、この隙間G1は、前記取付孔13の孔側壁13c,13cと取付部14のロッド側壁14c,14cとの間の隙間G2に連通している。
【0031】
また、前記取付部14には、前記弁板固定螺子17を前記螺子孔19に着脱する際に、該螺子孔19内の空気を外部に逃がしたり該螺子孔19内に外部からの空気を取り込んだりするための空気孔21が、前記螺子孔19から前記ロッド後壁14bの平行部14b2まで貫通するように形成されることにより、前記螺子孔19と前記平行部13b2,14b2間の隙間G1とが連通されている。しかし、この空気孔21は、前記ロッド側壁14c,14cに開口することにより、前記螺子孔19と前記隙間G2とを結ぶよう形成されていても良い。
【0032】
このようにして、前記弁板3と弁ロッド4とが相対的な回転を生じないように強固に固定されることにより、ゲートバルブの作動時に、前記弁板3と弁ロッド4との相対的な変位による擦れや、前記シール部材7と弁シート1bとの擦れ等が防止されるため、部品間の擦れによるパーティクルの発生が抑えられる。また、弁板3の取付孔13の一部と弁ロッド4の取付部14の一部とに傾斜部13b1,14b1を設けるだけで前記弁板3と弁ロッド4とを強固に固定することができるため、その構造は至って簡単である。
【0033】
前記弁板3の弁上面3cには、前記弁ロッド4に強固に固定されている該弁板3を容易に取り外すことができるようにするため、図5及び図6に示すように、操作用の工具22a,22b(図14参照)を取り付けるための複数の工具取付孔23a,23bが形成されている。この工具取付孔23a,23bは螺子孔により形成され、前記工具22a,22bは螺子棒により形成されている。
図示した例では、前記螺子挿通孔18に隣接し且つ近接する位置に1つの第1の工具取付孔23aが形成され、前記軸線Lに対して左右対称をなす位置に2つの第2の工具取付孔23b,23bが形成されている。
【0034】
前記第1の工具取付孔23aは、該工具取付孔23aにねじ込んだ第1の工具22aによって前記弁板3を弁ロッド4から浮き上がらせる(図12参照)ためのもので、前記弁ロッド4の取付部14のロッド先端壁14dに対応する位置に、前記弁上面3cから前記取付孔13まで達する深さに形成されている。
また、前記第2の工具取付孔23b,23bは、第2の工具22bをねじ込んで取り付けるためのもので、前記ロッド先端壁14dから横方向に外れた位置に配設されており、該第2の工具取付孔23b,23bの深さは、前記弁板3の上下幅Hより小さい。このため、該第2の工具取付孔23b,23bは、前記弁板3の上下幅の途中まで延在していることになる。
【0035】
前記操作用の工具22a,22bを使用して前記弁板3を弁ロッド4から取り外すときは、図9及び図10に示すように、前記弁板固定螺子17を六角レンチ24により緩めて螺子部17cを弁ロッド4の取付部14の螺子孔19から抜け出させたあと、図11及び図12に示すように、前記第1の工具取付孔23aに第1の工具22aをねじ付ける。
そして、該第1の工具22aを締め込んでその先端を前記弁ロッド4のロッド先端壁14dに当接させた後、更に該第1の工具22aを締め込むことにより、前記弁板3を前記弁ロッド4から浮上させ、前記取付孔13の第1傾斜部13b1と前記取付部14の第2傾斜部14b1とが互いに当接しなくなる位置まで該弁板3を上昇させる。そうすると、前記取付孔13と取付部14との嵌合状態は緩くなるため、その後は、図13に示すように、2つの第2の工具取付孔23b,23bに2つの第2の工具22b,22bをねじ込み、この第2の工具22b,22bを両手に持って弁板3を引き上げることにより、該弁板3を弁ロッド4から分離することができる。
【0036】
前記構成を有するゲートバルブにおいて、前記弁板3に取り付けられているシール部材7を交換する際に、前記弁板3を弁ロッド4から取り外して前記弁箱1から取り出す工程について、図面を参照しながら改めて順を追って説明する。
【0037】
前記弁板3を取り出す際には、該弁板3を、図2に実線で示す上昇位置から、同図に鎖線で示す下降位置まで下降させる。
次に、図8に示すように、弁箱1の上面の蓋取付螺子11を取り外すことによって蓋10を取り外し、該弁箱1の上面の窓孔12を開放する。
【0038】
続いて、図9及び図10に示すように、前記窓孔12から六角レンチ24を差し込んで弁板固定螺子17を緩め、該弁板固定螺子17の螺子部17cを弁ロッド4の上端の螺子孔19から完全に抜き出した状態にしたあと、図11及び図12に示すように、第1の工具取付孔23aに第1の工具22aをねじ込む。そして、該第1の工具22aの先端がロッド上端のロッド先端壁14dに当接した後も更にねじ込むことにより、前記弁板3を前記弁ロッド4から浮上させて、取付孔13の第1傾斜部13b1と取付部14の第2傾斜部14b1とが係合しなくなる位置まで該弁板3を上昇させる。このとき前記弁板固定螺子17は、前記弁板3から完全に取り外しても良い。
【0039】
次に、図13に示すように、2つの第2の工具取付孔23b,23bに2つの第2の工具22b,22bをねじ込んだ後、この第2の工具22b,22bを両手に持って弁板3を引き上げることにより、図14に示すように、前記弁板3を弁ロッド4から分離させると共に、前記弁箱1の上面の窓孔12を通じて外部に取り出す。そして、図15に示すように前記各工具22a,22bを弁板3から取り外したあと、シール部材7を交換する。
【0040】
シール部材7の交換が終了した前記弁板3は、再び前記2つの第2の工具22b,22bを取り付けて、該第2の工具22b,22bを手に持って前記弁箱1内に収容し、取付孔13内に弁ロッド4の取付部14を嵌合させた後、前記第2の工具22b,22bを取り外し、前記六角レンチ24で弁板固定螺子17をねじ込むことにより、前記弁ロッド4に固定する。そして、前記弁箱1の上面に蓋10を蓋取付螺子11で取り付けることにより、図7に示すように、シール部材7の交換作業は全て終了し、前記ゲートバルブは使用可能な状態になる。
【0041】
図示した例では、前記工具22a,22bとして、六角穴付きの螺子頭を備えた螺子棒が使用されているが、該工具は、前記螺子頭の代わりに、横長の棒状をしたハンドルや、滑り止め用の縦溝が側面に形成された円柱状のハンドルを備えたものであっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 弁箱
1a 側壁
2 開口
3 弁板
3a 弁前面
3b 弁背面
3c 弁上面
3d 弁下面
4 弁ロッド
7 シール部材
13 取付孔
13a 孔前壁
13b 孔後壁
13b1 第1傾斜部
13b2 平行部
13c 孔側壁
13d 孔端壁
13e 入口
14 取付部
14a ロッド前壁
14b ロッド後壁
14b1 第2傾斜部
14b2 平行部
14c ロッド側壁
14d ロッド先端壁
14e 基端部
17 弁板固定螺子
18 螺子挿通孔
19 螺子孔
21 空気孔
22a,22b 工具
23a,23b 工具取付孔
W1,W2 間隔
G1,G2 隙間
H 上下幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15