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特許7057592生体情報処理システム、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】生体情報処理システム、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20220413BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20220413BHJP
【FI】
G06Q50/22
G16H50/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019548179
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037384
(87)【国際公開番号】W WO2019073927
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2017196797
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517304691
【氏名又は名称】株式会社Kitahara Medical Strategies International
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】大野 友嗣
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】福西 広晃
(72)【発明者】
【氏名】林谷 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】駱 園
(72)【発明者】
【氏名】宇野 裕
(72)【発明者】
【氏名】北原 茂実
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532459(JP,A)
【文献】特開2017-156975(JP,A)
【文献】特開2003-303239(JP,A)
【文献】特開2006-079328(JP,A)
【文献】特開2015-134196(JP,A)
【文献】特許第5977898(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される対象患者の生体情報の特徴量と、識別用パラメータとに基づいて、前記対象患者が不穏状態であるか否かを示す識別情報を判定する判定部と、
前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する推定部と、
を備える、生体情報処理システムであって、
前記識別用パラメータは、前記不穏状態における生体情報の特徴量と、非不穏状態における生体情報の特徴量とに基づいて機械学習し生成される、生体情報処理システム。
【請求項2】
複数の患者がそれぞれ不穏状態であるときに施す複数の対処法と、前記複数の患者の所定期間におけるそれぞれの生体情報に関する複数の特徴量とに基づいて前記対処予測用パラメータを学習する学習部と、
学習された前記対処予測用パラメータを保持する記憶部と、
を更に備える、請求項1に記載の生体情報処理システム。
【請求項3】
前記推定部は、前記複数の対処法にそれぞれ対処スコアを関連付けて前記対処情報を推定する、請求項2に記載の生体情報処理システム。
【請求項4】
前記推定部は、前記対象患者に関する付加情報を考慮して前記対処情報を推定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体情報処理システム。
【請求項5】
推定された前記対処情報をユーザに対して通知する通知部を更に備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体情報処理システム。
【請求項6】
前記識別情報は、不穏状態の可能性と相関のある不穏スコアを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の生体情報処理システム。
【請求項7】
コンピュータが、
入力される対象患者の生体情報の特徴量と、識別用パラメータとに基づいて、前記対象患者が不穏状態であるか否かを示す識別情報を判定し、
前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定し、
前記識別用パラメータは、前記不穏状態における生体情報の特徴量と、非不穏状態における生体情報の特徴量とに基づいて機械学習し生成される、
生体情報処理方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、
複数の患者がそれぞれ不穏状態であるときに施す複数の対処法と、前記複数の患者の所定期間におけるそれぞれの生体情報に関する複数の特徴量とに基づいて前記対処予測用パラメータを学習し、
学習された前記対処予測用パラメータを記憶部に格納する、
請求項7に記載の生体情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
入力される対象患者の生体情報の特徴量と、識別用パラメータとに基づいて、前記対象患者が不穏状態であるか否かを示す識別情報を判定する処理と、
前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する処理と、
を実行させ、
前記識別用パラメータは、前記不穏状態における生体情報の特徴量と、非不穏状態における生体情報の特徴量とに基づいて機械学習し生成される、
生体情報処理プログラム。
【請求項10】
前記生体情報処理プログラムは、前記コンピュータに、
複数の患者がそれぞれ不穏状態であるときに施す複数の対処法と、前記複数の患者の所定期間におけるそれぞれの生体情報に関する複数の特徴量とに基づいて前記対処予測用パラメータを学習する処理と、
学習された前記対処予測用パラメータを記憶部に格納する処理と、
を更に実行させる、請求項9に記載の生体情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理システム、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の生体情報を測定することで、患者の状態を観察したり、患者に起こり得る状態を予測したりすることが行われている。
【0003】
特許文献1は、センサを用いて使用者の生理学的情報を測定することで状態スコアを生成し、その状態スコアと閾値とを比較することによって、使用者にとって有害な状態の発生を予測し、介護者に警告を出す技術的思想を開示している。
【0004】
特許文献2は、慢性疾患または病気等の生理学的事象の発生または再発を検出するために、自動センサおよび電子信号処理を使用して、生命徴候または非生命徴候をモニタするための技術的思想を開示している。具体的には、特許文献2に記載の技術的思想は、感知された動きに応答して被験者の不穏状態のレベルを判断し、それに応答して、turn protocolを被験者に割り当てるため、臨床医に対して警報を生成する制御装置を含む。
【0005】
特許文献3は、患者の過去の生理学的知見、過去の治療、および関連する過去の臨床スコアを学習することで、その患者が過去の侵襲や処置に類する状況に遭遇した場合に、最適な治療方法を提案する技術的思想を開示している。
【0006】
特許文献4は、ユーザの血圧や体温等の生体情報を測定し、測定した生体情報と判定値とを比較することによって、ユーザの健康状態を「正常」、「非正常」、および「異常」のいずれかであることを判定する技術的思想を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5657315号公報
【文献】特許第5951630号公報
【文献】特開2013-154190号公報
【文献】特開2014-186402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2において、異常が検知された後に患者に施す対処法(措置、処置)は、多くの場合、医師から指示された範囲内で、看護師や介護士、療法士等の対応者(以下、看護師等と呼ぶこともある)に任せられている。そのため、その対処法の効果は対応者の経験、勘、および患者と対応者との相性等に依存する。この時、対処法が適切でない場合、患者の異常が収まりにくかったり、患者の予後が悪化してしまったりする可能性もある。具体的には、対応者は、例えば、今後も問題行動を起こすことが予想される患者に対して、必要以上に強い鎮静剤を投与したり、強く抑制をしたりすることが考えられる。この場合、不穏の発生やそれに伴う問題行動は抑制されるものの、患者への負荷が大きくなる。またベッドに長時間寝たきりになりがちになるため、患者の回復が遅れ、予後が悪化する可能性がある。また、特許文献1および特許文献2では、患者ごとに適切な処置が異なることもある。そのため、患者ごとに適切な処置を考える等の対応者の負荷が大きくなる。また不適切な処置を対象患者に対して実行し、異常が沈静化せず、別の問題が発生してしまう可能性もある。
【0009】
特許文献3では、過去の事例に基づいて、患者の症状に応じた推奨措置を提案している。しかしながら、特許文献3は、測定した患者の状態のみに基づいて推奨措置を提案しているため、推奨措置を実施することで患者にかかる負荷や、対応者にかかる負荷、周囲環境等を考慮していない問題がある。このため、特許文献3では、推奨処置を患者に実施する際に患者にかかる負荷が大きくなったり、対応者にかかる負荷が大きくなったりする可能性がある。特に、特許文献3では、患者に異常が起きてから推奨措置を実施することになるため、患者や対応者の負荷が大きくなる可能性がある。
【0010】
特許文献4では、ユーザの状態が異常であると判定された場合に、最寄りの病院までの地図情報や、緊急連絡先を表示し、救護活動を補助している。しかしながら、特許文献4は、具体的な対処法を含む情報を表示しているわけではないため、ユーザの状態が緊急である場合に救護する者が適切な処置を実施できない可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、上述の課題を解決できる生体情報処理システム、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様の生体情報処理システムは、入力される対象患者の生体情報の特徴量と、識別用パラメータとに基づいて、前記対象患者が不穏状態であるか否かを示す識別情報を判定する判定部と、前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する推定部と、を備える、生体情報処理システムであって、前記識別用パラメータは、前記不穏状態における生体情報の特徴量と、非不穏状態における生体情報の特徴量とに基づいて機械学習し生成される。
【0013】
本発明の第2の態様の生体情報処理方法は、コンピュータが、入力される対象患者の生体情報の特徴量と、識別用パラメータとに基づいて、前記対象患者が不穏状態であるか否かを示す識別情報を判定し、前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する、生体情報処理方法であって、前記識別用パラメータは、前記不穏状態における生体情報の特徴量と、非不穏状態における生体情報の特徴量とに基づいて機械学習し生成される。
【0014】
本発明の第3の態様の生体情報処理プログラムは、コンピュータに、入力される対象患者の生体情報の特徴量と、識別用パラメータとに基づいて、前記対象患者が不穏状態であるか否かを示す識別情報を判定する処理と、前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する処理と、を実行させる、生体情報処理プログラムであって、前記識別用パラメータは、前記不穏状態における生体情報の特徴量と、非不穏状態における生体情報の特徴量とに基づいて機械学習し生成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対象患者の非平常状態の発生を抑制させること、または発生してしまった患者の異常状態を早期に鎮静させることのできる対処情報を推定することのできる生体情報処理システム、生体情報処理方法、および生体情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る生体情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る識別情報の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る対処情報の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る生体情報処理システムの動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る生体情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る生体情報処理システムの学習部の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る生体情報処理システムがパラメータを学習する動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図8A】本発明の第2の実施形態に係る生体情報処理システムが対処予測用パラメータを学習するためのデータの一例を示す図であって、不穏状態が継続した場合を示す図である。
図8B】本発明の第2の実施形態に係る生体情報処理システムが対処予測用パラメータを学習するためのデータの一例を示す図であって、非不穏状態が継続した場合を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る生体情報処理システムが対処情報を通知するまでの動作の流れを示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係る生体情報処理システムのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して適宜説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る生体情報処理システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、生体情報処理システム100は、判定部110と、推定部120とを備える。
【0019】
判定部110は、対象患者の生体情報に関する特徴量を受けて、その特徴量に基づいて、対象患者の容態が平常状態と比較して変化しているか否かを示す識別情報を判定する。本実施形態における生体情報とは、センサ等で測定することのできる生体に関する情報のことを意味する。具体的には、生体情報は、例えば、心拍(脈拍)、呼吸、血圧、深部体温、意識レベル、皮膚体温、皮膚コンダクタンス反応(Galvanic Skin Response(GSR))、皮膚電位、筋電位、心電波形、脳波波形、発汗量、血中酸素飽和度、脈波波形、光脳機能マッピング(Near-infrared Spectroscopy(NIRS))、尿量、および瞳孔の反射等をあげることができるが、これらに限定されない。生体情報に関する特徴量とは、患者の生体情報を処理することで生成される、生体情報の特徴を表す情報であり、例えば、生体情報の特定の周波数帯域の時間変動を示すデータである。具体的には、判定部110は、対象患者の生体情報に関する特徴量に基づいて、対象患者が不穏状態であるか、非不穏状態であるかを自動的に判定することができる。ここで、不穏状態(以下、不穏と呼ぶこともある)とは、対象患者が問題行動を起こし得る状態のことを意味する。具体的には、不穏状態は、例えば、対象患者の行動が過剰で落ち着きがない状態、対象患者が穏やかでない状態、および対象患者が精神を正常にコントロールできない状態を含む。
【0020】
また、問題行動とは、自分が怪我をしたり、誰かを怪我させたり、看護師等に負荷を与えたり、患者に対して適切な治療を継続することができなかったりする行動のことを意味する。具体的には、問題行動は、例えば、ベッド上で起き上がる、ベッドの柵を外す、離床する、一人歩きする、徘徊する、病院の別のフロアへ行く、ベッドから転落する、点滴やチューブ類をいじる、点滴やチューブ類を抜去する、奇声を発する、暴言を発する、暴力をふるう等を含む。ただし、患者の状態によって、問題行動に該当する行動は異なる。なお、判定部110は、対象患者の生体情報を受けて、その生体情報の特徴量を算出する機能を有していてもよい。この場合、判定部110は、生体情報に平滑化処理や、微分処理等を施すことで特徴量を算出することができる。判定部110は、例えば、互いに通過帯域が異なる複数のバンドパスフィルタや、微分フィルタ等を備え、単独のフィルタや複数組み合わせたフィルタ等でのフィルタ処理を生体情報に施すことによって得られる複数の値を組み合わせて特徴量(ベクトル)を算出してもよい。
【0021】
本実施形態において、識別情報とは、対象患者の容態が平常状態と比較して変化しているかどうかを示す情報である。例えば、識別情報とは、対象患者が不穏状態である可能性を示す不穏スコアを含む情報のことを意味する。不穏スコアは、例えば、事前に学習された識別用パラメータと、対象患者の生体情報に関する特徴量とに基づいて判定される。ここで、識別用パラメータとは、生体情報の特徴量と、不穏状態または非不穏状態とを関連付けたパラメータのことを意味する。このような、識別用パラメータは、例えば、不穏状態の際に得た生体情報の特徴量と、非不穏状態の際に得た生体情報の特徴量とを機械学習にかけることによって生成することができる。このような識別用パラメータは、例えば、生体情報処理システム100の外部に設置する記憶装置(図示しない)に保持されていればよい。また、判定部110が記憶部(図示しない)を有している場合には、判定部110の記憶部が識別用パラメータを保持していてもよい。上述のとおり、識別用パラメータは、生体情報の特徴量と、不穏状態または非不穏状態とを関連付けたパラメータを含んでいる。このため、識別用パラメータを適正化することで、識別情報の精度を向上させることできる。
【0022】
本実施形態において、不穏スコアとは、対象患者が不穏であるか非不穏であるかを示す指標のことを意味する。具体的には、不穏スコアは、例えば、0以上、1以下の数で表現することができる。この場合、対象患者は、例えば、不穏スコアが1に近い数であるほど不穏状態の可能性が高い、または、強い不穏状態であり、不穏スコアが0に近い数であるほど非不穏状態の可能性が高いことを意味する。また、0以上、1以下の数のうち、任意の数を閾値として定めてよい。この場合、判定部110は、対象患者の不穏スコアが閾値を超えるか否かによって、その対象患者が不穏状態であるか非不穏状態であるかを判定してもよい。さらに、不穏スコアは、例えば、0と1との2値で表現してもよい。具体的には、判定部110は、例えば、不穏スコアが閾値未満の場合は0、不穏スコアが閾値以上の場合を1として出力してもよい。この場合、対象患者は、例えば、不穏スコアが1であれば不穏状態であり、不穏スコアが0であれば非不穏状態であるとすればよい。判定部110は、例えば、入力された対象患者の生体情報の特徴量と、外部から受ける識別用パラメータとに基づいて、対象患者の識別情報(不穏スコア)を自動的に判定することができる。
【0023】
図2は、識別情報の一例を示す図である。図2に示すように、識別情報は、少なくとも、対象患者の状態と、生体情報を測定した日時と、不穏スコアとを含む。具体的には、図2に示す識別情報は、例えば、「2017年7月11日の17:00:00」における対象患者の不穏スコアが「0.80」であり、その対象患者の状態が「不穏状態」であることを示している。なお、図2に示す識別情報は、対象患者の30秒ごとの状態と不穏スコアとを含むが、これは例示であり、生体情報の測定間隔を限定するものではない。
【0024】
推定部120は、判定部110が判定した識別情報(不穏スコア)と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、対象患者に施すための対処法と、対処法の効果の度合いを示す対処スコアとを少なくとも含む対処情報を推定する。ここで、対処予測用パラメータとは、過去において、不穏状態の対象患者に施した対処法と、対処法を実施した前後の所定期間における生体情報に関する特徴量の変動、または、不穏スコアの変動とを関連付けたパラメータのことを意味する。このような、対処予測用パラメータは、例えば、対処法を実施したことによる生体情報の特徴量の変動、または、不穏スコアの変動を機械学習にかけることによって生成することができる。すなわち、推定部120は、過去の事例に基づいて、所定期間の生体情報の特徴量の変動、または、不穏スコアの変動に応じた対処情報を推定することができる。具体的には、推定部120は、例えば、「2017年7月11日の17:00:00」~「2017年7月11日の22:00:00」の時間帯の不穏スコアの変動に応じて、「2017年7月11日の22:00:00」における対処情報を、上記時間帯の不穏スコアと対処予測用パラメータとに従って推定することができる。この場合の対処予測用パラメータは、例えば、「2017年7月1日の0:00:00」~「2017年7月10日の23:59:59」の間に学習されたものを使用すればよい。これにより、推定部120は、例えば、対象患者が「2017年7月11日の22:00:00」の時点で平常状態(非不穏状態)であっても、まもなく非平常状態(不穏状態)に遷移し得ることも推定することができる。この場合、推定部120は、平常状態(非不穏状態)の対象患者が非平常状態(不穏状態)へ遷移してしまうことを抑制できる対処法を含む対処情報を推定することができる。
【0025】
なお、推定部120は、識別情報に付加情報を考慮して対処情報を推定してもよい。本実施形態において、付加情報とは、対象患者の識別情報に影響を与える情報のことを意味する。具体的には、付加情報は、例えば、対象患者の周囲の状況や対処法を実施することで周囲に与える影響(周囲環境情報)や、患者にかかる負荷の大きさ(患者負荷)、看護師等にかかる負荷の大きさ(対応者負荷)、対処法を対象患者に実施するのに要する時間、対処法を実施することでかかる金銭的なコスト、およびカルテ(電子カルテ)に含まれる情報のことを意味する。この場合、推定部120は、付加情報を考慮することで、対象患者や看護師等にかかる負荷や、対象患者に対処法を実施することで周囲の患者に与える影響等を考慮した対処情報を推定することができる。すなわち、推定部120が付加情報を考慮して識別情報を推定することによって、識別情報の精度は向上するし、対象患者や看護師等にかかる負荷はより低減される。
【0026】
周囲環境情報とは、対象患者に対して対処法を実施するうえで、対象患者の周囲の患者などに迷惑をかける等の周囲に影響を与える度合いを含む情報である。具体的には、周囲環境情報は、例えば、対象患者の病室が個室であるか否か、病室とナースステーションとの距離、対処法を実施するために対象患者を部屋から移動させる必要があるか否か、対処法を実施する時間が昼であるか否か、消灯後であり対処法を実施する際に部屋を明るくする必要があるか否か、消灯後であり対処法を実施する際に音が発生するか否か、といった情報のことを意味する。なお、上述の周囲環境情報は、例示であり、本発明を限定するものではない。
【0027】
患者負荷とは、対処法を実施することで対象患者の体にかかる負荷のことを意味しており、例えば、対象患者に対して強い鎮静剤を投与する対処法では負荷が大きくなり、対象患者に対して声がけする対処法では負荷が小さくなる。
【0028】
対応者負荷とは、対処法を実施することで看護師等にかかる負荷のことを意味しており、例えば、対象患者に対して、有効な鎮静剤を投与する場合には負荷が小さくなり、対象患者に対して継続的に声がけする場合には負荷が大きくなる。
【0029】
電子カルテに含まれる情報とは、例えば、年齢、性別、身長、体重、家族構成、合併症の有無、投薬歴、血液成分、病歴、排泄、および飲食に関する情報等のことを意味する。なお、上述の電子カルテに含まれる情報は、例示であり、本発明を限定するものではない。
【0030】
図3は、推定部120が推定する対処情報の一例を示す図である。図3に示すように、対処情報は、例えば、対処法と、対処スコアと、周囲環境スコアと、患者負荷スコアと、鎮静までにかかる時間と、鎮静後の静穏継続時間とを含む。周囲環境スコアおよび患者負荷スコアは付加情報に関する情報であり、鎮静までにかかる時間および鎮静後の静穏継続時間は識別情報に関する情報である。なお、図3に示す対処情報は、付加情報として周囲環境スコアおよび患者負荷スコアの2種類を含むが、これは例示であり、対処情報は更に複数の付加情報を含んでよいし、付加情報を含んでいなくてもよい。
【0031】
対処法は、対象患者に対して施すための処置の種類であり、例えば、対象患者が問題を生じさせない状態にする処置、または、対象患者の非平常状態(不穏状態)を抑制させる処置に関する情報のことを意味する。具体的には、対処法は、主に夜間に実施する対処法と、主に昼間に実施する対処法とに分類される。主に夜間に実施する対処法は、例えば、トイレに連れて行く、排泄物を処理する、飲料を飲ませる、鎮静剤を投与する、直接声を掛ける、体温を調整する、身体を抑制する、テレビ電話等で声を掛ける、音楽を聞かせる、匂い(アロマ)を嗅がせる、集中するタスク(作業)を与える、を含む。また、主に昼間に実施する対処法は、例えば、鎮静剤を投与する、直接声を掛ける、テレビ電話等で声を掛ける、運動させる(リハビリを行う)、食事をさせる、睡眠時間帯を調整する、部屋の照明を調整する、体温を調整する、部屋の温度を調整する、入浴させる、テレビ番組を見せる、音楽を聞かせる、匂い(アロマ)を嗅がせる、を含む。上述の対処法は例示であり、本発明を限定するものではない。看護師等の対応者は、対処法に従うことによって、例えば、対象患者や看護師に与える負荷や、対象患者に対処法を実施することで周囲の患者に与える悪影響を抑制しつつ、対象患者の非平常状態(不穏状態)を容易に抑制することができる。ここで、悪影響とは、例えば、寝ている周囲の患者を起こしてしまう、周囲の患者が眠れなくなる、騒がしいから周囲の患者が怒り出す、といった影響のことを意味する。
【0032】
なお、対象患者ごとに図2に示した不穏スコアの動き(時間変化)が異なるので、推定部120は、あるタイミングでの不穏スコアの値が同じであったとしても患者ごとに異なる対処情報を推定することができる。また、推定部120は、不穏スコアの大きさに応じて、異なる対処法を推定してもよい。具体的には、推定部120は、例えば、不穏スコアが比較的大きい場合には鎮静効果の大きい対処法を中心に推定したり、不穏スコアが大きくても体の弱い対象患者には体にかかる負荷の小さい対処法を中心に推定したりすることができる。
【0033】
対処スコアは、対象患者に実施する対処法の有効性を示す値のことを意味する。対処スコアは、例えば、1~5の5段階で表現され、数字が大きいほど効果の大きい対処法であることを意味している。具体的には、図3に示す対処情報は、対象患者に対して、鎮静剤Aを投与したり、継続的に声を掛けたりすることは効果が大きく、テレビ番組を見せることは効果が小さいことを示している。また、対処スコアは、5段階よりも多くの段階で表現してもよいし、5段階よりも少ない段階で表現してもよい。すなわち、本実施形態の対処情報に含まれる各対処法には、対処スコアが関連付けられている。これにより、本実施形態では、対処情報に含まれる対処法の効果の度合いや精度が顕在化する。そのため、看護師等は、対処スコアを参考にすることにより、対処法の効果を容易に把握することができる。
【0034】
周囲環境スコアは、対象患者に対処法を実施することで周囲の環境に与える影響を示す値のことを意味する。周囲環境スコアは、例えば、1~10の10段階で表現され、数字が大きいほど周囲に与える影響が小さいことを意味している。具体的には、図3に示す対処情報は、対象患者に対して、鎮静剤Aを投与したり、鎮静剤Bを投与したりすることは周囲の環境に与える影響が小さく、テレビ番組を見せることは、テレビが光や音を発するため、相部屋であると周囲の環境に与える影響が大きいことを示している。また、周囲環境スコアは、10段階よりも多くの段階で表現してもよいし、10段階よりも少ない段階で表現してもよい。
【0035】
患者負荷スコアは、対象患者に対処法を実施することで患者にかかる負荷の大きさを示す値のことを意味する。患者負荷スコアは、例えば、1~10の10段階で表現されるスコアであり、数字が大きいほど患者にかかる負荷は小さいことを意味している。具体的には、図3に示す対処情報は、対象患者に対して、鎮静剤Aを投与したり、鎮静剤Bを投与したりすることは患者にかかる負荷が大きく、継続的に声を掛けることは患者にかかる負荷が小さいことを示している。また、患者負荷スコアは、10段階よりも多くの段階で表現してもよいし、10段階よりも少ない段階で表現してもよい。
【0036】
なお、付加情報として周囲環境スコアおよび患者負荷スコア以外の情報を対処情報に含ませる場合には、例えば、周囲環境スコアおよび患者負荷スコアと同様に、1~10段階でスコアを評価して、その評価した付加情報を対処情報に含ませればよい。
【0037】
鎮静までにかかる時間は、対処法を対象患者に実施することで、対象患者の状態が不穏状態から非不穏状態に遷移するまでにかかる予測時間である。具体的には、図3は、不穏状態になった対象患者に鎮静剤Aを投与した場合、対象患者は、鎮静剤Aの投与から30分後に不穏状態から非不穏状態に遷移することを示している。不穏状態から非不穏状態への遷移は、例えば、不穏スコアが閾値以上から閾値未満に低下したことから判定することができる。
【0038】
鎮静後の静穏継続時間は、対象患者の状態が不穏状態から非不穏状態に遷移した後、非不穏状態が持続する予測時間である。具体的には、図3は、対象患者に鎮静剤Aを投与した場合、対象患者の非不穏状態は8時間継続することを示している。非不穏状態の持続時間は、例えば、不穏スコアの閾値未満継続時間から判定することができる。
【0039】
[生体情報処理システム100の動作]
図4は、図1に示した生体情報処理システム100の動作の流れを示すフローチャートである。以下、図1および図4を参照しつつ、生体情報処理システム100の動作の流れについて説明する。
【0040】
まず、判定部110は、外部から対象患者の生体情報に関する特徴量を受ける(ステップS101)。
【0041】
次いで、判定部110は、生体情報に関する特徴量と、識別用パラメータとに基づいて、対象患者が不穏であるか非不穏であるかを示す識別情報を判定する(ステップS102)。
【0042】
次いで、識別情報の値(不穏スコア)が所定の値未満である場合(ステップS103の「NO」)、生体情報処理システム100は、動作を終了する。一方、識別情報の値が所定の値以上である場合(ステップS103の「YES」)、推定部120は、識別情報に応じた対処情報を推定する(ステップS104)。
【0043】
上述のとおり、本実施形態における生体情報処理システム100は、図3に示すような対処情報を過去の事例に基づいて推定することができる。このため、看護師等は、図3に示す対処情報を考慮することで、最適な対処法を対象患者に実施することができる。これにより、本実施形態は、看護師等の負荷を減少させ、対象患者の怪我を防止し、かつ効果の小さい対処法を実施することに起因する治療の遅延をも防止することできる。また、本実施形態では、看護師等は、対象患者が非不穏状態の間に、不穏状態への遷移を予測し、その対象患者に対して対処法を実施することができる。これにより、本実施形態では、対象患者が非不穏状態から不穏状態へ遷移してしまうことを抑制することができる。さらに、生体情報処理システム100は、対処法を実施することで生じる周囲環境への影響をも考慮して、対処情報を推定することができる。このため、看護師等は、効果がほぼ同一である対処法が複数あった場合に、例えば周囲の患者に迷惑を掛ける対処法を避けることができる。これにより、本実施形態は、周囲環境への影響も抑制することができる。
【0044】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る生体情報処理システムの構成を示すブロック図である。図5に示すように、生体情報処理システム100Aは、判定部110と、推定部120と、算出部130と、記憶部140と、学習部150と、通知部160とを備えている。
【0045】
算出部130は、生体センサ(図示しない)等が検出した対象患者の生体情報を受けて、その生体情報に関する特徴量を算出する。なお、算出部130は、生体情報に関する特徴量を外部から取得してもよい。
【0046】
記憶部140は、少なくとも、対処情報と、識別情報と、識別用パラメータと、対処予測用パラメータとを保持する。この場合、判定部110は、算出部130が取得した生体情報の特徴量と、記憶部140が保持する識別用パラメータとに基づいて識別情報を判定する。また、判定部110は、判定した識別情報を記憶部140に格納する機能を有していてもよい。推定部120は、判定部110が判定した識別情報と、記憶部140が保持する対処予測用パラメータに基づいて対処情報を推定する。また、推定部120は、推定した対処情報を記憶部140に格納する機能を有していてもよい。
【0047】
学習部150は、機械学習によって識別用パラメータおよび対処予測用パラメータを学習することができる。具体的には、図6に示すように、学習部150は、識別用パラメータ学習部151と、対処予測用パラメータ学習部152とを有している。
【0048】
識別用パラメータ学習部151は、過去における複数の生体情報の特徴量と、対象患者が不穏状態であるか非不穏状態であるかの関係性について学習することで識別用パラメータを学習する。また、識別用パラメータ学習部151は、生成した識別用パラメータを記憶部140に格納することができる。
【0049】
対処予測用パラメータ学習部152は、対象患者を含む複数の患者がそれぞれ不穏状態であるときに施す複数の対処法と、複数の患者の所定期間におけるそれぞれの生体情報に関する複数の特徴量とに基づいて対処予測用パラメータを学習する。また、対処予測用パラメータ学習部152は、生成した対処予測用パラメータを記憶部140に格納することができる。本実施形態では、生体情報処理システム100Aが対処予測用パラメータを学習する機能を有している。そのため、本実施形態は、学習を重ねることで対処情報の精度を向上させることができる。
【0050】
通知部160は、推定部120が推定した対処情報を看護師等に通知する。通知部160は、例えば、推定部120が対処情報を推定した後、その対処情報を音声や、映像で自動的に通知するように構成されている。このような通知部160は、例えば、一般的なスピーカや、一般的なディスプレイで構成すればよい。これにより、看護師等は、通知部160からの通知によって、対処情報を容易に把握することができる。また、通知部160は、看護師等が所持する、生体情報処理システム100A(通知部160)と通信可能な携帯端末やウェアラブル端末に対処情報を通知してもよい。これにより、看護師等は、対処情報が通知部160から通知されるため、特定の場所(例えば、生体情報処理システム100Aの前等)にいなくても、推定された対処情報を確認できる。
【0051】
[学習の動作]
次に、図5図6、および図7を参照して、生体情報処理システム100Aが識別用パラメータおよび対処予測用パラメータを学習する動作の流れについて説明する。図7は、生体情報処理システム100Aが識別用パラメータおよび対処予測用パラメータを学習する動作の流れを示すフローチャートである。
【0052】
まず、識別用パラメータ学習部151は、識別用パラメータを学習する(ステップS201)。具体的には、識別用パラメータ学習部151は、不穏状態で測定された対象患者の過去の生体情報から算出される特徴量と、非不穏状態で測定された対象患者の過去の生体情報から算出される特徴量とを教師データとして利用し、機械学習によって識別用パラメータを学習する。
【0053】
次いで、判定部110は、測定された対象患者の生体情報と、識別用パラメータとに基づいて、対象患者が「不穏状態」であるか「非不穏状態」であるかを示す識別情報を判定する(ステップS202)。
【0054】
次いで、ステップS203において、識別情報の値が所定の値未満であった場合(ステップS203の「NO」)、看護師等は対象患者に対して対処法を施すことはないので、生体情報処理システム100Aは学習の動作を終了する。
【0055】
一方、ステップS203において、識別情報の値が所定の値以上であった場合(ステップS203の「YES」)、対処予測用パラメータ学習部152は、対処予測用パラメータを学習する(ステップS204)。具体的には、対処予測用パラメータ学習部152は、対象患者に施す対処法と、対処法を施したことによる対象患者の識別情報の時間変動との関係性を機械学習によって対処予測用パラメータを学習する。
【0056】
図8Aおよび図8Bは、対象患者の識別情報の値(不穏スコア)の時間変動を示す図であり、横軸が時間、縦軸が不穏スコアである。また、図8Aおよび図8Bにおいて、斜線で示す領域は看護師等が対象患者に対し、対処法を施したことを意味している。
【0057】
具体的には、図8Aは、「0:10」頃に、看護師等が対象患者に対処法を施したにも関わらず、深夜の時間帯の不穏スコアは高く、対象患者は深夜の時間帯において不穏状態であったことを示している。すなわち、図8Aは、対処法に効果がなかった一例を示す教師データとなる。
【0058】
一方、図8Bは、「0:20」頃に、看護師等が対象患者に対処法を施した結果、深夜の時間帯の不穏スコアは低いままであり、対象患者は深夜の時間帯において非不穏状態であったことを示している。すなわち、図8Bは、対処法に効果があった一例を示す教師データとなる。
【0059】
対処予測用パラメータ学習部152は、図8Aおよび図8Bに示したような多数の教師データを利用して、対処予測用パラメータを学習する。ここで、対処予測用パラメータ学習部152は、機械学習を用いているため、学習するデータの量が増えるにつれて、対処予測用パラメータの精度は向上する。
【0060】
[生体情報処理システム100Aの動作]
図9は、図5に示した生体情報処理システム100Aが対象患者の生体情報を取得して対処情報を通知するまでの動作の流れを示すフローチャートである。以下、図5および図9を参照しつつ、生体情報処理システム100Aの動作の流れについて説明する。
【0061】
まず、算出部130は、生体センサ等が測定した対象患者の生体情報を受け、その生体情報に関する特徴量を算出する(ステップS301)。この時、算出部130は、外部から対象患者の生体情報に関する特徴量を取得してもよい。
【0062】
次いで、判定部110は、算出部130が算出した特徴量と、記憶部140が保持する識別用パラメータとに基づいて、対象患者が「不穏状態」であるか「非不穏状態」であるかを示す識別情報を判定する(ステップS302)。
【0063】
次いで、識別情報の値が所定の値以上である場合(ステップS303の「YES」)、推定部120は、識別情報と、記憶部140が保持する対処予測用パラメータとに基づいて、対象患者に施すべき対処法を少なくとも1つ含む対処情報を推定する(ステップS304)。
【0064】
次いで、通知部160は、推定部120が推定した対処情報を看護師等に通知する(ステップS305)。
【0065】
そして、ステップS305の後またはステップS303において識別情報の値が所定の値未満である場合(ステップS303の「NO」)、生体情報処理システム100Aは、対象患者の継続的な不穏状態の検知の必要性が解消したり、対象患者が退院したりしたら処理を終了する(ステップS306の「YES」)。一方、対象患者の継続的な不穏状態の検知の必要性が解消しなかったり、対象患者が入院し続けたりした場合(ステップS306の「NO」)、生体情報処理システム100Aは、ステップS301に戻る。
【0066】
[生体情報処理システムのハードウエア構成]
上述の生体情報処理システム100および生体情報処理システム100Aは、ハードウエアによって実現してもよいし、ソフトウエアによって実現してもよい。また、生体情報処理システム100および生体情報処理システム100Aは、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせによって実現してもよい。
【0067】
図10は、生体情報処理システム100および生体情報処理システム100Aを構成する情報処理装置(コンピュータ)の一例を示すブロック図である。
【0068】
図10に示すように、情報処理装置200は、制御部(CPU:Central Processing Unit)210と、記憶部220と、ROM(Read Only Memory)230と、RAM(Random Access Memory)240と、通信インターフェース250と、ユーザインターフェース260とを備えている。
【0069】
制御部(CPU)210は、記憶部220またはROM230に格納されたプログラムをRAM240に展開して実行することで、生体情報処理システム100および生体情報処理システム100Aの各種の機能を実現することができる。また、制御部(CPU)210は、データ等を一時的に格納できる内部バッファを備えていてもよい。
【0070】
記憶部220は、各種のデータを保持できる大容量の記憶媒体であって、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体で実現することができる。また、記憶部220は、情報処理装置200が通信インターフェース250を介して通信ネットワークと接続されている場合には、通信ネットワーク上に存在するクラウドストレージであってもよい。また、記憶部220は、制御部(CPU)210が読み取り可能なプログラムを保持していてもよい。
【0071】
ROM230は、記憶部220と比べると小容量なフラッシュメモリ等で構成できる不揮発性の記憶装置である。また、ROM230は、制御部(CPU)210が読み取り可能なプログラムを保持していてもよい。なお、制御部(CPU)210が読み取り可能なプログラムは、記憶部220およびROM230の少なくとも一方が保持していればよい。
【0072】
なお、制御部(CPU)210が読み取り可能なプログラムは、コンピュータが読み取り可能な様々な記録媒体に非一時的に格納した状態で、情報処理装置200に供給してもよい。このような記録媒体は、例えば、磁気テープ、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc- Recordable)、CD-RW(Compact Disc-ReWritable)、半導体メモリである。
【0073】
RAM240は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)等の半導体メモリであり、データ等を一時的に格納する内部バッファとして用いることができる。
【0074】
通信インターフェース250は、有線または無線を介して、情報処理装置200と、通信ネットワークとを接続するインターフェースである。
【0075】
ユーザインターフェース260は、例えば、ディスプレイ等の表示部、およびキーボード、マウス、タッチパネル等の入力部である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限られるものではない。例えば、本発明は、これまで説明した実施形態の一部または全部を適宜組み合わせた形態や、その形態に適宜変更を加えた形態をも含む。
【0077】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0078】
(付記1)
入力される対象患者の生体情報の特徴量に基づいて、前記対象患者の容態が平常状態と比較して変化しているか否かを示す識別情報を判定する判定部と、
前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する推定部と、
を備える、生体情報処理システム。
【0079】
(付記2)
複数の患者がそれぞれ非平常状態であるときに施す複数の対処法と、前記複数の患者の所定期間におけるそれぞれの生体情報に関する複数の特徴量とに基づいて前記対処予測用パラメータを学習する学習部と、
学習された前記対処予測用パラメータを保持する記憶部と、
を更に備える、付記1に記載の生体情報処理システム。
【0080】
(付記3)
前記推定部は、前記複数の対処法にそれぞれ対処スコアを関連付けて前記対処情報を推定する、付記2に記載の生体情報処理システム。
【0081】
(付記4)
前記推定部は、前記対象患者に関する付加情報を考慮して前記対処情報を推定する、付記1~3のいずれか1項に記載の生体情報処理システム。
【0082】
(付記5)
推定された前記対処情報をユーザに対して通知する通知部を更に備える、付記1~4のいずれか1項に記載の生体情報処理システム。
【0083】
(付記6)
前記判定部は、事前に学習した識別用パラメータと、前記対象患者の生体情報に関する特徴量とに基づいて前記識別情報を判定する、付記1~5のいずれか1項に記載の生体情報処理システム。
【0084】
(付記7)
前記識別情報は、非平常状態の可能性と相関のある不穏スコアを含む、付記1~6のいずれか1項に記載の生体情報処理システム。
【0085】
(付記8)
判定部が、入力される対象患者の生体情報の特徴量に基づいて、前記対象患者の容態が平常状態と比較して変化しているか否かを示す識別情報を判定し、
推定部が、前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する、
生体情報処理方法。
【0086】
(付記9)
学習部が、複数の患者がそれぞれ非平常状態であるときに施す複数の対処法と、前記複数の患者の所定期間におけるそれぞれの生体情報に関する複数の特徴量とに基づいて前記対処予測用パラメータを学習し、
学習された前記対処予測用パラメータを記憶部に格納する、
付記8に記載の生体情報処理方法。
【0087】
(付記10)
前記推定部が、前記複数の対処法にそれぞれ対処スコアを関連付けて前記対処情報を推定する、
付記9に記載の生体情報処理方法。
【0088】
(付記11)
前記推定部が、前記対象患者に関する付加情報を考慮して前記対処情報を推定する、付記8~10のいずれか1項に記載の生体情報処理方法。
【0089】
(付記12)
通知部が、推定された前記対処情報をユーザに対して通知する、付記8~11のいずれか1項に記載の生体情報処理方法。
【0090】
(付記13)
前記判定部が、事前に学習した識別用パラメータと、前記対象患者の生体情報に関する特徴量とに基づいて前記識別情報を判定する、付記8~12のいずれか1項に記載の生体情報処理方法。
【0091】
(付記14)
コンピュータに、
入力される対象患者の生体情報の特徴量に基づいて、前記対象患者の容態が平常状態と比較して変化しているか否かを示す識別情報を判定する処理と、
前記識別情報と、事前に学習された対処予測用パラメータとに基づいて、前記対象患者に対する対処情報を推定する処理と、
を実行させる、生体情報処理プログラム。
【0092】
(付記15)
前記生体情報処理プログラムは、前記コンピュータに、
複数の患者がそれぞれ非平常状態であるときに施す複数の対処法と、前記複数の患者の所定期間におけるそれぞれの生体情報に関する複数の特徴量とに基づいて前記対処予測用パラメータを学習する処理と、
学習された前記対処予測用パラメータを記憶部に格納する処理と、
を更に実行させる、付記14に記載の生体情報処理プログラム。
【0093】
(付記16)
前記生体情報処理プログラムは、前記コンピュータに、
前記複数の対処法にそれぞれ対処スコアを関連付けて前記対処情報を推定する処理を実行させる、付記15に記載の生体情報処理プログラム。
【0094】
(付記17)
前記生体情報処理プログラムは、前記コンピュータに、
前記対象患者に関する付加情報を考慮して前記対処情報を推定する処理を実行させる、付記14~16のいずれか1項に記載の生体情報処理プログラム。
【0095】
(付記18)
前記生体情報処理プログラムは、前記コンピュータに、
推定された前記対処情報をユーザに対して通知する処理を更に実行させる、付記14~17のいずれか1項に記載の生体情報処理プログラム。
【0096】
(付記19)
前記生体情報処理プログラムは、前記コンピュータに、
事前に学習した識別用パラメータと、前記対象患者の生体情報に関する特徴量とに基づいて前記識別情報を判定する処理を実行させる、付記14~18のいずれか1項に記載の生体情報処理プログラム。
【0097】
この出願は、2017年10月10日に出願された日本出願特願2017-196797を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0098】
100,100A・・・生体情報処理システム
110・・・判定部
120・・・推定部
130・・・算出部
140・・・記憶部
150・・・学習部
151・・・識別用パラメータ学習部
152・・・対処予測用パラメータ学習部
160・・・通知部
200・・・情報処理装置
210・・・制御部(CPU)
220・・・記憶部
230・・・ROM
240・・・RAM
250・・・通信インターフェース
260・・・ユーザインターフェース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10