(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ガス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220413BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
G01N27/416 311G
G01N27/26 371Z
(21)【出願番号】P 2018126583
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000112439
【氏名又は名称】フィガロ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】瓜田 貴
(72)【発明者】
【氏名】豊田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】岡 陽子
(72)【発明者】
【氏名】仲 亜耶
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130017(JP,A)
【文献】特開2010-133820(JP,A)
【文献】特開2016-61642(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103308576(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学ガスセンサと、電気化学ガスセンサに所定容積のガスサンプルを供給するポンプと、電気化学ガスセンサの出力電流を増幅する増幅器と、増幅器の増幅率を決定する複数の抵抗と、増幅器への抵抗の接続を切り替える複数のスイッチと、増幅器の出力をAD変換すると共に積算するICとを備え、
前記ICは、抵抗の接続毎の増幅率を表すデータを記憶すると共に、1回の測定中に増幅器の出力が所定範囲外になるとスイッチを切り替え、かつ増幅器の出力を増幅率に依存しないデータに変換して積算するように構成されている、ガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は呼気中のアルコール等の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学ガスセンサを用いて、呼気中のアルコール、アセトン等を検出することが行われている。例えば特許文献1:JP2014-130017Aは、ポンプにより一定容積の呼気を電気化学ガスセンサに供給し、センサ信号を増幅し、次いでセンサの信号を積算することにより、呼気中のアルコール濃度を求めることを開示している。
【0003】
増幅率を固定すると、ガス濃度が高い場合には増幅回路等がオーバーフローし、低い場合には検出精度が不足する。このため検出できる濃度範囲が限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、ガス濃度が高い場合も低い場合も、正確にガス濃度を測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のガス検出装置は、電気化学ガスセンサと、電気化学ガスセンサに所定容積のガスサンプルを供給するポンプ(実施例ではソレノイドポンプ)と、電気化学ガスセンサの出力電流を増幅する増幅器と、増幅器の増幅率を決定する複数の抵抗と、増幅器への抵抗の接続を切り替える複数のスイッチと、増幅器の出力をAD変換すると共に積算するICとを備え、
前記ICは、抵抗の接続毎の増幅率を表すデータを記憶すると共に、1回の測定中に増幅器の出力が所定範囲外になるとスイッチを切り替え、かつ増幅器の出力を増幅率に依存しないデータに変換して積算するように構成されている。
【0007】
この発明では、1回の測定中は(1回分のガスサンプルの測定中は)、増幅器の出力が所定範囲内に保たれるように、スイッチにより抵抗の接続を切り替える。ICは抵抗の接続と増幅率との関係を記憶しているので、増幅率の影響を補正し積算する。このため、ガス濃度が高くても低くても正確にガス濃度を求めることができ、ガス検出装置の測定レンジが増す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施例のガス検出装置の動作アルゴリズムを示すフローチャート
【
図4】増幅回路(増幅率固定)の出力波形を示す特性図
【
図5】増幅回路(実施例に従い増幅率を切り替え)の出力波形を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0010】
図1~
図5に、実施例のガス検出装置を示す。
図1の2は電気化学ガスセンサで、電解質と検出極と対極とを備え、これ以外に参照極を備えていても良い。4は増幅回路で、ガスセンサ2の出力を増幅し、6はソレノイド等のポンプで、所定容積のガスサンプルをガスセンサ2に供給する。10は呼気を吹き込むパイプ等の流路、12は圧力センサで呼気が吹き込まれたことを検出し、14は温度センサで検出装置の温度を測定する。表示器16は、IC8が求めた呼気中アルコール濃度などの出力を表示する。
【0011】
20は電流/電圧変換用の演算増幅器,21は増幅用の演算増幅器で、23,24は抵抗である。抵抗R1~R5とスイッチS1~S4により、演算増幅器21の増幅率βを切り替える。なお抵抗24に並列に複数の抵抗を配置し、これらをスイッチにより切り替えても良い。実施例では抵抗R1~R5とスイッチS1~S4により、増幅器21の増幅率βを、20,40,70,120,200の例えば5段階に切り替える。
【0012】
IC8はADコンバータ31を備え、増幅器21の出力に基づいて、スイッチ制御部32はスイッチS1~S4を切り替える。またADコンバータ31は圧力センサ12の出力と温度センサ14の出力もAD変換する。ポンプ駆動部36は、圧力センサ12の出力に基づいて、ポンプ6を動作させる。メモリ33はスイッチS1~S4の状態毎に増幅率βを記憶し、積算部34はADコンバータ31の出力に増幅率βの逆数に比例する値を乗算したものを積算する。この積算値は呼気中アルコール濃度などに対応する。なお積算する期間はポンプ6の動作後の所定時間で、例えば10秒である。出力部35は、積算部34での積算値を出力し、表示器16に表示させる。
【0013】
図3は実施例の動作アルゴリズムを示し、
図4は増幅率を固定した場合の演算増幅器21の出力を、
図5は増幅率βを切り替えた場合の出力を示す。ガスセンサ2の出力には温度依存性があるので、温度センサ14により周囲温度を測定する(ステップ1)。圧力センサ14により負圧を検出すると(ステップ2)、呼気が吹き込まれたものとして、ソレノイドポンプ6を動作させ、一定容積のサンプルガスをガスセンサ2へ供給する(ステップ3)。
【0014】
ガスセンサ2の出力を増幅器21で増幅し、AD変換する。そしてAD変換後の増幅器の出力が上限を超えると増幅率βを低下させ、下限未満になると増幅率βを増加させる(ステップ4)。増幅率を固定すると増幅器の出力は
図4のようになり、ガス濃度がさらに高いと出力がオーバーフローする可能性があり、またピークの裾の部分(3.5秒以上経過した部分)では分解能が低い。これに対して増幅率を切り替えると、出力は
図5のようになり、オーバーフローを防止でき、出力が低いエリアではAD変換精度が向上する。例えば
図5では、AD変換値のフルスケール1024に対し、出力が800を超えると増幅率を1段下げ、100未満になると1段増加させる。このためアルコール濃度の検出レンジが広くなり、検出精度も増す。また出力の積算中に自動的に増幅率βを調整できる。
【0015】
呼気中のアルコール濃度はガスセンサ出力の積算値に比例するので、AD変換値に増幅率βの逆数に比例する数を乗算した後、積算する(ステップ5)。このため増幅率を切り替えても、アルコール濃度を求めることができる。そして積算時間の例えば10秒を経過すると、積算値を出力する(ステップ6,7)。
【符号の説明】
【0016】
2 電気化学ガスセンサ
4 増幅回路
6 ポンプ
8 IC
10 流路
12 圧力センサ
14 温度センサ
16 表示器
20,21 演算増幅器
23,24 抵抗
R1~R5 抵抗
S1~S4 スイッチ
31 ADコンバータ
32 スイッチ制御部
33 メモリ
34 積算部
35 出力部
36 ポンプ駆動部