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  • 特許-卵殻の状態検査装置 図1
  • 特許-卵殻の状態検査装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】卵殻の状態検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20220413BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N21/64 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019551027
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2018038435
(87)【国際公開番号】W WO2019082730
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2017204832
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 伸一
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522158(JP,A)
【文献】特開2003-231507(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101358950(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0097092(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 21/00-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の卵殻に衝突させる打撃体と、
前記打撃体に設けられ、前記打撃体を前記卵殻に衝突させることによって生じる前記打撃体の変形に応じて発光する応力発光体と、
前記打撃体を前記卵殻に衝突させることによって、前記応力発光体から放出される光量を測定する測定部と、
前記測定部で得られた前記光量に基づいて、前記卵殻の状態を判定する判定部と
を備えた卵殻の状態検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃体を卵殻に衝突させて卵殻の状態を検査する卵殻の状態検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
卵殻の状態、たとえば、正常な鶏卵であるか、または、ヒビを有する鶏卵であるかを検査するための検査装置が種々知られている。この種の検査装置として、打撃体で打撃された後の卵殻の動き(振動の様子)に基づいて、卵殻の状態を判定する検査装置が挙げられる。また、卵殻に衝突した後の打撃体のリバウンドに基づいて、卵殻の状態を判定する検査装置が挙げられる。たとえば、特許文献1に記載の検査装置では、打撃体の卵殻への2回目以降の衝突を待ってからでないと、卵殻の状態を判定することができない。このため、検査に一定以上の時間が必要となり、検査の高速化を妨げる一因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5832700号公報
【文献】特開2002-194349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の卵殻の状態を検査する検査装置とは異なる新しい原理によって、卵殻の状態を検査することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る卵殻の状態検査装置は、打撃体と応力発光体と測定部と判定部とを備えている。打撃体は、検査対象の卵殻に衝突させる。応力発光体は、打撃体に設けられ、打撃体を卵殻に衝突させることによって生じる打撃体の変形に応じて発光する。測定部は、打撃体を卵殻に衝突させることによって、応力発光体から放出される光量を測定する。判定部は、測定部で得られた光量に基づいて、卵殻の状態を判定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の卵殻の状態検査装置と異なる新しい原理によって、卵殻の検査を行う卵殻の状態検査装置を提供することができる。
【0007】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る卵殻の状態検査装置を模式的に示す図である。
図2】同実施形態において、卵殻の状態検査装置による測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1は、卵Eにひびがあるか否かを検査する卵殻の状態検査装置であって、打撃体2と、測定部3と、判定部10とを主体に構成される。卵殻の状態検査装置1は、さらに、打撃体2を駆動する駆動部(図示せず)と、打撃体2に光を照射する照射部4とを備えている。
【0010】
打撃体2は、検査対象の卵殻に衝突させる。打撃体2は、打撃体2を卵殻に衝突させることによって打撃体2に生じる変形に応じて発光する応力発光体6を含む。打撃体2は、中空形状であり、その中空部分に応力発光体6が設けられている。
【0011】
打撃体2は、たとえば、透明で、弾性変形可能な樹脂によって形成されている。打撃体2は、たとえば、円筒形状であり、外周面21が卵Eに衝突し、中空部分22が卵Eに接触しないように配置される。打撃体2の外周面21は、打撃時に卵Eに接触する接触領域23と、打撃時に卵Eに接触しない非接触領域24とを備えている。
【0012】
応力発光体6は、たとえば、特許文献2に記載されている応力発光材料を適用した発光体であり、外部から加わった機械的エネルギーの大きさによって発光強度が変化する。発光強度は、ひずみとひずみの変化率との積で表される「ひずみエネルギーの変化率」に比例することが知られている。本実施形態では、打撃体2の中空部分22に応力発光体6が設けられている。応力発光体6は、打撃体2の接触領域23の裏面(内面)側に設けられている。応力発光体6は、打撃体2の変形に伴って変形するように、打撃体2に設けられている。応力発光体6は、卵殻に衝突させる打撃体2と一体として変形するように打撃体2に設けられている。応力発光体6は、打撃体2の接触領域23の変形を直接検出できるように設けられている。
【0013】
また、本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、打撃体2にシャフト7の一端側が接続されている。シャフト7は、剛性を有しており、打撃体2を支えるとともに、駆動部からの力を打撃体2に伝える。
【0014】
測定部3は、打撃体2の応力発光体6から放出される光量を測定する。本明細書の「光量」には、光強度の変化率または光強度を2次微分した値等も含まれる。測定部3は、打撃体2自身の変形度合いを測定する。また、測定部3は、打撃体2が卵殻から離れる速さを測定する。本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1の測定部3では、一例として、打撃体2の衝突位置(I)の周辺の光を集める集光レンズ31を備えたフォトダイオードが使用されている。
【0015】
判定部10は、測定部3で得られた光量に基づいて卵殻の状態を判定する。判定部10は、測定部3で得られた打撃体2の変形度合いに基づいて、卵殻の状態を判定する。また、判定部10は、測定部3で得られた打撃体2の卵殻から離れる速さに基づいて、卵殻の状態を判定する。本実施形態に係る卵殻の状態検査装置における判定部10は、CPU(Central Processing Unit)、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部等の専用または汎用のコンピュータにより構成されている。内部メモリに格納されたプログラムにしたがって、CPUまたはその他の周辺機器が協働することによって、判定部としての機能が発揮される。
【0016】
駆動部は、打撃体2の動きを制御する。駆動部は、打撃体2を上端位置(T)と卵殻に接触する衝突位置(I)との間で円弧状に往復移動させる。なお、図1では、卵Eの鋭端側に衝突させる打撃体2(図中右側)が上端位置(T)にあり、卵Eの鈍端側に衝突させる打撃体2(図中左側)が衝突位置(I)にある状態が示されている。駆動部は、たとえば、打撃体2に接続されたシャフト7の他端側に設けられたカムおよびバネなどを備えている。駆動部として、従来からこの分野で使われているものと同一またはこれに準じた駆動部を適用することができる。このため、駆動部の詳細な説明については省略する。
【0017】
照射部4は、所定の光を打撃体2に照射することによって、打撃体2の応力発光体6に光を蓄光させる。本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、照射部4として、応力発光体6を励起させるための波長を有する光を発光するLED(Light Emission Diode)が用いられている。照射部4は、一時的に上端位置(T)に保持された応力発光体6に光を所定時間だけ照射し、その他の時間帯では消灯される。
【0018】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1は、この分野でよく知られたローラ等の搬送装置(図示せず)とともに用いられる。卵殻の状態検査装置1は、搬送装置によって下流側へと搬送される卵Eを検査する。各卵Eは、搬送装置によって各卵Eの長軸(鋭端側と鈍端側を結ぶ軸)を中心に回転されながら搬送される。各卵Eでは、鋭端側と鈍端側とが別々に打撃される。本実施形態では、1つの卵Eにおける、鋭端側の8箇所と鈍端側の8箇所とが、それぞれ打撃体2で打撃される。打撃方法についても、従来からこの分野で使われている打撃方法と同一またはこれに準じた打撃方法である。このため、打撃方法の詳細な説明については省略する。なお、本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、少なくとも複数個の打撃体2と、各打撃体2に対応する測定部3、駆動部および照射部4がユニット化されている。
【0019】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1を用いた検査方法の一例としては、打撃体2の動きの一連のサイクルによって実行される。すなわち、検査方法は、待機工程と、蓄光工程と、下降工程と、接近工程と、衝突工程と、自由運動工程と、上昇行程と、上端位置(T)まで到達して再び待機工程に戻る一連のサイクルによって実行される。
【0020】
待機工程では、駆動部の働きにより、打撃体2が上端位置(T)に保持される。蓄光工程では、打撃体2が上端位置(T)に保持された状態で照射部4から光が照射され、照射された光が、打撃体2の応力発光体6に吸収されて、エネルギーとして蓄えられる。光が照射された後の短い間、少なくとも上記の一連のサイクルの過程では、応力発光体6からは、蛍光を残光として放射し続ける。
【0021】
下降工程では、打撃体2が卵殻に向けて下降する。このとき、打撃体2の内部の応力発光体6は、蛍光を残光として放射し続けている。接近工程は、打撃体2が卵殻に向けて下降する状態であり、下降工程の延長に存在する。この接近工程では、下降しつつある打撃体2に設けられた応力発光体6の残光が、測定部3の視野内に入り、測定部3における受光量が増加する。
【0022】
衝突工程では、打撃体2が衝突位置(I)まで到達し卵殻と衝突する。その際、打撃体2と卵殻のうち少なくとも一方が変形する。また、衝突工程では、打撃体2が変形した場合には、その変形に追随して応力発光体6に力が加わることによって応力発光し、応力発光体6からの残光に加えて、さらにその応力発光が測定部3に受光される。なお、衝突位置(I)は、卵のサイズまたは形状によって種々変化するが、測定部3には、集光レンズ31を備えていることで、卵Eによって互いに異なる衝突位置(I)からの光を測定することができる。
【0023】
自由運動工程では、打撃体2が駆動部からの力を受けない。自由運動工程では、卵殻と衝突した打撃体2が卵殻から離れる。自由運動工程では、打撃体2は、卵殻との衝突位置(I)から円弧状に沿って上端位置(T)方向へと跳ね返る。上昇行程では、駆動部の働きにより、打撃体2が上端位置(T)まで戻される。
【0024】
次に、図2を用いて、ひびの存在する箇所に打撃体2が衝突した場合(図2で破線で示す)と、ひびの存在しない(正常)箇所に打撃体2が衝突した場合(図2で実線で示す)とにおいて、測定部3での受光量の変化の違いについて説明する。一実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、上述した工程のうち、下降工程と、接近工程と、衝突工程と、自由運動工程とにわたって、測定部3によって測定(観測)が行われ、さらに、所定の光量閾値を超えた時間以降の所定時間帯の光量の測定値の記録が行われて、卵殻の状態が判定されることになる。言い換えれば、卵殻の状態検査装置1では、打撃体2が卵殻へ衝突する時以外に、その衝突の前後の時間帯についても測定が行われている。
【0025】
接近工程では、卵殻にひびの存在する場合も卵殻が正常な場合も、受光量も時間による受光量の変化にも違いが見られない。一方、衝突工程では、卵殻にひびの存在する場合は、卵殻が正常な場合に比べて受光量が小さい。すなわち、卵殻にひびの存在する場合は、卵殻が正常な場合に比べて、打撃体2の変形度合い、具体的には、ひずみとひずみの変化率との積で表される「ひずみエネルギーの変化率」が小さい。また、自由運動工程では、卵殻にひびの存在する場合は、卵殻が正常な場合に比べて、受光量の減少する速さが遅くなる。すなわち、卵殻にひびの存在する場合は、卵殻が正常な場合に比べて、打撃体2が卵殻から離れる速さが遅くなる。
【0026】
これらの現象の背景にあるのは、打撃体2が衝突直前に持っていた運動エネルギーの分配の割合の違いである。打撃体2が衝突直前に持っていた運動エネルギーは、衝突後の打撃体2と、被打撃体である卵殻とに分配される。
【0027】
被打撃体である卵殻の剛性または強度が大きい場合には、卵殻側の変形または卵殻の内部の摩擦は小さく、卵殻が受け取るエネルギーは小さい。この場合、検査対象の卵殻に衝突する直前の打撃体2が有する運動エネルギーのうち、比較的多くの割合を占める運動エネルギーが、打撃体2側に残り、打撃体2自身のひずみエネルギーに転換される。その過程において、打撃体2の内部に固着した応力発光体6も、大きなひずみエネルギーを獲得し、応力発光体6からは、そのひずみエネルギーに対応した応力発光が発生することになる。
【0028】
一方、打撃体が衝突する卵殻の箇所の周囲にひびが存在するなどの理由によって、被打撃体である卵殻の剛性または強度が小さい場合は、卵殻側の変形あるいは卵殻内部の摩擦は大きく、卵殻が受け取るエネルギーが大きい。この場合、検査対象の卵殻に衝突する直前の打撃体2が有する運動エネルギーのうち、卵殻側が受け取るエネルギーが大きくなり、打撃体2側に残る運動エネルギーの割合が、卵殻の剛性または強度が大きい場合に比べて少なくなる。したがって、打撃体2自身のひずみエネルギーへの転換も小さい。その過程において、打撃体2の内部に固着した応力発光体6が獲得するひずみエネルギーも小さくなる。このため、応力発光体6からは、応力発光が発生しないか、発生しても、弱い応力発光しか発生しないことになる。
【0029】
また、衝突後に打撃体2が卵殻から離れるのは、一旦、打撃体2自身のひずみエネルギーとして残ったエネルギーが、再び運動エネルギーに変換されることによる。そのため、打撃体2自身に残ったひずみエネルギーが大きいほど、打撃体2の卵殻から離れる速さが速くなる。逆に、卵殻にひびが存在するなどの理由によって、打撃体2に残るひずみエネルギーが小さいほど、打撃体2の卵殻から離れる速さが遅くなる。
【0030】
このように、被打撃体である卵殻の剛性または強度の状態に応じて、打撃体2自身に衝突後に分配される運動エネルギーの量が変わり、これをひずみエネルギーとして観察すれば、ひずみエネルギーは応力発光量に対応することになり、再び運動エネルギーに戻った状態を観察すれば、打撃体2が衝突直後にもっている運動エネルギーの量は、衝突後の卵殻から打撃体2が離れる速さに対応することになる。
【0031】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、測定される打撃体2自身の変形または打撃体2の卵殻から離れる速さは、被打撃体(卵殻)の剛性または強度を反映した現象であると言える。そのため、打撃体2自身の変形または衝突後の卵殻から離れる速さを測定することによって、卵殻の剛性または強度の強弱の状態を判定していることになる。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1は、打撃体2と応力発光体6と測定部3と判定部10とを備えている。打撃体2は、検査対象の卵殻に衝突させる。応力発光体6は、打撃体2に設けられ、打撃体2を卵殻に衝突させることによって生じる打撃体2の変形に応じて発光する。測定部3は、打撃体2を卵殻に衝突させることによって、応力発光体6から放出される光量を測定する。判定部10は、測定部3で得られた光量に基づいて、卵殻の状態を判定する。このような構成を備えていることで、従来にはない新しい方式によって、卵殻にひびが生じているか否かを判定することができる。
【0033】
言い換えれば、本実施形態の卵殻の状態検査装置1は、検査対象の卵殻に衝突させる打撃体2と、この打撃体2自身の変形度合いを測定する測定部3と、この測定部3で得られた打撃体2の変形度合いを表す物理量に基づいて卵殻の状態を判定する判定部10とを備えている。
【0034】
また、本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1は、検査対象の卵殻に衝突させる打撃体2と、この打撃体2が卵殻から離れる速さを測定する測定部3と、この測定部3で得られた打撃体2の卵殻から離れる速さに基づいて、卵殻の状態を判定する判定部10とを備えている。
【0035】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、応力発光体6から放出される光量を測定するので、打撃体2に配線の必要がなくシンプルな構造にすることができる。また、卵殻の状態検査装置1では、応力発光体6が光りながら卵殻に接近するため、測定の開始時点を捉えやすい。さらに、卵のサイズまたは形状等によって異なる打撃時点(打撃タイミング)を検出することができる。さらに、卵殻への打撃体2の衝突後も応力発光体6が光りながら卵殻から遠ざかるため、測定の終了時点を捉えやすい。
【0036】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、複数の卵Eを同時に計測することができる。すなわち、従来の卵殻の状態検査装置では、検査対象以外の卵または検査対象の卵の置かれた環境から得られる信号が、検査対象の卵の信号と干渉して、正確なデータを得るのが難しかったのに対して、本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、このような干渉を容易に抑制することができる。
【0037】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、打撃体2による卵殻への第1回目の衝突のみに基づいて、卵殻の状態を判定することが可能となる。そのため、従来の打撃体のリバウンドに基づく方式に比べて、短時間で検査することが可能となり、卵Eの搬送の高速化にも対応することができる。
【0038】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、従来着目されることがなかった打撃体2自身のひずみエネルギーの変化率を用いて、従来判定が難しかった様々なサイズの卵、または、卵殻に様々な程度のひびが生じている卵について、高精度に判定を行うことができる。
【0039】
本実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、打撃体2に設けられた応力発光体6が卵殻に直接接触しないため、応力発光体6が汚れにくく、その効果を持続させることができる。また、打撃体2の清掃も行いやすい。さらに、打撃体2は、応力発光体6からの光を透過させることができるため、測定部3を上方から観察しやすい。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
卵殻の状態検査装置1は、卵殻にひびが存在するか否かを検査する以外にも、正常卵における卵殻の性質の違い(たとえば、卵殻の剛性または強度など)についての検査にも利用することができる。すなわち、打撃体を卵殻に衝突させて正常卵の卵殻の性質の違いを判別する種々の検査装置に、本発明を適用させることができる。
【0041】
打撃体2は、図示したもの以外に、従来のひび卵検査装置に用いられる種々のものを適用することができ、たとえば、シャフトに接続されていない打撃体、すなわち、他の方法によって打撃体が支持されるようにしてもよい。打撃体の振り下ろし位置または方向についても、種々変更することが可能である。打撃体の形状は、図示したもの以外に種々変更することが可能である。
【0042】
打撃体2では、卵殻に直接当たる接触部材(または接触部分)以外の場所に応力発光体が設けられていてもよい。上記実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、接触領域23を備えた接触部材が弾性変形可能なもので、この接触部材を支持する支持部材として剛性を有するシャフト7を用いていたが、たとえば、接触部材として剛性を有するものを適用し、この接触部材を支持する支持部材として、たとえば、棒状の弾性変形可能なものを適用してもよい。このような卵殻の状態検査装置であれば、上述した実施形態に準じた方法により、支持部材に設けられた応力発光体から放出される光量に基づいて卵殻の状態を判定することができる。
【0043】
打撃体2は、応力発光体6を含むものであればよく、たとえば、応力発光体6が打撃体2の外周面に設けられていてもよい。また、応力発光体6が、打撃体2を形成する樹脂の中に混入されていてもよい。
【0044】
打撃体2は、透明なものに限られず、応力発光体6からの光を透過することができれば種々変更することが可能である。なお、打撃体2の形状または応力発光体6を設ける位置を工夫したり、光ファイバー等を用いて応力発光体6からの光を測定部3まで導くようにしたりすれば、応力発光体6からの光が、打撃体2自身によって遮られる部分をなくすことができるため、打撃体2を透明以外の素材で形成することができる。
【0045】
応力発光体6は、打撃体2の変形に応じて発光するものであれば種々適用することが可能である。励起させるために用いる光としては、一般的によく知られた紫外線、電子線、X線、放射線など応力発光材料の特性に応じて適切なものを用いればよい。
【0046】
測定部3は、その形状または配置位置など種々変更することが可能である。測定部3は、集光レンズ31を備えたものには限られない。
【0047】
上述した実施形態に係る卵殻の状態検査装置1では、打撃体2による卵殻への第1回目の衝突のみに基づいて卵殻の状態を判定するようにしていたが、打撃体2がリバウンドするもの、すなわち、打撃体2の卵殻への第2回目以降の衝突を許容してから、卵殻の状態を判定するようにしてもよい。
【0048】
本発明に係る卵殻の状態検査装置1では、打撃体2側の挙動のみを観察して卵殻の状態の判定が行われるが、従来、この分野で知られている打撃後の卵殻の音または振動を観察して卵殻の状態を判定する機能と併用する態様であってもよい。音データまたは振動データ等から得られる情報、すなわち、打撃体2側の挙動のみを観察していては得られない卵殻の情報を、上述した打撃体2の挙動のみを観察して得られる情報と組み合わせて、卵殻の状態を判定するようにしてもよい。
【0049】
検査対象とされる卵殻としては、鶏卵の卵殻に限るものではなく、たとえば、アヒル等の卵の卵殻などであってもよい。
【0050】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、打撃体を卵殻に衝突させて卵殻の検査を行う卵殻の状態検査装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 卵殻の状態検査装置、2 打撃体、3 測定部、4 照射部、6 応力発光体、7 シャフト、10 判定部、21 外周面、22 中空部分、23 接触領域、24 非接触領域、31 集光レンズ、E 卵。
図1
図2