IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シンク・ラボラトリーの特許一覧

特許7057603巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ
<>
  • 特許-巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J2/01 301
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019562916
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2018044822
(87)【国際公開番号】W WO2019131033
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017247147
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131625
【氏名又は名称】株式会社シンク・ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】重田 龍男
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-108530(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110441(WO,A1)
【文献】特開2000-238396(JP,A)
【文献】特開2003-311935(JP,A)
【文献】特開2015-077762(JP,A)
【文献】特開2012-166497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き出しロールが駆動ベルトによって回転せしめられる、ウェブ状印刷基材の巻き出し部と、
前記巻き出した前記ウェブ状印刷基材の表面に対してシングルパス方式で水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッド部と、
前記巻き出し部に隣接して設けられ、巻き取りロールが駆動ベルトによって回転せしめられる、前記ウェブ状印刷基材を巻き取る隣接巻き取り部と、
前記巻き出し部の巻き出しロールと前記隣接巻き取り部の巻き取りロールとを回転させる単一のモータと、
前記水性インクが吐出されたウェブ状印刷基材の少なくとも表面を、40℃~80℃の温風を当てることで加温する表面加温部と、
60℃~70℃に予め加温され、前記水性インクが吐出されたウェブ状印刷基材が巻回ロール上を搬送されて通る加温ボックスと、
を含み、
前記加温ボックスが断熱構造とされた断熱壁で覆われており、内部に前記巻回ロールを有しており、且つ前記ウェブ状印刷基材の入口及び前記ウェブ状印刷基材の出口とを有しており、
前記巻き出し部及び前記隣接巻き取り部の両方が、前記シングルパス方式インクジェットヘッド部の上流側又は下流側のいずれか一方に偏在して並列設置され、前記巻き出し部の巻き出しロールと前記隣接巻き取り部の巻き取りロールとが前記単一のモータによって同期的に回転せしめられ、
前記巻き出し部及び前記隣接巻き取り部が、前記加温ボックスに並列設置されてなる、
水性インク用の巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記巻き出し部及び前記隣接巻き取り部の位置が、前記シングルパス方式インクジェットヘッド部の上流側に偏在して並列設置せしめられてなる、請求項1記載の水性インク用の巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ状印刷基材に対して水性インクでシングルパス方式の印刷をするためのインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェブ状印刷基材に対して水性インクでシングルパス方式の印刷をするためのインクジェットプリンタとして、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
また、本願出願人は、特許文献2に記載されたインクジェットプリンタを提案し、好評を得ている。
【0004】
これら従来のインクジェットプリンタでは、ウェブ状印刷基材を搬送するにあたって、ウェブ状印刷基材の巻き出し部と巻き取り部とが、インクジェットヘッド部を挟んで対極に位置している。即ち、インクジェットヘッド部の上流側にはウェブ状印刷基材の巻き出し部が位置し、インクジェットヘッド部の下流側にはウェブ状印刷基材巻き取り部が位置している。
【0005】
シングルパス方式のインクジェットプリンタでは、ウェブ状印刷基材を連続的に搬送して印刷するので、枚葉式のインクジェットプリンタに比べて、長尺のプラスチックフィルムや紙に印刷することが可能である。また、スキャン方式のインクジェットプリンタに比べて高速印刷が可能であることから、大量ロットの印刷に向いている。
【0006】
しかしながら、一方、近年では、少しだけ種類を変えた印刷の注文などといった所謂小ロット多品種の注文も増えてきている。このような、小ロット多品種の注文に対応するには、ウェブ状印刷基材の巻き出し部とウェブ状印刷基材の巻き取り部とを頻繁に行ったり来たりしてウェブ状印刷基材を入れ替えたりする必要があるため、その作業が煩わしいという問題があった。
【0007】
また、インクジェットプリンタの設置スペースに限りがある場合も多く、設置スペースをなるべく小さくして欲しいというニーズもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-142966
【文献】WO2017/110441
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ウェブ状印刷基材に対して水性インクで印刷するにあたって、ウェブ状印刷基材の巻き出し部と巻き取り部におけるウェブ状印刷基材の入れ替えが容易であり、小ロット多品種の印刷にも対応でき、且つ従来よりも省スペース化を図れるようにした、巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタは、ウェブ状印刷基材の巻き出し部と、前記巻き出した前記ウェブ状印刷基材の表面に対してシングルパス方式で水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッド部と、前記巻き出し部に隣接して設けられ、前記ウェブ状印刷基材を巻き取る隣接巻き取り部と、を含み、前記巻き出し部及び前記隣接巻き取り部の両方が、前記シングルパス方式インクジェットヘッド部の上流側又は下流側のいずれか一方に偏在して並列設置せしめられてなる、巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタである。
【0011】
前記水性インクが吐出された前記ウェブ状印刷基材の表面を乾燥せしめる乾燥ゾーンが形成されてなるのが好適である。
【0012】
前記巻き出し部及び前記隣接巻き取り部の位置が、前記シングルパス方式インクジェットヘッド部の上流側に偏在して並列設置せしめられてなるのが好適である。
【0013】
なお、インクジェットプリンタでの印刷は、吐出したインク滴のドット群によってデジタルイメージが作成されることから、画像形成と呼ばれることもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウェブ状印刷基材に対して水性インクで印刷するにあたって、ウェブ状印刷基材の巻き出し部と巻き取り部におけるウェブ状印刷基材の入れ替えが容易であり、小ロット多品種の印刷にも対応でき、且つ従来よりも省スペース化を図れるようにした、巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタを提供することができるという著大な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタの一つの実施の形態を示す断面構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。なお、同一部材は同一符号で表される。
【0017】
図1は本発明の巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタの一つの実施の形態を示す断面構造説明図である。図1において、符号10は本発明の巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタを示す。
【0018】
巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ10は、ウェブ状印刷基材12の巻き出し部14と、前記巻き出した前記ウェブ状印刷基材12の表面16に対してシングルパス方式で水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッド部18と、前記巻き出し部に隣接して設けられ、前記ウェブ状印刷基材を巻き取る隣接巻き取り部20と、を含み、前記巻き出し部14及び前記隣接巻き取り部20の両方が、前記シングルパス方式インクジェットヘッド部18の上流側U又は下流側Dのいずれか一方に偏在して並列設置せしめられてなる構成とされている。
【0019】
図示例では、前記巻き出し部14及び前記隣接巻き取り部20の両方が、前記シングルパス方式インクジェットヘッド部18の上流側Uに偏在して並列設置せしめられてなる構成の例を示した。このように、前記巻き出し部14及び前記隣接巻き取り部20の両方が偏在しているため、単一のモータを使って巻き出し部14の巻き出しロールと隣接巻き取り部20の巻き取りロールとを同期的に回転させることが可能となる。
【0020】
巻き出し部14自体の構成としては、特許文献2に記載されたような巻き出しロールを駆動ベルトで回転させる公知の構成である。また、隣接巻き取り部20自体の構成としては、特許文献2に記載されたような巻き取りロールを駆動ベルトで回転させる公知の構成である。
【0021】
ウェブ状印刷基材12はウェブ状の印刷基材であれば良いものであるが、例えば、透明、不透明や色付きのフィルムであるのが好ましい。また、フィルムの材質に特別の限定はないが、例えばフィルムのウェブ状印刷基材として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、NY(ナイロン)などの合成樹脂を用いたフィルムなどが好適に使用できる。或いは、アルミニウムなどの金属をフィルム状とした、金属フィルムも好適に使用できる。
【0022】
インクジェットヘッド部18としては、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、B(ブラック)、W(ホワイト)のインク貯留タンク(図示は省略)を各々有するインクジェットヘッドを示してあり、各インクジェットヘッド18a~18eから各色の水性インクが吐出される構成となっている。インクジェットヘッド18a~18eとしては、公知の種々のシングルパス方式インクジェット吐出装置が適用可能である。例えば、特許文献2に記載のインクジェットヘッドを各インクジェットヘッドとして使用できる。
【0023】
また、各インクジェットヘッド18a~18eの隣には、水性インクが吐出されたウェブ状印刷基材12の少なくとも表面を加温する表面加温部60a~60eが設けられている。表面加温部60a~60eとしては例えば特許文献2に記載された表面加温部を適用することができ、特許文献2に記載された温風吹き付け手段などを表面加温部60a~60eとして適用できる。表面加温部として温風吹き付け手段を採用する場合、40℃~80℃程度、例えば70℃の温風が前記ウェブ状印刷基材12の表面に当てられる。温風を当てる時間としては、印刷速度が15m/分の場合、2秒~3秒程度であるが、温風の温度にもよって適宜変更する。
【0024】
さらに、水性インクが吐出されたウェブ状印刷基材12は、乾燥ゾーン22を通って搬送される。乾燥ゾーン22としては、乾燥機を使用することができ、図示例では、加温ボックス24の例を示した。加温ボックス24は、断熱構造とされた断熱壁26で覆われており、ウェブ状印刷基材12の入口28とウェブ状印刷基材12の出口30とを有している。
【0025】
加温ボックス24は60℃~70℃に予め加温(プレヒーティング)されている。加温ボックス24内での加温の仕方としては、温風で加温したりしてもよいし、種々の公知のヒータによる加温でもよい。図示の例では、加温ボックス24内を温風で加温する構成を示した。
【0026】
また、ウェブ状印刷基材12を搬送するための種々のローラ32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58が設けられており、かかるローラを介してウェブ状印刷基材12が搬送されて、隣接巻き取り部20へと送られる。なお、符号Oは、インクジェットプリンタのオペレータである。
【0027】
このように、前記巻き出し部14及び前記隣接巻き取り部20の両方が前記シングルパス方式インクジェットヘッド部18の上流側U又は下流側Dのいずれか一方に偏在して並列設置せしめられているため、オペレータOは、ウェブ状印刷基材12の巻き出し部14と隣接巻き取り部20におけるウェブ状印刷基材12の入れ替えが容易である。このため、巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ10は極めて使い勝手が良い。
【0028】
そのため、巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ10は、小ロット多品種の印刷にも対応できる。さらに、巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ10は、従来の約1/2の設置スペースで済むため、省スペース化も実現できる。
【符号の説明】
【0029】
10:巻き出し部及び隣接巻き取り部偏在型インクジェットプリンタ、12:ウェブ状印刷基材、14:巻き出し部、16:ウェブ状印刷基材の表面、18:シングルパス方式インクジェットヘッド部、18a~18e:各インクジェットヘッド、20:隣接巻き取り部、22:乾燥ゾーン、24:加温ボックス、26:断熱壁、28:入口、30:出口、32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58:ローラ、60a~60e:表面加温部、D:インクジェットヘッド部の下流側、O:オペレータ、U:インクジェットヘッド部の上流側。
図1