(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】磁性壁及び磁性表示機構並びにその施工方法
(51)【国際特許分類】
G09F 15/00 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
G09F15/00 P
(21)【出願番号】P 2020215449
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一正
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-283577(JP,A)
【文献】登録実用新案第3039710(JP,U)
【文献】特開2000-200045(JP,A)
【文献】特開2000-122585(JP,A)
【文献】特開2020-165157(JP,A)
【文献】実開昭64-024801(JP,U)
【文献】実開平03-089824(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 15/00
G09F 7/04
G09F 7/18
B43L 1/04
E04F 13/00-13/30
C25D 5/00- 7/12
H01F 1/00-1/44
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石シートの被着体となる磁性壁として、磁極方向を磁石シートの横方向に片面または両面に同極間の多極着磁を施した磁石シート又は更に表面材を積層した磁石シートを、壁基体又は更に表面側に強磁性体層を有する壁基体に、磁極方向を壁面の水平方向に貼着し、更に壁面の水平方向に1箇所以上中継ぎ貼着された磁性壁であって、
水平方向の中継貼着箇所で対峙する磁石シートの一方又は双方の端部が磁極を有しないものを用いて、中継ぎ前後の各磁極が同極性で磁極の中心線が一致するように突き付け貼着されて成ることを特徴とする磁性壁。
【請求項2】
前記請求項1に記載の磁石シートの被着体となる磁性壁として、磁極方向を磁石シートの横方向に片面または両面に同極間の多極着磁を施した磁石シート又は更に表面材を積層した磁石シートを、壁基体又は更に表面側に強磁性体層を有する壁基体に、磁極方向を壁面の水平方向に貼着し、更に壁面の水平方向に1箇所以上中継ぎ貼着する磁性壁において、
水平方向の中継貼着箇所で対峙する磁石シートの一方又は双方の磁極端部を厚み方向の磁界を印加して消去し、中継ぎ前後の各磁極が同極性で磁極の中心線が一致するように突き付け貼着することを特徴とする磁性壁の施工方法。
【請求項3】
前記請求項2項に記載の水平方向の中継ぎ貼着において、貼着する双方の磁石シートの同極性の磁極の中心線が一致するように、
同極間の磁石シートを用いて双方の磁石シートにわたって一部分重なるように磁気吸着することで、双方の磁極の中心を合わせる磁極定規を下敷に用いて、中継ぎする双方の磁石シートにわたり一部分重ねて磁気吸着させることにより、中継ぎ磁石シートの位置決めを行い、全面貼着後に磁極定規を除くための範囲内で双方の磁石シートを捲り上げることで位置ずれすることなく磁極定規を除去後に貼着することによって磁極の中心線を合わせて突き付け貼着することを特徴とする磁性壁の施工方法。
【請求項4】
前記請求項1項に記載の磁性壁の磁石シートと、同極間の多極着磁を片面または両面に施した磁石シートを用いて表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートの複数枚を、磁性壁の磁石シートとの異極吸引同極反発によって、磁性壁全面の何処に於いても水平方向に整列貼着が可能なことを特徴とする磁性表示機構。
【請求項5】
前記請求項4に記載の
磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を異にし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが接近して磁気貼着出来ることを特徴とする磁性表示機構。
【請求項6】
前記請求項4に記載の
磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を同極性とし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが1磁極幅あけて磁気貼着出来ることを特徴とする磁性表示機構。
【請求項7】
前記請求項4に記載の
磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を異にし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが接近して磁気貼着出来るものと、
前記請求項4に記載の
磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を同極性とし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが1磁極幅あけて磁気貼着出来るものとを併用したことを特徴とする磁性表示機構。
【請求項8】
前記請求項4に記載の
磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが複数枚接近して磁気貼着出来るように、双方の端部を重ねて異極吸引同極反発によって磁気貼着された状態で、N極とS極の境界線上で切断して作成されたものであることを特徴とする磁性表示機構。
【請求項9】
前記請求項4~8のいずれか1項に記載の
磁性表示機構であって、前記表装材又は物品保持材と複合した磁石シートの表装材又は物品保持材が、背面が一部分または全面平坦なタイル状の壁材または額縁または棚材または壁掛けブラケットの類であることを特徴とする磁性表示機構。
【請求項10】
前記請求項4~9のいずれか1項に記載の
磁性表示機構であって、前記表装材又は物品保持材を複合した磁石シートが、着磁面に防滑層を塗布形成されたものであり、背面側に強磁性体層が積層され、該強磁性体層と表装材又は物品保持材の背面との積層に発泡体を基材とする感圧接着剤を用いたことを特徴とする磁性表示機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石シートを磁石シートの被着体として壁基体に貼着した磁性壁、及びそれを用いた磁性表示機構に関するものである。
更に詳しく述べると、多極着磁を施した磁石シートを磁石の被着体として壁基体に貼着した壁面に、該磁石シートと同極間の多極着磁を施した磁石シートと複合した表装材又は表示材又は物品保持材(棚など)を、被着体の磁石シートとの異極吸引同極反発によって、被着体である磁石シートの磁極方向に整列貼着が出来るようにした磁性壁と磁性表示機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多極着磁を施した磁石シートを磁石の被着体として貼着した被着体に、該磁石シートと同極間の多極着磁を施した磁石シートを用いた表示片を、異極吸引同極反発によって被着体である磁石シートの磁極方向に整列貼着が出来るようにした表示技術としては、下記の2件が開示されている。(特許文献1、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案公報 昭63-15902
【文献】特開平6-27895
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、多極着磁を施した磁石シートを磁石の被着体として貼着した被着体に、該磁石シートと同極間の多極着磁を施した磁石シートを用いた表示片を、異極吸引同極反発によって被着体である磁石シートの磁極方向に整列貼着能を付与した表示板は、小型の掲示板程度の大きさでの使用であったが、近時壁面全体に広い面積での使用へと展開されている。
【0005】
広い面積に対応するには、磁石シートを中継ぎ貼着をする必要があり、例えば壁面3m×3mの面積で使用する場合について述べると、通常の磁石シートの多極着磁の磁極方向は、圧延成形又は押出成形に於ける機械方向、つまり磁石シート原反の流れ方向である縦方向≪以後「磁石シートの縦方向」と言う≫に着磁を施したものと、前記縦方向に対する横方向、≪以後「磁石シートの横方向」と言う≫に着磁を施したものとがあり、磁極方向を磁石シートの縦方向に着磁を施した磁石シートを用いて磁石シートの横方向1m×磁石シートの縦方向3m品を、壁面への貼着の磁極方向を壁面の水平方向にして、壁面の上下方向に3枚中継ぎ貼着する方法〔
図1〕と、磁極方向を磁石シートの横方向に着磁を施した磁石シートを、磁石シートの縦方向を壁面の上下方向に用いて、壁面の水平方向に3枚中継ぎ貼着する方法〔
図2〕がある。
【0006】
前記の前者〔
図1〕の場合は、中継ぎ箇所で切断による磁極分割によって磁気反発又は磁極間距離の変化を生じているので、中継ぎ貼着箇所で隙間のない貼着が困難であるか、中継ぎ貼着箇所が経時変化的に間開を生じる不都合がある。また非中継ぎ部分と同様な磁極配置及び磁極間が得られないことから、被着体の磁石シートと表面に貼着する磁石シートとの極間の一致が得られず磁気吸着力の低下乃至磁気反発を生じ剥離~浮上りを生じる部分を招く不都合が有る。
【0007】
前記の後者〔
図2〕の場合は、3m連続同極とするには中継ぎ箇所において同極同士での中継ぎと成り、同極反発によって中継ぎ貼着箇所で隙間のない貼着が困難であるか、中継ぎ貼着箇所が経時変化的に間開を生じる不都合がある。また異極吸引同極反発によって1極幅ずれて磁気吸着することがあり、3m連続同極とすることが困難である不都合が有る。
【0008】
そうして近時、中継ぎ貼着による不都合を生じないで、表示片などが壁全面に亘って水平方向に整列磁気貼着ができる磁性壁及び磁性表示機構の開発が望まれている。
本発明は、上記の不都合と要望を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決しようと鋭意検討を重ねた結果、前記
図2の不都合対策として、磁極方向を磁石シートの横方向に着磁を施した磁石シートを磁極方向を壁面の水平方向に貼着し、水平方向に中継ぎ貼着するに際して、対峙する磁石シートの一方又は双方の端部に磁極を設けないように着磁を施すか又は厚み方向の磁界を印加して多極着磁の磁極端部を消去後に、中継ぎ前後の同極の磁極の中心線が一致するように磁極の中心線を合わせて突き付け貼着することで主たる課題を解決出来ることを見出し本発明を成すに至った。〔
図4〕
【0010】
更に詳しく課題を解決するための手段を述べると、
(1)磁石シートの被着体となる磁性壁として、磁極方向を磁石シートの横方向に片面または両面に同極間の多極着磁を施した磁石シート又は更に表面材を積層した磁石シートを、壁基体又は更に表面側に強磁性体層を有する壁基体に、磁極方向を壁面の水平方向に貼着し、更に壁面の水平方向に1箇所以上中継ぎ貼着された磁性壁であって、
水平方向の中継貼着箇所で対峙する磁石シートの一方又は双方の多極着磁端部が磁極を有しないものを用いて、中継ぎ前後の同極性の磁極の中心線が一致するように突き付け貼着されて成ることを特徴とする磁性壁とする。
【0011】
(2)前記(1)項に記載の磁石シートの被着体となる磁性壁として、磁極方向を磁石シートの横方向に片面または両面に同極間の多極着磁を施した磁石シート又は更に表面材を積層した磁石シートを、壁基体又は更に表面側に強磁性体層を有する壁基体に、磁極方向を壁面の水平方向に貼着し、更に壁面の水平方向に1箇所以上中継ぎ貼着する磁性壁において、
水平方向の中継貼着箇所で対峙する磁石シートの一方又は双方の多極着磁端部の磁極を厚み方向の磁界を印加して消去し、中継ぎ前後の同極性の磁極の中心線が一致するように突き付け貼着することを特徴とする磁性壁の施工方法とする。
【0012】
(3)前記(2)項に記載の水平方向中継ぎ貼着において、貼着する双方の磁石シートの同極性の磁極の中心線が一致するように、
同極間の磁石シートを用いて双方の磁石シートにわたり一部分重なるように磁気吸着することで、双方の磁極の中心位置を合せる磁極定規≪以後「磁極定規」と言う≫を下敷に用いて、中継ぎする双方の磁石シートにわたり一部分重なるように磁気吸着させることにより、中継ぎ磁石シートの位置決めを行い、全面貼着後に磁極定規を除くための範囲内で磁石シートを捲り上げることで位置ずれすることなく磁極定規を除くことによって磁極の中心線を合わせて突き付け貼着することを特徴とする磁性壁の施工方法とする。
【0013】
(4)前記(1)項に記載の磁性壁の磁石シートと、同極間の多極着磁を片面または両面に施した磁石シートを用いて表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートの複数枚を、磁性壁の磁石シートとの異極吸引同極反発によって、磁性壁全面の何処に於いても水平方向に整列貼着が可能なことを特徴とする磁性表示機構とする。
【0014】
(5)前記(4)項に記載の磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を異にし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが接近して磁気貼着出来ることを特徴とする磁性表示機構とする。
【0015】
(6)前記(4)項に記載の磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を同極性とし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが1磁極幅あけて磁気貼着出来ることを特徴とする磁性表示機構とする。
【0016】
(7)前記(4)項に記載の磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を異にし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが接近して磁気貼着出来るものと、
前記(4)項に記載の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが、上下方向の上端部の磁極と下端部の磁極の極性を同極性とし、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることで、複数の表装材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートが1磁極幅あけて磁気貼着出来るものとを併用したことを特徴とする磁性表示機構とする。
【0017】
(8)前記(4)項に記載の磁性表示機構であって、前記表装材又は表示材又は物品保持材と複合した磁石シートが複数枚接近して磁気貼着出来るように、双方の端部を重ねて異極吸引同極反発によって磁気貼着された状態で、N極とS極の境界線上で切断して作成されたものであることを特徴とする磁性表示機構とする。
【0018】
(9)前記(4)~(8)項のいずれか1項に記載の磁性表示機構であって、前記表装材又は物品保持材と複合した磁石シートの表装材又は物品保持材が、背面が一部分または全面平坦なタイル状の壁材または額縁または棚材または壁掛けブラケットの類であることを特徴とする磁性表示機構とする。
【0019】
(10)前記(4)~(9)項のいずれか1項に記載の磁性表示機構であって、前記表装材又は物品保持材を複合した磁石シートが、着磁面に防滑層を塗布形成されたものであり、背面側に強磁性体層が積層され、該強磁性体層と表装材又は物品保持材の背面との積層に発泡体を基材とする感圧接着剤を用いたことを特徴とする磁性表示機構とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、磁極方向を磁石シートの横方向に着磁を施した磁石シートを、磁極方向を壁面の水平方向に貼着することで上下方向の中継ぎを無くすることが可能となり、そうして水平方向に中継ぎ貼着する際に、中継ぎ貼着箇所で対峙する磁石シートの一方又は双方の多極着磁端部が磁極を有しないものとすることで、中継ぎ前後の同極性の磁極の中心線を一致するように付き付け貼着が可能と成る。つまり中継ぎ箇所が無い部分と同様に同極間の磁石シートが異極吸引、同極反発作用によって磁性壁全面の何処に於いても中継ぎのない箇所と同様に水平方向に整列貼着が可能な磁性壁が得られる。
【0021】
(2)磁性壁の磁石シートと、同極間の多極着磁を片面または両面に施した磁石シートを用いて表面装飾材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートを、磁性壁の磁石シートとの異極吸引同極反発によって、磁性壁の全面の何処に於いても磁極方向に整列貼着することが可能な磁性表示機構が得られる。
そうして、表面装飾材又は表示材又は物品保持材を複合した磁石シートの上端部磁極と下端部磁極を同極又は異極とすること及びN極とS極の境界線上で切断したものとすることで、複数枚磁気貼着する場合に近接貼着又は1極間幅空き貼着をすることが出来る。
【0022】
磁性壁の磁石シートの背面に強磁性体層を有する場合には、磁石シートの背面に強磁性体層を有する物品保持材複合磁石シート(磁性棚など)を磁気貼着すると、磁気閉回路を形成すること及び発泡体を基材とする感圧接着剤(粘着剤)によって磁気貼着面のエアーギャップの形成を防止し大きな磁気吸着力が得られ、更に物品保持材複合磁石シートの着磁面に防滑層を付与したことで剪断引張り磁気吸着力が増大して優れた耐荷重性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
≪磁性壁に関する図≫
【
図1】磁極方向を磁石シートの縦方向に着磁を施した磁石シートを、壁面への貼着の磁極方向を壁面の水平方向にして、壁面の上下方向に中継ぎしようとする場合の磁気反発と磁極間の変化を示す概念模式図(平面図)である。
【
図2】磁極方向を磁石シートの横方向に着磁を施した磁石シートを、壁面への貼着の磁極方向を壁面の水平方向にして、壁面の水平方向に中継ぎしようとする場合の磁気反発による磁石シート間の間開きと磁極ずれを示す概念模式図(平面図)である。
【
図3】多極着磁を施した磁石シートの端部にネオジュウム系焼結磁石を用いて磁石シートの固有保磁力(iHc)以上の磁界を厚み方向に印加して磁極を消去することを示す概念模式図(斜視図)である。
【
図4】前記
図3で示した端部の磁極を消去した磁石シートと同極間の多極着磁を施した磁石シートを同磁極の中心線を合わせて、突き付けで中継ぎ貼着したことを示す断面模式図(平面図)である。
【
図5】磁石シートを中継ぎする仕方を表わしたものであり、(a)は、端部の磁極を消去した磁石シートと同極間の多極着磁を施した磁石シートを同磁極の中心線を合わせて、突き付けで中継ぎ貼着するに当たって、同極間の多極着磁を施した磁石シートである磁極定規を用いて貼着することを示す模式図(平面図)であり、(b)は、全面貼着してから磁石シートの突き付け部分を捲り挙げて磁極定規を取り除くことを示す模式図(側面図)である。
【
図6】本発明の磁石の被着体となる磁性壁の概念模式図(正面図)である。≪磁性表示片に関する図≫
【
図7】多極着磁を施した磁石シートの磁極を表わしたものであり、(a)は、多極着磁を施した磁石シートの一部分に磁気ビユアーシート(磁性流体をフィルム状のシートに均一に分布させたもの)を密着させた場合の画像における磁極の境界線を示す概念模式図(平面図)であり、(b)は、(a)に対応した、磁極位置と着磁面の表面磁束密度グラフの波形を示す概念模式図である。
【
図8】突き付け貼着する磁性表示片の磁石シート端部磁極を表わしたものであり、(a)は、突き付け貼着する磁性表示片の磁石シートの対峙する端部を磁極の境界線上で切断することを示す概念模式図(断面図)であり、(b)は、突き付け貼着した状態を示す概念模式図(側面図)である。〔垂直方向の図示が相当であるが
図8(a)の関係から水平に図示している〕
【
図9】磁石シートを重ね合わせた状態で切断して、突き付け貼着する磁性表示片の磁石シート端部磁極を表わしたものであり、(a)は、磁石シートを、重ね合せによる異極吸引同極反発で吸着した状態での磁極境界線上で切断することを示す概念模式図(側面図)であり、(b)は、(a)の拡大図(円内部)のbとcを切捨てする部分を示す概念模式図(側面図)であり、(c)は、(b)のaとbを突き付け貼着した状態を示す概念模式図(側面図)であり、(d)は、突き付け貼着した状態を示す概念模式図(側面図)である。〔垂直方向の図示が相当であるが
図9(a~c)の関係から水平に図示している〕≪磁性表示機構及び性能評価などに関する図≫
【
図10】本発明の磁性表示機構の一例を示す概念模式図(左側面図)であり、(a)は、本発明の磁性表示機構の一例を示す概念模式図(側面図)であり、磁性壁面に表示材を複合した磁石シート(表示片)を磁気貼着したものであり、(b)は、(a)で示すように表示片を磁気貼着した状態を示す概念模式図(側面図)であり、(c)は、その正面図の概念模式図である。 尚、
図10に於いては、片面着磁磁石シートの非着磁面の磁極の記載は省略している。
【
図11】物品保持材であるL型棚、防滑層、多極着磁を施した磁石シート、高透磁率の強磁性体層、基材が発泡体の感圧接着剤より成る磁性棚の1例を示す概念模式図(左側面図)である。
【
図12】本発明の磁性表示機構の一例を示す概念模式図(左側面図)であり、(a)は、本発明の磁性表示機構の一例を示す概念模式図(左側面図)であり、磁性壁面に
図11に示す物品保持材である棚、防滑層、多極着磁を施した磁石シート、高透磁率の強磁性体層、基材が発泡体の感圧接着剤より成る物品保持材を複合した磁石シート(磁性棚)を磁気貼着することを示す概念模式図(左側面図)であり、(b)は、(a)で示すように物品保持材である棚と防滑層、多極着磁を施した磁石シート、高透磁率の強磁性体層、基材が発泡体の感圧接着剤より成る物品保持材を複合した磁石シートである磁性棚を壁性壁に磁気貼着した状態を示す概念模式図(左側面図)であり、(c)は、その正面図の概念模式図である。 尚、
図12(a)(b)の多極着磁を施した磁石シートの磁極の表示は省略し、防滑層、多極着磁を施した磁石シート、強磁性体層、基材が発泡体の感圧接着剤層については4者併せて複合層17として略記している。
【
図13】
図6の本発明の磁石の被着体である磁性壁の概念模式図(正面図)であり、磁気吸着力の測定箇所を示す。
【
図14】本発明の磁性壁と磁性表示片の試験片との磁気吸着力を測定するに用いる磁気吸着力測定具を示す概念模式図(側面図)である。(磁性壁と磁性表示片の試験片の磁極の記載は省略している) 尚、
図1、
図2、
図6のN極とS極の表示を、N極を黒地で示し、他の図は白地にNSの表示をしているが、記載の都合によるもので意味の差異はない。
【
図15】本発明の磁性壁に磁気吸着した磁性棚の耐荷重試験方法を示す概念模式図(側面図)である。(磁性壁と磁性棚の磁石シートの磁極の記載は省略している)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を
図2~13に基づいて説明する。
≪磁性壁について≫
(1)
図2は、磁極方向を磁石シートの横方向に着磁を施した磁石シートの1例として磁石シートの横方向1m×磁石シートの縦方向3m品を、壁面への貼着の磁極方向を壁面の水平方向にして、壁面の水平方向に3枚中継ぎ貼着する場合の不都合を示す模式図あり、右から1枚目と2枚目の中継ぎ貼着部分に同極反発を生じ、又、右から2枚目と3枚目の中継ぎ貼着部分では異極吸引同極反発により1極幅ずれて磁気吸着することから、連続する同極間の多極着磁の同極の中心を合わせて中継ぎ貼着が出来ない不都合が生じることを示す概念模式図(側面図)である。
【0025】
前記
図2のような不都合を解決する為に、中継ぎ貼着において対峙する磁石シートの少なくとも片方の磁石シートの片方の多極着磁端部を非着磁とするか、または磁極を消去するために磁石シートの固有保磁力(iHc)以上の磁界から減衰交番磁界を印加して消磁するか、または厚み方向に磁石シートの固有保磁力(iHc)×1.2程度以上の磁界を印加して端部磁極を消去することで実用上不都合を生じない程度にすることであるが、上下方向に磁石シートの固有保磁力(iHc)×1.2程度以上の磁界を印加して実用上不都合を生じない程度にする方法が容易であり又経済的である。
図3はその一例を示す概念摸式図(斜視図)であり上下NS又は上下SNの磁界で良い。そうして双方の端部磁極を消去する場合は片方が上下NSであれば他方は上下SNの磁界が望ましい。
【0026】
図4は、図の左側が
図3と同様に多極着磁の磁極を消去したものに対して非処理の磁石シートを突き付け貼着した例を示す。そうして多極着磁の磁極の消去幅は、多極着磁の極間の0.8~1.5倍の長さの範囲が望ましく、多極着磁の極間の0.8倍より小なる場合は効果不足になる場合があり、磁極幅の1.5倍を超えると場合によっては連続する磁極の欠損部として無視出来なくなる。
【0027】
そうして多極着磁の磁極の消去が不十分である場合は、先に処理した反対面から同方向の磁界を同様に印加すれば良く、又上下両面から同時に同方向に印加するようにしても良い。又、多極着磁の磁極の消去幅のばらつきを生じ無いように消去用磁石に消去幅を特定する非磁性のガイドを設けると容易に作業が出来る。(
図3)
【0028】
図5(a)は、
図4に示す同極性の磁極の中心線を合わせて優れた貼着精度を得るために、磁性壁に用いる磁石シートと同極間の磁石シートを磁極定規≪以後「磁極定規」と言う≫として、中継ぎする双方の磁石シートの下敷きにして異極吸引同極反発によって中継ぎする双方の磁石シートの同磁極同士の中心線を合わせて磁気貼着することを示し、
図5(b)は、全面貼着後に磁石シートの双方の端部を捲り上げて磁極定規を取り除くことを示す。このようにして、
図5(a)で示すように中継ぎ貼着する磁石シートの同極性の極の中心線を合わせることで、中継ぎ貼着の不都合を解決し磁性壁全体にわたって磁性壁の磁石シートと同極間の多極着磁を施した磁石シートを磁気貼着することが出来る。
そうして、磁性壁の基体への磁石シートの貼着が両面感圧接着剤を用いる場合には、磁極の中心線を合わせて磁石シートの一部を貼着する部分と、めくり上げて「磁極定規」を除去後に貼着する部分の離型紙に区分する切り目を入れておくのが良い。
【0029】
又、同極性の磁極の中心線を合わせて優れた貼着精度を得るための他の方法として、〔
図9〕の如く、中継ぎ貼着する双方の磁石シートの端部を異極吸引同極反発によって重ねて磁気貼着し、重ねた略中央部を重ね切断し、片方の切除部と端部を必要な範囲で捲り上げて他の切除部分を除去し、対峙する磁石シートの片方又は双方の端部を前記〔
図3〕と同様にして磁極を消去後、突き付け磁気貼着する方法がある。
そうして、磁性壁の基体への磁石シートの貼着が両面感圧接着剤を用いる場合には、磁極の中心線を合わせて磁石シートの一部を貼着する部分と、めくり上げて切除部分を除去後に貼着する部分の離型紙に区分する切り目を入れておくのが良い。
【0030】
≪磁性表示機構について≫
磁性壁の磁石シートと同極間の多極着磁を施した磁石シートの背面に、表装材、表示材、物品保持材(棚など)などを貼り合わせた複合磁石シートである磁性表示片または磁性棚を、複数用いて磁性壁に接近して磁気貼着する場合に、磁性表示片の切断仕様によって同極性で対峙することによる磁気反発及び片方の磁性表示片と磁性壁との磁気反発によって接近貼着が得られず、又、異極で対峙であっても磁極端部が狭い裁断の場合は近接する磁性表示片双方の隙間のない磁気貼着が出来ない不都合を生じる。
【0031】
本発明の磁性表示機構の接近磁気貼着できる磁性表示片について説明すると、
図7(b)は、磁石シート着磁面の表面磁束密度をグラフ(模式図)で示したものであり、磁極の境界点が磁束密度0であることに注目して、
図7(a)に示す磁気ビュアーシートMB(磁性流体のマイクロカプセルをフィルムに均一に分布させたもの)での画像によるN極とS極の境界線blで切断すれば、磁気反発が実用上生じないことに着目し、接近貼着する磁性表示片の磁石シートの対峙する端部磁極を異極とし且つN極とS極の境界線blで切断したものを、
図8の如く突き付けで貼着することで本発明の磁性表示片を得る。
【0032】
尚、表面磁束密度について、片面着磁品に於ける着磁面の表面磁束密度のグラフ波形の模式図で示したが、両面着磁の場合には、一方の面の背面に夫々異極を生じるので、一方の面の背面のグラフはN極とS極が入れ換わったグラフとなる。又、略厚みの2倍以上の極間での片面着磁品においても非着磁面はやや弱いが両面着磁と同様にグラフのN極とS極が入れ換わったグラフとなり、何れの場合もN極とS極の境界点の磁束密度が0となる。
【0033】
図9は、本発明のN極とS極の境界線上で切断する方法について、他の方法を示す概念模式図(側面図)であり、
図9(a)は、双方の磁石シートの端部を、異極吸引同極反発によって重ね合せ状態で磁極境界線上での切断を示す概念模式図(側面図)であり、
図9(b)と
図9(c)は、
図9(a)の部分拡大図であり切断後にbとcを除きaとdを突き付けることを示し、
図9(d)は突き付け貼着した状態を示す。
【0034】
尚、対峙する磁極の極性を異極で、且つN極とS極の境界線上で切断したものとすること、又は更に異極吸引同極反発によって重ね合せの状態で磁極境界線上で切断することを特徴とする中継ぎ貼着技術は、前記磁性壁の磁石シートを上下方向に中継ぎ貼着する場合にも用いることが出来る。
【0035】
図10は、本発明の磁性表示機構の一例を示す概念模式図であり、
図10(a)は、磁石の被着体となる磁性壁として、磁極方向を磁石シートの横方向に片面に同極間の多極着磁を施した磁石シートに表面材を積層した磁石シートを、磁極方向を壁面の水平方向に貼着され、更に水平方向に磁石シートが中継ぎ貼着された磁性壁であり、磁石シートの中継ぎ貼着箇所の一方の端部が厚み方向に磁性壁の磁石シートの固有保磁力×1.2程度の磁界を印加して多極着磁の磁極端部を消去後に、中継ぎ前後の同磁気極性の磁極の中心が一致するように突き付け貼着されている磁性壁に、
磁気貼着する表装材または表示材を複合した磁石シートより成る磁性表示片を2枚用いて、磁性壁の磁石シートの磁極方向に対して直角方向の先頭端部と末尾端部が接近して磁気貼着出来るように、対峙する表装材または表示材を複合した磁石シートより成る磁性表示片との端部が異極で、且つN極とS極の境界線上で切断したものであるF1とF2が接近して磁気貼着出来るようにした表装材または表示材を複合した磁石シートより成る磁性表示片と、
F2、F3、F4の表装材または表示材を複合した磁石シートより成る磁性表示片の距離が1磁極あけて磁気貼着出来るように被着体である磁石シートの磁極方向の先頭端部と末尾端部の磁極を対峙する他の表装材または表示材を複合した磁石シートより成る磁性表示片との端部が同極で、且つN極とS極の境界線上で切断したものであることを示す概念模式図(側面図)である。
【0036】
図10(b)は、その磁気貼着した状態を示す概念模式図(側面図)であり、
図10(c)は、各表装材または表示材を複合した磁石シートより成る磁性表示片が磁性壁の磁石シートの磁極方向に整列貼着した様子を示す概念模式図(正面図)である。
そうして、F3、F4の表装材または表示材を複合した磁石シートより成る磁性表示片については、磁性壁の中継ぎ箇所と非中継ぎ箇所の磁気吸着性の差の有無を観察出来る位置に貼着している。
【0037】
図11は、物品保持材であるL型棚LR、防滑層9、多極着磁を施した磁石シート1、強磁性体層8、基材が発泡体の感圧接着材62より成る磁性棚の1例を示す概念模式図(左側面図)であり、
防滑層9によって磁性壁に磁気吸着した磁性棚の面内方向の静止摩擦力を増大する事と、多極着磁を施した磁石シート1の背面に貼着した強磁性体層8によって磁石シート1の背面漏洩磁束を防止する事と、基材が発泡体の感圧接着材62を用いることで、
可撓性がない磁性壁に、可撓性がない磁性棚との間に生じるエアーギャップ(磁石と磁石の被着体間の非磁性体又は空間の厚みまたは距離)を、基材が発泡体の感圧接着材62の発泡体の変形によって緩和する事の三つの効果により、磁性棚の耐荷重を増大する効果を得る。
【0038】
図12(a)は、本発明の磁性表示機構の一例を示す概念模式図(側面図)であり、
図10に示す磁性壁と同様な磁性壁面に物品保持材を複合した磁石シートより成る磁性棚(L型棚を複合)を磁気貼着することを示し、
図12(b)は、前記
図12(a)で示すようにL型棚を複合した磁石シートを磁性壁に磁気貼着した状態を示す概念模式図(側面図)であり、
図12(c)は、その正面図による概念模式図である。
磁性壁面の磁石シートと同極間のL型棚を複合した磁石シートより成る磁性棚が、容易に磁性壁に整列貼着できることを示す。
そうして、磁性壁の磁石シートの背面に強磁性体層8を有するので、磁性棚を磁気吸着させた場合に磁性棚(
図11)の強磁性体層8との間に磁石シートが介在する事に成るので磁気閉回路を形成し大きな磁気吸着力が得られる。
又、磁性壁の中継ぎ箇所と非中継ぎ箇所の磁気吸着性の差の有無を耐荷重試験で評価出来る位置に貼着していることを示す。
【0039】
次に本発明に用いる主たる部材について説明する。
(1)磁性壁の壁基体
磁性壁の壁基体としては、特定することなく従来の建材が用いられるが、国土交通大臣が定めたもの、又は認定した防火材料(不燃材料、準不燃材料、難燃材料)が望ましく、例えば石膏ボード、繊維強化珪酸カルシュウム板、繊維強化セメント板などの無機質ボード、難燃合板などの難燃処理木質ボード、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛メッキ塗装鋼板、磁性ステンレス鋼板などの金属板、化粧鋼板火山性ガラス質複合層ボードが挙げられる。
【0040】
(2)強磁性体層
磁性壁、磁性表示片、磁性棚などに用いる強磁性体層としては、鋼板、磁性ステンレス鋼板、鉄粉又は鉄との合金粉末を少量のバインダーに高充填したシートなどが挙げられ、厚みは金属板の場合は25μm~500μm程度で、鉄粉又は鉄との合金粉末を少量のバインダーに高充填したシートでは500μm~1500μm程度が好ましく、その範囲より薄いと磁石シートの磁界に対して磁気飽和となり背面漏洩磁束が無視できなくなる。又、その範囲より厚いと磁気的性能の増大が期待できなくなる他に断裁加工、施工性などが劣り好ましくない。
【0041】
(3)磁石シート
1)磁性壁、磁性表示片、磁性物品保持材などに用いる磁石シートとしては、ストロンチュウムフエライト、バリュウムフエライトなどのフエライト系磁石シート、ネオジュウム・鉄・ホウ素、サマリュウム・鉄・窒素などの希土類系磁石シートなどが挙げられ、市販の多極着磁品を用いることができるが極間の寸法精度の良いものが望ましく、劣るものは磁性壁側の磁石シートと表装材または表示材または物品保持材を複合した磁石シートより成る磁性表示片または磁性棚などとの極間ずれによる磁気吸着力の低下乃至磁気反発を招くことに成る。
【0042】
又、磁性表示片などに用いる磁石シートの着磁面には、用途によっては被着体面とのブロッキング(温度、荷重、時間による自着現象)防止層を設けることが出来る。
【0043】
2)磁石シートは、得られる性能と経済性の面から異方性ストロンチュウムフエライト粉末を有機高分子エラストマーに高充填した磁石シートが望ましく、磁気特性はBHmax1.5MGOe程度のものが望ましく、0.3mm~5.0mm厚で、多極着磁の極間は2mm~7mmピッチの範囲で用途によって厚みと極間を決めれば良い。そうして極間の寸法精度は極間の+1%~-1%程度が好ましく、その範囲を逸脱すると磁気吸着力の低下が無視出来なくなる。
【0044】
3)磁石シートの表装材として厚み50μm~250μm程度が好ましく、これよりも薄いと隠蔽力が劣り磁石シートの自然色を隠蔽出来なくなり、これよりも厚いと磁石のエアーギャップによる磁気吸着力の低下を無視出来なくなるので好ましくない。
【0045】
4)磁石シートは公知の方法で片面又は両面から多極ヨークを用いて磁界を印加して両面に磁極を形成した片面着磁品又は両面着磁品を用いることが出来る。そうして、片面から多極ヨークで磁界を印加して着磁した両面に磁極を形成した片面着磁品は、磁界を印加した面が背面に比べ磁気吸着力が強いので、背面に強磁性体層を設けない場合には非着磁面を被着体の非磁性体板に接着剤または感圧接着剤を用いて積層し、磁気吸着力を利用する面側を着磁面とする方が好ましく、背面に強磁性体層を設ける場合は両面から多極ヨークで磁界を印加して着磁した両面に磁極を形成した両面着磁品を用いて被着体の強磁性体層に磁気貼着することが出来る他に、更に背面漏洩磁束を防止することで強い磁気吸着力が得られる。
【0046】
5)磁石シートの極間が磁石シートの厚みよりも充分大きい場合(例えば極間3mmで厚み0.6mm)には、磁気吸着させる磁性壁の磁石シートと磁性表示片や物品保持材複合磁石シートの双方の背面に強磁性体層を設ける場合には、磁気貼着時に磁気閉回路を形成し磁気吸着力の増大効果が生じる他に、更に得られる磁気吸着力において前記の片面着磁品の使用と両面着磁品の使用の差が認められなく成るので着磁が容易な片面着磁品が好適である。
【0047】
(4)壁基体への磁石シートの積層
壁基体への磁石シートの積層は、接着剤または感圧接着剤を用いて積層する他に、壁面に強磁性体層(鉄板など)を接着剤または感圧接着剤を用いて積層し、片面着磁又は両面着磁で両面に磁極が形成されている磁石シートを磁気吸着力で貼着することで、貼着位置の修正や貼替えが容易であり、更に壁基体側への磁束の漏洩防止効果によって磁性壁と表示材などを複合した磁石シートとの磁気吸着力が増大する効果が得られるので好ましい。
【0048】
(5)物品保持材
磁性表示機構に用いる物品保持材としては、背面が一部又は全面平滑なものであれば良く、例えばL型棚、桝型棚、壁掛けテレビのブランケット、絵画用額縁などが挙げられる。
【0049】
次に本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はこのような実施例のみに限定されるものではない。
≪1≫磁性壁について
【実施例1】
【0050】
1、磁性壁の基体
厚み12.5mmの普通石膏ボード(商品名:タイガーハイパーハード/吉野石膏社製)を使用した大壁造(2820mm幅×2540mm高)を基体とする。
【0051】
2、磁石シートの感圧接着材処理品を準備する。
異方性ストロンチュウムフエライト磁石シート(磁気特性:最大エネルギー積BHmax1.5MGOe、0.5mm厚×1020mm幅の巻物、磁極方向:磁石シートの縦方向、極間:3.0mmピッチ、片面着磁、)(商品名:強力マグネシート/ニチレイマグネット社製)に、感圧接着材(両面粘着)フィルム(基材;不織布、粘着剤;アクリル系、0.145mm厚×1010mm幅の巻物)(商品名ダイタック8800CH/大日本インキ化学社製)をラミネーターを用いて積層する。
【0052】
3、表装材
半硬質塩化ビニルフィルム(感圧接着剤処理品/0.2mm厚×1020mm幅の巻物)(商品名:ダイノック(ライトオーク)/住友3M社製)を準備する。
【0053】
4、表装材のラミネート及び中継ぎ貼着
4-1、表装材をラミネートした磁石シートの感圧接着材処理品の製作
前記磁石シートの感圧接着材処理品の表面に前記半硬質塩化ビニルフィルム(感圧接着剤処理品)を、ラミネーターを用いてラミネートする。
4-2、貼着する磁石シートの裁断及び中継ぎ箇所端部磁極の消去
壁面の水平方向に磁石シートを3枚中継ぎ貼着するために、縦2540mm×横940mm×3枚を裁断する。
次に、磁壁に向かって左側2枚の各右端部を〔
図3〕と同様にして、ネオジュウム系焼結磁石(6mm厚×30mm角、上下方向の漏洩磁束密度:3600Oe)に非磁性体のガイドを設けた磁極消去用磁石を用いて接触移動させることで端部磁極を約3mm幅で磁極の消去を行う〔
図3〕〔
図4〕。
【0054】
4-3、中継ぎ貼着
磁石シートの縦方向を壁面の上下方向にして壁面の水平方向に3枚中継ぎ貼着するために、磁壁に向かって左側の磁石シートの離型紙を左右方向に2分する切り目を入れ、左から2枚目の磁石シートの離型紙を左右方向に3分する切り目を入れる。次に〔
図5(a)〕のように中継ぎする位置に同極間の磁石シートを磁極定規として、双方の磁石シートにわたり一部分重なるように壁基体の中継ぎする部分に粘着テープで仮止めし、左から1枚目と2枚目の同磁極性の磁極の中心線があうように磁気吸着させた後、左側の磁石シートの左半分の離型紙を剥がして壁基体に貼着し、2枚目の中央の離型紙を剥がして壁基体に貼着した後、〔
図5(b)〕のように中継ぎ部分を捲り上げて磁極定規を取り除いた後、残る離型紙を剥がすことで壁基体に貼着する。
次に、2枚目と3枚目の中継ぎ部分に1枚目と2枚目の中継ぎと同様にして磁極定規を介して同極性の磁極の中心を合わせて壁基体に貼着することで本発明の磁性壁を得る。〔
図6〕
【実施例2】
【0055】
磁性壁基体である石膏ボードの表面に強磁性体層としての鉄系合金粉とバインダーよりなる複合層を設けたものを使用して、磁石シート(0.4mm厚、片面着磁)を磁気吸着力で貼着する以外は、実施例1と同様にする。
1、磁性壁の基体
強磁性体層として、片面に鉄系合金粉とバインダーよりなる複合層を設けた総厚12.5mm厚の石膏ボード:商品名タイガーFeボードを用いる。
2、壁基体への磁気貼着
磁石シートの縦方向を壁面の上下方向にして壁面の水平方向に3枚中継ぎ貼着するために、磁壁に向かって左から1枚目の磁石シートと左から2枚目の磁石シートとの中継ぎ箇所に〔
図5(a)〕のように中継ぎする位置に同極間の磁石シートを磁極定規として、双方の磁石シートにわたり一部分重なるように壁基体の中継ぎする部分に貼着し、左から1枚目と2枚目の同磁極性の磁極の中心線があうように磁気吸着させた後、〔
図5(b)〕のように中継ぎ部分を捲り上げて磁極定規を取り除くことで壁基体に貼着する。
次に、2枚目と3枚目の中継ぎ部分を1枚目と2枚目の中継ぎと同様にして磁極定規を介して同極性の磁極の中心を合わせて壁基体に貼着することで本発明の磁性壁を得る。〔
図6〕
【実施例3】
【0056】
磁性壁基体である石膏ボードの表面に強磁性体層として化粧鋼板(100μm厚/東洋鋼鈑社製)を用い、感圧接着材(両面粘着)フィルム(基材;不織布、粘着剤;アクリル系、0.145mm厚×1010mm幅の巻物)(商品名ダイタック8800CH/大日本インキ化学社製)を用いて石膏ボードに積層する事と、磁石シート(0.4mm厚、片面着磁)を磁気吸着力で貼着する事以外は、実施例2と同様にする。
【実施例4】
【0057】
磁性壁基体の表面側下地材を、火山性ガラス質複層坂(3.0mm厚)(商品名:ダイライト/大建工業社製)とする事と、強磁性体層を化粧鋼板(220μm厚/東洋鋼鈑社製)としたボード(商品名:マグピタボード/ニチレイマグネット社製)とする事と、磁石シート(0.6mm厚、片面着磁)(商品名:強力マグネシート/ニチレイマグネット社製)として磁気吸着力で貼着する事以外は実施例3と同様にする。
【0058】
〔比較例1〕
磁石シートの中継ぎ箇所端部の磁極消去を行わないで、中継ぎ貼着すること以外は、実施例1と同様にする。
【0059】
〔比較例2〕
磁石シートの中継ぎ箇所端部の磁極消去を行わないで、中継ぎ貼着すること以外は、実施例2と同様にする。
【0060】
〔比較例3〕
磁石シートの中継ぎ箇所端部の磁極消去を行わないで、中継ぎ貼着すること以外は、実施例3と同様にする。
【0061】
〔比較例4〕
磁石シートの中継ぎ箇所端部の磁極消去を行わないで、中継ぎ貼着すること以外は、実施例4と同様にする。
≪2≫磁性表示機構の磁性表示片について
【実施例5】
【0062】
1、磁性壁の作成
実施例1と同様にする。
2、表示材複合磁石シートの作成
(1)、磁石シート:異方性ストロンチュウムフエライト磁石シート(磁気特性:最大エネルギー積BHmax1.4MGOe、0.5mm厚×1020mm幅の巻物、磁極方向:磁石シートの縦方向、極間:3.0mmピッチ、片面着磁)(商品名;強力マグネシート/ニチレイマグネット社製)を準備する。
(2)、磁性表示片用塩ビシート
半硬質塩化ビニルフィルム(感圧接着剤処理品/0.2mm厚×1020mm幅の巻物)(商品名:ダイノック(PS-042)/住友3M社製)を準備する。
(3)、磁性表示材複合磁石シートの作成
前記(1)の背面に前記(2)を用いて積層する。
【0063】
3、磁性表示片の作成及び磁気貼着〔
図10〕
(1) F1の作成
磁石シートのN極とS極の境界線上で切断し、且つ上端S極、下端N極となる縦366mm×横1000mmの表示片2枚を作成する。
(2) F2の作成
磁石シートのN極とS極の境界線上で切断し、且つ上端S極、下端S極となる縦867mm×横1000mmの表示片2枚を作成する。
(3) F3の作成
磁石シートのN極とS極の境界線上で切断し、且つ上端S極、下端N極の、縦366mm×横870mmの表示片2枚を作成する。
(4) F4の作成
磁石シートのN極とS極の境界線上で切断し、且つ上端N極、下端N極の、縦369mm×横870mmの表示片3枚を作成する。
4、磁性壁への磁気貼着
図10に示す位置に磁性表示片を磁気貼着する。
【実施例6】
【0064】
1、磁性壁の作成
実施例2と同様にする。
2、磁性表示片の作成及び磁気貼着
上端極と下端極の極性が異なる他は、〔実施例5〕と同様にする。(
図10)
(1)上端極と下端極の極性
(1) F1、上端N極、下端S極とする。
(2) F2、上端N極、下端N極とする。
(3) F3、上端N極、下端S極とする。
(4) F4、上端S極、下端S極とする。
【実施例7】
【0065】
1、磁性壁の作成
実施例3と同様にする。
2、磁性表示片の作成及び磁気貼着
表示片F1の下方端部とF2の上方端部の切断を、〔
図9〕の如くF1の下方端部とF2の上方端部を異極吸引同極反発によって重ね磁気貼着した状態で磁極の境界線上で重ね切断する他は実施例6と同様にする。(
図10)
【実施例8】
【0066】
1、磁性壁の作成
実施例4と同様にする。
2、磁性表示片の作成及び磁気貼着
表示材を複合した磁石シートの磁石シートの厚みを0.6mmとする以外は、実施例6と同様にする。(
図10)
【0067】
〔比較例5〕
1、磁性壁の作成
比較例1と同様にする。
2、磁性表示片の作成及び磁気貼着
上端部と下端部の裁断仕様の他は実施例5と同様にする。
上端部と下端部の裁断仕様
従来通り(端部極幅の寸法精度が劣る)
【0068】
〔比較例6〕
1、磁性壁の作成
比較例2と同様にする。
2、磁性表示片の作成及び磁気貼着
上端部と下端部の裁断仕様の他は実施例6と同様にする。
上端部と下端部の裁断仕様
従来通り(端部極幅の寸法精度が劣る)
【0069】
〔比較例7〕
1、磁性壁の作成
比較例3と同様にする。
2、磁性表示片の作成及び磁気貼着
上端部と下端部の裁断仕様の他は実施例7と同様にする。
上端部と下端部の裁断仕様
従来通り(端部極幅の寸法精度が劣る)
【0070】
〔比較例8〕
1、磁性壁の作成
比較例4と同様にする。
2、磁性表示片の作成及び磁気貼着
上端部と下端部の裁断仕様の他は実施例8と同様にする。
上端部と下端部の裁断仕様
従来通り(端部極幅の寸法精度が劣る)
≪3≫磁性棚について
【実施例9】
【0071】
1、磁性壁の作成
実施例4と同様にする。
2、磁性棚の作成
まず、実施例8で用いた磁石シートと同じ磁石シートの着磁面に、軟質ウレタン樹脂系防滑剤を約10μm厚(加熱乾燥後の厚み)に塗布形成する(商品名:防滑マグネシート/ニチレイマグネット社製)。次に、この磁石シートの背面(非着磁面)に、強磁性体である亜鉛メッキ鋼板(100μm厚/東洋鋼鈑社製)を、感圧接着材(両面粘着)フィルム(基材;不織布、粘着剤;アクリル系、厚み:0.145mm(商品名ダイタック8800CH/大日本インキ化学社製 図示せず)を用いて積層する。
【0072】
次に、L型棚(棚板面:112mm奥行×380mm幅、背面:102mm高×380mm幅)の棚背面寸法(102mm高×380mm幅)に裁断して、前記亜鉛メッキ鋼板の背面とL型棚の背面を基材が発泡体の感圧接着剤(特殊ポリエチレンフォーム/粘着剤・アクリル系1.8mm厚、品番516H/積水化学工業社製)を介して積層する。尚、上下方向端部の磁極を上N~下Sとして上下方向に接近貼着が可能とし、切断は磁極の境界で切断する。〔
図11〕
3、磁性壁への磁気貼着
図12に示す位置に磁性棚を磁気貼着する。
【実施例10】
【0073】
・磁石シートを両面着磁品にする以外は、実施例9と同様にする。
【0074】
〔比較例9〕
・磁石シートの原反の着磁面に防滑層、背面に強磁性体層を設けないこと、発泡体基材の感圧接着剤を使用しないで、感圧接着材(両面粘着)フィルム(基材;不織布、粘着剤;アクリル系、厚み:0.145mm(商品名ダイタック8800CH/大日本インキ化学社製)を用いてL型棚に積層すること以外は実施例9と同様とする。
【0075】
〔比較例10〕 磁石シートの着磁面に、軟質ウレタン樹脂系防滑層を設けない以外は実施例9と同様にする。
≪次に性能評価の試験方法について説明する≫
【0076】
(1)磁性壁の外観観察
目視にて磁性壁全体に亘って、中継ぎ箇所の継ぎ目の直線性、間開きの程度などの外観観察を行い3段階に評価する。
○:良好、△:やや劣る、×:劣る
【0077】
(2)中継箇所の極間像
磁気ビュアーシートを用いて非中継箇所の極間との差異を生じていないか観察を行い3段階に評価する。
○:良好、△:やや劣る、×:劣る
【0078】
(3)磁気吸着力の測定方法
(中継箇所の磁気吸着と非中継箇所磁気吸着力の差などを測定)
一辺が70mmの正方形の平滑なプラスチック板の背面中央に、引掛けを設けた治具の平面部に、磁性表示片から採取した一辺が60mmの正方形で、両面粘着テープを用いて貼着した磁気吸着力測定試料を、磁性壁の測定箇所に同極反発・異極吸引によって磁気貼着させる。そうして磁性面と直角方向に引き離すに要する力を測定して単位面積当たりの磁気吸着力を算出する (g/cm
2)。(磁気吸着力の測定方法は
図14参照)(磁性壁の測定箇所は
図13参照)
【0079】
(4)磁性棚の耐荷重試験方法
(磁性壁に磁気吸着した磁性棚の耐荷重試験方法)
磁性壁の垂直面に磁気吸着した磁性棚の棚板の中央部と、鋼板製重り(0.5kg/1枚)の中央部を略合わせて積み重ねて行き、磁性棚が滑りを生じるか脱落する現象を生じるまでの最大荷重を測定する(最小重りは0.1kg/1枚)。(
図15参照)
【0080】
(5)貼付作業性
実際に貼り付け作業を行い3段階に評価する。
○:良好、△:やや劣る、×:劣る
≪次に試験結果について説明する≫
【0081】
実施例、比較例で得られた磁性壁、磁性表示機構の磁性表示片及び磁性棚の試験結果を表にまとめた。即ち、磁性壁については表1に実施例、表2に比較例。磁性表示機構の磁性表示片については表3に実施例、表4に比較例。磁性棚については表5に実施例と比較例についてまとめた。
【0082】
(1)磁性壁について
≪実施例≫(表1)
1)実施例1は、壁基体に表装材を積層した磁石シート(片面着磁品)を、感圧接着剤(粘着剤)を用いて積層したもので中継ぎ箇所が水平方向にある磁性壁である。
中継ぎ箇所が、本発明の仕様で処理したこと、つまり、水平方向に中継ぎ貼着をするに際して対峙する磁石シートの一方の端部に厚み方向の磁界を印加して磁極端部を消去後に、中継ぎ前後の同極の磁極の中心線が一致するように磁極の中心線を合わせて突き付け貼着することで、非中継ぎ部分と同様な磁極配置と極間が得られることにより、外観観察、中継ぎ箇所の極間像(磁気ビュアーシート像)に於いて中継ぎ箇所の磁極中心線の一致が認められる。(良好)
【0083】
そうして磁気吸着力(
図13)に於いて中継ぎ貼着部は、測定片のサイズが60mm×60mm中に中継ぎ箇所の磁極消去部分が3mm×60mm(面積比で5.00%)存在する。磁気吸着力はこの場合は着磁面の面積に比例するので磁極消去部を含む部分の磁気吸着力は、非中継ぎ部の磁気吸着力×95.00%であり、例えば非中継ぎ部分68g/cm
2に対して、中継ぎ部を含む部分65g/cm
2となるが実用的には問題ない値である。実例を挙げればL型磁性棚の磁石シートのサイズ100mm×380mmでは、中継ぎ部を含む部分/非中継ぎ部分=100×(380-3)/100×380=99.21%であり、68g/cm
2×0.99=67g/cm
2と成り其の差は無視できる値である。
【0084】
2)実施例2は、前記実施例1と同様に本発明の効果が認められる。又、壁基体の表面側に強磁性体層(鉄粉複合層)を有し、両面に磁極を形成された片面着磁の磁石シートを磁石シートの磁気吸着力によって貼着できる他に、壁基体側への漏洩磁束を防止出来るので磁石シートの背面磁束を増大する効果が得られ磁石シートの厚みを0.4mmと薄くしても優れた磁気吸着力が得られている。
【0085】
3)実施例3は、前記実施例1と同様に本発明の効果が認められる。又、壁基体の表面側に強磁性体層(化粧鋼板)を有するので、両面に磁極を形成された片面着磁の磁石シートの磁気吸着力によって貼着できる他に、壁基体側への漏洩磁束の防止能が強く磁石シートの背面磁束を増大する効果が優れるので磁石シートの厚みを0.4mmと薄くしても、優れた磁気吸着力が得られている。
【0086】
4)実施例4は、前記実施例1と同様に本発明の効果が認められる。又、磁石シートを片面着磁品で0.6mm厚として、それに適した強磁性体層(化粧鋼板)の厚み(220μm)としていることで、当然に強い磁気吸着力が得られている。
【表1】
【0087】
≪比較例≫(表2)
比較例1は実施例1と比較して、比較例2は実施例2と比較して、比較例3は実施例3と比較して、各比較例は本発明の中継ぎ仕様を逸脱するので、当然に各評価性能が劣る結果を呈する。
【表2】
【0088】
2、磁性表示機構について
(1)磁性表示片
≪実施例≫(表3)
実施例5~実施例8の磁気貼着性は、磁性壁の中継ぎ箇所と非中継ぎ箇所の差が認められない。又、近接貼着(F1/F2)及び1極間隔てた貼着(F2/F3/F4)の各貼着においても優れた結果を呈する。
【表3】
【0089】
≪比較例≫(表4)
比較例5~比較例8の磁気貼着性は、近接貼着(F1/F2)に於いて表示片の裁断精度が劣るために表示片の押合いを生じた箇所で浮き上がりを生じ、又、磁性壁の中継ぎ箇所の極ずれを跨ぐ貼着と成るので貼着不良を生じ、F3は中継ぎ箇所の極ずれを跨ぐ貼着と成るので貼着不良を生じている。つまり、各比較例は本発明の中継ぎ仕様を逸脱するので、当然に各評価性能が劣る結果を呈する。
非中継ぎ箇所での貼着であるF4のみが当然に正常な貼着を呈している。
【表4】
【0090】
(2)磁性棚
≪実施例≫(表5)
実施例9、実施例10、比較例10は、強磁性体層を有することから磁気吸着において磁気閉回路を形成すること、強磁性体層と棚背面間に発泡体基材の感圧接着剤層を介在させることで磁性壁の磁石シートと磁性棚の磁石シート間のエアーギャップの形成を防止することから良好な磁気吸着力が得られ、更に実施例9と実施例10は防滑層による耐荷重性の増大効果が著しい。又、実施例9と実施例10から分かるように磁気閉回路を形成することで片面着磁と両面着磁による磁気吸着力の差が無いことから耐荷重性においても片面着磁品と両面着磁品の差を生じない。そうして比較例9は、強磁性体層、発泡体基材の感圧接着剤層、防滑層を有しないので当然耐荷重性が劣る結果と成っている。
又、実施例9、実施例10、比較例9、比較例10は、本発明の効果によって磁性壁の中継ぎ箇所と非中継ぎ箇所の差が認められない。(良好)
【表5】
【0091】
以上の試験結果から分かるように、本発明によれば磁石シートの厚み及び磁気吸着力、強磁性体層の有無に係りなく、本発明の磁性壁に本発明の磁性表示片及び磁性棚などを用いて、磁性壁の磁石シートの中継ぎ箇所と非中継ぎ箇所に関係なく全面において磁極方向に優れた整列貼着が出来る。
又、磁性棚などにおいて強磁性体層は磁性壁に磁気貼着した状態で、磁気閉回路を形成すること及び発泡体を基材とする感圧接着剤(粘着剤)によって磁気貼着面のエアーギャップの形成を防止することにより大きな磁気吸着力が得られ、更に防滑層を付与することで滑り抵抗が増大し剪断磁気吸着力が増大することで、優れた耐荷重性が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によって大面積の磁性壁であっても、磁性壁の磁石シートの磁極方向に磁性表示片や磁性棚などの整列貼着が、中継ぎ箇所に関係なく全面的に連続して可能と成ったことにより、大型磁性表示機構などへの展開が期待される。
【符号の説明】
【0093】
1:多極着磁を施した磁石シート
2:表装材
3:同極同士の反発で生じた間隙
4:異極吸引で生じた極ズレ
5:壁基体
6:接着剤(感圧接着剤)
62:基材が発泡体の感圧接着剤
7:多極着磁の磁極を消去した部分
8:強磁性体層(強磁性体金属薄層または強磁性体金属粉とバインダーより成る層)
9:防滑層
10:非磁性体製のガイド
11:中継ぎ箇所の磁気吸着力測定箇所
12:多極着磁を施した磁石シート端部の磁極を消去した磁石シート
13:磁気吸着力測定具の試験片貼着板(非磁性体製)
14:両面粘着テープ
15:プルゲージ
17:複合層(防滑層、磁石シート、強磁性体層、発泡体基材の感圧接着剤層4者の複合層)
120:非中継ぎ箇所の磁気吸着力測定箇所
F1、F2、F3、F4、:表装材または表示材を複合した磁石シートである磁性表示片
F5、F6、F7、F8、:物品保持材(棚など)を複合した磁石シートである磁性棚
LR:L型棚
M1:表装材を積層した、磁極方向を磁石シートの縦方向に着磁を施した磁石シート
M2:表装材を積層した、磁極方向を磁石シートの横方向に着磁を施した磁石シート
MB:磁気ビユアーシート
MS:磁極定規
MW:磁性壁
RM:希土類系焼結磁石(上下NS着磁)
W:分銅(荷重)
N:多極着磁を施した磁石シートのN極
S:多極着磁を施した磁石シートのS極
N’:多極着磁を施した磁石シートの非着磁面に生じたN極
S’:多極着磁を施した磁石シートの非着磁面に生じたS極
N2:多極着磁を施した磁石シートの切断により生じた狭いN極
S2:多極着磁を施した磁石シートの切断により生じた狭いS極
N2’:多極着磁を施した磁石シートの非着磁面に切断により生じた狭いN極
S2’:多極着磁を施した磁石シートの非着磁面に切断により生じた狭いS極
(N):磁極定規のN極
(S):磁極定規のS極
bl:磁気ビユアーシートの画像による磁極の境界線
cu:磁石シートの切断位置
gp:表面磁束密度グラフ(模式図)での磁極の境界点
mc:磁極の中心線
mv:磁石シートの縦方向
re:中継ぎ位置
【要約】
【課題】
磁石シートの被着体である磁性壁面の磁石シートと、貼着する磁石シート製表示片が同極間の多極着磁品である事によって磁性壁の磁石シートの磁極方向に各表示片が整列磁気貼着出来る磁性壁において、大面積の磁性壁を得るために磁石シートの中継ぎ貼着箇所に生じる双方の磁気反発による間開き又は磁極の中心ずれの不都合を解決する。
【解決手段】
長尺の磁極方向を磁石シートの横方向に多極着磁を施した磁石シートM2を、壁基体に磁極方向を壁面の水平方向に貼着する事で上下方向の中継ぎを不要とし、水平方向の中継ぎ貼着に当たり、中継ぎ貼着箇所reで対峙する磁石シートの一方又は双方の磁極端部が磁極有しないものを用いて、中継ぎ前後の各磁極が同極性で磁極の中心線が一致するように突き付け貼着する事で解決する。
【選択図】
図6